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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】角度演算装置及び転舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20221109BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20221109BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20221109BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20221109BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018213929
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079058
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小池 進
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052448(JP,A)
【文献】特開2016-005918(JP,A)
【文献】特開2013-226943(JP,A)
【文献】特開平07-002124(JP,A)
【文献】特開2016-222018(JP,A)
【文献】特開2018-113851(JP,A)
【文献】特開2017-024556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 101/00-137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械装置の動力源であるモータの相対角を検出する第1センサの検出結果に基づいて前記モータの相対角を積算した積算角を演算するための値であるカウント値を演算するカウンタ部と、前記カウンタ部の異常を検出する第1異常検出部と、前記第1異常検出部を診断する第1BIST部とを有する第1演算回路と、
前記機械装置における前記モータに連動する検出対象の絶対位置を検出する第2センサの検出結果に基づいて前記検出対象の絶対位置を演算するための値である絶対位置情報を演算する絶対位置情報演算部と、前記絶対位置情報演算部の異常を検出する第2異常検出部と、前記第2異常検出部を診断する第2BIST部とを有する第2演算回路と、
前記カウント値を用いて前記積算角を演算する積算角演算部と、前記絶対位置情報を用いて前記モータに連動する回転軸の絶対角を演算する絶対角演算部と、前記積算角及び前記絶対角の比較に基づいて前記第1演算回路及び前記第2演算回路の少なくとも一方の異常を検出する第3異常検出部と、前記第3異常検出部を診断する第3BIST部とを有する第3演算部とを備え、
前記第1BIST部、前記第2BIST部、及び前記第3BIST部による診断の実行タイミングは、互いに異なる角度演算装置。
【請求項2】
前記第1BIST部、前記第2BIST部、及び前記第3BIST部による診断の実行タイミングは、前記第1センサ及び前記第2センサによる検出結果のサンプリングタイミングと異なる請求項1に記載の角度演算装置。
【請求項3】
前記第3異常検出部は、前記積算角の単位時間あたりの変化量と、前記絶対角の単位時間あたりの変化量とを用いて、前記第1演算回路及び前記第2演算回路の少なくとも一方の異常を検出する請求項1または2に記載の角度演算装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の角度演算装置と前記機械装置としての転舵ユニットとを備える転舵装置において、
前記転舵ユニットは、
直線運動することにより転舵輪を転舵させる転舵シャフトと、
前記転舵シャフトに噛み合わせられたピニオンシャフトと、
前記転舵シャフトに付与される動力の発生源である転舵モータと、
前記転舵モータが発生する動力を前記転舵シャフトに伝達する伝達機構とを有し、
前記検出対象は、前記転舵モータに連動するように設けられている前記ピニオンシャフトである転舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度演算装置及び転舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドルと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が知られている。例えば特許文献1の操舵装置は、ハンドルと転舵輪との間の動力伝達を断続するクラッチ、操舵軸に付与される操舵反力の発生源である反力モータ、及び転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有している。また、特許文献1の操舵装置は、クラッチ、反力モータ、及び転舵モータの動作を制御する制御装置を有している。
【0003】
車両の走行時、上記の制御装置は、クラッチを開放させてハンドルと転舵輪との間の動力伝達を切断する。上記の制御装置は、転舵輪の実転舵角を目標転舵角に追従させるべく転舵モータを制御するとともに、転舵輪の転舵状態に応じた操舵反力を発生させるべく反力モータを制御する。目標転舵角は、操舵角センサを通じて検出される操舵角に基づき算出される。転舵状態は、転舵角センサを通じて検出される。操舵角センサ及び転舵角センサは、いずれも絶対角センサである。
【0004】
上記の制御装置は、反力モータに設けられた第1回転角センサを通じて検出される回転角を使用して反力モータを制御するとともに、転舵モータに設けられた第2回転角センサを通じて検出される回転角を使用して転舵モータを制御する。第1回転角センサ及び第2回転角センサは、いずれも相対角センサである。第1回転角センサは、操舵角センサを通じてセンシングの基準点となる操舵角の中点を取得する。第2回転角センサは、転舵角センサを通じてセンシングの基準点となる転舵角の中点を取得する。上記の制御装置は、転舵角センサを通じて取得された転舵角の中点を用いて、第2回転角センサを通じて検出される回転角に基づいて、絶対角で示される転舵輪の実転舵角を演算によって求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の制御装置は演算によって求めた実転舵角を用いて転舵モータの制御を行っている。このため、上記の制御装置による実転舵角の演算に対してより一層の高い信頼性が求められている。
【0007】
本発明の目的は、絶対角の演算の信頼性を向上させることのできる角度演算装置及び転舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成しうる角度演算装置は、機械装置の動力源であるモータの相対角を検出する第1センサの検出結果に基づいて前記モータの相対角を積算した積算角を演算するための値であるカウント値を演算するカウンタ部と、前記カウンタ部の異常を検出する第1異常検出部と、前記第1異常検出部を診断する第1BIST部とを有する第1演算回路と、前記機械装置における前記モータに連動する検出対象の絶対位置を検出する第2センサの検出結果に基づいて前記検出対象の絶対位置を演算するための値である絶対位置情報を演算する絶対位置情報演算部と、前記絶対位置情報演算部の異常を検出する第2異常検出部と、前記第2異常検出部を診断する第2BIST部とを有する第2演算回路と、前記カウント値を用いて前記積算角を演算する積算角演算部と、前記絶対位置情報を用いて前記モータに連動する回転軸の絶対角を演算する絶対角演算部と、前記積算角及び前記絶対角の比較に基づいて前記第1演算回路及び前記第2演算回路の少なくとも一方の異常を検出する第3異常検出部と、前記第3異常検出部を診断する第3BIST部とを有する第3演算部とを備え、前記第1BIST部、前記第2BIST部、及び前記第3BIST部による診断の実行タイミングは、互いに異なる。
【0009】
ここで、BIST部による異常検出部の診断を実行した後、診断対象とした異常検出部を備える角度演算装置としては、その動作状態が異常を検出した状態に設定されてしまうため、この異常を検出した状態を解除してモータに連動する回転軸の絶対角を演算することができる動作状態に戻すべく、異常を検出した状態をリセットする必要がある。
【0010】
そして、上記構成のように、複数のBIST部による複数の異常検出部の診断を実行しなければいけない場合には、何れかのBIST部による診断の実行中に、他のBIST部による診断に伴い角度演算装置の動作状態がリセットされると、診断の結果が正しく得られなくなる可能性がある。
【0011】
この点、上記構成によれば、各BIST部の診断の実行タイミングを互いに異ならせていることから、各BIST部による診断の実行中に他のBIST部による診断の実行に伴い角度演算装置の動作状態がリセットされる状況の発生を抑制することができる。これにより、各BIST部が対象とする異常検出部の診断に関する信頼性を向上させることができる。したがって、角度演算装置による絶対角の演算の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、上述したのと同様に、第1センサ及び第2センサによる検出結果のサンプリングタイミングにおいてBIST部による診断の実行に伴い角度演算装置の動作状態がリセットされると、第1センサ及び第2センサによる検出結果のサンプリングが正しく実行されなくなる可能性がある。
【0013】
これに対処するべく、前記第1BIST部、前記第2BIST部、及び前記第3BIST部による診断の実行タイミングは、前記第1センサ及び前記第2センサによる検出結果のサンプリングタイミングと異なることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、各BIST部による診断の実行タイミングを、第1センサ及び第2センサによる検出結果のサンプリングタイミングと異ならせていることから、サンプリングタイミングにおいてBIST部による診断の実行に伴い角度演算装置の動作状態がリセットされる状況の発生を抑制することができる。これにより、第1センサ及び第2センサの検出結果のサンプリングに関する信頼性を向上させることができる。
【0015】
なお、第3異常検出部での異常の検出の際に用いる積算角及び絶対角は、モータの動作に応じて変化するものである。このため、積算角及び絶対角の変化は、互いに関連している。
【0016】
つまり、上記の角度演算装置において、前記第3異常検出部は、前記積算角の単位時間あたりの変化量と、前記絶対角の単位時間あたりの変化量とを用いて、前記第1演算回路及び前記第2演算回路の少なくとも一方の異常を検出することができる。
【0017】
上記の角度演算装置と前記機械装置としての転舵ユニットとを備える転舵装置において、前記転舵ユニットは、直線運動することにより転舵輪を転舵させる転舵シャフトと、前記転舵シャフトに噛み合わせられたピニオンシャフトと、前記転舵シャフトに付与される動力の発生源である転舵モータと、前記転舵モータが発生する動力を前記転舵シャフトに伝達する伝達機構とを有し、前記検出対象は、前記転舵モータに連動するように設けられている前記ピニオンシャフトである。
