IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図1
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図2
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図3
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図4
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図5
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図6
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図7
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図8
  • 特許-繊維体堆積装置およびシート製造装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】繊維体堆積装置およびシート製造装置
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/732 20120101AFI20221109BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20221109BHJP
【FI】
D04H1/732
D04H1/736
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018225994
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020084394
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 尚孝
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-231828(JP,A)
【文献】特表2007-534857(JP,A)
【文献】特開昭52-155276(JP,A)
【文献】米国特許第03016582(US,A)
【文献】特開昭48-036463(JP,A)
【文献】特開昭56-101962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01G 1/00 - 99/00
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料を分散させる分散部と、
分散された前記材料を堆積させるベルトと、
前記ベルトの前記分散部と反対側に設けられた吸引部と、を備え、
前記分散部は、スクリーンを有する収容部と、前記収容部に前記材料を供給する供給部と、前記収容部内に設けられ、前記収容部内に供給された前記材料を撹拌する1つの回転体と、を有し、
前記収容部は、前記収容部の内外と連通し、前記スクリーンとは異なる位置に、前記回転体の回転軸の延在方向に沿って設けられている複数の連通口を有し、
前記複数の連通口は、開口面の法線方向から見たとき、前記回転体の回転軸とずれた位置に設けられていることを特徴とする繊維体堆積装置。
【請求項2】
前記連通口は、前記回転体の回転方向に沿って空気を供給する請求項1に記載の繊維体堆積装置。
【請求項3】
前記連通口から供給される空気は、前記吸引部の吸引によって導入される請求項1または2に記載の繊維体堆積装置。
【請求項4】
前記分散部の平面視にて、前記連通口は、前記供給部よりも前記回転体の回転中心に対し遠位側に設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記回転体の回転方向に沿って前記材料を供給する請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項6】
前記スクリーンは、前記ベルト側に向って突出した円弧状をなしている請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項7】
前記回転体は、前記スクリーンと離間した状態で回転する請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項8】
前記分散部は、前記収容部と前記ベルトとの間の部分を覆い、前記ベルトに臨む位置に開口を有するハウジングを備えている請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項9】
前記収容部は、前記スクリーンを保持する保持部材を有し、
前記連通口は、前記保持部材に設けられている請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置と、
前記繊維体堆積装置によって形成されたウェブをシート状に成形する成形部と、を備えることを特徴とするシート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体堆積成装置およびシート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート製造装置においては、繊維を含む原料を水に投入し、主に機械的作用により離解して、抄き直す、いわゆる湿式方式が採用されている。このような湿式方式のシート製造装置は、大量の水が必要であり、装置が大きくなる。さらに、水処理施設の整備のメンテナンスに手間がかかる上、乾燥工程に係るエネルギーが大きくなる。
【0003】
そこで、小型化、省エネルギーのために、水を極力利用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。例えば特許文献1には、原料を乾式で解繊し、その解繊物を堆積させ、シート状に成形する装置が開示されている。この装置では、解繊物を堆積させる堆積部は、ハウジングと、ハウジング内に設けられ、多孔質体で構成された円筒状のスクリーンと、スクリーンの内側で回転する回転体とを有している。スクリーン内に供給された解繊物は、回転体の回転によりスクリーン内でほぐされながらスクリーンを通過して気中に分散されベルト上に堆積する。これにより、ウェブが形成される。
