(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】吸音用ユニットおよび吸音構造体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20221109BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20221109BHJP
G10K 11/172 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G10K11/16 130
G10K11/16 110
E04B1/86 K
E04B1/86 T
G10K11/172
(21)【出願番号】P 2018208148
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】本地 由和
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-031240(JP,A)
【文献】特開平08-006570(JP,A)
【文献】米国特許第07913813(US,B1)
【文献】特開平02-071300(JP,A)
【文献】特開平05-143081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
E04B 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルムホルツ共鳴
器の開口部として機能する1以上の第1開口部を有
し、当該ヘルムホルツ共鳴器の特性を規定する第1部材と、
前記第1部材上に配置され、板状またはシート状をなし、平面視で前記1以上の第1開口部に重なる1以上の第2開口部を有し、平面視で前記1以上の第2開口部の周縁が前記1以上の第1開口部の周縁
よりも外側に位置し、多孔質材で構成される第2部材と、を有
し、
前記1以上の第1開口部のそれぞれの幅をdとし、前記1以上の第2開口部のそれぞれの幅をd1とするとき、
d1/dは、6.0以下である、
吸音用ユニット。
【請求項2】
d1/dは、
2.0以上6.0以下である、
請求項1に記載の吸音用ユニット。
【請求項3】
前記第2部材における前記1以上の第2開口部の開口率は、50%以下である、
請求項1または2に記載の吸音用ユニット。
【請求項4】
前記第1部材は、
板状またはシート状の基材と、
前記基材を貫通し、前記1以上の第1開口部が設けられる筒状の吸音用部材と、を有する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸音用ユニット。
【請求項5】
前記第1部材は、前記1以上の第1開口部を通じて外部に連通する中空の容器である、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸音用ユニット。
【請求項6】
前記第1部材に対して前記第2部材とは反対側に配置される第3部材と、
前記第2部材と前記第3部材とを連結し、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材を保持する複数の第4部材と、を有する、
請求項5に記載の吸音用ユニット。
【請求項7】
前記第1部材は、板状またはシート状をなす、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸音用ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸音用ユニットと、
前記吸音用ユニットが設置される壁体と、を有する、
吸音構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音用ユニットおよび吸音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルムホルツ共鳴を用いる吸音構造体が知られている。例えば、特許文献1に記載の吸音構造体は、複数の開口部を有する板状部材を備え、当該板状部材と壁体との間に空気層を設ける。特許文献1に記載の吸音構造体は、板状部材の開口部に接続される延長部材をさらに備える。延長部材の少なくとも一部は、空気層内に壁体と離間する状態で収容される。特許文献1では、板状部材として石膏ボードが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の吸音構造体では、ヘルムホルツ共鳴のみを用いて吸音するため、吸音可能な周波数帯域が狭いという課題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、吸音可能な周波数帯域を広くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る吸音用ユニットは、ヘルムホルツ共鳴のための1以上の第1開口部を有する第1部材と、前記第1部材上に配置され、板状またはシート状をなし、平面視で前記1以上の第1開口部に重なる1以上の第2開口部を有し、平面視で前記1以上の第2開口部の周縁が前記1以上の第1開口部の周縁と一致するかまたはそれよりも外側に位置し、多孔質材で構成される第2部材と、を有する。
