(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】鏡の固定構造
(51)【国際特許分類】
A47G 1/16 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
A47G1/16 B
A47G1/16 H
(21)【出願番号】P 2018183561
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018003862
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】蓮生 博人
(72)【発明者】
【氏名】長江 達志
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 章太
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-024266(JP,U)
【文献】特開昭59-069010(JP,A)
【文献】実開昭59-004278(JP,U)
【文献】特開平10-290719(JP,A)
【文献】登録実用新案第3057590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面が裏面の側に設けられた鏡を前記裏面に対向する被固定面に固定する鏡の固定構造であって、
前記反射面を形成する層がガラスの前記裏面の側に接触して設けられ、前記裏面と交差する側面に設けられた孔または溝を有する鏡と、
前記裏面の反対側に形成された表面には掛からない状態で前記孔または前記溝に係止される係止部を有し、両端部のうちの少なくとも一方の端部が前記被固定面に固定される固定具と、
を備え、
前記孔または前記溝が延びた方向において、前記孔または前記溝の長さと、前記係止部の長さと、は、前記側面の辺の長さに略等しいことを特徴とする鏡の固定構造。
【請求項2】
前記鏡が前記被固定面に固定された状態において、前記側面は、前記鏡の下側の端面を含むことを特徴とする請求項1に記載の鏡の固定構造。
【請求項3】
前記係止部は、前記孔または前記溝に係止される線材であることを特徴とする請求項1または2に記載の鏡の固定構造。
【請求項4】
前記線材は、前記孔または前記溝の内部に収まることを特徴とする請求項3に記載の鏡の固定構造。
【請求項5】
前記係止部は、前記孔または前記溝に係止される板状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の鏡の固定構造。
【請求項6】
前記鏡は、前記孔または前記溝が延びた方向の端部において、前記孔または前記溝が設けられていない残留部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の鏡の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定面に鏡を固定する鏡の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、例えば接着剤や両面接着テープなどを用いた接着により、壁面などの被固定面に鏡を固定する鏡の固定構造が存在する。しかし、鏡は、高温多湿な環境下に設置されることがある。また、例えば鏡の清掃時などにおいて、比較的強い力が鏡に加わることがある。そのため、被固定面に対して鏡をより安全あるいは確実に固定するためには、例えばネジなどの締結部材により被固定面に固定される固定具を用いて、鏡を支持し被固定面に固定することが望ましい。
【0003】
特許文献1には、壁面に鏡を取り付けるための鏡止め具が開示されている。特許文献1に記載された鏡止め具は、壁面に取付け固定される固定部と、上下方向に可動して鏡を保持する爪部と、下方向に爪部を弾性的に保持するように保持力が働くバネ部と、を備え、バネの弾性力を利用して鏡を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された鏡止め具は、爪部の爪掛部が鏡の上部に掛かるように設置される。すなわち、爪部の爪掛部は、鏡の表面の一部を覆う。そのため、鏡の意匠性の向上という点においては、改善の余地がある。また、爪掛部が鏡の表面の一部を覆うため、爪掛部に覆われた鏡の部分には例えば水垢などの汚れが溜まりやすく、清掃者は鏡の表面を拭きにくい。そのため、鏡の清掃性の向上という点においては、改善の余地がある。このように、鏡の固定構造に対しては、鏡の意匠性や清掃性の向上などといった鏡の付加価値の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、鏡の付加価値を向上させることができる鏡の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、反射面が裏面の側に設けられた鏡を前記裏面に対向する被固定面に固定する鏡の固定構造であって、前記裏面と交差する側面に設けられた孔または溝を有する鏡と、前記裏面の反対側に形成された表面には掛からない状態で前記孔または前記溝に係止される係止部を有し、両端部のうちの少なくとも一方の端部が前記被固定面に固定される固定具と、を備え、前記孔または前記溝が延びた方向において、前記孔または前記溝の長さと、前記係止部の長さと、は、前記側面の辺の長さに略等しいことを特徴とする鏡の固定構造により解決される。
【0008】
前記構成によれば、固定具の係止部は、鏡の表面には掛からない状態で鏡の側面に設けられた孔または溝に係止されている。また、孔または溝が延びた方向において、孔または溝の長さと、係止部の長さと、は、側面の辺の長さに略等しい。そのため、孔または溝、および固定具の係止部は、鏡の側面の辺に沿って一様に存在する。そのため、鏡の側面に孔または溝が設けられ、固定具の係止部が鏡の孔または溝に係止されていても、鏡の利用
