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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/02 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
G01N3/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018194485
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063926
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 晃平
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-351655(JP,A)
【文献】特開2009-204092(JP,A)
【文献】特開平11-083710(JP,A)
【文献】特開平11-218478(JP,A)
【文献】特開平09-229837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0011873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が与えられる試験片を保持するクロスヘッドと、前記クロスヘッドの支持部に設けられるナットと、前記ナットと螺合して前記クロスヘッドの支持部を移動自在に支持するねじ棹と、を有する材料試験機であって、
前記ねじ棹の周面を包囲し、前記クロスヘッドと一体となって前記支持部の移動方向の前方を移動する筒状部材を備え、
前記ナットは前記支持部の中に設けられ、
前記筒状部材は前記支持部に固定され
前記筒状部材の先端は、
前記クロスヘッドが前記試験片を保持する保持箇所よりも前記移動方向とは反対方向に後退した位置に配置されている
ことを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
前記筒状部材は、少なくとも手指との接触により歪む程度の柔軟性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の機械的な特性や性質を測定するための材料試験を行う材料試験機として、引張試験機や、硬さ試験機、疲労試験機といった各種の試験機が知られている。
材料試験機は、一般に、試験対象の試験片に負荷を与える負荷機構と、負荷機構を制御する制御装置と、試験片に与えられている負荷を測定する負荷測定器と、を備え、負荷によって試験片に生じた所定の物理量の変化を測定する。
また負荷機構として、試験片を支持するクロスヘッド、を備え、当該クロスヘッドをねじ棹に連結し、ねじ棹を回転させることで移動させる機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-17579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ねじ棹にユーザの手指が不意に触れていると、移動しているクロスヘッドに手指が接触することがある。これを防止するために、ねじ棹の全長をカバー等で覆い隠す構成もあり得るが、構成が複雑化して装置コストが増大する、という問題がある。
【0005】
本発明は、構成の複雑化を招くことなくクロスヘッドと手指の接触を回避できる材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、負荷が与えられる試験片を保持するクロスヘッドと、前記クロスヘッドの支持部に設けられるナットと、前記ナットと螺合して前記クロスヘッドの支持部を移動自在に支持するねじ棹と、を有する材料試験機であって、前記ねじ棹の周面を包囲し、前記クロスヘッドと一体となって前記支持部の移動方向の前方を移動する筒状部材を備え、前記ナットは前記支持部の中に設けられ、前記筒状部材は前記支持部に固定され、前記筒状部材の先端は、前記クロスヘッドが前記試験片を保持する保持箇所よりも前記移動方向とは反対方向に後退した位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記筒状部材は、少なくとも手指との接触により歪む程度の柔軟性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、手指がクロスヘッドの支持部に接触するよりも先に筒状部材が手指に触れるので、ユーザはクロスヘッドの接近を速やかに察知し、クロスヘッドと手指との接触を回避できる。さらに、ねじ棹の全長をカバー等で覆い隠す必要もないので装置構成の複雑化、及び高コスト化を招くこともない。