【0018】
上記構成によれば、転舵装置が上記の角度演算装置を備えていることにより、第1センサの検出結果及び第2センサの検出結果から、ピニオンシャフトの絶対角を求める必要がある場合には、演算されたピニオンシャフトの絶対角の信頼性を向上できる転舵装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、角度演算装置及び転舵装置による絶対角の演算の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】角度演算装置及び転舵装置の一実施形態が搭載される操舵装置の概略構成図。
図2】転舵制御部を示すブロック図。
図3】第1演算回路を示すブロック図。
図4】第2演算回路を示すブロック図。
図5】第3演算回路を示すブロック図。
図6】第1絶対角情報及び第2絶対角情報と第1ピニオンシャフトの絶対角との関係を示すグラフ。
図7】各BIST部による診断の実行タイミングと、サンプリングタイミングとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、角度演算装置及び転舵装置をステアバイワイヤ方式の操舵装置に搭載した一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、ステアリングホイール11に連結されたステアリングシャフト12を有している。ステアリングシャフト12におけるステアリングホイール11と反対側の端部には、第1ピニオンシャフト13が設けられている。第1ピニオンシャフト13の第1ピニオン歯13aは、第1ピニオンシャフト13に対して交わる方向へ延びる転舵シャフト14の第1ラック歯14aに噛み合わされている。転舵シャフト14の両端には、それぞれタイロッド15,15を介して左右の転舵輪16,16が連結されている。
【0022】
操舵装置10は、クラッチ21およびクラッチ制御部22を有している。
クラッチ21はステアリングシャフト12の途中に設けられている。クラッチ21としては、励磁コイルに対する通電の断続を通じて動力の断続を行う電磁クラッチが採用される。クラッチ21が切断されるとき、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間の動力伝達が切断される。クラッチ21が接続されるとき、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間の動力伝達が連結される。
【0023】
クラッチ制御部22は、クラッチ21の断続を制御する。クラッチ制御部22は、クラッチ21の励磁コイルに通電することによってクラッチ21を接続された状態から切断された状態へ切り替える。また、クラッチ制御部22は、クラッチ21の励磁コイルに対する通電を停止することによってクラッチ21を切断された状態から接続された状態へ切り替える。
【0024】
クラッチ21が接続された状態において、ステアリングシャフト12、第1ピニオンシャフト13、及び転舵シャフト14は、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間の動力伝達経路として機能する。すなわち、ステアリングホイール11の回転操作に伴い転舵シャフト14が直線運動することにより、転舵輪16,16の転舵角θtが変更される。
【0025】
操舵装置10は、操舵反力を生成するための構成として、反力モータ31、第1減速機構32、第1回転角センサ33、トルクセンサ34、及び反力制御部35を有している。操舵反力とは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用する力(トルク)をいう。操舵反力をステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
【0026】
反力モータ31は、操舵反力の発生源である。反力モータ31としては、たとえば3相(U相、V相、W相)のブラシレスモータが採用される。反力モータ31の回転軸は、第1減速機構32を介して、ステアリングシャフト12に連結されている。第1減速機構32は、反力モータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をステアリングシャフト12に伝達する。第1減速機構32は、ステアリングシャフト12におけるクラッチ21よりもステアリングホイール11側の部分に設けられている。反力モータ31のトルクは、操舵反力としてステアリングシャフト12に付与される。
【0027】
第1回転角センサ33は、反力モータ31に設けられている。第1回転角センサ33は、反力モータ31の回転軸の回転角を0度~360度の範囲で検出する相対角センサである。第1回転角センサ33は、反力モータ31の回転軸の回転角θaに応じた電気信号Saを生成する。第1回転角センサ33としては、たとえば磁気センサの一種であるMRセンサ(磁気抵抗効果センサ)が採用される。MRセンサは、転舵モータ41の出力軸の端部に設けられる一対の磁極(N極、S極)を有するバイアス磁石の磁界方向に応じた電気信号Saを生成する。電気信号Saは、反力モータ31の回転軸の回転角θaに対して正弦波状に変化する正弦波信号Ssin、及び反力モータ31の回転軸の回転角θaに対して余弦波状に変化する余弦波信号Scosを含んでいる。これら正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scosは、それぞれ転舵モータ41がバイアス磁石の1磁極対分に相当する角度(ここでは360度)だけ回転する期間を1周期とする信号である。
【0028】
トルクセンサ34は、ステアリングホイール11の回転操作を通じてステアリングシャフト12に加わる操舵トルクThを検出する。トルクセンサ34は、ステアリングシャフト12における第1減速機構32よりもステアリングホイール11側の部分に設けられている。
【0029】
反力制御部35は、反力モータ31の駆動制御を通じて操舵トルクThに応じた操舵反力を発生させる反力制御を実行する。反力制御部35は、トルクセンサ34を通じて検出される操舵トルクTh、及び車速センサ36を通じて検出される車速Vに基づいて目標操舵反力を演算し、この演算される目標操舵反力に基づいてステアリングホイール11の目標操舵角θ*を演算する。反力制御部35は、演算した目標操舵角θ*を転舵制御部47に出力する。反力制御部35は、第1回転角センサ33により生成される電気信号Saに基づき反力モータ31の回転角θaを演算し、当該演算される回転角θaに基づきステアリングホイール11の実際の操舵角θsを演算する。なお、反力モータ31とステアリングシャフト12とは第1減速機構32を介して連動する。このため、反力モータ31の回転軸の回転角θaとステアリングシャフト12の回転角との間には相関がある。また、ステアリングシャフト12の回転角と、ステアリングホイール11の回転角である操舵角θsとの間にも相関がある。したがって、操舵角θsは、反力モータ31の回転軸の回転角θaに基づいて求めることができる。反力制御部35は、第1回転角センサ33により生成される電気信号Saに基づいてステアリングホイール11の操舵角θsを演算する。そして、反力制御部35は、目標操舵角θ*と実際の操舵角θsとの偏差を求め、当該偏差を無くすように反力モータ31に対する給電を制御する。
【0030】
また、反力制御部35は、クラッチ接続条件の成否に基づきクラッチ21の断続を切り替える断続制御を実行する。クラッチ接続条件としては、例えば、つぎの(a)~(c)が挙げられる。
【0031】
a.車両の始動スイッチがオフされていること。なお、始動スイッチは、車両駆動源からの供給される電力の通電及び遮断を切り替えるスイッチである。始動スイッチのオンオフ状態を示す始動信号Sigは反力制御部35及び転舵制御部47に入力される。
【0032】
b.反力モータ31を含む操舵反力を発生させるための構成要素に異常が検出されること。
c.転舵モータ41を含む転舵力を発生させるための構成に異常が検出されること。
【0033】
反力制御部35は、クラッチ接続条件が成立するときにはクラッチ21を接続する旨の指令信号を生成する。一方、反力制御部35は、クラッチ接続条件が成立しないときにはクラッチ21を切断する旨の指令信号を生成する。クラッチ制御部22は、反力制御部35により生成される指令信号に基づきクラッチ21の断続を制御する。
【0034】
また、操舵装置10は、転舵輪16,16を転舵させるための動力である転舵力を生成するための構成として、転舵モータ41、第2減速機構42、第2ピニオンシャフト43、第2回転角センサ44、トルクアングルセンサ(以下、「TAS46」という。)、及び転舵制御部47を有している。なお、特許請求の範囲で記載した第1センサは、第2回転角センサ44である。
【0035】
なお、第2減速機構42および第2ピニオンシャフト43は、転舵モータ41が発生する動力を転舵シャフト14に伝達する伝達機構を構成する。第1ピニオンシャフト13、転舵シャフト14、転舵モータ41、第2減速機構42、第2ピニオンシャフト43、及び第2回転角センサ44は、機械装置としての転舵ユニットU2を構成する。また、転舵ユニットU2、TAS46、及び転舵制御部47は、転舵装置10bを構成する。
【0036】
転舵モータ41は転舵力の発生源である。転舵モータ41としては、たとえば3相(U相、V相、W相)のブラシレスモータが採用される。転舵モータ41の回転軸は、第2減速機構42を介して、第2ピニオンシャフト43に連結されている。第2減速機構42は、転舵モータ41の回転を減速し、当該減速した回転力をステアリングシャフト12に伝達する。第2ピニオンシャフト43の第2ピニオン歯43aは、転舵シャフト14の第2ラック歯14bに噛み合わされている。転舵モータ41のトルクは、転舵力として、第2ピニオンシャフト43を介して転舵シャフト14に付与される。転舵シャフト14は、転舵モータ41の回転に応じて、車幅方向(図中の左右方向)に沿って移動する。
【0037】
第2回転角センサ44は、転舵モータ41に設けられている。第2回転角センサ44は、転舵モータ41の回転軸の回転角を0度~360度の範囲で検出する相対角センサである。第2回転角センサ44は、転舵モータ41の回転軸の回転角θbに応じた電気信号Sbを生成する。第2回転角センサ44としては、例えばMRセンサが採用される。電気信号Sbは、転舵モータ41の回転軸の回転角θbに対して正弦波状に変化する正弦波信号Ssin、及び転舵モータ41の回転軸の回転角θbに対して余弦波状に変化する余弦波信号Scosを含んでいる。
【0038】
