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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/04 20060101AFI20221109BHJP
   F02B 61/00 20060101ALI20221109BHJP
   F02B 61/06 20060101ALI20221109BHJP
   B60K 17/30 20060101ALI20221109BHJP
   B60K 17/344 20060101ALI20221109BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20221109BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F02B75/04
F02B61/00 C
F02B61/06 A
B60K17/30 C
B60K17/344 B
F01M1/06 K
F02F7/00 301Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018232085
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020094522
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】大熊 悟
(72)【発明者】
【氏名】茂木 克也
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128088(JP,A)
【文献】特開2010-265821(JP,A)
【文献】特開2008-75611(JP,A)
【文献】特開2016-37944(JP,A)
【文献】特開2007-239497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/04
F02B 61/00
F02B 61/06
B60K 17/30
B60K 17/34
F01M 1/06
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関であるエンジンと、
前記エンジンの駆動力を前輪側と後輪側とに配分するトランスファと、
前記前輪側に配分された駆動力を前記前輪に伝達するアクスルシャフトと、
前記エンジンの圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、
を備え、
前記可変圧縮比機構は、前記エンジンのピストンとクランクシャフトとの間に設けられたリンク機構と、前記リンク機構を制御して前記エンジンの圧縮比を変更可能な制御軸と、該制御軸を駆動するアクチュエータと、を有し、
前記エンジンは、
前記クランクシャフトと前記制御軸とを軸支する第1支持部材と、
前記クランクシャフトと前記制御軸とを軸支すると共に前記アクスルシャフトが貫通する貫通部を有する第2支持部材と、
を有することを特徴とする可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両であって、
前記第1支持部材は、前記クランクシャフトの延在方向に沿って複数設けられると共に前記クランクシャフトと前記制御軸との摺動面に潤滑油を供給する潤滑油路を有し、
前記第2支持部材は、前記クランクシャフトと前記制御軸との摺動面に潤滑油を供給する潤滑油路を設けないことを特徴とする可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両であって、
前記貫通部は、前記第2支持部材に形成された貫通孔であることを特徴とする可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両。
【請求項4】
請求項1または2に記載の可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両であって、
前記貫通部は、前記第2支持部材に形成された二股部であることを特徴とする可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両。
【請求項5】
請求項4に記載の可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両であって、
前記制御軸の軸心方向から見て、前記制御軸の軸心と前記アクスルシャフトとが交差することを特徴とする可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか一つに記載の可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両であって、
