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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】液体噴射装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221109BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221109BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20221109BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/01 403
B41J2/14
B41J2/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018196578
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2019166823
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2018054068
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡沢 宣昭
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163290(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130695(WO,A1)
【文献】特開2016-041489(JP,A)
【文献】特開2018-099791(JP,A)
【文献】特開2014-184682(JP,A)
【文献】特開2017-065138(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002220(WO,A1)
【文献】特開2013-154649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0147879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置であって、
液体を噴射するためのノズルと、
前記ノズルに連通する圧力室と、
前記圧力室に連通する第1個別流路と、
前記圧力室に連通する第2個別流路と、
前記圧力室内の液体の圧力を変化させる圧力発生部と、
前記圧力発生部を駆動するための制御部と、
を備え、
前記第1個別流路と前記第2個別流路とのいずれか一方を介して、前記圧力室内に液体が供給され、他方を介して、前記圧力室内に前記供給された液体の少なくとも一部が排出され、
前記制御部は、前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記圧力発生部を駆動することによって前記ノズルを介して前記圧力室内に気泡状の空気を導入する、
液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記ノズルを介して前記圧力室内に導入された前記気泡状の空気は、前記第1個別流路と前記第2個別流路とのうち、前記他方を介して前記圧力室から排出される、
液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記圧力発生部は、前記圧力室に設けられ、
前記制御部は、前記圧力発生部を駆動することによって前記圧力室内の液体を減圧して、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入する、
液体噴射装置。
【請求項4】
請求項に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む前記ノズルから液体を噴射ための第1駆動波形と、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入するための第2駆動波形とを用いて前記圧力発生部を駆動し、
前記第2駆動波形における前記第1波形部分の傾きの大きさは、前記第1駆動波形における前記第1波形部分の傾きの大きさよりも大きい、
液体噴射装置。
【請求項5】
請求項に記載の液体噴射装置であって、
前記第2駆動波形における前記第2波形部分の傾きの大きさは、前記第1駆動波形における前記第2波形部分の傾きの大きさよりも小さい、
液体噴射装置。
【請求項6】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む前記ノズルから液体を噴射ための第1駆動波形と、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入するための第2駆動波形とを用いて前記圧力発生部を駆動し、
前記第2駆動波形における前記第1波形部分の振幅の大きさは、前記第1駆動波形における前記第1波形部分の振幅の大きさよりも大きい、
液体噴射装置。
【請求項7】
液体噴射装置であって、
液体を噴射するためのノズルと、
前記ノズルに連通する圧力室と、
前記圧力室に連通する第1個別流路と、
前記圧力室に連通する第2個別流路と、
前記ノズルを挟んで前記圧力室の反対側に設けられ、前記ノズルを介して前記圧力室内の液体の圧力を変化させる圧力発生部と、
前記圧力発生部を駆動するための制御部と、
を備え、
前記第1個別流路と前記第2個別流路とのいずれか一方を介して、前記圧力室内に液体が供給され、他方を介して、前記圧力室内に前記供給された液体の少なくとも一部が排出され、
前記制御部は、前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記圧力発生部を駆動することによって前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入する、
液体噴射装置。
【請求項8】
液体噴射装置であって、
液体を噴射するためのノズルと、
前記ノズルに連通する圧力室と、
前記圧力室に連通する第1個別流路と、
前記圧力室に連通する第2個別流路と、
前記圧力室内の液体の圧力を変化させる圧力発生部と、
前記圧力発生部を駆動するための制御部と、
を備え、
前記第1個別流路と前記第2個別流路とのいずれか一方を介して、前記圧力室内に液体が供給され、他方を介して、前記圧力室内に前記供給された液体の少なくとも一部が排出され、
前記制御部は、
前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記圧力発生部を駆動することによって前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入し、
前記ノズルから前記圧力室内に空気を導入した後、予め定められた第1期間は、前記ノズルからの液体の噴射を行わない、
液体噴射装置。
【請求項9】
請求項に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、前記圧力室内の液体が排出される流路を前記第1個別流路と前記第2個別流路とで入れ替えた場合には、前記第1期間を変更する、
液体噴射装置。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、前記ノズルから導入される空気の体積が前記ノズルの容積以上となるように、前記圧力発生部を駆動する、
液体噴射装置。
【請求項11】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
前記ノズルは、第1径部と、前記第1径部よりも内径の大きい第2径部とを有し、
