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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】動体追跡装置および動体追跡方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
A61N5/10 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018222498
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020081534
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 唯
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ウドン
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル ダージス
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196036(JP,A)
【文献】特開2005-270577(JP,A)
【文献】特開2014-068876(JP,A)
【文献】特開2012-024233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0028133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物を含むテンプレート画像を用いて、被検体を撮影した複数の放射線画像中の前記検出対象物を追跡し、前記検出対象物の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる動体追跡装置であって、
前記複数の放射線画像を取得する画像取得部と、
前記複数の放射線画像のうちの第1放射線画像全体の画素値に基づいてコントラスト調整が行われた処理画像上の前記検出対象物の位置を前記テンプレート画像に基づいて検出するとともに、前記検出対象物の検出位置を中心とした前記第1放射線画像の一部分を検出範囲として設定し、前記検出対象物の位置を検出した後は、前記検出対象物の検出位置が前記治療用放射線の照射許可範囲内にない場合に、前記処理画像の一部の画素値に基づいて前記第1放射線画像とは異なりかつ前記第1放射線画像よりも後に取得された第2放射線画像のコントラスト調整が行われた追跡画像上の前記検出対象物の位置を、前記テンプレート画像に基づいて、設定された前記検出範囲内で検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された前記検出対象物と前記検出対象物の周辺の背景とを含み、前記テンプレート画像の大きさ以上で、前記検出範囲の大きさ以下の前記処理画像の画像部分の画素値に基づいて前記第1放射線画像とは異なる前記第2放射線画像のコントラスト調整を行い、前記追跡画像を生成する画像処理部とを備える、動体追跡装置。
【請求項2】
前記処理画像中に複数の前記検出対象物が検出された場合に、前記画像処理部は、前記検出対象物毎のそれぞれの前記画像部分の画素値のうちの最大値および最小値を基準として、上限値および下限値を設定するように構成されている、請求項1に記載の動体追跡装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記画像部分の画素値の最大値を前記上限値として設定するとともに、前記画像部分の画素値の最小値を前記下限値として設定するように構成されている、請求項2に記載の動体追跡装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、画素値のしきい値が設定されており、前記しきい値に基づいて前記追跡画像を二値化するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の動体追跡装置。
【請求項5】
前記検出対象物は、マーカー部材である、請求項1~4のいずれか1項に記載の動体追跡装置。
【請求項6】
検出対象物を含むテンプレート画像を用いて、被検体を撮影した複数の放射線画像中の前記検出対象物を追跡し、前記検出対象物の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる動体追跡方法であって、
動体追跡装置により、前記複数の放射線画像のうち第1放射線画像を取得するステップと、
前記動体追跡装置により、前記第1放射線画像を前記第1放射線画像全体の画素値に基づいてコントラスト調整が行われた処理画像を生成するステップと、
前記動体追跡装置により、前記テンプレート画像を基に、前記処理画像上の前記検出対象物の位置を検出するステップと、
前記動体追跡装置により、前記検出対象物の検出位置を中心とした前記第1放射線画像の一部分を検出範囲として設定するステップと、
前記動体追跡装置により、前記検出対象物の検出位置が前記治療用放射線の照射許可範囲内にあるか否かを判定するステップと、