前記第2支持部材は、エンジンブロックと第1ボルトの締結により固定され前記クランクシャフトを前記エンジンブロックとの間で軸支する第1支持部と、該第1支持部に第2ボルトの締結により固定され前記制御軸を前記第1支持部との間で軸支する第2支持部と、を有し、
前記第1支持部に形成された前記第1ボルトの貫通孔と、前記第2支持部に形成された前記第2ボルトの貫通孔とが連通することを特徴とする可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変圧縮比機構として、特許文献1に記載の技術が知られている。この公報には、複リンク式ピストン及びクランク機構を利用して、ピストンのストローク特性を変化させることにより、内燃機関の機械的な圧縮比を変更可能とする可変圧縮比機構を備えた車両が開示されている。この車両は、エンジンから出力された駆動力が変速機を介して2つの駆動輪に伝達される二輪駆動車である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-008876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、可変圧縮比機構を四輪駆動車両に適用する際、前輪もしくは後輪の一方側に駆動力を出力すると共に、トランスファを介して他方側に駆動力を出力することになる。例えば車両前方にエンジンを配置した車両に適用する場合、エンジンの下方を前輪駆動用のドライブシャフトを通す必要がある。しかしながら、可変圧縮比機構はピストン下方にリンク機構等を有するため、可変圧縮比機構の更に下方にドライブシャフトを通す場合、多段化された複雑な形状のドライブシャフトの採用が必要となり、また、エンジンの全高が上昇することで、構造の複雑化や大型化を招き、コストアップを招くという問題があった。
本発明の目的の一つは、構造の複雑化や大型化を回避可能な可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、四輪駆動車両のエンジンに備えられた可変圧縮比機構は、ピストンとクランクシャフトとの間に設けられたリンク機構を制御してエンジンの圧縮比を変更可能な制御軸と、該制御軸を駆動するアクチュエータと、を有し、クランクシャフトと制御軸とを軸支する支持部材にアクスルシャフトが貫通する貫通部を設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、エンジンの下方にアクスルシャフトを通した場合でも、エンジンの全高が高くなることを回避しつつ、一部の部品の設計変更のみで可変圧縮比機構を備えた四輪駆動車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の四輪駆動車両を表す概略図である。
図2】実施形態1の四輪駆動車両を正面から見たときの可変圧縮比機構とアクスルシャフトとの位置関係を表す前輪側模式図である。
図3】実施形態1の内燃機関の可変圧縮比機構を示す概略図である。
図4】実施形態1のオイルパン101cを取り外したエンジン概略図である。
図5】実施形態1の制御軸支持部材20の概略を表すB-B断面図である。
図6】実施形態1の第2制御軸支持部材200をx軸方向から見た概略図である。
図7】実施形態1の第2制御軸支持部材200をz軸方向から見た概略図である。
図8】実施形態1の第2制御軸支持部材200と左側アクスルシャフト109cとの位置関係を表す概略図である。
図9】実施形態2の第2制御軸支持部材200と左側アクスルシャフト109cとの位置関係を表す概略図である。
図10】実施形態3の第1制御軸10であって第2制御軸支持部材320を取り外した状態を表す概略斜視図である。
図11】実施形態3の第1制御軸10に第2制御軸支持部材320を取り付けた状態を表す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の四輪駆動車両を表す概略図である。四輪駆動車両は、内燃機関であるエンジン101と、エンジン102から出力された駆動力を変速する変速機102と、変速機102から出力された駆動力を、後輪110RR,110RLに伝達する後輪側プロペラシャフト104と、前輪110FR,110FLに伝達する前輪側プロペラシャフト107とに分配するトランスファ103と、を有する。後輪側プロペラシャフト104の後輪側先端にはドライブピニオン104aを有する。後輪側プロペラシャフト104の駆動力は、ドライブピニオン104aから後輪側ディファレンシャルギヤ105に伝達され、後輪右ドライブシャフト106R及び後輪左ドライブシャフト106Lを介して後輪110RR,110RLを駆動する。
