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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】変形量計測装置及び変形量計測方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/90 20060101AFI20221109BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B66C23/90 A
B66C13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018201320
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020066519
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】元木 浩平
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181092(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046213(WO,A1)
【文献】特開2007-015814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 - 23/94
B66C 13/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に搭載されたブームの変形量を計測する変形量計測装置であって、
カメラと、
メモリを有するコントローラと、を備えており、
上記走行体は、車体及び当該車体から張出可能なアウトリガを有しており、
上記コントローラは、
上記アウトリガの先端部に表記された複数の第1マーカを撮像した上記カメラから第1画像データの入力を受け付ける第1受付処理と、
上記第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第1マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、
上記ブームに表記された第2マーカを撮像した上記カメラから第2画像データの入力を受け付ける第2受付処理と、
上記第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記第2マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記基準座標系における上記第2マーカの座標位置を決定する画像処理と、
上記画像処理で決定した上記第2マーカの座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する、変形量計測装置。
【請求項2】
メモリを有するコントローラによって実行され、走行体に搭載されたブームの変形量を算出するプログラムであって、
上記プログラムは、
上記走行体が有するアウトリガの先端部に表記された複数の第1マーカを撮像したカメラから第1画像データの入力を受け付ける第1受付処理と、
上記第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第1マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、
上記ブームに表記された複数の第2マーカを撮像した上記カメラから第2画像データの入力を受け付ける第2受付処理と、
上記第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第2マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記基準座標系における上記第2マーカの座標位置を決定する画像処理と、
上記画像処理で決定した上記第2マーカの座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する、プログラム。
【請求項3】
走行体に搭載されたブームの変形量を、メモリ及びカメラを備える変形量計測装置を用いて計測する方法であって、
上記走行体が有するアウトリガの先端部に複数の第1マーカを設置し、
上記ブームに複数の第2マーカを設置し、
設置した上記第1マーカ及び上記第2マーカを上記カメラを用いて撮像し、
上記変形量計測装置は、
上記第1マーカを撮像した上記カメラから入力された第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第1マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、
上記第2マーカを撮像した上記カメラから入力された第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第2マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて上記基準座標系における上記各第2マーカの座標位置をそれぞれ決定する画像処理と、
上記画像処理で決定した上記各第2マーカの座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する、変形量計測方法。
【請求項4】
走行体に搭載されたブームの変形量を計測する変形量計測装置であって、
カメラと、
メモリを有するコントローラと、を備えており、
上記コントローラは、
上記走行体が有するアウトリガの先端部を撮像した上記カメラから第1画像データの入力を受け付ける第1受付処理と、
上記第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記アウトリガの複数の先端部のうちの少なくとも3か所の第1検出部位までの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、
上記ブームを撮像した上記カメラから第2画像データの入力を受け付ける第2受付処理と、