【0004】
また、特許文献1に記載されている装置では、ベルトへの堆積を促進させるために、吸引部でハウジング内を吸引しながら堆積を行っている。このため、ハウジングに、内外を連通する通気口を設け、通気口から吸引部に向う気流が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭48-36463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている装置では、ハウジングに通気口が設けられており、ハウジングとスクリーンとの間の空間に空気を供給しながら堆積を行う構成である。このため、スクリーンを通過し分散された解繊物は、上記気流の影響でベルト上の所望の位置に堆積されないことがある。その結果、ウェブに厚さムラが生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下のものとして実現することが可能である。
【0008】
本発明の繊維体堆積装置は、繊維を含む材料を分散させる分散部と、
分散された前記材料を堆積させるベルトと、
前記ベルトの前記分散部と反対側に設けられた吸引部と、を備え、
前記分散部は、スクリーンを有する収容部と、前記収容部に前記材料を供給する供給部と、前記収容部内に設けられ、前記収容部内に供給された前記材料を撹拌する1つの回転体と、を有し、
前記収容部は、前記収容部の内外と連通し、前記スクリーンとは異なる位置に、前記回転体の回転軸の延在方向に沿って設けられている複数の連通口を有し、
前記複数の連通口は、開口面の法線方向から見たとき、前記回転体の回転軸とずれた位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のシート製造装置は、本発明の繊維体堆積装置と、
前記繊維体堆積装置によって形成されたウェブをシート状に成形する成形部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置の第1実施形態を示す概略側面図である。
図2図2は、図1に示す分散部および第2ウェブ形成部を示す斜視図である。
図3図3は、図2中のA-A線断面図である。
図4図4は、図2中矢印B方向から見た図である。
図5図5は、本発明の繊維体堆積装置の第2実施形態が備える分散部を上側から見た図である。
図6図6は、本発明の繊維体堆積装置の第3実施形態が備える分散部の断面図である。
図7図7は、本発明の繊維体堆積装置の第4実施形態が備える分散部の断面図である。
図8図8は、本発明の繊維体堆積装置の第5実施形態が備える分散部の断面図である。
図9図9は、本発明の繊維体堆積装置が備える分散部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置の第1実施形態を示す概略側面図である。図2は、図1に示す分散部および第2ウェブ形成部を示す斜視図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図2中矢印B方向から見た図である。図9は、本発明の繊維体堆積装置が備える分散部の変形例を示す断面図である。
【0013】
なお、以下では、説明の便宜上、図1および図2に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むxy平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、図1および図2の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1中の左側を「上流側」、右側を「下流側」と言う。
【0014】
図1および図2に示すように、シート製造装置100は、繊維体堆積装置10と、シート成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、を備えている。また、繊維体堆積装置10は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、第2ウェブ形成部19と、制御部28と、を備えている。
【0015】
また、図1および図2に示すように、シート製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236とを備えている。その他、シート製造装置100は、ブロアー173と、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263とを備えている。
【0016】
また、シート製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、分散工程と、第2ウェブ形成工程と、シート成形工程と、切断工程とがこの順に実行される。
【0017】
以下、各部の構成について説明する。
図1に示すように、原料供給部11は、粗砕部12に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、セルロース繊維を含む繊維含有物からなるシート状材料を用いることができる。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。また、本実施形態では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙である。
【0018】
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1を大気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行なう部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート122とを有している。
【0019】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0020】
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0021】
また、シュート122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含む図示しないフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式、特に、温風気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