【0009】
同様に、前輪側プロペラシャフト107の前輪側先端にはドライブピニオン107aを有する。前輪側プロペラシャフト107の駆動力は、ドライブピニオン107aから前輪側ディファレンシャルギヤ108に伝達され、左側アクスルシャフト109c及び右側アクスルシャフト109dを駆動する。左側アクスルシャフト109cと前輪左ドライブシャフト109Lとの間及び右側アクスルシャフト109dと前輪右ドライブシャフト109Rとの間には、等速ジョイント120を有する。
【0010】
実施形態1では、エンジン101の下方右側に前輪側ディファレンシャルギヤ108を備えており、右側アクスルシャフト109dは前輪側ディファレンシャルギヤ108を収容するケーシングから延出して等速ジョイント120と接続される一方、左側アクスルシャフト109cは、エンジン101の下方を貫通してエンジン101の左側に延出して等速ジョイント120と接続される。尚、実施形態1では、前輪側ディファレンシャルギヤ108がエンジン101の右側に配置されているため、左側アクスルシャフト109cをエンジン101の下方で貫通させたが、前輪側ディファレンシャルギヤ108がエンジン101の左側に配置される場合は、右側アクスルシャフト109dをエンジン101の下方で貫通させる構成とすればよく、特に限定しない。
【0011】
図2は、実施形態1の四輪駆動車両を正面から見たときの可変圧縮比機構とアクスルシャフトとの位置関係を表す前輪側模式図、図3は、実施形態1の内燃機関の可変圧縮比機構を示す概略図である。
まず、可変圧縮比機構100の構成について説明する。シリンダブロックのシリンダ内を往復運動するピストン1には、ピストンピン2を介してアッパリンク3の上端が回転自在に連結されている。アッパリンク3の下端には、連結ピン6を介してロアリンク5が回転自在に連結されている。ロアリンク5には、クランクピン4aを介してクランクシャフト4が回転自在に連結されている。また、ロアリンク5には、連結ピン8を介して第1制御リンク7の上端部が回転自在に連結されている。第1制御リンク7の下端部は、複数のリンク部材を有する連結機構9と連結されている。連結機構9は、第1制御軸10と、第2制御軸(制御軸)11と、第1制御軸10および第2制御軸11とを連結するアクチュエータリンク12と、を有する。
【0012】
第1制御軸10は、内燃機関内部の気筒列方向に延在するクランクシャフト4と平行に延在する。第1制御軸10は、内燃機関本体に回転自在に支持される第1ジャーナル部10aと、第1制御リンク7の下端部が回転自在に連結された制御偏心軸部10bと、アクチュエータリンク12の一端部12aが回転自在に連結された偏心軸部10cと、を有する。
第1アーム部10dは、一端が第1ジャーナル部10aと連結され、他端が第1制御リンク7の下端部と連結されている。制御偏心軸部10bは、第1ジャーナル部10aに対して所定量偏心した位置に設けられる。第2アーム部10eは、一端が第1ジャーナル部10aと連結され、他端がアクチュエータリンク12の一端部12aと連結されている。
偏心軸部10cは、第1ジャーナル部10aに対して所定量偏心した位置に設けられる。アクチュエータリンク12の他端部12bは、アームリンク13の一端が回転自在に連結されている。アームリンク13の他端には、第2制御軸11が連結されている。アームリンク13と第2制御軸11は相対移動しない。第2制御軸11は、ハウジング内に複数のジャーナル部を介して回転自在に支持されている。
【0013】
アクチュエータリンク12は、レバー形状であり、偏心軸部10cに連結された一端部12aは、略直線的に形成され、アームリンク13が連結された他端部12bは、湾曲形成されている。第2制御軸11は、内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータの一部である波動歯車型減速機を介して電動モータ14から伝達されたトルクによって回転位置が変更される。第2制御軸11の回転位置が変更されると、アクチュエータリンク12の姿勢が変化して第1制御軸10が回転し、第1制御リンク7の下端部の位置を変更する。これにより、ロアリンク5の姿勢が変化し、ピストン1のシリンダ内におけるストローク位置やストローク量を変化させ、これに伴って機関圧縮比を変更する。
【0014】
