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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】電機子および電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20221109BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K15/085
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018211084
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020078202
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小淵 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇史
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231277(JP,A)
【文献】特開2016-178783(JP,A)
【文献】特開2013-208038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/28
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、
前記電機子コアの前記中心軸線方向の一方側に配置されるとともに前記中心軸線方向の他方側に延びる一対の第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、
前記電機子コアの前記中心軸線方向の他方側に配置されるとともに前記中心軸線方向の一方側に延びる一対の第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、
複数の前記第1セグメント導体の各々の前記第1脚部の先端部側に設けられ、前記中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の一方側を向くように設けられる第1面と、複数の前記第2セグメント導体の各々の前記第2脚部の先端部側に設けられ、前記中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の他方側を向くように設けられる第2面とが、前記スロット内または前記スロットの前記中心軸線方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、を備え、
全ての前記スロット内または全ての前記スロットの前記中心軸線方向の外側において、前記第1セグメント導体の前記第1脚部の前記第1面が設けられる第1面側部分と、前記第2セグメント導体の前記第2脚部の前記第2面が設けられる第2面側部分とが同じ順番で交互に配置されており
前記接合部は、前記電機子コアの前記中心軸線方向の中心よりも、前記電機子コアの前記中心軸線方向における一方側端面および他方側端面のうちの少なくとも一方の近傍に設けられている、電機子。
【請求項2】
前記第1面側部分は、前記第1面側部分が設けられない前記第1脚部の部分の厚みよりも前記径方向の厚みが小さくなるように、前記第1脚部の前記径方向の一方側の面側が加工されることにより設けられており、
前記第2面側部分は、前記第2面側部分が設けられない前記第2脚部の部分の厚みよりも前記径方向の厚みが小さくなるように、前記第2脚部の前記径方向の他方側の面側が加工されることにより設けられている、請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記第1セグメント導体の前記第1面側部分と、前記第2セグメント導体の前記第2面側部分とは、同一の形状を有する、請求項1または2に記載の電機子。
【請求項4】
前記中心軸線方向から見て、前記第1セグメント導体の第1コイルエンド部は、周方向に沿うように湾曲しており、
前記第1セグメント導体の一対の前記第1脚部の前記第1面は、径方向内側を向くように形成されており、
前記中心軸線方向から見て、前記第2セグメント導体の第2コイルエンド部は、周方向に沿うように湾曲しており、
前記第2セグメント導体の一対の前記第2脚部の前記第2面は、径方向外側を向くように形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電機子。
【請求項5】
前記第1セグメント導体および前記第2セグメント導体の各々は、それぞれ、一対の前記第1脚部および一対の前記第2脚部を含むU字形状を有しており、
前記スロットに配置される全てのU字形状の前記第1セグメント導体の前記第1脚部の長さは互いに等しいとともに、前記スロットに配置される全てのU字形状の前記第2セグメント導体の前記第2脚部の長さは互いに等しい、請求項1~4のいずれか1項に記載の電機子。
【請求項6】
前記第1面および前記第2面の各々は、前記中心軸線方向に対して平行に延びるように設けられ、
前記第1面および前記第2面は、互いに前記径方向に接合されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電機子。
【請求項7】
中心軸線方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、前記電機子コアの前記中心軸線方向の一方側に配置されるとともに前記中心軸線方向の他方側に延びる一対の第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、前記電機子コアの前記中心軸線方向の他方側で、かつ、前記第1セグメント導体に対して前記中心軸線方向に対向して配置され、前記中心軸線方向の一方側に延びる一対の第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、複数の前記第1セグメント導体の各々の前記第1脚部の先端部側に設けられ、前記中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の一方側を向くように設けられる第1面と、複数の前記第2セグメント導体の各々の前記第2脚部の先端部側に設けられ、前記中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の他方側を向くように設けられる第2面とが、前記スロット内または前記スロットの前記中心軸線方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、を備え、前記接合部は、前記電機子コアの前記中心軸線方向の中心よりも、前記電機子コアの前記中心軸線方向における一方側端面および他方側端面のうちの少なくとも一方の近傍に設けられている電機子の製造方法であって、
前記第1セグメント導体の一対の前記第1脚部に、同じ方向側から前記第1面を形成する工程と、
前記第2セグメント導体の一対の前記第2脚部に、同じ方向側から前記第2面を形成する工程と、
全ての前記スロット内または全ての前記スロットの前記中心軸線方向の外側において、前記第1セグメント導体の前記第1脚部の前記第1面が設けられる第1面側部分と、前記第2セグメント導体の前記第2脚部の前記第2面が設けられる第2面側部分とが同じ順番で交互に配置されるように、前記第1セグメント導体の前記第1脚部と、前記第2セグメント導体の前記第2脚部とを前記スロットに配置する工程とを備える、電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子および電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中心軸線方向に延びる複数のスロットが設けられた電機子コアを備える電機子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数のスロットを含む回転電機ステータが開示されている。回転電機ステータは、複数のスロットの各々に挿入され、互いに中心軸線方向に対向して設けられる第1セグメント導体と第2セグメント導体とにより構成されるコイル部を備えている。第1セグメント導体は、一対の第1脚部を含む。一対の第1脚部には、導体部分がむき出しにされた(絶縁皮膜が取り除かれた)表面が設けられている。第1セグメント導体をスロットに配置した状態で、一対の第1脚部の一方の導体部分がむき出しにされた表面は、径方向内側を向くように形成され、一対の第1脚部の他方の導体部分がむき出しにされた表面は、径方向外側を向くように形成される。同様に、第2セグメント導体は、一対の第2脚部を含む。一対の第2脚部には、導体部分がむき出しにされた(絶縁皮膜が取り除かれた)表面が設けられている。第2セグメント導体をスロットに配置した状態で、一対の第2脚部の一方の導体部分がむき出しにされた表面は、径方向外側を向くように形成され、一対の第2脚部の他方の導体部分がむき出しにされた表面は、径方向内側を向くように形成される。なお、第1脚部および第2脚部の導体部分がむき出しにされた表面が形成された部分は、先細りのテーパ形状(楔形状)を有する。そして、スロット(以下、第1スロットという)内において、径方向内側を向くように形成された一方の第1脚部の表面と、径方向外側を向くように形成された一方の第2脚部の表面とが接合される。また、上記の第1スロットとは異なる第2スロットにおいて、径方向外側を向くように形成された他方の第1脚部の表面と、径方向内側を向くように形成された他方の第2脚部の表面とが接合される。つまり、第1スロットでは、径方向内側から径方向外側に向かって、第2脚部と第1脚部とが交互にこの順番で配置されている。また、第2スロットでは、径方向内側から径方向外側に向かって、第1脚部と第2脚部とが交互にこの順番(第1スロットの順番とは反対の順番)で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0040859号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に開示されている回転電機ステータにおいて、たとえば、先に中心軸線方向に沿って一対の第1脚部をスロット内に配置した後に、中心軸線方向に沿って一対の第2脚部をスロット内に配置すると仮定する。この場合、上記特許文献1では、一対の第1脚部の一方の導体部分がむき出しにされた表面が径方向内側を向くように形成され、一対の第1脚部の他方の導体部分がむき出しにされた表面が径方向外側を向くように形成されているので、後に一対の第2脚部をスロットに挿入する際に、先に挿入された一対の第1脚部との干渉を回避するためには、第2脚部を第1脚部に対して鉛直方向の真上(または真下)から挿入する必要がある。このため、先にスロットに挿入された第1脚部の配置位置の精度、および、後に挿入される第2脚部の挿入位置の精度を非常に高くする必要があるという不都合がある。