(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 7/48 20060101AFI20221109BHJP
B29B 7/74 20060101ALI20221109BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20221109BHJP
B29B 7/90 20060101ALI20221109BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20221109BHJP
【FI】
B29B7/48
B29B7/74
B29B7/84
B29B7/90
B29C48/40
(21)【出願番号】P 2018190580
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清野 幸一
(72)【発明者】
【氏名】上城 剛
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-076327(JP,A)
【文献】特開2006-001252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-7/94,
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を溶融押出する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、添加材を供給するサイドフィーダよりも下流に、複数の真空ベントを連続したバレルに設け、前記複数の真空ベント間に混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックを配置した二軸押出機を用
い、前記複数の真空ベント間に配置したニーディングブロックが、下記のスクリュ構成(A)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(A)混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLaと、ディスクの長径Dとの比La/Dが0.05~0.2で、捩れ角度βが30°~60°、羽根の数が5~7枚であるニーディングブロック
【請求項2】
前記添加材を供給するサイドフィーダよりも下流側であって、かつ前記複数の真空ベントの上流側に設けた混練ゾーンのスクリュ構成が、前記混練ゾーンの最下流に下記(B)~(D)から選ばれる少なくとも1種のスクリュエレメントを配置し、前記混練ゾーンの最上流に下記(E)のスクリュエレメントを配置する構成であることを特徴とする請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(B)混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLaと、ディスクの長径Dとの比La/Dが0.1~0.5で、捩れ角度βが10°~80°、且つ羽根の数が5枚以上であるニーディングブロック
(C)スクリュフライト部が1リード中に5~20箇所切り欠かれたミキシングスクリュ
(D)スクリュリード長さLbと、スクリュの直径Dとの比Lb/Dが0.2~2.0の逆ネジスクリュ
(E)混練用スクリュの回転方向と順方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLaと、ディスクの長径Dとの比La/Dが0.05~1.0で、捩れ角度βが20°~90°、且つ羽根の数が5枚以上であるニーディングブロック
【請求項3】
前記複数の真空ベントにおいて、最上流に位置する真空ベント口における真空度がゲージ圧で-80~-60kPaであり、最下流に位置する真空ベント口における真空度がゲージ圧で-90kPa以下であることを特徴とする請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を含み、前記サイドフィーダよりガラス繊維をサイドフィードして溶融混練することを特徴とする、請求項1~
3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関するものであり、詳しくは、熱可塑性樹脂を二軸押出機で溶融押出するに際し、ベントアップの発生を抑制し、連続運転時間を延長することで、生産効率を向上させることのできる熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂組成物は、押出機で熱可塑性樹脂を混練し、造粒したあと、成形加工機による製品の生産用に供給されている。この樹脂組成物を製造する押出機は、メインホッパーから熱可塑性樹脂を供給し、熱可塑性樹脂を樹脂溶融混練ゾーンで溶融させ、サイドフィーダから添加材を供給し、当該添加材はサイドフィーダより下流の添加材分散混練ゾーンで溶融した樹脂に混練し、下流の真空ベントで脱気されて、押出機より吐出する工程が一般的である。前記の真空ベントでは熱可塑性樹脂、添加材からの揮発性物質や水分等を真空化で除去する(脱気する)ことで、高品質の熱可塑性樹脂組成物を製造している。
【0003】
しかしながら、二軸押出機を連続運転していくうちに、次第に真空ベントの開口部に溶融した熱可塑性樹脂が付着して塞いでしまい、最終的には開口部に付着した熱可塑性樹脂が盛り上がってくる、いわゆるベントアップが生じる。ベントアップが生じると、脱気が行われなくなるばかりでなく、押出機の正常運転ができなくなり、押出機のメンテナンスのために運転を中断せざるを得ず、生産効率に支障をきたすことになる。
【0004】
そこで、従来、熱可塑性樹脂の真空ベントアップを抑制する方法としては、次のような方法が知られている。
【0005】
