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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】圧電発振器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20221109BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H3/02 B
H01L23/02 B
H01L23/08 B
H01L23/14 C
H01L21/60 311S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018229345
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020092357
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 蘭
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046476(JP,A)
【文献】国際公開第00/033455(WO,A1)
【文献】特開2001-291742(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-H01L21/449
H01L21/60-H01L21/607
H01L23/00ーH01L23/26
H03B5/30-H03B5/42
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子上の平面部にICチップを搭載する圧電発振器の製造方法であって、
前記圧電振動子は、
基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、
前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、
前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されて、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が形成されており、
前記圧電振動板は、
前記第1励振電極および前記第2励振電極が備えられた略矩形状の振動部と、
前記振動部の角部から第1方向に突出され、当該振動部を保持する1本の保持部と、
前記振動部の外周を取り囲むと共に、前記保持部を保持する外枠部とを有しており、
前記ICチップを、超音波接合を用いたフリップチップボンディングによって前記圧電振動子上に搭載し、当該超音波接合では前記第1方向とは直交しない第2方向に振動する超音波振動を印加することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器の製造方法であって、
前記第1方向と前記第2方向とのなす角が45°以下であることを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電発振器の製造方法であって、
前記第1方向と前記第2方向とが平行であることを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化(特に低背化)が進んでいる。そのため、高周波化やパッケージの小型化にともなって、圧電振動デバイス(例えば水晶振動子、水晶発振器など)も高周波化やパッケージの小型化への対応が求められている。
【0003】
この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体のパッケージで構成されている。このパッケージは、例えばガラスや水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが圧電振動板を介して積層して接合される。そして、パッケージの内部(内部空間)に配された圧電振動板の振動部(励振電極)が気密封止されている(例えば、特許文献1)。以下、このような圧電振動デバイスの積層形態をサンドイッチ構造という。
【0004】
サンドイッチ構造の圧電振動デバイスにて使用される圧電振動板は、励振電極の形成された振動部と、振動部の周囲に配置された外枠部と、振動部を外枠部に連結して保持する保持部とが水晶板などにおいて一体形成されている。振動部と外枠部と保持部とが一体形成された圧電振動板では、振動部で生じた圧電振動が保持部を介して外枠部へ漏れやすいといった振動漏れの問題がある。
【0005】
図8は、上記振動漏れを低減するための圧電振動板の一形状例を示すものである。図8に示す圧電振動板は、振動部22と外枠部23と保持部24とが一体形成されており、保持部24は振動部22の1つの角部のみから外枠部23に向けて突出されている。以下、圧電振動板におけるこのような形状をクラブ型という。振動部22の振動は、各辺の中央部で大きくなり端部において小さくなる。このため、クラブ型の圧電振動板では、保持部24を振動部22の振動の小さい角部から突出させることで、保持部24からの振動漏れを低減できる。また、保持部24の数を少なくすることで、より一層、外枠部23への振動漏れを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/121182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示すクラブ型の圧電振動板は、保持部24を介しての振動漏れの低減には有効であるが、保持部24に応力が集中しやすく、保持部折れの問題が生じ易い。特に、クラブ型の圧電振動板を用いた圧電振動デバイスを、圧電振動子にICチップを搭載した圧電発振器とする場合、ICチップのFCB(Flip Chip Bonding)接合の際に保持部折れが生じることがある。これは、以下の理由による。
【0008】