者は、孔または溝、および固定具の係止部を認識し難い。また、鏡の表面においてすっきりとした外観が得られるため、鏡のデザインの自由度が高まる。そのため、鏡の意匠性を向上させることができる。また、固定具の係止部が鏡の表面には掛からない状態で鏡の孔または溝に係止されているため、例えば水垢などの汚れが鏡の表面に溜まることを抑えることができるとともに、清掃者は鏡の表面を拭きやすくなる。そのため、鏡の清掃性を向上させることができる。これにより、本発明による鏡の固定構造は、鏡の付加価値を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、前記鏡が前記被固定面に固定された状態において、前記側面は、前記鏡の下側の端面を含むことを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、鏡が被固定面に固定された状態において、固定具の係止部は、鏡の下側の端面(側面)に形成された孔または溝に係止される。そのため、固定具は、鏡の側面のうちの少なくとも下側の端面(側面)を支持することができる。これにより、本発明による鏡の固定構造は、鏡を安定して被固定面に固定することができる。
【0011】
好ましくは、前記係止部は、前記孔または前記溝に係止される線材であることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、係止部は、線材によって形成され、孔または溝に係止される。そのため、係止部を小さくすることができ、係止部を見えにくくしたり目立たなくしたりすることができる。これにより、鏡の利用者は、孔または溝、および固定具の係止部をより一層認識し難くなる。これにより、鏡の意匠性をより一層向上させることができる。
【0013】
好ましくは、前記線材は、前記孔または前記溝の内部に収まることを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、線材は、孔または溝の内部に収まる。すなわち、孔または溝が延びた方向に沿ってみたときに、線材の高さは、孔または溝の深さ以下である。このように、線材が孔または溝の内部に収まることにより、固定具は、鏡の表面の側から見えにくい。これにより、鏡の意匠性をより一層向上させることができる。
【0015】
好ましくは、前記係止部は、前記孔または前記溝に係止される板状部材であることを特徴とする。
【0016】
前記構成によれば、係止部が孔または溝に係止される板状部材であるため、すっきりとした外観が得られ、鏡の利用者は、固定具の係止部を認識し難い。
【0017】
好ましくは、前記鏡は、前記孔または前記溝が延びた方向の端部において、前記孔または前記溝が設けられていない残留部を有することを特徴とする。
【0018】
前記構成によれば、孔または溝が延びた方向において、孔または溝は、鏡の一方の側面から鏡の他方の側面までは延びていない。すなわち、孔または溝が延びた方向の端部には、孔または溝が設けられていない。そのため、鏡に孔または溝が設けられ、固定具の係止部が鏡の孔または溝に係止されていても、鏡の利用者は、孔または溝、および固定具の係止部を鏡の側面から認識し難い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鏡の付加価値を向上させることができる鏡の固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る鏡の固定構造を表す正面図である。
【
図3】
図2に表した矢印A11の方向からみた鏡の側面図である。
【
図4】
図2に表した切断面A1-A1における断面図である。
【
図5】
図4に表した領域A21を拡大した拡大図である。
【
図6】本実施形態の変形例に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
【
図7】本変形例にかかる鏡の固定構造を表す正面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
【
図9】本実施形態に係る鏡の固定構造を表す正面図である。
【
図10】
図9に表した切断面A2-A2における断面図である。
【
図11】本実施形態の変形例に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
【
図12】本変形例にかかる鏡の固定構造を表す正面図である。
【
図13】本実施形態の固定具の第1変形例を説明する断面図である。
【
図14】本実施形態の固定具の第2変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0022】
発明の基本態様
図1~
図7に示される本発明による態様の一つは、固定具4によって鏡3、3Cを被固定部材9の被固定面91に固定する鏡の固定構造2、2Bに関する。
図8~
図12に示される本発明による別の態様は、固定具4Aによって鏡3、3Dを被固定部材9の被固定面91に固定する鏡の固定構造2A、2Cに関する。
【0023】
固定具4、4Aの係止部41、41Aは、鏡3、3C、3Dの表面36には掛からない状態で鏡3、3C、3Dの側面37、38に設けられた孔または溝371、371C、371D、381、381C、381Dに係止されている。また、孔または溝371、371C、371D、381、381C、381Dが延びた方向において、孔または溝371、371C、371D、381、381C、381Dの長さと、係止部41、41Aの長さと、は、側面37、38の辺378、388の長さL5、L6、L9、L10に略等しい。そのため、孔または溝371、371C、371D、381、381C、381D、および固定具4、4Aの係止部41、41Aは、鏡3、3C、3Dの側面37、38の辺378、388に沿って一様に存在する。そのため、鏡3、3C、3Dの側面37、38に孔または溝371、371C、371D、381、381C、381Dが設けられ、固定具4、4Aの係止部41、41Aが鏡3、3C、3Dの孔または溝371、371C、371D、381、381C、381Dに係止されていても、鏡3、3C、3Dの利用者は、孔または溝371、371C、371D、381、381C、381D、および固定具4、4Aの係止部41、41Aを認識し難い。また、鏡3、3C、3Dの表面36においてすっきりとした外観が得られるため、鏡3、3C、3Dのデザインの自由度が高まる。そのため、鏡3、3C、3Dの意匠性を向上させることができる。また、固定具4、4Aの係止部41、41Aが鏡3、3C、3Dの表面36には掛からない状態で鏡3、3C、3Dの孔または溝371、371C、371D、381、381C、381Dに係止されているため、例えば水垢などの汚れが鏡3、3C、3Dの表面36に溜まることを抑えることができるとともに、清掃者は鏡3、3C、3Dの表面36を拭きやすくなる。そのため、鏡3、3C、3Dの清掃性を向上させることができる。このように、本発明による鏡の固定構造2、2A、2B、2Cは、鏡3、3C、3Dの付加価値を向上させることができるとの優れた利点を有するものである。
