IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-定着装置および画像形成装置 図1
  • 特許-定着装置および画像形成装置 図2
  • 特許-定着装置および画像形成装置 図3
  • 特許-定着装置および画像形成装置 図4
  • 特許-定着装置および画像形成装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
G03G15/20 535
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018178940
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020052122
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 康隆
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕平
(72)【発明者】
【氏名】林 良宏
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-216357(JP,A)
【文献】特開2009-205067(JP,A)
【文献】特開2014-174488(JP,A)
【文献】特開2018-146790(JP,A)
【文献】特開2015-114393(JP,A)
【文献】特開平05-181380(JP,A)
【文献】特開2013-088734(JP,A)
【文献】特開平09-218600(JP,A)
【文献】特開2012-220544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動可能な無端状のベルトと、
前記ベルトの外周面に対して接触および離間可能に設けられ、当該ベルトに接触している場合に当該ベルトとの間に記録材が通過する加圧領域を形成するとともに回転して当該ベルトを循環移動させる加圧部と、
前記加圧領域よりも前記ベルトの移動方向の上流側で当該ベルトの内周面に接触し、前記加圧部が当該ベルトから離間している場合に回転して当該ベルトを循環移動させる駆動部と、
前記ベルトの前記内周面に前記駆動部が接触する接触領域における前記移動方向の中間位置よりも下流側で、前記外周面側から当該ベルトを当該駆動部に押し付ける押し付け部と
を備え
前記押し付け部は、前記ベルトの前記外周面に接触する部分が当該ベルトと同じ材料で構成され、表面硬さが当該ベルトと比べて高いことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記駆動部よりも前記移動方向の上流側且つ前記加圧領域よりも当該移動方向の下流側で前記ベルトの前記内周面に接触し、循環移動する当該ベルトに従動回転し、当該移動方向に対する回転軸の角度が変位可能な従動部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ベルトを介して前記加圧部と対向し、当該加圧部とともに前記加圧領域を形成する対向部をさらに備え、
前記駆動部から前記対向部まで移動する前記ベルトの長さと比べて、当該対向部から前記従動部まで移動する当該ベルトの長さが長いことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記押し付け部は、前記駆動部の回転中心と前記従動部の回転中心とを結んだ線に対して前記加圧領域に近い部分で、前記ベルトを当該駆動部に押し付けることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記押し付け部は、回転軸方向の両端部の外径が当該回転軸方向の中央部の外径と比較して大きい円筒形状を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
循環移動可能な無端状のベルトと、
前記ベルトの外周面に対して接触および離間可能に設けられ、当該ベルトに接触している場合に当該ベルトとの間に記録材が通過する加圧領域を形成するとともに回転して当該ベルトを循環移動させる加圧部と、
前記加圧領域とは異なる位置で前記ベルトの内周面に接触し、前記加圧部が当該ベルトから離間している場合に回転して当該ベルトを循環移動させる駆動部と、
前記駆動部および前記加圧領域とは異なる位置で前記ベルトの前記内周面に接触し、循環移動する当該ベルトに従動回転し、当該ベルトの移動方向に対する回転軸の角度が変位可能な従動部と、
前記駆動部の回転中心と前記従動部の回転中心とを結んだ線に対して前記加圧領域に近い部分で、前記ベルトを当該駆動部に押し付ける押し付け部と
を備え
前記押し付け部は、前記ベルトの前記外周面に接触する部分が当該ベルトと同じ材料で構成され、表面硬さが当該ベルトと比べて高いことを特徴とする定着装置。
【請求項7】