例えば、サイドフィーダを設置した二軸押出機において、サイドフィーダ下流の混練ゾーンを特定のリード長さ、構成とすることで、粉体強化材を樹脂に均一分散させ、かつベントアップ等のトラブルを発生させることなく、生産性を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、二軸押出機の樹脂溶融混練ゾーンにおいて、圧縮部とその下流側の溶融部に特定のニーディングディスクやスクリューエレメント、バリスターリングを用いて、ベントアップや未溶融樹脂を発生させずに押出効率を向上させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、粉体フィラーの搬送効率を高めて、更に粉体フィラーの分散性を良好とする方法として、二軸押出機の最も上流に位置する第一混練ゾーンに特定の組み合わせのニーディングブロックを使用し、当該混練ゾーンの下流に大気ベント及び/又は真空ベントを設けることが提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
また、樹脂組成物の溶融混練時において残存物を効率的に除去する方法として、押出機のシリンダーに配設されたスクリュの可塑化部、昇圧部の位置や、シリンダーのベント部の位置を調整することが提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
また、成形時における成形金型への付着物を低減させる方法として、樹脂組成物の製造工程において、押出機の可塑化部で可塑化した後、可塑化部の下流に位置する第1ベント口から排気しながら、可塑化された樹脂を混練部に送り、混練部の上流に位置する副原料フィード口から充填剤を供給し、可塑化された樹脂と充填剤を混練して樹脂組成物としながら、混練部の下流に位置する第2ベント口から排気する製造方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10-180841号公報
【文献】特開平10-180840号公報
【文献】特開2013-913号公報
【文献】国際公開第2012/147185号
【文献】国際公開第2005/056260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された製造方法は、粉体状強化材を樹脂に均一分散させてベントアップを防止する方法の記載はあるが、効率よく混練時の発生ガスを脱気する方法の記載は無い。
【0012】
また、特許文献2に記載された製造方法は、添加材をメインホッパーから供給した際のベントアップ抑制方法の記載はあるが、添加材をサイドフィードした際の真空ベントアップ抑制により押出効率を向上させる方法の記載は無い。
【0013】
また、特許文献3に記載された製造方法は、粉体フィラーの分散方法を向上させる方法の記載はあるが、効率よく混練時の発生ガスを脱気する方法、脱気を目的とした真空ベントのベントアップを防止する方法の記載は無い。
【0014】
また、特許文献4には、ベントの位置と昇圧部の位置関係によって樹脂組成物の溶融混練時残存物を効率的に除去する方法の記載はあるが、真空ベントアップを抑制する方法については記載が無い。
【0015】
また、特許文献5には、副原料フィード口の前段からベントで排気し、さらに副原料フィード口の後段からベントで排気することで、成形時の金型付着物を低減した樹脂組成物を得る方法の記載はあるが、真空ベントアップを抑制する方法の記載は無い。
【0016】
そこで、本発明は、二軸押出機の真空ベントアップを抑制し、二軸押出機の連続運転時間を延長することが可能な、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前述した課題を解決するために、検討を重ねた結果、達成されたものであって、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、次の態様である。
(1)熱可塑性樹脂を溶融押出する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、添加材を供給するサイドフィーダよりも下流に、複数の真空ベントを連続したバレルに設け、前記複数の真空ベント間に混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックを配置した二軸押出機を用い、前記複数の真空ベント間に配置したニーディングブロックが、下記のスクリュ構成(A)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(A)混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLaと、ディスクの長径Dとの比La/Dが0.05~0.2で、捩れ角度βが30°~60°、羽根の数が5~7枚であるニーディングブロック
(2)前記添加材を供給するサイドフィーダよりも下流側であって、かつ前記複数の真空ベントの上流側に設けた混練ゾーンのスクリュ構成が、前記混練ゾーンの最下流に下記(B)~(D)から選ばれる少なくとも1種のスクリュエレメントを配置し、前記混練ゾーンの最上流に下記(E)のスクリュエレメントを配置する構成であることを特徴とする(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(B)混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLaと、ディスクの長径Dとの比La/Dが0.1~0.5で、捩れ角度βが10°~80°、且つ羽根の数が5枚以上であるニーディングブロック
(C)スクリュフライト部が1リード中に5~20箇所切り欠かれたミキシングスクリュ
(D)スクリュリード長さLbと、スクリュの直径Dとの比Lb/Dが0.2~2.0の逆ネジスクリュ
(E)混練用スクリュの回転方向と順方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLaと、ディスクの長径Dとの比La/Dが0.05~1.0で、捩れ角度βが20°~90°、且つ羽根の数が5枚以上であるニーディングブロック