【0006】
本発明の好適な態様に係る吸音構造体は、前記吸音用ユニットと、前記吸音用ユニットが設置される壁体と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】典型的なヘルムホルツ共鳴器を概念的に示す図である。
【
図6】共振システムにおける周波数と利得との関係を抵抗要素の大きさごとに示すグラフである。
【
図7】ヘルムホルツ共鳴器の開口部と音の流れとの関係を示す図である。
【
図8】スピーカーシステムに吸音構造体を設置する場合の応用例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】スピーカーシステムの筐体の右壁と左壁との間に発生する定在波の状態を模式的に示す図である。
【
図10】スピーカーシステムの筐体の前壁と後壁との間に発生する定在波の状態を模式的に示す図である。
【
図11】スピーカーシステムの筐体の天壁と底壁との間に発生する定在波の状態を模式的に示す図である。
【
図12】車両用のドアに吸音構造体を設置する場合の応用例を模式的に示す断面図である。
【
図13】変形例1に係る吸音構造体の平面図である。
【
図15】変形例2に係る吸音構造体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1-1.吸音構造体の構成
図1は、実施形態に係る吸音構造体100の平面図である。
図2は、
図1中のA1-A1線断面図である。
図1および
図2に示す吸音構造体100は、ヘルムホルツ共鳴を用いて吸音する構造体である。吸音構造体100は、壁体200と、壁体200に設置される吸音用ユニット1と、を有する。吸音用ユニット1は、板状またはシート状の基材20と、基材20を貫通する筒状の複数の吸音用部材10と、基材20上に配置される多孔質材30と、を有する。複数の吸音用部材10および基材20からなる構造体101は、第1部材の一例である。多孔質材30は、第2部材の一例である。基材20は、複数の吸音用部材10を介して壁体200に支持される。壁体200と基材20との間には、空間S0が形成される。空間S0は、各吸音用部材10内を介して外部空間に通じる。ここで、空間S0は、吸音用部材10に対応する空間S1ごとに、典型的なヘルムホルツ共鳴器の容器として機能する。また、多孔質材30は、ヘルムホルツ共鳴による吸音とは異なる周波数帯域での吸音が可能である。以下、吸音構造体100の各部を順に説明する。
【0010】
なお、
図1および
図2に図示されるように、以下の説明では、壁体200の壁面200aに沿う任意の一方向(
図1中左右方向)をX方向と表記し、壁面200aに沿ってX方向に直交する方向(
図1中上下方向)をY方向と表記し、壁面200aの法線方向をZ方向と表記する。
図1中右側がX方向の正側であり、左側がX方向の負側である。また、
図1中上側がY方向の正側であり、下側がY方向の負側である。また、
図1中紙面手前側がZ方向の正側であり、奥側がZ方向の負側である。また、以下の説明では、Z方向からみる状態を平面視という。
【0011】
壁体200は、吸音用ユニット1を支持する構造体である。例えば、壁体200は、スピーカーシステム等の音響装置が有する筐体、車両等の移動体のドア等に用いられるパネル、建物の内壁、またはこれらのいずれかに固定される構造体等である。なお、スピーカーシステムまたは車両用のドアに吸音構造体100を設置する場合の応用例については、後述する。
【0012】
基材20は、複数の孔21を有する板状またはシート状をなす部材である。基材20は、柔軟であること、言い換えると、可撓性を有することが好ましい。基材20が柔軟であることにより、壁体200の壁面200aが曲面であっても、基材20を壁面200aに沿って変形させて配置することができる。基材20の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、エラストマー材料、樹脂材料および金属材料等が挙げられる。また、基材20は、吸音構造体100がヘルムホルツ共鳴を生じさせることが可能であれば、緻密体で構成してもよいし、多孔質体で構成してもよい。また、基材20の厚さtは、基材20に必要な強度および取り扱い易さ等に応じて決められ、特に限定されないが、基材20を柔軟にする観点から、例えば、1mm以上10mm以下であることが好ましい。なお、基材20の平面視での形状または大きさは、
図1に示す例に限定されず、吸音構造体100の設置場所および吸音特性等に応じて適宜に設定される。
【0013】
複数の孔21のそれぞれは、吸音用部材10が挿入される孔である。
図1に示す例では、複数の孔21は、平面視で行列状に規則的に配置される。
図1に例示される各孔21の平面視形状は、円形である。なお、複数の孔21の数、行数、列数、行ピッチまたは列ピッチは、吸音構造体100の大きさおよび吸音特性等に応じて決められ、
図1に示す例に限定されない。また、複数の孔21の配置は、
図1に示す例に限定されず、例えば、千鳥配置等の他の規則的な配置でもよい。さらに、各孔21の平面視形状は、吸音用部材10の外形等に応じて決められ、円形に限定されず、例えば、四角形、五角形または六角形等の多角形等でもよい。