上記第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記ブームの少なくとも2か所の第2検出部位までの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記基準座標系における上記第2検出部位の座標位置をそれぞれ決定する画像処理と、
上記画像処理で決定した上記第2検出部位の座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する、変形量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブームの撓み量や捻じれ量などの変形量を計測する変形量計測装置及びブームの撓み量や捻じれ量などの変形量を計測する変形量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にクレーン車は、伸縮及び起伏可能なブームを備える。クレーン車の設計者は、安全なクレーン作業のため、ブームの移動許容範囲に制限を設ける。設計者は、例えば、ブームの撓み量を計測し、計測した撓み量に基づいて、上記制限を示す性能データを決定する。
【0003】
特許文献1は、並列された2台のカメラがブームの先端に設けられた3つのターゲットマークを撮像することにより、ブームの撓み量を計測する技術を開示している。具体的には、2台のカメラが3つのターゲットマークをそれぞれ撮像し、レーザ距離計がカメラからターゲットマークまでの距離を計測し、パン角度検出器がカメラのレンズが向く角度(仰角)を検出する。ターゲットマークの画像データ、レーザ距離計で計測した距離データ、及びパン角度検出器が検出した仰角に基づいて、ブームの先端位置(撓み量)が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-181092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、ブームの撓み量を検知し、安全作業を実現するものであるが、そのために種々のセンサや複数のカメラが必要になる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ブームの撓み量や捻じれ量などの変形量を簡単な構成で計測可能な変形量計測装置及び変形量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る変形量計測装置は、走行体に搭載されたブームの変形量を計測する装置であって、カメラと、メモリを有するコントローラと、を備える。上記走行体は、車体及び当該車体から張出可能なアウトリガを有する。上記コントローラは、上記アウトリガの先端部に表記された複数の第1マーカを撮像した上記カメラから第1画像データの入力を受け付ける第1受付処理と、上記第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第1マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、上記ブームに表記された第2マーカを撮像した上記カメラから第2画像データの入力を受け付ける第2受付処理と、上記第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記第2マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記基準座標系における上記第2マーカの座標位置を決定する画像処理と、上記画像処理で決定した上記第2マーカの座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する。
【0008】
コントローラは、第1マーカを撮像して得られた第1画像データを用いて基準座標系を決定し、第2マーカを撮像して得られた第2画像データを用いて第2マーカの座標位置を決定する。コントローラは、例えば、マーカ型AR技術を用いて、基準座標系及び第2マーカの座標位置を決定する。コントローラは、決定した第2マーカの座標位置を用いて、ブームの変形量を決定する。したがって、本発明に係る変形量計測装置は、カメラや種々のセンサを用いて変形量を算出する従来構成よりも簡単な構成でブームの変形量を算出することができる。
【0009】
第1マーカは、車体に表記されていてもよいが、アウトリガの先端部に表記されていてもよい。車体は、温度や湿度や直射日光の影響により、アウトリガよりも大きく変形する。変形の度合が少ないアウトリガの先端部に第1マーカが表記されることにより、算出する変形量の精度は、第1マーカを車体に表記する場合よりも、高くなる。
【0010】
(2) 本発明に係るプログラムは、メモリを有するコントローラによって実行され、走行体に搭載されたブームの変形量を算出するプログラムであって、上記走行体が有するアウトリガの先端部に表記された複数の第1マーカを撮像したカメラから第1画像データの入力を受け付ける第1受付処理と、上記第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第1マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、上記ブームに表記された第2マーカを撮像した上記カメラから第2画像データの入力を受け付ける第2受付処理と、上記第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記第2マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記基準座標系における上記第2マーカの座標位置を決定する画像処理と、上記画像処理で決定した上記第2マーカの座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する。
【0011】
本発明は、プログラムとして捉えることもできる。
【0012】
