(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】運行制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221109BHJP
【FI】
G05D1/02 B
(21)【出願番号】P 2018183992
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】陳 瑩娟
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】本田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山田 富行
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-059731(JP,A)
【文献】特開2009-286501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1搬送装置を第1誘導線に沿って所定の基準速度で所定の基準距離をあけて搬送する第1搬送ラインと、
前記第1搬送装置よりも大きな運行速度で走行可能な自走式の複数の第2搬送装置を、前記第1誘導線に並行に伸びる第2誘導線に沿って走行させる第2搬送ラインを備えており、
前記複数の第2搬送装置を前記複数の第1搬送装置に同期させて走行させる運行制御システムにおいて、
前記運行制御システムは、
(a)前記第2誘導線に沿って走行する前記複数の第2搬送装置のそれぞれを、該第2搬送装置の直前に位置する別の第2搬送装置との間に前記基準距離に対応する第1衝突防止距離をあけて前記基準速度に等しい速度で走行させる第1設定手段と、
(b)前記第2搬送装置の走行方向に関して
前記第1設定手段の下流側に配置され、前記複数の第2搬送装置のそれぞれを、前記複数の第1搬送装置のうちの対応する該第1搬送装置に揃える第2設定手段を有する、ことを特徴とする運行制御システム。
【請求項2】
前記第1設定手段は、
第1被検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第1被検知部を検知する第1検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第1検知部が前記第1被検知部を検知すると、前記第2搬送装置と前記別の第2搬送装置との間に前記第1衝突防止距離を設定する第1制御部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の運行制御システム。
【請求項3】
前記第2設定手段は、
前記第2搬送装置の走行を禁止する禁止部と、
前記第1搬送装置を検知する搬送装置検知部と、
前記搬送装置検知部が前記第1搬送装置を検知すると、前記禁止部を解除して前記第2搬送装置の走行を許可する許可部とを備える、ことを特徴とする請求項2に記載の運行制御システム。
【請求項4】
前記第2搬送装置の走行方向に関して前記第1設定手段の下流側であって前記第2設定手段の上流側に配置された第2被検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第2被検知部を検知する第2検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第2検知部が前記第2被検知部を検知すると、前記第2搬送装置と前記別の第2搬送装置との間に前記第1衝突防止距離よりも短い第2衝突防止距離を設定する第2制御部を備える、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の運行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式搬送装置の運行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の製品を組み立てる生産設備には多くの自走式部品搬送装置が使用されている。代表的な自走式搬送装置として無人搬送装置(Automatic Guided Vehicle)(以下、「AGV」という。)がある。周知のとおり、AGVは、例えば床面に配置された磁気テープなどの個々の誘導ラインに沿って一列に並んで走行しながら、生産ライン上を搬送されている組立製品(組立中の製品)に必要な部品等を供給するように制御される。例えば、誘導ラインにおいて、必要なときだけ、AGVを所定の位置に進行させる運行システムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