前記従動部は、前記駆動部よりも前記移動方向の上流側且つ前記加圧領域よりも当該移動方向の下流側で前記ベルトの前記内周面に接触し、
前記押し付け部は、回転軸方向の両端部の外径が当該回転軸方向の中央部の外径と比較して大きい円柱形状を有することを特徴とする請求項に記載の定着装置。
【請求項8】
記録材への画像形成を行う画像形成手段と、当該画像形成手段により形成された画像を記録材に定着する定着装置とを備え、当該定着装置が、請求項1乃至の何れかに記載の定着装置により構成された画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、加熱体と回転駆動ローラと従動ローラとの間に張架され回転駆動ローラとの摩擦力で回転移動されるフィルム材を用いた加熱装置において、フィルムを回転駆動ローラへ押圧するフィルム押圧手段を備える技術が存在する(特許文献1参照)。この加熱装置では、従動ローラの一端を上下動させることで、フィルム材の蛇行を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-181380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、定着装置では、循環移動可能なベルトと、ベルトの内周面に接触してベルトを駆動する駆動部との擦れを抑制するために、ベルトを外周面側から駆動ロールに押し付ける押し付け部を設ける場合がある。しかしながら、定着装置に押し付け部を設けた場合であっても、押し付け部の位置等によっては、ベルトと駆動部との擦れを抑制することができない場合がある。
本発明は、ベルトを循環移動させる駆動部に対してベルトの内周面に駆動部が接触領域における移動方向の中間位置よりも上流側でベルトを押し付ける場合に比べて、ベルトと駆動部との擦れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、循環移動可能な無端状のベルトと、前記ベルトの外周面に対して接触および離間可能に設けられ、当該ベルトに接触している場合に当該ベルトとの間に記録材が通過する加圧領域を形成するとともに回転して当該ベルトを循環移動させる加圧部と、前記加圧領域よりも前記ベルトの移動方向の上流側で当該ベルトの内周面に接触し、前記加圧部が当該ベルトから離間している場合に回転して当該ベルトを循環移動させる駆動部と、前記ベルトの前記内周面に前記駆動部が接触する接触領域における前記移動方向の中間位置よりも下流側で、前記外周面側から当該ベルトを当該駆動部に押し付ける押し付け部とを備え、前記押し付け部は、前記ベルトの前記外周面に接触する部分が当該ベルトと同じ材料で構成され、表面硬さが当該ベルトと比べて高いことを特徴とする定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記駆動部よりも前記移動方向の上流側且つ前記加圧領域よりも当該移動方向の下流側で前記ベルトの前記内周面に接触し、循環移動する当該ベルトに従動回転し、当該移動方向に対する回転軸の角度が変位可能な従動部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記ベルトを介して前記加圧部と対向し、当該加圧部とともに前記加圧領域を形成する対向部をさらに備え、前記駆動部から前記対向部まで移動する前記ベルトの長さと比べて、当該対向部から前記従動部まで移動する当該ベルトの長さが長いことを特徴とする請求項2に記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記押し付け部は、前記駆動部の回転中心と前記従動部の回転中心とを結んだ線に対して前記加圧領域に近い部分で、前記ベルトを当該駆動部に押し付けることを特徴とする請求項3に記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記押し付け部は、回転軸方向の両端部の外径が当該回転軸方向の中央部の外径と比較して大きい円筒形状を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、循環移動可能な無端状のベルトと、前記ベルトの外周面に対して接触および離間可能に設けられ、当該ベルトに接触している場合に当該ベルトとの間に記録材が通過する加圧領域を形成するとともに回転して当該ベルトを循環移動させる加圧部と、前記加圧領域とは異なる位置で前記ベルトの内周面に接触し、前記加圧部が当該ベルトから離間している場合に回転して当該ベルトを循環移動させる駆動部と、前記駆動部および前記加圧領域とは異なる位置で前記ベルトの前記内周面に接触し、循環移動する当該ベルトに従動回転し、当該ベルトの移動方向に対する回転軸の角度が変位可能な従動部と、前記駆動部の回転中心と前記従動部の回転中心とを結んだ線に対して前記加圧領域に近い部分で、前記ベルトを当該駆動部に押し付ける押し付け部とを備え、前記押し付け部は、前記ベルトの前記外周面に接触する部分が当該ベルトと同じ材料で構成され、表面硬さが当該ベルトと比べて高いことを特徴とする定着装置である。