(3)前記複数の真空ベントにおいて、最上流に位置する真空ベント口における真空度がゲージ圧で-80~-60kPaであり、最下流に位置する真空ベント口における真空度がゲージ圧で-90kPa以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)熱可塑性樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を含み、ガラス繊維をサイドフィードして溶融混練することを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、二軸押出機の真空ベントアップを抑制し、二軸押出機の連続運転時間を延長させて、熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。そのため、熱可塑性樹脂組成物の生産性を向上させることができる。
【0019】
得られる熱可塑性樹脂組成物は、発生ガスの少ない高品質の樹脂組成物を提供できるため、次工程の成形加工の際に、成形品の外観不良等を発生させること無く、成形品不良を低減させることが可能となり、成形加工品の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明における熱可塑性樹脂の製造方法において用いられる二軸押出機の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明における(A)のニーディングブロックを説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、本発明における(C)のミキシングスクリュを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、メインホッパーより熱可塑性樹脂を供給し、サイドフィーダより添加材を供給して溶融混練する熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法について、図を用いて説明する。
図1は、本発明における二軸押出機の概略図である。
【0022】
図1において、押出機1は、樹脂と添加材などを溶融混練する機械であり、
図1中、2は押出機スクリュ、3はメインホッパー、4はオープンベント、5はサイドフィーダ、6は第一真空ベント口、7は第二真空ベント口、8はスクリュの樹脂供給ゾーン、9は樹脂溶融ゾーン、10はオープンベントゾーン、11はオープンベントとサイドフィーダ間のシールゾーン、12はサイドフィーダからの添加材供給ゾーン、13は混練ゾーン、14は第一真空ベントゾーン、15は真空ベント間のシールゾーン、16は第二真空ベントゾーン、17は樹脂吐出ゾーンである。
【0023】
本発明における二軸押出機は、一般的にはペレット状樹脂を得るのに用いられるが、本発明における二軸押出機はこれに限定されるものではなく、シートまたはフィルム成形ができるものであってもよい。例えば、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械社製のTEMシリーズ、日本製鋼所社製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0024】
本発明における二軸押出機は、そのL/D(L=押出機スクリュ長さ(単位:mm)、D=押出機スクリュ直径(単位:mm))が30~80であることが好ましい。L/Dを30以上とすることで所望のスクリュ構成を得ることができ、L/Dを80以下とすることで樹脂の滞留時間が長くなり過ぎず樹脂の分解劣化を抑制できるため好ましい。
【0025】
本発明においては、特にサイドフィーダ5から下流の真空ベント構成とスクリュ構成に特徴を有するものである。また本発明においては、メインホッパーより熱可塑性樹脂を供給し、サイドフィーダより添加材を供給する。
図1に示されるメインホッパー3から供給される熱可塑性樹脂は、樹脂供給ゾーン8で、押出機内部で加熱されながら搬送され、樹脂溶融ゾーン9で加熱されながら混練されることで溶融する。サイドフィーダ5から供給された添加材は、溶融された熱可塑性樹脂と共に添加材供給ゾーン12で押出機内部を加熱されながら搬送され、混練ゾーン13で熱可塑性樹脂に分配、分散される。混練ゾーン13では、下記スクリュ構成を採用することにより、熱可塑性樹脂に添加材が十分に分配、分散される。添加材の分配、分散が不十分であると第一真空ベント口6、第二真空ベント口7で熱可塑性樹脂と添加材が混合された樹脂組成物がベントアップし易くなるので好ましくない。熱可塑性樹脂と添加材は第一真空ベントゾーン14で熱可塑性樹脂と添加材から発生した揮発物や水分を除いた後、真空ベント間のシールゾーン15で押出機内部に充満され、第一真空ベントゾーン14と連続したバレルに設置した第二真空ベントゾーン16で更に熱可塑性樹脂に起因する分解ガスなどを取り除き、樹脂吐出ゾーン17から樹脂組成物を押し出す。真空ベントゾーンを連続したバレルに設けることで、必要なバレル数を低減して二軸押出機の費用を抑え、且つ省スペースとすることができ、尚且つ効率よく混練ゾーンからの発生ガスを脱気することができ、更に吐出ゾーンの直前に設けることで脱気した後の押出機滞留時間を抑え、熱可塑性樹脂に残存するガスを低減することができる。なお、真空ベントが3つ以上の場合は、真空ベントのいずれか2つを連続したバレルに設けることが好ましく、複数の真空ベントがすべて連続したバレルに設けられることがさらに好ましい。
【0026】
本発明における真空ベント間のシールゾーンのスクリュ構成(A)の例を、