このような運行システムでは、一般的に、AGVを制御する方法として無線通信及びAGV集中制御用のコンピュータが用いられ、複数のAGVを電子的にまとめて制御する。しかし、他の電波通信との混線によってAGVを制御する通信が阻害されること、一部のAGVの位置情報について誤差が生じることでAGVの運行計画と実際の運行状況との乖離が発生すること、又は集中制御用コンピュータの故障により運行システム全体が機能しなくなることなどの課題が現実には発生し、結果的にAGVの運行が正常に行えなくなり、場合によってはAGVの渋滞が誘導ライン上に発生することで、生産に支障をきたすおそれがある。
【0005】
上述の課題に対しては、AGVの誘導ライン上に進出した障害物をAGVに搭載された障害物センサで検知し、その検知結果に基づいてAGV内制御部で自律的に走行を制御させることが好ましい。
【0006】
一方、生産ラインを流れる製品(組立中の製品)に対して、その製品に組み付ける部品を搭載したAGVは、対応する製品に同期していることが好ましい。製品とAGVが同期していない場合、組立作業者はAGVから部品を取り出すために長い距離を移動しなければならず、それだけ組み付けにかかる時間が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、電波障害、位置情報の誤差、又は集中制御コンピュータの故障に影響を受けることなく、しかも、製品と対応するAGVを同期しながら搬送する運行制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に係る運行制御システムの実施形態は、
複数の第1搬送装置を第1誘導線に沿って所定の基準速度で所定の基準距離をあけて搬送する第1搬送ラインと、
前記第1搬送装置よりも大きな運行速度で走行可能な自走式の複数の第2搬送装置を、前記第1誘導線に並行に伸びる第2誘導線に沿って走行させる第2搬送ラインを備えており、
前記複数の第2搬送装置を前記複数の第1搬送装置に同期させて走行させる運行制御システムにおいて、
前記運行制御システムは、
(a)前記第2誘導線に沿って走行する前記複数の第2搬送装置のそれぞれを、該第2搬送装置の直前に位置する別の第2搬送装置との間に前記基準距離に対応する第1衝突防止距離をあけて前記基準速度に等しい速度で走行させる第1設定手段と、
(b)前記第2搬送装置の走行方向に関して前記第1設定手段の下流側に配置され、前記複数の第2搬送装置のそれぞれを、前記複数の第1搬送装置のうちの対応する該第1搬送装置に揃える第2設定手段を有する。
この実施形態における第1設定手段は例えば以下に説明する実施例の磁気媒体、磁気センサ、及びコントローラによって構成でき、第2設定手段は以下に説明する実施例の第1制御機器によって構成できる。
【0009】
本発明の請求項2に係る運行制御システムの実施形態において、
前記第1設定手段は、
第1被検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第1被検知部を検知する第1検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第1検知部が前記第1被検知部を検知すると、前記第2搬送装置と前記別の第2搬送装置との間に前記第1衝突防止距離を設定する第1制御部を備える。
この実施形態における第1被検知部、第1検知部、第1制御部は、例えば以下に説明する実施例の磁気媒体、磁気センサ、コントローラによってそれぞれ実現できる。
【0010】
本発明の請求項3に係る運行制御システムの実施形態において、
前記第2設定手段は、
前記第2搬送装置の走行を禁止する禁止部と、
前記第1搬送装置を検知する搬送装置検知部と、
前記搬送装置検知部が前記第1搬送装置を検知すると、前記禁止部を解除して前記第2搬送装置の走行を許可する許可部とを備える。
この実施形態における第2設定手段、禁止部、搬送装置検知部、許可部は、例えば以下に説明する実施例の第1制御機器、ゲート、第1検知器、ゲート駆動部によってそれぞれ実現できる。
【0011】
本発明の請求項4に係る運行制御システムの実施形態において、
前記運行制御システムは、
前記第2搬送装置の走行方向に関して前記第1設定手段の下流側であって前記第2設定手段の上流側に配置された第2被検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第2被検知部を検知する第2検知部と、
前記複数の第2搬送装置のそれぞれに設けられ、前記第2検知部が前記第2被検知部を検知すると、前記第2搬送装置と前記別の第2搬送装置との間に前記第1衝突防止距離よりも短い第2衝突防止距離を設定する第2制御部を備える。