このため、電機子の生産性が悪化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、生産性を向上させることが可能な電機子および電機子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における電機子は、中心軸線方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、電機子コアの中心軸線方向の一方側に配置されるとともに中心軸線方向の他方側に延びる一対の第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、電機子コアの中心軸線方向の他方側に配置されるとともに中心軸線方向の一方側に延びる一対の第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、複数の第1セグメント導体の各々の第1脚部の先端部側に設けられ、中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の一方側を向くように設けられる第1面と、複数の第2セグメント導体の各々の第2脚部の先端部側に設けられ、中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の他方側を向くように設けられる第2面とが、スロット内またはスロットの中心軸線方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、を備え、全てのスロット内または全てのスロットの中心軸線方向の外側において、第1セグメント導体の第1脚部の第1面が設けられる第1面側部分と、第2セグメント導体の第2脚部の第2面が設けられる第2面側部分とが同じ順番で交互に配置されており、接合部は、電機子コアの中心軸線方向の中心よりも、電機子コアの中心軸線方向における一方側端面および他方側端面のうちの少なくとも一方の近傍に設けられている
【0008】
この発明の第1の局面による電機子では、上記のように、全てのスロット内または全てのスロットの中心軸線方向の外側において、第1セグメント導体の第1脚部の第1面が設けられる第1面側部分と、第2セグメント導体の第2脚部の第2面が設けられる第2面側部分とが同じ順番で交互に配置されている。これにより、先にスロットに挿入される第1セグメント導体および第2セグメント導体のうちの一方の一対の脚部の接合部を構成する面が径方向の同じ方向を向いているので、後に第1セグメント導体および第2セグメント導体のうちの他方の一対の脚部を挿入する際に、径方向内側または径方向外側に脚部を倒したり、または、脚部を径方向内側または径方向外側にずらして挿入することにより、第1脚部と第2脚部との干渉を容易に回避することができる。その結果、電機子の生産性を向上させることができる。
【0009】
この発明の第2の局面における電機子の製造方法は、中心軸線方向に延びる複数のスロットが設けられている電機子コアと、電機子コアの中心軸線方向の一方側に配置されるとともに中心軸線方向の他方側に延びる一対の第1脚部を含む複数の第1セグメント導体と、電機子コアの中心軸線方向の他方側で、かつ、第1セグメント導体に対して中心軸線方向に対向して配置され、中心軸線方向の一方側に延びる一対の第2脚部を含む複数の第2セグメント導体と、複数の第1セグメント導体の各々の第1脚部の先端部側に設けられ、中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の一方側を向くように設けられる第1面と、複数の第2セグメント導体の各々の第2脚部の先端部側に設けられ、中心軸線方向に沿って延び、且つ、径方向の他方側を向くように設けられる第2面とが、スロット内またはスロットの中心軸線方向の外側において接合されている接合部を含むコイル部と、を備え、接合部は、電機子コアの中心軸線方向の中心よりも、電機子コアの中心軸線方向における一方側端面および他方側端面のうちの少なくとも一方の近傍に設けられている電機子の製造方法であって、第1セグメント導体の一対の第1脚部に、同じ方向側から第1面を形成する工程と、第2セグメント導体の一対の第2脚部に、同じ方向側から第2面を形成する工程と、全てのスロット内または全てのスロットの中心軸線方向の外側において、第1セグメント導体の第1脚部の第1面が設けられる第1面側部分と、第2セグメント導体の第2脚部の第2面が設けられる第2面側部分とが同じ順番で交互に配置されるように、第1セグメント導体の第1脚部と、第2セグメント導体の第2脚部とをスロットに配置する工程とを備える。
【0010】
この発明の第2の局面による電機子の製造方法では、上記のように、全てのスロット内または全てのスロットの中心軸線方向の外側において、第1セグメント導体の第1脚部の第1面が設けられる第1面側部分と、第2セグメント導体の第2脚部の第2面が設けられる第2面側部分とが同じ順番で交互に配置されるように、第1セグメント導体の第1脚部と、第2セグメント導体の第2脚部とをスロットに配置する工程を備える。これにより、先にスロットに挿入される第1セグメント導体および第2セグメント導体のうちの一方の一対の脚部の接合部を構成する面が径方向の同じ方向を向いているので、後に第1セグメント導体および第2セグメント導体のうちの他方の一対の脚部を挿入する際に、径方向内側または径方向外側に先にスロットに挿入された脚部を倒したり、または、後にスロットに挿入される脚部を径方向内側または径方向外側にずらして挿入することにより、第1脚部と第2脚部との干渉を容易に回避することができる。その結果、電機子の生産性を向上させることが可能な電機子の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記のように、電機子の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態によるステータ(回転電機)の構成を示す平面図である。
図2】一実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
図3】一実施形態によるステータコアの構成を示す平面図である。
図4】一実施形態による第1絶縁部材および第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図5】一実施形態によるコイル部の結線構成を示す回路図である。
図6】一実施形態によるセグメント導体の構成を示す横断面図である。
図7】一実施形態による第1セグメント導体の構成を示す斜視図である。(図7(A)は、第1セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図7(B)は、第1セグメント導体を径方向内側から見た斜視図である。)
図8】一実施形態による第2セグメント導体の構成を示す斜視図である。(図8(A)は、第2セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図8(B)は、第2セグメント導体を径方向内側から見た斜視図である。)
図9】一実施形態による動力セグメント導体の構成を示す図である。
図10】一実施形態による外径側中性点導体の構成を示す図である。
図11】一実施形態による内径側中性点導体の構成を示す図である。
図12図1の1000-1000線に沿った断面図である。
図13図12の接合部近傍の部分拡大図である。
図14図13の接合部近傍の部分拡大図である。
図15】一実施形態による第1絶縁部材の構成を模式的に示した断面図である。
図16】一実施形態による発泡される前の固定層を含む第1絶縁部材および第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図17】一実施形態による発泡された後の固定層を含む第1絶縁部材および第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図18】一実施形態による第2絶縁部材の構成を示す断面図である。
図19】一実施形態による第2絶縁部材の構成を示す斜視図である。
図20】一実施形態によるステータコア、第1絶縁部材、および、第2絶縁部材を分解した分解斜視図である。
図21】一実施形態による第1絶縁部材の厚みおよび第2絶縁部材の厚みを示す図である。
図22】一実施形態によるステータの製造装置を説明するための図である。
図23】一実施形態によるステータの製造方法を説明するためのフロー図である。
図24】導体を示す図である。
図25】一方端部に第1面(第2面)が形成された導体を示す図である。
図26】一方端部および他方端部に第1面(第2面)が形成された導体を示す図である。
図27】一実施形態の第1変形例による接合部近傍の断面図である。
図28】一実施形態の第2変形例による接合部近傍の断面図である。
図29】一実施形態の第3変形例による第1セグメント導体および第2セグメント導体の斜視図である。(図29(A)は、第1セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。図29(B)は、第2セグメント導体を径方向外側から見た斜視図である。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の本実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[ステータの構造]
図1図21を参照して、本実施形態によるステータ100の構造について説明する。ステータ100は、中心軸線C1を中心に円環形状を有する。なお、ステータ100は、特許請求の範囲の「電機子」の一例である。
【0015】
本願明細書では、「軸方向(中心軸線方向、軸線方向)」とは、図1に示すように、ステータ100の中心軸線C1(ロータ101の回転軸線)に沿った方向(Z方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100の周方向(A1方向、A2方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100の半径方向(R方向)を意味する。また、「径方向内側」とは、径方向に沿ってステータ100の中心軸線C1に向かう方向(R1方向)を意味する。また、「径方向外側」とは、径方向に沿ってステータ100の外に向かう方向(R2方向)を意味する。
【0016】
ステータ100は、ロータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成される。ステータ100は、図1に示すように、永久磁石(図示せず)が設けられるロータ101の径方向外側に配置されている。すなわち、本実施形態では、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。
【0017】
