(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20221109BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20221109BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B60C11/03 100A
B60C11/03 300B
B60C11/12 B
B60C11/12 C
B60C11/13 B
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2018212453
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 貴秀
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144526(JP,A)
【文献】特開2011-042328(JP,A)
【文献】特開平10-086613(JP,A)
【文献】特開2015-229408(JP,A)
【文献】特開2018-043628(JP,A)
【文献】特開2005-132267(JP,A)
【文献】特開2012-101719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、
前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、
前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有
し、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え
、且つ、
前記センター主溝の溝幅Wg2が、トレッド幅TWに対して0.02≦Wg2/TW≦0.04の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ラグ溝の溝幅W2が、W2≦2.0[mm]の範囲にある請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ラグ溝の溝深さH2が、前記ショルダー主溝の溝深さHg1に対して0.07≦H2/Hg1≦0.30の関係を有する請求項1
または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター陸部が、相互に異なる溝幅をもつ複数種類の前記ラグ溝を備え、且つ、
1本以上3本以下の幅狭な前記ラグ溝が、隣り合う幅広な前記ラグ溝の間に配置される請求項1~
3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記幅広なラグ溝が溝底サイプを有し、且つ、前記幅狭なラグ溝が溝底サイプを有さない請求項
4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記溝底サイプの深さH3が、前記ショルダー主溝の溝深さHg1に対して0.50≦H3/Hg1≦0.85の範囲にある請求項
5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
タイヤ赤道面から前記ラグ溝の屈曲部までの距離D2が、トレッド幅TWに対してD2/TW≦0.125の範囲にある請求項1~
6のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ラグ溝の屈曲部の屈曲角αが、90[deg]≦α≦150[deg]の範囲にある請求項1~
7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ラグ溝が、屈曲部と、前記屈曲部から延在して前記ショルダー主溝に開口する第一溝部および前記センター主溝に開口する第二溝部とを備え、且つ、
前記第一溝部および前記第二溝部のタイヤ幅方向の延在長さの総和が、前記センター陸部の幅Wr2に対して80[%]以上である請求項1~
8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
タイヤ周方向に対する前記第一溝部の傾斜角β1が45[deg]≦β1≦70[deg]の範囲にあり、前記第二溝部の傾斜角β2が90[deg]≦β2≦135[deg]の範囲にある請求項
9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記一対のセンター陸部が、前記複数のラグ溝をそれぞれ備え、
前記センター主溝に対する一方の前記センター陸部の前記ラグ溝の開口部と、他方の前記センター陸部の前記ラグ溝の開口部とのタイヤ周方向の距離G2が、前記ラグ溝のピッチ長Pr2に対して-0.05≦G2/Pr2≦0.05の範囲内にある請求項1~
10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記センター陸部の前記ショルダー主溝側のエッジ部が、前記ショルダー主溝側に凸となる複数の円弧部をタイヤ周方向に接続して成る連続円弧形状を有し、且つ、
第一の前記ラグ溝が、隣り合う前記円弧部の接続部に開口し、且つ、
第二の前記ラグ溝が、前記円弧部の最大突出位置に開口する請求項1~
11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝を備え、且つ、
前記センター陸部のタイヤ赤道面側のエッジ部から前記ラグ溝の屈曲部までの距離L2が、前記センター陸部のタイヤ赤道面側のエッジ部から前記周方向細溝の溝中心線までの距離L1に対して0.40≦L2/L1≦0.60の関係を有する請求項1~
12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
重荷重用タイヤであり、前記センター主溝が6.0[mm]以上の溝幅および10[mm]以上の溝深さを有する請求項1~
13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、
前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、
前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有
し、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え
、且つ、
前記ラグ溝の溝幅W2が、W2≦2.0[mm]の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項16】
一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、
前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、
