(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】地質評価システム、地質評価方法及び地質評価プログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20221109BHJP
G06T 7/12 20170101ALI20221109BHJP
G01V 1/00 20060101ALI20221109BHJP
G01V 1/30 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E02D1/02
G06T7/12
G01V1/00 C
G01V1/30
(21)【出願番号】P 2018188479
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗一
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017570(JP,A)
【文献】特開2001-074708(JP,A)
【文献】特開2009-169676(JP,A)
【文献】特開平07-043351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G06T 7/12
G01V 1/00
G01V 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を撮影した撮影画像を、被写体位置に関連付けて記憶した画像情報記憶部と、
岩盤を打撃したときの打撃応答情報を、打撃位置に関連付けて記憶した打撃応答情報記憶部と、
地質情報を地質位置に関連付けて記憶した地質情報記憶部と、
出力部とに接続された制御部を備えて、地質の評価を実行する地質評価システムであって、
前記制御部が、
学習対象領域の被写体位置の撮影画像を前記画像情報記憶部から取得し、
前記撮影画像における線分を特定し、
前記線分を用いて、前記撮影画像を、複数の区画に区分けし、
前記学習対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報を前記打撃応答情報記憶部から取得し、
前記学習対象領域に対応する地質位置の地質情報を前記地質情報記憶部から取得し、
前記取得した学習対象領域の
前記区画毎の撮影画像、打撃応答情報及び地質情報を関連付けて教師情報を生成し、
前記教師情報を用いて、撮影画像及び打撃応答情報に基づいて
、前記区画毎に、前記区画に含まれる地質情報を予測するための予測モデルを生成し、
評価対象領域の撮影画像を、前記撮影画像において特定した線分を用いて、複数の区画に区分けし、
前記評価対象領域の
前記区画毎の被写体位置の撮影画像と、前記評価対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報と、前記予測モデルとを用いて、
前記区画毎に、前記評価対象領域における
前記区画に含まれる地質位置の地質情報を予測して、前記出力部に出力することを特徴とする地質評価システム。
【請求項2】
前記制御部は
、
前記予測した地質情報を、前記区画の位置に応じてマッピングすることにより、地質図を作成し、
前記作成した地質図を、前記出力部に出力することを特徴とする請求項1に記載の地質評価システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記学習対象領域の撮影画像を、複数に分割した分割領域を特定し、
前記分割領域の撮影画像と、前記分割領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報と、前記分割領域に含まれる地質位置の地質情報とを用いて、前記予測モデルを生成することを特徴とする請求項1
又は2に記載の地質評価システム。
【請求項4】
前記制御部は、撮影画像及び打撃応答情報を入力して地質情報を出力する雛形予測モデルに、前記教師情報の撮影画像、打撃応答情報を入力し、前記雛形予測モデルの出力が、前記教師情報の地質情報の許容範囲となるように、前記雛形予測モデルを調整することにより、前記予測モデルを生成することを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の地質評価システム。
【請求項5】
地盤を撮影した撮影画像を、被写体位置に関連付けて記憶した画像情報記憶部と、
岩盤を打撃したときの打撃応答情報を、打撃位置に関連付けて記憶した打撃応答情報記憶部と、
地質情報を地質位置に関連付けて記憶した地質情報記憶部と、
出力部とに接続された制御部を備えた地質評価システムを用いて、地質の評価を実行するための方法であって、
前記制御部が、
学習対象領域の被写体位置の撮影画像を前記画像情報記憶部から取得し、
前記撮影画像における線分を特定し、
前記線分を用いて、前記撮影画像を、複数の区画に区分けし、
前記学習対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報を前記打撃応答情報記憶部から取得し、
前記学習対象領域に対応する地質位置の地質情報を前記地質情報記憶部から取得し、
前記取得した学習対象領域の