図2に示すように、ステータ100は、ステータコア10と、第1絶縁部材20と、コイル部30とを備える。コイル部30は、第1コイルアッセンブリ30a(反リード側コイル)と第2コイルアッセンブリ30b(リード側コイル)とを含む。また、コイル部30は、複数のセグメント導体40(図4参照)からなる。また、本実施形態では、ステータ100は、第1絶縁部材20とは別個に設けられた第2絶縁部材21(図4参照)を備える。なお、ステータコア10は、特許請求の範囲の「電機子コア」の一例である。また、第2絶縁部材21は、特許請求の範囲の「接合部絶縁部材」の一例である。
【0018】
(ステータコアの構造)
ステータコア10は、中心軸線C1(図1参照)を中心軸とした円筒形状を有する。また、ステータコア10は、たとえば、複数枚の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が軸方向に積層されることにより、形成されている。図3に示すように、ステータコア10は、軸方向に見て円環状を有するバックヨーク11と、バックヨーク11の径方向内側に設けられ、中心軸線方向に延びる複数のスロット12とが設けられている。そして、ステータコア10には、スロット12の周方向両側に複数のティース13が設けられている。
【0019】
スロット12は、径方向外側に設けられたバックヨーク11の壁部11aと、2つのティース13の周方向側面13aとに囲まれた部分である。そして、スロット12には、径方向内側に開口する開口部12aが設けられている。また、スロット12は、軸方向両側のそれぞれに開口している。ティース13は、バックヨーク11から径方向内側に突出するように形成されており、径方向内側の先端部にスロット12の開口部12aを構成する凸部13bが形成されている。
【0020】
開口部12aは、周方向に開口幅W1を有する。ここで、開口幅W1は、ティース13の凸部13bの先端部同士の距離に対応する。また、スロット12のコイル部30が配置される部分の幅W2は、開口幅W1よりも大きい。すなわち、スロット12は、セミオープン型のスロットとして構成されている。ここで、幅W2は、スロット12の周方向両側に配置されているティース13の周方向側面13a同士の距離に対応する。また、スロット12の幅W2は、径方向に亘って略一定である。
【0021】
(コイル部の構造)
コイル部30は、図4に示すように、平角導線により構成されている。たとえば、コイル部30は、銅またはアルミニウムにより構成されている。
【0022】
また、コイル部30は、図2に示すように、軸方向一方側(矢印Z2方向側)に設けられた第1コイルアッセンブリ30aと、軸方向他方側(矢印Z1方向側)に設けられた第2コイルアッセンブリ30bとが、軸方向に組み合わされるとともに、接合されて形成されている。第1コイルアッセンブリ30aおよび第2コイルアッセンブリ30bは、それぞれ、ステータコア10と同一の中心軸線C1(図1参照)を中心とした円環状に形成されている。また、図4に示すように、本実施形態では、コイル部30は、複数のセグメント導体40の後述する第1脚部71と第2脚部81とが、接合部90において接合されて形成されている。
【0023】
コイル部30は、たとえば、波巻きコイルとして構成されている。また、コイル部30は、8ターンのコイルとして構成されている。すなわち、コイル部30は、スロット12内に、径方向に8個のセグメント導体40が並列して配置されて構成されている。
【0024】
〈コイル部の結線の構成〉
図5に示すように、コイル部30では、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部30は、3相のY結線により接続(結線)されている。すなわち、コイル部30は、U相コイル部30Uと、V相コイル部30Vと、W相コイル部30Wとを含む。そして、コイル部30には、複数(たとえば、2つ)の中性点Nが設けられている。詳細には、コイル部30は、4並列結線(スター結線)されている。すなわち、U相コイル部30Uには、4つの中性点接続端部NtUと、4つの動力線接続端部PtUとが設けられている。V相コイル部30Vには、4つの中性点接続端部NtVと、4つの動力線接続端部PtVとが設けられている。W相コイル部30Wには、4つの中性点接続端部NtWと、4つの動力線接続端部PtWとが設けられている。なお、以下の記載では、中性点接続端部および動力線接続端部について、U相、V相、および、W相を特に区別しない場合、単に、「中性点接続端部Nt」および「動力線接続端部Pt」として記載する。
【0025】
〈コイルアッセンブリの構造〉
図2に示すように、第1コイルアッセンブリ30aは、セグメント導体40としての複数の第1セグメント導体70(以下、「第1導体70」とする)から構成されている。好ましくは、第1コイルアッセンブリ30aは、複数の第1導体70のみが組み合わされて構成されている。
【0026】
また、第2コイルアッセンブリ30bは、セグメント導体40としての複数(たとえば、3つ)の動力セグメント導体50(以下、「動力導体50」とする)と、セグメント導体40としての複数(たとえば、2つ)の中性点セグメント導体60(以下、「中性点導体60」とする)と、複数のセグメント導体40のうちの動力導体50および中性点導体60とは異なる導体(一般のセグメント導体40)であり、コイル部30を構成する第2セグメント導体80(以下、「第2導体80」とする)とを含む。すなわち、ステータ100に設けられる動力導体50および中性点導体60の全ては、第2コイルアッセンブリ30bに設けられている。
【0027】
(セグメント導体の構造)
セグメント導体40は、図6に示すように、横断面が略矩形形状を有する平角導線として構成されている。そして、セグメント導体40の導体表面40bには、厚みt1を有する絶縁被膜40aが設けられている。絶縁被膜40aの厚みt1は、たとえば、相間絶縁性能(第1コイルエンド部72同士の絶縁、第2コイルエンド部82同士の絶縁、図2参照)を確保することが可能な程度に設定されている。なお、図6では、説明のために、厚み等の大小関係を強調して図示しているが、この図示の例に限られない。
【0028】
〈第1導体および第2導体の構造〉
図7および図8に示すように、複数のセグメント導体40は、ステータコア10の軸方向の一方側(Z2方向側)に配置される複数の第1導体70と、ステータコア10の軸方向の他方側(Z1方向側)で、且つ、第1導体70に対して中心軸線方向に対向して配置される複数の第2導体80とを含む。すなわち、コイル部30は、軸方向に2分割された第1導体70と第2導体80とが接合されて形成されている。ここで、第2導体80とは、第2コイルアッセンブリ30bを構成するセグメント導体40のうちの動力導体50および中性点導体60以外のセグメント導体40である。そして、第1導体70は、軸方向の長さL1を有する中心軸線方向に延びる第1脚部71を含む。第1脚部71は、中心軸線方向の他方側(Z1方向側)に延びている。また、第2導体80は、第1脚部71のZ1方向側に配置され、軸方向に長さL1よりも大きい長さL2を有する中心軸線方向に延びる第2脚部81を含む。第2脚部81は、中心軸線方向の一方側(Z2方向側)に延びている。
【0029】
本実施形態では、図7(A)および図7(B)に示すように、複数の第1導体70は、それぞれ、互いに異なるスロット12に配置される一対の第1脚部71が互いに接続されることにより、径方向に見てU字形状(略U字形状)を有するように形成されている。第1導体70のコイルピッチは6である。すなわち、一対の第1脚部71は、スロット12が6つ分、周方向に異なる位置に配置される。すなわち、一対の第1脚部71のうちの一方の第1脚部71が配置されているスロット12と、他方の第1脚部71が配置されているスロット12との間に、5つのスロット12が設けられている。具体的には、第1導体70は、互いに異なるスロット12に配置され、それぞれ軸方向に沿って直線状に形成されている一対の第1脚部71と、第1コイルエンド部72とを含む。第1脚部71とは、ステータコア10の中心軸線方向における端面10a(図2参照)の軸方向位置からスロット12の内に配置されている部分を意味し、第1コイルエンド部72は、第1脚部71に連続して形成され、ステータコア10の端面10aよりも軸方向外側に配置されている部分を意味するものとする。また、第1コイルエンド部72は、軸方向に折れ曲がる屈曲形状を有する。また、第1コイルエンド部72は、軸方向から見て、径方向に1本のセグメント導体40の幅分、階段状に屈曲するクランク状に形成された第1クランク部分73を有する。つまり、第1クランク部分73の径方向の幅は、1本のセグメント導体40の幅の2倍である。
【0030】
また、一対の第1脚部71の軸方向長さL1は互いに略等しい。なお、軸方向長さL1とは、第1導体70のうちスロット12内において中心軸線方向に直線状に延びている部分の長さを意味する。また、軸方向長さL1は、ステータコア10の軸方向長さL3(図2参照)よりも小さい。なお、ステータコア10の軸方向長さL3とは、中心軸線方向における端面10aおよび端面10bの間の、中心軸線方向の距離(間隔)を意味する。
【0031】
同様に、図8(A)および図8(B)に示すように、第2導体80は、スロット12に配置される一対の第2脚部81と、第2コイルエンド部82とを含む。また、第2コイルエンド部82は、第2クランク部分83を有する。本実施形態では、第2導体80は、互いに異なるスロット12に配置される一対の第2脚部81が互いに接続されることにより、U字形状を有するように形成されている。また、第2導体80の一対の第2脚部81の軸方向長さL2は互いに略等しい。また、第2導体80の一対の第2脚部81の軸方向長さL2は、第1導体70の一対の第1脚部71の軸方向長さL1よりも大きい(L2>L1)。なお、軸方向長さL2とは、第2導体80のうちスロット12内において中心軸線方向に直線状に延びている部分の長さを意味する。
【0032】
また、本実施形態では、スロット12に配置される全ての第1導体70および第2導体80は、U字形状を有する。そして、スロット12に配置される全てのU字形状の第1導体70の第1脚部71の長さL1は互いに等しい。また、スロット12に配置される全てのU字形状の第2導体80の第2脚部81の長さL2は互いに等しい。つまり、複数の第1導体70は、互いに略同一の形状を有する。また、複数の第2導体80は、互いに略同一の形状を有する。
【0033】
ここで、本実施形態では、図7に示すように、第1導体70の一対の第1脚部71に各々設けられる第1面71aは、径方向の一方側(具体的には、径方向内側、R1方向側)を向くように設けられている。つまり、一対の第1脚部71に各々設けられる第1面71aは、同じ方向側を向くように設けられている。また、ステータコア10に配置されている全ての第1導体70の一対の第1脚部71が、径方向内側(R1方向側)を向くように形成されている。同様に、図8に示すように、第2導体80の一対の第2脚部81に各々設けられる第2面81aは、径方向の他方側(具体的には、径方向外側、R2方向側)を向くように設けられている。つまり、一対の第2脚部81に各々設けられる第2面81aは、同じ方向側を向くように設けられている。また、ステータコア10に配置されている全ての第2導体80の一対の第2脚部81が、径方向外側(R2方向側)を向くように形成されている。