前記動体追跡装置により、前記検出対象物の検出位置が前記照射許可範囲内にない場合に、前記第1放射線画像と異なる第2放射線画像を取得し、前記テンプレート画像の大きさ以上で、前記検出対象物の位置を検出する範囲として設定された前記検出範囲の大きさ以下である、検出された前記検出対象物と前記検出対象物の周辺の背景とを含む前記処理画像の画像部分の画素値に基づいて前記第1放射線画像と異なる前記第2放射線画像のコントラスト調整を行い、追跡画像を生成するステップと、
前記動体追跡装置により、前記テンプレート画像を基に、前記追跡画像上の前記検出対象物の位置を設定された前記検出範囲内で検出するステップと、を備える、動体追跡方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動体追跡装置および動体追跡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮影装置により撮像した撮像画像の階調処理(一定の画素値の範囲を一定の明るさの段階に変換する処理)を行った後に、階調処理した画像を用いてテンプレートマッチングにより追跡対象を検出する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、撮像画像に階調処理を実施してからマーカーの位置を判定している。また、上記特許文献1では階調処理では、特定の画素値の範囲(ウィンドウ)を設定し、ウィンドウ上限の画素値より大きい画素は上限の画素値に変換し、ウィンドウ下限の画素値より小さい画素は下限の画素値に変換する処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-196036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には、特定の画素値の範囲を設定するために用いる撮像画像の範囲について具体的には記載されていないが、画素値を利用する撮像画像の範囲を広くすると、マーカーから遠く離れた部分の画素値も含まれることが考えられる。そうすると、マーカーの画素値とマーカー周辺の画素値との差が小さい一方、マーカーとマーカーから遠く離れた部分の画素値の差が大きい場合に、階調処理を行うために用いる画素値の範囲が広いことにより、階調処理を行ったとしても、マーカーとマーカー周辺から離れた場所とのコントラストは明確になるが、検出対象物としてのマーカーとマーカー周辺の部分とのコントラストが明確にならないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、検出対象物と検出対象物周辺との画素値の差が小さい場合でも、コントラストを明確にすることが可能な動体追跡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における動体追跡装置は、検出対象物を含むテンプレート画像を用いて、被検体を撮影した複数の放射線画像中の検出対象物を追跡し、検出対象物の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる動体追跡装置であって、複数の放射線画像を取得する画像取得部と、複数の放射線画像のうちの第1放射線画像全体の画素値に基づいてコントラスト調整が行われた処理画像上の検出対象物の位置をテンプレート画像に基づいて検出するとともに、検出対象物の検出位置を中心とした第1放射線画像の一部分を検出範囲として設定し、検出対象物の位置を検出した後は、検出対象物の検出位置が治療用放射線の照射許可範囲内にない場合に、処理画像の一部の画素値に基づいて第1放射線画像とは異なりかつ第1放射線画像よりも後に取得された第2放射線画像のコントラスト調整が行われた追跡画像上の検出対象物の位置をテンプレート画像に基づいて、設定された検出範囲内で検する位置検出部と、位置検出部により検出された検出対象物と検出対象物の周辺の背景とを含み、テンプレート画像の大きさ以上で、検出範囲の大きさ以下の処理画像の画像部分の画素値に基づいて第1放射線画像とは異なる第2放射線画像のコントラスト調整を行い、追跡画像を生成する画像処理部とを備える。
【0008】
この発明の第1の局面による動体追跡装置では、位置検出部により検出された検出対象物と検出対象物の周辺の背景とを含みテンプレート画像の大きさ以上で、検出範囲の大きさ以下の放射線画像の画像部分の画素値に基づいてコントラスト調整を行い、追跡画像を生成する画像処理部とを備える。これにより、検出対象物と検出対象物の周辺の背景とを含み、放射線画像全体よりも小さいテンプレート画像の大きさ以上で、放射線画像の一部分である検出範囲の大きさ以下の放射線画像の画像部分の画素値を用いてコントラスト調整を行うことができる。そのため、放射線画像全体の画素値を用いないため、検出対象物から遠く離れた部分にある画素値を含めずに、コントラストを明確にしたい検出対象物とその周辺部分との画素値を基準としてコントラスト調整を行うことができる。その結果、検出対象物と検出対象物周辺との画素値の差が小さい場合でも、コントラストを明確にすることができる。
【0009】