第2の発明によれば、筒状部材が手指と接触した際には容易に変形し、手指に過度な衝撃や負担を与えることがない。
第3の発明によれば、筒状部材が試験片の保持箇所を越えて試験空間に入り込むことがなく、筒状部材が試験空間の横幅や高さを狭めることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る材料試験機の斜視図である。
図2】材料試験機の正面図である。
図3】下部クロスヘッドにおけるカバーリング部材の取付箇所を拡大して示す図である。
図4】下部クロスヘッドにおけるカバーリング部材の取付箇所の平面図である。
図5】下部クロスヘッドの移動時に伴う筒状部材と手指の接触を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る材料試験機1の斜視図であり、図2は材料試験機1の正面図である。
本実施形態の材料試験機1は、試験対象の材料である試験片TPに試験力を与えて材料試験を行うものであり、装置の基台2と、負荷機構6と、を備える。
負荷機構6は、試験片TPに負荷である試験力を与えるものである。
本実施形態の負荷機構6は、上下に離間配置され、その間の試験空間Saで試験片TPを保持するつかみ具を有した上部クロスヘッド10及び下部クロスヘッド12と、上部クロスヘッド10を固定する支柱14と、この支柱14を上部クロスヘッド10とともに上昇駆動する駆動源16(図2)と、を備える。駆動源16によって上部クロスヘッド10が下部クロスヘッド12から離間移動することで、上部クロスヘッド10と下部クロスヘッド12とで保持されている試験片TPに引張荷重の試験力が与えられる。
【0012】
本実施形態の負荷機構6は、図1に示すように、基台2の上面に載置された扁平なテーブル20を備え、このテーブル20に一対の上記支柱14が立設され、これら支柱14に上部クロスヘッド10が固定されている。そして駆動源16はテーブル20を下面側から押し上げることで、一対の支柱14及び上部クロスヘッド10を一体的に上昇させている。駆動源16は特に限定されるものではないが、本実施形態では、テーブル20(上部クロスヘッド10)を油圧源による油圧で上昇させ、下降時は、それらの自重によって下降させるラムシリンダが用いられ、基台2の中に収められている。
【0013】
基台2には、図2に示すように、テーブル20、及び上部クロスヘッド10の移動量(上昇量)を測定する移動量測定器22と、駆動源16の駆動によって得られる試験力を測定する試験力測定器24と、が設けられている。また試験空間Saには、物理量測定器の一態様である伸び計26が設けられており、試験片TPの伸び量や歪みが測定される。
材料試験機1には、図2に示すように、当該材料試験機1の各部を制御する制御装置30が並置されており、これら移動量測定器22、試験力測定器24、及び伸び計26の測定値が制御装置30に逐次に出力される。
【0014】
また負荷機構6において、下部クロスヘッド12は、上部クロスヘッド10と独立して昇降可能(移動可能)に設けられている。
具体的には、図1に示すように、テーブル20には、一対のねじ棹50が立設されており、下部クロスヘッド12の両端には、ねじ棹50に結合されて支持される支持部15が設けられている。各支持部15の中にはナット13が設けられており、各ナット13がねじ棹50に螺合することで支持部15が支持される。基台2には、図2に示すように、一対のねじ棹50を同期して回転させる回転駆動機構52が収められており、回転駆動機構52によってねじ棹50が回転することで、下部クロスヘッド12がねじ棹50に沿って昇降(移動)する。回転駆動機構52には、例えば電動モータや油圧モータの適宜の駆動源が用いられ、制御装置30によって制御される。下部クロスヘッド12が昇降することで、上部クロスヘッド10との間の試験空間Saの高さが調整される。
【0015】