図2に戻り、エンジン101は、シリンダが形成されたエンジンブロック101aと、エンジンブロック101aの下方に取り付けられたオイルパン101cとを有する。エンジンブロック101aの下端は、クランクシャフト4の軸心部分にまで延在されている。オイルパン101cの左側側面には、可変圧縮比機構100の波動歯車型減速機や電動モータが収容されている。
【0015】
図4は、実施形態1のオイルパン101cを取り外したエンジン概略図である。図4のうち左右方向に延びる軸をx軸と定義し、上下方向に延びる軸をz軸と定義する。言い換えると、x軸方向とは、クランクシャフト4の延在方向であり、z軸とは、車載時における重力方向である。尚、x軸とz軸の両方に直交するy軸は、左側アクスルシャフト109cの延在方向である。x軸方向に延在するクランクシャフト4と第1制御軸10との間は、第1制御リンク7によって連結されている。また、第1制御軸10は、エンジンブロック101aに固定された第1制御軸支持部材20及び第2制御軸支持部材200により回転可能に軸支されている。第1制御軸支持部材20は、複数の第1制御リンク7に隣接して複数設けられている。
【0016】
図5は、実施形態1の制御軸支持部材20の概略を表すB-B断面図である。第1制御軸支持部材20は、エンジンブロック101aに対してボルト20a2により締結される第1上側支持部材20aと、第1上側支持部材20aに対してボルト20b2により締結される第1下側支持部材20bと、を有する。第1上側支持部材20aは、クランクシャフト4を軸支する軸受部20a1と、第1制御軸10を軸支する軸受部20a2と、を有する。第1下側支持部材20bは、第1制御軸10を軸支する軸受部20b1を有する。
【0017】
第1制御軸支持部材20のうち、図4中の左から1番目,3番目及び5番目の第1制御軸支持部材20には、図5に示すように第1制御軸10の軸受部20a2に潤滑油を供給する潤滑油路20c2が形成されている。エンジンブロック101a内には、クランクシャフト4を軸支する軸受部20a1に潤滑油を供給する潤滑油路20c1が形成されている。軸受部20a1に供給された潤滑油は、潤滑油路20c2を介して第1制御軸10を軸支する軸受部20b1に供給される。
【0018】
実施形態1にあっては、複数の制御軸支持部材20のうち、図4中の左から2番目に、左側アクスルシャフト109cを貫通させる第2制御軸支持部材200が取り付けられている。尚、エンジン下方をアクスルシャフトが貫通しない従来のエンジンでは、第2制御軸支持部材200の位置に設けられていた制御軸支持部材に、当初から潤滑油路20c2が形成されていない。よって、実施形態1のように第2制御軸支持部材200を配置する際も、第2制御軸支持部材200内に潤滑油路を形成する必要が無く、潤滑性能に悪影響を及ぼすことが無い。また、第1制御軸10はオイルパン101c内に配置されているため、潤滑性能を確保できる。
【0019】
図6は、実施形態1の第2制御軸支持部材200をx軸方向から見た概略図、図7は、実施形態1の第2制御軸支持部材200をz軸方向から見た概略図、図8は、実施形態1の第2制御軸支持部材200と左側アクスルシャフト109cとの位置関係を表す概略図である。第2制御軸支持部材200は、エンジンブロック101aとボルト締結される上側支持部材201と、上側支持部材201の下方とボルト締結される下側支持部材202とを有する。エンジンブロック101aの下端には、クランクシャフト4の上半分を軸支する軸受部101a1が形成されている。上側支持部材201の上端には、クランクシャフト4の下半分を軸支する軸受部201b1が形成され、軸受部101a1と組み合わせてクランクシャフト4を軸支する。上側支持部材201の下端には、第1制御軸10の上半分を軸支する軸受部201c1が形成されている。下側支持部材202の上端には、第1制御軸10の下半分を軸支する軸受部202aが形成され、軸受部201c1と組み合わせて第1制御軸10を軸支する。
【0020】
上側支持部材201のエンジンブロック101a側には、ボルト貫通孔201b2を有し、エンジンブロック101aに形成された雌ねじ部101a3にボルト201dを締め付けることで、エンジンブロック101aに上側支持部材201を締結固定する上側台座部201bが形成されている。また、上側支持部材201の下側支持部材202側には、ボルト202e及び202fが締め込まれる雌ねじ部201cを有する。下側支持部材202には、ボルト202e,fが貫通するボルト貫通孔202e1,202f1し、雌ねじ部201cにボルト202e,fを締め付けることで、上側支持部材201に下側支持部材202を締結固定する下側台座部201aが形成されている。図7に示すように、下側支持部材202は、z軸方向から見たときにクランク形状とされている。下側支持部材202は、軸受部202aのy軸方向端部においてx軸側(一端側はx軸正方向側、他端側はx軸負方向側)に張り出した台座部202cを有する。台座部202cには、ボルト202eが貫通する貫通孔202e1と、ボルト202fが貫通する貫通孔202f1が形成されている。