【0034】
〈動力導体の構成〉
図9に示すように、動力導体50では、同相の複数(たとえば、4つ)の動力線接続端部Pt同士が電気的に接続されているとともに、接続された複数の動力線接続端部Ptと1つの動力端子部材51とが電気的に接続されている。動力導体50は、一対の第1脚部71のうちの一方に接合(図12参照)されている第2脚部81と、動力端子部材51とが接合されている。そして、動力導体50は、電源部(図示せず)からコイル部30に電力を導入する機能を有する。
【0035】
詳細には、動力導体50は、スロット12(図1参照)の径方向外側に配置され、動力線接続端部Ptを有する外径側動力導体52と、外径側動力導体52よりも径方向内側でかつ軸方向外側に配置され、動力線接続端部Ptを有する内径側動力導体53とを含む。言い換えると、動力導体50は、二股状に形成されている。
【0036】
また、外径側動力導体52と動力端子部材51とは、引出線54により電気的に接続されている。また、内径側動力導体53と動力端子部材51とは、引出線54とにより電気的に接続されている。外径側動力導体52と内径側動力導体53とは、動力端子部材51および引出線54を介して、電気的に接続されている。また、引出線54は、たとえば、撚線(導体)により形成されており、絶縁チューブ51aが外周に配置されている。
【0037】
外径側動力導体52および内径側動力導体53には、それぞれ、第2脚部81が設けられている一方、第1コイルエンド部72または第2コイルエンド部82は設けられていない。また、外径側動力導体52および内径側動力導体53では、引出線54と第2脚部81とが、導体板55を介して、接合されている。たとえば、この接合は、ロウ付け、または、溶接(たとえば、抵抗溶接、アーク溶接、レーザー溶接、または、高エネルギービーム溶接のいずれか)により実施される。
【0038】
〈中性点導体の構成〉
図1に示すように、中性点導体60は、外径側中性点導体61と内径側中性点導体62とを含む。図5に示すように、外径側中性点導体61および内径側中性点導体62は、それぞれ、中性点Nを含み、U相コイル部30Uの中性点接続端部NtUと、V相コイル部30Vの中性点接続端部NtVと、W相コイル部30Wの中性点接続端部NtWとが電気的に接続されたものである。
【0039】
外径側中性点導体61は、図10に示すように、2つのU相W相中性点セグメント導体61aと、2つのV相中性点セグメント導体61bとを含む。U相W相中性点セグメント導体61aは、3相交流のうちのU相の第1導体70の第1脚部71に接続されるU相用の第2脚部81と、W相の第1脚部71に接続されるW相用の第2脚部81と、U相用の第2脚部81とW相用の第2脚部81とを接続する2つの中性点コイルエンド部61cとを含む。中性点コイルエンド部61cは、U相用の第2脚部81に連続して形成されているとともに、W相用の第2脚部81に連続して形成されている。
【0040】
U相W相中性点セグメント導体61aは、径方向内側から見て、略U字(略コの字)形状に形成されている。V相中性点セグメント導体61bは、径方向内側から見て、略直線状に形成されている。
【0041】
中性点コイルエンド部61cは、図1に示すように、第2導体80の第2コイルエンド部82の径方向外側において、周方向に沿って形成されている。そして、中性点コイルエンド部61cは、矢印Z2方向に見て、略円弧状に形成されている。2つのU相W相中性点セグメント導体61aのうちの一方は、他方の軸方向外側(矢印Z1方向側)に配置されている。
【0042】
V相中性点セグメント導体61bは、図10に示すように、V相の第1導体70に接続されるV相用の第2脚部81と、中性点コイルエンド部61dとを含む。中性点コイルエンド部61dは、第2脚部81から軸方向外側(矢印Z1方向に)突出するように形成されている。そして、2つの中性点コイルエンド部61dは、それぞれ、2つの中性点コイルエンド部61cの両方に接合されることにより、電気的に接合されている。
【0043】
内径側中性点導体62は、図11に示すように、2つのU相W相中性点セグメント導体62aと、2つのV相中性点セグメント導体62bとを含む。U相W相中性点セグメント導体62aは、3相交流のうちのU相の第1導体70の第1脚部71に接続されるU相用の第2脚部81と、W相の第1導体70に接続されるW相用の第2脚部81と、U相用の第2脚部81とW相用の第2脚部81とを接続する中性点コイルエンド部62cとを含む。中性点コイルエンド部62cは、U相用の第2脚部81に連続して形成されているとともに、W相用の第2脚部81に連続して形成されている。これにより、U相W相中性点セグメント導体62aは、径方向内側から見て、略U字形状に形成されている。V相中性点セグメント導体62bは、径方向内側から見て、略直線状に形成されている。
【0044】
中性点コイルエンド部62cは、図12に示すように、第2導体80の第2コイルエンド部82よりも軸方向外側に突出して形成されている。そして、中性点コイルエンド部62cは、第2導体80の第2コイルエンド部82の軸方向外側に近接して配置されているとともに、軸方向に見て、周方向に沿って形成されている。そして、2つのU相W相中性点セグメント導体62aのうちの一方は、他方の径方向外側に配置されている。
【0045】
V相中性点セグメント導体62bは、V相の第1導体70の第1脚部71に接続されるV相用の第2脚部81と、中性点コイルエンド部62dとを含む。中性点コイルエンド部62dは、第2脚部81から軸方向外側(矢印Z1方向)に突出するように形成されている。そして、2つの中性点コイルエンド部62dは、それぞれ、2つの中性点コイルエンド部62cの両方に接合されることにより、電気的に接合されている。
【0046】
(接合部の構成)
図12および図13に示すように、第1脚部71は、1つのスロット12内において、ステータコア10の径方向に隣り合って複数設けられている。また、第2脚部81は、1つのスロット12内において、ステータコア10の径方向に隣り合って複数設けられている。第1脚部71の後述する第1面71aと、第2脚部81の後述する第2面81aとが接合されることにより、接合部90が構成されている。
【0047】
また、1つのスロット12内において、複数の第1導体70(第1脚部71)と複数の第2導体80(第2脚部81)とが接合されている。具体的には、1つのスロット12内において、第1脚部71の後述する第1面71aが設けられている第1面配置部71b、および、第2脚部81の後述する第2面81aが設けられている第2面配置部81bは、径方向に沿って交互に複数配列されている。すなわち、複数の第1脚部71および複数の第2脚部81の後述する接合部90同士は、1つのスロット12内において、径方向に隣り合って配置されている。
【0048】
具体的には、接合部90は、径方向から見て、径方向に隣り合う接合部90がオーバラップするように構成されている。詳細には、1つのスロット12内に配置される複数の(全ての)接合部90は、径方向から見て、オーバラップするように構成されている。つまり、1つのスロット12内に配置される全ての接合部90が水平方向に沿って並んだ状態で配置されている。言い換えると、1つのスロット12内において、中心軸線方向における複数の接合部90の各々位置は、互いに略等しい。なお、接合部90は、後述するように、径方向から見て、第1脚部71の第1面71aと、第2脚部81の第2面81aとが接合された(オーバラップした)部分である。
【0049】
また、図14に示すように、第1脚部71の先端部71cおよび第2脚部81の先端部81cの各々は、先細り形状を有している。具体的には、周方向(A方向)から見て、第1脚部71の先端部71cおよび第2脚部81の先端部81cの各々は、先細り形状を有している。
【0050】
複数の第1導体70の各々の第1脚部71の先端部71c側には、中心軸線方向に延びるように設けられる第1面71aが設けられている。また、複数の第2導体80の各々の第2脚部81の先端部81c側には、中心軸線方向に延びるように設けられる第2面81aが設けられている。具体的には、第1面71aおよび第2面81aの各々は、中心軸線方向に対して平行に延びるように設けられている。また、第1脚部71および第2脚部81は、それぞれ、第1面71aが設けられている第1面配置部71b、および、第2面81aが設けられている第2面配置部81bを含む。
【0051】
また、第1脚部71は、第1面71aが設けられている第1面配置部71bに連続して設けられる第1脚部本体部71dを有する。第1脚部本体部71dは、第1面配置部71bに対して、先端部71cとは反対側(Z2方向側)に設けられている。また、第2脚部81は、第2面81aが設けられている第2面配置部81bに連続して設けられる第2脚部本体部81dを有する。第2脚部本体部81dは、第2面配置部81bに対して、先端部81cとは反対側(Z1方向側)に設けられている。
【0052】
第1面71aが設けられている第1面配置部71bの径方向の厚みt2は、第1脚部本体部71dの径方向における厚みt3よりも小さい。具体的には、第1面配置部71bの厚みt2は、第1脚部本体部71dの厚みt3の約1/2である。また、第2面81aが設けられている第2面配置部81bの径方向の厚みt4は、第2脚部本体部81dの径方向における厚みt5よりも小さい。具体的には、第2面配置部81bの厚みt4は、第2脚部本体部81dの厚みt5の約1/2である。なお、厚みt2と厚みt4とは略等しく、厚みt3と厚みt5とは略等しい。
【0053】
すなわち、本実施形態では、第1面配置部71bは、第1面配置部71bが設けられない第1脚部71の部分(第1脚部本体部71d)の厚みt3よりも径方向の厚みt2が小さくなるように、第1脚部71の径方向の一方側の面側(図14のR1方向側)が加工されることにより設けられている。また、第2面配置部81bは、第2面配置部81bが設けられない第2脚部81の部分(第2脚部本体部81d)の厚みt5よりも径方向の厚みt4が小さくなるように、第2脚部81の径方向の他方側(図14のR2方向側)の面側が加工されることにより設けられている。なお、「径方向の一方側」とは、第1脚部71がスロット12に配置された状態における「径方向の一方側」を意味する。また、「径方向の他方側」とは、第2脚部81がスロット12に配置された状態における「径方向の他方側」を意味する。また、「加工」とは、たとえば、「切削加工」を意味する。なお、「切削加工」以外の加工によって、第1面配置部71bおよび第2面配置部81bを形成してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、第1導体70の第1面配置部71bと、第2導体80の第2面配置部81bとは、同一の形状を有する。なお、「同一の形状」とは、略同一の形状を含む広い概念を意味している。具体的には、図14に示すように、周方向から見て、第1面配置部71bと第2面配置部81bとは、回転対象の形状を有する。また、第1面71aが設けられている第1面配置部71bと、第2面81aが設けられている第2面配置部81bとは、中心軸線方向に沿って延びるように設けられているとともに、径方向の厚み(t2、t4)は、互いに略等しい。また、第1面配置部71bの先端部71cと、第2面配置部81bの先端部81cとは、共に、面取りされたテーパ形状を有する。また、第1面配置部71bと第1脚部本体部71dとの接続部近傍と、第2面配置部81bと第2脚部本体部81dとの接続部近傍とには、それぞれ、円弧状の角部内面71fと角部内面81fとが設けられている。また、図7(A)および図8(B)にそれぞれ示されるように、径方向から見て、第1面配置部71bと第2面配置部81bとは、共に、矩形形状を有する。