この実施形態における第2被検知部、第2検知部、第2制御部は、例えば以下に説明する実施例の磁気媒体、磁気センサ、コントローラによってそれぞれ実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本願の請求項1に記載の発明によれば、第2搬送装置(AGV)に、第1搬送装置(製品を搭載するパレット又は台車)同士の距離である基準距離に対応する第1衝突防止距離を互いにあけて、パレットの基準速度に等しい速度で走行させ、AGVのそれぞれを、対応するパレットに揃える。これにより、電波障害、位置情報の誤差、又は集中制御コンピュータの故障に影響を受けることなく、しかも、製品と対応するAGVを同期させて搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る、運行システムを示す概略図である。
【
図2A】空圧を用いる動力伝達回路の構造と動作を示す概略図である。
【
図2B】空圧を用いる動力伝達回路の構造と動作を示す概略図である。
【
図2C】空圧を用いる動力伝達回路の構造と動作を示す概略図である。
【
図2D】空圧を用いる動力伝達回路の構造と動作を示す概略図である。
【
図3】運行システムによって運行が制御されるAGVの構成の概略図である。
【
図4】
図3に示すAGVの制御についてのフローチャートである。
【
図5】
図4に示すフローチャートによってAGVの運行がどのように変化するかを示す概略図である。
【
図6】磁気媒体によってモードが切り替わるAGVの構成の概略図である。
【
図7】
図6に示すAGVのモードの切替についてのフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る、運行システムによるAGVの運行を示す概略図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る、運行システムによるAGVの運行を示す概略図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る、運行システムによるAGVの運行を示す概略図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る、運行システムによるAGVの運行を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明に係る運行制御システム(以下、「運行システム」という。)の実施例を説明する。
【0015】
[1.運行システムの概要]
図1は、運行システム10の概略構成を示す。図示する運行システム10が採用されている製造設備は自動車の製造工場である。また、運行システム10が制御する対象は、自動車の生産ラインに並行に設けられた部品搬送ラインに沿って自走する部品搬送用の無人搬送装置(以下、「AGV」という。)である。
【0016】
[1.1:誘導路]
実施例の運行システム10は第1搬送ライン11と第2搬送ライン12を有する。
【0017】
第1搬送ライン11は、組立中の自動車である製品13を搬送するラインである。そのために、第1搬送ライン11には、これに沿って製品搬送用コンベア14が設けられている。コンベア14は製品13を搭載する複数のパレット15又は台車を備えている。パレット15は、第1搬送ライン11に沿って一定の間隔(基準距離LR)をあけて配置されており、図の右側にある第1生産地点16から図の左側にある第2生産地点17まで一定の基準速度(VR)で移動するように構成されている。
【0018】
第2搬送ライン12は、部品を搭載したAGV18を誘導するラインである。図示するように、第2搬送ライン12は、図示する組立領域において、第1搬送ライン11に並行に配置されており、図の右側にある第1搬送地点19と図の左側にある第2搬送地点20を結んでいる。なお、図面を簡略化するために、第1生産地点16と第2生産地点17との間には限られた数のパレット(3台のパレット)のみを示し、これに対応して第1搬送地点19と第2搬送地点20との間には対応する数のAGV(3台のAGV)のみを示しているが、その数は限定的ではなく、それらの地点の間には多数のパレットと対応する数のAGVが配置される。
【0019】
製品搬送用コンベア14の移動速度(製品搬送速度)は一定である。このコンベア移動速度を「基準速度VR」という。AGV18は、基準速度VRよりも大きな運行速度VAGVで運行可能である。ただし、他のAGV18又は障害物との衝突又は接触を防止するために、後述するように、前方を走行する他のAGV又は障害物との距離が所定距離以下の場合、運行速度VAGVよりも小さな速度VAGV’で走行するように決められている。
【0020】
[1.2:AGV]
AGV18は、AGV誘導用マグネットテープを検知しながら、第2搬送ライン12を自律的に走行する。そのために、AGV18は、第2搬送ライン12に沿って敷設されたマグネットテープの磁束を検知する磁気検知手段、すなわち磁気センサ21を備えている。
【0021】
AGV18はまた、前方障害物(例えば、AGV18の走行を制御する後述するフラグ、前方を走行する別のAGV)を検知する障害物センサ22をAGV18の進行方向に伸びる中心軸23上の車体前方側に備えている。図示する実施形態では、磁気センサ21はAGV18の下方の中心軸23上に配置される。また、障害物センサ22は、磁気センサ21より上方の中心軸23上に配置される。