【0021】
図4に示すように、上側支持部材201をy軸方向から見たとき、上側支持部材201には、左側アクスルシャフト109cが貫通する貫通孔200aが形成されている。貫通孔200aは、複数の第1制御リンク7の間であって、かつ、クランクシャフト4と第1制御軸10との間の空間と連通するように開口する。左側アクスルシャフト109cは、第1制御軸10やクランクシャフト4の延在方向に対して直交方向に延在する。
【0022】
仮に第2制御軸支持部材200の位置に、他の制御軸支持部材20が存在すると、この部分を左側アクスルシャフト109cが貫通することができない。この場合、左側アクスルシャフト109cは、第1制御軸10の下方を迂回してエンジン101の左側に取り出す必要があり、エンジン101の全高が増大する、もしくは複雑な形状のアクスルシャフトを形成する必要があり、コストアップを招くおそれがあった。これに対し、実施形態1では、第1制御リンク7に貫通孔200aを設けたため、図2に示すように、左側アクスルシャフト109cがエンジン101の下方のオイルパン101c内を貫通することが可能となり、複雑な形状のアクスルシャフトが不要で、かつ、エンジン101の全高が高くなるといった問題も回避することができる。
【0023】
以上説明したように、実施形態1にあっては、下記の作用効果が得られる。
(1)内燃機関であるエンジン101と、エンジン101の駆動力を前輪側と後輪側とに配分するトランスファ103と、前輪側に配分された駆動力を前輪110FR,FLに伝達する左側アクスルシャフト109c(アクスルシャフト)と、エンジン101の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構100と、を備えた四輪駆動車両であって、可変圧縮比機構100は、エンジン101のピストン1とクランクシャフト4との間に設けられた第1制御リンク7(リンク機構)と、第1制御リンク7を制御してエンジン101の圧縮比を変更可能な第1制御軸10(制御軸)と、第1制御軸10を駆動する電動モータ14(アクチュエータ)と、を有し、エンジン101は、クランクシャフト4と第1制御軸10とを軸支する第1制御軸支持部材20(第1支持部材)と、クランクシャフト4と第1制御軸10とを軸支すると共に左側アクスルシャフト109cが貫通する貫通孔200a(貫通部)を有する第2制御軸支持部材200(第2支持部材)と、を備えた。
よって、エンジン101の下方に左側アクスルシャフト109cを通した場合でも、エンジン101の全高が高くなることを回避しつつ、一部の部品の設計変更のみで四輪駆動車両を提供できる。
【0024】
(2)第1支持部材20は、クランクシャフト4の延在方向に沿って複数設けられると共にクランクシャフト4と第1制御軸10との摺動面に潤滑油を供給する潤滑油路20cを有し、第2支持部材200は、クランクシャフト4と第1制御軸10との摺動面に潤滑油を供給する潤滑油路を設けない。
よって、潤滑油路を備えていない支持部材の設計変更を行うため、潤滑性能に影響を回避できる。尚、実施形態1では、オイルパン101c内に第1制御軸10が配置されているため、潤滑性能を確保できる。
【0025】
(3)貫通部は、第2制御軸支持部材200に形成された貫通孔200aである。よって、第1制御軸10を設計変更することなく、左側アクスルシャフト109cをエンジン101の下方に配置できる。
【0026】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2について説明する。基本的な構成は実施形態1と同じであるため、実施形態1と相違する部分のみ説明する。図9は、実施形態2の第2制御軸支持部材200と左側アクスルシャフト109cとの位置関係を表す概略図である。実施形態1では、上側支持部材201に形成されたボルト貫通孔201b2と、上側支持部材201に形成された雌ねじ部201cとを別々に加工していた。これに対し、実施形態2では、雌ねじ部201cと同じ軸心位置であって、雌ねじ部201cの底部に、雌ねじ部201cより小径のボルト貫通孔201b2を形成し、下側支持部材202の台座部202cであってボルト貫通孔201b2と同じ軸心位置に、ボルト202eが貫通する貫通孔202e2と、ボルト202fが貫通する貫通孔202f2とを形成する。そして、下側支持部材202を上側支持部材201に締め付け固定するボルト201e,fの位置と、上側支持部材201をエンジンブロック101aに締め付け固定するボルト201dの位置とを同一軸心位置とした。よって、実施形態1では、上側台座部201bが形成可能な位置にしかボルト201dを配置できなかったのに対し、実施形態2では、上側台座部201bが不要なため、ボルト位置の設定自由度を向上できる。