請求項7に記載の発明は、前記従動部は、前記駆動部よりも前記移動方向の上流側且つ前記加圧領域よりも当該移動方向の下流側で前記ベルトの前記内周面に接触し、前記押し付け部は、回転軸方向の両端部の外径が当該回転軸方向の中央部の外径と比較して大きい円柱形状を有することを特徴とする請求項に記載の定着装置である。
請求項8に記載の発明は、記録材への画像形成を行う画像形成手段と、当該画像形成手段により形成された画像を記録材に定着する定着装置とを備え、当該定着装置が、請求項1乃至の何れかに記載の定着装置により構成された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、ベルトを循環移動させる駆動部に対してベルトの内周面に駆動部が接触領域における移動方向の中間位置よりも上流側でベルトを押し付ける場合に比べて、ベルトと駆動部との擦れを抑制することができる。
請求項2に記載の発明によれば、従動部の変位によってベルトの位置が変わった場合であっても、押し付け部が接触領域における移動方向の中間位置よりも上流側に設けられる場合と比べて、ベルトと駆動部との擦れを抑制することができる。
請求項3に記載の発明によれば、ベルトを循環移動させる駆動部に対してベルトの内周面に駆動部が接触領域における移動方向の中間位置よりも上流側でベルトを押し付ける場合に比べて、ベルトと駆動部との擦れを抑制することができる。
請求項4に記載の発明によれば、押し付け部が駆動部の回転中心と従動部の回転中心とを結んだ線に対して加圧領域から遠い部分でベルトを押し付ける場合に比べて、ベルトと駆動部との擦れをより抑制することができる。
請求項5に記載の発明によれば、押し付け部の回転軸方向の両端部の外径が回転軸方向の中央部の外径と比較して小さい場合と比べて、加圧領域に進入するベルトの波打ちを解消しやすくなる。
請求項6に記載の発明によれば、ベルトを循環移動させる駆動部に対して加圧領域から離れた場所でベルトを押し付ける場合に比べて、ベルトと駆動部との擦れを抑制することができる。
請求項7に記載の発明によれば、押し付け部の回転軸方向の両端部の外径が回転軸方向の中央部の外径と比較して小さい場合と比べて、加圧領域に進入するベルトの波打ちを解消しやすくなる。
請求項8に記載の発明によれば、ベルトを循環移動させる駆動部に対して加圧領域から離れた場所でベルトを押し付ける場合に比べて、ベルトと駆動部との擦れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。
図2】本実施形態が適用される定着装置の側断面図である。
図3図2における矢印III方向から定着ベルトモジュールを眺めた場合の図である。
図4】本実施形態が適用される定着装置の側断面の概略図であり、解除状態の定着装置を示した図である。
図5】第2支持ロールが変位した場合の定着装置の状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態が適用される画像形成装置100を示した概略構成図である。
同図に示す画像形成装置100は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置である。この画像形成装置100には、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが設けられている。
【0009】
また、画像形成装置100には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10が設けられている。さらに、画像形成装置100には、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙50に一括転写(二次転写)させる二次転写部20が設けられている。
【0010】
また、二次転写されたトナー像を用紙50上に定着させる定着装置60が設けられている。さらに、プログラム制御されたCPUにより構成され、画像形成装置100内の各部を制御する制御部40が設けられている。また、表示パネルなどにより構成されユーザからの情報を受け付けるとともにユーザに対して情報を表示するUI(User Interface)70が設けられている。
【0011】
画像形成部の一部として機能する画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々には、次のような電子写真用デバイスが設けられている。まず、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11を帯電する帯電器12が設けられている。また、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0012】