前記区画毎の撮影画像、打撃応答情報及び地質情報を関連付けて教師情報を生成し、
前記教師情報を用いて、撮影画像及び打撃応答情報に基づいて
、前記区画毎に、前記区画に含まれる地質情報を予測するための予測モデルを生成し、
評価対象領域の撮影画像を、前記撮影画像において特定した線分を用いて、複数の区画に区分けし、
前記評価対象領域の
前記区画毎の被写体位置の撮影画像と、前記評価対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報と、前記予測モデルとを用いて、
前記区画毎に、前記評価対象領域における
前記区画に含まれる地質位置の地質情報を予測して、前記出力部に出力することを特徴とする地質評価方法。
【請求項6】
地盤を撮影した撮影画像を、被写体位置に関連付けて記憶した画像情報記憶部と、
岩盤を打撃したときの打撃応答情報を、打撃位置に関連付けて記憶した打撃応答情報記憶部と、
地質情報を地質位置に関連付けて記憶した地質情報記憶部と、
出力部とに接続された制御部を備えた地質評価システムを用いて、地質の評価を実行するためのプログラムであって、
前記制御部を、
学習対象領域の被写体位置の撮影画像を前記画像情報記憶部から取得し、
前記撮影画像における線分を特定し、
前記線分を用いて、前記撮影画像を、複数の区画に区分けし、
前記学習対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報を前記打撃応答情報記憶部から取得し、
前記学習対象領域に対応する地質位置の地質情報を前記地質情報記憶部から取得し、
前記取得した学習対象領域の
前記区画毎の撮影画像、打撃応答情報及び地質情報を関連付けて教師情報を生成し、
前記教師情報を用いて、撮影画像及び打撃応答情報に基づいて
、前記区画毎に、前記区画に含まれる地質情報を予測するための予測モデルを生成し、
評価対象領域の撮影画像を、前記撮影画像において特定した線分を用いて、複数の区画に区分けし、
前記評価対象領域の
前記区画毎の被写体位置の撮影画像と、前記評価対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報と、前記予測モデルとを用いて、
前記区画毎に、前記評価対象領域における
前記区画に含まれる地質位置の地質情報を予測して、前記出力部に出力する手段として機能させることを特徴とする地質評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地質図等を作成するために地質を評価する地質評価システム、地質評価方法及び地質評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダムの建設工事等においては、施工や資源掘削の予定現場の岩盤を構成する岩石の特性及びその基礎岩盤の地質状況を明らかにし、安全かつ経済的なダムの設計・施工に必要な地質工学的性質をできるだけ正確に把握するとともに、最適な施工方法や資源掘削の実施方法等を決定している。このような岩石の特性の調査は、一般的に、地質専門技術者により、施工や資源掘削の予定場所で行なわれる。この場合、地質専門技術者は、ロックハンマーやクリノメータ等の道具により、岩石を露頭から取り出し、目視や感触等により岩石の特性を観察して、岩石の名称及び岩盤の工学的性質を判定する。このため、地質専門技術者のスキルや知識が必要であった。また、地質図を作成する場合には、野外において地質図上の位置が判る基準となる位置(基準線)をペンキ等で現地に明示したり、割れ目の位置をオフセット測量によって測定したりするので、野外作業が多かった。
【0003】
そこで、採取現場で簡易に実行可能な岩石判定システムが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の岩石判定システムは、各岩石の特徴を示す質問事項及び回答と回答確信度とを記述した岩石分類フレーム、各岩石の曖昧的特徴を記述したファジィルール、及びそのファジィルールに対応するメンバーシップ関数からなる知識データベース装置を備える。そして、この岩石判定システムは、知識データベース装置に対応してルールベース型推論機構及びファジィ推論機構を行ない、岩石の種別を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地質専門技術者による岩石及び岩盤の工学的性質の判定は現場における岩肌の画像や打撃応答情報等に基づいており、判定が難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する地質評価システムは、地盤を撮影した撮影画像を、被写体位置に関連付けて記憶した画像情報記憶部と、岩盤を打撃したときの打撃応答情報を、打撃位置に関連付けて記憶した打撃応答情報記憶部と、地質情報を地質位置に関連付けて記憶した地質情報記憶部と、出力部とに接続された制御部を備えて、地質の評価を実行する地質評価システムであって、前記制御部が、学習対象領域の被写体位置の撮影画像を前記画像情報記憶部から取得し、前記学習対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報を