【0027】
(4)第2制御軸支持部材200は、エンジンブロック101aとボルト201d(第1ボルト)の締結により固定されクランクシャフト4をエンジンブロック101aとの間で軸支する上側支持部材201(第1支持部)と、上側支持部材201にボルト202e,f(第2ボルト)の締結により固定され第1制御軸10を上側支持部材201との間で軸支する下側支持部材202(第2支持部)と、を有し、上側支持部材201に形成されたボルト201dの貫通孔201b2と、下側支持部材202に形成されたボルト202e,fの貫通孔202e2,202f2と、が連通することとした。よって、ボルト位置の設定自由度を向上できる。
【0028】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3について説明する。基本的な構成は実施形態1と同じであるため、実施形態1と相違する部分のみ説明する。図10は、実施形態3の第1制御軸10であって第2制御軸支持部材320を取り外した状態を表す概略斜視図、図11は、実施形態3の第1制御軸10に第2制御軸支持部材320を取り付けた状態を表す概略斜視図である。実施形態1では、第1制御軸10を軸支する第2制御軸支持部材200に貫通孔200aを形成した。これに対し、実施形態3では、第1制御軸10に左側アクスルシャフト109cを回避する回避軸部300を有する。
【0029】
回避軸部300は、x軸方向から見て円筒形状であり、第1制御軸10の軸部にそれぞれ連結された二つの円筒継手部301と、二つの円筒継手部301をz軸方向上方で連結する連結部302と、を有する。円筒継手部301と連結部302とで囲まれた部分は、左側アクスルシャフト109cが貫通可能な回避部303である。尚、第1制御軸10は、360度を超えて回転するわけではなく、所定角度範囲内で回動する。よって、円筒継手部301の外形サイズを軸部に対して大きく形成し、第1制御軸10の最大回動位置において左側アクスルシャフト109cと非接触となる位置に連結部302を設けることで、連結部302が左側アクスルシャフト109cと干渉することを回避する。
【0030】
第2制御軸支持部材320は、クランクシャフト4を軸支するベース部321と、ベース部321から二股に分岐する分岐部322と、分岐部322の両側で円筒継手部301を軸支する軸支部323と、を有する。すなわち、分岐部322及び軸支部323によって二股部が形成されるため、左側アクスルシャフト109cは、二つの軸支部323の間に挟まれた空間を貫通できる。実施形態1では、左側アクスルシャフト109cがクランクシャフト4と第1制御軸10との間を通る位置に配置されていた。言い換えると、左側アクスルシャフト109cの配置位置は、クランクシャフト4と第1制御軸10との間にしか配置できない構成である。これに対し、実施形態3では、左側アクスルシャフト109cが第1制御軸10の軸心と交差する位置であっても配置することができるため、レイアウト自由度を向上できる。
【0031】
(5)左側アクスルシャフト109cは、第2制御軸支持部材320に形成された二股部を貫通する。よって、左側アクスルシャフト109cのレイアウト自由度を向上できる。
【0032】
(6)第1制御軸10の軸心方向から見て、第1制御軸10の軸心と左側アクスルシャフト109cとが交差する。よって、第1制御軸10の位置に左側アクスルシャフト109cを配置することが可能となり、更にレイアウト自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0033】
1 ピストン
4 クランクシャフト
7 第1制御リンク
10 第1制御軸
11 第2制御軸
12 アクチュエータリンク
13 アームリンク
14 電動モータ(アクチュエータ)
20 第1制御軸支持部材
20c2 潤滑油路
100 可変圧縮比機構
101 エンジン
102 変速機
103 トランスファ
108 前輪側ディファレンシャルギヤ
109c 左側アクスルシャフト
110FR,FL 前輪
110RR,RL 後輪
200 第2制御軸支持部材
200a 貫通孔
図1
図2
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図11