【0022】
シュート122は、管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0023】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0024】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、ローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0025】
また、解繊部13は、ローターの回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0026】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0027】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0028】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0029】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
【0030】
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0031】
また、ドラム部141からの第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0032】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0033】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0034】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0035】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0036】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0037】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0038】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0039】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0040】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0041】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0042】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と樹脂P1とを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、樹脂供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0043】
管172は、細分部16のハウジング部162と、分散部18のハウジング3とを接続しており、細分体M6と樹脂P1との混合物M7が通過する流路である。
【0044】
管172の途中には、樹脂供給部171が接続されている。樹脂供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、樹脂P1を粉体または粒子として管172に供給することができる。管172に供給された樹脂P1は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0045】
なお、樹脂P1は、後の工程で繊維同士を結着させるものであり、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
【0046】
なお、樹脂供給部171から供給されるものとしては、樹脂P1の他に、例えば、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集や樹脂P1の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための紙力増強剤等が含まれていてもよい。または、予めそれらを樹脂P1に含ませて複合化したものを樹脂供給部171から供給してもよい。
【0047】
また、管172の途中には、樹脂供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と樹脂P1とが混合される。また、ブロアー173は、分散部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と樹脂P1とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と樹脂P1とが均一に分散した状態で、分散部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0048】
分散部18は、繊維を含む材料、すなわち、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐして気中に分散させる分散工程を行うものである。分散部18の構成については、後に詳述する。この分散部18によって気中に分散された混合物M7は、落下して、下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。
【0049】
第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0050】
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0051】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0052】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0053】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0054】