(3) 本発明に係る変形量計測方法は、走行体に搭載されたブームの変形量を、メモリ及びカメラを備える変形量計測装置を用いて計測する方法であって、上記走行体が有するアウトリガの先端部に複数の第1マーカを設置し、上記ブームに複数の第2マーカを設置し、設置した上記第1マーカ及び上記第2マーカを上記カメラを用いて撮像し、上記変形量計測装置は、上記第1マーカを撮像した上記カメラから入力された第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第1マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、上記第2マーカを撮像した上記カメラから入力された第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記各第2マーカまでの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて上記基準座標系における上記各第2マーカの座標位置をそれぞれ決定する画像処理と、上記画像処理で決定した上記各第2マーカの座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する。
【0013】
本発明は、上述の変形計測装置を用いた変形量計測方法として捉えることもできる。
【0014】
(4) 本発明に係る変形量計測装置は、走行体に搭載されたブームの変形量を計測する装置であって、カメラと、メモリを有するコントローラと、を備える。上記コントローラは、上記走行体が有するアウトリガの先端部を撮像した上記カメラから第1画像データの入力を受け付ける第1受付処理と、上記第1画像データと、上記メモリに予め記憶された第1基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記アウトリガの複数の先端部のうちの少なくとも3か所の第1検出部位までの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記走行体における基準座標系を決定して上記メモリに記憶させる座標系決定処理と、上記ブームを撮像した上記カメラから第2画像データの入力を受け付ける第2受付処理と、上記第2画像データと、上記メモリに予め記憶された第2基準画像データとを対比して、上記カメラの撮像位置から上記ブームの少なくとも2か所の第2検出部位までの距離及び方向を算出し、算出した距離及び方向に基づいて、上記基準座標系における上記第2検出部位の座標位置をそれぞれ決定する画像処理と、上記画像処理で決定した上記第2検出部位の座標位置から上記ブームの変形量を算出する算出処理と、を実行する。
【0015】
コントローラは、走行体を撮像して得られた第1画像データを用いて基準座標系を決定し、ブームを撮像して得られた第2画像データを用いてブームの2か所の第2検出部位の座標位置を決定する。コントローラは、例えば、マーカレス型AR技術を用いて、基準座標系及び第2検出部位の座標位置を決定する。コントローラは、決定した第2検出部位の座標位置を用いて、ブームの変形量を算出する。本発明に係る変形量計測装置は、マーカを用いずに変形量を算出するので、マーカを用いて変形量を算出する変形量計測装置よりも簡単な構成でブームの変形量を算出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の変形量計測装置は、作業車のブームの変形量を簡単な構成で計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、クレーン車10の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る変形量計測装置14の構成図である。
図3図3は、クレーン車10の機能ブロック図である。
図4図4は、マーカ51、52を示す図である。
図5図5は、マーカ51、52の設置位置を示す説明図である。
図6図6は、実施形態に係る変形量計測装置14の機能ブロック図である。
図7図7は、変形量算出処理のフローチャートである。
図8図8は、撓み量を説明する説明図である。
図9図9は、変形例2に係るクレーン車10の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0019】
本実施形態の変形量計測装置14は、作業車のブームの移動許容範囲を決定するために、当該ブームの変形量を計測する装置である。
【0020】
作業車は、ブームを備えるクレーン車や高所作業車や軌陸車などである。以下で説明される作業車は、クレーン車10である。
【0021】
[クレーン車10]
【0022】
クレーン車10は、図1に示されるように、走行体11と、走行体11に搭載されたクレーン装置12及びキャビン13と、を主に備える。キャビン13は、不図示の運転装置と、クレーン装置12の操縦を行う操縦装置71(図3)とを有する。また、キャビン13は、制御ボックスを有する。制御ボックスは、制御基板を収容する。制御基板は、マイクロコンピュータやICやコンデンサやダイオードや抵抗を実装されており、コントローラ70(図3)を形成している。コントローラ70は、操縦装置71と電気的に接続されている。操縦装置71が出力する操作信号は、コントローラ70に入力される。
【0023】
走行体11は、車体20及びアウトリガ31、32を備える。アウトリガ31は、車体20の前部に設けられている。アウトリガ32は、車体20の後部に設けられている。アウトリガ31と、アウトリガ32とは、同構成である。
【0024】
アウトリガ31、32は、外筒34、内筒35、油圧シリンダ36(図3)、及びジャッキシリンダ37を備える。外筒34及び内筒35は、車体20の幅方向(左右方向)に沿って延びる角筒状である。内筒35は、外筒34の左右両側にそれぞれ配置されている。各内筒35は、外筒34の内側にそれぞれ配置されており、左右方向にスライド可能に外筒34にそれぞれ保持されている。内筒35は、スライドされることにより、外筒34に格納された格納位置と、外筒34から張り出した張出位置との間で変位する。
【0025】
油圧シリンダ36は、車体20に搭載された油圧装置73(図3)から作動油を供給されて伸縮し、内筒35をスライドさせる。