前記制御部は、前記ノズルから導入される空気の体積が前記第1径部の容積以上となるように、前記圧力発生部を駆動する、
液体噴射装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、前記ノズルからの液体の噴射を予め定められた第2期間行わない場合には、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入する、
液体噴射装置。
【請求項13】
液体を噴射するためのノズルと前記ノズルに連通する圧力室と前記圧力室に連通する第1個別流路と前記圧力室に連通する第2個別流路とを備える液体噴射装置において実行される方法であって、
前記第1個別流路と前記第2個別流路とのいずれか一方を介して前記圧力室内に液体を供給するとともに、前記供給された液体の少なくとも一部を、他方を介して前記圧力室内から排出させ、かつ、前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記圧力室内の液体の圧力を変化させることによって前記ノズルを介して前記圧力室内に気泡状の空気を導入する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置に関して、例えば、特許文献1には、インクを噴射するノズルを備えた液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドにインクを循環させるインク循環系とを備えた液体噴射装置が開示されている。この液体噴射装置では、インク循環系を流れるインクの圧力を上下させることによって、ノズル出口近傍のインクに圧力変化を伝え、ノズル出口近傍に形成されるインクのメニスカス面を往復移動させることによって、インクの増粘抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-234175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した液体噴射装置では、ノズル出口近傍におけるインクの増粘抑制を図るために、インク循環系を流れるインクの圧力を上下させている。そのため、ノズル出口近傍におけるインクの増粘抑制のための動作を短時間で完了することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、液体噴射装置が提供される。この液体噴射装置は、液体を噴射するためのノズルと;前記ノズルに連通する圧力室と;前記圧力室に連通する第1個別流路と;前記圧力室に連通する第2個別流路と;前記圧力室内の液体の圧力を変化させる圧力発生部と;前記圧力発生部を駆動するための制御部と;を備える。前記第1個別流路と前記第2個別流路とのいずれか一方を介して、前記圧力室内に液体が供給され、他方を介して、前記圧力室内から前記供給された液体の少なくとも一部が排出され;前記制御部は、前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記圧力発生部を駆動することによって前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】液体噴射装置の構成を模式的示す説明図。
図2】液体噴射ヘッドについて分解して示す説明図。
図3】液体噴射ヘッドについての3-3線断面における断面模式図。
図4】液体噴射ヘッドにおける液体の流路を示す説明図。
図5】1つのノズルに連通する流路について模式的に示す説明図。
図6】液体噴射モードにおける駆動電圧の波形の一例を示す説明図。
図7】空気導入モードにおける駆動電圧の波形の一例を示す説明図。
図8】空気導入モードにおける液体のメニスカスの挙動を示す第1の説明図。
図9】空気導入モードにおける液体のメニスカスの挙動を示す第2の説明図。
図10】空気導入モードにおける液体のメニスカスの挙動を示す第3の説明図。
図11】駆動電圧の波形を示すタイムチャートの第1の例。
図12】駆動電圧の波形を示すタイムチャートの第2の例。
図13】他の形態における駆動電圧の波形の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の実施形態の液体噴射装置100の構成を模式的に示す説明図である。液体噴射装置100は、液体の一例であるインクを媒体12に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。液体噴射装置100は、印刷用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質の印刷対象を媒体12とし、これらの各種の媒体12に対して印刷を行う。図1以降の各図に示したX方向は、後述する液体噴射ヘッド26の移動方向(主走査方向)であり、Y方向は、主走査方向と直交した媒体送り方向(副走査方向)であり、Z方向は、XY平面に直交した方向であり、インク噴射方向に沿った方向である。以下の説明においては、説明の便宜上、主走査方向をX方向、副走査方向をY方向と称する場合もある。また、向きを特定する場合には、方向表記に正負の符合を併用する。
【0008】
液体噴射装置100は、液体容器14と、媒体12を送り出す搬送機構22と、制御部20と、ヘッド移動機構24と、液体噴射ヘッド26と、ヘッドキャップ400とを備える。液体容器14は、液体噴射ヘッド26から噴射されるインクを貯留する。液体容器14としては、可撓性フィルムで形成された袋状のインクパックや、インク補充が可能なインクタンクなどが利用可能である。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、搬送機構22やヘッド移動機構24、液体噴射ヘッド26等を統括制御する。搬送機構22は、制御部20の制御下で動作し、媒体12を+Y方向に送り出す。
【0009】
ヘッド移動機構24は、媒体12の印刷範囲に亘ってX方向に掛け渡されたヘッド移動ベルト23と、液体噴射ヘッド26を収容してヘッド移動ベルト23に固定するキャリッジ25とを備える。ヘッド移動機構24は、制御部20の制御下で動作し、液体噴射ヘッド26を主走査方向(X方向)においてキャリッジ25ごと往復移動させる。キャリッジ25の往復移動の際、キャリッジ25はガイドレールにより案内されるが、このガイドレールについては、図示を省略した。尚、複数の液体噴射ヘッド26をキャリッジ25に搭載したヘッド構成や、液体容器14を液体噴射ヘッド26と共にキャリッジ25に搭載したヘッド構成としてもよい。
【0010】
ヘッドキャップ400は、印刷範囲の+X方向における外側に配置されている。ヘッドキャップ400は、制御部20の制御下で駆動する。ヘッドキャップ400は、キャリッジ25がヘッドキャップ400の上に移動した際に、液体噴射ヘッド26のノズルNからヘッドキャップ400内にインクを排出させる吸引動作やフラッシング動作等のために用いられる。ヘッドキャップ400には、図示しないポンプと廃液タンクとが接続されており、吸引動作の場合、ヘッドキャップ400は、Z方向に駆動されて液体噴射ヘッド26を覆い、当該ポンプの駆動によってヘッドキャップ400内に排出されたインクは、ヘッドキャップ400から廃液タンクへと流れる。尚、例えば、ラインプリンターのように、液体噴射装置100が、液体噴射ヘッド26がキャリッジ25によって移動可能に構成されていない場合には、ヘッドキャップ400が液体噴射ヘッド26の下側まで移動可能に構成されて、液体噴射ヘッド26を覆ってもよい。
【0011】