【0055】
また、本実施形態では、図7に示すように、中心軸線方向から見て、第1導体70の第1コイルエンド部72は、周方向(A方向)の沿うように湾曲している。そして、第1導体70の一対の第1脚部71の第1面71aは、径方向内側(R1方向側)を向くように形成されている。このため、一対の第1面71aは、それぞれ、径方向に対して略垂直に交差するように設けられている。また、図1および図8に示すように、中心軸線方向から見て、第2導体80の第2コイルエンド部82は、周方向に沿うように湾曲している。そして、第2導体80の一対の第2脚部81の第2面81aは、径方向外側(R2方向側)を向くように形成されている。また、一対の第2面81aは、それぞれ、径方向に対して略垂直に交差するように設けられている。
【0056】
また、コイル部30(図2参照)は、第1面71aと第2面81aとが1つのスロット12内において接合されている接合部90を含む。すなわち、接合部90は、中心軸線方向において、ステータコア10の端面10a(図2参照)と端面10b(図2参照)との間に位置している。
【0057】
また、図14に示すように、第1面71aおよび第2面81aは、接合部90において互いに径方向(R方向)に接合されている。具体的には、第1面71aのうちの先端部71c側の一部の面部分71eと、第2面81aのうちの先端部81c側の一部の面部分81eとが、径方向に接合されている。言い換えると、第1面71aと第2面81aとは、中心軸線方向にずらされた状態で接合されている。
【0058】
なお、第1面71a(面部分71e)および第2面81a(面部分81e)は、中心軸線方向に対して平行に延びるとともに、互いに径方向に対向するように設けられる。すなわち、第1面71a(面部分71e)および第2面81a(面部分81e)の各々は、径方向に対して直交するように延びている。また、上記のように、第1面71a(面部分71e)は、径方向内側(R1方向側)を向いているとともに、第2面81a(面部分81e)は、径方向外側を向いている。
【0059】
また、互いに中心軸線方向に対向する第1導体70と第2導体80との間において、第1脚部71の先端部71cと第2脚部81との間には、中心軸線方向に延びる第1隙間部74が設けられている。また、互いに中心軸線方向に対向する第1導体70と第2導体80との間において、第2脚部81の先端部81cと第1脚部71との間には、中心軸線方向に延びる第2隙間部84が設けられている。具体的には、第1隙間部74は、周方向(A方向)から見て、互いに接合される第1脚部71および第2脚部81と、径方向内側(R1方向側)に隣接する第2絶縁部材21とにより取り囲まれている。また、第2隙間部84は、周方向(A方向)から見て、互いに接合される第1脚部71および第2脚部81と、径方向外側(R2方向側)に隣接する第2絶縁部材21とにより取り囲まれている。なお、第2絶縁部材21の構成の詳細については後述する。
【0060】
また、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、互いに接合される第1脚部71と第2脚部81との組毎に設けられている。すなわち、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、径方向に複数(本実施形態では8つ、図13参照)並んで設けられている。具体的には、径方向から見て、複数の第1隙間部74は、互いにオーバラップしているとともに、複数の第2隙間部84は、互いにオーバラップしている。
【0061】
また、第1隙間部74の中心軸線方向の長さL4は、第2隙間部84の中心軸線方向の長さL5と略等しい。なお、第1隙間部74の長さL4とは、第1脚部71の先端部71cと、第2脚部81との間の中心軸線方向における距離を意味する。また、第2隙間部84の長さL5とは、第2脚部81の先端部81cと、第1脚部71との間の中心軸線方向における距離を意味する。
【0062】
また、第1隙間部74の中心軸線方向における長さL4、および、第2隙間部84の中心軸線方向における長さL5の両方は、径方向における、第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71bの厚みt2、および、第2脚部81の第2面81aが設けられている第2面配置部81bの厚みt4よりも大きい。なお、第1隙間部74の長さL4、および、第2隙間部84の長さL5の各々は、第1導体70および第2導体80の各々の製造において生じる寸法のばらつきと、第1導体70と第2導体80との組み付けの際に生じる組み付けばらつきとを十分吸収できる程度の長さに設定されている。
【0063】
また、第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71bと、第1脚部本体部71dとの間には、第2隙間部84に面するとともに丸型形状を有する角部内面71fを含む第1段差部71gが設けられている。また、第2脚部81の第2面81aが設けられている第2面配置部81bと、第2脚部本体部81dとの間には、第1隙間部74に面するとともに丸型形状を有する角部内面81fを含む第2段差部81gが設けられている。具体的には、角部内面71fおよび角部内面81fは、それぞれ、第1面配置部71bの径方向の厚みt2および第2面配置部81bの径方向の厚みt4よりも小さい曲率半径の円弧形状を有している。この場合、第1脚部71および第2脚部81には、それぞれ、角部内面71fおよび角部内面81fに連続して設けられる平坦面71hおよび平坦面81hが設けられている。平坦面71hおよび平坦面81hの各々は、中心軸線方向に直交するように延びるように設けられている。
【0064】
また、図13に示すように、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、スロット12内に配置されている。具体的には、第1隙間部74および第2隙間部84の各々の全体が、スロット12内に配置されている。
【0065】
また、一対の第1脚部71の長さL1(図7参照)と一対の第2脚部81の長さL2(図8参照)とが互いに異なっているので、第1脚部71の第1面71aと第2脚部81の第2面81aとが接合されることにより、第1隙間部74および第2隙間部84の各々(接合部90)が、軸方向において、軸方向中心C2(図12参照)よりも端面10a側に設けられる。これにより、第1隙間部74および第2隙間部84の各々は、ステータコア10の端面10aの近傍に設けられている。具体的には、第2隙間部84の中心軸線方向の一方側(Z2方向側)の縁部が、ステータコア10の端面10aと、中心軸線方向において略同一の位置に設けられている。また、第2隙間部84の中心軸線方向の一方側(Z2方向側)の縁部が、端面10aからZ1方向またはZ2方向に略絶縁沿面距離の範囲内に設けられていてもよい。つまり、本実施形態では、接合部90は、ステータコア10の中心軸線方向中心C2よりも、ステータコア10の中心軸線方向における一方側の端面10aの近傍に設けられている。
【0066】
また、ステータ100は、接合部90において第1面71aと第2面81aとを接着させるとともに、第1脚部71と第2脚部81とを導通させる導電性接着剤91を備える。導電性接着剤91は、たとえば、溶剤に、銀をナノメートルレベルまで微細化した金属粒子を導電性粒子として含んだペースト状の接合材(銀ナノペースト)である。また、導電性接着剤91は、熱によって溶融するように構成されている。
【0067】
また、導電性接着剤91には、加熱された際に揮発する部材(樹脂部材)が含有されており、揮発する部材が加熱されることにより、導電性接着剤91の体積が減少して、第1面71aと第2面81aとを近接させる機能を有する。また、第1面71aと第2面81aとを接合するために、第1面71aおよび第2面81aのうちの少なくとも一方の接合部90に対応する部分(面部分71eおよび面部分81eのうちの少なくとも一方)に、予め導電性接着剤91が塗布された状態で、第1導体70と第2導体80との組み付けが行われる。なお、図14では、説明のために導電性接着剤91の厚みを強調して図示しているが、この図示の例に限られない。
【0068】
また、導電性接着剤91は、面部分71eおよび面部分81eのうちの少なくとも一方に加えて、径方向から見て、第1面71aのうち、第2隙間部84と面する面部分71i、および、第2面81aのうち、第1隙間部74と面する面部分81iに塗布されている。具体的には、導電性接着剤91は、面部分71iおよび面部分81iの各々の全体に塗布されている。すなわち、第1面71aおよび第2面81aの各々は、径方向から見て、導電性接着剤91により全体が覆われている。なお、導電性接着剤91は、角部内面71fおよび角部内面81fの各々には塗布されていない。
【0069】
ここで、本実施形態では、図13に示すように、全てのスロット12内において、第1導体70の第1脚部71の第1面71aが設けられる第1面配置部71bと、第2導体80の第2脚部81の第2面81aが設けられる第2面配置部81bとが同じ順番で交互に配置されている。具体的には、径方向内側(R1方向側)から径方向外側(R2方向側)に向かって、第2面配置部81bと第1面配置部71bとが交互にこの順で配置されている。つまり、全てのスロット12内において、全ての第1面71aは、径方向内側(R1方向側)を向くように配置されている。また、全てのスロット12内において、全ての第2面81aは、径方向外側(R2方向側)を向くように配置されている。
【0070】
つまり、第1導体70の一対の第1脚部71(第2導体80の一対の第2脚部81)の各々が配置されるスロット12において、図13に示すように、径方向内側(R1方向側)から径方向外側(R2方向側)に向かって、第2面配置部81bと第1面配置部71bとが交互にこの順で配置されている。すなわち、一対の第1脚部71が配置される2つのスロット12において、第1脚部71の第1面71aは、径方向内側(R1方向側)を向くように配置されている。また、一対の第2脚部81が配置される2つのスロット12において、第2脚部81の第2面81aは、径方向外側(R2方向側)を向くように配置されている。
【0071】
(第1絶縁部材の構造)
