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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】円板共振器
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20221109BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01R27/26 H
G01N22/00 Y
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018213773
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079769
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】長楽 公平
(72)【発明者】
【氏名】松井 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一生
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-344466(JP,A)
【文献】特開2014-106224(JP,A)
【文献】特開2004-117220(JP,A)
【文献】特開2004-177234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/26
G01N 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1励振線を内蔵した第1円形平板と、
円形銅箔と、
第2励振線を内蔵した第2円形平板と、
環状弾性体と、
ケース部と、
押圧部と、
を備え、
前記ケース部は、前記第1円形平板と前記円形銅箔と前記第2円形平板と前記環状弾性体をこれらの中心軸を合わせた状態で収納する円柱状の収納部を備え、
前記押圧部は、前記環状弾性体に突き当てられ、前記収納部に収納された前記第1円形平板と前記円形銅箔と前記第2円形平板とを、前記環状弾性体を介して押圧する突き当て部材を備えた円板共振器。
【請求項2】
前記収納部は、少なくとも前記第1円形平板と、前記第2円形平板が摺接する摺接面を備えた請求項1に記載の円板共振器。
【請求項3】
中心部に前記円形銅箔を保持するとともに、前記摺接面に摺接するガイド部材を備えた請求項2に記載の円板共振器。
【請求項4】
前記ケース部は、前記第1円形平板と前記円形銅箔と前記第2円形平板が前記収納部に収納されたときに前記円形銅箔の側方に位置する箇所に、柱部と、当該柱部と隣接するとともに前記収納部を外部と連通させる開口部と、を備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の円板共振器。
【請求項5】
前記柱部と前記開口部とは前記収納部の中心部を隔てて対向させて配置され、前記柱部を対向配置された前記開口部側へ投影したときに、投影された前記柱部の範囲が、前記開口部の範囲よりも狭い請求項4に記載の円板共振器。
【請求項6】
前記ケース部は、内周部を少なくとも前記収納部の一部とする筒状部を備え、当該筒状部の外周壁に雄ネジ部を備え、
前記押圧部は、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を有するとともに、前記突き当て部材を内蔵したカバー部である請求項1から5のいずれか一項に記載の円板共振器。
【請求項7】
前記突き当て部材は、ベアリングを介在させて前記カバー部に設けられた請求項6に記載の円板共振器。
【請求項8】
前記ケース部は、前記収納部の上縁部に前記収納部から空気を排出する空気排出部を備えた請求項1から7のいずれか一項に記載の円板共振器。
【請求項9】
前記環状弾性体は、環状に形成した斜め巻きコイルスプリングである請求項1から8のいずれか一項に記載の円板共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ICT(Information and Communication Technology)機器に通信速度の高速化等の流れの中、ICT機器に使用されるプリント基板に用いられる基材自体の伝送損失を改善する低損失化が進んでいる。このような事情を背景として、基材となる材料の比誘電率、誘電正接等の誘電特性を正確に測定することが求められている。このような誘電特性を測定する機器として、例えば、特許文献1には、一対の金属板で円板共振シートと試料(基材)を挟んだ状態で測定を行う円板共振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-106224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一対の金属板で円板共振シートと試料(基材)を挟んでその誘電特性の測定を行う場合、一対の金属板が均一に押圧されず、金属板間に空隙が生じると金属板間に空気層が形成される。空気層の存在は、測定結果に影響を及ぼす。このため、基材となる材料の比誘電率、誘電正接等の誘電特性を正確に測定するためには、一対の金属板の間に空隙を生じさせないように金属板を均一に押圧することが求められる。しかしながら、特許文献1では、この点について何ら開示されていない。