液体噴射ヘッド26は、液体容器14から供給されるインクを、制御部20の制御下で、複数のノズルNから媒体12に向けて噴射する。液体噴射ヘッド26の往復移動の間のノズルNからのインク噴射により、媒体12に所望の画像等の印刷がなされる。液体噴射ヘッド26は、図1に示すように、複数のノズルNを副走査方向に沿って並べたノズル列を備え、このノズル列を主走査方向に沿って所定の間隔を隔てて2列有する。この2列のノズル列は、図1から図4においては第1ノズル列L1、第2ノズル列L2として示されており、第1ノズル列L1のノズルNと第2ノズル列L2のノズルNとを、主走査方向に並ぶように備える。以下の説明においては、Y軸およびZ軸に平行な平面で、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2とから等間隔なYZ平面を、説明の便宜上、中心面Oとする。尚、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2におけるノズルNの並びは、媒体送り方向(Y方向)にずれた千鳥状の並びでもよい。液体噴射装置100は、第2ノズル列L2を有さず、第1ノズル列L1のみを有する形態であってもよい。液体噴射装置100は、3つ以上のノズル列を有する形態であってもよい。
【0012】
図2は、液体噴射ヘッド26の主要なヘッド構成材を分解視して示す説明図である。図3は、図2における3-3線に沿って液体噴射ヘッド26を断面視して示す説明図である。これらの図に示すように、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2を有する液体噴射ヘッド26は、ヘッド構成材を積層した積層体である。尚、図示する各構成部材の厚みは、実際の構成材厚みを示しているものではない。また、図2においては、図示の都合上、構成材である第1流路基板32の一部の部位が省略されている。
【0013】
図3に示すように、液体噴射ヘッド26は、第1ノズル列L1のノズルNに関連する構成と、第2ノズル列L2のノズルNに関連する構成とを、中心面Oを挟んで面対称に備える。つまり、液体噴射ヘッド26のうち、中心面Oを挟んで+X方向側の第1部分P1と-X方向側の第2部分P2とでは、その構成が共通する。そして、第1ノズル列L1のノズルNは第1部分P1に属し、第2ノズル列L2のノズルNは第2部分P2に属し、中心面Oは第1部分P1と第2部分P2の境界面となる。
【0014】
液体噴射ヘッド26は、主要な構成部材として、液体噴射ヘッド26における流路形成に関与する流路形成部30と、インクの給排に関与する筐体部48とを備える。流路形成部30は、第1流路基板32と第2流路基板34とを積層して構成される。第1流路基板32と第2流路基板34の両基板は、Y方向に長尺なプレート体であり、第1流路基板32における-Z方向の上面Faに、第2流路基板34が接着剤を用いて固定される。
【0015】
第2流路基板34には、その上面Fcの側に、振動部42と、複数の圧電素子44と、保護部材46と、筐体部48とが設置される。振動部42は、第1部分P1から第2部分P2に掛けて設置されるY方向に長尺で薄様状のプレート体である。保護部材46は、第1部分P1から第2部分P2に掛けて設置されるY方向に長尺なプレート体である。この保護部材46は、振動部42の上面側に凹状の空間を形成して、振動部42を覆う。筐体部48は、Y方向に長尺なプレート体である。中心面Oの両側に配置された保護部材46が、筐体部48と第2流路基板34とによって挟持されてもよい。この他、第1流路基板32には、Z方向の下面Fbに、ノズルプレート52と、振動吸収体54とが配置される。ノズルプレート52と振動吸収体54は、共に、Y方向に長尺なプレート体である。ノズルプレート52は、中心面Oを跨いで、第1部分P1から第2部分P2に掛けて設置される。振動吸収体54は、第1部分P1と第2部分P2とに個別に設置される。これら各要素は、接着剤を用いて第1流路基板32の上面Fa或いは下面Fbにそれぞれ接着される。
【0016】
ノズルプレート52は、図2に示すように、第1部分P1のノズルNと第2部分P2のノズルNとを列状に備え、第1部分P1のノズルNが並んだ第1ノズル列L1と第2部分P2のノズルNが並んだ第2ノズル列L2との間に、第2個別流路72を2列、備える。尚、第1個別流路61については、後述する。それぞれのノズルNは、インクを噴射する円形状の貫通孔である。第2個別流路72は、図3に示すように、ノズルプレート52の表面に形成された陥没凹溝である。もちろん、第2個別流路72は、ノズルプレート52の表面に形成された陥没凹溝としてではなく、第1流路基板32の表面に形成された陥没凹溝として設けられてもよい。そして、+X方向側の列の第2個別流路72は、第1ノズル列L1におけるノズルNの隣に形成されており、-X方向側の第2個別流路72は、第2ノズル列L2のノズルNの隣に形成されている。ノズルプレート52は、シリコン(Si)の単結晶基板への半導体製造技術、例えば、ドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術の適用を経て、ノズルNや第2個別流路72を有するよう形成される。
【0017】
振動吸収体54は、図3に示すように、ノズルプレート52と共に液体噴射ヘッド26の底面を形成している。振動吸収体54は、第1流路基板32の下面Fbに接着さることによって、インク流入室Raと第1共通流路60および第1個別流路61の底面を形成する。この振動吸収体54は、例えば、インク流入室Raにおける圧力変動を吸収する可撓性のフィルムと、フィルムを支える基板とによって構成されている。
【0018】
第1流路基板32にノズルプレート52と振動吸収体54とが接着されることによって、第1部分P1と第2部分P2とに、それぞれ、インク流入室Raと、第1共通流路60と、第1個別流路61と、連通路63とが形成され、第1部分P1と第2部分P2とに共通する第2共通流路65が形成される。図2に示すように、インク流入室Raは、第1流路基板32に、Y方向に沿う長尺状の貫通開口として形成されている。第1個別流路61および連通路63とは、第1流路基板32に、貫通孔として形成されている。第1共通流路60は、第1流路基板32の下面Fbに、インク流入室RaからX方向に向かう長尺状の陥没凹溝として形成されている。図3に示すように、第1流路基板32の下面Fbに振動吸収体54が接着されることによって、インク流入室Raと第1共通流路60と第1個別流路61とが形成される。インク流入室Raと第1共通流路60と第1個別流路61とは、それぞれのノズルNへのインク供給に関与する。
【0019】
第2共通流路65は、図2に示すように、第1流路基板32の下面Fbに、Y方向に向かう長尺状に陥没凹溝として形成されている。図3に示すように、第1流路基板32の下面Fbに、ノズルプレート52が接着されることによって、連通路63と第2共通流路65とが形成される。ノズルプレート52は、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれのノズルNと、第2個別流路72とを備える。それぞれのノズルNは、Z方向からの平面視において連通路63に重なる位置に配設される。第2個別流路72は、ノズル列ごとの連通路63と第2共通流路65とを区画する隔壁部69に、Z方向からの平面視において重なる位置に配設される。この第2個別流路72は、第1流路基板32の下面Fbにノズルプレート52が接着されることによって、隔壁部69を跨ぐインク流路となり、ノズルNごとに、連通路63と第2共通流路65とを連通する。第2共通流路65は、ノズルNごとの連通路63から、それぞれの第2個別流路72を介してインクの流入を受けることによって、連通路63からのインク排出に関与する。
【0020】