前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有
し、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え
、且つ、
タイヤ赤道面から前記ラグ溝の屈曲部までの距離D2が、トレッド幅TWに対してD2/TW≦0.125の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項17】
一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、
前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、
前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有
し、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え
、
前記センター陸部の前記ショルダー主溝側のエッジ部が、前記ショルダー主溝側に凸となる複数の円弧部をタイヤ周方向に接続して成る連続円弧形状を有し、
第一の前記ラグ溝が、隣り合う前記円弧部の接続部に開口し、且つ、
第二の前記ラグ溝が、前記円弧部の最大突出位置に開口することを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの転がり抵抗を向上させつつウェットトラクション性能および耐摩耗性能を両立できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
市街地を走行するバスに装着される重荷重用タイヤでは、近年、タイヤの耐摩耗性能を向上するために、3本の周方向主溝および4列の陸部をもつトレッドパターンが採用されている。かかる構成を採用する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、重荷重用タイヤでは、ウェットトラクション性能および耐摩耗性能を両立すべき課題がある。
【0005】
この発明は、タイヤの転がり抵抗を向上させつつウェットトラクション性能および耐摩耗性能を両立できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有し、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え、且つ、前記センター主溝の溝幅Wg2が、トレッド幅TWに対して0.02≦Wg2/TW≦0.04の関係を有することを特徴とする。また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有し、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え、且つ、前記ラグ溝の溝幅W2が、W2≦2.0[mm]の範囲にあることを特徴とする。また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有し、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え、且つ、タイヤ赤道面から前記ラグ溝の屈曲部までの距離D2が、トレッド幅TWに対してD2/TW≦0.125の範囲にあることを特徴とする。また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のショルダー主溝および単一のセンター主溝と、前記主溝に区画された一対のショルダー陸部および一対のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター主溝の溝幅Wg2が、前記ショルダー主溝の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有し、前記一対のセンター陸部のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有し、前記センター陸部の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有し、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝を備え、前記センター陸部の前記ショルダー主溝側のエッジ部が、前記ショルダー主溝側に凸となる複数の円弧部をタイヤ周方向に接続して成る連続円弧形状を有し、第一の前記ラグ溝が、隣り合う前記円弧部の接続部に開口し、且つ、第二の前記ラグ溝が、前記円弧部の最大突出位置に開口することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、センター主溝がショルダー主溝よりも狭く設定され、且つ、トレッド部センター領域の接地幅が広く設定されるので、接地直下にあるセンター陸部の剛性が補強される。これにより、タイヤの耐摩耗性能が向上し、また、タイヤの低転がり抵抗性能が向上する利点がある。また、センター陸部がセンター陸部を貫通する複数のラグ溝を備えるので、センター陸部が幅広構造を有することに起因するウェットトラクション性能の悪化が抑制される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤのトレッド部センター領域を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に記載したセンター陸部を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、
図4に記載したセンター陸部のA視断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に記載したセンター陸部のB視断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に記載した空気入りタイヤのトレッド部ショルダー領域を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図2に記載したセンター陸部の変形例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図2に記載したセンター陸部の変形例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、トラック・バス用の重荷重用タイヤを示している。
【0011】
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0012】
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(
図1参照)。