この発明の第2の局面による動体追跡方法では、検出対象物を含むテンプレート画像を用いて、被検体を撮影した複数の放射線画像中の検出対象物を追跡し、検出対象物の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる動体追跡方法であって、動体追跡装置により、複数の放射線画像のうち第1放射線画像を取得するステップと、動体追跡装置により、第1放射線画像を第1放射線画像全体の画素値に基づいてコントラスト調整が行われた処理画像を生成するステップと、動体追跡装置により、テンプレート画像を基に、処理画像上の検出対象物の位置を検出するステップと、動体追跡装置により、検出対象物の検出位置を中心とした第1放射線画像の一部分を検出範囲として設定するステップと、動体追跡装置により、検出対象物の検出位置が治療用放射線の照射許可範囲内にあるか否かを判定するステップと、動体追跡装置により、検出対象物の検出位置が照射許可範囲内にない場合に、第1放射線画像と異なる第2放射線画像を取得し、テンプレート画像の大きさ以上で、検出対象物の位置を検出する範囲として設定された検出範囲の大きさ以下である、検出された検出対象物と検出対象物の周辺の背景とを含む処理画像の画像部分の画素値に基づいて第1放射線画像と異なる第2放射線画像のコントラスト調整を行い、追跡画像を生成するステップと、動体追跡装置により、テンプレート画像を基に、追跡画像上の検出対象物の位置を設定された検出範囲内で検出するステップと、を備える。これにより、検出対象物と検出対象物の周辺の背景とを含み放射線画像全体よりも小さいテンプレート画像の大きさ以上で、放射線画像の一部分である検出範囲の大きさ以下の処理画像の画像部分の画素値を用いてコントラスト調整を行うことができる。そのため、放射線画像全体の画素値を用いないため、検出対象物から遠く離れた部分にある画素値を含めずに、コントラストを明確にしたい検出対象物とその周辺部分との画素値を基準としてコントラスト調整を行うことができる。その結果、検出対象物と検出対象物周辺との画素値の差が小さい場合でも、コントラストを明確にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記のように、検出対象物と検出対象物周辺との画素値の差が小さい場合でも、コントラストが明確にすることが可能な動体追跡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による動体追跡装置および放射線治療装置の全体構成を示す模式図である。
図2】一実施形態による放射線画像の一例を示す図である。
図3】一実施形態によるテンプレート画像の一例を示す図である。
図4】一実施形態による処理画像の一例を示す図である。
図5図2の300-301線による追跡画像のプロファイル図である。
図6】一実施形態による追跡画像の一例を示す図である。
図7図6の400-401線による追跡画像のプロファイル図である。
図8】一実施形態による画像部分の範囲を説明するための図である。
図9】一実施形態による表示部の一例を示す図である。
図10】一実施形態による動体追跡方法の流れを示す図である。
図11】一実施形態による動体追跡方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(放射線撮影装置の構成)
図1図9を参照して、一実施形態による動体追跡装置100の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、動体追跡装置100は、画像取得部1と、画像処理部2と、位置検出部3とを備える。動体追跡装置100は、CPU(Central Processing Unit)、などを含んで構成されたコンピュータである。
【0015】
動体追跡装置100は、さらに表示部4と、照射部101と、放射線検出部102とを含んでいる。照射部101は、高電圧が印加されることによりX線を発生させるX線管を有する。照射部101は、管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮影条件に従って放射線を発生する。
【0016】
放射線検出部102は、照射部101から照射され、被検体50を透過した放射線を検出し、検出した放射線強度に応じた検出信号を出力する。
【0017】
本実施形態の動体追跡装置100は、被検体50の放射線画像5(図2参照)を撮影して放射線画像5中のマーカー部材6を追跡し、マーカー部材6の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる。そのため、動体追跡装置100は、放射線治療装置200と接続している。ここで、マーカー部材6は、特許請求の範囲の「検出対象物」の一例である。マーカー部材6は、たとえば、金マーカーである。
【0018】
画像取得部1は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、放射線検出部102から出力された検出信号に基づいて放射線画像5を取得する。放射線画像5は、マーカー部材6を含む被検体50の放射線画像5である。
【0019】
動体追跡装置100は、一定の時間間隔で放射線画像5を複数枚撮影する。そのため、画像取得部1は、複数枚の放射線画像5を取得する。このとき、マーカー部材6は、被検体50の生体活動により特定部位51が動くことによって位置が変わる。そのため、動体追跡装置100は、マーカー部材6の位置を検出し、テンプレートマッチングによってマッチングさせてマーカー部材6の位置を追跡する。また、被検体50の体軸のずれによってマーカー部材6が特定部位51からずれることがある。そのため、特定部位51には複数のマーカー部材6が配置される。図2に示すように、本実施形態では、マーカー部材6は特定部位51に3つ配置される。
【0020】