【0026】
ジャッキシリンダ37は、各内筒35の先端にそれぞれ設けられている。ジャッキシリンダ37は、油圧装置73から供給される作動油によって、地面から離間する離間位置と、地面に当接する接地位置との間で伸縮する。
【0027】
図1は、アウトリガ31、32の各内筒35が張出位置であり、かつ、ジャッキシリンダ37が接地位置であって、アウトリガ31、32がクレーン車10を安定して支持している状態を示している。
【0028】
図5に示されるように、第1マーカ51(図4)が、アウトリガ31、32にそれぞれ設けられている。第1マーカ51は、例えば、プラスチックシートに表記された図形である。第1マーカ51は、内筒35の先端部やジャッキシリンダ37に設けられた貼付面にテープなどを用いて貼り付けられる。すなわち、第1マーカ51は、アウトリガ31、32の先端部に設けられている。第1マーカ51は、変形量計測装置14のカメラ16(図2)によって撮像される。第1マーカ51を撮像して得られた画像データは、変形量計測装置14のコントローラ60が座標系を決定する処理に用いられる。詳しくは後述される。
【0029】
クレーン装置12は、旋回台41と、ブーム装置42と、を備える。旋回台41は、車体20に旋回可能に支持されている。旋回台41は、旋回モータ33(図3)によって旋回される。旋回モータ33は、油圧装置73(図3)から作動油を供給されて駆動する。
【0030】
ブーム装置42は、ブーム44と、起伏シリンダ43(図3)と、伸縮シリンダ45(図3)と、を有する。ブーム44は、旋回台41に起伏可能に支持されている。起伏シリンダ43は、油圧装置73から供給された作動油によって伸縮し、ブーム44を起伏させる。
【0031】
ブーム44は、基端ブーム46と、中間ブーム47と、先端ブーム48と、を有する。基端ブーム46、中間ブーム47、及び先端ブーム48は、入れ子状に配置されている。すなわち、ブーム44は、伸縮可能である。なお、ブーム44は、基端ブーム46及び先端ブーム48の2つのブームのみを有していてもよいし、複数の中間ブーム47を有していてもよい。
【0032】
伸縮シリンダ45は、油圧装置73から供給された作動油によって伸縮し、ブーム44を伸縮させる。すなわち、ブーム44は、起伏可能であり、かつ、伸縮可能である。
【0033】
また、クレーン車10は、図3に示されるセンサ群72を有する。センサ群72は、ブーム44の起伏角度を検出する起伏角センサや、ブーム44の長さを検出するブーム長さセンサや、旋回台41の旋回位置を検出する旋回角センサや、アウトリガ31、32の位置を検出するアウトリガセンサなどである。
【0034】
図5に示されるように、第2マーカ52(図4)が、ブーム44に設けられている。第2マーカ52は、例えば、プラスチックシートに表記された図形である。第2マーカ52の形状(図柄)及び第1マーカ51の形状(図柄)は、同一であってもよいし、それぞれ相違していてもよい。後述のコントローラ60が、カメラ16がどのマーカを撮像して得られた画像データであるかを判断可能であれば、各マーカ51、52の形状は、全て同一であってもよい。例えば、操縦者が、コントローラ60が指示する順番、或いは予め決められた順番にしたがってカメラ16の向きを操作して撮像を行う場合、各マーカ51、52の形状は、同一であってよい。一方、操縦者がカメラ16を各マーカ51或いは各マーカ52にそれぞれランダムに向けて撮像を行って画像データをコントローラ60に入力する場合は、各マーカ51、52は、それぞれ相違する形状とされる。コントローラ60は、入力された画像データが、どのマーカを撮像して得られた画像データであるかを、当該画像データが示す形状から判断する。詳しくは後述される。
【0035】
第2マーカ52は、基端ブーム46及び先端ブーム48にそれぞれ設けられた貼付面にテープなどを用いて貼り付けられる。第2マーカ52は、後述のコントローラ60がブーム44の変形量を算出する処理に用いられる。詳しくは後述される。
【0036】
[変形量計測装置14]
【0037】
変形量計測装置14は、例えば、携帯端末やタブレットなど、カメラ及びコンピュータを備える装置である。以下では、図2に示されるように、変形量計測装置14が、カメラ16と、カメラ16の保持装置17と、ノート型のパーソナルコンピュータ15(以下PC15と記載する)とで構成された例が説明される。
【0038】
カメラ16は、撮像素子を備えたデジタルカメラである。カメラ16は、撮像した画像の画像データを出力する。
【0039】
保持装置17は、カメラ16の向きを変更可能にカメラ16を保持する装置である。保持装置17は、カメラ16の位置を変えずに、左右方向及び上下方向にカメラ16のレンズが向く向きを変更する。
【0040】
保持装置17は、カメラ16の向きを変えるモータ23(図5)を有している。モータ23は、後述のコントローラ60から入力される駆動信号によって駆動され、カメラ16の向きを変える。
【0041】
なお、保持装置17は、手動によってカメラ16の向きを変更してもよい。また、変形量計測装置14が保持装置17を有さず、作業者がカメラ16を手に持ってカメラ16の向きを変えてもよい。例えば、変形量計測装置14が携帯端末やタブレット等である場合、変形量計測装置14が保持装置17を有さない構成が採用される。
【0042】
PC15は、図6に示されるように、コントローラ60と、入力装置18と、ディスプレイ19と、を備える。入力装置18は、キーボードやマウスである。
【0043】
コントローラ60は、CPU61と、RAM63と、メモリ64と、不図示の通信バスとを備える。メモリ64は、プログラム59を記憶する。プログラム59は、中央演算処理装置であるCPU61によって実行される。RAM63は、プログラム59が実行される際に、データなどを一時記憶する。
【0044】