さらに、各色成分トナーが収容され感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられている。また、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。また、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17が設けられている。
【0013】
中間転写ベルト15は、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動される駆動ロール31によって図1に示す矢印B方向に予め定められた速度で循環駆動する。一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向配置される一次転写ロール16を含んで構成されている。そして、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上に重畳されたトナー像が形成される。
【0014】
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とを含んで構成される。二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置されている。さらに二次転写ロール22は、接地されるとともに、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙50上にトナー像が二次転写される。
【0015】
画像形成装置100の基本的な作像プロセスについて説明する。
画像形成装置100では、図示しない画像読取装置等から画像データが出力される。そして、この画像データは図示しない画像処理装置により画像処理が施され、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0016】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射する。各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、レーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。そして現像器14により感光体ドラム11上にトナー像が形成された後、このトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。
【0017】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に一次転写された後、中間転写ベルト15の移動によりトナー像が二次転写部20に搬送される。二次転写部20では、二次転写ロール22が中間転写ベルト15を介してバックアップロール25に押圧される。このとき、第1用紙収容部53や第2用紙収容部54から搬送ロール52等により搬送された用紙50が、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。
【0018】
そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着のトナー像は、二次転写部20において、用紙50上に一括して静電転写される。その後、トナー像が静電転写された用紙50は、中間転写ベルト15から剥離された後、二次転写ロール22よりも用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へ搬送される。そして搬送ベルト55は、用紙50を定着装置60まで搬送する。
【0019】
図2は、本実施形態が適用される定着装置60の側断面図である。
定着装置60は、定着ベルト610を備える定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61に押し当てられる加圧部の一例としての加圧ロール62とにより主要部が構成されている。この定着装置60では、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62との接触部に、用紙50を加圧および加熱し用紙50にトナー像を定着させる加圧領域の一例としてのニップ部Nが形成される。
【0020】
さらに説明すると、この定着装置60では、定着ベルト610の外周面610Aに対して加圧ロール62の外周面62Aの一部が押し当てられ、この一部の押し当てが行われている箇所に、ニップ部Nが形成される。付言すると、この一部の押し当てが行われている箇所には、トナー像が形成された用紙50が加圧および加熱されながら通過する通過部が形成される。
【0021】