図3に示すように、テンプレート画像7は、マーカー部材6だけを撮影した画像である。テンプレート画像7の横の長さ70は、放射線画像5の横の長さ52より短く、テンプレート画像7の縦の長さ71は、放射線画像5の縦の長さ53よりも短い(図2参照)。テンプレート画像7は、被検体50を治療する治療計画に合わせて取得される。たとえば、治療開始時にテンプレート画像7を取得し、取得したテンプレート画像7を用いて治療を進めてもよく、治療中にテンプレート画像7を更新してもよい。また、テンプレート画像7は、動体追跡装置100によって撮影されてもよく、外部から取得してもよい。
【0021】
本実施形態の画像処理部2は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、画像取得部1が取得した放射線画像5のコントラスト調整を行うようにプログラムされている。コントラスト調整は、放射線検出部102で検出された画素値の範囲を用いて表示部4で表示できる画素値の範囲に変換するために行われる。表示部4が表示できる画像が8ビットの場合、コントラスト調整は放射線検出部102で検出された画素値の範囲のうち一部または全部を用いて0(暗)~255(明)の256段階(2の8乗)の明るさに変換することにより行われる。画像処理部2は、放射線画像5から後述する処理画像8と追跡画像9とを作成する(図4および図6参照)。
【0022】
図4に、処理画像8を示す。画像処理部2は、放射線治療が開始されて、最初に画像取得部1が取得した放射線画像5に対して放射線画像5全体の画素値に基づいて変換する画素値の範囲を設定し、コントラスト調整を行うことにより処理画像8を作成する。
【0023】
本実施形態では、表示部4が表示できる範囲が8ビットである場合を例に説明する。処理画像8を作成する場合、画像処理部2は、画像全体の画素値のうち最大値を255に変換し、最小値を0に変換することにより256段階の明るさの濃度域になるようにコントラスト調整を行う。なお、本実施形態では、放射線画像5、処理画像8および追跡画像9が、画素値が低いほど暗く画素値が高いほど明るく表示部4に表示されるものとする。図4では、特定部位51がマーカー部材6よりも明るく背景部分よりも暗く表示されることを示すためにハッチングを施している。
【0024】
画像処理部2によってコントラスト調整が行われた処理画像8は、位置検出部3によりマーカー部材6の位置が検出され、テンプレートマッチングが行われる。位置検出部3においてマーカー部材6が検出され、テンプレートマッチングによってマーカー部材6の画素値の分布とテンプレート画像7の画素値の分布とが適合した場合、画像処理部2は、処理画像8のマーカー部材6とマーカー部材6の周辺の背景とを含む処理画像8の画像部分10の画素値に基づいて追跡画像9を生成するための画素値の範囲を設定する。
【0025】
画像処理部2の追跡画像9を生成するための画素値の範囲は、画像処理部2によって画像部分10の画素値の最大値が上限値に設定されるとともに、画像部分10の画素値の最小値が下限値に設定される。放射線画像5にマーカー部材6が複数ある場合は、画像処理部2は、マーカー部材6毎のそれぞれの画像部分10の画素値のうちの最大値および最小値を基準として、上限値および下限値を設定する。
【0026】
図5は、図2の300-301線で切断したプロファイリング図である。横軸は300―301線に沿った位置を表しており、左端の点が位置300、右端の点が位置301を示す。縦軸は、横軸にプロットした位置における画素値を表しており、下が255、上が0である。このとき、画素値の最大値がImax、最小値がIminだとすると、Iminを0、Imaxを255とする256段階の明るさに変換し、コントラスト調整を行う。
【0027】
図6に示すように、画像処理部2は、マーカー部材6が検出された後に取得された放射線画像5に対して処理画像8によって設定された画素値の範囲に基づいてコントラスト調整を行い、追跡画像9を生成する。マーカー部材6が含まれる画像部分10の画素値を用いて放射線画像5のコントラスト調整を行うため、処理画像8と比べて用いる画素値の範囲が狭くなる。そのため、処理画像8よりも追跡画像9はコントラストが明確になる。また、マーカー部材6は周囲の部分と比べて画素値が低いため、マーカー部材6は暗くなる。
【0028】
図7は、図6の400-401線で切断したプロファイル図である。縦軸は画素値を表し、横軸は処理画像8上の位置を表す。左端の点が位置400、右端の点が位置401を示す。縦軸は、横軸にプロットした位置における画素値を表しており、下が255、上が0である。位置400および位置401は、画素値が255である。画素値が0の付近がマーカー部材6の画素値を表している。図5から図7のように変換することでコントラストが明確となる。
【0029】
図8に記載された処理画像8は、画像部分10を説明するために、マーカー部材6だけが撮影されている画像とする。マーカー部材6とマーカー部材6の周辺の背景とを含む処理画像8の画像部分10の大きさは、テンプレート画像7の大きさ以上で、位置検出部3において設定されたマーカー部材6の検出位置を中心とした放射線画像5の一部分である検出範囲11の大きさ以下である。図8では、一例としてテンプレート画像7の大きさを破線の正方形で表し、検出範囲11の大きさを実線の正方形で表しているが、テンプレート画像7および検出範囲11は正方形でなくともよい。
【0030】