また、第2共通流路65は、図2に示すように、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2におけるノズルNの並びより長尺な陥没凹溝であって、溝両端に循環口65a、65bを有する。この循環口65a、65bは、陥没凹溝の第2共通流路65の底壁、即ち第1流路基板32を貫通する貫通孔であり、後述の循環機構75における循環配管と接続される。循環口65a、65bは、3-3線断面とは異なる位置において、筐体部48に設けられた流路を介して、循環機構75における循環配管と接続されてもよい。インクは、連通路63に流れ込んだ後に、第2個別流路72を通過して第2共通流路65に入り込み、第2共通流路65の循環口65a、65bを経て液体噴射ヘッド26から排出される。排出されたインクは、後述の循環機構75によって、インク導入口49に循環する。
【0021】
第1流路基板32の上面Faに接着される第2流路基板34は、第1部分P1と第2部分P2のそれぞれに、圧力室Cを形成する。この圧力室Cは、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のノズルNごとに形成されたX方向に沿う貫通孔であり、+Z方向の貫通孔下端側で、第1流路基板32の第1個別流路61および連通路63に連通する。尚、本明細書では、圧力室Cと連通路63とを特に区別せずに説明する場合は、圧力室Cと連通路63とをまとめて圧力室Cと呼ぶこともある。また、圧力室Cは、第2流路基板34と保護部材46とに挟持された振動部42により、-Z方向における貫通孔の上端側が閉鎖される。もちろん、第2流路基板34に設けられた貫通孔と振動部42とによって圧力室Cを形成するのではなく、第2流路基板34と振動部42とを一体的に形成することによって圧力室Cを形成してもよい。このようにして上端側が閉鎖された圧力室Cは、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のノズルNごとのキャビティとして機能する。上記した第1流路基板32と第2流路基板34は、ノズルプレート52と同様、シリコンの単結晶基板への既述した半導体製造技術の適用を経て、形成される。
【0022】
第2流路基板34と保護部材46との間に挟持された振動部42は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動部42の上側には、圧力室Cごとに、圧電素子44が設けられている。よって、1つのノズルNに対して、1つの圧電素子44が設けられている。圧電素子44は、制御部20からの駆動信号を受けて変形する受動素子である。圧電素子44の振動により、圧力室Cにおける供給済みのインクに圧力変化が起きる。この圧力変化は、連通路63を経てノズルNに及ぶ。
【0023】
保護部材46は、それぞれの圧電素子44を保護するための板状部材であり、第2流路基板34との間に振動部42を介在した状態で、第1流路基板32に積層される。保護部材46は、第1流路基板32や第2流路基板34と同様、シリコンの単結晶基板への既述した半導体製造技術の適用を経て形成できるほか、他の材料で形成してもよい。筐体部48は、液体噴射ヘッド26の上面側を覆う部材であり、ヘッド全体の保護と、ノズルNごとの圧力室Cに供給されるインクの貯留および液体容器14(図1参照)からのインク補給に関与する。より具体的には、筐体部48は、第1流路基板32のインク流入室RaにZ方向に重なる上流側インク流入室Rbを備え、この上流側インク流入室Rbと第1流路基板32のインク流入室Raとでインク貯留室(リザーバーR)を形成する。上流側インク流入室Rbへのインク供給は、流入室天井壁のインク導入口49からなされる。筐体部48は、適宜な樹脂材料の射出成形により形成される。
【0024】
図4は、ノズルNへのインク供給経路やインク循環の経路を液体噴射ヘッド26における第1個別流路61等の各種流路形成部を重ねて示す説明図である。尚、図4では、各種経路形成部がZ軸方向から見て重ねて示されている。
【0025】
図示するように、第1流路基板32においてインク流入室Raと第1共通流路60(図3参照)で構成されるリザーバーRは、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2の各ノズル列に沿ってY方向に延在し、第1部分P1においては、第1ノズル列L1におけるそれぞれのノズルNに対応したノズルごとの第1個別流路61と重なる。また、リザーバーRは、第2部分P2において、第2ノズル列L2におけるそれぞれのノズルNに対応した第1個別流路61と重なる。それぞれのノズル列の第1個別流路61は、ノズルNごとの圧力室Cと重なり、この圧力室Cは、それぞれのノズル列の連通路63と重なる。第1流路基板32の連通路63は、図3に示すノズルプレート52のノズルNと重なる。よって、液体容器14から、ポンプ15の圧送圧を受けて供給管16を流れて、リザーバーRに貯留されたインクは、第1個別流路61と圧力室Cを経て連通路63に供給され、圧電素子44の振動を圧力室Cで受けて、ノズルNから噴射される。液体容器14からのインク供給は、後述する液体噴射モードや空気導入モードにおいても継続される(図6図7参照)。
【0026】
ノズルNからのインク噴射に伴い、リザーバーRには、インク導入口49を経て、液体容器14や循環機構75からインクが補給される。循環機構75は、インク貯留槽76と、当該貯留層内の圧力をポンプ15の圧送圧より低圧に調整する圧力調整部77とを備え、第2共通流路65からの後述する循環インクを循環口65aと循環口65bとから受け入れ、その受け入れた循環インクを、インク導入口49を経てリザーバーRに循環させる。インク導入口49を経た循環インクのリザーバーRへの循環は、圧力調整部77の調圧によりなされる。
【0027】
第2共通流路65は、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2との間に、Y方向に延びるように設けられている。第2共通流路65は、+Y方向の端部に循環口65aを備えており、-Y方向の端部に循環口65bを備えている。また、この第2共通流路65は、第1部分P1においては、第1ノズル列L1におけるそれぞれのノズルNに対応した第2個別流路72と重なり、第2部分P2においては、第2ノズル列L2におけるそれぞれのノズルNに対応した第2個別流路72と重なる。よって、圧力室Cへのインク供給が継続されている状況において、圧力室Cおよび連通路63の内容積の和を越えるインクは、連通路63と第2個別流路72とを経て第2共通流路65に押し出され、循環口65a、65bを経て循環機構75に循環インクとして到達し、この循環機構75によりリザーバーRに循環される。
【0028】
図5は、1つのノズルNに連通する流路について模式的に示す説明図である。図5では、図3における第1部分P1を示している。本明細書では、液体噴射装置100内におけるインクの循環に供される流路のことを循環流路200とも呼ぶ。また、それぞれの圧力室Cへとインクが分流した先の流路のことを、個別流路300とも呼ぶ。
【0029】
循環流路200は、第1共通流路60と、複数の個別流路300と、第2共通流路65とを備えている。第1共通流路60の上流側は、液体容器14やインク貯留槽76と連通しており、液体容器14やインク貯留槽76から第1共通流路60内にインクが流入する。第1共通流路60の下流側は、複数の個別流路300と連通しており、第1共通流路60内から、それぞれの個別流路300内へとインクが流れる。第2共通流路65の上流側は、複数の個別流路300と連通しており、それぞれの個別流路300内から、第2共通流路65内へとインクが流れる。第2共通流路65の下流側は、インク貯留槽76と連通しており、第2共通流路65内のインクは、インク貯留槽76へと流れる。尚、本実施形態の液体噴射装置100は、複数の個別流路300を有しているが、個別流路の数は1つのみであってもよい。
【0030】