圧電発振器において、ICチップをリッド上面にFCB接合する際には、通常、超音波接合が用いられる。サンドイッチ構造の圧電発振器では、IC接合時に印加される超音波に振動部22が共振(共鳴)すると、保持部24が折れる虞がある。特に、保持部24の突出方向と直交する方向(図8に示す矢印A方向)への振動は、共振が生じた場合に保持部折れに繋がるような応力集中を保持部24において生じさせ易い。
【0009】
上記保持部折れの不都合を避けるためには、圧電振動板が有する振動モードにおいて、その固有振動数が印加される超音波周波数の整数倍とならないようにすることが考えられる。しかしながら、超音波接合を行う装置(超音波接合機)においては、通常、印加する超音波周波数を調整する機能は無く、超音波周波数は容易に変更できない。また、圧電振動板の固有振動モードを変更するには、圧電振動板における振動部のサイズを変更する必要があるが、振動部のサイズは圧電発振器における発振周波数に密接に関係するものであるため、これも容易に変更できるものではない。したがって、クラブ型の圧電振動板を用いたサンドイッチ構造の圧電発振器において、より簡単に保持部折れを抑制できる方法が求められる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ICチップをFCB接合する際の超音波接合時に、保持部折れを抑制できる圧電発振器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、圧電振動子の上にICチップを搭載する圧電発振器の製造方法であって、前記圧電振動子は、基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されて、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が形成されており、前記圧電振動板は、前記第1励振電極および前記第2励振電極が備えられた略矩形状の振動部と、前記振動部の角部から第1方向に突出され、当該振動部を保持する1本の保持部と、前記振動部の外周を取り囲むと共に、前記保持部を保持する外枠部とを有しており、前記ICチップを、超音波接合を用いたフリップチップボンディングによって前記圧電振動子上に搭載し、当該超音波接合では前記第1方向とは直交しない第2方向に振動する超音波振動を印加することを特徴としている。
【0012】
超音波接合を用いたフリップチップボンディングによってICチップを圧電振動子上に搭載する際、超音波の振動方向である第2方向が、圧電振動板における保持部の突出方向である第1方向と直交すると、印加される超音波に振動部が共振し、保持部が折れる虞がある。上記の構成によれば、第1方向と第2方向とが直交しないようにすることで、第1方向と第2方向とが直交する場合に比べて振動部の共振を低減でき、振動部の共振による保持部折れを低減することができる。
【0013】
また、上記圧電発振器の製造方法では、前記第1方向と前記第2方向とのなす角が45°以下であることが好ましく、前記第1方向と前記第2方向とが平行であることが最も好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧電発振器の製造方法は、ICチップをFCB接合するための超音波接合において、超音波の振動方向である第2方向が圧電振動板における保持部の突出方向である第1方向と直交しないため、振動部の共振による保持部折れを抑制できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態にかかる水晶発振器の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図2】水晶発振器の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図3】水晶発振器の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図4】水晶発振器の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図5】水晶発振器の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図6】水晶発振器の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図7】水晶発振器の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図8】サンドイッチ構造の圧電発振器において、振動漏れを低減するための圧電振動板の一形状例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の実施の形態では、本発明を適用する圧電発振器が、圧電振動板に水晶を用いた水晶発振器である場合について説明する。但し、本発明の圧電発振器において、圧電振動板に使用される材料は、圧電振動を行うものであれば水晶に限定されるものではない。
【0017】
-水晶発振器-
本実施の形態にかかる水晶発振器101は、図1に示すように、水晶振動板2、第1封止部材3、第2封止部材4、およびICチップ5を備えて構成されている。この水晶発振器101では、水晶振動板2と第1封止部材3とが接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造の水晶振動子(圧電振動子)となるパッケージ12が構成される。また、第1封止部材3における水晶振動板2との接合面と反対側の主面に、ICチップ5が搭載される。電子部品素子としてのICチップ5は、水晶振動板2とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。
【0018】
水晶振動板2では、一方の主面である第1主面211に第1励振電極221が形成され、他方の主面である第2主面212に第2励振電極222が形成されている。そして、水晶発振器101においては、水晶振動板2の両主面(第1主面211、第2主面212)のそれぞれに第1封止部材3および第2封止部材4が接合されることで、パッケージ12の内部空間が形成され、内部空間に第1励振電極221および第2励振電極222を含む振動部22(図4,5参照)が気密封止されている。