図2に示す。真空ベント間のシールゾーンには、混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックを配置する。1枚あたりの羽根厚みLa(単位:mm)とディスク長径D(単位:mm)との比La/Dが0.05~0.2の範囲にあるニーディングブロックが好ましい。0.05以上であるとディスクの機械的強度が十分で実用性がある範囲であり好ましい。また、0.2以下とすることで熱可塑性樹脂と添加材が押出機内部に過度に充満するのを抑制し第1真空ベント口のベントアップが発生しにくくなるので好ましい。更に好ましいLa/Dは0.1~0.15の範囲である。また、羽根の捩れ角度βは30°~60°の範囲である。30°以上とすることで熱可塑性樹脂と添加材が押出機内部に過度に充満するのを抑制し第1真空ベント口のベントアップが発生しにくくなり、60°以下とすることで真空ベント間のシール性を十分に保つことができ好ましい。更に好ましい捩れ角度βは40°~50°である。更に本発明におけるスクリュー構成(A)では羽根の数が5~7枚であることが好ましい。5枚以上であると真空ベント間のシール性が向上し、7枚以下であると熱可塑性樹脂と添加材が押出機内部に過度に充満するのを抑制し第1真空ベント口のベントアップを抑制することができ、好ましい。
【0027】
本発明における複数の真空ベント前に設けた混練ゾーンのスクリュ構成は、後述する(B)、(C)および(D)から選ばれる少なくとも1種のスクリュエレメントを前記混練ゾーンの最下流に配置し、さらに前記混練ゾーンの最上流に下記(E)のスクリュエレメントを配置するスクリュ構成であることが好ましい。(E)のスクリュエレメントは、熱可塑性樹脂と添加材を充分に分散混合して真空ベントアップを抑制する観点から複数用いることが好ましい。具体的には、上流から下流に向かって、(E)+(E)+(B)、(E)+(E)+(C)、(E)+(E)+(D)、(E)+(E)+(B)+(C)、(E)+(E)+(B)+(D)等の配置とすることが挙げられる。
【0028】
本発明で用いるスクリュ構成(B)は、混練用スクリュの回転方向と逆方向に捩るニーディングブロックで、1枚あたりの羽根厚みLaとディスク長径Dとの比La/Dが0.1~0.5の範囲にあるものが好ましい。0.1以上であると、熱可塑性樹脂と添加材が充分に分散混合され添加材の分散不良が発生しないため好ましく、0.5以下とすることで添加材としてガラス繊維を用いた場合に過剰に切断されることがなく好ましい。また、羽根の捩れ角度βは10°~80°の範囲であることが好ましい。10°以上では添加材としてガラス繊維を用いた場合に過剰に切断されることがなく、80°以下とすることで熱可塑性樹脂と添加材が充分に分散混合され添加材の分散不良を抑制することができ好ましい。更に本発明では羽根の数が5枚以上であることが好ましい。羽根の数が5枚以上であると熱可塑性樹脂と添加材が充分に分散混合することができ好ましい。
【0029】
本発明で用いるスクリュ構成(C)の例を
図3に示すが、スクリュ構成(C)は、スクリュフライト部が1リード中に5~20箇所切り欠かれたミキシングスクリュである。ここでいう1リードとは、スクリュを1回転したときのスクリュ長さである。切欠き数が5箇所以上では添加材の分配力が向上、切欠き数が20箇所以下とすることでスクリュ自体の機械的強度も維持できるため好ましい。
【0030】
本発明で用いるスクリュ構成(D)は逆ネジスクリュであり、スクリュリード長さLb(単位:mm)とスクリュ長径D(単位:mm)との比Lb/Dが0.2~2.0の範囲であることが好ましい。Lb/Dが0.2以上であると押出機内部での圧力が高くなり過ぎず、2.0以下とすることで熱可塑性樹脂と添加材とを充分に分散混合することができ好ましい。
【0031】
本発明で用いるスクリュ構成(E)は、混練用スクリュの回転方向と順方向に捩るニーディングブロックであり、1枚あたりの羽根厚みLa(単位:mm)とディスク長径D(単位:mm)との比La/Dが0.05~1.0であることが好ましい。La/Dが0.05以上であるとディスクの機械的強度が十分で実用性があり好ましい。1.0以下とすることで添加材としてガラス繊維を用いた場合に過剰に切断されることがなく好ましい。また、羽根の捩れ角度βが20°~90°の範囲であることが好ましい。20°以上では推進力が強すぎることがないので添加材としてガラス繊維を用いた場合に過剰に切断されることがなく好ましい。90°以下とすることで推進力が得られ熱可塑性樹脂と添加材とが充分に分散混合され、好ましい。更に本発明では羽根の数が5枚以上であることが好ましい。羽根の数が5枚以上であると推進力が得られ熱可塑性樹脂と添加材とが充分に分散混合され好ましい。
【0032】
更に本発明においては、混練ゾーンを複数設けてもよい。
【0033】
本発明においては、複数の真空ベント(例えば第一真空ベント口6、第二真空ベント口7)を、添加材を供給するサイドフィーダよりも二軸押出機の下流側に、連続したバレルに設置することが必須である。本発明における真空ベントとは、真空度がゲージ圧で-60kPa以下のものである。ベントの向きは上向きのトップベントであることが好ましい。トップベントであると熱可塑性樹脂と添加材がベントアップし難いが、サイドベントであるとベントアップし易くなる。また、ベントの開口部の面積Vaをスクリュ直径Dの2乗で除したVa/D2は0.05~0.4が好ましい。Va/D2が0.05以上であると熱可塑性樹脂と添加材の混合物からの脱気効率が向上するため好ましく、0.4以下とすることで、ベントアップしにくくなるので好ましい。
【0034】
本発明の製造方法では、前記真空ベントの最上流に位置する真空ベント口における真空度がゲージ圧で-80~-60kPaであることが好ましい。真空度が-60kPa以下であると、熱可塑性樹脂組成物の脱気を十分に行うことができ、真空度が-80kPa以上とすることでベントアップを抑制できるため好ましい。
【0035】