【0005】
1つの側面では、本明細書開示の発明は、円板共振器による測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、円板共振器は、第1励振線を内蔵した第1円形平板と、円形銅箔と、第2励振線を内蔵した第2円形平板と、環状弾性体と、ケース部と、押圧部と、を備え、前記ケース部は、前記第1円形平板と前記円形銅箔と前記第2円形平板と前記環状弾性体をこれらの中心軸を合わせた状態で収納する円柱状の収納部を備え、前記押圧部は、前記環状弾性体に突き当てられ、前記収納部に収納された前記第1円形平板と前記円形銅箔と前記第2円形平板とを、前記環状弾性体を介して押圧する突き当て部材を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、円板共振器による測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態の円板共振器をネットワークアナライザーに接続した測定システムの説明図である。
図2図2は実施形態の円板共振器の斜視図である。
図3図3は実施形態の円板共振器の断面図である。
図4図4は実施形態の円板共振器の分解斜視図である。
図5図5は実施形態の円板共振器の分解断面図である。
図6図6(A)は比較例の円板共振器を用いたときに円形銅箔に作用する圧力の分布を示す説明図であり、図6(B)は実施形態の円板共振器を用いたときに円形銅箔に作用する圧力の分布を示す説明図である。
図7図7は斜め巻きコイルスプリングの反力特性を示すグラフである。
図8図8(A)はケース部を筒状部の下端部で断面とし、柱部と開口部の配置を示す説明図であり、図8(B)は対向する柱部と開口部の大きさを比較する説明図である。
図9図9(A)はケース部に開口部を設けた場合の測定結果の一例を示すグラフであり、図9(B)はケース部に開口部を設けていない場合の測定結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては、説明の都合上、実際には存在する構成要素が省略されていたり、寸法が実際よりも誇張されて描かれていたりする場合がある。
【0010】
図1を参照すると、実施形態の円板共振器1は、ケーブル19とケーブル25を介してネットワークアナライザー101に接続され、測定装置100として使用される。ネットワークアナライザー101は、所望の周波数を出力し、円板共振器1にセットされた測定対象の誘電特性の測定を行う。
【0011】
図2を参照すると、円板共振器1は、ケース部10と押圧部としてのカバー部30を備えている。また、図3から図5を参照すると、円板共振器1は、第1円形平板としての第1純銅平板18と、円形銅箔22と、第2円形平板としての第2純銅平板24と、環状弾性体としての環状に形成した斜め巻きコイルスプリング(以下、単に「スプリング」という)26とを備える。ケース部10とカバー部30の材質は、円板共振器1による試験の再現性と円板共振器1自体の機械的強度の観点から適宜選定することができる。本実施形態では、熱膨張係数が純銅と近い材質であるステンレスを選定している。
【0012】
ケース部10は、本体部10aとこの本体部10aに連設された円柱状の筒状部10bを備える。筒状部10bの外周壁には、雄ネジ部12が形成されている。ケース部10の内側には、収納部13が設けられている。筒状部10bの内周部は、収納部13の一部となっている。収納部13の内周壁面は、概ね円形状であり、その内径は、Rinとなっている。収納部13の内周壁面は、第1純銅平板18や第2純銅平板24等の摺接面13aとなっている。
【0013】
ケース部10は、収納部13の上縁部に収納部13内から空気を排出する空気排出部14を備えている(図4参照)。空気排出部14は、4か所に設けられている。空気排出部14の設置個所を結ぶと、概ね正方形が描かれる。すなわち、空気排出部14は、円形である収納部13に概ね内接する正方形の4つの角部に設けられている。
【0014】
ケース部10は、筒状部10bの基端部に柱部15と開口部16を備えている。柱部15と開口部16については、後に詳説する。
【0015】