前記打撃応答情報記憶部から取得し、前記学習対象領域に対応する地質位置の地質情報を前記地質情報記憶部から取得し、前記取得した学習対象領域の撮影画像、打撃応答情報及び地質情報を関連付けて教師情報を生成し、前記教師情報を用いて、撮影画像及び打撃応答情報に基づいて地質情報を予測するための予測モデルを生成し、評価対象領域の被写体位置の撮影画像と、前記評価対象領域に含まれる打撃位置に関連付けられた打撃応答情報と、前記予測モデルとを用いて、前記評価対象領域における地質情報を予測して、前記出力部に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、妥当な地質の評価を効率的に、省力化して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における地質評価装置のシステム構成図。
【
図2】実施形態におけるデータ記憶部に記憶されたデータ構成の説明図であって、(a)は画像情報記憶部、(b)は打撃応答情報記憶部、(c)は教師情報記憶部。
【
図3】実施形態における地質評価方法の全体の処理手順を示す流れ図。
【
図4】実施形態における撮影工程及び打撃検査工程を説明する説明図。
【
図5】実施形態における教師データ作成処理の処理手順を説明する流れ図。
【
図6】実施形態における学習処理の処理手順を説明する流れ図。
【
図7】実施形態における予測処理及び地質図作成処理の処理手順を説明する流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図7を用いて、地質評価システム、地質評価方法及び地質評価プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、ダムの建設現場(評価対象領域)の地質を評価して、その評価に応じて地質図を作成する地質評価システムとして説明する。この場合、同じ建設現場において、地質専門技術者が地質図を作成した場所(学習対象領域)の教師情報を用いて機械学習させ、地質専門技術者が地質図を作成していない他の場所について、学習結果を用いて地質を評価する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態では、撮影装置10、打撃解析装置15、入力部31、出力部32に接続される地質評価装置20を用いる。
撮影装置10は、例えばカメラ等であって、被写体を撮影した画像を生成する。この撮影装置10は、RTK-GPS(リアルタイム・キネマティックGPS)等の位置特定機能を備え、撮影位置を特定する。更に、撮影装置10は、撮影条件を取得し、撮影位置及び撮影画像と関連付けて記憶する。この撮影条件は、撮影時の向き、角度、焦点深度等である。この撮影条件と撮影位置を用いることにより、被写体位置(本実施形態では、緯度、経度、高度)を特定することができる。
【0011】
打撃解析装置15は、岩検ハンマーに計測器が設けられた装置である。岩検ハンマーで岩盤表面を打撃した際に、岩検ハンマーにおいて打撃応答を計測し、計測した打撃応答情報を取得する。この打撃応答情報としては、打撃音、振動、岩盤表面からの反発力、加速度の時間変化等が含まれる。更に、打撃解析装置15は、RTK-GPS等の位置特定機能を備え、打撃位置を特定する。打撃解析装置15は、無線により地質評価装置20に接続されている。
【0012】
入力部31は、キーボードやポインティングデバイス等、各種指示を入力するために用いる。本実施形態では、作業者が、地質評価に必要な指示や、地質専門技術者が作成した地質図等の情報を入力する場合を想定する。出力部32は、表示装置等であって、各種情報を出力するために用いる。本実施形態では、出力部32は、評価対象領域において予測(評価)された地質をマッピングした地質図を出力する。
【0013】
地質評価装置20は、評価対象領域の地質を評価するコンピュータシステムである。この地質評価装置20は、制御部21、画像情報記憶部22、打撃応答情報記憶部23、地質情報記憶部としての地質図記憶部24、教師情報記憶部25、学習結果記憶部26及び予測結果記憶部27を備える。
【0014】
制御部21は、CPU、RAM、ROM等から構成された制御手段として機能し、後述する処理(画像管理段階、打撃応答管理段階、解析段階、学習段階、予測段階及び地質図作成段階等を含む処理)を行なう。このための地質評価プログラムを実行することにより、制御部21は、画像管理部211、打撃応答管理部212、解析部213、学習部214、予測部215及び地質図作成部216等として機能する。
【0015】
画像管理部211は、撮影装置10により撮影された撮影画像を管理する処理を実行する。
打撃応答管理部212は、岩検ハンマーを用いた打撃検査における打撃応答を管理する処理を実行する。
【0016】
解析部213は、画像情報及び打撃応答情報を解析する処理を実行する。この場合、解析部213は、撮影画像を分割する基準となる分割基準サイズ(例えば、0.5m×0.5m)に関するデータを予め記憶する。なお、本実施形態では、画像情報と打撃応答情報とを、それぞれの座標により関連付けを行なう。この場合、解析部213は、各座標に対して同一位置と認める許容範囲(誤差範囲)を用いて関連付けを行なう。このため、解析部213は、同一位置と認める許容範囲を記憶している。