【0014】
吸音用部材10は、前述の基材20の孔21に挿入され、空間S0と外部空間とを連通させる筒状の部材である。吸音用部材10の構成材料としては、特に限定されず、例えば、樹脂材料、炭素材料、金属材料、セラミックス材料およびこれらの2種以上からなる複合材料等が挙げられる。中でも、樹脂材料は、他の材料に比べて、成形性がよく、かつ、軽量でコストも安価あることから好ましい。
【0015】
図3は、第1実施形態における吸音用部材10の縦断面である。
図4は、
図3中のB-B線断面図である。
図3に示すように、吸音用部材10は、中空部11を有する筒状をなす。ここで、吸音用部材10は、第1端面E1と、第1端面E1とは反対側の端面である第2端面E2と、第1端面E1と第2端面E2との間に設けられる側面FSと、を含む。
【0016】
吸音用部材10の第1端面E1には、中空部11に連通する開口部12が設けられる。ここで、開口部12は、第1開口部の一例である。また、吸音用部材10の側面FSの第1端面E1よりも第2端面E2に近い位置には、中空部11に連通する複数の開口部13が設けられる。したがって、複数の開口部13のぞれぞれは、中空部11を介して開口部12に連通する。このため、吸音用部材10は、典型的なヘルムホルツ共鳴器の管として機能する。
【0017】
ここで、複数の開口部13が側面FSに設けられるため、第2端面E2を壁体200に接触させても、各開口部13が壁体200により塞がれることなく、この機能が維持される。また、この機能を好適に発揮させる観点から、複数の開口部13の開口面積の合計は、開口部12の開口面積以上であることが好ましい。
図4に示すように、複数の開口部13は、側面FSの周方向に並んで配置される。この配置は、開口部13の数が1つである場合に比べて、開口部13の必要な開口面積を確保しても、吸音用部材10の機械的強度を高くしやすいという利点がある。また、複数の開口部13は、第1端面E1よりも第2端面E2に近い位置に配置されるため、そうでない場合に比べて、吸音用部材10における典型的なヘルムホルツ共鳴器の管に相当する部分の長さlを長くすることができる。このため、吸音用部材10の長さL1を短くして吸音構造体100の薄型化を図りつつ、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を低くすることができる。なお、開口部13の数は、
図4に示す例では4つであるが、これに限定されず、例えば、3つ以下または5つ以上でもよい。
【0018】
吸音用部材10には、側面FSから突出するフランジ部14が第1端面E1の外周に沿って設けられる。フランジ部14は、基材20の一方の面(
図2中上側の面)に接触することにより、基材20に対する位置を規制する。すなわち、フランジ部14を用いて基材20に対する吸音用部材10の位置決めを行うことができる。このため、基材20に対する吸音用部材10の位置ずれに起因する吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域の変動を低減することができる。また、フランジ部14の基材20側の面は、基材20との接合のための接合面として用いることができる。したがって、フランジ部14は、必要に応じて、接着剤または粘着剤により基材20に固定される。本実施形態のフランジ部14の平面視での外形は、円形である。フランジ部14の外側への突出量は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上5mm以下の範囲内である。また、フランジ部14の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上5mm以下の範囲内である。なお、フランジ部14の平面視での外形は、円形に限定されず、例えば、四角形、五角形または六角形等の多角形でもよい。なお、フランジ部14は、省略してもよい。
【0019】
本実施形態の吸音用部材10の第2端面E2は、吸音用部材10の一端を塞ぐ底部15である。すなわち、吸音用部材10は、一端が開口する有底筒状をなす。第2端面E2は、壁体200に対して固定される。ここで、吸音用部材10は、基材20と壁体200との間の距離Lを規定するスペーサーとして機能する。このため、壁体200の壁面200aが曲面であっても、基材20と壁体200との間の距離Lを均一にすることができ、この結果、吸音構造体100の所望の吸音効果を得ることができる。
【0020】
壁体200に対する底部15または吸音用部材10の固定方法としては、特に限定されないが、例えば、接着剤または粘着剤による固定方法、壁面200aに設けられる凹部と底部15との嵌め合いによる固定方法等が挙げられる。なお、底部15は、省略してもよい。この場合、第2端面E2に設けられる開口部と、壁面200aに設けられる凸部との嵌め合いにより、吸音用部材10を壁体200に対して固定してもよい。
【0021】
多孔質材30は、基材20の壁体200とは反対側の面上、すなわち、基材20の前述の第1端面E1側の面上に配置される。多孔質材30は、平面視で基材20の複数の孔21に重なる複数の孔31を有する板状またはシート状の多孔質体である。ここで、孔31は、第2開口部の一例である。各孔31の平面視形状は、
