(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/00 20060101AFI20221109BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20221109BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20221109BHJP
A47C 5/12 20060101ALI20221109BHJP
A47C 4/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A47C7/00 Z
A47C7/40
A47C7/54
A47C5/12
A47C4/02 B
A47C4/02 D
(21)【出願番号】P 2018183076
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸行
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】住谷 諭史
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-058149(JP,U)
【文献】特開2010-264133(JP,A)
【文献】実開昭50-033109(JP,U)
【文献】実開昭51-150847(JP,U)
【文献】特開2014-226327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0036266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00
A47C 7/40
A47C 7/54
A47C 5/12
A47C 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に延びた四本の脚を連結材を介して互いに結合して一体化したベース部を有し、このベース部の上に背凭れ、座、及び、左右の肘掛けを含んだ着座者支持要素を取り付けてなる椅子であって、
前記着座者支持要素の内、前記背凭れ及び前記左右の肘掛けが合成樹脂を主体にして一体的に作られた背肘構造体を構成したものであり、
前記背凭れの下端部及び前記肘掛けの先端部に前記ベース部への取付部がそれぞれ設けられている
ものであり、
二本の前脚及び後脚により前記四本の脚を構成したものであり、
前記前脚及び後脚が、それぞれパイプ材により作られた前脚本体及び後脚本体を備えたものであり、
前記前脚本体及び後脚本体の上端部にそれぞれ形成された上端内径部に前記取付部を挿入し、前記ベース部と前記背肘構造体とを互いに連結しているものであり、
前記前脚本体及び後脚本体の各上端部の外径と、前記肘掛けにおける肘掛け本体の外径及び前記背凭れにおける本体支持フレームの外径とが一致するように設定されており、前記四本の脚と前記背肘構造体とが段差なく略連続して連結されているものであり、
前記背凭れが、背凭れ本体と、この背凭れ本体の両側部から下方に延出した前記本体支持フレームとを備えたものであり、
前記後脚と前記本体支持フレームとの接続部分が、前記座における後端角部近傍に位置している椅子。
【請求項2】
前記四本の脚における互いの水平方向の離間距離が、上端部から下端部に向かって漸次長くなるように設定されている請求項1記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パイプ材を使用した椅子として、四本の脚と、これら四本の脚を構成する前脚と後脚の上端部間に架設された肘当てを有したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この椅子では、四本の脚と肘当てによって一体化したベース部が構成されている。椅子は、ベース部に対して、座や背凭れを取り付け得るものとなっている。
【0003】
ところが、このような構成の椅子では、ベース部と背凭れとの取付領域を適切かつ十分に確保し難いという不具合を有している。すなわち、ベース部は、その構造上、背凭れの取付領域を適切に確保し難いため、背凭れの取付強度を確保し難いものとなっている。
【0004】