本発明の製造方法で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレンジカルボキシレート樹脂、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、水添または未水添SBS樹脂(スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体)および水添または未水添SIS樹脂(スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体)、SEBS樹脂(水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられるが、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。また、混合する樹脂は必ずしも1種である必要は無く、2種以上併用して使用してもよい。また、ポリエステル系樹脂の中でも、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。また、原料の熱可塑性樹脂組成物の形状としては、ペレット状、粉体などが挙げられる。
【0036】
本発明で用いられる添加材としては、繊維状もしくは板状、鱗片状、粒状、不定形状および破砕品状など非繊維状の充填材が挙げられる。具体的には、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維やケブラーフィブリルなどの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、Eガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Hガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Aガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Cガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、天然石英ガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、合成石英ガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ロックウール、アルミナ水和物(ウィスカー・板状)、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、タルク、カオリン、シリカ(破砕状・球状)、石英、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、マイカ、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化アルミニウム(破砕状)、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの金属酸化物、水酸化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの金属水酸化物、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、および金属リボンなどが挙げられるが、ガラス繊維をサイドフィードすることが好ましい。
【0037】
上記のような熱可塑性樹脂組成物には、他の付加成分を加えることもでき、付加成分はメインホッパーからの供給、サイドフィーダからの供給、およびメインホッパとサイドフィーダからの分割供給の何れの供給方法でもよい。付加成分としては、例えば、離型剤、燐系抗酸化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、滴下防止剤、着色剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などを挙げることができる。本発明の効果を損なわない範囲で、付加成分を配合することができる。
【0038】
本発明の製造方法を用いて得られた熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能である。また、射出成形や押出成形、ブロー成形、トランスファー成形などを経て様々な用途に使用可能である。例えば、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、混合弁、ポンプ部品、パイプジョイント、継手類(エルボ、チーズ、ソケットなど)、水量調節弁、減圧弁、逃がし弁、電磁弁、三方弁、サーモバルブ、湯温センサー、水量センサー、浴槽用アダプタ、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、およびケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
【実施例】
【0039】
次に、実施例および比較例によって、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法と効果を具体的に説明する。実施例および比較例における押出機、評価方法について説明する。
【0040】
(1)二軸押出機
二軸押出機は、日本製鋼所製TEX44αIIを用いて、真空ベントの数、真空ベント間のスクリュエレメント、混練ゾーンのスクリュ構成、真空ベント口における真空度を変更して実験を行った。熱可塑性樹脂を供給するフィーダはクボタ製のスクリュ式カセットウェイングフィーダ、添加材を供給するフィーダはクボタ製の振動式カセットウェイングフィーダを用いた。吐出量は300kg/Hr、スクリュ回転数は300rpm、シリンダ設定温度は300℃とした。得られる熱可塑性樹脂組成物は、ペレットとして得た。なお、二軸押出機における真空ベントが2基の場合は、連続したバレルに真空ベントを設けた。
【0041】
(2)使用した原料
実施例、比較例に用いた原料は以下の通りである。
【0042】
実施例の熱可塑性樹脂はポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド66樹脂を用いた。