収納部13には、第1純銅平板18、円形銅箔22、第2純銅平板24及びスプリング26がこれらの中心軸を合わせた状態で収納される。図4を参照すると、これらの中心軸は、いずれも軸線AXに合わせた状態とされている。本実施形態では、第1純銅平板18、円形銅箔22、第2純銅平板24及びスプリング26の軸線AX方向の高さ位置を調節するためのスペーサ17が設置されている。このため、本実施形態では、収納部13の最も底の部分にスペーサ17が配置され、その上に第1純銅平板18が積層される。そして、この第1純銅平板18の平滑面18a上に測定対象となる第1基材20が積層される。第1基材20の上側には、中心部に円形銅箔22を保持したシクロオレフィンポリマー(COP)製のガイド部材21が積層される。さらに、ガイド部材21の上側に測定対象となる第2基材23が積層される。第2基材23上には平滑面24aが第2基材23に密着するように第2純銅平板24が積層される。スプリング26は、第2純銅平板24の平滑面24aの裏面側に環状に設けられた収納溝24cに設置されている。
【0016】
ここで、第1純銅平板18、第2純銅平板24及びガイド部材21はいずれも円形形状を有しており、その外径は、いずれもRoutに設定されている。Routは、収納部13の内径Rinに対応させて設定されており、第1純銅平板18、ガイド部材21及び第2純銅平板24は、収納部13に収納される際に、それぞれの縁部が収納部13の摺接面13aに摺接する。これにより、第1純銅平板18、ガイド部材21及び第2純銅平板24の位置合わせを容易に行うことができる。ガイド部材21は、その中心部に円形銅箔22を保持しており、この結果、第1純銅平板18、第2純銅平板24と円形銅箔22の位置合わせも容易に行うことができる。また、平滑面18a及び平滑面24aが傾くことも抑制される。
【0017】
また、スプリング26も第2純銅平板24の平滑面24aの裏面側にその中心を軸線AXと合わせて環状に設けられた収納溝24cに設置されるため、環状に成形されたスプリング26の中心軸と第2純銅平板24の中心軸とを容易に一致させることができる。
【0018】
本実施形態の円板共振器1では、第1基材20と第2基材23も順次積層し、収納部13内に収納する。ここで、第1基材20及び第2基材23は、概ね矩形(正方形)に成形されており、その角部を収納部13に設けた空気排出部14に合わせて収納部13内に収納される。これにより、第1基材20及び第2基材23も位置合わせされた状態で収納部13内に収納される。ここで、第1基材20及び第2基材23を概ね矩形に成形しているのは、矩形に加工することが容易であるという基材の加工作業性を重視したものであり、第1基材20及び第2基材23の形状は矩形に限定されるものではない。例えば、第1純銅平板18等の外径と一致させた円形であってもよい。
【0019】
このように、本実施形態の円板共振器1によれば、収納部13内に第1純銅平板18、第1基材20、円形銅箔22を保持したガイド部材21、第2基材23及び第2純銅平板24を順次積層するだけで、これらの位置合わせを行うことができる。
【0020】
第1純銅平板18は、中心部に第1励振線18bを内蔵している。第1励振線18bはブラケット19aを備えたケーブル19から延びている。ケーブル19は、ブラケット19aを介して第1純銅平板18に固定されている。同様に、第2純銅平板24は、中心部に第2励振線24bを内蔵している。第2励振線24bはブラケット25aを備えたケーブル25から延びている。ケーブル25は、ブラケット25aを介して第2純銅平板24に固定されている。ケーブル19及びケーブル25は、それぞれネットワークアナライザー101に接続される。このような第1純銅平板18と第2純銅平板24をともに収納部13内に収納することで、第1励振線18bと第2励振線24bの位置合わせが行われる。
【0021】
つぎに、カバー部30について説明する。カバー部30は、本体部30aの内側にケース部10が備える雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部31を有するとともに、スプリング26に当接する突き当て部材33を内蔵している。突き当て部材33は、ベアリング32を介してカバー部30の内側に設けられている。突き当て部材33は、カバー部30がケース部10に組み付けられた状態においてスプリング26を介して収納部13に収納された第1純銅平板18、第1基材20、円形銅箔22、第2基材23及び第2純銅平板24を押圧する。
【0022】
突き当て部材33は、軸線AX方向に沿って延びる筒状部33aと軸線AX方向と直交する方向に拡がるように筒状部33aに連設された鍔状部33bを有する。鍔状部33bは、スプリング26に当接する突き当て面33b1を有する。
【0023】