【0013】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0014】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上90[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0015】
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。
【0016】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0017】
[トレッドパターン]
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tがトレッド端であり、寸法記号TWがトレッド幅である。
図2の構成では、空気入りタイヤ1がスクエア形状のショルダー部を有し、トレッド端Tがタイヤ接地端に一致する。
【0018】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する3本の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された4列の陸部31、32とをトレッド面に備える。
【0019】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、特に重荷重用タイヤにおいて6.0[mm]以上の溝幅Wg1、Wg2(
図2参照)および10.0[mm]以上の溝深さHg1、Hg2(
図5参照)を有する。また、後述するラグ溝は、タイヤ幅方向に延在する横溝であり、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。また、後述するサイプは、トレッド踏面に形成された切り込みであり、タイヤ接地時に閉塞する点でラグ溝と区別される。
【0020】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁間の距離として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0021】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0023】
例えば、
図2の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ略点対称なトレッドパターンを有している。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1が、例えば、タイヤ赤道面CLを中心とする左右線対称なトレッドパターンあるいは左右非対称なトレッドパターンを有しても良いし、タイヤ回転方向に方向性を有するトレッドパターンを有しても良い(図示省略)。
【0024】
また、3本の周方向主溝21、22のうちタイヤ幅方向外側にある2本の周方向主溝21、21をショルダー主溝として定義し、タイヤ幅方向内側にある周方向主溝22をセンター主溝として定義する。なお、
図2の構成では、センター主溝22がタイヤ赤道面CL上にある。
【0025】
また、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、トレッド端T上に位置する。また、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部32をセンター陸部として定義する。センター陸部32は、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良いし(
図2参照)、タイヤ赤道面CL上に配置されても良い(図示省略)。
【0026】
[トレッド部センター領域]
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤ1のトレッド部センター領域を示す平面図である。
図4は、
図3に記載したセンター陸部32を示す拡大図である。
【0027】
図2に示すように、この空気入りタイヤ1では、センター主溝22が幅狭構造を有し、また、センター陸部32が幅広構造を有する。これにより、トレッド部センター領域の接地面積が拡大されてタイヤの転がり抵抗が低減され、同時に、センター主溝22の存在によりトレッド部センター領域の排水性が確保される。具体的には、以下の構成が採用されている。
【0028】
まず、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1よりも狭い(Wg2<Wg1)。また、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対して0.60≦Wg2/Wg1≦0.75の関係を有することが好ましく、0.65≦Wg2/Wg1≦0.70の関係を有することがより好ましい。また、センター主溝22の溝幅Wg2が、トレッド幅TWに対して0.02≦Wg2/TW≦0.04の関係を有することが好ましい。また、センター主溝22の溝深さが10[mm]以上である。これにより、センター主溝22の溝容積が確保される。
【0029】
トレッド幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤのトレッド模様部分の両端の直線距離として測定される。
【0030】
トレッド端Tは、タイヤのトレッド模様部分の両端部として定義される。
【0031】
また、一対のセンター陸部32、32のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有する。Wce/TWの上限は、特に限定がないが、上記した比Wg2/TWの上限および後述する比Wr2/TWの上限により制約を受ける。
【0032】
エッジ部の距離Wceは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ幅方向の距離として測定される。また、陸部のエッジ部が波状形状あるいはジグザグ形状を有する構成では、波状形状あるいはジグザグ形状の振幅の中心線を測定点として、エッジ部の距離が測定される。
【0033】
また、
図2において、センター陸部32の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有する。また、比Wr2/TWが、0.24≦Wr2/TW≦0.26の範囲にあることが好ましい。また、センター陸部32の幅Wr2が、ショルダー陸部31の幅Wr1よりも広く(Wr1<Wr2)、具体的には、1.30≦Wr2/Wr1≦1.80の関係を有することが好ましく、1.35≦Wr2/Wr1≦1.60の関係を有することがより好ましい。
【0034】
陸部の幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ幅方向の距離として測定される。また、陸部のエッジ部が波状形状あるいはジグザグ形状を有する構成では、波状形状あるいはジグザグ形状の振幅の中心線を測定点として、エッジ部の距離が測定される(