なお、ニップ部Nに進入する用紙50には、トナー像が形成されたトナー像形成面51が存在するが、本実施形態では、このトナー像形成面51が図中上方を向いた状態で、ニップ部Nへの用紙50の進入が行われる。これにより、本実施形態では、トナー像形成面51側が定着ベルト610に接触する。
【0022】
ここで、本実施形態の定着装置60では、定着ベルト610の外周面610Aに対して加圧ロール62が押し当てられ、ニップ部Nが形成された「加圧状態」と、定着ベルト610の外周面610Aに対する加圧ロール62の押し当てが解除され、加圧ロール62が定着ベルト610から離間された「解除状態」とが切り替え可能になっている。より具体的には、定着装置60は、用紙50にトナー像を定着させる定着動作時には、加圧状態に切り替えられる。また、定着装置60は、用紙50にトナー像を定着させないアイドリング時や、例えばニップ部Nにおいて用紙詰まりが発生した場合等に、解除状態に切り替えられる。なお、図2には、加圧状態の定着装置60を示している。
【0023】
さらに説明すると、加圧ロール62は、図中矢印X1で示すように、定着ベルトモジュール61に対して進退可能に設けられており、加圧ロール62の進退により、定着装置60の加圧状態と解除状態とが切り替えられるようになっている。
そして、加圧ロール62は、定着ベルト610の外周面610Aに対して押し当てられた加圧状態において、不図示のモータにより図中矢印C方向に回転駆動される。
【0024】
定着ベルト610は、無端状に形成される。そして、定着ベルト610は、外周面610Aに対して加圧ロール62が押し当てられた加圧状態において、回転する加圧ロール62から駆動力を受け図中矢印D方向に循環移動を行う。
また、定着ベルト610は、外周面610Aから加圧ロール62が離間した解除状態では、後述する第1支持ロール612から駆動力を受け、図中矢印D方向に循環移動を行う。
【0025】
定着ベルト610は、例えば、ポリイミド樹脂で形成されたベース層と、ベース層の外周面側に積層されたシリコーンゴム等からなる弾性体層と、弾性体層上に被覆されPFA(テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)等により形成された剥離層とで構成される。
【0026】
さらに、定着ベルトモジュール61には、回転可能に設けられ、内側から定着ベルト610を支持する駆動部の一例としての第1支持ロール612が設けられている。また、定着ベルト610の移動方向において、第1支持ロール612よりも上流側には、同じく定着ベルト610を内側から支持する従動部の一例としての第2支持ロール613が設けられている。さらに、定着ベルト610の内側には、第2支持ロール613の変位(ステアリング)を行うステアリング機構614が設けられている。
【0027】
ここで、本実施形態では、定着ベルト610の外周面610Aから加圧ロール62が離間した解除状態において、第1支持ロール612が不図示のモータにより図中矢印E方向に回転駆動される。これにより、定着ベルト610は、上述したように、解除状態において回転する第1支持ロール612から駆動力を受け図中矢印D方向に循環移動を行う。
【0028】
また、本実施形態では、ステアリング機構614によって、定着ベルト610の移動方向に対する第2支持ロール613の回転軸の角度が変位する。これに伴い、定着ベルト610の幅方向に定着ベルト610が移動する。これにより、本実施形態では、定着ベルト610の位置が調整されるようになり、予め定められた経路に沿って定着ベルト610が循環移動するようになる。
【0029】
また、定着ベルトモジュール61には、定着ベルト610の内周側であって定着ベルト610を介して加圧ロール62と対向する位置に、加圧ロール62からの荷重を受ける対向部の一例としての荷重受け部材615が設けられている。本実施形態では、加圧ロール62と荷重受け部材615とによって、用紙50が両側から挟まれ用紙50に対して圧力が加えられる。
【0030】
ここで、本実施形態では、第1支持ロール612から荷重受け部材615まで移動する定着ベルト610の長さ(図2の符号L1参照、以下「第1張架長さL1」と表記する。)と比べて、荷重受け部材615から第2支持ロール613まで移動する定着ベルト610の長さ(図2の符号L2参照、以下「第2張架長さL2」と表記する。)が長くなっている(L1<L2)。なお、第1張架長さL1は、定着ベルト610のうち第1支持ロール612と荷重受け部材615との間を張架される部分の長さであり、第1支持ロール612および荷重受け部材615に接触していない部分の長さである。また、第2張架長さL2は、定着ベルト610のうち荷重受け部材615と第2支持ロール613との間を張架される部分の長さであり、荷重受け部材615および第2支持ロール613に接触していない部分の長さである。
【0031】