なお、マーカー部材6が検出されなかった場合、画像処理部2は上限値と下限値を設定できないため、マーカー部材6が検出されるまで画像全体の画素値を用いて放射線画像5のコントラスト調整を行う。
【0031】
図7に示すように、画像処理部2には、さらに、二値化するためのしきい値が設定されている。画像処理部2は、しきい値に基づいて、しきい値以上256以下の部分は白色と、0以上しきい値以下の部分は黒色となるようにコントラスト調整を行う。
【0032】
位置検出部3は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、テンプレート画像7に基づいて、処理画像8または追跡画像9上のマーカー部材6の位置を検出するようにプログラムされている。マーカー部材6の位置の検出方法は、テンプレート画像7と処理画像8または追跡画像9との正規化相互相関関数を用いて行い、テンプレート画像7に撮影されたマーカー部材6の画素値の分布に近い画素値の分布を有する処理画像8または追跡画像9上の部分をマーカー部材6の位置と特定する。
【0033】
位置検出部3は、放射線画像5でマーカー部材6の位置を検出すると、マーカー部材6の検出位置を基準とした放射線画像5の一部分を検出範囲11として設定し、次の追跡画像9からは設定された検出範囲内で次のマーカー部材6の検出を行う。なお、画像部分10の大きさは、検出範囲11の大きさと同じでもよく異なっていてもよい。
【0034】
図1および図9に示すように、動体追跡装置100は、追跡画像9と放射線画像5とを表示する表示部4をさらに備える。表示部4に表示された放射線画像5および追跡画像9上には、検出範囲11が表示されている。検出範囲11は、位置検出部3がマーカー部材6を追跡している間移動するため、ユーザは位置検出部3がマーカー部材6を追跡しているかが一目でわかる。
【0035】
表示部4は、動体追跡装置100に接続されたモニターである。表示部4に表示されている放射線画像5上にはさらにゲーティングウィンドウ12が表示される。ゲーティングウィンドウ12は、治療用の放射線を照射すべき治療対象部位を表す。ゲーティングウィンドウ12と検出されたマーカー部材6との位置とが一致している場合に、動体追跡装置100は、照射開始信号を送信し、放射線治療装置200から治療用の放射線を照射させる。
【0036】
次に、図1を用いて、動体追跡装置100に接続される放射線治療装置200について説明する。放射線治療装置200は、天板201上の被検体50に対して、X線、陽子線あるいは重粒子線などの治療用放射線を照射可能である。放射線治療装置200は、基台202と、基台202に対して揺動可能に設置されたガントリー203と、ガントリー203に設けられ、治療ビームを出射するヘッド204とを備える。放射線治療装置200は、ガントリー203が基台202に対して揺動することにより、ヘッド204から照射される治療ビームの照射方向を変更することができる。放射線治療装置200は、被検体50の腫瘍等の特定部位51に対して、様々な方向から治療ビームを照射することができる。天板201は、たとえば、直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)に移動可能で、かつ、各軸周りに回動可能であり、6軸方向に移動することができる。
【0037】
図10および図11を用いて被検体50の放射線画像5を撮影して放射線画像中のマーカー部材6を追跡し、マーカー部材6の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる動体追跡方法について説明する。
【0038】
ステップ21では、画像取得部1は、放射線治療装置200で撮影された放射線画像5を取得する。ステップ22では、画像処理部2は、放射線画像5全体の画素値を用いて、ウィンドウ値の上限値と下限値とを設定する。設定したウィンドウ値に基づいて、放射線画像5のコントラスト調整を行い、処理画像8を作成する。
【0039】
ステップ23では、表示部4に、コントラスト調整が行われた処理画像8が表示される。そして、ユーザが、表示部4に表示された処理画像8に含まれるマーカー部材6を指定することによりステップ24に移る。指定方法は、たとえば、動体追跡装置100に接続された操作部(図示せず)を操作し、マーカー部材6を選択してもよい。
【0040】
ステップ24では、位置検出部3は、撮像されたテンプレート画像7の画素値の分布と、処理画像8のユーザに指定された箇所との画素値の分布を比較する。具体的には、位置検出部3は、正規化相互相関関数を用いてテンプレート画像7の画素値の分布と処理画像8のユーザに指定された箇所との画素値の分布とが近似しているかを判定する。そして、テンプレート画像7の画素値と処理画像8の指定された箇所の画素値が近似していると、マッチングが成功したとして検出範囲11を設定し、ステップ25に進む。テンプレート画像7の画素値と処理画像8の指定された箇所の画素値がかけ離れていると、マーカー部材6の位置を追跡し、ステップ24に戻る。
【0041】
ステップ25では、画像処理部2は、処理画像8のマーカー部材6とマーカー部材6の周辺との画素値からコントラスト調整を行うための画素値の範囲の上限値と下限値とを設定する。このとき、テンプレート画像7の大きさと同じ大きさのマーカー部材6とマーカー部材6の周辺を含む画像部分10の画素値の最大値を上限値とし、画素値の最小値を下限値とする。