さらに、ベース部は、その構造からして背凭れとの取付部分の外観を好適なものとし難く、張地等により取付部分を覆い隠す必要が生ずるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、一体化されたベースに対して、座、背凭れ、及び、肘掛けを含む着座者支持要素を見栄えよく且つ取付強度に優れた態様で取り付け得る構成をなした椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に係る発明は、縦方向に延びた四本の脚を連結材を介して互いに結合して一体化したベース部を有し、このベース部の上に背凭れ、座、及び、左右の肘掛けを含んだ着座者支持要素を取り付けてなる椅子であって、前記着座者支持要素の内、前記背凭れ及び前記左右の肘掛けが合成樹脂を主体にして一体的に作られた背肘構造体を構成したものであり、前記背凭れの下端部及び前記肘掛けの先端部に前記ベース部への取付部がそれぞれ設けられているものであり、二本の前脚及び後脚により前記四本の脚を構成したものであり、前記前脚及び後脚が、それぞれパイプ材により作られた前脚本体及び後脚本体を備えたものであり、前記前脚本体及び後脚本体の上端部にそれぞれ形成された上端内径部に前記取付部を挿入し、前記ベース部と前記背肘構造体とを互いに連結しているものであり、前記前脚本体及び後脚本体の各上端部の外径と、前記肘掛けにおける肘掛け本体の外径及び前記背凭れにおける本体支持フレームの外径とが一致するように設定されており、前記四本の脚と前記背肘構造体とが段差なく略連続して連結されているものであり、前記背凭れが、背凭れ本体と、この背凭れ本体の両側部から下方に延出した前記本体支持フレームとを備えたものであり、前記後脚と前記本体支持フレームとの接続部分が、前記座における後端角部近傍に位置している椅子である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記四本の脚における互いの水平方向の離間距離が、上端部から下端部に向かって漸次長くなるように設定されている請求項1記載の椅子である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、一体化されたベースに対して、座、背凭れ、及び、肘掛けを含む着座者支持要素を見栄えよく且つ取付強度に優れた態様で取り付け得る構成をなした椅子を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~6を参照して説明する。
【0016】
この実施形態は、本発明を会議等において好適に使用し得る椅子Aに適用したものである。
【0017】
椅子Aは、縦方向に延びた四本の脚である左右の前脚1及び左右の後脚2を連結材である前連結材3、後連結材4、及び、左右の側連結材5、6を介して互いに結合して一体化したベース部Bを有し、ベース部Bの上に背凭れ7、左右の肘掛け8、及び、座9を含んだ着座者支持要素Yを取り付けてなるものである。そして、着座者支持要素Yの内、背凭れ7、及び、左右の肘掛け8が合成樹脂を主体にして一体的に作られた背肘構造体Kを構成したものである。背凭れ7の下端部、及び、肘掛け8の先端部には、ベース部Bへの取付部たる被挿入部73、82が設けられている。
【0018】
ここで、「合成樹脂を主体にしている」というのは、合成樹脂を主材料とするが、その他の材料として強度を高めるための金属材等を含んだものであってもよいという意味である。
【0019】
以下、この椅子Aについて詳述する。
【0020】
前脚1は、パイプ材により作られた前脚本体11と、前脚本体11の下端に取り付けられたキャスタ12とを備えたものである。前脚本体11の上端部には、肘掛け8の先端部に設けた取付部たる被挿入部82が挿入される上端内径部11aを備えている。
【0021】
後脚2は、パイプ材により作られた後脚本体21と、後脚本体21の下端に取り付けられたキャスタ22とを備えたものである。後脚本体21の上端部には、背凭れ7の下端部に設けた取付部たる被挿入部73が挿入される上端内径部21aを備えている。
【0022】
四本の脚である左右の前脚1及び左右の後脚2における互いの水平方向の離間距離は、上端部から下端部に向かって漸次長くなるように設定されている。
【0023】
前連結材3は、左右方向に延びたパイプ材により作られたものである。前連結材3は、左右の側連結材5、6間を繋ぐものである。前連結材3は、後連結材4と略平行に配されている。前連結材3は、後連結材4よりも前に配されている。前連結材3の左右両端部は左右の側連結材5、6に溶接されている。