【0017】
学習部214は、教師情報を用いた機械学習により、地質を評価するための学習処理を実行する。ここで、学習部214は、撮影画像、打撃応答情報及び地質図情報を用いて、撮影画像及び打撃応答情報を入力とし地質図情報を出力とする予測モデルを生成するように学習する。本実施形態では、機械学習として、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)を用いるが、これに限定されるものではない。
【0018】
予測部215は、学習部214による学習結果を用いて、地質を評価する処理を実行する。CNNにおいては、入力層において入力された情報を用いて、多層に重ね合わせた畳み込み層、プーリング層を介して、全結合層において特徴量から最終的な判定を行なう。畳み込み層では、種々のフィルタを介して、岩質、岩級及び割れ目の局所領域の特徴を捉える。プーリング層では、畳み込み層で得られた特徴点を代表的な数値に置き換える。本実施形態では、予測部215は、岩質、岩級及び割れ目をそれぞれ判定するための学習結果を保持する。なお、本実施形態では、全結合層において、畳み込み層、プーリング層から出力された特徴量に応じて、分類器(例えば、SVM:Support Vector Machine)を用いて、分析結果と、岩質、岩級及び割れ目とを結び付け、分析のための閾値を決定する。
【0019】
地質図作成部216は、予測部が予測した地質情報に基づいて地質図を作成し、この地質図を出力する処理を実行する。本実施形態では、地質図作成部216は、後述する岩質予測図、岩級予測図及び割れ目予測図を作成する。
【0020】
図2(a)に示すように、画像情報記憶部22には、地質を評価するための学習や予測に用いる画像管理データ220が記憶される。この画像管理データ220は、後述する撮影工程において、ダムの建設現場で露出している地盤を撮影した場合に記録される。各画像管理データ220は、撮影位置、撮影条件、被写体位置、撮影画像に関するデータを含んで構成される。
【0021】
撮影位置データ領域及び撮影条件データ領域には、撮影装置10の設置位置及び撮影条件に関するデータが記録される。
被写体位置データ領域には、撮影された画像に含まれる被写体の位置(座標)に関するデータが記録される。この被写体位置は、撮影位置及び撮影条件に基づいて特定される。
撮影画像データ領域には、この撮影位置において被写体を撮影した撮影画像(フルカラー画像)データが記録される。
【0022】
図2(b)に示すように、打撃応答情報記憶部23には、打撃応答管理データ230が記録される。この打撃応答管理データ230は、後述する打撃検査工程において、岩検ハンマーによる打撃検査を行なった場合に記録される。打撃応答管理データ230は、打撃位置、打撃応答に関するデータを含んで構成される。
【0023】
打撃位置データ領域には、打撃による応答を測定した位置(座標)に関するデータが記録される。本実施形態では、打撃を与えた岩検ハンマーにおいて応答を測定しているため、応答を測定した位置は、打撃を与えた位置(座標)である。
【0024】
打撃応答データ領域には、この打撃位置において取得した打撃応答に関するデータが記録される。本実施形態では、打撃応答データとして、打撃音、振動、反発力、加速度の振動数分布、加速度の時間変化等に関するデータが記録される。
【0025】
地質図記憶部24には、地質専門技術者によって作成された地質図(地質情報)に関するデータが記憶される。この地質図は、地質専門技術者が地質図を作成して入力部31を介して入力された場合に記録される。この地質図記憶部24には、岩質区分図データ、岩級区分図データ、割れ目区分図データが記憶される。各区分図データには、地質位置としての空間的配置(緯度、経度、高度)に関するデータが関連付けられている。なお、この空間的配置は、学習対象領域内の座標である。
【0026】
岩質区分図データは、学習対象領域について、岩質の種類が区分されて表示されたマップである。岩質としては、火山岩類、堆積岩類及び変成岩類等がある。
岩級区分図データは、学習対象領域について、岩級が区分されて表示されたマップである。岩級としては、A級岩盤、B級岩盤、CH級岩盤、CM級岩盤、CL級岩盤、D級岩盤等がある。
割れ目区分図データは、学習対象領域について、割れ目(クラック、節理、断層)、割れ目の形状及び走行・傾斜が表示されたマップである。
【0027】
図2(c)に示すように、教師情報記憶部25には、地質評価のための学習を行なう教師情報が記憶される。この教師情報は、学習処理を行なう前に記録される。教師情報には、分割位置、分割画像、線分情報、地質図情報(割れ目)、区画範囲座標、画像解析結果、地質図情報(岩質、岩級)、打撃位置及び打撃応答解析結果が含まれる。本実施形態では、学習対象範囲を分割した分割領域毎や各分割画像に含まれる線分で区切られる領域(区画)毎に教師情報を生成する。
【0028】
分割位置データ及び分割画像データは、撮影画像において分割した各分割領域の位置を特定するための識別子(座標)及びその領域の画像である。