さらに、定着ベルトモジュール61には、第1支持ロール612、第2支持ロール613、および荷重受け部材615の内部に、これらを加熱するヒータ616が設けられている。ここで、このヒータ616は、例えばハロゲンヒータにより構成される。
【0032】
さらにまた、定着ベルトモジュール61には、定着ベルト610の内周面に対して、オイル等の潤滑剤を供給する第1潤滑剤供給部材617A、第2潤滑剤供給部材617Bが設けられている。第1潤滑剤供給部材617Aは、定着ベルト610の移動方向において、第1支持ロール612よりも上流側、且つ第2支持ロール613よりも下流側に配置されている。また、第2潤滑剤供給部材617Bは、定着ベルト610の移動方向において、第1支持ロール612よりも下流側、且つ荷重受け部材615よりも上流側に配置されている。
【0033】
また、定着ベルトモジュール61には、用紙50の搬送方向において、ニップ部Nよりも上流側に、ニップ部Nへ搬送される用紙50の案内を行う第1用紙案内部材618が設けられている。この第1用紙案内部材618は、上面618Aを用いて用紙50を下方から支持し、ニップ部Nへの用紙50の案内を行う。
また、定着ベルトモジュール61には、ニップ部Nよりも下流側に、ニップ部Nから搬送されてきた用紙50の下流側への案内を行う第2用紙案内部材619が設けられている。この第2用紙案内部材619も、上面619Aを用いて用紙50を下方から支持し、下流側への用紙50の案内を行う。
【0034】
さらに、本実施形態では、ニップ部Nよりも上流側に、上流側から搬送されてきた用紙50が通る、断面形状が三角形の上流側用紙通過領域701が形成されている。
上流側用紙通過領域701は、定着ベルト610よりも図中下方に、且つ、加圧ロール62の外周面62Aよりも図中上方に配置されている。さらに説明すると、本実施形態では、定着ベルト610のうちの、ニップ部Nよりも上流側に位置する部分と、加圧ロール62の外周面62Aのうちの、ニップ部Nよりも上流側に位置する部分とにより囲まれた領域が、上流側用紙通過領域701となっている。
【0035】
また、本実施形態では、ニップ部Nよりも下流側に、ニップ部Nから排出された用紙50が通る、断面形状が三角形の下流側用紙通過領域702が形成されている。
この下流側用紙通過領域702も、上流側用紙通過領域701と同様、定着ベルト610よりも図中下方に、且つ、加圧ロール62の外周面62Aよりも図中上方に配置されている。さらに説明すると、定着ベルト610のうちの、ニップ部Nよりも下流側に位置する部分と、加圧ロール62の外周面62Aのうちの、ニップ部Nよりも下流側に位置する部分とにより囲まれた領域が、下流側用紙通過領域702となっている。
【0036】
さらに、本実施形態の定着装置60には、定着ベルト610を介して第1支持ロール612に対向し、定着ベルト610を第1支持ロール612の外周面612Aに押し付ける押圧ロール65が設けられている。押圧ロール65は、回転自在に支持され、定着ベルト610の循環移動に従動して回転する。
また、押圧ロール65は、不図示の支持部材によって、定着ベルト610を介して第1支持ロール612に対して予め定められた圧力で押圧されている。これにより、本実施形態では、押圧ロール65を備えない場合と比較して、第1支持ロール612の外周面612Aに対する定着ベルト610の密着力が高まり、第1支持ロール612と定着ベルト610との擦れが抑制される。
【0037】
押圧ロール65は、例えば、円柱形状の金属ロールの側面に、PFA等からなる表面層が積層された構成を有する。ここで、押圧ロール65は、表面層が定着ベルト610の外周面610Aを構成する剥離層と同じ材料で構成され、且つ表面の硬さ(アスカーC硬度)が定着ベルト610と比べて高いことが好ましい。
本実施形態では、押圧ロール65の表面層と定着ベルト610の剥離層とが同じ材料で構成され、且つ押圧ロール65の表面の硬さが定着ベルト610と比べて高いことで、定着ベルト610の外周面610Aに付着した異物が、押圧ロール65に掻き取られやすくなる。
【0038】
また、押圧ロール65は、回転軸方向の両端部の外径が、回転軸方向の中央部の外径と比べて大きい円柱形状を有することが好ましい。押圧ロール65がこのような形状を有することで、定着ベルト610を介して押圧ロール65を第1支持ロール612に押し付けた場合に、押圧ロール65と第1支持ロール612との間で定着ベルト610の波打ちが解消されやすくなる。特に、本実施形態では、押圧ロール65および第1支持ロール612は、定着ベルト610において、ニップ部Nを形成する荷重受け部材615よりも上流側に設けられている。このため、本実施形態では、ニップ部Nへ進入する前の定着ベルト610の波打ちが解消されやすくなり、ニップ部Nで定着処理がなされる用紙50の画像の乱れが抑制される。
【0039】