【0043】
[参考例1]ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)の合成
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.45kg(71.07モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
【0044】
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを酸素気流下、200℃で熱処理し、粉体形状の乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂を得た。得られたポリフェニレンスルフィド樹脂は、溶融粘度が80Pa・s、灰分が0.16重量%であった。
【0045】
[参考例2]ポリアミド66樹脂の合成
実施例および比較例で用いたポリアミド66樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸の等モル塩を秤量し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、撹拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を300℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥し、相対粘度2.7のポリアミド66樹脂を得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
【0046】
ガラス繊維は、日本電気硝子株式会社製ガラスファイバー「ECS 03 T-747GH」を用いた。
【0047】
(3)上流側真空ベントのベントアップ時間
熱可塑性樹脂の溶融混練を開始し、4時間毎に最上流側真空ベントを開放して目視確認し、ベントアップの有無を確認した。
【0048】
(4)下流側真空ベントのベントアップ時間
熱可塑性樹脂の溶融混練を開始し、4時間毎に最下流側真空ベントを開放して目視確認し、ベントアップの有無を確認した。
【0049】
(5)加熱減量
熱可塑性樹脂の溶融混練を開始し、24時間連続運転後に得られた熱可塑性樹脂組成物ペレット10gを130℃×2時間乾燥後に340℃のオーブンに入れ、2時間の加熱を行い、下記式により重量減少率を評価した。
{(加熱後重量(g)-加熱前重量(g))/加熱前重量(g)}×100=加熱減量(%)
【0050】
重量減少率が大きい場合は熱可塑性樹脂組成物からのガス発生量が多いために好ましくなく、重量減少率が小さい場合は熱可塑性樹脂組成物からのガス発生量が少ないため好ましい。
【0051】
混練ゾーンにおいて用いたスクリュ構成を以下に示す。
(B)逆方向捩れニーディングブロック:羽根厚みLa/ディスク長径D=0.2、ねじれ角度β=45°、羽根の数=5枚
(C)逆ネジミキシングスクリュ:切り欠き13箇所
(D)逆ネジスクリュ:スクリュリード長さLb/スクリュ直径D=1.0
(E-1)順方向捩れニーディングブロック:羽根厚みLa/ディスク長径D=0.2、ねじれ角度β=45°、羽根の数=5枚
(E-2)純方向捩れニーディングブロック:羽根厚みLa/ディスク長径D=0.2、ねじれ角度β=90°、羽根の数=5枚。
【0052】
(実施例1)
参考例1のPPS樹脂100重量部とガラス繊維70重量部を、二軸押出機で溶融混練した。真空ベントの数は2基とした。真空ベント間のスクリュエレメントはLa/Dを0.1、混練用スクリュの回転方向と逆方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロックとした。混練ゾーンのスクリュ構成は、最上流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、その下流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを90°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、最下流に13箇所の切り欠きを有する逆ネジのミキシングスクリュを配した。上流側の真空ベント口における真空度はゲージ圧で-60kPa、下流側の真空ベント口における真空度はゲージ圧で-95kPaとした。上流側真空ベントのベントアップ時間は20時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は40時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.4%であった。
【0053】
(実施例2)
実施例1から、混練ゾーンのスクリュ構成を変更した。最上流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、その下流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを90°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、最下流にLb/Dが1.0の逆ネジスクリュを配した。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は16時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は32時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.4%であった。
【0054】
(実施例3)