カバー部30の本体部30aと突き当て部材33との間に介在するベアリング32は、環状の内周壁部32aと、環状の外周壁部32cと、これらに狭持されたボール32bを備える。筒状部33aは、ベアリング32の内周壁部32aの内側に嵌め込まれる。そして、ベアリング32の外周壁部32cにカバー部30の本体部が嵌め込まれる。これにより、突き当て部材33がベアリング32を介してカバー部30に設けられた状態となっている。
【0024】
このようなカバー部30をケース部10に組み付ける場合、本体部30aを回転させ、雄ネジ部12と雌ネジ部31とを螺合させる。雄ネジ部12と雌ネジ部31との螺合が進むと、まず、突き当て部材33の突き当て面33b1がスプリング26に当接する。すると、突き当て部材33と突き当て部材33が嵌め込まれたベアリング32の内周壁部32aは、突き当て面33b1とスプリング26との摩擦によって回転が止まる。この状態からベアリング32の外周壁部32cと一体となっている本体部30aをさらに回転させ、カバー部30をさらに締め込むと、突き当て部材33がスプリング26を押圧する。この押圧する力が第2純銅平板24を介して第1基材20、円形銅箔22及び第2基材23を密着させる。このとき、スプリング26は同心円状に第2純銅平板24をその全周に亘って均等に押圧する。この結果、測定対象である第1基材20及び第2基材23、さらには、円形銅箔22もその全域に亘って均一に押圧される。
【0025】
本実施形態では、環状のスプリング26を用いることで第2純銅平板24を同心円状に均等に押圧することができ、第1純銅平板18と第2純銅平板24との間に空隙を生じることがなく、空気層が形成されることを回避することができる。この結果、空気層の影響を受けることがない正確な測定結果を得ることができる。
【0026】
ここで、図6(A)に比較例の円板共振器を用いたときに円形銅箔に作用する圧力の分布を示すとともに、図6(B)は実施形態の円板共振器1を用いたときに円形銅箔に作用する圧力の分布を示す。圧力の分布は色の濃淡で表されており、色の濃さが同じ領域は均一に圧力が分布していることを示している。
【0027】
比較例の円板共振器は、第1純銅平板と第2純銅平板を挟持する一対の押圧板を備えている。一対の押圧板は矩形であり、その四隅をボルト締めすることで第1純銅平板と第2純銅平板を狭持している。このように、四隅をボルト締めする形態であると、ボルトの締め付けトルクや締め付けの順番に起因して第1純銅平板と第2純銅平板が相対的に傾き、両者間に空隙が生じることがある。この結果、図6(A)に示すように円形銅箔部の圧力分布が均一ではない状態となることがある。
【0028】
これに対し、本実施形態の円板共振器1を用いた場合には、図6(B)に示すように円形銅箔部の圧力分布が均一であることが分かる。このため、本実施形態の円板共振器1を用いることで、空気層が形成されることを回避し、測定精度を向上させることができる。
【0029】
このように本実施形態の円板共振器1では、空気層の形成が回避されるが、空気層の形成を回避するには、収納部13内から空気がスムーズに排出されると都合がよい。本実施形態の円板共振器1は、空気排出部14を備えているため、第1純銅平板18や第1基材20等を順次収納部13内で積層し、これらを突き当て部材33によって押圧する際に、収納部13内から空気を排出することができる。この結果、収納部13内で積層される各部材を密着させ、空気層の形成を回避することができる。
【0030】
つぎに、図7を参照して、スプリング26の反力の特性について説明する。図7は、環状が水平方向に拡がるようにセットされたスプリング26に対し、上下方向から荷重が加えられた際に得られた圧縮率と反力との関係を示すグラフである。このグラフによれば、スプリング26は、その圧縮率が増加してもその反力がほとんど変化しない領域を有する。本実施形態の円板共振器1では、このスプリング26の反力一定領域を用いる。これにより、カバー部30のケース部10に対する締込量が多少変化してもスプリング26が発揮する反力は一定となり、常に同一条件で測定を行うことができる。なお、圧縮率が変化しても、その反力が一定となる反力一定領域を有する部材であればスプリング26に代えて採用することができる。例えば、エラストマ製のパッキン部材を採用してもよい。
【0031】
つぎに、図3図4図8(A)及び図8(B)を参照してケース部10の筒状部10bの基端部に設けられた柱部15と開口部16について説明する。図3を参照すると、柱部15は、第1純銅平板18、円形銅箔22及び第2純銅平板24が収納部13に収納されたときに円形銅箔22の側方に位置する箇所に設けられている。また、図4を参照すると、柱部15に隣接させて開口部16が設けられている。開口部16は、収納部13をその外部と連通させている。このような開口は、収納部13内から空気を排出するだけでなく、測定時の不要な共振の発生を抑制するために設けられている。