図1に示す例では円形であるが、これに限定されず、例えば、四角形、五角形または六角形等の多角形等でもよいし、吸音用部材10の開口部12の平面視形状と異なってもよい。また、多孔質材30は、柔軟であること、言い換えると、可撓性を有することが好ましい。多孔質材30が柔軟であることにより、壁体200の壁面200aが曲面であっても、多孔質材30を壁面200aに沿って配置することができる。多孔質材30は、例えば、ガラス繊維、フェルトまたはウレタンフォーム等の多孔質体で構成される。当該多孔質体で構成される多孔質材30は、ヘルムホルツ共鳴で吸音可能な周波数帯域よりも高い周波数帯域での吸音が可能である。このため、多孔質材30を用いない場合に比べて、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を広くすることができる。
【0022】
複数の孔31は、基材20の複数の孔21に対応して配置され、平面視で、対応する孔21に重なる。
図1に示す例では、複数の孔31は、複数の孔21に対応して、平面視で行列状に規則的に配置される。また、平面視で孔31の周縁が前述の吸音用部材10の開口部12の周縁よりも外側に位置する。このため、多孔質材30が吸音構造体100のヘルムホルツ共鳴による吸音を阻害するのを低減できる。なお、開口部12および孔31の関係については、後に詳述する。
【0023】
1-2.吸音構造体の作用
図5は、典型的なヘルムホルツ共鳴器100Xを概念的に示す図である。ヘルムホルツ共鳴器100Xは、容器101と、容器101に接続される管102と、を有する。ヘルムホルツ共鳴器100Xでは、容器101内および管102内の空気は、管102内の空気を質量とし、容器101内の空気をバネとする振動系を構成する。この振動系が共振すると、管102内の空気が激しく振動するため、管102内の空気の摩擦損失により吸音作用が生じる。ここで、容器101内の体積をVとし、管102の長さをlとし、管102内の横断面積をsとするとき、ヘルムホルツ共鳴器100Xの共振周波数f
0は、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0024】
この式(1)において、cは、空気中の音速である。また、δは、開口端補正値であり、管102内の横断面形状が円形である場合、管102内の直径をdとするとき、δ≒0.8×dで表される。
【0025】
一方、前述の構成の吸音構造体100において、空間S0は、複数の吸音用部材10からの圧力の均衡により区分けされ、この区分けの部分が壁WAとして機能する。したがって、空間S0は、壁WAにより吸音用部材10ごとの複数の空間S1に区画される。各空間S1は、前述の容器101内の空間に相当する。また、中空部11の開口部12と開口部13との間の部分が前述の管102に相当する。したがって、当該部分の長さが前述の長さlに相当する。また、基材20上における複数の開口部12の開口率をPとし、基材20と壁体200との間の距離をLとするとき、P/Lは、前述のs/Vに近似される関係にある。したがって、この関係および前述の式(1)から、吸音構造体100の共振周波数f
0は、以下の式(2)で表される。
【数2】
【0026】
この式(2)から理解される通り、開口率P、距離Lおよび長さlに応じて、吸音構造体100が最も効率的に吸音可能な周波数である共振周波数f0を調整できる。ここで、距離Lまたは長さlを大きくすることにより、共振周波数f0を低くすることができる。
【0027】
本実施形態の吸音構造体100では、吸音用部材10の大部分が空間S0内に配置されるため、距離Lまたは長さlを大きくしても、吸音用部材10を用いずに孔21を管102として用いる場合に比べて、吸音構造体100の厚さを薄くすることができる。したがって、吸音構造体100では、薄型化を図りつつ、吸音可能な周波数を低くすることができる。なお、開口率Pを小さくすることによっても共振周波数f0を低くすることができるが、この場合、吸音構造体100が有するヘルムホルツ共鳴器の単位面積あたりの数が少なくなり、吸音効果が低下する。
【0028】
また、吸音用部材10は、壁体200に対して基材20を支持するため、壁体200と基材20との間の距離を規定するスペーサーとして機能する。このため、前述の距離Lが吸音構造体100の面方向での位置によってばらつくことを低減することができる。この結果、吸音構造体100は、所望の吸音効果を発揮できる。
【0029】
1-3.開口部12および孔31の関係
ヘルムホルツ共鳴器による吸音効果は、ヘルムホルツ共鳴器での共鳴が強くなるほど高くなる。当該共鳴の強さに影響を与える要素としては、例えば、ヘルムホルツ共鳴器の構成材料、表面粗さ、剛性、気密性、開口部の音響抵抗等が挙げられる。このうち、開口部の音響抵抗は、適切に設計および製造されるヘルムホルツ共鳴器において、共鳴の強さに最も影響を与えやすいといえる。
【0030】
図6は、共振システムにおける周波数と利得との関係を抵抗要素の大きさごとに示すグラフである。
図6の横軸は、規格化された周波数であり、縦軸は、利得である。ここで、当該抵抗要素は、ヘルムホルツ共鳴器の開口部の音響抵抗に対応し、当該利得は、ヘルムホルツ共鳴器の吸音率に対応する。