【0019】
本実施の形態にかかる水晶発振器101は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージ12では、キャスタレーションを形成せずに、後述する貫通孔を用いて電極の導通を図っている。
【0020】
次に、上記した水晶発振器101における水晶振動板2、第1封止部材3および第2封止部材4の各部材について、図1~7を用いて説明する。尚、ここでは、接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。
【0021】
水晶振動板2は、図4,5に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面211,第2主面212)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施の形態では、水晶振動板2として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図4,5に示す水晶振動板2では、水晶振動板2の両主面211,212が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板2の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板2の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。尚、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ35°15′傾いた軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0022】
水晶振動板2の両主面211,212には、一対の励振電極(第1励振電極221,第2励振電極222)が形成されている。水晶振動板2は、略矩形に形成された振動部22と、この振動部22の外周を取り囲む外枠部23と、振動部22と外枠部23とを連結することで振動部22を保持する保持部24とを有している。すなわち、水晶振動板2は、振動部22、外枠部23および保持部24が一体的に設けられた構成となっている。
【0023】
本実施の形態では、保持部24は、振動部22と外枠部23との間の1箇所のみに設けられている。また、詳しくは後述するが、振動部22および保持部24は、基本的には外枠部23よりも薄く形成されている。このような外枠部23と保持部24との厚みの違いにより、外枠部23と保持部24の圧電振動の固有振動数が異なることになり、保持部24の圧電振動に外枠部23が共鳴しにくくなる。尚、保持部24の形成箇所は1か所に限定されるものではなく、保持部24は、振動部22と外枠部23との間の2箇所に設けられていてもよい。
【0024】
保持部24は、振動部22の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部23まで延びている(突出している)。このように、振動部22の外周端部のうち、圧電振動の変位が比較的小さい角部に保持部24が設けられているので、保持部24を角部以外の部分(辺の中央部)に設けた場合に比べて、保持部24を介して圧電振動が外枠部23に漏れることを抑制することができ、より効率的に振動部22を圧電振動させることができる。また、保持部24を2つ以上設けた場合に比べて、振動部22に作用する応力を低減することができ、そのような応力に起因する圧電振動の周波数シフトを低減して圧電振動の安定性を向上させることができる。
【0025】
第1励振電極221は振動部22の第1主面211側に設けられ、第2励振電極222は振動部22の第2主面212側に設けられている。第1励振電極221,第2励振電極222には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線223,第2引出配線224)が接続されている。第1引出配線223は、第1励振電極221から引き出され、保持部24を経由して、外枠部23に形成された接続用接合パターン27に繋がっている。第2引出配線224は、第2励振電極222から引き出され、保持部24を経由して、外枠部23に形成された接続用接合パターン28に繋がっている。このように、保持部24の第1主面211側に第1引出配線223が形成され、保持部24の第2主面212側に第2引出配線224が形成されている。
【0026】
水晶振動板2の両主面(第1主面211,第2主面212)には、水晶振動板2を第1封止部材3および第2封止部材4に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面211の振動側封止部としては、第1封止部材3に接合するための振動側第1接合パターン251が形成されている。また、第2主面212の振動側封止部としては、第2封止部材4に接合するための振動側第2接合パターン252が形成されている。振動側第1接合パターン251および振動側第2接合パターン252は、外枠部23に設けられており、平面視で環状に形成されている。第1励振電極221,第2励振電極222は、振動側第1接合パターン251および振動側第2接合パターン252とは電気的に接続されていない。
【0027】
また、水晶振動板2には、図4,5に示すように、第1主面211と第2主面212との間を貫通する5つの貫通孔が形成されている。具体的には、4つの第1貫通孔261は、外枠部23の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2貫通孔262は、外枠部23であって、振動部22のZ´軸方向の一方側(図4,5では、+Z´方向側)に設けられている。第1貫通孔261の周囲には、それぞれ接続用接合パターン253が形成されている。また、第2貫通孔262の周囲には、第1主面211側では接続用接合パターン254が、第2主面212側では接続用接合パターン28が形成されている。
【0028】