TAS46は、第1ピニオンシャフト13に作用するトルクTpを検出するとともに、第1ピニオンシャフト13の360度を超える多回転にわたる絶対位置であるピニオン角θpaを検出する絶対角センサである。TAS46は、第1ピニオンシャフト13(詳しくは、転舵シャフト14と共に第1ピニオンシャフト13を収容するハウジング)に設けられている。TAS46は、第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaを検出するための第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bと、第1ピニオンシャフト13に作用するトルクTpを検出するピニオントルクセンサ46cとを有している。第1ピニオンシャフト13の外周には、互いに歯数の異なる2つのギア部が噛み合わされている。第1ピニオンシャフト13の外周面には、第1ギア部及び第2ギア部に噛み合うギアが設けられている。第1ギア部の減速比と第2ギア部の減速比とは互いに異なる。第1ピニオン角センサ46aは、第1ピニオンシャフト13の回転に応じて回転する第1ギア部の回転角を0度~360度の範囲で検出する相対角センサである。第1ピニオン角センサ46aは、第1ギア部の回転角に応じた電気信号Sg1を生成する。電気信号Sg1は、第1ギア部の回転角に対して正弦波状に変化する正弦波信号Ssin、及び第1ギア部の回転角に対して余弦波状に変化する余弦波信号Scosを含んでいる。第2ピニオン角センサ46bは、第1ピニオンシャフト13の回転に応じて回転する第2ギア部の回転角を0度~360度の範囲で検出する相対角センサである。第2ピニオン角センサ46bは、第2ギア部の回転角に応じた電気信号Sg2を生成する。電気信号Sg2は、第2ギア部の回転角に対して正弦波状に変化する正弦波信号Ssin、及び第2ギア部の回転角に対して余弦波状に変化する余弦波信号Scosを含んでいる。第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bとしては、例えばMRセンサが採用される。なお、特許請求の範囲で記載した第2センサは、第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bである。
【0039】
転舵制御部47は、転舵モータ41の制御を通じて転舵輪16,16を操舵状態に応じて転舵させる転舵制御を実行する。転舵制御部47は、第2回転角センサ44を通じて検出される転舵モータ41の回転角θbに基づき第1ピニオンシャフト13の実際の回転角であるピニオン角θpa(絶対角)を演算する。なお、転舵モータ41と第2ピニオンシャフト43とは第2減速機構42を介して連動する。このため、転舵モータ41の回転軸の回転角θbと第2ピニオンシャフト43の回転角との間には相関がある。また、第2ピニオンシャフト43の第2ピニオン歯43aは転舵シャフト14の第2ラック歯14bに噛み合わされ、第1ピニオンシャフト13の第1ピニオン歯13aは転舵シャフト14の第1ラック歯14aに噛み合わされていることから、第2ピニオンシャフト43の回転角であるピニオン角θpbと第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaとの間には相関がある。したがって、ピニオン角θpaは、転舵モータ41の回転軸の回転角θbに基づいて求めることができる。転舵制御部47は、第2回転角センサ44により生成される電気信号Sbに基づいて第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaを演算する。また、転舵制御部47は、反力制御部35により演算される目標操舵角θ*を使用して目標ピニオン角を演算する。そして、転舵制御部47は、目標ピニオン角と実際のピニオン角θpaとの偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵モータ41に対する給電を制御する。
【0040】
転舵制御部47とTAS46との間の通信規格としては、たとえばSPI(Serial Peripheral Interface)が採用される。SPIは、同期式のシリアル通信の規格の一種である。
【0041】
また、転舵制御部47も先のクラッチ接続条件(a)~(c)の成否に基づきクラッチ21の断続を切り替える断続制御を実行する。転舵制御部47は、クラッチ接続条件が成立するときにはクラッチ21を接続する旨の指令信号を生成する一方、クラッチ接続条件が成立しないときにはクラッチを切断する旨の指令信号を生成する。この指令信号はクラッチ制御部22に対するものである。クラッチ制御部22は、反力制御部35から指令信号を取得できない場合には、転舵制御部47により生成される指令信号に基づきクラッチ21の断続を制御する。
【0042】
クラッチ21が接続状態にある場合、転舵制御部47は、TAS46のピニオントルクセンサ46cにより検出される第1ピニオンシャフト13に作用するトルクTpに基づいて、転舵モータ41の動作を制御することができる。この場合、転舵制御部47が運転者のステアリングホイール11の回転操作をアシストするアシスト制御を実行する。このような、転舵制御部47がアシスト制御を実行する場合としては、例えば、反力制御部35が動作を停止している場合が挙げられる。
【0043】
また、転舵制御部47も先のクラッチ接続条件(a)~(c)の成否に基づきクラッチ21の断続を切り替える断続制御を実行する。転舵制御部47は、クラッチ接続条件が成立するときにはクラッチ21を接続する旨の指令信号を生成する一方、クラッチ接続条件が成立しないときにはクラッチを切断する旨の指令信号を生成する。この指令信号はクラッチ制御部22に対するものである。クラッチ制御部22は、反力制御部35から指令信号を取得できない場合には、転舵制御部47により生成される指令信号に基づきクラッチ21の断続を制御する。
【0044】
転舵制御部47の機能について説明する。
図2に示すように、角度演算装置としての転舵制御部47は、第1演算回路50と、第2演算回路60と、第3演算回路70と、駆動回路80とを備えている。
【0045】
第1演算回路50は、電子回路やフリップフロップ等を組み合わせた論理回路を単一のチップにパッケージ化することにより構成したものである。第1演算回路50は、いわゆるASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)である。第1演算回路50は、特定の入力(ここでは、第2回転角センサ44の電気信号Sb)に対して定められた出力を行う。第1演算回路50は、第1接続線91を介して車両に搭載されたバッテリ90に常時接続されるとともに、途中に電源リレー92が設けられた第2接続線93を介してバッテリ90に接続されている。電源リレー92としては、機械式リレーやFET(電界効果型トランジスタ)等が採用されている。電源リレー92は、始動信号Sigに応じて開閉する。すなわち、始動スイッチがオンされている場合、言い換えるとオン状態である旨示す始動信号Sigが電源リレー92に入力される場合、バッテリ90と第1演算回路50との間で電源リレー92を通じて電力が通電される。始動スイッチがオフされている場合、言い換えるとオフ状態である旨示す始動信号Sigが電源リレー92に入力される場合、バッテリ90と第1演算回路50との間で電源リレー92を通じて電力が遮断される。また、第1演算回路50には、第2回転角センサ44により生成された電気信号Sbが入力される。第1演算回路50は、電気信号Sbに基づいて、後述するように転舵モータ41のマルチターン数(多回転数)を示す回転数情報としてのカウント値Cを第3演算回路70に出力する。
【0046】
第1演算回路50は、バッテリ90の電源電圧を所定電圧範囲内の制御電圧Vcoに降圧する電源回路100を備えている。電源回路100には、第1接続線91及び第2接続線93が接続されている。電源回路100には、接続線100aを介して第3演算回路70及び第2演算回路60が接続されている。電源回路100は、第3演算回路70及び第2演算回路60に制御電圧Vcoを印加する。
【0047】
駆動回路80は、途中に駆動リレー95が設けられた電源線94を介してバッテリ90に接続されている。駆動リレー95としては、機械式リレーやFET(電界効果型トランジスタ)等が採用されている。
【0048】
第3演算回路70は、第1演算回路50を介してバッテリ90に接続されている。第3演算回路70は、始動スイッチがオン状態である場合、第1演算回路50から所定電圧範囲内の制御電圧Vcoが供給されることで動作する。第3演算回路70は、第1演算回路50から制御電圧Vcoが供給されることで動作を開始すると、駆動リレー95にリレー信号Srlを出力する。駆動リレー95は、第3演算回路70から出力されるリレー信号Srlに応じて開閉する。リレー信号Srlに基づいて駆動リレー95が閉状態となることにより、転舵モータ41に駆動電力が供給可能な状態となる。
【0049】
第2演算回路60は、電子回路やフリップフロップ等を組み合わせた論理回路を単一のチップにパッケージ化することにより構成したものである。第2演算回路60は、いわゆるASICである。第2演算回路60は、特定の入力(ここでは、第1ピニオン角センサ46aの電気信号Sg1及び第2ピニオン角センサ46bの電気信号Sg2)に対して定められた出力を行う。第2演算回路60は、始動スイッチがオン状態である場合、第1演算回路50から所定電圧範囲内の制御電圧Vcoが供給されることで動作する。また、第2演算回路60には、第1ピニオン角センサ46aにより生成された電気信号Sg1及び第2ピニオン角センサ46bにより生成された電気信号Sg2が入力される。第2演算回路60は、電気信号Sg1及び電気信号Sg2に基づいて、後述するように第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaを演算するための絶対角情報である第1絶対角情報θg1及び第2絶対角情報θg2を演算し、これら第1絶対角情報θg1及び第2絶対角情報θg2を第3演算回路70に出力する。
【0050】
第3演算回路70は、制御電圧Vcoが供給される場合、第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaを演算するとともに、転舵モータ41に供給される電力を制御する。第3演算回路70は、例えばマイクロプロセッシングユニット(マイコン)等からなる。第3演算回路70には、第1演算回路50及び第2演算回路60が接続されている。第3演算回路70には、第1演算回路50により演算されたカウント値Cと、第2演算回路60により演算された第1絶対角情報θg1及び第2絶対角情報θg2とが入力される。また、第3演算回路70には、第2回転角センサ44により生成された電気信号Sbと、車速センサ36により検出された車速Vと、反力制御部35により演算された目標操舵角θ*と、電流センサ81により検出された実電流値Iと、ピニオントルクセンサ46cにより検出されたトルクTpが入力される。電流センサ81は、転舵モータ41と駆動回路80との間の給電経路に設けられている。第3演算回路70は、これらの各種の入力値に基づいて、転舵モータ41の駆動に必要なモータ制御信号Smを演算する。第3演算回路70は、演算したモータ制御信号Smを駆動回路80に出力する。
【0051】
第1演算回路50の機能について説明する。
図3に示すように、第1演算回路50は、電源回路100と、カウンタ回路101と、通信インターフェース102とを備えている。
【0052】
図2及び図3に示すように、電源回路100には、接続線100aを介して第3演算回路70及び第2演算回路60が接続されているとともに、第1演算回路50を構成する各回路が接続されている。なお、図3では、便宜上、電源回路100と第1演算回路50を構成する各回路とを接続する接続線を省略している。電源回路100は、始動スイッチがオン状態である場合にのみ、第3演算回路70及び第2演算回路60に制御電圧Vcoを供給する一方、始動スイッチのオン状態及びオフ状態に関係なく第1演算回路50を構成する各回路に制御電圧Vcoを常時供給する。これにより、第1演算回路50を構成する各回路は、始動スイッチがオン状態である場合だけでなく、オフ状態である場合においても動作する。また、電源回路100は、始動スイッチのオン状態及びオフ状態に関係なく第2回転角センサ44に当該第2回転角センサ44が動作に必要な動作電圧を常時供給する。