図6中aが抵抗要素の最も小さい場合を示す。
図6中eが抵抗要素の最も大きい場合を示す。
図6中a、b、c、dおよびeは、この順に抵抗要素が大きくなる。
図6から明らかなように、抵抗要素が大きくなると、共振周波数f
0における利得が低下する。したがって、音響抵抗が大きくなると、ヘルムホルツ共鳴器の吸音率が低下する。
【0031】
より具体的には、500Hz~4kHzの中高音域において十分な吸音効果を有する多孔質材でヘルムホルツ共鳴器の開口部を覆うと、当該開口部における音響抵抗が大きくなりすぎてしまい、ヘルムホルツ共鳴による吸音率も著しく低下する。そこで、前述の吸音構造体100では、多孔質材30は、開口部12を塞がないように配置される。ただし、ヘルムホルツ共鳴による吸音率を最大化するには、開口部12における音響抵抗は、適度な大きさであることが好ましい。当該適度な大きさの音響抵抗は、それ自体に実質的な吸音効果を有しないメッシュ布等のわずかな音響抵抗要素で開口部12を覆うことにより実現可能である。
【0032】
図7は、ヘルムホルツ共鳴器の開口部と音の流れとの関係を示す図である。
図7では、音響抵抗無限大相当の剛璧であって一部にヘルムホルツ共鳴器の開口部を有する平面状の壁面に音が垂直入射する場合における反射音の音響強度の分布のシミュレーション結果が示される。ここで、
図7中の横軸は、当該開口部の中心からの距離[mm]であり、縦軸は、当該壁面からの距離[mm]である。なお、本シミュレーションでは、ヘルムホルツ共鳴による吸音率が最大化するようにヘルムホルツ共鳴器の開口部における音響抵抗が調整される。また、本シミュレーションでは、当該開口部の幅dが50mmであるが、幅dを変更しても同様の傾向を有する結果が得られる。
【0033】
図7に示すように、ヘルムホルツ共鳴器では、開口部の周辺部分における反射音がヘルムホルツ共鳴器に吸い込まれる現象が生じる。当該現象は、ヘルムホルツ共鳴器の開口部と周囲の壁面との音響インピーダンスに十分に差がある場合に生じる。この場合、ヘルムホルツ共鳴器による吸音効果は、当該開口部に直接入射する音だけでなく、当該開口部の周囲の壁面に入射する音も巻き込んで当該開口部に入射することで得られる。
【0034】
ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数f0における音響インピーダンス(絶対値)は、当該開口部において最小となる。ここで、複素数の音響インピーダンスの虚数部である音響リアクタンスは、ゼロであり、実数部である音響抵抗は、ヘルムホルツ共鳴器の開口部における音響抵抗の要素に応じた値となる。
【0035】
一方、ヘルムホルツ共鳴器の開口部の周囲において、理想的な剛壁が設置される場合、音響インピーダンス(実数部)が無限大となる。これに対し、ヘルムホルツ共鳴器の開口部の周囲に多孔質材が配置される場合、音響インピーダンスが低下する。したがって、ヘルムホルツ共鳴器による吸音効果を高くするには、ヘルムホルツ共鳴器の開口部の周囲をできるだけ剛壁に近い壁面にすることが好ましい。
【0036】
そこで、本実施形態の吸音用ユニット1では、前述のように、平面視で、第2開口部の一例である孔31の周縁が第1開口部の一例である開口部12の周縁よりも外側に位置する。このため、多孔質材30がヘルムホルツ共鳴による吸音を阻害するのを低減できる。なお、平面視で孔31の周縁が開口部12の周縁と一致してもよく、この場合でも、開口部12が多孔質材に覆われる場合に比べて、ヘルムホルツ共鳴による吸音効果が高い。
【0037】
前述の開口部12および孔31の周縁同士の位置関係を実現するため、多孔質材30の孔31の幅をd1とし、開口部12の幅をdとするとき、幅dおよびd1の比d1/dは、1.0以上である。なお、開口部12の幅dは、当該開口部12の中心軸を含む断面でみるときにおける当該中心軸に対して垂直な方向での開口部12の長さである。孔31の幅d1は、当該孔31に対応する開口部12の中心軸を含む断面でみるときにおける当該中心軸に対して垂直な方向での当該孔31の長さである。また、比d1/dは、同一の断面でみるときの幅dおよびd1の比である。
【0038】
図7に示す結果から、幅dおよびd1の比d1/dは、1.0以上6.0以下であることが好ましく、2.0以上6.0以下、3.2以上6.0以下、4.0以上6.0以下とすることでより好ましくなる。比d1/dをこの範囲内とすることにより、ヘルムホルツ共鳴による吸音効果と多孔質材30による吸音効果との両立を好適に図ることができる。これに対し、比d1/dが小さすぎると、ヘルムホルツ共鳴による吸音効果が急激に低下する傾向を示す。一方、比d1/dが大きすぎると、多孔質材30による吸音効果の低下が顕著となる。また、比d1/dが大きくしすぎても、ヘルムホルツ共鳴による吸音効果のそれ以上の向上が認められない。
【0039】
また、多孔質材30における複数の孔31の開口率は、50%以下であることが好ましく、1%以上50%以下であることがより好ましい。当該開口率がこの範囲内にある場合、孔31がない場合と同程度に多孔質材30による吸音効果を発揮させることができる。これに対し、当該開口率が大きすぎると、多孔質材30による吸音効果が急激に減少する傾向を示す。一方、当該開口率が小さすぎると、孔21の開口率によっては、孔31の開口面積を孔21の開口面積よりもよりも大きくすることが難しい。