実施例1から、混練ゾーンのスクリュ構成を変更した。最上流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、その下流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを90°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、最下流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と逆方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロックを配した。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は16時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は32時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.4%であった。
【0055】
(実施例4)
実施例1から、最上流に位置する真空ベント口における真空度を変更し、-95kPaとした。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は14時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は28時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.4%であった。
【0056】
(実施例5)
実施例1から、混練ゾーンのスクリュ構成を変更した。最上流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と順方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロック、最下流にLa/Dを0.2、混練用スクリュの回転方向と逆方向の捩れ角度βを45°、羽根の数を5枚のニーディングブロックを配した。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は16時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は32時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.4%であった。
【0057】
(実施例6)
実施例1から、熱可塑性樹脂組成物の原料を変更した。ポリアミド66樹脂(参考例であげたポリアミド66樹脂)100重量部とガラス繊維80重量部を、二軸押出機で溶融混練した。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は24時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は48時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.3%であった。
【0058】
(比較例1)
実施例1から、真空ベント間のスクリュエレメントを変更した。真空ベント間のスクリュエレメントはLb/Dが1.0の逆ネジスクリュとした。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は8時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は16時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.8%であった。
【0059】
(比較例2)
実施例1から、真空ベント間のスクリュエレメントを変更した。真空ベント間のスクリュエレメントは13箇所の切り欠きを有する逆ネジのミキシングスクリュとした。その他は実施例1と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は8時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は16時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.8%であった。
【0060】
(比較例3)
実施例1から、真空ベントの数を変更した。真空ベントの数は1基とした。PPS樹脂(参考例であげたPPS)100重量部とガラス繊維70重量部を、二軸押出機で溶融混練した。混練ゾーンのスクリュ構成は実施例1と同一とした。真空ベントのベントアップ時間は16時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.8%であった。
【0061】
(比較例4)
実施例6から、真空ベント間のスクリュエレメントを変更した。真空ベント間のスクリュエレメントはLb/Dが1.0の逆ネジスクリュとした。その他は実施例5と同一とした。上流側真空ベントのベントアップ時間は10時間、下流側真空ベントのベントアップ時間は20時間であった。得られた熱可塑性樹脂組成物の加熱減量は0.6%であった。
【0062】
上記の結果を、表1(実施例)および表2(比較例)に示す。実施例と比較例の結果から、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法が、真空ベントアップを抑制して二軸押出機の連続運転時間を長時間化し、押出効率を向上させるのに適した製造方法であることがわかった。
【0063】
【0064】
【符号の説明】
【0065】
1.押出機
2.押出機スクリュ
3.メインホッパー
4.オープンベント
5.サイドフィーダ
6.第一真空ベント口
7.第二真空ベント口
8.スクリュの樹脂供給ゾーン
9.樹脂溶融ゾーン
10.オープンベントゾーン
11.オープンベントとサイドフィーダ間のシールゾーン
12.サイドフィーダからの添加材供給ゾーン
13.混練ゾーン
14.第一真空ベントゾーン
15.真空ベント間のシールゾーン
16.第二真空ベントゾーン
17.樹脂吐出ゾーン