【0053】
図3に示すように、カウンタ回路101には、第2回転角センサ44により生成される電気信号Sbが入力される。カウンタ回路101は、電気信号Sbに基づいて、転舵モータ41のマルチターンの回転角を演算するために用いるカウント値Cを演算する。カウント値Cは、転舵モータ41のマルチターン数を示す回転数情報である。本実施形態では、カウント値Cは、転舵モータ41の回転軸の回転位置がその基準位置に対して何回転しているかを示す情報である。
【0054】
カウンタ回路101は、カウンタ部101a、カウンタ異常検出部108、及びカウンタBIST部110を備えている。カウンタ部101aは、増幅器103、コンパレータ104、象限判定部105、及びカウント値演算部106を備えている。
【0055】
増幅器103には、第2回転角センサ44により生成される電気信号Sbが入力される。増幅器103は、第2回転角センサ44から入力された電気信号Sbを増幅し、コンパレータ104に出力する。
【0056】
コンパレータ104は、増幅器103で増幅後の電気信号Sbが、設定された閾値以上の値であればHiレベル、閾値未満の値であればLoレベルの信号を生成する。この閾値は、例えば「0」に設定される。
【0057】
象限判定部105は、コンパレータ104により生成されるHiレベルの信号とLoレベルの信号とに基づいて、転舵モータ41の回転軸の回転位置が存在する象限を示す情報である象限情報を生成する。転舵モータ41の回転軸の1回転(360度)は、電気信号Sbの正負の組み合わせから90度ごとに4つの象限に分割されている。象限判定部105は、象限情報が示す転舵モータ41の回転軸の回転位置が存在する象限の変化に基づいて、左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrを生成する。象限判定部105は、転舵モータ41の回転軸の回転位置が存在する象限が隣接する象限に変化するたびに、単位回転量(90度)の回転がなされたものとする。象限判定部105は、転舵モータ41の回転軸の回転位置が転舵モータ41の回転の前に存在していた象限と転舵モータの回転の後に存在している象限との関係から、転舵モータ41の回転軸の回転方向を特定する。
【0058】
カウント値演算部106は、象限判定部105から取得した左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrに基づいて、カウント値Cを演算する。カウント値演算部106は、フリップフロップ等を組み合わせた論理回路である。カウント値Cは、転舵モータ41の回転軸の回転位置が、その基準位置に対して、単位回転量(90度)だけ回転した回数を示している。カウント値演算部106は、象限判定部105から左回転フラグFlを取得する度にインクリメント(カウント値Cを1加算)し、象限判定部105から右回転フラグFrを取得する度にデクリメント(カウント値Cを1減算)する。このように、カウント値演算部106は、第2回転角センサ44から電気信号Sbが生成される度にカウント値Cを演算し、そのカウント値Cを記憶することができるように構成されている。カウント値演算部106によって演算されたカウント値Cは、通信インターフェース102に出力される。
【0059】
通信インターフェース102は、始動スイッチがオン状態である場合に動作するように構成されているとともに、始動スイッチがオフ状態である場合に動作しないように構成されている。通信インターフェース102は、カウント値Cが入力されると、当該カウント値Cを第3演算回路70に出力する。
【0060】
また、第1演算回路50には、電源回路100の異常を検出する電圧異常検出部107及びカウント値演算部106の異常を検出するカウンタ異常検出部108が設けられている。電圧異常検出部107はカウンタ回路101の機能と別個の機能として設けられるとともに、カウンタ異常検出部108はカウンタ回路101の機能の一つとして設けられている。なお、特許請求の範囲で記載した第1異常検出部は、電圧異常検出部107及びカウンタ異常検出部108である。
【0061】
電圧異常検出部107は、電源回路100から出力される制御電圧Vcoが所定電圧範囲内にあるか否かに基づいて、電源回路100の異常を検出する。具体的には、電圧異常検出部107は、電源回路100から出力される制御電圧Vcoを検出し、当該制御電圧Vcoが所定電圧範囲の上限値よりも大きいか否か、及び所定電圧範囲の下限値よりも小さいか否かに基づいて、電源回路100の異常の有無を検出する。電圧異常検出部107は、制御電圧Vcoが所定電圧範囲の上限値よりも大きい場合、あるいは所定電圧範囲の下限値よりも小さい場合には、電源回路100に異常ありの検出結果を示す電圧異常フラグFbを生成する。一方、電圧異常検出部107は、制御電圧Vcoが所定電圧範囲の上限値以下、かつ所定電圧範囲の下限値以上である場合、電圧異常フラグFbを生成しない。電圧異常検出部107によって生成された電圧異常フラグFbは、通信インターフェース102に出力される。
【0062】
カウンタ異常検出部108は、カウント値演算部106の出力値であるカウント値Cを連続する2回の演算周期分保持できるように構成されている。すなわち、カウンタ異常検出部108は、最新(今回)の演算周期のカウント値Cであるカウント今回値Cnと、1つ前(前回)の演算周期のカウント値Cであるカウント前回値Cn-1とを保持する。そして、カウンタ異常検出部108は、象限判定部105により取得される左回転フラグFlあるいは右回転フラグFr、カウント今回値Cn、及びカウント前回値Cn-1に基づいて、カウント値演算部106の異常を判定する。具体的には、カウンタ異常検出部108は、カウント今回値Cnとカウント前回値Cn-1との差が、象限判定部105により取得される左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrに示される転舵モータ41の回転方向に即していない場合、カウント値演算部106に異常ありの検出結果を示すカウンタ異常フラグFcを生成する。例えば、カウンタ異常検出部108は、転舵モータ41が回転していない場合に、カウント今回値Cnとカウント前回値Cn-1との差が所定範囲内でなければ、カウンタ異常フラグFcを生成する。一方、カウンタ異常検出部108は、転舵モータ41が回転していない場合に、カウント今回値Cnとカウント前回値Cn-1との差が所定範囲内であれば、カウンタ異常フラグFcを生成しない。また、カウンタ異常検出部108は、転舵モータ41が回転している場合に、カウント今回値Cnとカウント前回値Cn-1との差が左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrに示される転舵モータ41の回転方向に即していれば、カウンタ異常フラグFcを生成しない。一方、カウンタ異常検出部108は、転舵モータ41が回転している場合に、カウント今回値Cnとカウント前回値Cn-1との差が左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrに示される転舵モータ41の回転方向に即していないとき、カウンタ異常フラグFcを生成する。カウンタ異常検出部108によって生成されたカウンタ異常フラグFcは、通信インターフェース102に出力される。
【0063】
ここで、電圧異常検出部107に異常が発生すると、電圧異常検出部107の異常の検出対象、すなわち電源回路100の異常を検出することができなくなる。また、カウンタ異常検出部108に異常が発生すると、カウンタ異常検出部108の異常の検出対象、すなわちカウント値演算部106の異常を検出できなくなる。
【0064】
そこで、本実施形態の第1演算回路50には、電圧異常検出部107及びカウンタ異常検出部108を診断するBIST(Built-in Self-test)部が設けられている。詳しくは、電圧異常検出部107を診断する電源BIST部109がカウンタ回路101の機能とは別個の機能として設けられているとともに、カウンタ異常検出部108を診断するカウンタBIST部110がカウンタ回路101の機能の一つとして設けられている。なお、特許請求の範囲で記載した第1BIST部は、カウンタBIST部110である。
【0065】
電源BIST部109は、電圧異常検出部107の診断の際、当該電圧異常検出部107が制御電圧Vcoの異常を検出するために想定している所定電圧範囲の上限値を変更し、電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成する状況を強制的に作り出すように動作する。そして、電源BIST部109は、電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成したか否かに基づいて当該電圧異常検出部107を診断する。この診断において、電源BIST部109は、電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成しない場合に当該電圧異常検出部107が異常であるとする診断結果を示す電源BIST異常フラグF1を生成する。一方、電源BIST部109は、電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成する場合に電源BIST異常フラグF1を生成しない。電源BIST部109によって生成された電源BIST異常フラグF1は、通信インターフェース102に出力される。
【0066】
カウンタBIST部110は、カウンタ異常検出部108の診断の際、異常の検出結果を導出するように規定された左回転フラグFl、右回転フラグFr、及びカウント値Cを示すテスト信号を当該カウンタ異常検出部108に対して出力し、カウンタ異常検出部108がカウンタ異常フラグFcを生成する状況を強制的に作り出すように動作する。そして、カウンタBIST部110は、カウンタ異常検出部108がカウンタ異常フラグFcを生成したか否かに基づいて当該カウンタ異常検出部108を診断する。この診断において、カウンタBIST部110は、カウンタ異常検出部108がカウンタ異常フラグFcを生成しない場合に当該カウンタ異常検出部108が異常であるとする診断結果を示すカウンタBIST異常フラグF1aを生成する。一方、カウンタBIST部110は、カウンタ異常検出部108がカウンタ異常フラグFcを生成する場合にカウンタBIST異常フラグF1aを生成しない。カウンタBIST部110によって生成されたカウンタBIST異常フラグF1aは、通信インターフェース102に出力される。
【0067】
通信インターフェース102は、電圧異常フラグFb、カウンタ異常フラグFc、電源BIST異常フラグF1、及びカウンタBIST異常フラグF1aが入力されると、これらフラグを第3演算回路70に出力する。
【0068】
第2演算回路60の機能について説明する。