図4参照)。
【0035】
[センター陸部の周方向細溝およびラグ溝]
図5および
図6は、
図4に記載したセンター陸部32のA視断面図(
図5)およびB視断面図(
図6)である。
【0036】
図2において、センター陸部32は、単一の周方向細溝321と、複数のラグ溝322A、322Bとを備える。
【0037】
周方向細溝321は、
図2に示すように、タイヤ周方向の全周に渡って延在してセンター陸部32をタイヤ幅方向に分断する。
図2の構成では、周方向細溝321がストレート形状を有している。しかし、これに限らず、周方向細溝321がタイヤ幅方向に振幅を持つジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。
【0038】
上記の構成では、センター主溝22がショルダー主溝21よりも狭く(Wg2<Wg1)設定され、且つ、トレッド部センター領域の接地幅が広く(0.50≦Wce/TWおよび0.23≦Wr2/TW)設定されるので、接地直下にあるセンター陸部32の剛性が補強される。これにより、タイヤの耐摩耗性能が向上し、また、タイヤの低転がり抵抗性能が向上する。
【0039】
一方で、一般に幅広なセンター陸部を備える構成では、トレッド部センター領域の接地圧差が高いため、レール摩耗などの偏摩耗が発生し易いという新たな課題がある。この点において、上記の構成では、センター陸部32が周方向細溝321を備えるので、トレッド部センター領域の接地圧が周方向細溝321により分散される。これにより、タイヤ接地面内における接地圧分布が均一化されて、タイヤの偏摩耗性能が向上する。
【0040】
また、
図3において、タイヤ赤道面CLから周方向細溝321の溝中心線までの距離D1が、トレッド幅TWに対してD1/TW≦0.16の関係を有する。比D1/TWの下限は、特に限定がないが、後述する比L1/Wr2の範囲により制約を受ける。
【0041】
周方向細溝の溝中心線は、周方向溝の溝開口部の中心線として定義される。また、周方向細溝がタイヤ幅方向に振幅を持つジグザグ形状あるいは波状形状を有する場合には、溝中心線が振幅の中心線として定義される。
【0042】
また、
図4において、センター陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から周方向細溝321の溝中心線までの距離L1が、センター陸部32の幅Wr2に対して0.40≦L1/Wr2≦0.60の関係を有することが好ましく、0.45≦L1/Wr2≦0.55の関係を有することが好ましい。したがって、周方向細溝321が、センター陸部32の中央部に配置される。
【0043】
また、周方向細溝321の溝幅W1(
図4参照)が、0.5[mm]≦W1≦2.0[mm]の範囲にある。また、周方向細溝321は、タイヤ接地時に閉塞するサイプであっても良い。
【0044】
また、
図5において、周方向細溝321の溝深さH1が、センター主溝22の溝深さHg2に対して0.07≦H1/Hg2≦0.30の関係を有することが好ましく、0.07≦H1/Hg2≦0.15の関係を有することがより好ましい。したがって、周方向細溝321が細浅溝であり、タイヤの摩耗中期に消滅する。しかし、これに限らず、後述するように、周方向細溝321の溝深さH1がラグ溝322A、322Bの有無との関係で調整されても良い。
【0045】
一般に、ラグ溝に区画されたブロック列を備える構成では、タイヤ転動時におけるブロックの踏み込み動作および蹴り出し動作に起因して、ブロックにヒール・アンド・トウ摩耗が発生するという技術的課題がある。
【0046】
この点において、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝322A、322Bが、
図2に示すように、センター陸部32をタイヤ幅方向に貫通して、ショルダー主溝21およびセンター主溝22にそれぞれ開口する。また、ラグ溝322A、322Bが、屈曲部Pb(
図4参照)を頂点とするV字形状ないしはL字形状を有し、その屈曲部Pbをタイヤ周方向に向けて配置される。また、複数のラグ溝322A、322Bが、屈曲形状の向きを揃えてタイヤ周方向に所定間隔で配列される。かかる構成では、ラグ溝322A、322Bが屈曲形状を有することにより、ラグ溝322A、322Bに区画されたブロックの剛性が確保されて、ヒール・アンド・トウ摩耗が抑制される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される。
【0047】
また、
図3において、タイヤ赤道面CLからラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbまでの距離D2が、トレッド幅TW(
図2参照)に対してD2/TW≦0.125の範囲にある。また、ラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbが、周方向細溝321とタイヤ赤道面CLとの間に形成される(D2<D1)。距離D2の下限は、特に限定がないが、後述する比L2/Wr2の範囲により制約を受ける。
【0048】
また、
図3において、センター主溝22に対する一方のセンター陸部32のラグ溝322A;322Bの開口部と、他方のセンター陸部32のラグ溝322A;322Bの開口部とのタイヤ周方向の距離G2(G2a;G2b)が、ラグ溝322A;322Bのピッチ長Pr2に対して-0.05≦G2/Pr2≦0.05の範囲内にある。したがって、対向するラグ溝322A;322Bの開口部が、タイヤ周方向の略同位置に配置される。
【0049】
また、
図4において、ラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbの屈曲角αが、90[deg]≦α≦150[deg]の範囲にある。
【0050】
屈曲角αは、ラグ溝の屈曲部Pbと陸部の左右の主溝に対する開口部とを接続した2直線のなす角として測定される。
【0051】
また、
図4において、センター陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部からラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbまでの距離L2が、センター陸部32の幅Wr2に対して0.24≦L2/Wr2≦0.33の範囲にあることが好ましく、0.26≦L2/Wr2≦0.32の範囲にあることがより好ましい。また、屈曲部Pbの距離L2が、センター陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から周方向細溝321の溝中心線までの距離L1に対して0.40≦L2/L1≦0.63の関係を有することが好ましい。したがって、ラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbが、周方向細溝321に区画されたセンター陸部32の踏面の中央部に配置される。