第1絶縁部材20は、図4に示すように、壁部11aおよびティース13と、第1脚部71および第2脚部81(セグメント導体40)との間に配置されている。図15に示すように、第1絶縁部材20は、3層構造を有している。具体的には、図12に示すように、第1絶縁部材20は、スロット12内において、バックヨーク11の壁部11aおよびティース13の周方向側面13a(図4参照)と、第1脚部71および第2脚部81との間に設けられ、壁部11aおよび周方向側面13aと、第1脚部71および第2脚部81とを絶縁する絶縁層20aと、絶縁層20aのうちの接合部90に対応する軸方向の位置P1とは異なる位置(領域)(P2)の部分20bに重ねて設けられ、ステータコア10と第2脚部81とを固定する固定層20cとを含む。固定層20cは、好ましくは、接着剤を含む接着層として構成されている。また、位置P2は、たとえば、軸方向において、軸方向の位置P1を除く部分のスロット12内の全域と、ステータコア10の端面10bの近傍部分(スロット12よりも軸方向外側の部分を含む)とを含む。
【0072】
そして、第1絶縁部材20は、矢印Z2方向に見て、径方向に並列して配置された複数の第2脚部81の周囲を一体的に覆うように配置されている。言い換えると、径方向に並列して配置された複数の第2脚部81の周方向両側および径方向両側が第1絶縁部材20により覆われる。これにより、第1絶縁部材20によって、接合部90とステータコア10との絶縁を確保することが可能となる。
【0073】
絶縁層20aは、たとえば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS:Poly Phenylene Sulfide Resin)により構成されている。また、絶縁層20aは、アラミド紙等の不織布状に形成されていてもよい。また、図12に示すように、絶縁層20aは、ステータコア10の軸方向の一方側の端面10aから他方側の端面10bに亘って設けられている。すなわち、絶縁層20aは、各スロット内において、壁部11aおよび周方向側面13aを覆うように配置されている。なお、「覆う」とは、壁部11aおよび周方向側面13aの全ての部分を被覆することのみを意味するものではなく、図4に示すように、周方向側面13aの径方向内側部分(先端隙部分)が露出している場合も含む、広い概念を意味するものとする。
【0074】
固定層20cは、図15に示すように、熱によって発泡する発泡剤20d(膨張剤)を含む。具体的には、固定層20cは、たとえば、発泡剤20dとしての複数のカプセル体が、熱硬化性樹脂20eに配合されて形成されている。発泡剤20dは、発泡温度T1以上に加熱されることにより、カプセル体の体積が膨張するように構成されている。固定層20cは、たとえば、ステータ100の製造工程において、加熱されることにより、厚みt6が(図16参照)から厚みt7(図17参照)に増大する。これにより、固定層20cは、加熱された際に、発泡剤20dが発泡(膨張)することにより、第2脚部81と壁部11aおよび周方向側面13aとの間を満たす。
【0075】
また、熱硬化性樹脂20eは、発泡温度T1よりも高い温度である硬化温度T2以上に加熱されることにより、硬化するように構成されている。固定層20cを構成する熱硬化性樹脂20eは、たとえば、エポキシ樹脂である。そして、固定層20cは、加熱された際に、熱硬化性樹脂20eが硬化することにより、第2脚部81と壁部11aおよび周方向側面13aとを接着して固定するように構成されている。
【0076】
図12に示すように、発泡された状態の発泡剤20dを含む固定層20cにより、接合部90に対応する軸方向の位置P1とは異なる位置P2において、第2脚部81の少なくとも一部と、スロット12を構成する壁部11aおよび周方向側面13aとの間が満たされている。詳細には、固定層20cは、絶縁層20aのうちの接合部90に対応する軸方向の位置P1よりも軸方向の他方側(Z1方向側)の部分20bに重ねて設けられている。言い換えると、固定層20cは、絶縁層20aのうちの軸方向の一方側(Z2方向側)の端面10aの近傍よりも軸方向の他方側の部分20bに重ねて設けられている。また、固定層20cは、スロット12内において、絶縁層20aのうちの第2脚部81とステータコア10との間に配置される部分20bに重ねて設けられている。たとえば、図15に示すように、固定層20cは、絶縁層20aのうちの接合部90に対応する軸方向の位置とは異なる位置の部分20bにおいて、絶縁層20aを挟み込むように重ねて設けられている。
【0077】
また、図13に示すように、スロット12とコイル部30との間に設けられる第1絶縁部材20と、第1絶縁部材20とは別個に設けられる第2絶縁部材21とが設けられている。そして、図18に示すように、1つのスロット12において径方向に隣接するコイル間における第1導体70の第1脚部71の第1面71aと、第2導体80の第2脚部81の第2面81aとが接合された接合部90のうち、径方向に隣接する接合部90同士は、第1絶縁部材20とは別個に設けられるシート状の第2絶縁部材21により絶縁されている。なお、「コイル」とは、コイル部30における、第1導体70と第2導体80とが接合された後のスロット12内に配置される直線状の部分を意味する。したがって、一つのスロット12には、複数のコイルが配置される。また、第2絶縁部材21は、特許請求の範囲の「接合部絶縁部材」の一例である。
【0078】
また、図18に示すように、第2絶縁部材21は、たとえば、ノーメックスなどの1枚のシート状の絶縁部材が折りたたまれて形成されている。そして、第2絶縁部材21は、径方向に隣り合う接合部90の対向面90aを覆う対向面絶縁部分21aと、対向面絶縁部分21aの周方向の両端部から連続し、かつ、径方向に隣り合う接合部90の周方向面90bのうちのいずれか一方を少なくとも絶縁距離分覆う周方向面絶縁部分21bとを含む。なお、接合部90の対向面90aとは、径方向に隣り合う接合部90の互いに対向する径方向外側の面および径方向内側の面を意味する。また、絶縁距離とは、周方向面絶縁部分21bの径方向に沿った長さであるとともに、径方向に隣り合う接合部90同士を絶縁するために十分な距離(沿面距離)を意味する。
【0079】
なお、図19に示すように、第2絶縁部材21は、最外径側に配置される接合部90の径方向外側を覆う部分21cと、最内径側に配置される接合部90の径方向内側を覆う部分21dとを含む。
【0080】
また、第2絶縁部材21では、径方向に隣り合う対向面絶縁部分21aは、周方向の一方または他方において周方向面絶縁部分21bにより連結されている。具体的には、径方向に隣り合うように配置される一対の対向面絶縁部分21aのうちの径方向外側の対向面絶縁部分21aと、周方向の一方側に設けられる周方向面絶縁部分21bと、一対の対向面絶縁部分21aのうちの径方向内側の対向面絶縁部分21aと、周方向の他方側に設けられる周方向面絶縁部分21bとが連続するように形成されている。つまり、接合部90のA1方向側の周方向面90bと、接合部90のA2方向側の周方向面90bとが交互に、周方向面絶縁部分21bにより覆われる。言い換えると、第2絶縁部材21は、径方向に沿って隣り合うように配置される複数の接合部90の周方向面90bを連続して覆わないように構成されている。
【0081】
このように、第2絶縁部材21は、中心軸線方向から見て、蛇行形状(蛇腹形状)を有する。また、1つの第2絶縁部材21によって、1つのスロット12内に配置される径方向に隣接する接合部90同士が絶縁されるので、スロット12内の全ての接合部同士が絶縁される。これにより、1つのスロット12内に配置される複数の接合部90を個別に絶縁部材により覆う場合と比べて、第2絶縁部材21を配置するための工程数を低減することが可能になる。
【0082】
また、図19に示すように、第2絶縁部材21は、径方向に沿って伸縮可能に構成されている。第2絶縁部材21は、柔軟性を有するシート状の絶縁部材により構成されているとともに、径方向に沿って隣り合うように配置される複数の接合部90の周方向面90bを連続して覆わないように構成されているためである。これにより、第1脚部71と第2脚部81とを接合する際に、第1脚部71および第2脚部81が径方向または軸方向に沿って押圧されても、第1脚部71および第2脚部81の移動とともに第2絶縁部材21は変形可能である。
【0083】
また、図13に示すように、第2絶縁部材21は、径方向から見て、第1隙間部74および第2隙間部84の両方を覆うように中心軸線方向に延びるように設けられている。具体的には、第2絶縁部材21は、中心軸線方向における一方側(Z2方向側)の縁部が、ステータコア10の中心軸線方向の端面10aから外側(Z2方向側)に突出するように配置されている。また、第2絶縁部材21は、中心軸線方向における他方側(Z1方向側)の縁部が、スロット12内において、第1隙間部74の中心軸線方向における他方側(Z1方向側)の縁部よりも、中心軸線方向における他方側(Z1方向側)に設けられている。
【0084】
また、図13に示すように、第1絶縁部材20も、第2絶縁部材21と共に、ステータコア10の中心軸線方向の端面10aから外側(Z2方向側)に突出するように配置されている。そして、第2絶縁部材21のステータコア10の端面10aから外側に突出した部分の高さ位置h1と、第1絶縁部材20のステータコア10の端面10aから外側に突出した部分の高さ位置h2とは、略等しい。また、第1絶縁部材20および第2絶縁部材21の、ステータコア10の端面10aからの突出量は、第1絶縁部材20および第2絶縁部材21が、第1セグメント導体70の第1コイルエンド部72に接触して折れ曲がらない程度に調整されている。
【0085】
また、図20に示すように、中心軸線方向において、第2絶縁部材21の長さL12は、第1絶縁部材20の長さL11よりも小さい。具体的には、第1絶縁部材20の長さL11は、中心軸線方向におけるステータコア10の長さL3よりも大きい。また、第2絶縁部材21の長さL12は、ステータコア10の長さL3よりも小さい。また、第2絶縁部材21は、接合部90を覆うとともに、接合部90からZ1方向側とZ2方向側とに延びるように設けられている。第2絶縁部材21の長さL12は、コイル部30に印加される電圧の大きさなどに基づいて(必要な沿面距離に基づいて)調整される。なお、図20では、第1導体70および第2導体80の図示は、簡略化のため省略している。
【0086】
また、第2絶縁部材21の長さL12が第1絶縁部材20の長さL11よりも小さいので、図21に示すように、第1絶縁部材20は、径方向から見て、第2絶縁部材21にオーバラップする部分20fと、オーバラップしない部分20bとを含む。具体的には、スロット12内における中心軸線方向の端部(端面10a)近傍において、第1絶縁部材20は、第2絶縁部材21にオーバラップしている。そして、第1絶縁部材20の第2絶縁部材21にオーバラップする部分20fの厚みt11は、第1絶縁部材20の第2絶縁部材21にオーバラップしない部分20bの厚みt12よりも小さい。
【0087】
また、第2絶縁部材21の厚みt13は、厚みt11よりも小さい。また、厚みt12は、厚みt11に固定層20cの厚みt7の2枚分(t7×2)を加えたものである。