分散部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0055】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であるのが好ましい。
【0056】
第2ウェブ形成部19の下流側には、シート成形部20が配置されている。シート成形部20は、第2ウェブM8からシートSを成形するシート成形工程を行なう部分である。このシート成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0057】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。なお、このときの加熱の程度としては、例えば、樹脂P1を溶融させない程度であるのが好ましい。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0058】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、樹脂P1が溶融して、この溶融した樹脂P1を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0059】
シート成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0060】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0061】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。
【0062】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の形状、大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0063】
このようなシート製造装置100が備える各部は、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0064】
制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。
【0065】
記憶部282は、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラムや、各種検量線、テーブル等が記憶されている。
【0066】
また、この制御部28は、シート製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、シート製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークがシート製造装置100を介して接続されている場合等がある。
【0067】
また、CPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281がシート製造装置100に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部282がシート製造装置100に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0068】
次に、分散部18について説明する。
図2および図3に示すように、分散部18は、ハウジング3と、ハウジング3内に位置し、収容された混合物M7を分散させる収容部4と、収容部4に混合物M7を供給する供給部5と、収容部4内に設けられた回転体6と、を有する。
【0069】
ハウジング3は、筒状のハウジング本体31を有する。ハウジング本体31は、4つの側壁311を有する。ハウジング本体31は、これら側壁311で囲まれた空間S1に収容部4を収納し、収容部4とメッシュベルト191との間の部分を覆っている。
【0070】
また、ハウジング本体31は、メッシュベルト191に臨む下側開口312と、反対側に位置する上側開口313とを有する。下側開口(第1開口)312は、収容部4から分散された混合物M7を放出する放出口である。また、上側開口313(第2開口)は、収容部4の天板41で覆われている。
【0071】
また、下側開口312の下流側には、一対の封止ローラー7が設けられている。各封止ローラー7は、メッシュベルト191を介して配置されている。また、下側開口312の開口の縁部で、かつ、封止ローラー7が設けられていない部分には、メッシュベルト191とハウジング本体31との間を封止するシール部材8が設けられている。これら封止ローラー7およびシール部材8によって、吸引部193の吸引力が損なわれずに後述するように連通口412から空気が流入することができる。さらに、第2ウェブM8には、封止ローラー7によって若干圧力が加わるため、第2ウェブM8が乱れてしまうのを防止することができる。
【0072】
このように分散部18は、収容部4とメッシュベルト191との間の部分である空間S1を覆い、メッシュベルト191に臨む位置に下側開口312が設けられたハウジング3を有する。これにより、吸引部193の吸引力によって、空間S1内に下側に向う気流を効果的に形成することができる。よって、収容部4から分散された混合物M7のメッシュベルト191への堆積を促進することができる。
【0073】
また、図1に示すように、ハウジング3には、加湿部234が接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング3内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング3内を加湿することができ、よって、分散された混合物M7がハウジング3の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0074】
収容部4は、ハウジング3の上側開口313を塞ぐ天板41と、天板41の下側に設置された一対の側壁42と、複数の開口を有するスクリーンである多孔質スクリーン43とを有する。
【0075】