【0052】
また、
図4において、屈曲部Pbからショルダー主溝21側に向かって屈曲することなく延在するラグ溝322A、322Bの部分を第一溝部3221として定義し、屈曲部Pbからセンター主溝22側に向かって屈曲することなく延在するラグ溝322A、322Bの部分を第二溝部3222として定義する。
【0053】
図4の構成では、周方向細溝321がセンター陸部32の中央部に配置され、ラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbがセンター陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部と周方向細溝321との間に配置されるので、ショルダー主溝21側の第一溝部3221が、センター主溝22側の第二溝部3222よりも長尺である。また、第一溝部3221および第二溝部3222のそれぞれが、ストレート形状を有しても良いし、緩やかな円弧形状を有しても良い。
【0054】
また、第一溝部3221および第二溝部3222のタイヤ幅方向の延在長さの総和が、センター陸部32の幅Wr2に対して80[%]以上であることが好ましく、90[%]以上であることがより好ましい。したがって、ラグ溝322A、322Bが、全体として屈曲部Pbを頂点とするV字形状あるいはL字形状を有する。
【0055】
第一溝部3221および第二溝部3222のタイヤ幅方向の延在長さの総和は、第一溝部3221のタイヤ幅方向外側の端部から第二溝部3222のタイヤ赤道面CL側の端部までのタイヤ幅方向の距離として測定される。
【0056】
また、タイヤ周方向に対する第一溝部3221の傾斜角β1が45[deg]≦β1≦70[deg]の範囲にあることが好ましく、55[deg]≦β1≦65[deg]の範囲にあることがより好ましい。また、第二溝部3222の傾斜角β2が90[deg]≦β2≦135[deg]の範囲にあることが好ましく、110[deg]≦β2≦125[deg]の範囲にあることがより好ましい。
【0057】
溝部の傾斜角β1、β2は、ラグ溝の屈曲部Pbと主溝に対する開口部とを接続した直線のタイヤ周方向に対する傾斜角として測定される。
【0058】
例えば、
図4の構成では、ラグ溝322A、322Bが、屈曲部Pbの突出方向をタイヤ周方向に向けたV字形状を有している。具体的には、第二溝部3222の傾斜角β2が90[deg]<β2の範囲にあり、第一溝部3221および第二溝部3222が屈曲部Pbからタイヤ周方向の同一方向に延在している。また、第一溝部3221が、屈曲部Pbからショルダー主溝21側に向かってタイヤ周方向に対する傾斜角(溝中心線の接線)を緩やかに増加させた円弧形状を有し、第二溝部3222が、ストレート形状を有している。
【0059】
また、
図4の構成では、後述する幅広なラグ溝322Bが、センター陸部32の左右のエッジ部に対して垂直に接続する短尺な端部322oを備えている。また、第一溝部3221および第二溝部3222の端部とセンター陸部32のエッジ部とが、これらの端部322oにより接続されている。また、これらの端部322oのタイヤ幅方向の延在長さL3が、センター陸部32の幅Wr2に対して0<L3/Wr2≦0.06の範囲に設定される。
【0060】
また、
図4において、ラグ溝322A、322Bの溝幅W2(W2A、W2B)が、W2≦2.0[mm]の範囲にある。したがって、ラグ溝322A、322Bがいわゆる細溝である。溝幅W2の下限は、特に限定がないが、ラグ溝322A、322Bがタイヤ接地時に開口して溝として機能することを要する。このため溝幅W2の下限は、タイヤの規定荷重や溝深さとの関係で制約を受ける。
【0061】
また、センター陸部32が、相互に異なる溝幅をもつ複数種類のラグ溝322A、322Bを備え、これらのラグ溝322A、322Bが、タイヤ周方向に周期的に配列される。また、最も幅狭なラグ溝322Aの溝幅W2Aと最も幅広なラグ溝322Bの溝幅WBとが、1.20≦W2B/W2A≦2.00の範囲にあることが好ましく、1.25≦W2B/W2A≦1.80の範囲にあることがより好ましい。また、1本以上3本以下の幅狭なラグ溝322Aが、隣り合う幅広なラグ溝322Bの間に配置されることが好ましい。例えば、
図4の構成では、幅狭なラグ溝322Aと幅広なラグ溝322Bとがタイヤ周方向に交互に配列されている。
【0062】
しかし、これに限らず、すべてのラグ溝322A、322Bが同一幅を有しても良い(図示省略)。また、
図4の構成では、ラグ溝322A、322Bが溝長さ方向で一定の幅を有するが、これに限らず、ラグ溝の溝幅が溝長さ方向で変化しても良い(図示省略)。
【0063】
また、
図6において、ラグ溝322A、322Bの溝深さH2(H2A、H2B)が、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.07≦H2/Hg1≦0.30の関係を有することが好ましく、0.07≦H2/Hg1≦0.12の関係を有することがより好ましい。すなわち、ラグ溝322A、322Bが、いわゆる細浅溝であり、センター陸部32をタイヤ周方向に完全に分断しない。このため、センター陸部32の剛性がタイヤ周方向に連続的に確保されており、この点において、センター陸部32がブロックではなくリブとしての特性を有する。
【0064】
また、
図4の構成では、幅広なラグ溝322Bが、溝底サイプ323を有する。一方で、幅狭なラグ溝322Aは、溝底サイプを有していない。このため、溝底サイプ323を有するラグ溝322Bと、溝底サイプを有さないラグ溝322Aとが、タイヤ周方向に交互に配列されている。
【0065】
また、
図6において、溝底サイプ323の幅W3が、0<W3≦1.2[mm]の範囲にあり、溝底サイプ323の深さH3が、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.50≦H3/Hg1≦0.85の範囲にある。このため、溝底サイプ323が、タイヤ接地時に閉塞する。また、
図5に示すように、溝底サイプ323が、ショルダー主溝21およびセンター主溝22に開口し、その開口部に底上部(図中の符号省略)を有する。
【0066】
溝底サイプの幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝底におけるサイプの開口幅として測定される。
【0067】
溝底サイプの深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝底からサイプ底までの距離として測定される。また、サイプが部分的な凹凸部を溝底に有する構成では、これらを除外してサイプ深さが測定される。
【0068】
[センター陸部のエッジ形状]