それぞれの個別流路300は、第1個別流路61と、圧力室Cと、第2個別流路72とを備えている。第1個別流路61の上流側は、第1共通流路60と連通しており、第1個別流路61の下流側は、圧力室Cと連通している。圧力室Cは、インクを噴射するためのノズルNと連通している。第2個別流路72の上流側は、圧力室Cと連通しており、第2個別流路72の下流側は、第2共通流路65と連通している。そのため、第1個別流路61を介して圧力室C内にインクが供給され、ノズルNからの噴射によって消費されずに、圧力室C内に残ったインクは、第2個別流路72を介して圧力室C内から排出される。
【0031】
それぞれの圧力室Cは、上述したノズルNと、振動部42と、圧電素子44とを備えている。本実施形態のノズルNは、圧力室Cの底面(ノズルプレート52)に設けられている。本実施形態のノズルNは、内径の小さい第1径部81と、第1径部81に連接し、第1径部81よりも内径の大きい第2径部82とを有している。第1径部81は、大気に連通している。第2径部82は、第1径部81と圧力室Cとの間に設けられている。また、圧力室Cの天井面は、振動部42によって構成されている。振動部42を挟んだ圧力室Cの上側には、圧電素子44が設けられている。本明細書では、圧電素子44のことを「圧力発生部」と呼ぶこともある。圧電素子44は、印加される電圧に応じて図5における上下方向に変形する。圧電素子44の変形に伴って、振動部42は図5における上下方向に撓む。振動部42が上方向に向かって撓むことによって、圧力室Cの容積は拡大される。一方、振動部42が下方向に向かって撓むことによって、圧力室Cの容積は縮小される。尚、圧電素子44は、キロヘルツ(kHz)オーダーの比較的高い周波数で駆動することが可能である。
【0032】
図6には、液体噴射モードにおいて、圧電素子44に供給される駆動電圧の波形の一例を示している。図7には、空気導入モードにおいて、圧電素子44に供給される駆動電圧の波形の一例を示している。図6および図7における横軸は、噴射動作1サイクルにおける時間を表している。縦軸は、圧電素子44に印加される電圧を表している。制御部20は、圧力室Cの容積を拡大させる第1波形部分と、圧力室Cの容積を縮小させる第2波形部分とを含む駆動波形を用いて圧電素子44を駆動する。本実施形態では、制御部20には、ノズルNからインクを噴射する「液体噴射モード」の駆動波形や、ノズルNからインクを噴射しない期間にノズルNを介して圧力室C内に空気を導入する「空気導入モード」の駆動波形が記憶されている。液体噴射モードの駆動波形のことを第1駆動波形と呼ぶこともある。空気導入モードの駆動波形のことを第2駆動波形と呼ぶこともある。制御部20は、ノズルNからインクを噴射しないで、ノズルN内のインクのメニスカスを振動させる「微振動モード」の駆動波形を有してもよい。制御部20は、複数の駆動波形の中から、用途に応じて一の駆動波形を選択し、圧電素子44に供給する。
【0033】
図6を参照して、液体噴射モードにおいて、制御部20は、まず、第1波形部分を圧電素子44に供給することによって圧力室Cの容積を拡大し、次に、第1波形部分よりも傾きの大きさ(絶対値)が大きい第2波形部分を圧電素子44に供給することによって圧力室Cの容積を縮小する。その後、制御部20は、圧電素子44に印加される電圧を基準電位に戻す。圧力室Cの容積が縮小されることに伴って、圧力室C内のインクが加圧され、ノズルN内におけるインクのメニスカス耐圧を超えると、ノズルNからインクが噴射される。尚、メニスカス耐圧とは、インクのメニスカスが破壊されない(つまり、メニスカスが耐え得る)最大の圧力のことをいう。
【0034】
図7を参照して、空気導入モードにおいて、制御部20は、まず、第2波形部分を圧電素子44に供給することによって圧力室Cの容積を縮小し、次に、第2波形部分よりも傾きの大きさ(絶対値)が大きい第1波形部分を圧電素子44に供給することによって圧力室Cの容積を拡大する。その後、制御部20は、圧電素子44に印加される電圧を基準電位に戻す。空気導入モードにおける第1波形部分の傾きの大きさ(絶対値)は、液体噴射モードにおける第1波形部分の傾きの大きさ(絶対値)よりも大きい。また、空気導入モードにおける第2波形部分の傾きの大きさ(絶対値)は、液体噴射モードにおける第2波形部分の傾きの大きさ(絶対値)よりも小さい。また、本実施形態では、制御部20は、ノズルNから導入される空気の体積が第1径部81の容積以上となるように、圧電素子44を駆動する。尚、本実施形態では、制御部20は、圧電素子44に第2波形部分を供給した後に、第1波形部分を供給するため、圧電素子44のストローク量を大きく確保することができる。
【0035】
図8から図10は、ノズルNから圧力室C内へ空気を導入する際における、ノズルN内のインクのメニスカスの挙動を示す説明図である。初期状態では、ノズルN内において、液面が凹むように、インクのメニスカスが形成されている(図8参照)。次に、図7にて示した駆動波形が圧電素子44に供給されて、圧力室Cの容積が拡大されるにつれて、圧力室C内のインクは減圧されていく。そのため、ノズルN内における液面の凹みは、圧力室C内の方向に向かって大きくなっていく(図9参照)。さらに、インクの圧力の低下が進むと、ノズルN内におけるインクのメニスカスが破壊されて、ノズルNから圧力室C内に気泡(空気)が導入される。導入された気泡は、浮力によって圧力室C内の上方に向かって移動する。この気泡の移動に伴って、ノズルN近傍のインクは撹拌される(図10参照)。その後、第1個別流路61内から第2個別流路72内へと向かうインクの流れによって、ノズルNから導入された気泡は、第2個別流路72へと排出される。
【0036】
図11は、液体噴射モードにおける駆動波形と空気導入モードにおける駆動波形の両方を示すタイムチャートの第1の例である。図11の上側には、印刷中に圧電素子44に供給される駆動波形の一例を示している。図11の下側には、駆動波形の供給のオンオフを示している。本実施形態では、制御部20は、ノズルNから圧力室C内に空気を導入した後、予め定められた第1期間は、ノズルNからのインクの噴射を行わない。つまり、制御部20は、空気導入モードにおいて圧電素子44に対して第1波形部分を供給した後、予め定められた第1期間は、液体噴射モードを実行しない。本実施形態では、制御部20が圧電素子44に第1波形部分を供給した後、ノズルNから導入した気泡が圧力室Cから第2個別流路72を介して第2共通流路65へと排出されるまでの期間を第1期間としている。制御部20が圧電素子44に第1波形部分を供給した後、ノズルNから導入した気泡が圧力室Cから第2共通流路65へと排出されるまでの期間は、インクの流速と、ノズルNから第2共通流路65の入口までの距離Laとによって求めることができる(図5参照)。制御部20が圧電素子44に第1波形部分を供給した後、ノズルNから導入した気泡が圧力室Cから第2共通流路65へと排出されるまでの期間は、予め行われる試験によって求めてもよい。
【0037】
本実施形態では、制御部20は、空気導入モードの駆動波形を供給した後、所定期間内は、制御部20から圧電素子44へ駆動波形を供給する回路を遮断することによって、第1期間を確保している。尚、制御部20は、空気導入モードの駆動波形の中に、ノズルNからのインクの噴射を実行しない期間が設けられることによって、第1期間を確保してもよい。制御部20は、ハーフトーン処理を行った後の印刷画素についてのドットデータを補正することによって第1期間を確保してもよい。制御部20は、第1期間を確保でき、ノズルNからのインクの噴射を妨げない期間をドットデータ等から予測して、ノズルNからのインクの噴射を妨げない期間に空気導入モードを実行することが好ましい。但し、このような期間を確保することができない場合、制御部20は、第1期間を確保するために、空気導入モードの後の当該ノズルNからのインクの噴射をキャンセルしてもよい。この場合、当該ノズルNからのインクの噴射によって形成されるべき画素を、他のノズルからのインクの噴射によって補完してもよい。