メモリ64は、基準画像データを記憶する。基準画像データは、図4(A)に示されるマーカ51、52と正対する位置でマーカ51、52から所定の距離だけ離間する位置からマーカ51、52を撮像して得られる画像データに相当するデータである。マーカ51、52の形状がそれぞれ相違する場合は、設置されるマーカ51、52の数に応じた基準画像データがメモリ64に記憶される。マーカ51、52の形状が全て同じ場合は、一の基準画像データがメモリ64に記憶される。マーカ51、52が全て同じ形状である場合、一の基準画像データのみをメモリ64に記憶させればよく、複数種類の基本画像データをメモリ64に記憶させるよりも、メモリ64に記憶させるデータ量が低減する。
【0045】
基準画像データは、カメラ16が第1マーカ51や第2マーカ52を撮像して得られた画像データ(図3(B))と比較される。メモリ64に記憶された基準画像データは、本発明の「第1基準画像データ」及び「第2基準画像データ」の一例である。
【0046】
CPU61、RAM63、及びメモリ64は、不図示の通信バスによって相互に接続されている。また、上述の入力装置18及びディスプレイ19は、通信バスを通じてコントローラ60と接続されている。また、上述のカメラ16は、コード24(図2)及び通信バスを通じてコントローラ60と接続されている。すなわち、コントローラ60は、カメラ16に撮像を指示することができ、かつ、カメラ16が出力した画像データを受け取ることができる。
【0047】
[変形量算出処理]
【0048】
以下、図7を参照して、プログラム59が実行する変形量算出処理が説明される。なお、以下では、プログラム59が実行する処理は、コントローラ60が実行する処理として説明される。変形量とは、ブーム44の撓み量や、ブーム44の捻じれ量や、撓み量及び捻じれ量を総合した変形量などである。
【0049】
変形量の計測を行う作業者は、アウトリガ31、32の先端部に第1マーカ51をそれぞれ設置する。また、作業者は、ブーム44の基端ブーム46及び先端ブーム48に第2マーカ52をそれぞれ設置する。そして、作業者は、カメラ16を保持した保持装置17を所定の位置に設置する。所定の位置とは、アウトリガ31、32に設置された少なくとも3つの第1マーカ51及びブーム44に設置された2つの第2マーカ52を撮像可能な位置である。
【0050】
作業者は、保持装置17に保持されたカメラ16を第1マーカ51に向け、入力装置18を用いてPC15に撮像指示を入力する(S11)。コントローラ60は、撮像指示が入力されたことに応じて(S11:Yes)、カメラ16に撮像指示信号を入力し、カメラ16に撮像を実行させる(S12)。作業者は、少なくとも3つの第1マーカ51に順にカメラ16を向け、第1マーカ51を順に撮像する。なお、作業者は、PC15を介さず、カメラ16に設けられた撮像ボタンを押下して撮像指示をカメラ16に直接入力してもよい。また、カメラ16の向きは、コントローラ60によって変更されてもよい。例えば、コントローラ60は、保持装置17のモータ23に駆動信号を入力し、カメラ16を第1マーカ51に向ける。
【0051】
カメラ16が撮像した第1マーカ51の画像データ(以下、第1画像データと記載する)は、コントローラ60に入力される(S13:Yes)。コントローラ60が第1画像データを受け付けるステップS13の処理は、本発明の「第1受付処理」の一例である。
【0052】
フローチャートには示されていないが、コントローラ60は、カメラ16から第1画像データが入力されたと判断すると(S13:Yes)、第1画像データが示す第1マーカ51の形状から、アウトリガ31、32のうちのどのアウトリガに設置された第1マーカ51かを判断する。
【0053】
次に、コントローラ60は、入力された第1画像データに基づいて、カメラ16の撮像位置から第1マーカ51までの距離及び方向を決定する(S14)。具体的に説明すると、まず、コントローラ60は、基準画像データ(図4(A))をメモリ64から読み出して取得する。コントローラ60は、取得した基準画像データと、カメラ16から入力された第1画像データ(図4(B))とを比較し、カメラ16の撮像位置から第1マーカ51までの距離及び方向を、パターンマッチングなどの画像解析技術を用いて、各第1マーカ51のそれぞれについて算出する。例えば、コントローラ60は、第1基準画像データに対する第1画像データの縮尺比と、第1基準画像データに対する第1画像データの縦横の歪み度合とを決定し、決定した縮尺比から距離を算出し、決定した歪み度合から方向を算出する。
【0054】
コントローラ60は、決定した第1マーカ51の位置に基づいて、クレーン車10を基準とした座標系を決定する(S15)。例えば、コントローラ60は、決定した3つの第1マーカ51の中心位置を原点とする座標系を決定する。コントローラ60は、例えば、マーカ型AR(Augmented Reality)技術を用いて、カメラ16から第1マーカ51までの距離及び方向の決定と、座標系の決定とを行う。すなわち、コントローラ60は、マーカ型ARプログラムをサブルーチンとして有していてもよい。コントローラ60は、決定した座標系を示す座標系データをメモリ64に記憶させる(S16)。座標系データが示す座標系は、本発明の「基準座標系」の一例である。座標系を決定するステップS16の処理は、本発明の「座標系決定処理」の一例である。
【0055】
なお、フローチャートには示されていないが、コントローラ60は、第1画像データが入力されたと判断すると(S13:Yes)、第1マーカ51の撮像が終了したことを示す画像をディスプレイ19に表示させる。当該画像を視認した作業者は、カメラ16の向きを変え、カメラ16のレンズを第2マーカ52に向ける。そして、作業者は、入力装置18を用いてPC15に撮像指示を入力する(S17)。コントローラ60は、撮像指示が入力されたことに応じて(S17:Yes)、カメラ16に撮像指示信号を入力し、カメラ16に撮像を実行させる(S18)。作業者は、2つの第2マーカ52に順にカメラ16を向け、2つの第2マーカ52を順に撮像する。なお、作業者は、PC15を介さず、カメラ16に設けられた撮像ボタンを押下して撮像指示をカメラ16に直接入力してもよい。
【0056】