本実施形態の材料試験機1では、下部クロスヘッド12とテーブル20との間を試験空間Sbとして用いて、試験片TPに圧縮荷重を試験力として与える圧縮試験が実施可能になっている。すなわち、下部クロスヘッド12、及びテーブル20のそれぞれには、板状の圧縮片54が対面する位置に設けられている。圧縮試験時には、ユーザは、下部クロスヘッド12を昇降して試験空間Sbの高さを調整して各圧縮片54の間に試験片TPを配置した後、駆動源16がテーブル20を上昇させることで試験片TPに試験力を与えられる。下部クロスヘッド12には、力測定器であるロードセルが設けられており、圧縮試験時の試験力がロードセルで測定され制御装置30に出力される。
【0016】
なお、材料試験機1では、上部クロスヘッド10、及びテーブル20を昇降自在に構成したが、これに限らない。
すなわち、材料試験機1は、上部クロスヘッド10、及びテーブル20を固定したまま、下部クロスヘッド12を回転駆動機構52によって昇降させることで、試験片TPに引張荷重や圧縮荷重などの試験力を与える構成であってもよい。
【0017】
このように負荷機構6が備える下部クロスヘッド12は、試験空間Sa、Sbの調整や試験力付与のために、ねじ棹50の回転によって昇降する。
そして本実施形態では、下部クロスヘッド12の昇降時にユーザが手指をねじ棹50に触れていても、下部クロスヘッド12に手指が接触する前にユーザが下部クロスヘッド12の接近を確実に察知可能にするためのカバーリング部材60を下部クロスヘッド12に設けている。
【0018】
図3は、下部クロスヘッド12におけるカバーリング部材60の取付箇所を拡大して示す断面図であり、図4は下部クロスヘッド12におけるカバーリング部材60の取付箇所の平面図である。
前掲図1図2に示すように、カバーリング部材60は、下部クロスヘッド12におけるねじ棹50の挿通箇所のそれぞれに取付られている。各カバーリング部材60は、図3、及び図4に示すように、ねじ棹50の全周を包囲する筒状部材62と、この筒状部材62を下部クロスヘッド12に固定する固定具64とを備える。
【0019】
固定具64は、円環板状のフランジ部70と、このフランジ部70と同軸に一体に設けられた筒状の取付片72とを有した金具であり、下部クロスヘッド12の支持部15に固定される。
具体的には、支持部15の筐体には、図4に示すように、ねじ棹50の挿入孔59が形成されており、フランジ部70は、この挿入孔59よりも大きな径を成し、挿入孔59を包囲した状態で支持部15にねじ止め固定される。取付片72は、ねじ棹50の周面50Sとの間に隙間δをあけた状態で、当該ねじ棹50に沿って延び、この取付片72の先端部72Aに筒状部材62がねじ止めされる。なお、下部クロスヘッド12への固定具64の固定、及び固定具64への筒状部材62の固定には、ねじ止め以外にも適宜の締結具を用いることができる。
【0020】
本実施形態では、筒状部材62は、厚みが比較的薄い筒状を成し、少なくと手指との接触によって歪む程度の柔軟性を有した素材(例えばゴム製シートなど)で形成されている。
なお、筒状部材62は、帯状のシート状の部材を取付片72に巻き回して筒状に形成されてもよく、また、取付片72に係合する径の筒状に予め成形された部材であってもよい。
【0021】
この構成において、筒状部材62は、ねじ棹50の周面50Sを包囲した状態で、下部クロスヘッド12と一体となってねじ棹50に沿って移動する。このとき、図2に示すように、下部クロスヘッド12が上昇するとき(試験空間Saの側に移動するとき)には、下部クロスヘッド12の支持部15の上面側に配置された筒状部材62が当該支持部15よりも移動方向Cの前方を移動する。これとは逆に、下部クロスヘッド12が下降するとき(試験空間Sbの側に移動するとき)には、下部クロスヘッド12の支持部15の下面側に配置された筒状部材62が、当該支持部15よりも移動方向Cの前方を移動する。
【0022】
すなわち、図5に示すように、ねじ棹50に手指Fが触れた状態で下部クロスヘッド12が移動した場合でも、手指Fが下部クロスヘッド12の支持部15に接触するよりも先に筒状部材62が手指Fに触れるので、ユーザは下部クロスヘッド12(支持部15)の接近を速やかに察知し、下部クロスヘッド12と手指Fとの接触を回避できる。さらに、筒状部材62が柔軟性を有した素材で形成されているため、手指Fと接触した際には容易に変形し、手指Fに過度な衝撃や負担を与えることがない。
【0023】