【0088】
また、第2絶縁部材21は、第1絶縁部材20の固定層20cよりも軸方向の一方側(Z2方向側)で、かつ、接合部90同士の径方向の間に配置され、接合部90同士を絶縁するように構成されている。具体的には、固定層20cは、絶縁層20aのうちの第2絶縁部材21と径方向に見てオーバラップしない部分20bに重ねて設けられている。また、絶縁層20aは、第2絶縁部材21と、径方向に見てオーバラップする部分20fに配置されている。
【0089】
(ステータの製造装置)
次に、図22を参照して、ステータ100の製造装置200について説明する。ステータ100の製造装置200は、押圧治具201を備えている。押圧治具201は、複数のスロット12に配置された第1導体70の第1脚部71と第2導体80の第2脚部81とを、複数のスロット12毎に径方向に独立して押圧するように構成されている。具体的には、押圧治具201は、複数のスロット12毎に配置され、径方向に移動可能に構成されている。また、押圧治具201は、複数のスロット12に対応するように複数(スロット12の数と同数)設けられており、複数の押圧治具201毎に、独立して径方向に移動可能に構成されている。
【0090】
また、ステータ100の製造装置200は、複数のスロット12毎に独立して押圧治具201を移動させる移動機構部202を備える。移動機構部202は、複数の押圧治具201毎に設けられており、複数の押圧治具201毎に径方向の移動量を調整可能に構成されている。移動機構部202は、たとえば、アクチュエータからなる。
【0091】
また、図12に示すように、ステータ100の製造装置200は、接着層加熱部203を備える。接着層加熱部203は、ステータコア10よりも径方向内側または径方向外側の少なくとも一方(好ましくは、両方)に配置され、誘導加熱(IH:Induction Heating)を行うことが可能に構成されている。そして、接着層加熱部203は、第1絶縁部材20の固定層20cを発泡温度T1よりも高く、かつ、硬化温度T2よりも高い温度に(室温から)加熱するように構成されている。なお、接着層加熱部203は、誘導加熱を用いることにより、一般的な加熱炉に比べて、所望の温度上昇率(比較的高い温度上昇率)で固定層20cを加熱させることが可能である。また、接合部90は、押圧治具201に押圧された状態で、加熱炉に配置されることにより、加熱される。
【0092】
次に、図23を参照して、ステータ100の製造方法について説明する。
【0093】
(セグメント導体を準備する工程)
まず、ステップS1において、複数のセグメント導体40が準備される。具体的には、Y結線されたコイル部30の各相の動力線接続端部Ptを構成する動力導体50と、コイル部30の各相の中性点接続端部Ntを構成する中性点導体60と、コイル部30のその他の部分を構成する第1導体70および第2導体80とが準備される。
【0094】
たとえば、図6に示すように、銅等の導電性材料からなる平角状の導体表面40bに、ポリイミド等の絶縁材料からなる絶縁被膜40aが形成(コーティング)される。その後、絶縁被膜40aが形成された導体(平角導線)が成形冶具(図示せず)により成形されることにより、第1導体70(図7)、第2導体80(図8)、動力導体50の一部または中性点導体60の一部を構成する第2脚部81(図9図11)が形成される。
【0095】
ここで、第1導体70の製造方法について説明する。たとえば、図24に示すように、略直線状の複数の導体1が準備される。そして、図25に示すように、複数の導体1の一方端側(第1導体70の一対の第1脚部71となる予定の部分)を、紙面上方側から切削加工により部分的に削り取る。これにより、一方の第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71bが形成される。次に、図26に示すように、一方の第1面71aが設けられている第1面配置部71bを形成する際と同じ側(紙面上方側)から、複数の導体1の他方端側を切削加工により部分的に削り取る。これにより、他方の第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71bが形成される。また、切削加工によって、第1面配置部71bの第1面71aが設けられる側の絶縁被膜40a(図6参照)は、除去される。
【0096】
同様に、複数の導体1の一方端側(第2導体80の一対の第2脚部81となる予定の部分)と、他方端側とが同じ側(紙面上方側)から切削加工されることにより、第2脚部81の第2面81aが設けられている第2面配置部81bが形成される。その後、導体1がU字形状に折り曲げ加工されることにより、第1導体70(図7参照)、および、第2導体80(図8参照)が形成される。なお、導体1をU字形状に折り曲げ加工した後に、第1脚部71の第1面71aが設けられている第1面配置部71b、および、第2脚部81の第2面81aが設けられている第2面配置部81bを形成してもよい。
【0097】
(第1コイルアッセンブリおよび第2コイルアッセンブリの形成)
ステップS2(図23参照)において、図2に示すように、複数のセグメント導体40からなる円環状の第1コイルアッセンブリ30aおよび第2コイルアッセンブリ30bが形成される。第1コイルアッセンブリ30aおよび第2コイルアッセンブリ30bは、セグメント導体40が径方向に複数(たとえば、8個)並列した状態で、かつ、周方向にスロット12の数分並列した状態に、形成される。第2コイルアッセンブリ30bには、動力導体50および中性点導体60が配置されている。
【0098】
(第1絶縁部材をスロットに配置する工程)
ステップS3(図23参照)において、スロット12とコイル部30とを絶縁するためのシート状の第1絶縁部材20がスロット12に挿入される。
【0099】
(第2導体をスロットに配置する工程)
ステップS4(図23参照)において、複数のセグメント導体40のうちのステータコア10の中心軸線方向の一方側(Z1方向側)に配置される複数の第2導体80の第2脚部81が、ステータコア10の中心軸線方向の一方側からステータコア10のスロット12に挿入される。
【0100】
(第2絶縁部材を配置する工程)
ステップS5(図23参照)において、複数の第2導体80をスロット12に配置した後に、複数の第2導体80のうち、1つのスロット12において径方向に隣接する第2導体80の第2脚部81の間に、シート状の第2絶縁部材21を配置する。
【0101】
(第1導体をスロットに配置する工程)
ステップS6(図23参照)において、複数の第1導体70を、ステータコア10の中心軸線方向の他方側からステータコア10に対して相対的に移動させる。これにより、第1導体70の第1脚部71がスロット12内に挿入される。ここで、本実施形態では、全てのスロット12内において、第1脚部71の第1面71aが設けられる第1面配置部71bと、第2脚部81の第2面81aが設けられる第2面配置部81bとが交互に配置されるように、第1導体70の第1脚部71と、第2導体80の第2脚部81とがスロット12に配置される。このとき、第1導体70の第1脚部71を挿入する際に、径方向内側に第1脚部71を倒したり、または、第1脚部71を径方向外側にずらして挿入することにより、第1脚部71と第2脚部81との干渉を容易に回避することができる。
【0102】
(ステータコアと第2脚部との接着および第1脚部と第2脚部との接合を行う工程)
ステップS7(図23参照)において、固定層20cにより、ステータコア10と第2脚部81との接着が行われ、径方向に複数のセグメント導体40が押圧されることにより、第1脚部71の第1面71aと第2脚部81の第2面81aとの接合が行われる。
【0103】
具体的には、接着層加熱部203により、所定の温度上昇率で、ステータコア10の全体を略均一に加熱することにより、第1絶縁部材20の固定層20cが加熱される。これにより、固定層20cに含まれる発泡剤20dが発泡(膨張)されて体積が増大し、固定層20cの厚みがt2(図16参照)からt3(図17参照)に大きくなる。また、固定層20cに含まれる熱硬化性樹脂20eが熱硬化することにより、第2脚部81とステータコア10(壁部11aおよび周方向側面13a)とが接着される。
【0104】
その後、第1脚部71と、第1導体70に軸方向に対向する第2導体80の第2脚部81とが、複数のスロット12毎に押圧治具201により径方向に押圧(加圧)されながら、たとえば、加熱炉内に配置されることにより、加熱される。これにより、第1面71aと第2面81aとが導電性接着剤91(たとえば、銀ナノペースト)により、電気的および機械的に接合される。これにより、スロット12内で、動力導体50および中性点導体60の第2脚部81と、第1導体70の第1脚部71とが接合される。その結果、波巻き状のコイル部30が形成される。
【0105】
また、図22に示すように、第1脚部71と第2脚部81とは、径方向内側が閉じている第1絶縁部材20とともに、径方向内側から押圧治具201によって押圧される。その後、図2に示すように、ステータ100が完成される。なお、図1に示すように、ステータ100とロータ101とが組み合わされることにより、回転電機102が製造される。
【0106】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0107】
本実施形態では、上記のように、全てのスロット(12)内において、第1セグメント導体(70)の第1脚部(71)の第1面(71a)が設けられる第1面側部分(71b)と、第2セグメント導体(80)の第2脚部(81)の第2面(81a)が設けられる第2面側部分(81b)とが同じ順番で交互に配置されている。これにより、先にスロット(12)に挿入される第1セグメント導体(70)および第2セグメント導体(80)のうちの一方の一対の脚部の接合部(90)を構成する面が径方向の同じ方向を向いているので、後に第1セグメント導体(70)および第2セグメント導体(80)のうちの他方の一対の脚部を挿入する際に、径方向内側または径方向外側に脚部を倒したり、または、脚部を径方向内側または径方向外側にずらして挿入することにより、第1脚部(71)と第2脚部(72)との干渉を容易に回避することができる。その結果、電機子(100)の生産性を向上させることができる。
【0108】
また、第1セグメント導体(70)の一対の第1脚部(71)の第1面(71a)が径方向の一方側を向くように設けられるので、同じ方向側から第1セグメント導体(70)の一対の第1脚部(71)を加工(たとえば、切削加工)することにより、一対の第1脚部(71)の各々に第1面(71a)を設けることができる。同様に、同じ方向側から第2セグメント導体(80)の一対の第2脚部(81)を加工することにより、一対の第2脚部(81)の各々に第2面(81a)を設けることができる。その結果、互いに異なる複数の方向側から第1脚部(71)(第2脚部(81))を加工する場合と異なり、接合部(90)を構成する第1脚部(71)の先端部側および第2脚部(81)の先端部側の加工を容易に行うことができる。
【0109】