カメラ16が撮像した第2マーカ52の画像データ(以下、第2画像データと記載する)は、コントローラ60に入力される(S19:Yes)。コントローラ60は、カメラ16から第2画像データが入力されたと判断すると(S19:Yes)、第2画像データが示す第2マーカ52の形状から、基端ブーム44に設置された第2マーカ52と、先端ブーム46に設置された第2マーカ52とのうちのどちらの第2マーカ52が撮像されたかを判断する。なお、カメラ16が撮像する第2マーカ52の順番が予め決められている場合は、コントローラ60は、入力する第2画像データの順番にしたがって、入力された第2画像データが、どちらの第2マーカ52を撮像して得られた第2画像データであるかを判断する。
【0057】
次に、コントローラ60は、入力された第2画像データに基づいて、メモリ64に記憶された座標系データが示す座標系における2つの第2マーカ52の座標位置をそれぞれ決定する(S20)。具体的には、コントローラ60は、カメラ16から第2マーカ52までの距離及び方向を上述の第1マーカ51と同様にして算出し、算出した距離及び方向に基づいて、第2マーカ52の座標位置を決定する。コントローラ60は、例えば、マーカ型AR技術を用いて、第2マーカ52の座標位置を決定する。すなわち、コントローラ60は、マーカ型ARプログラムをサブルーチンとして有していてもよい。カメラ16から第2画像データの入力を受け付けるステップS19の処理は、本発明の「第2受付処理」の一例である。座標系における第2マーカ52の座標位置を決定するステップS20の処理は、本発明の「画像処理」の一例である。
【0058】
なお、第2マーカ52が第1マーカ51よりも先に撮像されてもよいし、複数の第1マーカ51と複数の第2マーカ52がランダムに撮像されてもよい。全てのマーカ51、52が撮像された後、ステップS14、S15、S20の処理が実行される。
【0059】
コントローラ60は、決定した2つの第2マーカ52の位置に基づいて、ブーム44の撓み量を算出し、算出した撓み量をメモリ64に記憶させる(S21)。具体的に説明すると、変形量計測装置14は、クレーン車10に設けられた上述のセンサ群72から、ブーム44の起伏角度及びブーム44の長さを示すデータの入力を受け付ける。コントローラ60は、第2マーカ52の座標位置と、入力されたブーム44の起伏角及びブーム44の長さとに基づいて、ブーム44に撓みがない場合の先端ブーム48の第2マーカ52の仮想座標位置を決定し(図8)、決定した仮想座標位置とステップS18で決定した座標位置との差X(水平方向における差)を、撓み量として算出する。撓み量は、本発明の「変形量」の一例である。ブーム44の撓み量を算出するステップS21の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
【0060】
また、コントローラ60は、ブーム44の捻じれ量を算出し、算出した捻じれ量をメモリ64に記憶させる(S21)。例えば、コントローラ60は、算出した第2マーカ52の座標位置に基づいて、ブーム44の捻じれ量を決定する。或いは、コントローラ60は、第2画像データと基準画像データとを対比し、2つの第2マーカ52の傾き度合を算出してもよい。傾き度合とは、例えば、第2マーカ52がカメラ17と正対する向きを基準とした第2マーカ52の傾きである。コントローラ60は、2つの第2マーカ52のそれぞれについて、傾き度合を算出する。そして、コントローラ60は、例えば、ブーム44が捻じれていない状態である場合の第2マーカ52の傾き度合と、算出した第2マーカ52の傾き度合と、算出した第2マーカ52までの距離とに基づいて、ブーム44の捻じれ量を算出する。なお、第2画像データに基づいてブーム44の捻じれ量を算出可能であれば、他の算出方法が用いられてもよい。捻じれ量は、本発明の「変形量」の一例である。ブーム44の捻じれ量を算出するステップS21の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
【0061】
なお、コントローラ60は、ブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出することに代えて、或いは、撓み量及び捻じれ量の算出に加え、撓み量と捻じれ量とを統合した変形量を算出してもよい。例えば、コントローラ60は、第2画像データと基準画像データとを対比し、第2マーカ52の傾き度合及び第2マーカの座標位置を算出する。例えば、コントローラ60は、ブーム44が撓んでおらず、かつ捻じれていない状態の第2マーカ52の傾き度合、第2マーカ52までの距離、及び第2マーカ52の座標位置と、算出した第2マーカ52の傾き度合、第2マーカ52までの距離、及び第2マーカ52の座標位置と、に基づいて、ブーム44の変形量を算出する。なお、第2画像データに基づいてブーム44の変形量を算出可能であれば、他の算出方法が用いられてもよい。ブーム44の変形量を算出するステップS21の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
【0062】
フローチャートには示されていないが、コントローラ60は、撓み量や捻じれ量や変形量を算出したことに応じて、撓み量や捻じれ量や変形量の算出が終了したことを示す表示をディスプレイ19に行う。ディスプレイ19の表示を確認した作業者は、第1マーカ51をアウトリガ31、32から外し、第2マーカ52をブーム44から外す。
【0063】
[実施形態の作用効果]
【0064】
本実施形態の変形量計測装置14は、カメラ16とマーカ51、52とを用いた簡単な構成で、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出することができる。
【0065】
また、作業者は、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を計測する際にのみ、マーカ51、52をアウトリガ31、32及びブーム44に取り付ければよい。したがって、マーカ51、52を表記してクレーン車10を製造する必要が無く、クレーン車10の製造が容易になる。
【0066】
また、本実施形態の変形量計測装置14は、第1マーカ51を用いて座標系を決定するので、メモリ64に座標系を予め記憶する場合に比べ、算出する撓み量や捻じれ量や変形量の精度を高めることができる。
【0067】