線分情報は、分割画像において抽出された線分の空間的配置(座標)を特定するための情報である。分割画像から、複数本の線分が抽出できた場合には、すべてを線分情報として記録する。
【0029】
地質図情報(割れ目)は、この分割画像に対応する範囲の割れ目区分図である。
区画範囲座標は、各区画の範囲を特定するための座標である。
画像解析結果は、この区画の画像を解析したデータである。この画像解析結果には、例えば、画像の色彩分布、色度分布、濃度(光沢)分布及び陰影等の情報が含まれる。
【0030】
地質図情報(岩質・岩級)は、この区画に対応する範囲の岩質区分図及び岩級区分図である。
打撃位置は、この区画内に含まれる打撃による応答を測定した位置(座標)である。
打撃応答解析結果は、この打撃位置において取得した打撃応答情報の解析結果である。この打撃応答解析結果には、例えば、打撃応答情報の打撃音、振動及び加速度を周波数解析した値やグラフ(分布図)等が含まれる。
【0031】
図1に示す学習結果記憶部26には、地質図を作成するための予測モデル(学習結果)が記憶される。この学習結果は、後述する学習処理が実行された場合に記録される。本実施形態では、座標を介して関連付けられた線分情報、画像解析結果、打撃応答解析結果及び地質図情報等を用いて、岩質、岩級及び割れ目をそれぞれ予測するための予測モデル(岩質予測モデル、岩級予測モデル及び割れ目予測モデル)が記憶される。
【0032】
予測結果記憶部27には、撮影画像や打撃応答情報に基づいて予測した予測地質図情報が記憶される。この地質図は、後述するように、予測処理を行なった場合に記録される。この地質図情報記憶部27には、予測した地質をマッピングした予測岩質区分図、予測岩級区分図、予測割れ目区分図が記憶される。
【0033】
次に、
図3~
図7を用いて、地質評価装置20により地質を評価する場合の処理手順について説明する。ここでは、学習工程及び予測処理の順番で説明する。
<学習工程>
学習工程においては、まず、学習対象領域を撮影する撮影工程(ステップSA1)、学習対象領域について岩検ハンマーを用いた打撃検査工程(ステップSA2)を行なう。そして、地質評価装置20は、撮影画像、打撃応答情報及び地質図情報を用いて教師データ作成処理(ステップSA3)を実行し、教師情報を用いた学習処理(ステップSA4)を実行する。以下、撮影工程、打撃検査工程、教師データ作成処理及び学習処理の詳細について説明する。
【0034】
(撮影工程)
まず、
図4に示すように、撮影装置10を用いて、柔らかい土や硬い岩盤等を含む地盤の対象領域を撮影し、撮影画像を生成する。この場合、撮影装置10は、撮影条件(角度や向き等)と、RTK-GPS機能に基づく撮影位置(座標)とを、撮影画像に関連付けてメモリに記憶する。
【0035】
次に、撮影装置10は、撮影者の指示に応じて撮影装置10に記憶した撮影画像を地質評価装置20に送信する。この場合、撮影装置10は、撮影画像と、これに関連付けた撮影条件及び撮影位置とを送信する。
【0036】
そして、地質評価装置20の制御部21は、撮影画像の登録処理を実行する。具体的には、制御部21の画像管理部211は、取得した撮影画像、撮影条件及び撮影位置を含む画像管理データ220を生成して、画像情報記憶部22に記憶する。更に、画像管理部211は、撮影画像及び撮影条件から被写体位置を特定し、画像管理データ220に記録する。
【0037】
(打撃検査工程)
更に、
図4に示すように、打撃解析装置15を用いて、岩検ハンマーによる打撃処理を実行する。この場合、撮影工程において撮影した対象領域における岩盤の所定の位置を、作業者が岩検ハンマーで打撃する。そして、打撃解析装置15は、打撃応答情報を取得した場合、打撃位置と関連付けて打撃応答情報を地質評価装置20に送信する。なお、本実施形態では、対象領域において所定の位置が偏らずに、まんべんなく打撃するものとする。
【0038】
地質評価装置20の制御部21は、打撃応答情報の登録処理を実行する。具体的には、制御部21の打撃応答管理部212は、打撃応答情報と打撃位置(座標)とを含めた打撃応答管理データ230を生成し、打撃応答情報記憶部23に記憶する。
【0039】
(教師データ作成処理)
次に、
図5を用いて、教師データ作成処理を説明する。
まず、地質評価装置20の制御部21は、画像の分割処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、制御部21の解析部213は、画像情報記憶部22に記憶されている画像管理データ220を取得する。そして、解析部213は、画像管理データ220の撮影条件から撮影画像の大きさを特定し、記憶している分割基準サイズに近いサイズで等分となるように、撮影画像を分割して分割画像を生成する。次に、解析部213は、撮影画像における分割画像の位置と被写体位置及び撮影条件に基づいて、分割画像の空間的配置(座標)を特定し、この座標(分割位置)を、分割画像と関連付けてメモリに記憶する。
【0040】
次に、地質評価装置20の制御部21は、学習対象の分割領域の1つを特定する。