【0022】
本発明の実施例において、AGV18は、第2搬送ライン12に沿って敷設されたマグネットテープを磁気センサ21によって検知することで進行方向を制御しているが、例えばマグネットテープと磁気センサの組み合わせに代えて白色テープとそれを検知する光学センサの組み合わせを用いてもよい。
【0023】
[1.3:運行制御機器]
図1に示すように、実施例において、運行システム10は、AGV18の運行を制御するために、2組の制御機器、すなわち第1制御機器31と第2制御機器32を備えている。第1制御機器31は、第2生産地点17の近傍に位置する製品13を検知する第1検知器33、及び第2搬送地点20の近傍に設けられたゲート34と第2検知器35を含む。第2制御機器32は、第1検知器33よりも第2生産地点17のさらに近傍に位置する製品13を検知する第1検知器36、及びゲート34と第2検知器35よりも第2搬送地点20のさらに近傍に設けられたゲート37と第2検知器38を含む。
【0024】
[1.4:AGV検知器]
第1搬送ライン11の第2生産地点17の近くには、第1生産地点16から第2生産地点17に移動する製品13を搭載したパレット15を検知する第1制御機器31の第1検知器33と第2制御機器32の第1検知器36が配置されている。また、第2搬送ライン12の第2搬送地点20の近くには、第1搬送地点19から第2搬送地点20に移動するAGV18を検知する第1制御機器31の第2検知器35と第2制御機器32の第2検知器38が配置されている。実施例では、第1制御機器31の第1検知器33と第2検知器35,及び第2制御機器32の第1検知器36と第2検知器38はそれぞれ空圧式リミットスイッチ39,40,41,42で構成されている。
【0025】
空圧式リミットスイッチ39,41は、アクチュエータ(パレット15に接触する部分)43,44を第1搬送ライン11上のパレット通過領域45に突出させて該パレット通過領域45を通過するパレット15に接触するように配置されている。具体的に、第1制御機器31の第1検知器33と第2制御機器32の第1検知器36は、パレット15をその後方から見たとき、パレット通過領域45の右側に配置されており、そのアクチュエータ43,44がパレット通過領域45に突出している。また、空圧式リミットスイッチ40,42は、アクチュエータ(AGV18に接触する部分)46,47を第2搬送ライン12上のAGV通過領域48に突出させて該AGV通過領域48を通過するAGV18に接触するように配置されている。具体的に、第1制御機器31の第2検知器35と第2制御機器32の第2検知器38は、AGV18をその後方から見たとき、AGV通過領域48の左側に配置されており、そのアクチュエータ46,47がAGV通過領域48に突出している。
【0026】
[1.5:ゲート]
第2搬送ライン12の第2搬送地点20の近くには、AGV18の進行を制御(禁止/許可)する第1制御機器31のゲート34と第2制御機器32のゲート37が配置されている。第1制御機器31のゲート34と第2制御機器32のゲート37は、図示するように、第2搬送ライン12に沿って移動するAGV18の通過領域48に進出した位置(実線で示す「進出位置」又は「禁止位置」)と該AGV通過領域48から待避した位置(点線で示す「待避位置」又は「許可位置」)との間を移動することができるように構成されている。
【0027】
[1.6:空圧回路]
第1制御機器31のゲート34を待避位置と進出位置との間で移動するゲート駆動部50は、
図2A~
図2Dに示すように、空圧シリンダ51と、空圧式方向制御弁52と、圧縮空気供給源(コンプレッサ)53を有する。そして、空圧シリンダ51、空圧式方向制御弁52、圧縮空気供給源53、及び空圧式リミットスイッチ39,40が、それぞれ一つの空圧回路(動力伝達回路)54を構成しており、該空圧回路54は空圧式リミットスイッチ39,40の動作に応じてゲート34を進出位置と待避位置との間で移動するように設計されている。また、第2制御機器32のゲート37を待避位置と進出位置との間で移動するゲート駆動部55も同じ構成を有し、さらに同じ空圧回路が構成される。
【0028】
空圧シリンダ51は、例えば2位置2ポート弁からなり、第1ポート56又は第2ポート57の一方から選択的に供給される圧縮空気の方向に応じて、ピストン58が第1位置(
図2A,2D参照)と第2位置(
図2B,2C参照)との間を移動するように構成されている。ピストン58は、連結機構59を介してゲート34に連結されている。連結機構59は、ピストン58の往復直線運動をゲート34の進退運動(回転運動又は旋回運動)に変換する機能を備えており、ピストン58の動作に連動してゲート34が進出位置と待避位置との間を往復移動するようになっている。