以下、定義の述べた後、本発明による鏡の固定構造のさらに詳細を説明する。
【0024】
定義
鏡
本発明による鏡の固定構造によって固定される鏡は、反射面が鏡の裏面の側に設けられたいわゆる「裏面鏡」であり、例えば浴室や脱衣室や洗面化粧室などの高温多湿な環境下に設置されることがある。鏡の具体的な構造については、図面を参照しながら後述する。
【0025】
孔または溝
本発明による鏡の固定構造によって固定される鏡は、鏡の側面に設けられた孔または溝を有する。孔または溝は、好適には、非貫通の孔または溝である。非貫通とは、一方の端部から他方の端部に向かって掘り下げられて孔または溝が形成されるが、他方の端部にまで至らない状態を意味する。
【0026】
本発明において、鏡が有する非貫通の溝とは、凹条を意味する。なお、非貫通の溝は、非貫通の孔であってもよい。非貫通の孔の形状は、特には限定されず、例えば、円形、楕円、三角形、四角形、多角形様であってよい。このように、本発明において、溝と孔とは、明確に区別される必要はなく、例えば四角形の非貫通の孔が横長に形成されて溝と解されるような形状であってもよい。本願明細書において、固定具の係止部が挿入かつ係止可能である限りにおいて、孔または溝と呼ぶ。
【0027】
孔または溝が延びた方向に沿ってみたときの孔または溝の形状は、三角形(V溝形状)、四角形(矩形状)、半円形(U溝形状)であってもよく、孔または溝の入り口、すなわち孔または溝の開口部の開口面積よりも開口部の奥における開口面積が大とされた、アリ穴、つまり逆ハの字の形状であってもよい。また、孔または溝が延びた方向に沿ってみたときの孔または溝の形状は、開口部より深さ方向に一定の距離の間、開口面積が変化せず、さらに深い位置では開口面積を入り口の開口面積より大とされた形状であってもよい。
【0028】
被固定部材および被固定面
本発明による鏡の固定構造において、鏡が固定される部材あるいは構造物を「被固定部材」という。被固定部材としては、例えば浴室や脱衣室や洗面化粧室などの壁が挙げられる。ただし、被固定部材は、浴室、脱衣室および洗面化粧室の壁だけには限定されない。また、本発明による鏡の固定構造において、鏡が固定される被固定部材の表面を「被固定面」という。被固定面としては、例えば浴室や脱衣室や洗面化粧室など壁の表面であって、鏡の利用者が存在する側の壁の表面(内壁面)が挙げられる。ただし、被固定面は、浴室、脱衣室および洗面化粧室の内壁面だけには限定されない。
【0029】
本発明による鏡の固定構造
以下、本発明による鏡の固定構造について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る鏡の固定構造を表す正面図である。
図3は、
図2に表した矢印A11の方向からみた鏡の側面図である。
図4は、
図2に表した切断面A1-A1における断面図である。
図5は、
図4に表した領域A21を拡大した拡大図である。
【0030】
本実施形態に係る鏡の固定構造2は、鏡3と、固定具4と、を備える。本実施形態に係る鏡の固定構造2では、2つの固定具4が用いられている。具体的には、鏡3の側面37の溝371に係止された固定具4と、鏡3の側面38の溝381に係止された固定具4と、が用いられている。ただし、固定具4の設置数は、2つには限定されない。
【0031】
鏡3は、反射面が鏡3の裏面の側に設けられたいわゆる「裏面鏡」である。すなわち、
図3に表したように、鏡3は、ガラス31と、銀(Ag)を含む銀層32と、銅(Cu)を含む銅層33と、バックコート層34と、を有する。ガラス31と、銀層32と、銅層33と、バックコート層34と、は、鏡3の表面36から鏡3の裏面35に向かってこの順に配置されている。なお、後述するように、バックコート層34の裏面側には、オーバーコート層がさらに設けられていてもよい。
【0032】
本願明細書において「鏡の表面」とは、鏡3が被固定部材9の被固定面91に固定された状態において鏡3の前に存在する利用者に対向する面をいう。言い換えれば、「鏡の表面」とは、鏡3を利用する利用者が鏡3を眺めたり覗いたりする側の面をいう。本願明細書において「鏡の裏面」とは、鏡3の表面36とは反対側の面であって、鏡3が被固定面91に固定された状態において被固定面91に対向する面をいう。
【0033】
表面36から裏面35に向かう方向のガラス31の寸法(厚さ)L1は、例えば約5mm程度である。表面36から裏面35に向かう方向の銀層32の寸法(厚さ)L2は、例えば約80nm程度である。表面36から裏面35に向かう方向の銅層33の寸法(厚さ)L3は、例えば約40nm程度である。表面36から裏面35に向かう方向のバックコート層34の寸法(厚さ)L4は、例えば約50μm程度である。
【0034】
図3に表したように、鏡3の反射面311は、銀層32の面のうちで鏡3の表面36の側に配置された面であり、ガラス31に接触している。
図3に表した矢印A12および矢印A13のように、鏡3の表面36からガラス31の内部に入射した光の一部は、反射面311において反射し、ガラス31の内部を進行して鏡3の表面36から放出される。
【0035】
銅層33は、銀層32を保護する機能を有し、銀層32が例えば塩化物や硫化物などと反応して腐食することを抑える。すなわち、銅層33は、犠牲防蝕効果を発揮する。また、バックコート層34は、銅層33の防蝕効果よりも高い防蝕効果を有する塗料を含み、銀層32の腐食をより一層抑える。なお、本実施形態の鏡3の構造は、
図3に表した例には限定されず、例えば、防蝕効果を有する塗料を含むオーバーコート層がバックコート層34の裏面の側にさらに積層された構造であってもよい。
【0036】
図1、
図2、
図4および