そして、地質評価装置20の制御部21は、線分を抽出して区画の特定処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部21の解析部213は、エッジ抽出、線分判定のパターン認識を用いて、線分を抽出する。この線分は、クラック、節理、断層等の割れ目と判定される候補部分である。更に、解析部213は、分割画像の空間的配置及び分割画像における線分の位置から、抽出した線分の空間的配置(座標)を特定する。この場合、解析部213は、記憶している許容範囲を用いて、各座標に対する同一位置を特定して、各座標の特定を実行する。そして、制御部21は、特定した区画の範囲を特定する区画範囲座標を、分割位置と関連付けてメモリに記憶する。
【0041】
次に、地質評価装置20の制御部21は、抽出した線分で囲まれた領域(区画)の1つを特定する。
そして、地質評価装置20の制御部21は、画像解析処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、制御部21の解析部213は、分割画像から区画範囲座標に応じて抽出した画像(区画画像)についての画像解析により、画像解析結果を取得し、区画範囲座標と関連付けてメモリに記憶する。
【0042】
次に、地質評価装置20の制御部21は、打撃応答の解析処理を実行する(ステップS1-4)。具体的には、制御部21の解析部213は、打撃応答情報記憶部23から、この区画に含まれる打撃位置の打撃応答管理データ230を取得する。そして、解析部213は、取得した打撃応答管理データ230の打撃応答を周波数解析し、解析結果(打撃応答解析結果)を、打撃位置及び区画範囲座標と関連付けてメモリに記憶する。
【0043】
次に、地質評価装置20の制御部21は、地質図情報の取得処理を実行する(ステップS1-5)。具体的には、制御部21の解析部213は、区画範囲座標に対応する地質図(岩質、岩級)を地質図記憶部24から抽出し、区画範囲座標に関連付けてメモリに記憶する。
そして、地質評価装置20の制御部21は、上記ステップS1-3~S1-5の処理を、すべての区画について実行したか否かの判定処理を実行する(ステップS1-6)。ここで、まだ処理を実行していない区画がある場合(ステップS1-6において「NO」の場合)には、地質評価装置20の制御部21は、未処理の区画の1つを特定し、ステップS1-3以降の処理を実行する。なお、ステップS1-3~S1-5の処理は、この順番に実行する場合に限られず、順番を入れ替えて実行してもよい。
【0044】
一方、すべての区画について、ステップS1-3~S1-5を実行した場合(ステップS1-6において「YES」の場合)、メモリには、分割位置に関連付けられて分割画像、線分情報及び区画範囲座標が記憶される。更に、メモリには、区画範囲座標に関連付けられた画像解析結果、地質図情報(岩質、岩級)及び打撃位置が記憶され、打撃位置に関連付けられて打撃応答解析結果が記憶される。
【0045】
次に、地質評価装置20の制御部21は、教師情報としての記録処理を実行する(ステップS1-7)。具体的には、制御部21の解析部213は、メモリに記憶している情報を、教師情報として教師情報記憶部25に記憶する。更に、解析部213は、分割画像に対応する地質図(割れ目)を地質図記憶部24から抽出し、教師情報に含める。
そして、地質評価装置20の制御部21は、学習対象の分割領域のすべてについて処理を実行したか否かの判定処理を実行する(ステップS1-8)。ここで、まだ処理を実行していない分割領域がある場合(ステップS1-8において「NO」の場合)には、未処理の分割領域の1つを特定し、ステップS1-2以降の処理を実行する。
一方、すべての分割領域について処理を実行した場合(ステップS1-8において「YES」の場合)には、教師データ作成処理を終了する。
【0046】
(学習処理)
図6を用いて、予測モデルを生成する学習処理(ステップSA4)を説明する。
まず、制御部21の学習部214は、教師情報記憶部25に記録されている教師情報を取得し、メモリに記憶する。
【0047】
そして、学習部214は、教師情報の分割画像、線分情報、画像解析結果及び打撃応答解析結果を入力層として用い、これらに関連付けられた地質情報(割れ目、岩質、岩級)を出力層として用いて、CNNを使った深層学習を行なうことにより、各地質情報についての学習結果を算出する。この場合、地質情報(割れ目、岩質、岩級)毎に学習を行なう。
【0048】
具体的には、学習部214は、教師情報の線分情報、画像解析結果及び打撃応答解析結果を用いた学習により、地質図情報(岩質)における各座標の岩質を予測するための岩質予測モデルを生成する。また、学習部214は、教師情報の線分情報を入力層として用いた学習により、地質図情報(割れ目)における各座標の割れ目を予測するための割れ目予測モデルを生成する。次に、予測部215は、予測した岩質及び割れ目(の位置に応じた間隔及び数)と、線分情報、画像解析結果及び打撃応答解析結果とを入力層として用いた学習により、地質図情報(岩級)における各座標の岩級を予測するための岩級予測モデルを生成する。
【0049】
<予測工程>
次に、評価対象領域において地質評価を行なう予測工程について説明する。