図2の構成では、センター陸部32のショルダー主溝21側のエッジ部がショルダー主溝21側に凸となる複数の円弧部(図中の符号省略)をタイヤ周方向に接続して成る連続円弧形状を有し、センター主溝22側のエッジ部がタイヤ赤道面CLに平行なストレート形状を有している。
【0069】
また、
図3に示すように、連続円弧形状を構成する円弧部のピッチ長Pa2が、幅狭なラグ溝322A(あるいは幅広なラグ溝322B)のピッチ長Pr2に等しい。また、一対のセンター陸部32、32の円弧部が、相互に等しいピッチ長Pa2を有し、また、タイヤ周方向に相互に位相をずらして配置される。また、これらの円弧部の位相差φ2が、円弧部のピッチ長Pa2に対して0.50≦φ2/Pa2≦0.65の関係を有することが好ましい。また、円弧部の曲率半径(図中の寸法記号省略)が、40[mm]以上150[mm]以下の範囲にある。
【0070】
エッジ部の連続円弧形状は、ショルダー主溝21側に凸となる複数の円弧部を直接的あるいは間接的に接続して構成される。また、円弧部や円弧部の接続部に、ラグ溝322A、322Bが開口しても良い。例えば、
図4の構成では、センター陸部32のショルダー主溝21側のエッジ部にて、幅狭なラグ溝322Aが隣り合う円弧部の接続部に開口し、幅広なラグ溝322Bが円弧部の最大突出位置に開口している。
【0071】
また、
図4において、1つの円弧部の周方向長さLa2が、円弧部のピッチ長Pa2に対して0.90≦La2/Pa2の関係を有することが好ましく、0.94≦La2/Pa2の関係を有することがより好ましい。比La2/Pa2の上限は、1.00である。
【0072】
また、
図4において、円弧部のピッチ長Pa2が、センター陸部32の幅Wr2に対して0.60≦Pa2/Wr2≦1.00の関係を有することが好ましく、0.75≦Pa2/Wr2≦0.95の関係を有することがより好ましい。
【0073】
また、
図4において、連続円弧形状の振幅Aeが、センター陸部32の幅Wr2に対して0.03≦Ae/Wr2≦0.07の関係を有することが好ましく、0.04≦Ae/Wr2≦0.06の関係を有することがより好ましい。
【0074】
図7は、
図2に記載した空気入りタイヤのトレッド部ショルダー領域を示す平面図である。
【0075】
図2の構成では、上記のように、センター陸部32のタイヤ幅方向外側のエッジ部が、ショルダー主溝21側に凸となる複数の円弧部(図中の符号省略)を接続して成る連続円弧形状を有する。同様に、ショルダー陸部31のエッジ部が、ショルダー主溝21側に凸となる複数の円弧部(図中の符号省略)を接続して成る連続円弧形状を有する。このため、ショルダー主溝21の左右のエッジ部が、相互にショルダー主溝21側に凸となる複数の円弧部を有する。
【0076】
また、ショルダー陸部31の円弧部とセンター陸部32の円弧部とが、タイヤ周方向に相互に位相をずらして配置される。具体的には、ショルダー陸部31の円弧部のピッチ長Pa1が、センター陸部32の円弧部のピッチ長Pa2に対して略同一に設定され、また、センター陸部32の円弧部に対して位相差φ1をもって配列される。また、ショルダー陸部31の円弧部とセンター陸部32の円弧部との位相差φ1が、ショルダー陸部31の円弧部のピッチ長Pa1に対して0.40≦φ1/Pa1≦0.50の範囲にあることが好ましい。また、ショルダー陸部31の円弧部の曲率半径(図中の寸法記号省略)が、40[mm]以上150[mm]以下の範囲にある。
【0077】
また、上記の構成に起因して、ショルダー主溝21の左右の溝壁間の距離が、タイヤ周方向に向かって連続的に増減する。具体的には、ショルダー主溝21の溝壁間の距離が、タイヤ周方向に隣り合う円弧部の接続部で極大値(あるいは最大値Wg1)をとり、左右の陸部31、32の円弧部が相互に対向する位置で極小値(あるいは最小値Wg1’)をとる。また、左右の陸部31、32の円弧部がタイヤ周方向に向かってタイヤ周方向に連続して接続されることにより、ショルダー主溝21の溝壁間の距離がタイヤ周方向に向かって周期的かつ滑らかに増減する。これにより、ショルダー主溝21で発生する気柱共鳴音が低減されて、タイヤの通過騒音性能が向上する。
【0078】
また、
図7に示すように、ショルダー主溝21がタイヤ周方向でシースルー構造を有する。すなわち、左右の陸部31、32のエッジ部が、タイヤ周方向への投影視にてタイヤ幅方向にオーバーラップしない。また、ショルダー主溝21のシースルー幅Dtと最大溝幅Wg1とが、0.60≦Dt/Wg1≦0.90の関係を有することが好ましく、0.70≦Dt/Wg1≦0.80の関係を有することがより好ましい。これにより、タイヤのウェット性能が向上する。
【0079】
シースルー幅Dtは、左右の陸部の最大幅位置のタイヤ幅方向の距離Dtとして測定される。
【0080】
また、
図7に示すように、ショルダー陸部31が、複数のラグ溝311を備える。また、これらのラグ溝311が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。これにより、タイヤのウェットトラクション性が向上する。また、ラグ溝311が細溝であり、0.5[mm]以上2.0[mm]の溝幅(図中の寸法記号省略)を有する。上記下限により、ラグ溝311によるウェットトラクション性の向上作用が確保され、上記上限により、ラグ溝311に起因するタイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。
【0081】
また、ラグ溝311が、浅溝であり、ショルダー主溝21の溝深さHg1(
図5参照)に対して7[%]以上20[%]以下の溝深さ(図示省略)を有する。上記下限により、ラグ溝311によるウェットトラクション性の向上作用が確保され、上記上限により、ラグ溝311に起因するタイヤの騒音性能の悪化が抑制される。
【0082】
また、
図7に示すように、ショルダー主溝21に対するショルダー陸部31のラグ溝311の開口部とセンター陸部32の幅広なラグ溝322Bの開口部とが、相互に対向して配置される。このとき、対向するラグ溝311、322Bの開口部のタイヤ周方向の距離G1が、ショルダー陸部31のラグ溝311のピッチ長Pr1に対して0.08≦G1/Pr1≦0.12の範囲内にある。したがって、対向するラグ溝311、322Bの開口部がタイヤ周方向に若干オフセットして配置される。これにより、タイヤの騒音性能の悪化が抑制される。一方で、
図7の構成では、センター陸部32の幅広なラグ溝322Bが、ショルダー陸部31のラグ溝311の溝中心線の延長線上に配置される。これにより、ラグ溝311、322Bによる排水作用が高められている。
【0083】
[変形例]
図8~
図10は、
図2に記載したセンター陸部の変形例を示す説明図である。これらの図において、
図8は、センター陸部32の周方向細溝321の断面図を示し、
図9および
図10は、センター陸部32の面取部322B’を有するサイプ323’の断面図を示している。
【0084】
図2の構成では、
図4に示すように、センター陸部32が、単一の周方向細溝321と複数のラグ溝322A、322Bとを備え、