押圧ロール65は、加圧ロール62が定着ベルト610の外周面610Aに押し当てられた加圧状態では、定着ベルト610の外周面610Aから離間するようにしてもよい。なお、加圧状態では、上述したように定着ベルト610は、加圧ロール62により回転駆動されており、第1支持ロール612は、定着ベルト610に従動して回転している。したがって、加圧状態において押圧ロール65を定着ベルト610の外周面から離間させた場合であっても、第1支持ロール612と定着ベルト610との擦れは生じにくい。
なお、本実施形態の定着装置60における押圧ロール65の配置等については、後段にてより詳細に説明する。
【0040】
続いて、ステアリング機構614による第2支持ロール613のステアリング動作について説明する。図3は、図2における矢印III方向から定着ベルトモジュール61を眺めた場合の図である。
本実施形態では、上述したように、第2支持ロール613を変位させるステアリング機構614(図2参照)が設けられており、このステアリング機構614は、図3中矢印Pで示すように、第2支持ロール613の回転軸613Bにおける中央部613Aを中心に第2支持ロール613を回転(揺動)させる。これにより、第2支持ロール613の軸方向における一端または他端側に向かって定着ベルト610が移動するようになり、これに伴い、定着ベルト610の幅方向における位置が変化する。
【0041】
なお、本実施形態では、第2支持ロール613の軸方向における中央部613Aを中心に第2支持ロール613を回転(揺動)させる構成を採用しているが、第2支持ロール613の軸方向における一端部を固定し、他端部側を揺動させる構成を採用してもよい。
また、本実施形態では、変位させる対象(ステアリングを行う対象)を第2支持ロール613としたが、第1支持ロール612を変位させてもよい。ただし、第1支持ロール612ではなく第2支持ロール613を変位させた方が、未定着状態のトナー像が形成された用紙50のトナー像形成面51への定着ベルト610の接触が抑制され、トナー像の乱れが抑制されるようになるため好ましい。
【0042】
また、本実施形態では、第1支持ロール612を変位させた場合、第1支持ロール612に対する押圧ロール65の圧力が変化し、第1支持ロール612に対する定着ベルト610の密着力が低下するおそれがある。第1支持ロール612に対する定着ベルト610の密着力の低下を抑制する観点からも、第1支持ロール612ではなく第2支持ロール613を変位させた方が好ましい。
【0043】
続いて、本実施形態の定着装置60における押圧ロール65の配置について、より詳細に説明する。図4は、本実施形態が適用される定着装置60の側断面の概略図であり、解除状態の定着装置60を示した図である。
なお、図4では、ステアリング機構614(図2参照)によって第2支持ロール613を変位させていない状態、すなわち、第2支持ロール613の回転軸613Bが第1支持ロール612の回転軸612Bと平行な状態の定着装置60を示している。
【0044】
本実施形態の定着装置60では、押圧ロール65は、図4に示すように、定着ベルト610が第1支持ロール612に巻き付いている領域(図4の符号L3参照、以下「ラップ領域L3」と表記する。)における定着ベルト610の移動方向の中間位置(図4の符号L3C参照、以下「中間位置L3C」と表記する。)よりも下流側で、定着ベルト610を第1支持ロール612に押し付けている。
本実施形態の定着装置60では、このような構成を採用することで、押圧ロール65が、ラップ領域L3の中間位置L3Cよりも上流側において第1支持ロール612に巻き付くことで波打ちや撓みが解消された後の定着ベルト610を、第1支持ロール612に押し付けることになる。これにより、押圧ロール65がラップ領域L3の中間位置L3Cよりも上流側に設けられる場合と比べて、第1支持ロール612に対する定着ベルト610の密着力が高まる。
【0045】
また、本実施形態の定着装置60では、押圧ロール65が、図4に示すように、定着装置60の側断面において、第1支持ロール612の回転軸612Bと第2支持ロール613の回転軸613Bとを結んだ直線(図4の符号Z参照。)に対して荷重受け部材615に近い側で、定着ベルト610を第1支持ロール612に押し付けている。言い換えると、押圧ロール65は、直線Zに対して、加圧状態において荷重受け部材615と加圧ロール62との間にニップ部N(図2参照)が形成される領域に近い部分で、定着ベルト610を第1支持ロール612に押し付けている。
【0046】
なお、第1支持ロール612の回転軸612Bおよび第2支持ロール613の回転軸613Bは、それぞれ、ステアリング機構614により第2支持ロール613を変位させていない状態での第1支持ロール612の回転軸612Bおよび第2支持ロール613の回転軸613Bである。また、第1支持ロール612の回転軸612Bおよび第2支持ロール613の回転軸613Bは、それぞれ、第1支持ロール612および第2支持ロール613を定着装置60の側方から見た場合の回転中心である。