図4に示すように、第2演算回路60は、第1絶対角情報θg1を演算して出力する第1絶対角情報演算回路120と、第2絶対角情報θg2を演算して出力する第2絶対角情報演算回路130とが設けられている。
【0069】
第1絶対角情報演算回路120には、第1絶対角情報演算部121、第1絶対角情報異常検出部122、第1絶対角情報BIST部123、及び通信インターフェース124が設けられている。第1絶対角情報演算部121は、増幅器125及びA/D変換器126(アナログ/デジタル変換器)からなる。
【0070】
増幅器125は、第1ピニオン角センサ46aにより生成される電気信号Sg1が入力される。増幅器125は、第1ピニオン角センサ46aから入力された電気信号Sg1を増幅し、A/D変換器126に出力する。
【0071】
A/D変換器126は、増幅器125で増幅後の電気信号Sg1(アナログ信号)をデジタル信号に変換して、第1絶対角情報θg1として出力する。
通信インターフェース124は、始動スイッチがオン状態である場合に動作するように構成されているとともに、始動スイッチがオフ状態である場合に動作しないように構成されている。通信インターフェース124は、第1絶対角情報θg1が入力されると、当該第1絶対角情報θg1を第3演算回路70に出力する。
【0072】
第2絶対角情報演算回路130には、第2絶対角情報演算部131、第2絶対角情報異常検出部132、第2絶対角情報BIST部133、及び通信インターフェース134が設けられている。第2絶対角情報演算部131は、増幅器135及びA/D変換器136からなる。なお、特許請求の範囲で記載した絶対位置情報演算部は、第1絶対角情報演算部121及び第2絶対角情報演算部131である。
【0073】
増幅器135は、第2ピニオン角センサ46bにより生成される電気信号Sg2が入力される。増幅器135は、第2ピニオン角センサ46bから入力された電気信号Sg2を増幅し、A/D変換器136に出力する。
【0074】
A/D変換器136は、増幅器135で増幅後の電気信号Sg2(アナログ信号)をデジタル信号に変換して、第2絶対角情報θg2として出力する。
通信インターフェース134は、始動スイッチがオン場合に動作するように構成されているとともに、始動スイッチがオフ状態である場合に動作しないように構成されている。通信インターフェース134は、第2絶対角情報θg2が入力されると、当該第2絶対角情報θg2を第3演算回路70に出力する。
【0075】
第2演算回路60には、第1絶対角情報演算部121の異常を検出する第1絶対角情報異常検出部122及び第2絶対角情報演算部131の異常を検出する第2絶対角情報異常検出部132が設けられている。第1絶対角情報異常検出部122は、第1絶対角情報演算部121の機能と別個の機能として設けられている。また、第2絶対角情報異常検出部132は、第2絶対角情報演算部131の機能と別個の機能として設けられている。なお、特許請求の範囲で記載した第2異常検出部は、第1絶対角情報異常検出部122及び第2絶対角情報異常検出部132である。
【0076】
第1絶対角情報異常検出部122は、A/D変換器126からの出力値である第1絶対角情報θg1を連続する2回の演算周期分保持することができるように構成されている。すなわち、第1絶対角情報異常検出部122は、最新(今回)の演算周期の第1絶対角情報θg1と、一つ前(前回)の演算周期の第1絶対角情報θg1とを保持する。また、第1絶対角情報異常検出部122は、前回の演算周期の第1絶対角情報θg1、今回の演算周期の第1絶対角情報θg1、及び電気信号Sg1に基づいて、第1絶対角情報演算部121の異常を判定する。具体的には、第1絶対角情報異常検出部122は、前回の演算周期の第1絶対角情報θg1と今回の演算周期の第1絶対角情報θg1との差が、電気信号Sg1から求められる転舵モータ41の回転方向に即していない場合、第1絶対角情報演算部121に異常ありの検出結果を示す第1絶対角情報異常フラグFaaを生成する。例えば、第1絶対角情報異常検出部122は、転舵モータ41が回転していない場合に、前回の演算周期の第1絶対角情報θg1と今回の演算周期の第1絶対角情報θg1との差が所定範囲内でなければ、第1絶対角情報異常フラグFaaを生成する。一方、第1絶対角情報異常検出部122は、転舵モータ41が回転していない場合に、前回の演算周期の第1絶対角情報θg1と今回の演算周期の第1絶対角情報θg1との差が所定範囲内であれば、第1絶対角情報異常フラグFaaを生成しない。また、第1絶対角情報異常検出部122は、転舵モータ41が回転している場合に、前回の演算周期の第1絶対角情報θg1と今回の演算周期の第1絶対角情報θg1との差が電気信号Sg1から求められる転舵モータ41の回転方向に即していれば、第1絶対角情報異常フラグFaaを生成しない。一方、第1絶対角情報異常検出部122は、転舵モータ41が回転している場合に、前回の演算周期の第1絶対角情報θg1と今回の演算周期の第1絶対角情報θg1との差が電気信号Sg1から求められる転舵モータ41の回転方向に即していないとき、第1絶対角情報異常フラグFaaを生成する。第1絶対角情報異常検出部122によって生成された第1絶対角情報異常フラグFaaは、通信インターフェース124に出力される。
【0077】
第2絶対角情報異常検出部132は、A/D変換器136からの出力値である第2絶対角情報θg2を連続する2回の演算周期分保持することができるように構成されている。すなわち、第2絶対角情報異常検出部132は、最新(今回)の演算周期の第2絶対角情報θg2と、一つ前(前回)の演算周期の第2絶対角情報θg2とを保持する。また、第2絶対角情報異常検出部132は、前回の演算周期の第2絶対角情報θg2、今回の演算周期の第2絶対角情報θg2、及び電気信号Sg2に基づいて、第2絶対角情報演算部131の異常を判定する。具体的には、第2絶対角情報異常検出部132は、前回の演算周期の第2絶対角情報θg2と今回の演算周期の第2絶対角情報θg2との差が、電気信号Sg2から求められる転舵モータ41の回転方向に即していない場合、第2絶対角情報演算部131に異常ありの検出結果を示す第2絶対角情報異常フラグFabを生成する。例えば、第2絶対角情報異常検出部132は、転舵モータ41が回転していない場合に、前回の演算周期の第2絶対角情報θg2と今回の演算周期の第2絶対角情報θg2との差が所定範囲内でなければ、第2絶対角情報異常フラグFabを生成する。一方、第2絶対角情報異常検出部132は、転舵モータ41が回転していない場合に、前回の演算周期の第2絶対角情報θg2と今回の演算周期の第2絶対角情報θg2との差が所定範囲内であれば、第2絶対角情報異常フラグFabを生成しない。また、第2絶対角情報異常検出部132は、転舵モータ41が回転している場合に、前回の演算周期の第2絶対角情報θg2と今回の演算周期の第2絶対角情報θg2との差が電気信号Sg2から求められる転舵モータ41の回転方向に即していれば、第2絶対角情報異常フラグFabを生成しない。一方、第2絶対角情報異常検出部132は、転舵モータ41が回転している場合に、前回の演算周期の第2絶対角情報θg2と今回の演算周期の第2絶対角情報θg2との差が電気信号Sg2から求められる転舵モータ41の回転方向に即していないとき、第2絶対角情報異常フラグFabを生成する。第2絶対角情報異常検出部132によって生成された第2絶対角情報異常フラグFabは、通信インターフェース134に出力される。
【0078】
ここで、第1絶対角情報異常検出部122に異常が発生すると、第1絶対角情報異常検出部122の異常の検出対象、すなわち第1絶対角情報演算部121の異常を検出することができなくなる。また、第2絶対角情報異常検出部132に異常が発生すると、第2絶対角情報異常検出部132の異常の検出対象、すなわち第2絶対角情報演算部131の異常を検出することができなくなる。
【0079】
そこで、本実施形態の第2演算回路60には、第1絶対角情報異常検出部122を診断する第1絶対角情報BIST部123が第1絶対角情報演算部121の機能とは別個の機能として設けられているとともに、第2絶対角情報異常検出部132を診断する第2絶対角情報BIST部133が第2絶対角情報演算部131の機能とは別個の機能として設けられている。なお、特許請求の範囲で記載した第2BIST部は、第1絶対角情報BIST部123及び第2絶対角情報BIST部133である。
【0080】
第1絶対角情報BIST部123は、第1絶対角情報異常検出部122の診断の際、異常の検出結果を導出するように規定された転舵モータ41の回転方向及び第1絶対角情報θg1を示すテスト信号を当該第1絶対角情報異常検出部122に対して出力し、第1絶対角情報異常検出部122が第1絶対角情報異常フラグFaaを生成する状況を強制的に作り出すように動作する。そして、第1絶対角情報BIST部123は、第1絶対角情報異常検出部122が第1絶対角情報異常フラグFaaを生成したか否かに基づいて当該第1絶対角情報異常検出部122を診断する。この診断において、第1絶対角情報BIST部123は、第1絶対角情報異常検出部122が第1絶対角情報異常フラグFaaを生成しない場合に当該第1絶対角情報異常検出部122が異常であるとする診断結果を示す第1絶対角情報BIST異常フラグF2aを生成する。一方、第1絶対角情報BIST部123は、第1絶対角情報異常検出部122が第1絶対角情報異常フラグFaaを生成する場合に第1絶対角情報BIST異常フラグF2aを生成しない。第1絶対角情報BIST部123によって生成された第1絶対角情報BIST異常フラグF2aは、通信インターフェース124に出力される。
【0081】
通信インターフェース124は、第1絶対角情報異常フラグFaa及び第1絶対角情報BIST異常フラグF2aが入力されると、これらフラグを第3演算回路70に出力する。
【0082】
第2絶対角情報BIST部133は、第2絶対角情報異常検出部132の診断の際、異常の検出結果を導出するように規定された転舵モータ41の回転方向及び第2絶対角情報θg2を示すテスト信号を当該第2絶対角情報異常検出部132に対して出力し、第2絶対角情報異常検出部132が第2絶対角情報異常フラグFabを生成する状況を強制的に作り出すように動作する。そして、第2絶対角情報BIST部133は、第2絶対角情報異常検出部132が第2絶対角情報異常フラグFabを生成したか否かに基づいて当該第2絶対角情報異常検出部132を診断する。この診断において、第2絶対角情報BIST部133は、第2絶対角情報異常検出部132が第2絶対角情報異常フラグFabを生成しない場合に当該第2絶対角情報異常検出部132が異常であるとする診断結果を示す第2絶対角情報BIST異常フラグF2bを生成する。一方、第2絶対角情報BIST部133は、第2絶対角情報異常検出部132が第2絶対角情報異常フラグFabを生成する場合に第2絶対角情報BIST異常フラグF2bを生成しない。第2絶対角情報BIST部133によって生成された第2絶対角情報BIST異常フラグF2bは、通信インターフェース134に出力される。
【0083】
通信インターフェース124は、第1絶対角情報異常フラグFaa及び第1絶対角情報BIST異常フラグF2aが入力されると、これらフラグを第3演算回路70に出力する。
【0084】
第3演算回路70の機能について説明する。