図5および
図6に示すように、周方向細溝321およびラグ溝322A、322Bのいずれもが、細浅溝であり、ショルダー主溝21に対して非常に浅い深さを有している。
【0085】
しかし、これに限らず、
図8に示すように、
図2の構成において、周方向細溝321が細深溝であり、ラグ溝322A、322Bが細浅溝であっても良い。この場合には、周方向細溝321の溝深さH1が、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.30≦H1/Hg1≦1.00の関係を有し得る。
【0086】
また、
図2の構成では、
図6に示すように、幅広なラグ溝322Bが、細浅溝であり、その溝底に溝底サイプ323を有している。
【0087】
しかし、これに限らず、
図6のラグ溝322Bおよび溝底サイプ323の組み合わせが、
図9および
図10の変形例が示すような、開口部に面取部322B’を有するサイプ323’に置換されても良い。これらの変形例では、面取部322B’が
図6のラグ溝322Bとして機能し、サイプ323’が
図6の溝底サイプ323として機能する。
【0088】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、一対のショルダー主溝21、21および単一のセンター主溝22と、これらの主溝21、22に区画された一対のショルダー陸部31、31および一対のセンター陸部32、32とを備える(
図2参照)。また、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対してWg2<Wg1の関係を有する。また、一対のセンター陸部32、32のタイヤ幅方向外側のエッジ部の距離Wceが、トレッド幅TWに対して0.50≦Wce/TWの関係を有する。また、センター陸部32の幅Wr2が、トレッド幅TWに対して0.23≦Wr2/TW≦0.27の関係を有する。また、センター陸部32が、センター陸部32をタイヤ幅方向に貫通すると共に屈曲形状を有する複数のラグ溝322A、322Bを備える。
【0089】
かかる構成では、(1)主溝21、22の本数が3本であることにより、主溝の本数が2本である構成(図示省略)と比較して、タイヤのウェット性能が確保され、また、主溝の本数が4本である構成(図示省略)と比較して、タイヤの耐摩耗性能が確保される。これにより、タイヤのウェット性能と耐摩耗性能とが両立する利点がある。
【0090】
また、(2)センター主溝22がショルダー主溝21よりも狭く(Wg2<Wg1)設定され、且つ、トレッド部センター領域の接地幅が広く(0.50≦Wce/TWおよび0.23≦Wr2/TW)設定されるので、接地直下にあるセンター陸部32の剛性が補強される。これにより、タイヤの耐摩耗性能が向上し、また、タイヤの低転がり抵抗性能が向上する利点がある。
【0091】
また、(3)センター陸部32がセンター陸部32を貫通する複数のラグ溝322A、322Bを備えるので、センター陸部32が幅広構造を有することに起因するウェットトラクション性能の悪化が抑制される利点がある。
【0092】
一方で、幅広なセンター陸部を備える構成では、センター陸部の接地圧が高いため、センター陸部にヒール・アンド・トゥ摩耗が発生し易いという新たな課題がある。この点において、上記の構成では、(4)ラグ溝322A、322Bが屈曲形状を有することにより、センター陸部32の接地圧が分散される。これにより、ヒール・アンド・トゥ摩耗の発生が抑制されて、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される利点がある。
【0093】
また、この空気入りタイヤ1では、センター主溝の溝幅Wg2が、トレッド幅TWに対して0.02≦Wg2/TW≦0.04の関係を有する(
図2参照)。上記下限により、センター主溝22の排水性が確保されて、タイヤのウェットトラクション性能が確保される利点がある。また、上記上限により、トレッド部センター領域の接地幅が確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される利点がある。
【0094】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝322A、322Bの溝幅W2(W2A、W2B)が、W2≦2.0[mm]の範囲にある(
図4参照)。これにより、センター陸部32の剛性が確保されて、タイヤの低転がり性能および耐摩耗性能が確保される利点がある。
【0095】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝322A、322Bの溝深さH2(H2A、H2B)が、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.07≦H2/Hg1≦0.30の関係を有する(
図6参照)。上記下限により、ラグ溝322A、322Bによるウェットトラクション性能の向上作用が確保される利点があり、上記上限により、センター陸部32の剛性が確保されて、タイヤの低転がり性能および耐摩耗性能が確保される利点がある。
【0096】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32が、相互に異なる溝幅をもつ複数種類のラグ溝322A、322Bを備える(
図4参照)。また、1本以上3本以下の幅狭なラグ溝322Aが、隣り合う幅広なラグ溝322Bの間に配置される。幅狭なラグ溝322Aと幅広なラグ溝322Bとが混在して配置されることにより、タイヤのトラクション性能および低転がり性能が両立する利点がある。
【0097】
また、この空気入りタイヤ1では、幅広なラグ溝322Bが溝底サイプ323を有し、且つ、幅狭なラグ溝322Aが溝底サイプを有さない(
図6参照)。かかる構成では、溝底サイプ323を有するラグ溝322Bと有さないラグ溝322Aとが混在して配置されることにより、タイヤのトラクション性能および低転がり性能が両立する利点がある。
【0098】
また、この空気入りタイヤ1では、溝底サイプ323の深さH3が、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.50≦H3/Hg1≦0.85の範囲にある(
図6参照)。これにより、溝底サイプ323の深さH3が適正化される利点がある。
【0099】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ赤道面CLからラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbまでの距離D2が、トレッド幅TWに対してD2/TW≦0.125の範囲にある(
図3参照)。これにより、ラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbの位置が適正化されて、屈曲部Pbよるタイヤの耐偏摩耗性能の向上作用が確保される利点がある。