【0032】
図8(A)及び図8(B)を参照すると、本実施形態の円板共振器1は、三つの柱部151、152、153と、三つの開口部161、162、163が交互に配置されている。また、各柱部151、152、153と開口部161、162、163とは収納部13の中心部(軸線AX)を隔てて対向させて配置されている。
【0033】
ここで、各柱部の端部151a、152a、153aとし、これらの端部151a、152a、153aと収納部13の軸線AXと結んだときの角度をθ1とする。θ2は、例えば、柱部151の二つの端部151aと軸線AXとを結んだときの角度であり、柱部151の範囲を示している。柱部152と柱部153の範囲も同様にθ2に設定されている。一方、θ1は、例えば、柱部151の一つの端部151aと、開口部163を隔てた柱部152の端部152aと軸線AXを結んだときの角度であり、開口部163の範囲を示している。開口部161と開口部162の範囲も同様にθ1に設定されている。ここで、θ1とθ2は、θ2<θ1に設定されている。これにより、各柱部151、152、153の範囲は、各開口部161、162、163よりも狭くなっている。
【0034】
この結果、柱部151、152、153を対向配置された開口部161、162、163側へ投影したときに、投影された柱部151、152、153の範囲が、開口部161、162、163の範囲よりも狭くなるように設定されている。すなわち、柱部同士が対向しないように配置されている。
【0035】
具体的に、図8(B)を参照すると、柱部152に対向する位置に開口部162が設けられている。ここで、柱部152の幅Wpillarは、開口部162の幅Wopenよりも狭くなっている。柱部151に対向する位置には開口部161が設けられ、柱部153に対向する位置には開口部163が設けられているが、これらの寸法関係は、いずれも柱部152と開口部162の関係と同様に設定されている。
【0036】
柱部151、152、153と開口部161、162、163をこのような配置とすることにより、測定時の不要な共振の発生が抑制される。ここで、図9(A)と図9(B)を参照して開口部161、162、163を設置したことの効果について説明する。図9(A)は開口部161、162、163を設けたときの測定結果の一例を示し、図9(B)は開口部を設けていないときの測定結果の一例を示している。図9(A)に示す測定結果と、図9(B)に示す測定結果を比較すると、図9(B)に示す測定結果には、図中、a、b、cで示す不要な振幅が表れている。一方、図9(A)に示す測定結果では、不要な振幅は表れておらず、正確な測定結果が得られていることが分かる。
【0037】
本実施形態の円板共振器1によれば、突き当て部材33によりスプリング26を介して第1純銅平板18、円形銅箔22及び第2純銅平板24を押圧する。これにより、第1基材20及び第2基材23をセットした状態においても第1純銅平板18と第2純銅平板24との間に空隙が生じることがない。この結果、第1基材20及び第2基材23に一定の荷重が加わり、空気層の形成が回避され、測定精度を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態の円板共振器1は、収納部13に第1純銅平板18、第1基材20、円形銅箔22、第2基材23及び第2純銅平板24を順次積層するように収納する。このとき、各要素は、収納部13の摺接面13aに摺接するので、容易に位置決めをすることができ、測定するための円板共振器1の組み立て再現性が高い。このため、例えば、異なる測定者が円板共振器1を扱っても同様の測定結果を得ることができる。
【0039】
円板共振器1は、雄ネジ部12に雌ネジ部31を螺合させ、ケース部10にカバー部30を締め込むだけで良いため、この点においても組み立て再現性が高い。
【0040】
また、円板共振器1は、柱部15と開口部16を備えているため、測定時の不要な共振の発生が抑制されている。
【0041】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 円板共振器
10 ケース部
10b 筒状部
12 雄ネジ部
13 収納部
13a 摺接面
14 空気排出部
15 柱部
16 開口部
18 第1純銅平板
18b 第1励振線
20 第1基材
21 ガイド部材
22 円形銅箔
23 第2基材
24 第2純銅平板
24b 第2励振線
26 スプリング
30 カバー部
31 雌ネジ部
33 突き当て部材
33b1 突き当て面
100 測定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9