図5に表したように、鏡3は、裏面35および表面36と交差する側面37に設けられた溝371と、裏面35および表面36と交差する側面38に設けられた溝381と、を有する。側面37、38は、例えば「木口」や「こば」など呼ばれる部分であり、鏡3の主面(表面36および裏面35)の側方に形成された面である。本実施形態の側面37、38は、本発明の「裏面と交差する側面」に相当する。本実施形態においては、鏡3が被固定面91に固定された状態において、側面37は鏡3の上側の端面(上端面)に相当し、側面38は鏡3の下側の端面(下端面)に相当する。すなわち、本発明の「側面」は、裏面35と交差する側面のうち少なくとも側面38(下端面)を含む。溝371、381は、表面36、裏面35および側面37、38と交差する一方の側面391から、側面391に対向する他方の側面392まで延びている。
【0037】
固定具4は、金属および樹脂の少なくともいずれかを含む材料により形成された線材であり、溝371、381に係止された係止部41を有する。
図2に表したように、係止部41は、固定具4のうちで鏡3の溝371、381に係止された部分である。
【0038】
ここで、鏡の表面の一部を覆う止め具により、鏡が被固定面に固定された場合には、鏡の意匠性が損なわれることがある。また、止め具により覆われた鏡の部分には、例えば水垢などの汚れが溜まりやすく、清掃者は鏡の表面を拭きにくい。そのため、鏡の清掃性が損なわれることがある。
【0039】
これに対して、本実施形態に係る鏡の固定構造2では、
図4に表したように、固定具4の係止部41は、鏡3の表面36には掛からない状態で溝371に係止されている。すなわち、固定具4は、鏡3の表面36のいずれの部分も覆っていない。そして、固定具4の一方の端部42は、例えばねじなどの締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。端部42とは反対側の他方の端部43は、例えばねじなどの締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。これと同様にして、
図4に表したように、鏡3の下端面(側面38)に配置された固定具4の係止部41は、鏡3の表面36には掛からない状態で溝381に係止されている。そして、固定具4の両端部(端部42、43)は、締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。このように、本実施形態に係る鏡の固定構造2によれば、鏡3は、係止部41が鏡3の側面37、38の溝371、381に係止された固定具4により、被固定面91に固定される。
【0040】
また、
図2に表したように、溝371が延びた方向において、溝371の長さと、係止部41の長さと、は、側面37の辺378の長さL5に略等しい。本願明細書において「略等しい」とは、比較対象物の長さが互いに80%以上、100%以下の範囲であること、あるいは比較対象物の長さが互いに80%以上、100%未満の範囲であることをいう。具体的には、本実施形態では、溝371の長さと、係止部41の長さと、は、側面37の辺378の長さL5の80%以上、100%以下である。すなわち、係止部41は、一方の側面391から他方の側面392まで延びて形成された溝371の略全体にわたって配置されているとともに係止されている。また、溝381が延びた方向において、溝381の長さと、係止部41の長さと、は、側面38の辺388の長さL6に略等しい。具体的には、本実施形態では、溝381の長さと、係止部41の長さと、は、側面38の辺388の長さL6の80%以上、100%以下である。すなわち、係止部41は、一方の側面391から他方の側面392まで延びて形成された溝381の略全体にわたって配置されているとともに係止されている。
【0041】
なお、側面37、38と側面391とが交差する角部、および側面37、38と側面392とが交差する角部の少なくともいずれかに面取り部が設けられている場合には、溝371、381が延びた方向において、溝371、381の長さと、係止部41の長さと、が、側面37、38の辺378、388の長さL5、L6に完全には等しくならないことがある。ただし、本願明細書においては、係止部41が溝371、381の略全体にわたって配置されているとともに係止されている限りにおいて、側面37、38と側面391とが交差する角部、および側面37、38と側面392とが交差する角部の少なくともいずれかに面取り部が設けられている場合であっても、溝371、381が延びた方向において、溝371、381の長さと、係止部41の長さと、は、側面37、38の辺378、388の長さL5、L6に略等しいものとする。
【0042】
係止部41が側面37(上端面)の溝371に係止された形態は、係止部41が側面38(下端面)の溝381に係止された形態と同様である。また、側面37の溝371に係止された固定具4による鏡3の固定構造は、側面38の溝381に係止された固定具4による鏡3の固定構造と同様である。そこで、本実施形態にかかる鏡の固定構造2についての以下の説明では、側面37の溝371に係止された固定具4による鏡3の固定構造を主として例に挙げる。
図5に表したように、係止部41は、溝371の内部に収まっている。すなわち、溝371が延びた方向に沿ってみたときに、係止部41(線材)の高さL7(線径)は、溝371の深さL8以下である。
【0043】
本実施形態に係る鏡の固定構造2によれば、溝371が延びた方向において、溝371の長さと、係止部41の長さと、は、側面37の辺378の長さL5に略等しい。そのため、溝371、および固定具4の係止部41は、鏡3の側面37の辺378に沿って一様に存在する。そのため、鏡3の側面37に溝371が設けられ、固定具4の係止部41が鏡3の溝371に係止されていても、鏡3の利用者は、溝371、および固定具4の係止部41を認識し難い。また、鏡3の表面36においてすっきりとした外観が得られるため、鏡3のデザインの自由度が高まる。そのため、鏡3の意匠性を向上させることができる。また、固定具4の係止部41が鏡3の表面36には掛からない状態で鏡3の溝371に係止されているため、例えば水垢などの汚れが鏡3の表面36に溜まることを抑えることができるとともに、清掃者は鏡3の表面36を拭きやすくなる。そのため、鏡3の清掃性を向上させることができる。これにより、本実施形態に係る鏡の固定構造2は、鏡3の付加価値を向上させることができる。