【0040】
2.応用例
以下、前述の吸音構造体100の応用例について説明する。
【0041】
2-1.スピーカーシステム
図8は、スピーカーシステム400に吸音構造体100を設置する場合の応用例を模式的に示す斜視図である。スピーカーシステム400は、筐体401と、筐体401に取り付けられるスピーカーユニット402および吸音構造体100と、を有する。筐体401は、スピーカーユニット402が取り付けられる開口部を有する中空の直方体である。すなわち、筐体401は、右壁401Rと左壁401Lと前壁401Fと後壁401Bと天壁401Tと底壁401Sとを有する。ここで、右壁401Rおよび左壁401Lは、X1方向に互いに対向する。前壁401Fおよび後壁401Bは、Y1方向に互いに対向する。天壁401Tおよび底壁401Sは、Z1方向に互いに対向する。なお、
図8に示すX1方向、Y1方向およびZ1方向は、互いに直交する。
【0042】
図9は、右壁401Rと左壁401Lとの間に発生する定在波GX1およびGX2の状態を模式的に示す図である。
図10は、前壁401Fと後壁401Bとの間に発生する定在波GY1およびGY2の状態を模式的に示す図である。
図11は、天壁401Tと底壁401Sとの間に発生する定在波GZ1およびGZ2の状態を模式的に示す図である。
図9から
図11に示す定在波GX1、GY1、GZ1、GX2、GY2およびGZ2のそれぞれは、1次元(軸波)の定在波である。定在波GX1は、X1方向における1次の定在波である。定在波GY1は、Y1方向における1次の定在波である。定在波GZ1は、Z1方向における1次の定在波である。定在波GX2は、X1方向における2次の定在波である。定在波GY2は、Y1方向における2次の定在波である。定在波GZ2は、Z1方向における2次の定在波である。なお、
図9から
図11では、定在波GX1、GY1およびGZ1のそれぞれが破線で示され、定在波GX2、GY2およびGZ2のそれぞれが一点鎖線で示される。
【0043】
前述の筐体401の6つの壁のうち1つまたは複数の内面には、その一部または全部の領域にわたって、吸音構造体100が設置される。例えば、右壁401Rおよび左壁401Lのうちの一方または両方の内面に吸音構造体100が設置される場合、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を前述の定在波GX1またはGX2の周波数に応じて設定することにより、定在波GX1またはGX2を低減することができる。同様に、前壁401Fおよび後壁401Bのうちの一方または両方の内面に吸音構造体100が設置される場合、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を前述の定在波GY1またはGY2の周波数に応じて設定することにより、定在波GY1またはGY2を低減することができる。また、前壁401Fおよび後壁401Bのうちの一方または両方の内面に吸音構造体100が設置される場合、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を前述の定在波GZ1またはGZ2の周波数に応じて設定することにより、定在波GZ1またはGZ2を低減することができる。以上の通り、定在波GX1、GY1、GZ1、GX2、GY2およびGZ2のうちの1つまたは複数を低減することにより、スピーカーシステム400の音質を向上させることができる。
【0044】
なお、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を2次元(接線波)または3次元(斜め波)の定在波の周波数に応じて設定してもよい。この場合、筐体401内の2次元または3次元の定在波を低減することができる。また、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を3次以上の高次の定在波の周波数に応じて設定してもよい。この場合、筐体401内の3次以上の高次の定在波を低減することができる。また、
図11では、吸音構造体100をスピーカーシステム400に設置する場合が例示されるが、吸音構造体100に代えて、後述する吸音構造体100Aまたは100Bを用いてもよい。
【0045】
2-2.車両用のドア
図12は、車両用のドア500に吸音構造体100を設置する場合の応用例を模式的に示す断面図である。
図12に示すドア500は、アウターパネルと称される第1パネル501と、ドアトリムと称される第2パネル502と、インナーパネルと称される第3パネル503と、第3パネル503に取り付けられるスピーカーユニット504と、第2パネル502に取り付けられる吸音構造体100と、を有する。
【0046】