天板41は、その厚さ方向に貫通して設けられた供給口411および後述する複数の連通口412を有する。供給口411は、供給部5と連通しており、混合物M7が通過する部分である。また、供給口411は、y軸方向に延在する長尺状をなし、天板41において、x軸方向の略中央部に設けられている。一対の側壁42は、y軸方向に延在する長尺状をなし、天板41の下面で、かつ、供給口411を介して対向配置されている。
【0076】
多孔質スクリーン43は、y軸方向に延在し、-z軸方向に向って突出している半円筒状をなしている。すなわち、多孔質スクリーン43は、y軸を法線とする断面でみたとき、y軸方向のどの位置でも円弧状をなしている。これにより、混合物M7が収容部4内で円滑に移動することができ、良好に撹拌することができる。また、多孔質スクリーン43は、各側壁42に連結されており、多孔質スクリーン43、各側壁42および天板41で画成された空間が、混合物M7を収容する収容空間S2として機能する。
【0077】
なお、収容部4では、収容空間S2の+y軸側および-y軸側は、図示しない壁部によって塞がれている。各壁部は、後述する回転体6を回転可能に支持している。
【0078】
多孔質スクリーン43は、例えば、網状体や、多数の貫通孔を有する板材とすることができる。これにより、収容部4内の混合物M7は、多孔質スクリーン43を介して収容空間S2の外側に放出され分散される。また、多孔質スクリーン43の目開きサイズや貫通孔の大きさを適宜設定することにより、所望の繊維長さを有する混合物M7を優先的に分散させてメッシュベルト191上に堆積させることができる。
【0079】
このような収容部4では、天板41および側壁42が多孔質スクリーン43を保持する保持部40として機能する。後述するように、この保持部40に連通口412が設けられていることにより、多孔質スクリーン43を介さずに、直接、収容部4内に空気を導入することができる。
【0080】
供給部5は、天板41の上方に設置されたポートである。供給部5は、ポート本体51と、ポート本体51に設けられた接続部52とを有する。
【0081】
ポート本体51は、下側に四角形の開口511を有する箱状をなしている。開口511は、天板41の供給口411を十分に包含する程度の大きさを有する長尺な四角形をなしている。ポート本体51は、開口511を介して天板41の供給口411と連通するように天板41の上部に設置されている。これにより、供給部5を介して混合物M7を収容部4内に供給することができる。
【0082】
また、図2に示すように、ポート本体51は、x軸方向から見たとき略三角形をなしている。このため、z軸を法線とする断面でみたとき、ポート本体51は、下側(-z軸方向)にいくに従って広くなっている。すなわち、ポート本体51は、収容部4に向って内腔の面積が漸増している。
【0083】
また、ポート本体51の-x軸側の側壁512の上部には、接続部52が設けられている。この接続部52は、-x軸方向に円筒状に突出形成された部分であり、混合物M7が流下する管172が接続されている。
【0084】
管172を流下してきた混合物M7は、まず、接続部52を介してポート本体51内に流入する。そして、ポート本体51内に流入すると、混合物M7は側壁512と対向する側壁513とぶつかるか、その付近まで気流によって搬送される。この際、混合物M7は、ある程度ほぐされて下方に向う。これにより、混合物M7にダマが生じていても、そのままの状態で収容部4内に供給されるのを防止することができる。そして、開口511および供給口411を介して収容部4内に供給される。
【0085】
また、図3に示すように、混合物M7が収容部4に流入する際、前述したように、側壁513に沿って下方に流下するため、収容部4内の回転軸Oよりも+x軸側に流入する。後述するように、回転体6は、+y軸側から見て反時計回りに回転する構成であるため、収容部4に流入した混合物M7は、そのまま回転体6の回転方向に沿った気流に乗る。すなわち、供給部5は、回転体6の回転方向に沿って、材料である混合物M7を供給する。これにより、混合物M7が収容部4内で滞留してしまうことや、混合物M7を供給部5側に巻き上げることを低減し、収容部4内で円滑にほぐすことができる。
【0086】
なお、図9に示すように、供給部5は、ストレートタイプの筒状で、かつ、回転軸Oよりも+x軸側に接続されていてもよい。このような変形例によっても上記と同様の効果が得られる。
【0087】
回転体6は、収容部4内で回転することにより、収容部4内に供給された混合物M7を撹拌してほぐしつつ、多孔質スクリーン43からの分散を促進する機能を有する。回転体6は、4つの羽根61を有する。羽根61は、y軸方向に延在する長尺な板材で構成されている。また各羽根61の一方の長辺側の端部は、互いに連結されており、その連結された部分を回転中心、すなわち、回転軸Oとして回転する。本実施形態では、回転体6は、回転軸Oを法線とする断面が十字状をなしている。すなわち、各羽根61は、回転方向に等間隔で連結されている。
【0088】
また、回転体6は、図示しない回転駆動源に連結されており、回転駆動源が図1に示す制御部28によってその作動が制御される。本実施形態では、+y軸側から見て反時計回りに回転する。
【0089】
回転体6の回転により、各羽根61が収容部4内の混合物M7を撹拌しつつ、ほぐしながら、多孔質スクリーン43に適量を押しつける。これにより、混合物M7が多孔質スクリーン43にて目詰まりするのを防止しつつ、かつ、多孔質スクリーン43の全域から万遍なく混合物M7を分散させることができる。
【0090】
また、回転体6は、各羽根61が側壁42および多孔質スクリーン43と離間した状態で回転する。これにより、羽根61と多孔質スクリーン43との間で混合物M7に過剰に圧力がかかるのを防止することができ、より良好な分散を行うことができる。
【0091】
なお、本実施形態では、羽根61は、4つ設けられている場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、1~3つでもよく、4つ以上であってもよい。また、各羽根61は、平板状である場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、回転軸Oを法線とする断面で見たとき、一方向に湾曲した形状をなしていてもよい。
【0092】