【0044】
また、鏡3が被固定面91に固定された状態において、固定具4の係止部41は、裏面35と交差する側面のうち少なくとも側面38(下端面)に形成された溝381に係止される。そのため、固定具4は、鏡3の側面のうちの少なくとも下端面を支持することができる。これにより、本実施形態に係る鏡の固定構造2は、鏡3を安定して被固定面91に固定することができる。
【0045】
また、係止部41は、線材によって形成され、溝371に係止される。そのため、係止部41を小さくすることができ、係止部41を見えにくくしたり目立たなくしたりすることができる。これにより、鏡3の利用者は、溝371、および固定具4の係止部41をより一層認識し難くなる。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。
【0046】
線材によって形成された係止部41が溝371の内部に収まるため、固定具4は、鏡3の表面36の側から見えにくい。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。
【0047】
さらに、
図4に表したように、鏡3は、表面36と側面37とが交差する角部に設けられた面取り部372と、表面36と側面38とが交差する角部に設けられた面取り部382と、を有していてもよい。面取り部372、382は、平面や曲面を有しており、複数の曲面が並んだ波面を有していてもよい。すなわち、
図4および
図5に表した切断面(溝371、381が延びた方向に対して交差する切断面)において、面取り部372、382は、直線状や曲線状を呈しており、複数の曲線が並んだ波線を呈していてもよい。この場合には、光が面取り部372において屈折したり反射したりする。あるいは、面取り部372、382が波面を有する場合には、面取り部372、382において乱反射の効果が得られる。そのため、鏡3の側面37に溝371が設けられ、固定具4の係止部41が鏡3の溝371に係止されていても、溝371および係止部41は、鏡3の表面36の側から見えにくい。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。なお、
図5に表したように、鏡3は、裏面35と側面37とが交差する角部に設けられた面取り部373を有していてもよい。
【0048】
図5に表したように、例えば、面取り部372の面取り角A31(表面36と面取り部372との間の角度)は、45度である。ただし、面取り角A31は、45度には限定されない。表面36に沿った方向において、面取り部372と表面36とが交差する交差点374と、側面37と、の間の距離(面取り深さ)L11は、溝371の深さL8よりも長い(深い)。
【0049】
また、
図5に表した例では、溝371が延びた方向に対して交差する切断面(
図4および
図5参照)において、面取り部372は、直線状を呈する。すなわち、面取り部372は、平面を有する。そのため、プリズムと同様の効果が面取り部372において得られる。面取り部372の一例は、鏡3の表面36に対する傾斜角度(面取り角)が45度の傾斜面(いわゆるC面)を有する。そのため、溝371および係止部41は、鏡3の表面36の側からより一層見えにくい。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。また、面取り部372が波面を有する場合には、面取り部372において乱反射の効果が得られる。この場合においても、溝371および係止部41は、鏡3の表面36の側からより一層見えにくい。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。
【0050】
また、表面36に沿った方向において、面取り部372の面取り深さL11が溝371の深さL8よりも深いため、溝371および係止部41は、鏡3の表面36の側からより一層見えにくい。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。L11>L8の例においては、鏡3の表面36における傾斜角度(面取り角)A31を45度以上として、面取り部372と側面37とが交差する交差点379a(辺378のうちの任意点に相当)から、溝371の手前側(鏡3の表面36の側)の内壁面と側面37とが交差する交差点379bまでの距離(厚さ)をL12としたときに、L12>L8となるようにすると、溝371および係止部41が鏡3の表面36の側からより一層見えにくくなるので、より好ましい。
【0051】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
なお、本実施形態の変形例に係る鏡の固定構造2Bの構成要素が、
図1~
図5に関して前述した本実施形態に係る鏡の固定構造2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図6は、本実施形態の変形例に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
図7は、本変形例にかかる鏡の固定構造を表す正面図である。
【0052】
本変形例に係る鏡の固定構造2Bは、鏡3Cと、固定具4と、を備える。本変形例の固定具4は、
図1~
図5に関して前述した本実施形態の固定具4と同様である。つまり、本変形例の固定具4は、金属および樹脂の少なくともいずれかを含む材料により形成された線材であり、係止部41を有する。
【0053】
本変形例の鏡3Cは、裏面35および表面36と交差する側面37に設けられた溝371Cと、裏面35および表面36と交差する側面38に設けられた溝381Cと、を有する。
図6に表したように、溝371Cは、一方の側面391から他方の側面392までは延びておらず、側面37の中央部から側面391、392の近傍まで延びた後、裏面35(
図3参照)に向かって屈曲し、裏面35まで延びている。すなわち、溝371Cが延びた方向に沿ってみたとき、あるいは鏡3Cの側面37の辺378に沿ってみたときに、鏡3Cの側面37の両端部には、溝371Cが設けられていない残留部375が設けられている。
【0054】
また、