【0042】
ステップ26では、動体追跡装置100はマーカー部材6の検出位置が治療用の放射線を照射する箇所を示すゲーティングウィンドウ12の範囲内にあるか否かを判断する。ゲーティングウィンドウ12の範囲内にマーカー部材6が含まれる場合、動体追跡装置100は、放射線治療装置200に照射開始信号を送り、照射開始信号を受信することにより放射線治療装置200は、治療用放射線を照射する。マーカー部材6がゲーティングウィンドウ12内に無い場合は、図11のステップ31に進む。
【0043】
図11に示すように、ステップ31では、画像取得部1は新たな放射線画像5を取得する。ステップ32では、画像処理部2は、ステップ25において取得した画素値の上限値および下限値に基づき放射線画像5のコントラスト調整を行い、さらに二値化処理を行うことにより追跡画像9を作成する。
【0044】
ステップ33では、テンプレート画像7に基づいて、追跡画像9からマーカー部材6の位置を検出する。具体的には、位置検出部3は、ステップ24において設定した検出範囲11を用いて、マーカー部材6の位置を検出する。検出の仕方はステップ24と同じである。ステップ33において、追跡画像9上にマーカー部材6を検出できた場合は、新たな検出範囲11を設定し、ステップ34に進む。マーカー部材6を検出できなかった場合は、さらにマーカー部材6の位置を追跡し、ステップ33に戻る。
【0045】
ステップ34では、動体追跡装置100は、マーカー部材6が検出された位置が治療用の放射線を照射する箇所を示すゲーティングウィンドウ12の範囲内にあるか否かを判断する。ゲーティングウィンドウ12の範囲内にマーカー部材6が含まれる場合、動体追跡装置100は、放射線治療装置200に開始信号を送信し、放射線治療装置200は開始信号を受信することにより治療用の放射線を照射し治療する。また、画像処理部2は、コントラスト調整を行うための新たな画素値の範囲を取得する。ゲーティングウィンドウ12の範囲内にマーカー部材6の検出位置が含まれない場合、ステップ31に戻る。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、動体追跡装置100は、位置検出部3により検出された検出対象物(マーカー部材6)と検出対象物(マーカー部材6)の周辺の背景とを含み、テンプレート画像7の大きさ以上で、検出範囲11の大きさ以下の放射線画像5の画像部分10の画素値に基づいてコントラスト調整を行い、追跡画像9を生成する画像処理部2とを備える。これにより、検出対象物(マーカー部材6)と検出対象物(マーカー部材6)の周辺の背景とを含み放射線画像5全体よりも小さいテンプレート画像7の大きさ以上で、放射線画像5の一部分である検出範囲11の大きさ以下の放射線画像5の画像部分10の画素値を用いてコントラスト調整を行うことができる。そのため、放射線画像5全体の画素値を用いないため、検出対象物(マーカー部材6)から遠く離れた部分にある画素値を含めずに、コントラストを明確にしたい検出対象物(マーカー部材6)とその周辺部分との画素値を基準としてコントラスト調整を行うことができる。その結果、検出対象物(マーカー部材6)と検出対象物(マーカー部材6)周辺との画素値の差が小さい場合でも、コントラストが明確にすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、放射線画像5中に複数の検出対象物(マーカー部材6)が検出された場合に、画像処理部2は、検出対象物(マーカー部材6)毎のそれぞれの画像部分10の画素値のうちの最大値および最小値を基準として、上限値および下限値を設定するように構成されている。これにより、複数の検出対象物(マーカー部材6)の画像部分10の画素値の範囲が互いに異なっている場合であっても、複数の検出対象物(マーカー部材6)の画素値をコントラスト調整のための画素値の上限値と下限値との間に含めることができる。その結果、複数の検出対象物(マーカー部材6)と背景とのコントラストを明確にすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部2は、画像部分10の画素値の最大値を上限値として設定するとともに、画像部分10の画素値の最小値を下限値として設定するように構成されている。これにより、設定されたコントラスト調整のための画素値の範囲に検出対象物(マーカー部材6)の画素値を確実に含めることができる。その結果、確実に検出対象物(マーカー部材6)と背景とのコントラストを明確にすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部2は、画素値のしきい値が設定されており、しきい値に基づいて追跡画像9を二値化するように構成されている。