ここで、収容部4の天板41には、収容部4の内外を連通する連通口412が設けられている。この連通口412は、収容部4の内側に空気を供給する機能を有する。連通口412は、供給口411よりも+x軸側に設けられており、+x軸側の側壁42よりも-x軸側に位置している。このため、収容部4の内側、すなわち、収容空間S2に空気を供給することができる。また、回転体6が+y軸側から見て反時計回りに回転する構成である場合、連通口412は、供給口411よりも-x軸側に設けられており、-x軸側の側壁42よりも+x軸側に位置していることがより好ましい。しかしながら、連通口412は、供給口411よりも+x軸側に有していてもよい。
【0093】
吸引部193が作動すると、ハウジング3内、すなわち、空間S1の空気が下方に向って吸引されて空間S1が負圧になることで、連通口412を介して収容部4の外側の空気が収容部4の内側に流れる。すなわち、収容空間S2に空気を流入させることができる。そして、その流入した空気が多孔質スクリーン43を介して空間S1に流入することができる。このように連通口412が設けられていることにより、図3中矢印で示すように、連通口412、収容空間S2および空間S1を通過する気流を形成することができる。よって、収容空間S2での混合物M7のほぐしと、多孔質スクリーン43を介した混合物M7の分散とを良好に行うことができる。その結果、混合物M7の堆積を良好に行うことができ、厚さが可及的に均一な第2ウェブM8を形成することができ、ひいては、厚さが可及的に均一なシートSを形成することができる。
【0094】
また、連通口412は、回転軸Oよりも+x軸側に設けられている。すなわち、分散部18の平面視にて、連通口412は、供給口411よりも回転体6の回転中心である回転軸Oに対し遠位側に設けられている。このため、連通口412を介して収容部4に流入した空気は、そのまま回転体6の回転方向に沿った気流に乗る。すなわち、連通口412は、回転体6の回転方向に沿って空気を供給する。これにより、混合物M7が収容部4内で滞留してしまうのを防止し、収容部4内で円滑にほぐすことができる。
【0095】
また、連通口412から供給される空気は、吸引部193の吸引によって導入される。すなわち、吸引部193の吸引力を利用して収容部4内に空気を供給する構成である。これにより、連通口412から空気を供給する送風源等を別途設けるのを省略することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0096】
また、図4に示すように、各連通口412は、円形をなしている。これにより、連通口412の各々の開口面積を小さくすることができ、連通口412を通過する空気の流速を比較的速くすることができる。よって、収容部4内での撹拌をより良好に行うことができる。また、各連通口412の開口面積を適宜に変更することで、収容部4の内部における気流を調整することができる。特に、y軸方向における気流を調整することで、y軸方向の第2ウェブM8の厚さを容易に変化または調整することができる。また、各連通口412の開口の一部を塞いでもよい。
【0097】
また、連通口412は、回転体6の回転軸Oの延在方向に沿って複数、図示の構成では、11個、等間隔で設けられている。これにより、収容部4内において、y軸方向のどの位置でも前述した効果を発揮することができる。
【0098】
以上説明したように、繊維体堆積装置10は、繊維を含む材料である混合物M7をほぐして分散させる分散部18と、分散された混合物M7を堆積させるメッシュベルト191と、メッシュベルト191の分散部18と反対側に設けられた吸引部193と、を備えている。また、分散部18は、多孔質スクリーン43を有する収容部4と、収容部4に混合物M7を供給する供給部5と、収容部4内に設けられ、収容部4内に供給された混合物M7を回転することにより撹拌する回転体6と、を有している。そして、収容部4は、収容部4の内外と連通し、多孔質スクリーン43とは異なる位置に設けられている連通口412を有する。
【0099】
なお、連通口412の一部を塞ぐことで吸気量を調整して内部の分散状態を調整してもよい。これにより、混合物M7が堆積する均一性を調整することができる。
【0100】
これにより、図3中矢印で示すように、連通口412、収容空間S2および空間S1を通過する気流を形成することができる。よって、収容空間S2での混合物M7のほぐしと、多孔質スクリーン43を介した混合物M7の分散とを良好に行うことができる。その結果、混合物M7の堆積を良好に行うことができ、厚さが可及的に均一な第2ウェブM8を形成することができ、ひいては、厚さが可及的に均一なシートSを形成することができる。
【0101】
また、シート製造装置100は、繊維体堆積装置10と、繊維体堆積装置10によって形成された第2ウェブM8をシート状に成形するシート成形部20と、を備える。これにより、前述した利点を享受しつつ、シートSを製造することができる。
【0102】
<第2実施形態>
図5は、本発明の繊維体堆積装置の第2実施形態が備える分散部を上側から見た図である。
【0103】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0104】
本実施形態は、連通口の形状および個数が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0105】
図5に示すように、連通口412は、回転体6の回転軸Oに沿って延在する長尺状をなしている。また、本実施形態では、連通口412は、4つ設けられている。このような本実施形態によっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、設置個数を減らすことができるとともに、開口面積、すなわち、各連通口412の開口面積の合計を十分に大きくすることができる。よって、ハウジング3の内外の気圧差をより効果的に小さくすることができ、より円滑に気流を形成することができる。また、各連通口412の開口面積を適宜に設定することで、収容部4の内部における気流を調整することができる。特に、y軸方向における気流を調整することで、y軸方向の第2ウェブM8の厚さを容易に変化または調整することができる。また、各連通口412の開口の一部を塞いでもよい。
【0106】
<第3実施形態>
図6は、本発明の繊維体堆積装置の第3実施形態が備える分散部の断面図である。