【0024】
後連結材4は、左右方向に延びたパイプ材により作られたものである。後連結材4は、左右の側連結材5、6間を繋ぐものである。後連結材4は、前連結材4と略平行に配されている。後連結材4は、前連結材3よりも後に配されている。後連結材4の左右両端部は左右の側連結材5、6に溶接されている。後連結材4は、座9を通常位置と跳ね上げ位置との間で回転可能に支持している。すなわち、後連結部4の左右方向中間部は座9の回転軸を兼ねたものとなっている。
【0025】
左右の側連結材5、6は、前後方向に延びたパイプ材により作られたものである。左右の側連結材5、6は、前脚1と後脚2とを繋ぐものである。左右の側連結材5、6の前端部は前脚本体11に溶接されており、左右の側連結材5、6の後端部は後脚本体21に溶接されている。
【0026】
背肘構造体Kは、背凭れ7と肘掛け8とを、合成樹脂を主体に一体的に形成されている。
【0027】
背凭れ7は、正面視において横長矩形状をなし、板状に形成された背凭れ本体71と、背凭れ本体71の両側部から下方に延出した柱状の本体支持フレーム72と、本体支持フレーム72の下端部から下方に向けて突設された取付部たる被挿入部73とを備えている。
【0028】
背凭れ本体71は、背面側から見てパイプ材の外形を有し左右の側端部及び上端部を囲うとともに左右の両下端部が本体支持フレーム72の上端部に連続する周枠部と、この周枠部の内側に配された板状部とを備えている。被挿入部73は、本体支持フレーム72よりも小径に設定された柱状のものである。本体支持フレーム72の下端から下方に延出した被挿入部73は、上下方向に延びる凹み部73aが間隔を空けて複数形成されており、後脚2の上端内径部21aに挿入されやすく構成されている。
【0029】
肘掛け8は、背凭れ7から前方に延出し上面が肘当てとして機能する肘掛け本体81と、肘掛け本体81の先端部から下方に向けて突設された取付部たる被挿入部82とを備えている。
【0030】
肘掛け本体81は、基端部たる後端部が背凭れ本体71の下端部における左右の外側面に接続している。肘掛け本体81は、背凭れ7から前方に向かって側面視において略水平に延出する水平延出部分81aと、平面視において水平延出部分81aの先端部から内方に向けて屈曲しており、且つ、正面視及び側面視において内方に凸をなすように湾曲線を描いて下方に延びた下延出部分81bとを備えている。下延出部分81bの下端から下方に延出した被挿入部82は、上下方向に延びる凹み部82aが間隔を空けて複数形成されており、前脚1の上端内径部11aに挿入されやすく構成されている。
【0031】
座9は、合成樹脂により作られたものである。座9は、上面に着座面を形成した座本体91と、座本体91の下面に設けられ回転軸として機能する後連結材4の左右方向中間部を支持する軸支持部92とを備えている。なお、座9の上面及び周縁部は、必要に応じて図示しない表皮材により被覆されるようになっている。
【0032】
しかして、背凭れ7及び肘掛け8を一体的に構成してなる背肘構造体Kは、当該背肘構造体Kに設けた取付部たる被挿入部73、82を、ベース部Bに設けた上端内径部21a、11aに挿入することによって、ベース部Bに連結し得るものとなっている。
【0033】
また、この実施形態では、前脚本体11における上端部の外径と、肘掛け本体81の外径とが略一致する値に設定されており、後脚本体21における上端部の外径と、背凭れ7の本体支持フレーム72の外径とが略一致する値に設定されている。このため、四本の脚である左右の前脚1と左右の後脚2と背肘構造体Kとが接続部分において段差を生じさせることもなく外表面が略面一に連続する状態で連結されたものとのなっている。
【0034】