【0047】
本実施形態の定着装置60では、押圧ロール65が直線Zに対して荷重受け部材615に近い側に設けられることで、例えばステアリング機構614によって第2支持ロール613が変位された場合であっても、押圧ロール65による第1支持ロール612に対する定着ベルト610の密着力の低下が抑制される。これにより、第1支持ロール612に対する定着ベルト610の擦れが抑制される。
【0048】
図5は、第2支持ロール613が変位した場合の定着装置60の状態を示した概略図である。
ステアリング機構614(図2参照)により第2支持ロール613が変位された場合、図5にて矢印Qで示すように、第2支持ロール613の一端が直線Zに対して荷重受け部材615から遠い側へ移動する場合がある。この場合、第2支持ロール613の移動に伴って、図5にて矢印Rで示すように、第2支持ロール613に支持される定着ベルト610も変位する。これにより、第1支持ロール612の一端側では、第1支持ロール612に巻き付く定着ベルト610の長さが短くなる場合がある。言い換えると、図5に示すように、第1支持ロール612の一端側では、第1支持ロール612に巻き付いている定着ベルト610のうち、定着ベルト610の移動方向における上流側の部分が、第1支持ロール612から離れる場合がある。
【0049】
特に、本実施形態の定着装置60では、上述したように、第1張架長さL1と比べて第2張架長さL2が長くなっている(L1<L2)。これにより、例えば第1張架長さと比べて第2張架長さL2が短い場合と比べて、第2支持ロール613が変位された場合に、第1支持ロール612に巻き付いている定着ベルト610のうち、定着ベルト610の移動方向における上流側の部分が、第1支持ロール612から離れやすい傾向がある。
【0050】
なお、ステアリング機構614により第2支持ロール613が変位された場合であっても、図5に示すように、第1支持ロール612に巻き付いている定着ベルト610のうち、定着ベルト610の移動方向における下流側の部分は、第1支持ロール612から離れにくい。
【0051】
ここで、図5において破線で示すように、押圧ロール65が直線Zに対して荷重受け部材615から遠い側に設けられる場合、ステアリング機構614によって第2支持ロール613が変位されると、定着ベルト610が第1支持ロール612から離れる方向へ移動するのに伴って、押圧ロール65による第1支持ロール612に対する定着ベルト610の押し付けが不十分になるおそれがある。この場合、第1支持ロール612の外周面612Aに対して定着ベルト610が擦れ、定着ベルト610が摩耗するおそれがある。
【0052】
これに対し、本実施形態では、押圧ロール65が直線Zに対して荷重受け部材615に近い側に設けられ、または押圧ロール65がラップ領域L3の中間位置L3Cよりも下流側に設けられることで、第2支持ロール613が変位された場合であっても、押圧ロール65による第1支持ロール612に対する定着ベルト610の押し付けが不十分になることが抑制される。この結果、第1支持ロール612の外周面612Aに対して定着ベルト610が擦れることによる定着ベルト610の摩耗が抑制される。
【0053】
なお、本実施形態では、ステアリング機構614によって従動部の一例である第2支持ロール613を変位させる構成としている。ここで、定着ベルト610の移動方向について、駆動部の一例である第1支持ロール612を荷重受け部材615よりも上流側に設け、押圧ロール65が第1支持ロール612に対してラップ領域L3の中間位置L3Cよりも下流側で定着ベルト610を押し付けるという観点からは、ステアリング機構614によって第1支持ロール612を変位させる構成としてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、定着ベルト610の移動方向について、駆動部の一例である第1支持ロール612を荷重受け部材615よりも上流側に設け、従動部の一例でありステアリング機構614により変位される第2支持ロール613を荷重受け部材615よりも下流側に設けている。ここで、第1支持ロール612の回転軸612Bと第2支持ロール613の回転軸613Bとを結んだ直線Zに対して荷重受け部材615に近い部分で、押圧ロール65が定着ベルト610を第1支持ロール612に押し付けるという観点からは、第1支持ロール612を荷重受け部材615よりも下流側に設け、第2支持ロール613を荷重受け部材615よりも上流側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
60…定着装置、61…定着ベルトモジュール、62…加圧ロール、65…押圧ロール、100…画像形成装置、610…定着ベルト、612…第1支持ロール、613…第2支持ロール、614…ステアリング機構、615…荷重受け部材、N…ニップ部
図1
図2
図3
図4
図5