また、本実施形態では、上記のように、電機子コア(10)に設けられる全てのスロット(12)内において、第1セグメント導体(70)の第1脚部(71)の第1面側部分(71b)と、第2セグメント導体(80)の第2脚部(81)の第2面側部分(81b)とが交互に配置されている。このように構成すれば、全ての第1セグメント導体(70)および第2セグメント導体(80)において、接合部(90)を構成する第1脚部(71)の先端部側および第2脚部(81)の先端部側の加工を容易に行うことができる。
【0110】
また、本実施形態では、上記のように、第1面側部分(71b)は、第1面側部分(71b)が設けられない第1脚部(71)の部分(71d)の厚み(t3)よりも径方向の厚み(t2)が小さくなるように、第1脚部(71)の径方向の一方側の面側が加工されることにより設けられている。また、第2面側部分(81b)は、第2面側部分(81b)が設けられない第2脚部(81)の部分(81d)の厚み(t5)よりも径方向の厚み(t4)が小さくなるように、第2脚部(81)の径方向の他方側の面側が加工されることにより設けられている。このように構成すれば、第1脚部(71)(第2脚部(81))の端部を加工(切削加工など)することにより、容易に、第1面側部分(71b)(第2面側部分(81b))を形成することができる。
【0111】
また、本実施形態では、上記のように、第1セグメント導体(70)の第1面側部分(71b)と、第2セグメント導体(80)の第2面側部分(81b)とは、同一の形状を有する。このように構成すれば、第1面側部分(71b)と第2面側部分(81b)とが異なる形状を有する場合と異なり、第1面側部分(71b)と第2面側部分(81b)と容易に形成することができる。
【0112】
また、本実施形態では、上記のように、中心軸線方向から見て、第1セグメント導体(70)の第1コイルエンド部(72)は、周方向に沿うように湾曲しており、第1セグメント導体(70)の一対の第1脚部(71)の第1面(71a)は、径方向内側を向くように形成されている。また、中心軸線方向から見て、第2セグメント導体(80)の第2コイルエンド部(82)は、周方向に沿うように湾曲しており、第2セグメント導体(80)の一対の第2脚部(81)の第2面(81a)は、径方向外側を向くように形成されている。このように構成すれば、周方向に沿うように第1コイルエンド部(72)および第2コイルエンド部(82)を湾曲させた状態で、第1脚部(71)の第1面(71a)と第2脚部(81)の第2面(81a)とが対向するので、第1脚部(71)の第1面(71a)と第2脚部(81)の第2面(81a)とを容易に接合することができる。
【0113】
また、本実施形態では、スロット(12)に配置される全てのU字形状の第1セグメント導体(70)の第1脚部(71)の長さ(L1)は互いに等しいとともに、スロット(12)に配置される全てのU字形状の第2セグメント導体(80)の第2脚部(81)の長さ(L2)は互いに等しい。このように構成すれば、全ての第1セグメント導体(70)(全ての第2セグメント導体(80))の形状が互いに略同一になるので、第1セグメント導体(70)(第2セグメント導体(80))を容易に形成することができる。
【0114】
また、本実施形態では、上記のように、第1面(71a)および第2面(81a)の各々は、中心軸線方向に対して平行に延びるように設けられ、第1面(71a)および第2面(81a)は、互いに径方向に接合されている。ここで、第1面(71a)および第2面(81a)が中心軸線方向に対して交差する場合(第1面(71a)および第2面(81a)が傾斜面の場合)では、治具(201)によって第1面(71a)および第2面(81a)を径方向から押圧すると、第1面(71a)および第2面(81a)(傾斜面)を摺動面として、第1脚部(71)および第2脚部(81)が互いに離間するように中心軸線方向に移動してしまう。そこで、上記のように構成することによって、治具(201)によって第1面(71a)および第2面(81a)を径方向から押圧した場合に、第1脚部(71)および第2脚部(81)が中心軸線方向に移動してしまうのを防止することができる。
【0115】
また、本実施形態では、上記のように、接合部(90)は、電機子コア(10)の中心軸線方向の中心よりも、電機子コア(10)の中心軸線方向における一方側端面(10a)の近傍に設けられている。このように構成すれば、スロット(12)に第2脚部(81)を先に挿入した後に第1脚部(71)を挿入する場合、第1脚部(71)の長さ(L1)が比較的短いので、第1脚部(71)を容易に径方向内側に傾斜させたり径方向外側にずらして、スロット(12)に挿入することができる。これにより、第1脚部(71)と第2脚部(81)との干渉を容易に回避することができる。
【0116】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0117】
たとえば、上記実施形態では、第1面71aおよび第2面81aの各々が、中心軸線方向に対して平行に延びている例を示したが、本発明はこれに限られない。第1面71aおよび第2面81aの各々が、中心軸線方向に対して所定の角度(たとえば5度以下)傾いていてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、接合部90が、スロット12内に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、接合部90の一部がスロット12外に配置(図27参照)されていてもよいし、接合部90の全体が、スロット12外に配置(図28参照)されていてもよい。また、接合部90が、ステータコア10の中心軸線方向の中心よりも、ステータコア10の中心軸線方向における他方側端面(端面10b)の近傍に設けられていてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、一対の第1脚部71の長さL1が互いに略等しいとともに、一対の第2脚部81の長さL2が互いに略等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図29に示すように、第1セグメント導体170の一対の第1脚部171は互いに長さが異なる(図29(A)参照)ように構成されているとともに、第2セグメント導体180の一対の第2脚部181は互いに長さが異なる(図29(B)参照)ように構成されている。すなわち、第1セグメント導体170および第2セグメント導体180の各々は、J字状(略J字状)を有する。
【0120】
また、上記実施形態では、第2脚部81の長さが、第1脚部71の長さよりも長い例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2脚部81の長さが、第1脚部71の長さよりも短くてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、脚部の長い第2導体80がリード側の導体であり、脚部の短い第1導体70が反リード側の導体である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、脚部の長い第2導体80が反リード側の導体であり、脚部の短い第1導体70がリード側の導体であってもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、接着層として構成された固定層20cを含む第1絶縁部材20を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、接着層とは異なる膨張材(膨張層)を含む第1絶縁部材20を用いて、接着せずに壁部11aおよび周方向側面13aと第2脚部81とを押圧させ合うこと(押圧力)により固定させてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、第1絶縁部材20および第2絶縁部材21(接合部絶縁部材)がシート状である例を示したが、本発明はこれに限られない。シート状でない第1絶縁部材20および第2絶縁部材21を備えるステータに対しても本発明を適用することは可能である。
【0124】
また、上記実施形態では、第1面71aが径方向内側(R1方向側)を向くように形成され、第2面81aが径方向外側(R2方向側)を向くように形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1面71aを径方向外側(R2方向側)を向くように形成し、第2面81aを径方向内側(R1方向側)を向くように形成してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、第1面71aが設けられる第1面配置部71bおよび第2面81aが設けられる第2面配置部81bが切削加工により形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1面配置部71bおよび第2面配置部81bを切削加工以外の加工法により形成してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、第1導体70の第1面配置部71bと、第2導体80の第2面配置部81bとが同一の形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1導体70の第1面配置部71bと、第2導体80の第2面配置部81bとが互いに異なる形状を有していてもよい。この場合でも、一対の第1導体70の第1面配置部71bの加工を同じ方向側から行うことができるとともに、一対の第2導体80の第2面配置部81bの加工を同じ方向側から行うことができるので、第1脚部71の先端部側および第2脚部81の先端部側の加工を容易に行うことができる。
【0127】
また、上記実施形態では、第2脚部81が先にスロット12に挿入された後に、第1脚部71がスロット12に挿入される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1脚部71を先にスロット12に挿入した後に、第2脚部81をスロット12に挿入してもよい。
【符号の説明】
【0128】
10 ステータコア(電機子コア)
10a 端面
12 スロット
30 コイル部
70、170 第1導体(第1セグメント導体)
71、171 第1脚部
71a 第1面
71b 第1面配置部(第1面側部分)
72 第1コイルエンド部
80、180 第2導体(第2セグメント導体)
81、181 第2脚部
81a 第2面
81b 第2面配置部(第2面側部分)
82 第2コイルエンド部
90 接合部
100 ステータ(電機子)
L1 長さ(第1脚部の長さ)
L2 長さ(第2脚部の長さ)
t2 厚み(第1面側部分の厚み)
t3 厚み(第1面側部分が設けられていない第1脚部の部分の厚み)
t4 厚み(第2面側部分の厚み)
t5 厚み(第2面側部分が設けられていない第2脚部の部分の厚み)
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