図5に示すように、第3演算回路70は、積算角演算部140、絶対角演算部141、絶対角出力部143、転舵角指令値演算部144、電流フィードバック制御部145、第3異常検出部としての絶対角異常検出部146、第3BIST部としての絶対角BIST部147、及びBIST制御部148を備えている。
【0085】
積算角演算部140は、第1演算回路50により演算されたカウント値C、及び第2回転角センサ44により生成された電気信号Sbを取得する。本実施形態において、積算角演算部140は、始動スイッチがオン状態となる度に、第1演算回路50により演算されるカウント値Cを取得する。積算角演算部140は、始動スイッチがオン状態である間、始動スイッチがオン状態となる場合に取得したカウント値Cを、第2回転角センサ44により生成された電気信号Sbの象限の変化に基づいて所定の演算周期で更新する。積算角演算部140は、電気信号Sbの象限が反時計回り方向に隣接する象限に変化する毎にカウント値Cをインクリメント(カウント値Cを1加算)して更新する。積算角演算部140は、電気信号Sbの象限が時計回り方向に隣接する象限に変化する毎にカウント値Cをデクリメント(カウント値Cを1減算)して更新する。すなわち、本実施形態において、第3演算回路70は、始動スイッチがオン状態である間、第1演算回路50とは別にカウント値Cを更新している。
【0086】
また、第3演算回路70の積算角演算部140は、第2回転角センサ44により生成された電気信号Sbを所定の演算周期で取得する。積算角演算部140は、取得したカウント値C及び電気信号Sbに基づいて、転舵モータ41のマルチターンの回転角を積算した値から積算角θiを絶対角で演算する。積算角θiは、転舵モータ41の回転角を相対角で積算した値である。詳しくは、積算角演算部140は、第2回転角センサ44により生成される電気信号Sbからアークタンジェントを求めることにより、転舵モータ41の回転角を相対角として求める。この求めた相対角は、転舵モータ41の回転角を0度~360度の範囲内で表したものである。そして、積算角演算部140は、求めた相対角に対して、カウント値Cに基づいた転舵モータ41の回転軸のマルチターン数に360度を乗算した値を加算することにより、転舵モータ41の回転角を積算した値として積算角θiを求める。なお、転舵モータ41と第1ピニオンシャフト13との間に介在される部材の減速比等を考慮して、転舵モータ41のマルチターンの回転角を積算した値から第1ピニオンシャフト13の絶対角を求めることができる。
【0087】
絶対角演算部141は、第2演算回路60の第1絶対角情報演算回路120により演算された第1絶対角情報θg1及び第2演算回路60の第2絶対角情報演算回路130により演算された第2絶対角情報θg2を取得する。絶対角演算部141は、第1絶対角情報θg1及び第2絶対角情報θg2に基づいて、第1ピニオンシャフト13の絶対角θgaを演算する。詳しくは、絶対角演算部141は、第1絶対角情報θg1からアークタンジェントを求めた値、及び第2絶対角情報θg2からアークタンジェントを求めた値を用いて、第1ピニオンシャフト13の絶対角θgaを演算する。絶対角演算部141による絶対角θgaの演算を、図6を参照して説明する。
【0088】
図6に示すグラフの縦軸は第1絶対角情報θg1及び第2絶対角情報θg2を示し、横軸は第1ピニオンシャフト13の絶対角θgaを示している。破線は第1絶対角情報θg1の遷移を示し、実線は第2絶対角情報θg2の遷移を示している。なお、第1ピニオン角センサ46aの電気信号Sg1及び第2ピニオン角センサ46bの電気信号Sg2は、それぞれ同じ軸倍角(1倍)である。そして、TAS46の第1ギア部の減速比とTAS46の第2ギア部の減速比との違いにより、破線で示す第1絶対角情報θg1の波形の位相及び実線で示す第2絶対角情報θg2の波形の位相は、第1ピニオンシャフト13の回転とともにずれていく。第1絶対角情報θg1と第2絶対角情報θg2とは、それぞれ第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bの検出範囲の回転角(0度~360度)である。このため、第1絶対角情報θg1のみ、あるいは第2絶対角情報θg2のみだけでは、第1ピニオンシャフト13のマルチターンの回転角である絶対角θgaを求めることはできない。
【0089】
絶対角演算部141は、第1絶対角情報θg1と第2絶対角情報θg2との角度差の絶対値を演算する。図6のグラフの太線は、第1絶対角情報θg1と第2絶対角情報θg2との角度差の絶対値を示している。図6に示すように、絶対角θgaが大きくなるほど、角度差の絶対値は絶対角θgaに比例して大きくなる。絶対角演算部141は、第1絶対角情報θg1と第2絶対角情報θg2との角度差の絶対値に対する絶対角θgaの関係を示すマップを記憶している。このため、絶対角演算部141は、第1絶対角情報θg1と第2絶対角情報θg2との角度差の絶対値から絶対角θgaを演算することができる。
【0090】
図5に示すように、絶対角出力部143は、積算角演算部140により演算された積算角θi、絶対角演算部141により演算された絶対角θga、及び絶対角異常検出部146により生成された絶対角異常検出フラグFaを取得する。絶対角出力部143は、絶対角θgaから転舵モータ41におけるモータ中点を演算する。モータ中点とは、車両の直進状態におけるステアリングホイール11の操舵中立位置、あるいは転舵シャフト14の転舵中立位置に対応する転舵モータ41の回転角θbをいう。絶対角出力部143は、絶対角異常検出フラグFaが入力されていない場合、転舵モータ41のモータ中点及び積算角θiに基づき、第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaを絶対角で演算する。すなわち、絶対角出力部143は、転舵モータ41のモータ中点を基準点として、基準点からの転舵モータ41の積算角θiの変化量に基づき、転舵モータ41の回転角θbを360度を超える範囲の絶対角で演算し、この演算される回転角θb(絶対角)に基づきピニオン角θpaを絶対角で演算する。転舵モータ41の回転角θbと第1ピニオンシャフト13の回転角との間には相関があることから、絶対角出力部143は、転舵モータ41の回転角θb(絶対角)に基づき第2ピニオンシャフト43のピニオン角θpaを絶対角で求めることができる。絶対角出力部143は、絶対角異常検出フラグFaが入力されていない場合、このピニオン角θpaを出力する。一方、絶対角出力部143は、絶対角異常検出フラグFaが入力されている場合、絶対角θgaをピニオン角θpaとして出力する。
【0091】
転舵角指令値演算部144は、絶対角出力部143からのピニオン角θpa、反力制御部35により演算された目標操舵角θ*、及び車速センサ36により検出された車速Vを取得する。転舵角指令値演算部144は、車両の走行状態(具体的には車速V)に応じて操舵角θsに対する転舵角θtの比である舵角比を設定する。転舵角指令値演算部144は、設定した舵角比を実現するために、反力制御部35により演算された目標操舵角θ*に対する補正角度を演算し、この演算される補正角度を目標操舵角θ*に加算することにより舵角比に応じた目標角を演算する。転舵角指令値演算部144は、この目標角を第1ピニオンシャフト13の回転角に対応した値である目標ピニオン角に変換する。転舵角指令値演算部144は、第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaを、目標操舵角θ*に基づいて演算された目標ピニオン角に追従させるべく、角度フィードバック制御(例えばPID制御)をすることにより、電流指令値I*を演算する。
【0092】
電流フィードバック制御部145は、転舵モータ41への給電経路に設けられた電流センサ81を通じて、転舵モータ41に実際に供給される実電流値Iを取得する。また、電流フィードバック制御部145は、第2回転角センサ44を通じて、電気信号Sbを取得する。電流フィードバック制御部145は、電気信号Sb及び実電流値Iに基づいて、当該実電流値Iを電流指令値I*に追従させるべく電流フィードバック制御を実行することにより、モータ制御信号Smを生成し、PWM信号として駆動回路80に対して出力する。
【0093】
駆動回路80は、3相(U相、V相、W相)の駆動回路である。駆動回路80は、モータ制御信号Smに基づいて、自身を構成するスイッチング素子をオンオフすることにより、図示しないバッテリから供給される直流電力を3相交流電力に変換する。駆動回路80は、当該3相交流電力を転舵モータ41に供給する。
【0094】
絶対角異常検出部146は、積算角演算部140により演算された積算角θi及び絶対角演算部141により演算された絶対角θgaを取得する。絶対角異常検出部146は、積算角θiと絶対角θgaとの比較に基づいて第1演算回路50の異常を検出する。具体的には、絶対角異常検出部146は、積算角演算部140の出力値である積算角θi及び絶対角演算部141の出力値である絶対角θgaを連続する2回の演算周期分保持することができるように構成されている。すなわち、絶対角異常検出部146は、最新(今回)の演算周期の積算角θi及び絶対角θgaと、一つ前(前回)の演算周期の積算角θi及び絶対角θgaとを保持する。絶対角異常検出部146は、今回の演算周期の積算角θiと前回の演算周期の積算角θiとの偏差に基づいて積算角θiの単位時間(1回の演算周期)あたりの変化量を演算する。また、絶対角異常検出部146は、今回の演算周期の絶対角θgaと前回の演算周期の絶対角θgaとの偏差に基づいて絶対角θgaの単位時間(1回の演算周期)あたりの変化量を演算する。絶対角異常検出部146は、積算角θiの変化量(詳しくは、を第1ピニオンシャフト13の回転角の変化量に換算した値)と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値以下であるか否かに基づいて、第1演算回路50の異常を検出する。絶対角異常検出部146は、積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値を超える場合、第1演算回路50に異常ありの検出結果を示す絶対角異常検出フラグFaを生成する。一方、絶対角異常検出部146は、積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値以下である場合、絶対角異常検出フラグFaを生成しない。なお、積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値を超える場合には、第2演算回路60を信頼して、第1演算回路50に異常が発生しているものとする。
【0095】
ここで、絶対角異常検出部146に異常が発生すると、絶対角異常検出部146の異常の検出対象、すなわち第1演算回路50が異常であることを検出することができなくなる。そこで、本実施形態では、絶対角異常検出部146を診断する絶対角BIST部147が設けられている。
【0096】