図3に示すように、予測工程においては、学習工程のステップSA1,SA2と同様に、評価対象領域を撮影する撮影工程(ステップSB1)、評価対象領域について岩検ハンマーを用いた打撃検査工程(ステップSB2)を行なう。
【0050】
そして、地質評価装置20は、撮影画像及び打撃応答情報を用いて、データ関連付け処理(ステップSB3)、予測処理(ステップSB4)及び地質図作成処理(ステップSB5)を実行する。以下、データ関連付け処理、予測処理及び地質図作成処理の詳細について説明する。
【0051】
(データ関連付け処理)
このデータ関連付け処理では、評価対象領域における画像情報と打撃応答情報とを関連付ける。ここでは、
図5に示す教師データ作成処理において、ステップS1-5,S1-7の処理を除いた、画像の分割処理~打撃応答解析処理(ステップS1-1~ステップS1-4,S1-6,S1-8)を実行する。この場合、メモリには、評価対象領域における撮影画像を分割した領域を特定する分割位置、分割画像、線分情報、区画範囲座標、画像解析結果、打撃位置及び打撃応答解析結果が関連付けられた情報(関連付け情報)が記憶される。
【0052】
(予測処理)
次に、
図7を用いて、予測処理(ステップSB4)について説明する。
制御部21の予測部215は、分割領域毎や区画毎に、メモリに記憶されている関連付け情報を取得し、地質情報の予測を実行する。
【0053】
この場合、予測部215は、学習結果記憶部26から岩質予測モデルを取得し、関連付け情報を用いて各区画における岩質を予測する。そして、予測した区画における岩質を、その区画範囲座標と関連付けてメモリに記憶する。ここでは、予測した区画における岩質として、予測した種類の岩質を特定する識別子を記憶する。
【0054】
更に、予測部215は、学習結果記憶部26から割れ目予測モデルを取得し、分割画像及び線分情報を用いて、各分割領域における割れ目を予測する。そして、予測した割れ目に関する情報を、その割れ目の座標と関連付けてメモリに記憶する。
【0055】
次に、予測部215は、学習結果記憶部26から岩級予測モデルを取得し、予測した岩質及び割れ目と、関連付け情報とを用いて、各区画における岩級を予測する。そして、予測した区画における岩級を、その区画範囲座標と関連付けてメモリに記憶する。ここでは、予測した区画における岩級として、予測した種類の岩級を特定する識別子を記憶する。
【0056】
(地質図作成処理)
そして、評価対象領域に含まれるすべての分割画像についての予測を終了した場合、地質評価装置20の制御部21は、地質図作成処理(ステップSB5)を実行する。具体的には、制御部21の地質図作成部216は、メモリに記憶された地質情報(岩質、岩級、割れ目)を、地質情報に関連付けられた座標を用いて、マッピングし、予測岩質区分図、予測岩級区分図、予測割れ目区分図を生成する。ここで、岩質及び岩級においては、各種類の識別子に応じて同一種類を特定し、各種類の範囲(区分)を特定する。そして、制御部21の地質図作成部216は、作成した各区分図を、予測結果記憶部27に記録し、出力部32に表示する。
【0057】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、地質評価装置20の制御部21は、教師情報の画像解析結果、線分情報及び打撃応答解析結果、地質専門技術者が作成した地質図情報を用いて深層学習を行なうことにより、各地質情報についての学習結果を生成する。制御部21は、関連付け情報及び学習結果を用いて、各区画における地質情報を予測する。これにより、地質専門技術者の負担を軽減し、効率的に地質評価を行なうことができる。
【0058】
(2)本実施形態では、地質評価装置20の制御部21は、分割画像、画像解析結果、打撃応答解析結果及び地質図情報を、空間的位置(座標)に基づいて関連付ける。これにより、画像情報や打撃応答情報、地質図情報を個別に取得しても、これらを用いて地質情報を評価することができる。
【0059】
(3)本実施形態では、地質評価装置20の制御部21は、線分で区分けされた区画の区画範囲座標毎に、岩質及び岩級を予測する。そして、制御部21は、各区画において予測した岩質及び岩級を、その区画範囲座標に応じてマッピングすることにより、地質図を作成する。これにより、評価した地質を地質図として出力することができる。
【0060】
(4)本実施形態では、地質評価装置20の制御部21は、予測した岩質及び割れ目と、区画画像、線分情報及び打撃応答情報とを用いて、岩級を予測する。岩級は、岩質や割れ目の間隔や数によって決まるため、より的確に岩級を特定することができる。
【0061】
(5)本実施形態では、地質評価装置20の制御部21は、撮影画像を分割した分割画像を生成し、各分割画像に応じた教師情報を生成する。これにより、制御部21は、撮影画像から複数の教師情報を生成して学習するので、効率的に学習を行なうことができる。
【0062】
(6)本実施形態では、地質評価装置20の制御部21は、撮影装置10及び打撃解析装置15からそれぞれ撮影位置及び打撃位置を取得する。これにより、野外では、撮影工程(ステップSA1,SB1)及び打撃検査工程(ステップSA2,SB2)の作業を行なうので、野外作業を少なくすることができる。