また、第1マーカ51は、車体20の変形の影響を受けにくいアウトリガ31、32に設けられる。したがって、本実施形態の変形量計測装置14は、算出する撓み量や捻じれ量や変形量の精度をさらに高めることができる。詳しく説明すると、車体20は、温度や湿度や直射日光の影響を受けて変形する。アウトリガ31、32の変形の度合は、車体20の変形の度合よりも小さい。変形の度合が小さいアウトリガ31、32に第1マーカ51が設けられることにより、設定する座標系の精度が高くなる。設定する座標系の精度が高くなることにより、算出する撓み量や捻じれ量や変形量の精度が高くなる。
【0068】
[変形例1]
【0069】
上述の実施形態では、マーカ51、52を用いて撓み量や捻じれ量や変形量を算出する例が説明された。本変形例では、マーカ51、52を用いずに、撓み量や捻じれ量や変形量を算出する例が説明される。すなわち、本変形例では、マーカ型のAR技術ではなく、マーカレス型のAR技術が利用される。
【0070】
メモリ64は、第1マーカ51の基準画像データに代えて、張り出されたアウトリガ31、32を撮像した画像データである第1基準画像データを予め記憶する。また、メモリ64は、第2マーカ52の基準画像データに代えて、所定の起伏角で起伏し、かつ、所定の長さで伸長されたブーム44を撮像した画像データである第2基準画像データを予め記憶する。その他の構成は、上述の実施形態と同一である。
【0071】
以下、図7を参照して、本実施形態のコントローラ60が実行する変形量算出処理について説明がされる。なお、以下で説明する処理以外の処理は、実施形態と同一である。
【0072】
コントローラ60は、ステップS12において、カメラ16にアウトリガ31、32を撮像させる。そして、コントローラ60は、カメラ16が出力したアウトリガ31、32を示す第1画像データを取得する(S13:Yes)。第1画像データを取得するステップS13の処理は、本発明の「第1受付処理」の一例である。
【0073】
コントローラ60は、ステップS14において、カメラ16から第1マーカ51までの距離及び方向を決定する代わりに、取得した第1画像データと、メモリ64に記憶された第1基準画像データとを対比して、アウトリガ31、32の先端部の位置を決定する。アウトリガ31、32の先端部は、本発明の「第1検出部位」の一例である。
【0074】
そして、コントローラ60は、決定したアウトリガ31、32の先端部の位置に基づいて、座標系を決定し(S15)、メモリ64に記憶させる(S16)。例えば、コントローラ60は、決定したアウトリガ31、32の少なくとも3か所の先端部の中心を原点とする座標系を決定する。座標系を決定してメモリ64に記憶するステップS15、S16の処理は、本発明の「座標系決定処理」の一例である。
【0075】
コントローラ60は、ステップS18において、カメラ16に第2マーカ52を撮像させる代わりに、カメラ16にブーム44を撮像させる。そして、コントローラ60は、ブーム44を示す第1画像データをカメラ16から取得する(S19:Yes)。第2画像データを取得するステップS19の処理は、本発明の「第2受付処理」の一例である。
【0076】
コントローラ60は、ステップS20において、第2マーカ52の座標位置を決定する代わりに、取得した第2画像データと、メモリ64に記憶された第2基準画像データとを対比して、ブーム44の基端ブーム46及び先端ブーム48の座標位置を決定する。基端ブーム46及び先端ブーム48の座標位置の決定は、上述の実施形態と同様にして行われる。基端ブーム46及び先端ブーム48は、本発明の「第2検出部位」の一例である。基端ブーム46及び先端ブーム48の座標位置を決定するステップS20の処理は、本発明の「画像処理」の一例である。
【0077】
コントローラ60は、決定した基端ブーム46及び先端ブーム48の座標位置に基づいて、実施形態と同様にして、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出してメモリ64に記憶させる(S21)。ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出するステップS21の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
【0078】
[変形例1の作用効果]
本変形例の変形量計測装置14は、マーカ51、52を用いずにブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。したがって、本変形例の変形量計測装置14は、マーカ51、52をクレーン車10に設置する作業者の手間を省くことができる。
【0079】
[変形例2]
【0080】
本変形例では、ブーム44の先端部に設けられたカメラ16(図8)を用いて撓み量や捻じれ量や変形量が計測される例が説明される。カメラ16は、例えば、ブーム44が吊下する吊荷を撮像するカメラである。すなわち、クレーン車10に設置された既存のカメラ16を用いて撓み量や捻じれ量や変形量が計測される。なお、以下で説明される処理以外の処理は、上述の実施形態と同じである。
【0081】
第2マーカ52は、ブーム44の基端部に設けられている。第2マーカ52は、例えば、ブーム44の基端部に取り付けられた貼付部材に貼り付けられることにより、設置される。第2マーカ52は、ブーム44の先端部に正対する向きに設置される。
【0082】
カメラ16は、ブーム44の先端部に設けられている。カメラ16は、例えば、ブーム44の先端部に取り付けられた設置台に固定、或いは、回動可能に保持されている。カメラ16は、ブーム44が撓んだり捻じれたりしていない状態で第2マーカ52に正対する位置及び向きに設けられている。
【0083】