【0029】
空圧式方向制御弁52は、例えば2位置5ポートスプール弁からなり、スプール60の位置を切り換えることによって圧縮空気供給源53から供給される圧縮空気の流れを切り換えるために、5つの流路切換ポート[P(給気)ポート61、E(排気)ポート62,63、Aポート64、Bポート65]と2つのスプール位置切換ポート[第1ポート66と第2ポート67]を備えており、Pポート61が圧縮空気供給源53に接続され、Aポート64が空圧シリンダ51の第1ポート56に接続され、Bポート65が空圧シリンダ51の第2ポート57に接続されている。
【0030】
第1検知器33を構成する空圧式リミットスイッチ39は、例えば常閉型の2位置3ポート弁からなり、アクチュエータ43の動きに応じて、ばね68で一方向に付勢されたスプール69の位置を切り換えることによって、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52の第1ポート66への圧縮空気の供給を制御(オン/オフ)するために、3つのポート[P(給気)ポート70、E(排気)ポート71、Aポート72]を備えており、Pポート70が圧縮空気供給源53に接続され、Aポート72が空圧式方向制御弁52の第1ポート66に接続されている。
【0031】
第2検知器35を構成する空圧式リミットスイッチ40は、例えば常閉型の2位置3ポート弁からなり、アクチュエータ46の動きに応じて、ばね73で一方向に付勢されたスプール74の位置を切り換えることによって、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52の第2ポート67への圧縮空気の供給を制御(オン/オフ)するために、3つのポート[P(給気)ポート75、E(排気)ポート76、Aポート77]を備えており、Pポート75が圧縮空気供給源53に接続され、Aポート77が空圧式方向制御弁52の第2ポート67に接続されている。
【0032】
このように構成された空圧回路54によれば、第1検知器33が製品13を搭載したパレット15を検知しておらず、第2検知器35がAGV18を検知していない状態(
図2Aに示す第1オフ-オフ状態)では、
図2Aに示すように空圧式リミットスイッチ39,40のスプール69,74は共に閉鎖位置をとり、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52へ圧縮空気を供給する回路を閉鎖している。そのため、空圧シリンダ51は図示する状態を保持し、ゲート34はAGV通過領域48に進出している。
【0033】
第1検知器33がパレット15を検知しておらず、第2検知器35がAGV18を検知していない状態(
図2Aに示す第1オフ-オフ状態)から、第1検知器33における空圧式リミットスイッチ39のアクチュエータ43がパレット15に接触(検知)する状態(
図2Bに示すオン-オフ状態)に移行すると、
図2Bに示すように空圧式リミットスイッチ39のアクチュエータ43がばね68の付勢力に抗してスプール69を開放位置に移動し、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52へ圧縮空気を供給する回路を開放する。これにより、空圧式方向制御弁52のスプール60が
図2Aに示す位置から
図2Bに示す位置に移動し、圧縮空気供給源53から供給される圧縮空気が空圧式方向制御弁52のPポート61、Aポート64を介して空圧シリンダ51の第1ポート56に供給され、その結果、ピストン58が
図2Aに示す位置から
図2Bに示す位置に移動し、ゲート34が進出位置から待避位置に移動する。
【0034】
次に、第1検知器33における空圧式リミットスイッチ39のアクチュエータ43がパレット15に接触(検知)する状態(
図2Bに示すオン-オフ状態)からパレット15に接触しない(非検知)状態(
図2Cに示す第2オフ-オフ状態)に復帰すると、
図2Cに示すように空圧式リミットスイッチ39,40のスプール69,74は共に閉鎖位置をとり、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52へ圧縮空気を供給する回路を閉鎖する。ただし、空圧シリンダ51は
図2Cに示す状態を保持し、ゲート34は待避位置を保持する。
【0035】
次に、第1検知器33がパレット15を検知しておらず、第2検知器35がAGV18を検知していない状態(
図2Cに示す第1オフ-オフ状態)から、第2検知器35における空圧式リミットスイッチ40のアクチュエータ46がAGV18に接触(検知)する状態(
図2Dに示すオフ-オン状態)に移行すると、
図2Dに示すように空圧式リミットスイッチ40のアクチュエータ46がばね73の付勢力に抗してスプール74を開放位置に移動し、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52へ圧縮空気を供給する回路を開放する。これにより、空圧式方向制御弁52のスプール60が