【0107】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0108】
本実施形態は、分散部の形状および連通口の設置位置が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0109】
図6に示すように、収容部4の天板41は、上方に向って突出形成された中空の突出部413を有している。突出部413は、y軸方向に延在する形状をなしている。突出部413は、一対の側壁414と、天板415とを有する。
【0110】
各側壁414は、x軸方向に離間して対向配置され、かつ、z軸方向に沿って立設されている。天板415は、各側壁414の+z軸側の端部に接続されている。また、本実施形態では、天板415の中央部に供給口411が設けられている。また、この供給口411を覆うように、供給部5が天板415に設けられている。
【0111】
このような一対の側壁414と、天板415と、多孔質スクリーン43とで画成された空間が収容空間S2となる。
【0112】
また、本実施形態では、連通口412は、天板415に設けられている。連通口412は、供給口411よりも+x軸側に設けられている。このため、連通口412を介して収容部4に流入した空気は、そのまま回転体6の回転方向に沿った気流に乗る。すなわち、連通口412は、回転体6の回転方向に沿って空気を供給する。これにより、第1実施形態と同様に、混合物M7が収容部4内で滞留してしまうのを防止し、収容部4内で円滑にほぐすことができる。また、-y軸方向側に見たとき、回転体6が時計周りに回転している場合は、連通口412を供給口411よりも-x軸側に設けられていることが好ましい。
【0113】
<第4実施形態>
図7は、本発明の繊維体堆積装置の第4実施形態が備える分散部の断面図である。
【0114】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、連通口の設置位置が異なること以外は前記第3実施形態と同様である。
【0115】
図7に示すように、本実施形態では、連通口412は、+x軸側に位置する側壁414に設けられている。連通口412は、側壁414の+z軸側に偏在して設けられている。このような本実施形態によれば、空気が、連通口412を介して+x軸方向から収容空間S2に流入することとなる。これにより、連通口412を介して流入してきた空気と、供給口411を介して流入してきた混合物M7とがぶつかり、撹拌される。そして、その撹拌された状態で、混合物M7が回転体6の回転方向に沿った気流に乗る。これにより、収容部4内で混合物M7をさらに良好にほぐすことができる。また、-y軸方向側に見たとき、回転体6が時計周りに回転している場合は、連通口412を-x軸側に位置する側壁414に設けることが好ましい。
【0116】
<第5実施形態>
図8は、本発明の繊維体堆積装置の第5実施形態が備える分散部の断面図である。
【0117】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、突出部の形状が異なること以外は前記第3実施形態と同様である。
【0118】
図8に示すように、本実施形態の突出部413は、天板41と一対の側壁414との間に、位置する一対の円弧状部416を有している。各円弧状部416は、外側に向って突出するように湾曲した形状をなしている。また、その湾曲曲率は、多孔質スクリーン43の湾曲曲率と同じであり、一対の円弧状部416および多孔質スクリーン43は、y軸方向を法線とする断面で見たとき、連続して設けられている。
【0119】
このような本実施形態によっても前記第3実施形態と同様の効果が得られる。また、前記第3実施形態よりも、収容空間S2において、気流が回転軸O回りに回転する部分が多くなり、混合物M7をさらに良好にほぐすことができる。
【0120】
以上、本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、繊維体堆積装置およびシート製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0121】
また、本発明の繊維体堆積装置およびシート製造装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や特徴を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
100…シート製造装置、7…封止ローラー、8…シール部材、10…繊維体堆積装置、11…原料供給部、12…粗砕部、121…粗砕刃、122…シュート、13…解繊部、14…選別部、141…ドラム部、142…ハウジング部、15…第1ウェブ形成部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、16…細分部、161…プロペラ、162…ハウジング部、17…混合部、171…樹脂供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、18…分散部、19…第2ウェブ形成部、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、20…シート成形部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、21…切断部、211…第1カッター、212…第2カッター、22…ストック部、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、27…回収部、28…制御部、281…CPU、282…記憶部、3…ハウジング、31…ハウジング本体、311…側壁、312…下側開口(第1開口)、313…上側開口(第2開口)、4…収容部、40…保持部材、41…天板、411…供給口、412…連通口、413…突出部、414…側壁、415…天板、416…円弧状部、42…側壁、43…多孔質スクリーン、5…供給部、51…ポート本体、511…開口、512…側壁、513…側壁、52…接続部、6…回転体、61…羽根、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、O…回転軸、S…シート、S1…空間、S2…収容空間、P1…樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9