コントローラ60は、図7が示す変形量算出処理のステップS21において、ブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出する。コントローラ60は、例えば、上述の実施形態における2つの第2マーカ52のうちの一方の第2マーカ52の座標位置をカメラ16の座標位置として、実施形態と同様にして撓み量及び捻じれ量を算出する。カメラ16の座標位置は、例えば、センサ群72(旋回角センサ、起伏角センサ、ブーム長さセンサ)が出力した検出信号に基づいて、決定される。例えば、クレーン車10に設けられたコントローラがカメラ16の座標位置を決定し、送信する。送信されたカメラ16の座標位置は、変形量計測装置14に入力される。或いは、センサ群72が出力した検出信号が、クレーン車10から送信され、変形量計測装置14で受信される。変形量計測装置14のコントローラ60は、入力された検出信号に基づいて、カメラ16の座標位置を算出する。
【0084】
或いは、コントローラ60は、ステップS20において第2マーカ52の座標位置を決定する代わりに、算出した第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合と、ブーム44が変形していない場合における第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合とを対比し、ブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出してもよい。ブーム44が変形していない場合における第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合は、メモリ64に予め記憶されていてもよいし、或いは、吊荷を吊下していない状態においてカメラ16が第2マーカ52を撮像することによって得られた第2画像データから算出した第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合が用いられてもよい。なお、カメラ16が撮像した第2画像データに基づいてブーム44の撓み量や捻じれ量を算出可能であれば、他の算出方法が用いられてもよい。
【0085】
[変形例2の作用効果]
【0086】
本変形例では、ブーム44の基端部に設置された1つの第2マーカ52のみを撮像して撓み量及び捻じれ量を算出するので、複数の第2マーカ52を撮像して撓み量及び捻じれ量を算出する場合に比べ、作業者の手間が低減する。
【0087】
また、本変形例では、吊荷を撮像するカメラ17を利用して第2マーカ52を撮像することができるので、新たにカメラを用意する必要がない。
【0088】
また、本変形例では、1つの第2マーカ52のみでブーム44の撓み量及び捻じれ量が算出されるので、第2マーカ52を設置する手間が低減する。
【0089】
本変形例では、第2マーカ52がブーム44の基端部に設けられ、カメラ16がブーム44の先端部に設けられた例が説明された。しかしながら、第2マーカ52がブーム44の先端部に設けられ、カメラ16がブーム44の基端部に設けられていてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態と同様に、コントローラ60は、ステップS21において、撓み量と捻じれ量との一方のみを算出してもよいし、撓み量及び捻じれ量を統合した変形量を算出してもよい。
【0091】
[その他の変形例]
【0092】
上述の実施形態では、変形量計測装置14は、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。しかしながら、変形量計測装置14は、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量とともに、ブーム44に取り付けられたジブの撓み量や捻じれ量や変形量を算出してもよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、変形量計測装置14は、アウトリガ31、32に設置した第1マーカ51を撮像して得られた第1画像データを用いて座標系を決定する。しかしながら、座標系は、メモリ64に予め記憶されていてもよい。座標系がメモリ64に予め記憶されていることにより、変形量計測装置14は、第1マーカ51を撮像して座標系を決定する処理を省略することができる。
【0094】
また、上述の実施形態では、変形量計測装置14は、アウトリガ31、32に設置された第1マーカ51をカメラ16を用いて撮像する。しかしながら、変形量計測装置14は、アウトリガ31、32ではなく、車体20に設けられた第1マーカ51を撮像してもよい。すなわち、第1マーカ51は、アウトリガ31、32ではなく、車体20に設けられていてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、変形量計測装置14は、第2マーカ52を撮像することによって得られた第2画像データと、センサ群72によって検出したブーム44の起伏角及びブーム長さとを用いて、撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。しかしながら、変形量計測装置14は、第2画像データのみを用いて、撓み量や捻じれ量や変形量を算出してもよい。詳しく説明すると、座標系における基端ブーム46と旋回台41との接続位置の座標位置を示す座標データが、メモリ64に予め記憶される。コントローラ60は、接続位置の座標と、2つの第2マーカ52の座標位置とを用いて、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。或いは、3つ以上の第2マーカ52がブーム44に設置される。コントローラ60は、3つの第2マーカ52の座標位置を決定し、決定した3つの第2マーカ52の座標位置に基づいて、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。
【符号の説明】
【0096】
10・・・クレーン車
11・・・走行体
12・・・クレーン装置
14・・・変形量計測装置
15・・・PC
16・・・カメラ
17・・・保持装置
20・・・車体
23・・・モータ
31、32・・・アウトリガ
44・・・ブーム
51・・・第1マーカ
52・・・第2マーカ
59・・・プログラム
60・・・コントローラ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9