図2Cに示す位置から
図2Dに示す位置に移動し、圧縮空気供給源53から供給される圧縮空気が空圧式方向制御弁52のPポート61、Bポート65を介して空圧シリンダ51の第2ポート57に供給され、その結果、ピストン58が
図2Cに示す位置から
図2Dに示す位置に移動し、ゲート34が待避位置から進出位置に復帰する。
【0036】
次に、第2検知器35における空圧式リミットスイッチ40のアクチュエータ46がAGV18に接触(検知)する状態(
図2Dに示すオフ-オン状態)からAGV18に接触しない(非検知)状態(
図2Aに示す第1オフ-オフ状態)に復帰すると、
図2Aに示すように空圧式リミットスイッチ39,40のスプール69,74は共に閉鎖位置をとり、圧縮空気供給源53から空圧式方向制御弁52へ圧縮空気を供給する回路を閉鎖する。ただし、空圧シリンダ51は
図2Aに示す状態を保持し、ゲート34は進出位置を保持する。
【0037】
第2制御機器32のゲート駆動部55、第1検知器36を構成する空圧式リミットスイッチ41、及び第2検知器38を構成する空圧式リミットスイッチ42も上述と同じ構造を有しており、上述と同じ動作を行う。
【0038】
[1.7:AGVの障害物検出ユニット]
図3に示すように、AGV18は、前方障害物の有無を検出して自律的にその運行速度を制御する速度制御システムを備えている。そのために、速度制御システム81は、AGVコントローラ82と、前方障害物の有無を検知する障害物センサ22を備えている。障害物センサ22とAGVコントローラ82は通信可能に有線又は無線によって接続されている。障害物センサ22には、例えばレーザ方式又は赤外線方式の測距センサが用いられるが、前方障害物の有無が検出可能である限り、あらゆるセンサが使用可能である。
【0039】
AGVコントローラ82は、AGV18の前方に減速領域(減速距離)と衝突防止領域(衝突防止距離)を設定する。減速領域の大きさは一定である。一方、衝突防止領域(衝突防止距離)の大きさは、後述するようにモードに応じて切り換えられる。AGVコントローラ82はまた、前方障害物との距離に応じてAGV18の速度、具体的にはAGV走行モータ83の回転数を制御する。
【0040】
具体的に
図3,4,5(a)~(e)を参照して説明すると、
図3に示すように、障害物センサ22はAGV18の前方にレーザ84又は赤外線を発振し、前方障害物の有無を検知する。AGVコントローラ82は、前方障害物が有る場合、該前方障害物との距離Lを計測し(
図4のステップ#1、
図5(a))、AGV18の前方に減速領域85(減速距離L1)と該減速領域85よりも小さな衝突防止領域86(衝突防止距離L2(<減速距離L1))を設定する。次に、
図4に示すように、AGVコントローラ82は、AGV18の前方にある障害物(例えば、別のAGV又はゲート34)が減速領域85の外側に有るか否か判断し(
図4のステップ#2)、前方障害物が減速領域85の外側に有れば(すなわち、距離L>減速距離L1の場合)、AGVコントローラ82は、AGV18を所定の運行速度V
AGVで運行する(
図4のステップ#3、
図5(b),(c))。上述のように、AGV18の運行速度V
AGVは、パレット15が製品搬送用コンベア14を移動する基準速度V
Rよりも大きい。AGV18の前方障害物が減速領域85の内側にある場合(距離L≦減速距離L1)、AGVコントローラ82は、運行速度V
AGVよりも小さな速度V
AGV’にAGV18を減速する(
図4のステップ#4、
図5(d))。実施例では、AGV18の速度V
AGV’は基準速度V
Rに等しく設定されている。次に、AGVコントローラ82は、前方障害物が衝突防止領域86の内側に入ったか否か判断し(
図4のステップ#5)、前方障害物が衝突防止領域86の内側に入ると(距離L≦衝突防止距離L2)、AGVコントローラ82はAGV18を停止する(
図4のステップ#6、
図5(e))。これにより、AGV18と前方障害物との間には、ほぼ一定の衝突防止領域86(衝突防止距離L2)が確保される。なお、前方障害物が衝突防止領域86に入った時点から実質的に減速されて停止されるため、AGV18が停止した時点で前方障害物との間に残る距離は衝突防止距離L2よりも僅かに小さいが、AGV18の衝突防止距離L2は減速距離L1に比べて相当小さいため、前方障害物との間に残る距離を衝突防止距離L2と考えても差し支えない。また、後述するように、実施例に係る運行システムでは、運行モードに応じて衝突防止距離L2の大きさが切り換えられる。
【0041】
[1.8:AGVの運行モード切換]