これにより、追跡画像9を二値化することにより、マーカー部材6とそれ以外の部分とのコントラストがより明確となる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、マーカー部材6を検出対象物としているため、放射線治療においてマーカー部材6を検出するとともに追跡することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、検出対象物(マーカー部材6)を含むテンプレート画像7を用いて、被検体50を撮影した放射線画像5中の検出対象物(マーカー部材6)を追跡し、検出対象物(マーカー部材6)の位置に基づいて治療用放射線を照射する放射線治療に用いられる動体追跡方法であって、放射線画像5を取得するステップと、放射線画像5を放射線画像全体の画素値に基づいてコントラスト調整が行われた処理画像8を生成するステップと、テンプレート画像7を基に、処理画像8上の検出対象物(マーカー部材6)の位置を検出するステップと、テンプレート画像7の大きさ以上で、検出対象物(マーカー部材6)の位置を検出する範囲として設定された検出範囲11の大きさ以下である、検出された検出対象物と検出対象物(マーカー部材6)の周辺の背景とを含む放射線画像5の画像部分10の画素値に基づいて放射線画像5のコントラスト調整を行い、追跡画像9を生成するステップと、追跡画像9を基に、追跡画像9上の検出対象物(マーカー部材6)の位置を検出するステップと、を備える。これにより、検出対象物(マーカー部材6)と検出対象物(マーカー部材6)の周辺の背景とを含み放射線画像5全体よりも小さいテンプレート画像7の大きさ以上で、放射線画像5の一部分である検出範囲11の大きさ以下の放射線画像5の画像部分10の画素値を用いてコントラスト調整を行うことができる。そのため、放射線画像5全体の画素値を用いないため、検出対象物(マーカー部材6)から遠く離れた部分にある画素値を含めずに、コントラストを明確にしたい検出対象物(マーカー部材6)とその周辺部分との画素値を基準としてコントラスト調整を行うことができる。その結果、検出対象物(マーカー部材6)と検出対象物(マーカー部材6)周辺との画素値の差が小さい場合でも、コントラストが明確にすることができる。
【0053】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、検出対象物がマーカー部材である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出対象物は特定部位であってもよい。
【0055】
たとえば、上記実施形態では、マーカー部材を3つ用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マーカー部材は、1つ、2つ、または4つ以上用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、テンプレート画像は、マーカー部材(検出対象物)だけを撮影した画像である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出対象物が明確に撮影されていれば、被検体を撮影した放射線画像を用いてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、画像部分の画素値の最大値を上限値として設定するとともに、画像部分の画素値の最小値を下限値として設定する例を示したが、本発明はこれに限られない。画像部分の最大値よりも大きい値を上限値としてもよく、最大値よりも小さい値を上限値としてもよい。また、画像部分の最小値よりも小さい値を下限値としてもよく、最小値よりも大きい値を下限値としてもよい。たとえば、最大値の±5を上限値と設定してもよく、最小値の±5を最小値に設定してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、画像処理部は、画素値のしきい値が設定されており、しきい値に基づいて追跡画像を二値化するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、二値化しなくともよい。
【0059】
また、上記実施形態では、画像処理部は、256段階の明るさにコントラスト調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、表示部の表示できる画素値の範囲に基づいてコントラスト調整の明るさの段階を設定してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、放射線画像、処理画像および追跡画像が、画素値が低いほど暗く画素値が高いほど明るく表示される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、放射線画像、処理画像および追跡画像が、画素値が高いほど暗く、画素値が低いほど明るく表示されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、画像処理部は、追跡画像を取得するたびにコントラスト調整を行うための画素値の上限値と下限値とを更新する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、画素値の上限値と下限値とを1回設定したら、上限値と下限値とを更新しなくてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、画像処理部の処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 画像取得部
2 画像処理部
3 位置検出部
5 放射線画像
6 マーカー部材
7 テンプレート画像
8 処理画像
9 追跡画像
10 画像部分
11 検出範囲
100 動体追跡装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11