図6に表したように、溝381Cは、一方の側面391から他方の側面392までは延びておらず、側面38の中央部から側面391、392の近傍まで延びた後、裏面35に向かって屈曲し、裏面35まで延びている。すなわち、溝381Cが延びた方向に沿ってみたとき、あるいは鏡3Cの側面38の辺388に沿ってみたときに、鏡3Cの側面38の両端部には、溝381Cが設けられていない残留部385が設けられている。
【0055】
図7に表したように、溝371Cが延びた方向において、溝371Cの長さL21と、係止部41の長さと、は、側面37の辺378の長さL5に略等しい。具体的には、本変形例では、溝371Cの長さL21と、係止部41の長さと、は、側面37の辺378の長さL5の80%以上、100%未満である。つまり、溝371Cが延びた方向において、溝371Cの長さL21は、側面37の辺378の長さL5よりもわずかに短い。
【0056】
また、溝381Cが延びた方向において、溝381Cの長さL22と、係止部41の長さと、は、側面38の辺388の長さL6に略等しい。具体的には、本変形例では、溝381Cの長さL22と、係止部41の長さと、は、側面38の辺388の長さL6の80%以上、100%未満である。つまり、溝381Cが延びた方向において、溝381Cの長さL22は、側面38の辺388の長さL6よりもわずかに短い。
【0057】
本変形例に係る鏡の固定構造2Bでは、固定具4の係止部41は、鏡3Cの表面36には掛からない状態で溝371Cに係止されている。すなわち、固定具4は、鏡3Cの表面36のいずれの部分も覆っていない。そして、固定具4の一方の端部42は、溝371Cの一方の終端から裏面35の側に導かれ、例えばねじなどの締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。固定具4の他方の端部43は、溝371Cの他方の終端から裏面35の側に導かれ、例えばねじなどの締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。
【0058】
本変形例によれば、溝371C、381Cが延びた方向に沿ってみたとき、あるいは鏡3Cの側面37、38の辺378、388に沿ってみたときに、鏡3Cの側面37、38の両端部には、溝371C、381Cが設けられていない残留部375、385が設けられている。そのため、鏡3Cの側面37、38に溝371C、381Cが設けられ、固定具4の係止部41が鏡3Cの溝371C、381Cに係止されていても、鏡3Cの利用者は、溝371C、381C、および固定具4の係止部41を鏡3Cの側面391、392から認識し難い。また、
図1~
図5に関して前述した本実施形態に係る鏡の固定構造2の効果と同様の効果が得られる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態に係る鏡の固定構造2Aの構成要素が、
図1~
図5に関して前述した第1実施形態に係る鏡の固定構造2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0060】
図8は、本発明の第2実施形態に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
図9は、本実施形態に係る鏡の固定構造を表す正面図である。
図10は、
図9に表した切断面A2-A2における断面図である。
【0061】
本実施形態に係る鏡の固定構造2Aは、鏡3と、固定具4Aと、を備える。本実施形態に係る鏡の固定構造2Aでは、2つの固定具4Aが用いられている。具体的には、側面37の溝371に係止された固定具4Aと、側面38の溝381に係止された固定具4Aと、が用いられている。ただし、固定具4Aの設置数は、2つには限定されない。
図8に表した鏡3は、第1実施形態に係る鏡の固定構造2に関して前述した鏡と同様である。
【0062】
固定具4Aは、例えば金属の板状部材のプレス加工に形成された金具であり、係止部41Aと、固定部42Aと、接続部43Aと、を有する。係止部41Aは、鏡3の側面37、38に形成された溝371、381に係止されている。すなわち、本実施形態の固定具4Aの係止部41Aは、本発明の「係止部」に相当する。固定部42Aは、鏡3の裏面35と、被固定面91と、の間に配置され、例えばねじなどの締結部材5により被固定面91に固定される。接続部43Aは、係止部41Aと固定部42Aとの間に設けられるとともに係止部41Aと固定部42Aとに接続され、側面37、38のうちの少なくとも一部を覆う。すなわち、係止部41Aは、接続部43Aを介して固定部42Aに接続されている。
【0063】
図8に表したように、固定具4Aの係止部41Aは、鏡3の表面36には掛からない状態で溝371に係止されている。すなわち、固定具4Aは、鏡3の表面36のいずれの部分も覆っていない。そして、固定具4Aの固定部42Aは、例えばねじなどの締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。これと同様にして、
図8に表したように、鏡3の下端面に配置された固定具4Aの係止部41Aは、鏡3の表面36には掛からない状態で溝381に係止されている。そして、固定具4Aの固定部42Aは、例えばねじなどの締結部材5により被固定部材9の被固定面91に固定される。このように、本実施形態に係る鏡の固定構造2Aによれば、鏡3は、係止部41Aが鏡3の側面37、38の溝371、381に係止された固定具4Aにより、被固定面91に固定される。
【0064】
本実施形態に係る鏡の固定構造2Aでは、
図9に表したように、溝371が延びた方向において、溝371の長さと、係止部41Aの長さと、は、側面37の辺378の長さL9に略等しい。具体的には、本実施形態では、溝371の長さと、係止部41Aの長さと、は、側面37の辺378の長さL9の80%以上、100%以下である。すなわち、係止部41Aは、一方の側面391から他方の側面392まで延びて形成された溝371の略全体にわたって配置されているとともに係止されている。また、溝381が延びた方向において、溝381の長さと、係止部41Aの長さと、は、側面38の辺388の長さL10に等しい。具体的には、本実施形態では、溝381の長さと、係止部41Aの長さと、は、側面38の辺388の長さL10の80%以上、100%以下である。すなわち、係止部41Aは、一方の側面391から他方の側面392まで延びて形成された溝381の略全体にわたって配置されているとともに係止されている。