AGV運行モードの切換について説明する。実施例の運行システムは、2つのモード(第1モードと第2モード)を備えており、これら2つのモードを切り換えるために第1モード切換手段(第1モードから第2モードに切り換える手段)と第2モード切換手段(第2モードから第1モードに切り換える手段)を備えている。
【0042】
第1モード切換手段は、AGV走行方向に関して第1搬送地点19の下流側においてAGV通過領域48の近傍に配置された第1磁気媒体(第1被検知部)91を含む。第2モード切換手段は、AGV走行方向に関して第1磁気媒体(第1被検知部)91の下流側においてAGV通過領域48の近傍に配置された第2磁気媒体(第2被検知部)92を含む。上述の構成の他に、第1モード切換手段と第2モード切換手段は、AGV18に搭載された種々の要素を含む。具体的に説明すると、
図6に示すように、AGV18は、第2搬送ライン12を検知する磁気センサ21とは別に、前方から見て車体右側側面に、第1磁気媒体91及び第2磁気媒体92に記憶されている情報を読み取る磁気センサ93(第1検知部と第2検知部を兼用)を備えている。磁気センサ93とAGVコントローラ82は通信可能に有線又は無線によって接続されており、磁気センサ93からの情報がAGVコントローラ82に伝達される。また、AGVコントローラ82は、後述するモード切換プログラム(
図7参照)を格納した記憶部94を備えている。
【0043】
本実施例において、第1磁気媒体91と第2磁気媒体92は異なる情報を含む。この情報は、例えばN極95とS極96の磁極配列パターンとして具体化されている。したがって、例えば
図7に示すように、AGVコントローラ82は、磁気センサ93が読み取った磁気媒体91,92の磁気パターンを取得する(ステップ#11)。磁気センサ93が磁気媒体91の磁極配列パターンを読み取った場合、AGVコントローラ82はAGV運行モードを第2運行モードから第1運行モードに切り換える(ステップ#12)。一方、磁気センサ93が磁気媒体92の磁極配列パターンを読み取った場合、AGVコントローラ82はAGV運行モードを第1運行モードから第2運行モードに切り換える(ステップ#13)。
【0044】
図6に示すように、第1運行モードでは衝突防止領域86の衝突防止距離が長く、第2運行モードでは衝突防止領域86の衝突防止距離が短く設定される。より具体的に説明すると、第1運行モードで設定される第1衝突防止距離L2’はパレット間隔である基準距離L
RからAGVの走行方向長さL
0を引いた長さ(L
R-L
0)である。これに対し、第2運行モードで設定される第2衝突防止距離L2”は、第1衝突防止距離L2’よりも短い。ただし、実施例において、減速領域85の長さL1は、第1運行モードと第2運行モードで同一である。また、第1運行モード及び第2運行モードにおいて、減速領域85におけるAGV運行速度(V
AGV’)はパレット搬送速度(基準速度V
R)に等しい値又はそれよりも僅かに大きな値に設定される。
【0045】
[1.9:AGV運行制御]
図1及び
図8から
図11を参照して、以上の構成を備えた運行システム10におけるAGVの運行制御を説明する。
【0046】
図1に示す状況において、AGV18”の磁気センサ93”が第1磁気媒体91を検知すると、AGV18”のAGVコントローラ82”は、このAGV18”の運行モードを第2モードから第1モードに切り換える。これにより、AGV18”の衝突防止距離は長い衝突防止距離L2’(>衝突防止距離L2”)に設定される。この長い衝突防止距離L2’は、AGV18”の磁気センサ93”が第2磁気媒体92を検出することによってAGV18”が第1モードから第2モードに切り換わるまで維持される。つまり、第1磁気媒体91から第2磁気媒体92の間にあるAGV18,18’、18”の衝突防止距離はいずれも長い衝突防止距離L2’に設定される。ここで、衝突防止距離L2’は、パレット間隔の基準距離L
RからAGVの走行方向の長さL
0を引いた距離に等しい。また、減速領域85におけるAGV18,18’、18”の走行速度はパレット搬送速度(基準速度V
R)に等しい値又はそれよりも僅かに大きい。したがって、第1磁気媒体91から第2磁気媒体92の間にあるAGV18,18’、18”は、パレット15,15’、15”に同期して、つまり、AGVの前端から後続のAGVの前端までの距離をパレットの前端から後続のパレットの前端までの距離に等しくした状態で、走行する。
【0047】
次に、AGV18の磁気センサ93が第2磁気媒体92を検知すると、AGV18のAGVコントローラ82は、このAGV18の運行モードを第1モードから第2モードに切り換える。これにより、AGV18の衝突防止距離は短い衝突防止距離L2”(<衝突防止距離L2’)に設定される。
【0048】
この時点で、第1制御機器31の第1検知器33と第2検知器35の空圧式リミットスイッチ39,40は共に閉状態にあり、ゲート34は進出位置にあり、第2制御機器32の第1検知器36と第2検知器38の空圧式リミットスイッチ41,42は共に閉状態にあり、ゲート37は進出位置にあるものとする。したがって、図示する先頭のAGV18は、障害物であるゲート34を検知し、ゲート34の前に短い衝突防止距離L2”をあけた状態で停止している。