第1パネル501および第3パネル503のそれぞれは、一般に、鋼板で構成される。また、第1パネル501および第3パネル503は、互いに溶接等により接合される。第1パネル501と第3パネル503との間には、空間S10が形成される。空間S10には、スピーカーユニット504の一部、図示しない窓ガラス、窓ガラス昇降機構およびドアロック機構等が配置される。なお、第1パネル501または第3パネル503は、例えば、アルミニウム合金または炭素材を用いて構成してもよい。
【0047】
第3パネル503には、開口部503aおよび503bが設けられる。開口部503aは、スピーカーユニット504を第3パネル503に取り付けるための取付孔である。開口部503bは、例えば前述の空間S10での作業等に用いる孔である。なお、開口部503bは、吸音構造体100で塞がれてもよいし、単なる樹脂製のシートで塞がれてもよい。
【0048】
第2パネル502は、例えば樹脂を用いて構成される。第2パネル502は、第3パネル503に対し、複数の連結機構505により固定される。なお、連結機構505は、第2パネル502を第3パネル503に対して固定することができれば、いかなる構成でもよい。
【0049】
第2パネル502と第3パネル503との間には、空間S11が形成される。空間S11には、スピーカーユニット504の空間S10に配置されない部分が配置される。ここで、第2パネル502と第3パネル503との間には、第2パネル502の外周に沿って、ゴム等で構成されるパッキン506が配置される。
【0050】
吸音構造体100は、第2パネル502の内面に設置される。ここで、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域は、例えば、前述の空間S10またはS11の定在波の周波数に応じて設定される。この設定により、スピーカーユニット504の音質を高めることができる。また、吸音構造体100の吸音可能な周波数帯域を適宜設定することにより、外部から車両内へのロードノイズ等の侵入を低減することもできる。なお、吸音構造体100が有する壁体200は、第2パネル502と一体でも別体でもよい。壁体200が第2パネル502と別体である場合、壁体200は、例えば接着剤または粘着剤等により第2パネル502に固定される。
【0051】
スピーカーユニット504は、例えば、スピーカー本体504aと、スピーカー本体504aを収容する筒状のハウジング504bと、を有する。スピーカー本体504aは、ねじ止め等によりハウジング504bに固定される。ハウジング504bは、第3パネル503の開口部503aを貫通する状態で、ねじ止め等により第3パネル503に固定される。
【0052】
なお、
図12では、吸音構造体100をドア500に設置する場合が例示されるが、吸音構造体100に代えて、後述する吸音構造体100Aまたは100Bを用いてもよい。また、
図12では、ドア500が例示されるが、車両のドア以外の部分、例えば、ルーフパネルまたはフロアパネル等に吸音構造体100を設置してもよい。また、車両以外の移動体に吸音構造体100を設置してもよい。
【0053】
3.変形例
本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
3-1.変形例1
前述の形態では、吸音用部材10を用いてヘルムホルツ共鳴器を構成する場合が例示されるが、ヘルムホルツ共鳴器の構成は、前述の形態に限定されない。
【0055】
図13は、変形例1に係る吸音構造体100Aの平面図である。
図14は、
図13中のA2-A2線断面図である。
図13および
図14に示す吸音構造体100Aは、吸音用ユニット1Aと壁体200とを有する。吸音用ユニット1Aは、複数の容器10Aと、複数の容器10Aを保持する多孔質材30、支持部材40および複数の連結部材50と、を有する。
【0056】
複数の容器10Aのそれぞれは、ヘルムホルツ共鳴器を構成する第1部材の一例である。具体的には、容器10Aは、容器本体16と、容器本体16の内外を貫通する管17と、を有する。ここで、管17の開口部18は、第1開口部の一例である。このように、容器10Aは、開口部18を通じて外部に連通する中空の容器である。容器10Aの構成材料としては、特に限定されず、例えば、樹脂材料、炭素材料、金属材料、セラミックス材料およびこれらの2種以上からなる複合材料等が挙げられる。中でも、樹脂材料は、他の材料に比べて、成形性がよく、かつ、軽量でコストも安価あることから好ましい。また、容器10Aが柔軟性を有してもよい。この場合、音圧により容器10Aの容積を変動させることにより、容器10Aの吸音可能な周波数帯域を広げることができる。以上の複数の容器10Aは、互いに別体のヘルムホルツ共鳴器であるため、いかなる姿勢であっても、容積が変化しない。このため、壁体200の壁面200aが曲面である場合であっても、所望の吸音効果を得ることができる。
【0057】
支持部材40は、容器10Aに対して多孔質材30とは反対側に配置される第3部材の一例である。支持部材40は、板状またはシート状をなす部材である。支持部材40は、基材20と同様、柔軟であることが好ましく、例えば、エラストマー材料、樹脂材料または金属材料等で構成される。複数の連結部材50は、多孔質材30と支持部材40とを連結し、多孔質材30と支持部材40との間に複数の容器10Aを保持する複数の第4部材の一例である。
図13および