【0065】
なお、第1実施形態に係る鏡の固定構造2に関して前述したように、本願明細書においては、係止部41Aが溝371、381の略全体にわたって配置されているとともに係止されている限りにおいて、側面37、38と側面391とが交差する角部、および側面37、38と側面392とが交差する角部の少なくともいずれかに面取り部が設けられている場合であっても、溝371、381が延びた方向において、溝371、381の長さと、係止部41Aの長さと、は、側面37、38の辺378、388の長さL9、L10に略等しいものとする。
【0066】
係止部41Aが側面37(上端面)の溝371に係止された形態は、係止部41Aが側面38(下端面)の溝381に係止された形態と同様である。また、側面37の溝371に係止された固定具4Aによる鏡3の固定構造は、側面38の溝381に係止された固定具4Aによる鏡3の固定構造と同様である。そこで、本実施形態にかかる鏡の固定構造2Aについての以下の説明では、側面37の溝371に係止された固定具4Aによる鏡3の
固定構造を主として例に挙げる。
【0067】
本実施形態に係る鏡の固定構造2Aによれば、溝371が延びた方向において、溝371の長さと、係止部41Aの長さと、は、側面37の辺378の長さL9に略等しい。そのため、溝371、および固定具4Aの係止部41Aは、鏡3の側面37の辺378に沿って一様に存在する。そのため、鏡3の側面37に溝371が設けられ、固定具4Aの係止部41Aが鏡3の溝371に係止されていても、鏡3の利用者は、溝371、および固定具4Aの係止部41Aを認識し難い。また、鏡3の表面36においてすっきりとした外観が得られるため、鏡3のデザインの自由度が高まる。そのため、鏡3の意匠性を向上させることができる。また、固定具4の係止部41Aが鏡3の表面36には掛からない状態で鏡3の溝371に係止されているため、例えば水垢などの汚れが鏡3の表面36に溜まることを抑えることができるとともに、清掃者は鏡3の表面36を拭きやすくなる。そのため、鏡3の清掃性を向上させることができる。これにより、本実施形態に係る鏡の固定構造2Aは、鏡3の付加価値を向上させることができる。
【0068】
また、鏡3が被固定面91に固定された状態において、固定具4Aの係止部41Aは、裏面35と交差する側面のうち少なくとも側面38(下端面)に形成された溝381に係止される。そのため、固定具4Aは、鏡3の側面のうちの少なくとも下端面を支持することができる。これにより、本実施形態に係る鏡の固定構造2Aは、鏡3を安定して被固定面91に固定することができる。
【0069】
さらに、
図10に表したように、鏡3は、表面36と側面37とが交差する角部に設けられた面取り部372と、表面36と側面38とが交差する角部に設けられた面取り部382と、を有していてもよい。面取り部372、382は、平面や曲面を有しており、複数の曲面が並んだ波面を有していてもよい。すなわち、
図10に表した切断面(溝371、381が延びた方向に対して交差する切断面)において、面取り部372、382は、直線状や曲線状を呈しており、複数の曲線が並んだ波線を呈していてもよい。この場合には、光が面取り部372において屈折したり反射したりする。あるいは、面取り部372、382が波面を有する場合には、面取り部372、382において乱反射の効果が得られる。そのため、鏡3の側面37に溝371が設けられ、固定具4Aの係止部41Aが鏡3の溝371に係止されていても、溝371および係止部41Aは、鏡3の表面36の側から見えにくい。これにより、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態の固定具4Aは、例えば金属の板状部材のプレス加工に形成された金具である。そのため、すっきりとした外観が得られ、鏡3の利用者は、固定具4Aの係止部41Aを認識し難い。
【0071】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
なお、本実施形態の変形例に係る鏡の固定構造2Cの構成要素が、
図8~
図10に関して前述した本実施形態に係る鏡の固定構造2Aの構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図11は、本実施形態の変形例に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
図12は、本変形例にかかる鏡の固定構造を表す正面図である。
【0072】
本変形例に係る鏡の固定構造2Cは、鏡3Dと、固定具4Aと、を備える。本変形例の固定具4Aは、
図8~
図10に関して前述した本実施形態の固定具4Aと同様である。つまり、本変形例の固定具4Aは、例えば金属の板状部材のプレス加工に形成された金具であり、係止部41Aと、固定部42Aと、接続部43Aと、を有する。
【0073】
本変形例の鏡3Dは、裏面35および表面36と交差する側面37に設けられた溝371Dと、裏面35および表面36と交差する側面38に設けられた溝381Dと、を有する。
図11に表したように、溝371Dは、一方の側面391から他方の側面392までは延びておらず、側面37の中央部から側面391、392の近傍まで延びている。すなわち、溝371Dが延びた方向に沿ってみたとき、あるいは鏡3Dの側面37の辺378に沿ってみたときに、鏡3Dの側面37の両端部には、溝371Dが設けられていない残留部375が設けられている。
【0074】
また、
図11に表したように、溝381Dは、一方の側面391から他方の側面392までは延びておらず、側面38の中央部から側面391、392の近傍まで延びている。すなわち、溝381Dが延びた方向に沿ってみたとき、あるいは鏡3Dの側面38の辺388に沿ってみたときに、鏡3Dの側面38の両端部には、溝381Dが設けられていない残留部385が設けられている。
【0075】