【0049】
次に、
図8に示すように、第1搬送ライン11を移動しているパレット15が第1制御機器31の第1検知器33のアクチュエータ43に接触すると、ゲート34が進出位置から待避位置に切り換わる。これにより、
図9に示すように、AGV18は前進可能となり、ゲート34の前をパレット搬送速度V
Rに等しい又はそれよりも僅かに大きな速度V
AGV’で通過していく。このように、アクチュエータ43がパレット15を検知するまでAGV18の前進が禁止され、アクチュエータ43がパレット15を検知することによってAGV18、18’、18”の前進が許可される。この結果、図示するように、AGV18、18’、18”が対応するパレット15、15’、15”に揃う。これにより、パレット15、15’、15”に搭載された製品13,13’、13”のほぼ近傍に対応するAGV18、18’、18”が配置されることになる。その結果、AGV18、18’、18”から積み下ろした部品を対応する製品13,13’、13”まで搬送する距離が短くなるため、組立作業の効率が良くなる。
【0050】
特に、実施例によれば、磁気センサ93が第2磁気媒体92を検知することによって、衝突防止距離がL2’からL2”へと短く設定されることにより、AGV18とゲート34との距離が短くなるため、パレット15とそれに対応するAGV18との位置ずれを出来るだけ小さくできる。そのため、組立作業の効率が更に良くなる。
【0051】
次に、AGV18は、ゲート34を通過した後、第2検知器35のアクチュエータ46に接触する。これにより、ゲート34は待避位置から進出位置に切り換わる。その結果、後方のAGV18’が、第1搬送ライン11のパレット15’に先行して、ゲート34を通過しないように制御される。
【0052】
次に、AGV18’は、第2磁気媒体92を検知して、第2モードに切り替わる。一方、AGV18は、第2制御機器32のゲート37を検知して停止する。
【0053】
次に、
図10に示すように、第1搬送ライン11を移動している先頭のパレット15が第2制御機器32の第1検知器36のアクチュエータ44に接触すると、ゲート37が進出位置から待避位置に切り換わる。これにより、
図11に示すように、AGV18はゲート37を通過する。また、AGV18は、ゲート37を通過した後、第2検知器38のアクチュエータ47に接触し、ゲート37を待避位置から進出位置に切り換える。これにより、AGV18’が第1搬送ライン11のパレット15’に先行して、ゲート37を通過しないように制御される。
【0054】
次に、パレット15’が第1制御機器31の第1検知器33のアクチュエータ43に接触すると、ゲート34が進出位置から待避位置に切り換わる。その後、AGV18’は、進出位置にあるゲート37を減速領域85で検知し、パレット搬送速度VRに等しい又はそれよりも僅かに大きな速度VAGV’で通過していく。
【0055】
以後、上述の処理が繰り返し実行され、パレット15とそれに対応するAGV18が図示する制御領域を通過していく。
【0056】
上述の実施例では、AGV18の運行を確実に制御するために、第1制御機器31と第2制御機器32が設けられたが、AGV18の運行は1つの制御機器によって制御されてもよい。ただし、2つの制御機器を設けることによって、より確実にパレットとそれに対応するAGVを揃えて、つまり、両者をそれらが互いに近接した状態を維持しながら搬送される。
【0057】
また、以上の説明では、AGV通過領域48の近くに配置する被検知部を磁気媒体91,92で構成し、これらの磁気媒体91,92を検知するAGVの検知部を磁気センサ93で構成したが、これら検知部と被検知部の構成は実施例に限るものでない。例えば、磁気媒体に代えてQRコード(被検知部)をAGV通過領域48の近く配置し、その部品をAGVに設けた画像認識装置(検知部)によって検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:運行システム
11:第1搬送ライン
12:第2搬送ライン
14:製品搬送用コンベア(第1誘導線)
15:パレット(第1搬送装置)
18:AGV(第2搬送装置)
31:第1制御機器(第2設定手段)
33:第1検知器(搬送装置検知部)
34:ゲート(禁止部)
50:ゲート駆動部(許可部)
82:AGVコントローラ(第1制御部、第2制御部)
91:第1磁気媒体(第1被検知部)
92:第2磁気媒体(第2被検知部)
93:磁気センサ(第1検知部、第2検知部)
LR:基準距離
L2’:衝突防止距離(第1衝突防止距離)
L2”:衝突防止距離(第2衝突防止距離)
VAGV:運行速度
VAGV’:速度
VR:基準速度