【0038】
図12は、液体噴射モードにおける駆動波形と空気導入モードにおける駆動波形の両方を示すタイムチャートの第2の例である。図12の上側には、実際に圧電素子44に供給される駆動波形の一例を示している。図12の下側には、予測された圧電素子44に供給される駆動波形の一例を示している。本実施形態では、制御部20は、ノズルNからのインクの噴射を予め定められた第2期間行わない場合に、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入する。本実施形態では、ノズルN近傍のインクが、噴射不良を生じさせる所定の粘度まで増粘するまでの期間を第2期間としている。ノズルN近傍のインクが所定の粘度まで増粘するまでの期間は、予め行われる試験によって求めることができる。
【0039】
本実施形態では、まず、制御部20は、ドットデータ等から、圧電素子44に供給すべき駆動波形を予測し、隣接するそれぞれの液体噴射モードの駆動波形間において、先の液体噴射モードにおいて圧電素子44に対して第2波形部分の供給を終了するタイミング(先の噴射終了タイミング)から、後の液体噴射モードにおいて圧電素子44に対して第2波形部分の供給を開始するタイミング(後の噴射開始タイミング)を取得する。次に、制御部20は、取得した先の噴射終了タイミングから後の噴射開始タイミングまでの期間と、第2期間とを比較する。制御部20は、先の噴射終了タイミングから後の噴射開始タイミングまでの期間が、第2期間以上となると判断した場合は、先の噴射終了タイミングから第2期間を経過するよりも早いタイミングにおいて、空気導入モードにおける第1波形部分の供給が開始されるように、空気導入モードの駆動波形を挿入する。尚、制御部20は、さらに、挿入した空気導入モードにおいて第1波形部分の供給が終了するタイミングから、その次に実行される予定の液体噴射モードにおいて圧電素子44に対して第2波形部分の供給を開始するタイミングを取得し、再度、空気導入モードの駆動波形を挿入すべきか否かを判断してもよい。
【0040】
以上で説明した本実施形態の液体噴射装置100によれば、圧電素子44を駆動して圧力室C内のインクの圧力を変化させて、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入することによって、ノズルN近傍のインクを撹拌して、ノズルN近傍のインクの増粘を抑制できる。このため、ノズルN近傍のインクについての増粘抑制のための動作を短時間で完了することができる。
【0041】
また、本実施形態では、制御部20は、それぞれの圧力室Cに設けられた圧電素子44を駆動して、ノズルNから圧力室C内に空気を導入する。このため、それぞれのノズルNごとに空気の導入を行うことができる。また、応答性に優れた圧電素子44を用いてノズルNからの空気の導入を行うため、ノズルNから圧力室C内への空気の導入を高速に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、空気導入モードにおける第1波形部分の傾きの大きさは、液体噴射モードにおける第1波形部分の傾きの大きさよりも大きい。このため、液体噴射モード時よりも圧力室Cの容積は急速に拡大されて、圧力室C内のインクに大きな圧力変化を発生させることができる。このため、ノズルNから圧力室C内に空気を導入することができる。
【0043】
また、本実施形態では、空気導入モードにおける第2波形部分の傾きの大きさは、液体噴射モードにおける第2波形部分の傾きの大きさよりも小さいため、液体噴射モード時よりも圧力室Cの容積は緩やかに縮小されて、圧力室C内のインクに急激な圧力変化が生じることを抑制できる。このため、ノズルNから空気を導入した後、ノズルN内のインクのメニスカスが不安定な状態となっていてもノズルNからのインクの漏洩を抑制できる。尚、この場合、圧力室Cの容積を縮小する際、ノズルN内におけるインクのメニスカスは破壊されず、圧力室C内のインクは、ノズルN内よりも流路抵抗の小さな第1個別流路61や第2個別流路72へと流れる。
【0044】
また、本実施形態では、制御部20は、ノズルNから圧力室C内に空気を導入した後、ノズルNから導入した気泡が圧力室Cから第2個別流路72へと排出されるまでの第1期間内は、ノズルNからのインクの噴射を行わない。このため、圧電素子44の駆動によって圧力室C内に発生した圧力変化が、ノズルNから導入した空気(気泡)によって吸収されて、ノズルNからのインクの噴射不良が生じることを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、制御部20は、ノズルNから導入される空気の体積が、ノズルNにおける最小径部である第1径部81の容積以上となるように、圧電素子44を駆動する。このため、第1径部81の容積以上の量の空気が圧力室C内に導入されて、ノズルN近傍のインクを確実に撹拌することができる。
【0046】
また、本実施形態では、制御部20は、ノズルN近傍のインクが、噴射不良を生じさせる所定の粘度まで増粘するまでの第2期間以上、ノズルNからのインクの噴射を行わない場合に、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入する。このため、適切なタイミングでノズルNからの空気の導入を行うことができる。
【0047】
B.他の実施形態:
(B1)上述した第1実施形態の液体噴射装置100は、圧力発生部として、圧電素子44を備えるピエゾ式として説明したが、サーマル式や、バルブ式であってもよい。
【0048】
(B2)図13には、他の実施形態での液体噴射モードおよび空気導入モードにおいて、圧電素子44に供給される駆動電圧の波形の一例を示している。上述した第1実施形態の液体噴射装置100では、空気導入モードにおける第1波形部分の傾きの大きさは、液体噴射モードにおける第1波形部分の傾きの大きさよりも大きい。これに対して、空気導入モードにおける第1波形部分の傾きの大きさ(図13に示すθ)と、液体噴射モードにおける第1波形部分の傾きの大きさとを同じとして、空気導入モードにおける第1波形部分の振幅を、液体噴射モードにおける第1波形部分の振幅よりも大きくしてもよい。第1波形部分の振幅とは、第1波形部分における最大の電位と最小の電位との電位差を意味する。この場合、圧力室C内に空気を導入する場合は、ノズルNからインクを噴射する場合よりも圧力室Cの容積は大きく拡大されて、圧力室C内のインクに大きな圧力変化を発生させることができる。このため、ノズルNから圧力室C内に空気を導入でき、ノズルN近傍のインクを撹拌できる。また、空気導入モードにおける第1波形部分の傾きの大きさを、液体噴射モードにおける第1波形部分の傾きの大きさよりも大きくし、かつ、空気導入モードにおける第1波形部分の振幅を、液体噴射モードにおける第1波形部分の振幅よりも大きくしてもよい。この場合、ノズルNから圧力室C内に、より多量の空気を導入でき、ノズルN近傍のインクをより撹拌できる。尚、液体噴射モードと同様に、圧電素子44に第1波形部分を供給して圧力室Cの容積を拡大してから、圧電素子44に第2波形部分を供給して圧力室Cの容積を縮小し、その後、液体噴射モードの場合よりも大きな振幅の駆動電圧を圧電素子44に供給することによって、圧力室Cの容積を拡大してもよい。
【0049】
(B3)上述した第1実施形態の液体噴射装置100では、空気導入モードにおける第2波形部分の傾きの大きさは、液体噴射モードにおける第2波形部分の傾きの大きさよりも小さい。これに対して、空気導入モードにおける第2波形部分の傾きの大きさは、液体噴射モードにおける第2波形部分の傾きの大きさと同じであってもよい。
【0050】