【0100】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbの屈曲角αが、90[deg]≦α≦150[deg]の範囲にある(
図4参照)。上記下限により、ラグ溝322A、322Bを起点としたクラックの発生が抑制される利点があり、上記上限により、屈曲部Pbによるタイヤの耐偏摩耗性能の向上作用が確保される利点がある。
【0101】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝322A、322Bが、屈曲部Pbと、屈曲部Pbから延在してショルダー主溝21に開口する第一溝部3221およびセンター主溝22に開口する第二溝部3222とを備える(
図4参照)。また、第一溝部3221および第二溝部3222のタイヤ幅方向の延在長さの総和が、センター陸部32の幅Wr2に対して80[%]以上である。かかる構成では、ラグ溝322A、322Bが、全体として屈曲部Pbを頂点とするV字形状あるいはL字形状を有するので、屈曲部Pbによるタイヤの耐偏摩耗性能の向上作用が高まる利点がある。
【0102】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向に対する第一溝部3221の傾斜角β1が45[deg]≦β1≦70[deg]の範囲にあり、第二溝部3222の傾斜角β2が90[deg]≦β2≦135[deg]の範囲にある。かかる構成では、ラグ溝322A、322Bの各溝部3221、3222の傾斜角β1、β2が適正化されるので、ラグ溝322A、322Bによるウェットトラクション性能の向上作用が確保される利点がある。
【0103】
また、この空気入りタイヤ1では、一対のセンター陸部32が、複数のラグ溝322A、322Bをそれぞれ備える(
図3参照)。また、センター主溝22に対する一方のセンター陸部32のラグ溝322A;322Bの開口部と、他方のセンター陸部32のラグ溝322A;322Bの開口部とのタイヤ周方向の距離G2(G2a、G2b)が、ラグ溝322A;322Bのピッチ長Pr2に対して-0.05≦G2/Pr2≦0.05の範囲内にある。かかる構成では、ラグ溝322A;322Bの開口部がセンター主溝22を挟んで対向して配置されるので、トレッド部センター領域の排水性が向上する利点がある。
【0104】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32のショルダー主溝21側のエッジ部が、ショルダー主溝21側に凸となる複数の円弧部をタイヤ周方向に接続して成る連続円弧形状を有する(
図4参照)。また、第一のラグ溝322Aが隣り合う円弧部の接続部に開口し、第二のラグ溝322Bが円弧部の最大突出位置に開口する。これにより、ラグ溝322A、322Bによる排水性の向上作用および接地圧の分散作用が両立する利点がある。
【0105】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝321を備える(
図4参照)。また、センター陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部からラグ溝322A、322Bの屈曲部Pbまでの距離L2が、センター陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から周方向細溝321の溝中心線までの距離L1に対して0.40≦L2/L1≦0.60の関係を有する。これにより、ラグ溝322A、322Bによる排水性の向上作用および接地圧の分散作用が両立する利点がある。
【0106】
また、この空気入りタイヤ1は、重荷重用タイヤであり、センター主溝22が6.0[mm]以上の溝幅および10[mm]以上の溝深さを有する。かかる重荷重用タイヤを適用対象とすることにより、タイヤの耐摩耗性能および低転がり抵抗性能の向上作用が効率的に得られる利点がある。
【実施例】
【0107】
図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0108】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)低転がり抵抗性能、(2)ウェットトラクション性能および(3)耐偏摩耗性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ275/70R22.5の試験タイヤがリムサイズ22.5×8.25のリムに組み付けられ、この試験タイヤに900[kPa]の内圧およびJATMAの規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である2-D4トラックの総輪に装着される。
【0109】
(1)低転がり抵抗性能および(2)ウェットトラクション性能の評価は、R117-02(Regulation No.117 02 Series)の認定試験に準拠して行われる。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0110】
(3)耐偏摩耗性能に関する評価では、試験車両がロードテストで3万[km]を走行した後の推定摩耗寿命量およびヒール・アンド・トゥ摩耗量が測定される。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0111】
実施例1の試験タイヤは、
図1~
図4に示すように、3本の周方向主溝21、22と4列の陸部31、32とを備える。また、センター陸部32が周方向細溝321および複数のラグ溝322A、322Bを備える。また、トレッド幅TWが242[mm]であり、ショルダー主溝21の溝深さHg1が18.4[mm]である。また、周方向細溝321の溝幅W1が1.5[mm]であり、ラグ溝322A、322Bの溝幅W2A、W2Bが、1.2[mm]および2.0[mm]である。
【0112】
従来例の試験タイヤは、
図1~
図4の構成において、センター陸部32が周方向細溝321を備えていない。
【0113】
試験結果が示すように、実施例1~11の試験タイヤでは、タイヤの低転がり抵抗性能、ウェットトラクション性能および耐偏摩耗性能が両立することが分かる。
【符号の説明】
【0114】
1 空気入りタイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141、12 交差ベルト;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21 ショルダー主溝;22 センター主溝;31 ショルダー陸部;311 ラグ溝;32 センター陸部;321 周方向細溝;322A、322B、322B’ ラグ溝;322o 端部;323 溝底サイプ;3221 第一溝部;3222 第二溝部