絶対角BIST部147は、絶対角異常検出部146の診断の際、異常の検出結果を導出するように規定された積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量を示すテスト信号を当該絶対角異常検出部146に対して出力し、絶対角異常検出部146が絶対角異常検出フラグFaを生成する状況を強制的に作り出すように動作する。そして、絶対角BIST部147は、絶対角異常検出部146が絶対角異常検出フラグFaを生成したか否かに基づいて当該絶対角異常検出部146を診断する。この診断において、絶対角BIST部147は、絶対角異常検出部146が絶対角異常検出フラグFaを生成しない場合に当該絶対角異常検出部146が異常であるとする診断結果を示す絶対角BIST異常フラグF3を生成する。一方、絶対角BIST部147は、絶対角異常検出部146が絶対角異常検出フラグFaを生成する場合に当該絶対角異常検出部146が絶対角異常検出フラグFaを生成する場合に絶対角BIST異常フラグF3を生成しない。絶対角異常検出部146により生成された絶対角BIST異常フラグF3は、BIST制御部148に出力される。
【0097】
BIST制御部148は、第1演算回路50、第2演算回路60、及び第3演算回路70の各BIST部による診断の実行を制御する。
BIST制御部148は、カウンタBIST部110によるカウンタ異常検出部108の診断を実行する場合、カウンタBIST部110に対して指令信号S1を出力する。カウンタBIST部110は、指令信号S1が入力された場合、カウンタ異常検出部108の診断を実行する。BIST制御部148は、カウンタBIST部110からカウンタBIST異常フラグF1が入力されるとカウンタ異常検出部108が異常でないことを診断し、当該カウンタ異常検出部108の診断を終了する。この場合、BIST制御部148は、強制的に作り出されたカウンタ異常検出部108がカウンタ異常フラグFcを生成する状況、すなわち転舵制御部47における異常の動作状態が解除されるように、各種の異常検出や各診断に関わるフラグ等の情報を消去するべく、転舵制御部47の動作状態をリセットする。
【0098】
BIST制御部148は、電源BIST部109による電圧異常検出部107の診断を実行する場合、電源BIST部109に対して指令信号S1aを出力する。電源BIST部109は、指令信号S1aが入力された場合、電圧異常検出部107の診断を実行する。BIST制御部148は、電源BIST部109から電源BIST異常フラグF1aが入力されると電源異常検出部107が異常でないことを診断し、当該電源異常検出部107の診断を終了する。この場合、BIST制御部148は、強制的に作り出された電源異常検出部107が電源異常フラグFbを生成する状況、すなわち転舵制御部47における異常の動作状態が解除されるように、各種の異常検出や各診断に関わるフラグ等の情報を消去するべく、転舵制御部47の動作状態をリセットする。
【0099】
BIST制御部148は、第1絶対角情報BIST部123による第1絶対角情報異常検出部122の診断を実行する場合、第1絶対角情報BIST部123に対して指令信号S2aを出力する。第1絶対角情報BIST部123は、指令信号S2aが入力された場合、第1絶対角情報異常検出部122の診断を実行する。BIST制御部148は、第1絶対角情報BIST部123から第1絶対角情報BIST異常フラグF2aが入力されると第1絶対角情報異常検出部122が異常でないことを診断し、当該第1絶対角情報異常検出部122の診断を終了する。この場合、BIST制御部148は、強制的に作り出された第1絶対角情報異常検出部122が第1絶対角情報異常フラグFaaを生成する状況、すなわち転舵制御部47における異常の動作状態が解除されるように、各種の異常検出や各診断に関わるフラグ等の情報を消去するべく、転舵制御部47の動作状態をリセットする。
【0100】
BIST制御部148は、第2絶対角情報BIST部133による第2絶対角情報異常検出部132の診断を実行する場合、第2絶対角情報BIST部133に対して指令信号S2bを出力する。第2絶対角情報BIST部133は、指令信号S2bが入力された場合、第2絶対角情報異常検出部132の診断を実行する。第2絶対角情報BIST部133から第2絶対角情報BIST異常フラグF2bが入力されると第2絶対角情報異常検出部132が異常でないことを診断し、当該第2絶対角情報異常検出部132の診断を終了する。この場合、BIST制御部148は、強制的に作り出された第2絶対角情報異常検出部132が第2絶対角情報異常フラグFabを生成する状況、すなわち転舵制御部47における異常の動作状態が解除されるように、各種の異常検出や各診断に関わるフラグ等の情報を消去するべく、転舵制御部47の動作状態をリセットする。
【0101】
BIST制御部148は、絶対角BIST部147による絶対角異常検出部146の診断を実行する場合、絶対角BIST部147に対して指令信号S3を出力する。絶対角BIST部147は、指令信号S3が入力された場合、絶対角異常検出部146の診断を実行する。BIST制御部148は、絶対角異常検出部146から絶対角BIST異常フラグF3が入力されると、絶対角異常検出部146が異常でないことを診断し、当該絶対角異常検出部146の診断を終了する。この場合、BIST制御部148は、強制的に作り出された絶対角異常検出部146が絶対角異常検出フラグFaを生成する状況、すなわち転舵制御部47における異常の動作状態が解除されるように、各種の異常検出や各診断に関わるフラグ等の情報を消去するべく、転舵制御部47の動作状態をリセットする。
【0102】
なお、BIST制御部148は、各BIST部による診断を実行したにもかかわらず、対応したBIST異常フラグが入力されない場合、その状況に応じたフェイルセーフ制御に移行する。例えば、BIST制御部148は、絶対角異常検出部146の診断を実行したにもかかわらず、絶対角異常検出部146から絶対角BIST異常フラグF3が入力されない場合、絶対角異常検出部146が異常であることを診断し、転舵制御部47の動作を停止するフェイルセーフ制御に移行する。
【0103】
本実施形態では、各BIST部(カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、及び絶対角BIST部147)の診断の実行タイミングを互いに異ならせている。
【0104】
図7に示すように、BIST制御部148は、始動スイッチをオン状態にした直後に行われるイニシャルチェック中に各BIST部による診断が実行される。すなわち、BIST制御部148は、最初にカウンタBIST部110に対して指令信号S1を出力することにより、カウンタBIST部110によるカウンタ異常検出部108の診断を実行する。BIST制御部148は、カウンタBIST部110によるカウンタ異常検出部108の診断の終了後、すなわちカウンタBIST部110からカウンタBIST異常フラグF1を取得した後、電源BIST部109に対して指令信号S1aを出力することにより、電源BIST部109による電圧異常検出部107の診断を実行する。BIST制御部148は、電源BIST部109による電圧異常検出部107の診断の終了後、すなわち電源BIST部109から電源BIST異常フラグF1aを取得した後、第1絶対角情報BIST部123に対して指令信号S2aを出力することにより、第1絶対角情報BIST部123による第1絶対角情報異常検出部122の診断を実行する。BIST制御部148は、第1絶対角情報BIST部123による第1絶対角情報異常検出部122の診断の終了後、すなわち第1絶対角情報BIST部123から第1絶対角情報BIST異常フラグF2aを取得した後、第2絶対角情報BIST部133に対して指令信号S2bを出力することにより、第2絶対角情報BIST部133による第2絶対角情報異常検出部132の診断を実行する。BIST制御部148は、第2絶対角情報BIST部133による第2絶対角情報異常検出部132の診断の終了後、すなわち第2絶対角情報BIST部133から第2絶対角情報BIST異常フラグF2bを取得した後、絶対角BIST部147に対して指令信号S3を出力することにより、絶対角BIST部147による絶対角異常検出部146の診断を実行する。BIST制御部148は、絶対角BIST部147による絶対角異常検出部146の診断の終了後、すなわち絶対角BIST部147から絶対角BIST異常フラグF3を取得した後、各BIST部による診断の実行を終了する。これにより、BIST制御部148は、カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、絶対角BIST部147の順に診断を実行する。カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、及び絶対角BIST部147の診断の実行タイミングは、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bのサンプリングタイミングと異なっている。
【0105】
本実施形態の作用および効果を説明する。
(1)各BIST部(カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、及び絶対角BIST部147)による異常検出部の診断を実行した後、診断対象とした異常検出部を備える転舵制御部47としては、その動作状態が異常を検出した状態に設定されてしまう。この異常を検出した状態を解除するべく、転舵制御部47の動作状態をリセットする必要がある。
【0106】
そして、本実施形態のように、複数のBIST部によって複数の異常検出部の診断を実行しなければいけない場合には、何れかのBIST部による診断の実行中に、他のBIST部による診断に伴い転舵制御部47の動作状態がリセットされると、診断の結果が正しく得られなくなる可能性がある。
【0107】
この点、本実施形態によれば、各BIST部の診断の実行タイミングを互いに異ならせていることから、各BIST部による診断の実行中に他のBIST部による診断の実行に伴い転舵制御部47の動作状態がリセットされる状況の発生を抑制することができる。これにより、各BIST部が対象とする異常検出部の診断に関する信頼性を向上させることができる。したがって、転舵制御部47による絶対角としてのピニオン角θpaの演算の信頼性を向上させることができる。
【0108】
(2)また、上記(1)で述べたのと同様に、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bによる検出結果のサンプリングタイミングにおいてBIST部による診断の実行に伴い転舵制御部47の動作状態がリセットされると、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bによる検出結果のサンプリングが正しく実行されなくなる可能性がある。
【0109】
これに対処するべく、本実施形態では、カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、及び絶対角BIST部147の診断の実行タイミングを、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bのサンプリングタイミングと異ならせている。このことから、サンプリングタイミングにおいて各BIST部による診断の実行に伴い転舵制御部47の動作状態がリセットされる状況の発生を抑制することができる。これにより、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bの検出結果のサンプリングに関する信頼性を向上させることができる。
【0110】