図14に例示される連結部材50は、多孔質材30および支持部材40のそれぞれを貫通する長尺状をなす。ここで、連結部材50の両端の幅は、他の部分の幅よりも広い。このため、連結部材50が多孔質材30および支持部材40から外れるのを防止できる。以上のように、複数の容器10Aが多孔質材30に対して支持部材40および複数の連結部材50により保持されるため、壁体200に設置する前の吸音用ユニット1Aの取り扱いが容易となる。
【0058】
3-2.変形例2
図15は、変形例2に係る吸音構造体100Bの平面図である。
図16は、15中のA3-A3線断面図である。
図15および
図16に示す吸音構造体100Bは、複数の吸音用部材10が省略される以外は、前述の実施形態の吸音構造体100と同様である。すなわち、吸音構造体100Bは、吸音用ユニット1Bと壁体200とを有する。吸音用ユニット1Bは、複数の吸音用部材10が省略される以外は、前述の実施形態の吸音用ユニット1と同様である。ここで、基材20は、板状またはシート状をなす第1部材の一例である。また、基材20の孔21は、第1開口部の一例である。以上の吸音用ユニット1Bによれば、前述の変形例1のようなヘルムホルツ共鳴器の容器ごとに構造体を設ける構成に比べて、吸音用ユニット1Bの構造が簡単となる。
【0059】
なお、変形例2の複数の孔21のうちの一部の孔21に前述の吸音用部材10を挿入してもよいし、複数の孔21のそれぞれに開口幅の調整のための筒状の部材を挿入してもよい。
【0060】
4.付記
以上に例示する形態または変形例から、例えば以下の態様が把握される。
【0061】
本発明の好適な態様(第1態様)に係る吸音用ユニットは、ヘルムホルツ共鳴のための1以上の第1開口部を有する第1部材と、前記第1部材上に配置され、板状またはシート状をなし、平面視で前記1以上の第1開口部に重なる1以上の第2開口部を有し、平面視で前記1以上の第2開口部の周縁が前記1以上の第1開口部の周縁と一致するかまたはそれよりも外側に位置し、多孔質材で構成される第2部材と、を有する。以上の態様によれば、ヘルムホルツ共鳴および多孔質材の双方による吸音効果が得られる。このため、吸音可能な周波数帯域を広くすることができる。ここで、平面視で多孔質材の第2開口部の周縁がヘルムホルツ共鳴のための第1開口部の周縁よりも外側に位置するため、多孔質材がヘルムホルツ共鳴による吸音を阻害するのを低減できる。
【0062】
第1態様の好適例(第2態様)において、前記1以上の第1開口部のそれぞれの幅をdとし、前記1以上の第2開口部のそれぞれの幅をd1とするとき、d1/dは、1.0以上6.0以下である。以上の態様によれば、ヘルムホルツ共鳴による吸音効果と多孔質材による吸音効果との両立を好適に図ることができる。
【0063】
第1態様または第2態様の好適例(第3態様)において、前記第2部材における前記1以上の第2開口部の開口率は、50%以下である。以上の態様によれば、第2孔がない場合と同程度に多孔質材による吸音効果を発揮させることができる。
【0064】
第1態様から第3態様のいずれかの好適例(第4態様)において、前記第1部材は、
板状またはシート状の基材と、前記基材を貫通し、前記1以上の第1開口部が設けられる筒状の吸音用部材と、を有する。以上の態様によれば、吸音構造体の薄型化を図りつつ、吸音構造体の吸音可能な周波数帯域を低くすることができる。
【0065】
第1態様から第3態様のいずれかの好適例(第5態様)において、前記第1部材は、前記1以上の第1開口部を通じて外部に連通する中空の容器である。以上の態様によれば、壁体の壁面が曲面である場合であっても、所望の吸音効果を得ることができる。
【0066】
第5態様の好適例(第6態様)において、前記第1部材に対して前記第2部材とは反対側に配置される第3部材と、前記第2部材と前記第3部材とを連結し、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材を保持する複数の第4部材と、を有する。以上の態様によれば、第1部材が第2部材に対して第3部材および第4部材により保持されるため、壁体に設置する前の吸音用ユニットの取り扱いが容易となる。
【0067】
第1態様から第3態様のいずれかの好適例(第7態様)において、前記第1部材は、板状またはシート状をなす。以上の態様によれば、ヘルムホルツ共鳴器の容器ごとに構造体を設ける構成に比べて、吸音用ユニットの構造が簡単となる。
【0068】
本発明の好適な態様(第8態様)に係る吸音構造体は、第1態様から第7態様のいずれかの吸音用ユニットと、前記吸音用ユニットが設置される壁体と、を有する。以上の態様によれば、ヘルムホルツ共鳴または多孔質材の一方のみを用いる吸音構造体に比べて、吸音可能な周波数帯域の広い吸音構造体を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…吸音用ユニット、1A…吸音用ユニット、1B…吸音用ユニット、10…吸音用部材、10A…容器、12…開口部、18…開口部、20…基材、21…孔、30…多孔質材、31…孔、40…支持部材、50…連結部材、100…吸音構造体、100A…吸音構造体、100B…吸音構造体、100C…吸音構造体、200…壁体、200a…壁面、E1…第1端面。