図12に表したように、溝371Dが延びた方向において、溝371Dの長さL23と、係止部41Aの長さと、は、側面37の辺378の長さL9に略等しい。具体的には、本変形例では、溝371Dの長さL23と、係止部41Aの長さと、は、側面37の辺378の長さL9の80%以上、100%未満である。つまり、溝371Dが延びた方向において、溝371Dの長さL23は、側面37の辺378の長さL9よりもわずかに短い。
【0076】
また、溝381Dが延びた方向において、溝381Dの長さL24と、係止部41Aの長さと、は、側面38の辺388の長さL10に略等しい。具体的には、本変形例では、溝381Cの長さL24と、係止部41Aの長さと、は、側面38の辺388の長さL10の80%以上、100%未満である。つまり、溝381Dが延びた方向において、溝381Dの長さL24は、側面38の辺388の長さL10よりもわずかに短い。
【0077】
本変形例によれば、溝371D、381Dが延びた方向に沿ってみたとき、あるいは鏡3Dの側面37、38の辺378、388に沿ってみたときに、鏡3Dの側面37、38の両端部には、溝371D、381Dが設けられていない残留部375、385が設けられている。そのため、鏡3Dの側面37、38に溝371D、381Dが設けられ、固定具4Aの係止部41Aが鏡3Dの溝371D、381Dに係止されていても、鏡3Dの利用者は、溝371D、381D、および固定具4Aの係止部41Aを鏡3Dの側面391、392から認識し難い。また、
図8~
図10に関して前述した本実施形態に係る鏡の固定構造2Aの効果と同様の効果が得られる。
【0078】
図13は、本実施形態の固定具の第1変形例を説明する断面図である。
なお、
図13は、
図2に表した切断面A1-A1における断面図に相当する。
本変形例の固定具4Cは、係止部41Cを有する。係止部41Cは、第1係止部411と、第2係止部412と、を有する。
図13に表したように、鏡3Aの側面37に形成された溝371Aが延びた方向に沿ってみたときに、第1係止部411は、鏡3Aの中央(側面37と側面38との間の中心部)に向かって突出した湾曲形状を有する。第2係止部412は、湾曲形状を有する第1係止部411に接続され、第1係止部411から鏡3Aの中央に向かって延びている。その他の構造は、
図1~
図12に関して前述した固定具4、4Aの構造と同様である。
【0079】
鏡3Aの側面37には、溝371Aが設けられている。溝371Aは、第1係止部411が嵌まる第1溝部376と、第2係止部412が嵌まる第2溝部377と、を有する。すなわち、溝371Aが延びた方向に沿ってみたときに、第1溝部376は、鏡3Aの中央に向かって突出した湾曲形状を有する。また、第2溝部377は、湾曲形状を有する第1溝部376に接続され、第1溝部376から鏡3Aの中央に向かって延びている。第1係止部411が第1溝部376に嵌まり、第2係止部412が第2溝部377に嵌まることにより、本変形例の固定具4Cの係止部41Cは、鏡3Aの溝371Aに嵌まるとともに係止される。
【0080】
本変形例の固定具4Cによれば、係止部41Cが湾曲形状の第1係止部411を有するため、
図1~
図12に関して前述した係止部41、41Aと比較して、係止部41Cと溝371Aとの接触面積が増加する。これにより、溝371Aに対する係止部41Cの嵌まりやすさや押さえやすさを確保しつつ、鏡3Aが割れたり欠けたりすることを抑えることができる。また、係止部41Cが第2係止部412を有するため、係止部41Cによる鏡3Aの保持力や固定力を確保することができる。
【0081】
図14は、本実施形態の固定具の第2変形例を説明する断面図である。
なお、
図14は、
図2に表した切断面A1-A1における断面図に相当する。
本変形例の固定具4Dは、係止部41Dを有する。
図14に表したように、鏡3Bの側面37に形成された溝371Bが延びた方向に沿ってみたときに、係止部41Dは、鏡3Bの中央(側面37と側面38との間の中心部)に向かって突出した湾曲形状を有する。すなわち、本変形例の係止部41Dは、
図13に関して前述した係止部41Cの第1係止部411と同様の形状を有する。その他の構造は、
図1~
図12に関して前述した固定具4、4Aの構造と同様である。
【0082】
鏡3Bの側面37には、溝371Bが設けられている。溝371Bは、係止部41Dが嵌まる形状を有する。すなわち、溝371Bが延びた方向に沿ってみたときに、溝371Bは、鏡3Bの中央に向かって突出した湾曲形状を有する。本変形例の固定具4Dの係止部41Dは、鏡3Bの溝371Bに嵌まるとともに係止される。
【0083】
本変形例の固定具4Dによれば、係止部41Dが湾曲形状を有するため、
図1~
図12に関して前述した係止部41、41Aと比較して、係止部41Dと溝371Bとの接触面積が増加する。これにより、溝371Bに対する係止部41Dの嵌まりやすさや押さえやすさを確保しつつ、鏡3Bが割れたり欠けたりすることを抑えることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0085】
2、2A、2B、2C・・・固定構造、 3、3A、3B、3C、3D・・・鏡、 4、4A、4C、4D・・・固定具、 5・・・締結部材、 9・・・被固定部材、 31・・・ガラス、 32・・・銀層、 33・・・銅層、 34・・・バックコート層、 35・・・裏面、 36・・・表面、 37、38・・・側面、 41、41A、41C、41D・・・係止部、 42・・・端部、 42A・・・固定部、 43・・・端部、 43A・・・接続部、 91・・・被固定面、 311・・・反射面、 371、371A、371B、371C、371D・・・溝、 372、373・・・面取り部、 374・・・交差点、 375・・・残留部、 376・・・第1溝部、 377・・・第2溝部、 378・・・辺、 379a、379b・・・交差点、 381、381C、381D・・・溝、 382・・・面取り部、 385・・・残留部、 388・・・辺、 391、392・・・側面、 411・・・第1係止部、 412・・・第2係止部、 A31・・・面取り角、 L1、L2、L3、L4・・・厚さ、 L5、L6・・・長さ、 L7・・・高さ(線径)、 L8・・・深さ、 L9、L10・・・長さ、 L11・・・距離(面取り深さ)、 L12・・・距離(厚さ)、 L21、L22、L23、L24・・・長さ