ここで、カバーリング部材60において、ねじ棹50に沿った筒状部材62の長さL(図3)が長いほど(筒状部材62の先端62Aが下部クロスヘッド12の支持部15から遠いほど)、より早く手指Fに筒状部材62を接触させ、ユーザに下部クロスヘッド12の接近を察知させることができる。
しかしながら、筒状部材62の径は、少なくともねじ棹50よりも大きいため、当該筒状部材62が試験空間Sa、Sbに延在すると、試験空間Sa、Sbの横幅(一対のねじ棹50の間の距離)を狭めてしまう。さらにテーブル20と下部クロスヘッド12との間の試験空間Sbにあっては、筒状部材62の長さLがながいほど、筒状部材62がテーブル20に接触せずに移動可能な距離が短くなり、試験空間Sbの高さも制限されることになる。
したがって、筒状部材62の長さLは、試験空間Sa、Sbの横幅や高さへの影響を考慮した長さに設定されることが好ましい。
【0024】
本実施形態の材料試験機1では、図5に示すように、下部クロスヘッド12が試験片TPを保持する保持箇所80より、筒状部材62の先端62Aが移動方向Cとは反対方向に後退した位置に配置されている。
具体的には、下部クロスヘッド12の支持部15において、ねじ棹50の挿入孔59の形成箇所15Aは、移動方向Cとは反対方向に距離Eだけ保持箇所80よりも後退した位置に形成されている。また挿入孔59の形成箇所15Aからカバーリング部材60の筒状部材62の先端62Aまでの長さが、この後退の距離E以下となるように筒状部材62の長さLが設定されている。
【0025】
これにより、下部クロスヘッド12の支持部15の上面側、及び下面側のいずれの筒状部材62においても、その先端62Aが保持箇所80よりも移動方向C(上面側にあっては上昇方向、下面側にあっては下降方向)とは反対方向に後退した位置に配置される。
したがって、筒状部材62が試験片TPの保持箇所80を越えて試験空間Sa、Sbに入り込むことがなく、筒状部材62が試験空間Sa、Sbの横幅や高さを狭めることがない。
【0026】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0027】
本実施形態の材料試験機1は、ねじ棹50の周面50Sを包囲し、下部クロスヘッド12と一体となって当該下部クロスヘッド12の支持部15の移動方向C前方を移動する筒状部材62を備える。
これにより、手指Fが下部クロスヘッド12の支持部15に接触するよりも先に筒状部材62が手指Fに触れるので、ユーザは下部クロスヘッド12(支持部15)の接近を速やかに察知し、下部クロスヘッド12と手指Fとの接触を回避できる。さらに、ねじ棹50の全長をカバー等で覆い隠す必要もなく装置構成の複雑化、及び高コスト化を招くことがない。
【0028】
本実施形態の材料試験機1において、筒状部材62は、少なくとも手指との接触により歪む程度の柔軟性を有するので、筒状部材62が手指Fと接触した際には容易に変形し、手指Fに過度な衝撃や負担を与えることがない。
【0029】
本実施形態の材料試験機1において、筒状部材62の先端62Aは、下部クロスヘッド12が試験片TPを保持する保持箇所80よりも移動方向Cとは反対方向に後退した位置に配置されている。
これにより、筒状部材62が試験片TPの保持箇所80を越えて試験空間Sa、Sbに入り込むことがなく、筒状部材62が試験空間Sa、Sbの横幅や高さを狭めることがない。
【0030】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0031】
上述した材料試験機1において、ねじ棹50を回転させて下部クロスヘッド12を移動させたが、これに限らず、下部クロスヘッド12が備えるナット13を回転駆動して移動させてもよい。
【0032】
本発明は、上述した材料試験機1に限らず、負荷が与えられる試験片を保持するクロスヘッドと、当該クロスヘッドの支持部を移動自在に支持するねじ棹と、を有する材料試験機であれば、任意の試験機に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 材料試験機
6 負荷機構
12 下部クロスヘッド(クロスヘッド)
13 ナット
15 支持部
50 ねじ棹
50S ねじ棹の周面
60 カバーリング部材
62 筒状部材
62A 筒状部材の先端
64 固定具
80 保持箇所
C 移動方向
F 手指
L 筒状部材の長さ
Sa、Sb 試験空間
TP 試験片
図1
図2
図3
図4
図5