第1貫通孔261および第2貫通孔262には、第1主面211と第2主面212とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、貫通孔それぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1貫通孔261および第2貫通孔262それぞれの中央部分は、第1主面211と第2主面212との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0029】
水晶振動板2において、第1励振電極221、第2励振電極222、第1引出配線223,第2引出配線224、第1接合パターン251、振動側第2接合パターン252、および接続用接合パターン253,254,27,28は、同一のプロセスで形成することができる。具体的には、これらは、水晶振動板2の両主面211,212上に物理的気相成長させて形成された下地膜と、当該下地膜上に物理的気相成長させて積層形成された接合膜とから形成することができる。尚、本実施の形態では、下地膜には、Ti(もしくはCr)が用いられ、接合膜にはAuが用いられている。
【0030】
第1封止部材3は、図2,3に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第1封止部材3の第2主面312(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。
【0031】
第1封止部材3の第1主面311(ICチップ5を搭載する面)には、図2に示すように、発振回路素子であるICチップ5を搭載する搭載パッドを含む6つの電極パターン37が形成されている。ICチップ5は、金属バンプ(例えばAuバンプ等)38(図1参照)を用いて電極パターン37に、FCB(Flip Chip Bonding)法により接合される。
【0032】
第1封止部材3には、図2,3に示すように、6つの電極パターン37のそれぞれと接続され、第1主面311と第2主面312との間を貫通する6つの貫通孔が形成されている。具体的には、4つの第3貫通孔322が、第1封止部材3の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5貫通孔323,324は、図2,3のA2方向およびA1方向にそれぞれ設けられている。尚、図2,3,6,7のA1およびA2方向は、図4,5の-Z´方向および+Z´方向にそれぞれ一致し、図2,3,6,7のB1およびB2方向は、図4,5の-X方向および+X方向にそれぞれ一致する。
【0033】
第3貫通孔322および第4,第5貫通孔323,324には、第1主面311と第2主面312とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、貫通孔それぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3貫通孔322および第4,第5貫通孔323,324それぞれの中央部分は、第1主面311と第2主面312との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0034】
第1封止部材3の第2主面312には、水晶振動板2に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン321が形成されている。封止側第1接合パターン321は、平面視で環状に形成されている。
【0035】
また、第1封止部材3の第2主面312では、第3貫通孔322の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。第4貫通孔323の周囲には接続用接合パターン351が、第5貫通孔324の周囲には接続用接合パターン352が形成されている。さらに、接続用接合パターン351に対して第1封止部材3の長軸方向の反対側(A2方向側)には接続用接合パターン353が形成されており、接続用接合パターン351と接続用接合パターン353とは配線パターン33によって接続されている。尚、接続用接合パターン353は、接続用接合パターン352とは接続されていない。
【0036】
第1封止部材3において、封止側第1接合パターン321、接続用接合パターン34,351~353、および配線パターン33は、同一のプロセスで形成することができる。具体的には、これらは、第1封止部材3の第2主面312上に物理的気相成長させて形成された下地膜と、当該下地膜上に物理的気相成長させて積層形成された接合膜とから形成することができる。尚、本実施の形態では、下地膜には、Ti(もしくはCr)が用いられ、接合膜にはAuが用いられている。
【0037】
第2封止部材4は、図6,7に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第2封止部材4の第1主面411(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。
【0038】
この第2封止部材4の第1主面411には、水晶振動板2に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン421が形成されている。封止側第2接合パターン421は、平面視で環状に形成されている。
【0039】
第2封止部材4の第2主面412(水晶振動板2に面しない外方の主面)には、外部に電気的に接続する4つの外部電極端子43が設けられている。外部電極端子43は、第2封止部材4の4隅(角部)にそれぞれ位置する。
【0040】
第2封止部材4には、図6,7に示すように、第1主面411と第2主面412との間を貫通する4つの貫通孔が形成されている。具体的には、4つの第6貫通孔44は、第2封止部材4の4隅(角部)の領域に設けられている。第6貫通孔44には、第1主面411と第2主面412とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、貫通孔それぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第6貫通孔44それぞれの中央部分は、第1主面411と第2主面412との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。また、第2封止部材4の第1主面411では、第6貫通孔44の周囲には、それぞれ接続用接合パターン45が形成されている。