(B4)上述した第1実施形態の液体噴射装置100において、制御部20は、循環機構75を制御することによって、インクの循環の向きを逆にしてもよい。つまり、制御部20は、圧力室C内のインクが排出される流路を第1個別流路61と第2個別流路72とで入れ替えてもよい。圧力室C内のインクが排出される流路を第1個別流路61と第2個別流路72とで入れ替えた場合、制御部20は、第1期間を変更してもよい。インクの循環の向きを逆にした場合、空気(気泡)が排出されるまでの流路の長さが図5に示したノズルNから第2共通流路65までの距離Laから、図5に示したノズルNから第1共通流路60までのLbに変わる。そのため、変更後の第1期間は、インクの流速と、ノズルNから第1共通流路60の入口までの距離Lbとによって求めることができる(図5参照)。制御部20が圧電素子44に第1波形部分を供給した後、ノズルNから導入した気泡が圧力室Cから第1共通流路60へと排出されるまでの期間は、予め行われる試験によって求めてもよい。この場合、インクの循環の向きが切り替わった場合であっても、ノズルNから導入した空気が圧力室C内から第1共通流路60へと排出されるまでの時間を確実に確保でき、圧電素子44の駆動によって圧力室C内に発生した圧力変化が、ノズルNから導入した空気(気泡)によって吸収されて、ノズルNからのインクの噴射不良が生じることを抑制できる。尚、制御部20は、循環の向きを変更した場合以外にも、インクの流量を変更した場合等に第1期間を変更してもよい。また、液体噴射装置100が温度センサーを備えることによって、制御部20は、液体噴射装置100の設置場所の外気温を取得可能に構成され、取得した外気温の変化に応じて第1期間を変更してもよい。
【0051】
(B5)上述した第1実施形態の液体噴射装置100では、制御部20は、1サイクル分の空気導入モードの駆動波形を圧電素子44に供給することによって、制御部20は、ノズルNから導入される空気の体積が、ノズルNにおける最小径部である第1径部81の容積以上となるように、圧電素子44を駆動している。これに対して、制御部20は、空気導入モードの駆動波形を複数サイクルに亘って連続して圧電素子44に供給することによって、ノズルNから導入した空気の合計量が、第1径部81の容積以上となるように圧電素子44を駆動してもよい。この場合であっても、ノズルN近傍のインクを撹拌できる。尚、ノズルNから導入する空気の量は、第1径部81の容積と第2径部82の容積との合計分の体積以上とすることが、より好ましい。この場合、より確実にノズルN近傍のインクを撹拌できる。尚、ノズルNから導入される空気の体積が大きければ、空気(気泡)が浮力によって移動しなくとも、ノズルNから空気を導入した際に、ノズル近傍のインクが十分に撹拌される。
【0052】
(B6)上述した第1実施形態の液体噴射装置100では、ノズルN近傍のインクが、噴射不良を生じさせる所定の粘度まで増粘するまでの期間を第2期間として、制御部20は、ノズルNからのインクの噴射を予め定められた第2期間行わない場合に、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入している。これに対して、制御部20は、ノズルNからのインクの噴射を妨げない期間には、常時、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入してもよい。
【0053】
(B7)上述した第1実施形態の液体噴射装置100では、制御部20には、液体噴射モードや空気導入モードについての複数の駆動波形が記憶されており、制御部20は、複数の駆動波形の中から、用途に応じて一の駆動波形を選択し、圧電素子44に供給している。これに対して、制御部20には、液体噴射モードの駆動波形と、空気導入モードの駆動波形とが連接された1つの駆動波形が記憶され、制御部20は、1つの駆動波形に包含される所望のモードの部分が圧電素子44に供給されるように、スイッチングによって制御してもよい。
【0054】
(B8)上述した第1実施形態の液体噴射装置100では、制御部20は、印刷中におけるキャリッジ25が移動している間に、空気導入モードを実行している。これに対して、キャリッジ25の移動方向が切り替わるタイミング(キャリッジターン時)において、空気導入モードを実行してもよい。
【0055】
(B9)上述した各実施形態の液体噴射装置100において、第1個別流路61とは別に、圧力室Cと第1共通流路60とを連通するインクの流路が設けられてもよい。また、第2個別流路72とは別に、圧力室Cと第2共通流路65とを連通するインクの流路が設けられてもよい。
【0056】
(B10)上述した各実施形態の液体噴射装置100において、制御部20は、ノズルNを挟んで圧力室Cの反対側に設けられたヘッドキャップ400によって、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入してもよい。この場合、制御部20は、ヘッドキャップ400を移動させて、ヘッドキャップ400によって液体噴射ヘッド26を覆い、ヘッドキャップ400を駆動することによって、ヘッドキャップ400内の空気を加圧する。そのため、本明細書では、ヘッドキャップ400のことを「圧力発生部」と呼ぶこともある。ヘッドキャップ400内の空気が加圧されると、ノズルNを介して、圧力室Cの中に空気が圧送される。つまり、ノズルNを介して圧力室C内のインクの圧力が加圧される。尚、制御部20は、圧力室Cに連通する第1個別流路61および第2個別流路72をバルブやシャッター等によって封止した上で、ヘッドキャップ400内の空気を負圧にして、その後、ヘッドキャップ400を液体噴射ヘッド26から外してもよい。この場合、ヘッドキャップ400内の空気を負圧にすることによって、ノズルN内が負圧になる。その後、ヘッドキャップ400を外すと、ノズルNの内外の差圧によって、ノズルN内に空気が流入する。この場合、圧力室Cの外部からノズルNを介して、圧力室C内のインクに圧力変化を発生させることによって、ノズルNを介して圧力室C内に空気を導入することができ、ノズルN近傍のインクを撹拌して、ノズルN近傍におけるインクの増粘を抑制できる。
【0057】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0058】
(1)本開示の一形態によれば、液体噴射装置が提供される。この液体噴射装置は、液体を噴射するためのノズルと;前記ノズルに連通する圧力室と;前記圧力室に連通する第1個別流路と;前記圧力室に連通する第2個別流路と;前記圧力室内の液体の圧力を変化させる圧力発生部と;前記圧力発生部を駆動するための制御部と;を備える。前記第1個別流路と前記第2個別流路とのいずれか一方を介して、前記圧力室内に液体が供給され、他方を介して、前記圧力室内から前記供給された液体の少なくとも一部が排出され;前記制御部は、前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記圧力発生部を駆動することによって前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入する。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力発生部を駆動して圧力室内の液体の圧力を変化させて、ノズルを介して圧力室内に空気を導入することによって、ノズル近傍の液体を撹拌して、ノズル近傍の液体の増粘を抑制できる。このため、ノズル近傍の液体についての増粘抑制のための動作を短時間で行うことができる。
【0059】
(2)上記形態の液体噴射装置において、前記圧力発生部は、前記圧力室に設けられ、前記制御部は、前記圧力発生部を駆動することによって前記圧力室内の液体を減圧して、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力発生部を駆動して圧力室内を減圧することによって、ノズルを介して圧力室内に空気を導入することができる。