なお、この実施形態の椅子Aは、左右の前脚1と肘掛け本体81における下延出部分81bとの接続部分が、水平延出部分81aから下方に離れた箇所に位置している。また、左右の後脚2と背凭れ7における本体支持フレーム72との接続部分が、座9における後端角部近傍に位置している。このため、着座者に触れる部分は、背肘構造体Kすなわち合成樹脂を主体に構成されたものとなっている。このため、この椅子Aであれば、着座者は、着座時において金属等の冷たさを感じさせることがなく、また、接続部分に着座者が触れにくくなるので段差などを感じさせ難いものとなっている。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Aは、縦方向に延びた四本の脚である左右の前脚1及び左右の後脚2を連結材である前連結材3、後連結材4、及び、左右の側連結材5、6を介して互いに結合して一体化したベース部Bを有している。そして、ベース部Bの上に、背凭れ7、左右の肘掛け8、及び座9を含んだ着座者支持要素Yを取り付けている。この着座者支持要素Yの内、背凭れ7、及び、左右の肘掛け8が合成樹脂を主体にして一体的に作られた背肘構造体Kを構成したものとなっている。背肘構造体Kを構成する背凭れ7の下端部、及び、肘掛け8の先端部にベース部Bへの取付部たる被挿入部73、82がそれぞれ設けられている。このため、一体化されたベース部Bに対して、座9、背凭れ7、及び、肘掛け8を含む着座者支持要素Yを見栄えよく且つ取付強度に優れた態様で取り付け得る構成をなした椅子Aを提供することができるものとなる。つまり、ベース部Bを一体化したものとし、当該一体化したベース部Bに対して着座者支持要素Yを取り付け得る構成をなしているため、シンプルな構造でありながら剛性に優れた椅子を実現し易いものとなっている。しかも、背凭れ7と左右一対の肘掛け8が合成樹脂を主体に一体的に構成されている。このため、本実施形態における背凭れ7の両側は、従来の如く背凭れと肘掛けの各取付部や背凭れと後脚との各取付部とが集中してしまう煩雑な構造になり難く、構造をシンプル化する設計の自由度に優れたものとなっている。しかも、本実施形態に示す構成のものであれば、ベース部Bに対する背肘構造体Kの取付部分が視覚的に目立ち難いものとしやすいため、取付部分を積極的に張地やカバー等を使用して隠す必要がないものとなっている。
【0036】
左右の前脚1及び後脚2により四本の脚を構成したものであり、前脚1及び後脚2が、それぞれパイプ材により作られた前脚本体11及び後脚本体21を備えたものである。そして、前脚本体11及び後脚本体21の上端部にそれぞれ形成された上端内径部11a、21aに取付部たる被挿入部82、73を挿入し、ベース部Bと背肘構造体Kとを互いに連結している。このため、四本の脚たる二本の前脚1及び後脚2は、前後連結材3、4及び左右の連結材5、6だけでなく、背肘構造体Kによっても互いに連結した形態を採るものとなるため椅子A全体として剛性が極めて高いものとなっている。
【0037】
前脚本体11及び後脚本体21の各上端部の外径と、肘掛け8における肘掛け本体81の外径及び背凭れ7における本体支持フレーム72の外径とが一致するように設定されている。そして、四本の脚たる左右の前脚1及び左右の後脚2と背肘構造体Kとが段差なく略連続して連結されている。このため、視覚的に良好な外観を損ねやすい段差が出現することなく連続した外観を創出し、見栄えの優れたものとなっている。
【0038】
左右の前脚1及び左右の後脚2における互いの水平方向の離間距離が、上端部から下端部に向かって漸次長くなるように設定されている。このため、背肘構造体Kと四本の脚1、2との接合部分すなわち背肘構造体Kの被挿入部73、82とベース部Bの上端内径部11a、21aは緩やかな下拡がりになるため、ベース部Bに対して背肘構造体Kを連結した後は、背肘構造体Kがベース部Bに対して外れにくい構成をなしている。
【0039】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0040】
背凭れや肘掛けの具体的形状は種々の形状を採用することができるものであり、上述した実施形態に示すものに限られるものではない。
【0041】
四本の脚を連結する連結材の構成も種々の構成を適用し得るものであり、上述した実施形態に示すものに限られるものではない。
【0042】
四本の脚における前脚及び後脚の下端部間を、ベースフレームにより繋いだものであってもよい。
【0043】
パイプ材は、延伸方向の何れの箇所においても略同じ外径寸法をなしているものに限られるものではない。例えば、パイプ材は、一端から他端に向かって漸次外形寸法が大きくなるように構成されたものであってもよい。
【0045】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
A…椅子
B…ベース部
Y…着座者支持要素
K…背肘構造体
1…前脚
2…後脚
7…背凭れ
8…肘掛け