【0041】
第2封止部材4において、封止側第2接合パターン421、および接続用接合パターン45は、同一のプロセスで形成することができる。具体的には、これらは、第2封止部材4の第1主面411上に物理的気相成長させて形成された下地膜と、当該下地膜上に物理的気相成長させて積層形成された接合膜とから形成することができる。尚、本実施の形態では、下地膜には、Ti(もしくはCr)が用いられ、接合膜にはAuが用いられている。
【0042】
上記の水晶振動板2、第1封止部材3、および第2封止部材4を含む水晶発振器101では、水晶振動板2と第1封止部材3とが振動側第1接合パターン251および封止側第1接合パターン321を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが振動側第2接合パターン252および封止側第2接合パターン421を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図1に示すサンドイッチ構造のパッケージ12が製造される。これにより、パッケージ12の内部空間、つまり、振動部22の収容空間が気密封止される。
【0043】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶発振器101では、第1励振電極221、第2励振電極222、ICチップ5および外部電極端子43の電気的導通が得られるようになっている。
【0044】
具体的には、第1励振電極221は、第1引出配線223、接続用接合パターン27と接続用接合パターン353との接合部、配線パターン33、接続用接合パターン351、第4貫通孔323内の貫通電極、および電極パターン37を順に経由して、ICチップ5に接続される。第2励振電極222は、第2引出配線224、接続用接合パターン28、第2貫通孔262内の貫通電極、接続用接合パターン254と接続用接合パターン352との接合部、第5貫通孔324内の貫通電極、および電極パターン37を順に経由して、ICチップ5に接続される。また、ICチップ5は、電極パターン37、第3貫通孔322内の貫通電極、接続用接合パターン34と接続用接合パターン253との接合部、第1貫通孔261内の貫通電極、接続用接合パターン253と接続用接合パターン45との接合部、および第6貫通孔44内の貫通電極を順に経由して、外部電極端子43に接続される。
【0045】
以上が本実施の形態にかかる水晶発振器101の基本構造であるが、本発明における特徴点は、ICチップ5を第1封止部材3の第1主面311に接合する際に、水晶振動板2の保持部24における保持部折れを抑制するための製造方法にある。これより、この特徴点について詳細に説明する。
【0046】
上述したように、ICチップ5は、金属バンプ38(図1参照)を用いて第1封止部材3の電極パターン37にFCB法により接合される。また、このFCB接合には、超音波接合が用いられる。すなわち、ICチップ5のFCB接合の際には、超音波接合機によってICチップ5と第1封止部材3との接合面に垂直な方向の加圧力を与えながらICチップ5に接合面と平行な方向の超音波振動を印加する。これにより金属バンプ38と電極パターン37とが擦れあって摩擦による発熱が生じ、金属バンプ38と電極パターン37とが溶融接合されることになる。
【0047】
本実施の形態に係る水晶発振器101の製造方法において、超音波接合機によって印加される超音波の周波数は62kHzであった。また、振動部22において、保持部24の突出方向と直交する方向(図8に示す矢印A方向)の振動モードにおける固有振動数は、185.5kHzであった。すなわち、上記振動モードにおける固有振動数は、印加される超音波周波数の整数倍(約3倍)である。このため、ICチップ5をFCB接合する方法によっては、振動部22の共振が生じて保持部折れに繋がる虞がある。
【0048】
ここで、保持部24の突出方向を第1方向とし、ICチップ5を超音波接合する際に印加される超音波の振動方向を第2方向とする場合、第1方向と第2方向とが互いに直交する関係にあれば、振動部22の共振が大きくなり保持部折れが生じ易くなる。これは、超音波の振動方向が、保持部24の突出方向と直交する方向(図8に示す矢印A方向)と平行になるためである。上述したように、保持部24の突出方向と直交する方向への振動は、共振が生じた場合に保持部折れに繋がるような応力集中を保持部24に生じさせ易い。
【0049】
このため、本実施の形態に係る水晶発振器101の製造方法においては、ICチップ5をFCB接合する際に、保持部24の突出方向である第1方向と超音波の振動方向である第2方向とが直交しないようにすることを特徴とする。このようにすることで、仮に保持部24の突出方向と直交する方向への振動モードにおける固有振動数が、印加される超音波周波数の整数倍になっていたとしても、第1方向と第2方向とが直交する場合に比べて該振動モードにおける共振を低減でき、振動部22の共振による保持部折れを低減することができる。
【0050】
また、保持部折れの低減効果を向上させるためには、第1方向と第2方向とのなす角が45°以下であることが好ましく、第1方向と第2方向とが平行(第1方向と第2方向とのなす角が0°)であることが最も好ましい。
【0051】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0052】
2 水晶振動板(圧電振動板)
3 第1封止部材
4 第2封止部材
5 ICチップ
12 パッケージ(圧電振動子)
22 振動部
23 外枠部
24 保持部
101 水晶発振器(圧電発振器)
211 第1主面
212 第2主面
221 第1励振電極
222 第2励振電極
223 第1引出配線
224 第2引出配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8