【0060】
(3)上記形態の液体噴射装置において、前記制御部は、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む、前記ノズルから液体を噴射ための第1駆動波形と、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入するための第2駆動波形とを用いて前記圧力発生部を駆動し、前記第2駆動波形における前記第1波形部分の傾きの大きさは、前記第1駆動波形における前記第1波形部分の傾きの大きさよりも大きくてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力室内に空気を導入する場合は、ノズルから液体を噴射する場合よりも圧力室の容積は急速に拡大されて、圧力室内の液体に大きな圧力変化を発生させることができる。このため、ノズルから圧力室内に空気を導入することができる。
【0061】
(4)上記形態の液体噴射装置において、前記第2駆動波形における前記第2波形部分の傾きの大きさは、前記第1駆動波形における前記第2波形部分の傾きの大きさよりも小さくてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力室内に空気を導入する場合は、ノズルから液体を噴射する場合よりも圧力室の容積は緩やかに縮小されて、圧力室内の液体に急激な圧力変化が生じることを抑制できる。このため、ノズルからの液体の漏洩を抑制できる。
【0062】
(5)上記形態の液体噴射装置において、前記制御部は、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む、前記ノズルから液体を噴射ための第1駆動波形と、前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導ための第2駆動波形とを用いて前記圧力発生部を駆動し、前記第2駆動波形における前記第1波形部分の振幅の大きさは、前記第1駆動波形における前記第1波形部分の振幅の大きさよりも大きくてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力室内に空気を導入する場合は、ノズルから液体を噴射する場合よりも圧力室の容積は大きく拡大されて、圧力室内の液体に大きな圧力変化を発生させることができる。このため、ノズルから圧力室内に空気を導入することができる。
【0063】
(6)上記形態の液体噴射装置において、前記圧力発生部は、前記ノズルを挟んで前記圧力室の反対側に設けられ、前記制御部は、前記圧力発生部を駆動することによって前記ノズルを介して前記圧力室内の液体の圧力を変化させて、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力室の外部からノズルを介して、圧力室内の液体に圧力変化を発生させることによって、ノズルを介して圧力室内に空気を導入することができる。
【0064】
(7)上記形態の液体噴射装置において、前記制御部は、前記ノズルから前記圧力室内に空気を導入した後、予め定められた第1期間は、前記ノズルからの液体の噴射を行わなくてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ノズルから導入した空気が圧力室内から排出されるまでの時間を確保できる。このため、圧力室内に残留した空気によって圧力室内の液体の圧力変化が吸収されることが抑制され、ノズルからの液体の噴射不良が生じることを抑制できる。
【0065】
(8)上記形態の液体噴射装置において、前記制御部は、前記圧力室内の液体が排出される流路を前記第1個別流路と前記第2個別流路とで入れ替えた場合には、前記第1期間を変更してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ノズルから導入した空気が圧力室内から排出されるまでの時間をより確実に確保できる。
【0066】
(9)上記形態の液体噴射装置において、前記制御部は、前記ノズルから導入される空気の体積が前記ノズルの容積以上となるように、前記圧力発生部を駆動してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ノズル近傍の液体を確実に撹拌することができる。
【0067】
(10)上記形態の液体噴射装置において、前記ノズルは、第1径部と、前記第1径部よりも内径の大きい第2径部とを有し、前記制御部は、前記ノズルから導入される空気の体積が前記第1径部の容積以上となるように、前記圧力発生部を駆動してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ノズル近傍の液体を確実に撹拌することができる。
【0068】
(11)上記形態の液体噴射装置において、前記制御部は、前記ノズルからの液体の噴射を予め定められた第2期間行わない場合には、前記ノズルを介して前記圧力室内に空気を導入してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、適切なタイミングでノズルからの空気の導入を行うことができる。
【0069】
(12)本開示の第2の形態によれば、液体噴射装置が提供される。この液体噴射装置は、液体を噴射するためのノズルと;前記ノズルに連通する圧力室と;前記圧力室に連通する第1個別流路と;前記圧力室に連通する第2個別流路と;前記圧力室に設けられ、前記圧力室内の液体の圧力を変化させる圧力発生部と;前記圧力室の容積を拡大させる第1波形部分と、前記圧力室の容積を縮小させる第2波形部分とを含む駆動波形を用いて前記圧力発生部を駆動するための制御部と;を備える。前記制御部は、前記ノズルから液体を噴射しない期間に、前記ノズルから液体を噴射するための前記第1波形部分よりも傾きの大きさが大きい前記第1波形部分を用いて前記圧力発生部を駆動する。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力発生部を駆動して圧力室内の液体の圧力を変化させることによって、ノズルを介して圧力室内に空気が導入され、ノズル近傍の液体が撹拌されて、ノズル近傍の液体の増粘を抑制できる。このため、ノズル近傍の液体についての増粘抑制のための動作を短時間で行うことができる。
【0070】
本開示は、液体噴射装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、液体噴射方法や液体噴射ヘッド、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0071】
12…媒体、14…液体容器、15…ポンプ、16…供給管、20…制御部、22…搬送機構、23…ヘッド移動ベルト、24…ヘッド移動機構、25…キャリッジ、26…液体噴射ヘッド、30…流路形成部、32…第1流路基板、34…第2流路基板、42…振動部、44…圧電素子(圧力発生部)、46…保護部材、48…筐体部、49…インク導入口、52…ノズルプレート、54…振動吸収体、60…第1共通流路、61…第1個別流路、63…連通路、65…第2共通流路、65a,65b…循環口、69…隔壁部、72…第2個別流路、75…循環機構、76…インク貯留槽、77…圧力調整部、81…第1径部、82…第2径部、100…液体噴射装置、200…循環流路、300…個別流路、400…ヘッドキャップ(圧力発生部)、C…圧力室、Fa…上面、Fb…下面、Fc…上面、L1…第1ノズル列、L2…第2ノズル列、N…ノズル、O…中心面、P1…第1部分、P2…第2部分、R…リザーバー、Ra…インク流入室、Rb…上流側インク流入室。
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