(3)絶対角異常検出部146での異常の検出の際に用いられる積算角θi及び絶対角θgaは、転舵モータ41の動作に応じて変化するものである。このため、積算角θi及び絶対角θgaの変化は互いに関連している。そこで、絶対角異常検出部146は、これらの積算角θiの変化量及び絶対角θgaの変化量を用いて、第1演算回路50の異常を検出することができる。
【0111】
(4)本実施形態のステアバイワイヤ方式の操舵装置では、転舵モータ41の駆動に必要なモータ制御信号Smを生成するために、クラッチ21が接続された際にステアリングシャフト12(ステアリングホイール11)の回転に連動して回転する第1ピニオンシャフト13の絶対角であるピニオン角θpaを求める必要がある。すなわち、本実施形態によれば、演算された第1ピニオンシャフト13のピニオン角θpaの信頼性を向上できる転舵装置10bを実現することができる。
【0112】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・クラッチ制御部22、反力制御部35および転舵制御部47は、単一の制御部(ECU:電子制御ユニット)として構成してもよい。
【0113】
・第1演算回路50及び第2演算回路60は、特定の入力に対して定められた演算を実行するASICであったが、これに限らない。例えば第1演算回路50及び第2演算回路60は、マイクロプロセッシングユニット等からなるマイコンによって実現してもよい。また、第1演算回路50及び第2演算回路60は、その記憶部に記憶されているプログラムを読み出して当該プログラムに応じた演算を実行するものであってもよい。また、第1演算回路50及び第2演算回路60を特定の機能に特化した低消費電力のマイコンによって実現してもよい。この場合であっても、特定の機能に特化している分だけ、第1演算回路50及び第2演算回路60の構成を第3演算回路70よりも簡素な構成とすることができる。
【0114】
・第1回転角センサ33、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bは、例えばホール素子を用いたセンサであってもよいし、レゾルバを用いたセンサであってもよい。
【0115】
・第1回転角センサ33及び第2回転角センサ44は、例えばステアリングシャフト12や第1ピニオンシャフト13の回転角を検出するようにしてもよい。例えば、第1ピニオンシャフト13の回転角は、転舵モータ41と第1ピニオンシャフト13との間の減速比等を考慮すれば、転舵モータ41のマルチターンの回転角に換算することができる。
【0116】
・第1回転角センサ33は、反力モータ31に設けられていたが、ステアリングホイール11の回転軸であるステアリングシャフト12に設けられていてもよい。また、第2回転角センサ44は、転舵モータ41に設けられていたが、第1ピニオンシャフト13や第2ピニオンシャフト43に設けられていてもよい。
【0117】
・第1演算回路50は、始動スイッチがオン状態である場合においてもカウント値Cを演算したが、始動スイッチがオン状態である場合には、カウント値Cを演算しないようにしてもよい。
【0118】
・第3演算回路70は、第1演算回路50を介して、第2回転角センサ44の電気信号Sbを取り込んでもよい。
・絶対角異常検出部146は、積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値以下であるか否かに基づいて、第1演算回路50の異常を検出したが、これに限らない。例えば、絶対角異常検出部146は、積算角θiと絶対角θgaとの偏差が所定値以下であるか否かに基づいて、第1演算回路50の異常を検出するようにしてもよい。
【0119】
・第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bの代わりに、操舵装置10に転舵シャフト14の軸方向における絶対位置を検出するとともに、この絶対位置の変化に基づき転舵シャフト14の軸方向における移動量を検出するストロークセンサを設けるようにしてもよい。転舵シャフト14の移動量と転舵モータ41の回転角θbとの間には相関があることから、絶対角出力部143は、転舵シャフトの移動量から転舵モータ41のモータ中点を求めることができる。したがって、絶対角出力部143は、転舵モータ41のモータ中点を基準点として、基準点からの転舵モータ41の回転角θbの変化量に基づき、転舵モータ41の回転角θbを360度を超える範囲の絶対角で演算し、この演算される回転角θb(絶対角)に基づきピニオン角θpaを絶対角で演算することができる。
【0120】
また、第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bに加えて、ストロークセンサを設けるようにしてもよい。例えば、第3演算回路70には、絶対角演算部141により演算された絶対角θga、及び転舵シャフト14の移動量に基づいて求められた第1ピニオンシャフト13の回転角のいずれか一方を絶対角出力部143に対して出力する切替部が設けられる。この切替部は、例えばTAS46に異常が発生している場合、第1絶対角情報θg1及び第2絶対角情報θg2の代わりに、転舵シャフト14の移動量に基づいて求められた第1ピニオンシャフト13の回転角を絶対角出力部143に対して出力する。
【0121】
・第1演算回路50の構成から電源BIST部109を省いてもよい。
・BIST制御部148は、カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、絶対角BIST部147の順に診断を実行させたが、この順番は適宜変更してもよく、各BIST部の診断の実行タイミングが互いに異なっていればよい。
【0122】
・カウンタBIST部110、電源BIST部109、第1絶対角情報BIST部123、第2絶対角情報BIST部133、及び絶対角BIST部147の診断の実行タイミングは、第2回転角センサ44、第1ピニオン角センサ46a、及び第2ピニオン角センサ46bのサンプリングタイミングを考慮せずに決定されてもよい。
【0123】
・絶対角異常検出部146は、積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値を超える場合、第1演算回路50及び第2演算回路60の両方に異常が発生したものとして、第1演算回路50及び第2演算回路60の両方の異常を示す絶対角異常検出フラグFaを生成してもよい。また、第2演算回路60よりも第1演算回路50の信頼性が高い場合については、絶対角異常検出部146は、積算角θiの変化量と絶対角θgaの変化量との偏差が所定閾値を超える場合、第2演算回路60の異常を示す絶対角異常検出フラグFaを生成してもよい。
【0124】
・電源BIST部109は、電圧異常検出部107の診断の際、電圧異常検出部107が制御電圧Vcoの異常を検出するために想定している所定電圧範囲の上限値を変更することで、電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成する状況を強制的に作り出したが、これに限らない。例えば、電源BIST部109は、電圧異常検出部107が異常の結果を導出するように規定されたテスト信号を送信した場合に電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成したか否かに基づいて、電圧異常検出部107が電圧異常フラグFbを生成する状況を強制的に作り出してもよい。
【0125】
・転舵モータ41が発生する動力を転舵シャフト14に伝達する伝達機構として、第2減速機構42および第2ピニオンシャフト43に代えて、ベルト伝動機構およびボールねじ機構を採用してもよい。
【0126】
・TAS46には、ピニオントルクセンサ46cが設けられたが、第1ピニオン角センサ46a及び第2ピニオン角センサ46bのみであってもよい。
・TAS46は、第1ピニオンシャフト13に設けられたが、ステアリングシャフト12に設けられてもよい。この場合、TAS46は、ステアリングシャフト12の回転角を絶対角で検出する絶対角センサである。なお、転舵制御部47に適用した上記実施形態の構成については、反力制御部35に適用するようにしてもよい。
【0127】
・操舵装置10として、クラッチ21およびクラッチ制御部22を割愛した構成を採用してもよい。この場合、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間の動力伝達が常に分離された状態に維持される。しかし、操舵装置10としてクラッチ21を有する第1のタイプおよびクラッチ21を有さない第2のタイプのいずれのタイプにも対応できる転舵装置(転舵ユニット)を構築することができる。
【0128】
・反力制御部35あるいは転舵制御部47は、車両の操舵機構にモータのトルクをアシスト力として付与する電動パワーステアリング装置の制御装置に適用してもよい。電動パワーステアリング装置としては、ステアリングシャフトにアシスト力を付与するタイプでもよいし、転舵シャフトにアシスト力を付与するタイプでもよい。
【0129】
・操舵装置10(転舵装置10b)の搭載される車両は、車両駆動源にエンジンを採用するいわゆる内燃機関を有する車両であってもよいし、車両駆動源にモータを採用するいわゆる電動車両であってもよい。なお、電動車両の場合の始動スイッチは、車両駆動源としてのモータを始動するスイッチである。
【0130】
・反力制御部35あるいは転舵制御部47は、操舵装置10に限らず、モータを動力源とする機械装置の制御装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0131】
10…操舵装置、10b…転舵装置、12…ステアリングシャフト、13…第1ピニオンシャフト、14…転舵シャフト、16…転舵輪、21…クラッチ、31…反力モータ、33…第1回転角センサ、35…反力制御部、41…転舵モータ、43…第2ピニオンシャフト、44…第2回転角センサ、46…TAS、46a…第1ピニオン角センサ、46b…第2ピニオン角センサ、46c…ピニオントルクセンサ、47…転舵制御部、50…第1演算回路、60…第2演算回路、70…第3演算回路、80…駆動回路、90…バッテリ、100…電源回路、101…カウンタ回路、106…カウント値演算部、107…電圧異常検出部、108…カウンタ異常検出部、109…電源BIST部、110…カウンタBIST部、120…第1絶対角情報演算回路、121…第1絶対角情報演算部、122…第1絶対角情報異常検出部、123…第1絶対角情報BIST部、130…第2絶対角情報演算回路、131…第2絶対角情報演算部、132…第2絶対角情報異常検出部、133…第2絶対角情報BIST部、140…積算角演算部、141…絶対角演算部、143…絶対角出力部、144…転舵角指令値演算部、145…電流フィードバック制御部、146…絶対角異常検出部、147…絶対角BIST部、148…BIST制御部、θg,θga…絶対角、θi…積算角、I*…電流指令値、S1,S1a,S2a,S2b,S3…指令信号、Sa,Sb,Sg1,Sg2…電気信号、Sm…モータ制御信号、θpa,θpb…ピニオン角、Tp…トルク、Th…操舵トルク、U2…転舵ユニット、V…車速、Vco…制御電圧、θ*…目標操舵角、θs…操舵角、θt…転舵角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7