【0063】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、地質評価装置20の制御部21は、教師データ作成処理(ステップSA3)及びデータ関連付け処理(ステップSB3)において、分割基準サイズに近いサイズで等分となるように撮影画像を分割した。撮影画像の分割方法は、これに限定されない。例えば、撮影画像の画像状況に応じて分割サイズを変更するようにしてもよい。ここでは、画像の色彩分布や濃度の変化が大きい領域には小さい分割サイズを用い、変化が小さい領域には大きな分割サイズを用いる。
【0064】
また、打撃位置に応じて、分割サイズを変更するようにしてもよい。例えば、制御部21は、打撃応答情報の密集度に応じてサイズを決定し、このサイズに応じて画像を分割打撃位置が密集している領域には小さい分割サイズを用いる。
【0065】
また、教師データ作成処理(ステップSA3)において、制御部21は、分割したすべての分割領域について教師情報を生成した後、同じ撮影画像を、分割する位置や大きさを変更した画像から、再度、教師情報を生成してもよい。この場合、同じ撮影画像を用いて、より多くの教師情報を生成することができる。
【0066】
更に、データ関連付け処理(ステップSB3)において、制御部21は、評価対象領域を分割したすべての分割領域について関連付け情報を生成した後、その評価対象領域を、分割する位置や大きさを変更して、再度、関連付け情報を生成してもよい。この場合には、評価対象領域の関連付け情報を多く用いて予測することができるので、地質情報の精度を高めることができる。
【0067】
・上記実施形態において、撮影装置10としてカメラを用いて説明した。撮影装置10は、これに限らず、撮影情報と位置情報とが取得できる撮影装置であればよい。例えば、カメラに加えて、レーザスキャナを用いてもよい。この場合には、レーザスキャナで、学習対象領域や評価対象領域を走査し、レーザスキャナから対象領域までの距離に基づく表面の状態を用いて、学習処理や予測処理を行なってもよい。
・上記実施形態において、地質評価装置20の制御部21は、地盤を撮影した画像情報や打撃応答情報を用いて地質を評価した。地質を評価するために用いる情報は、画像情報や打撃応答情報に限られない。例えば、温度情報を用いて地質を評価してもよい。具体的には、サーモグラフィを用いて、地盤表面から地盤(地質)の温度を計測し、計測した低温度領域を(温度の違いから)湧水箇所(湧水の位置)を判定する。そして、湧水箇所の大きさや位置から、又は湧水箇所を地質図に含めて、地質を評価してもよい。
【0068】
・上記実施形態において、打撃解析装置15は、RTK-GPS等の位置特定機能を備える。打撃応答を取得した位置を特定する方法は、これに限られない。例えば、自動追尾TS(トータルステーション)や位置計測モジュール等を用いてもよい。
【0069】
更に、打撃検査工程において、作業者が打撃する位置を、画像や割れ目の状態に応じて、地質評価装置20が、作業者に指示してもよい。例えば、打撃検査工程において、地質評価装置20の制御部21は、対象領域の画像を解析し、この画像における線分を抽出する。そして、制御部21は、画像解析において色彩分布や濃度の変化が小さかったり線分同士の距離があったりする箇所は、打撃する所定位置の間隔を広くして打撃するように、作業者に指示する。これにより、効率的に地質を判定することができる。
【0070】
・上記実施形態において、地質評価装置20の制御部21は、地質専門技術者が作成した地質図を用いて、学習処理を実行した。地質位置に関連付けた地質情報は、地質図に限られず、評価対象領域において地質専門技術者が判定した複数の地点における地質情報を用いてもよい。
・上記実施形態において、地質評価装置20の制御部21は、CNNを用いた深層学習によって、地質予測モデルを算出する。制御部21が用いる機械学習は、これに限定されない。例えば、撮影画像、打撃応答情報、地質情報に含まれる多様な情報を、重み付けしながら相互に結び付けたネットワークを構成した地質予測モデルを算出してもよい。この場合、撮影画像、打撃応答情報から地質情報を予測するための雛形予測モデル(例えば、雛形ネットワーク)を準備する。例えば、この雛形予測モデルとしては、汎用的に利用可能なように、各ノード間を統計的な重み付け値で結合したネットワークを用いる。そして、学習対象領域の複数の位置の撮影画像、打撃応答情報を雛形予測モデルに入力し、雛形予測モデルからの出力値と、地質専門技術者によって作成された地質図の値と比較して、両者が近くなるように重み付けの調整するフィードバックを繰り返す。そして、複数の位置における両者の差分が許容範囲に含まれる場合に、この調整された予測モデル(ネットワーク)を地質予測モデルとして用いる。
【符号の説明】
【0071】
10…撮影装置、15…打撃解析装置、20…地質評価装置、21…制御部、22…画像情報記憶部、23…打撃応答情報記憶部、24…地質図記憶部、25…教師情報記憶部、26…学習結果記憶部、27…予測結果記憶部、31…入力部、32…出力部、211…画像管理部、212…打撃応答管理部、213…解析部、214…学習部、215…予測部、216…地質図作成部、220…画像管理データ、230…打撃応答管理データ。