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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】建築物及び建築物の壁施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20221109BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20221109BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E04B1/80 100B
E04B1/76 400M
E04B1/76 500G
E04B2/56 622C
E04B2/56 622J
E04B2/56 605D
E04B2/56 605C
E04B2/56 622W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018234540
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094449
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】杉村 保人
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
(72)【発明者】
【氏名】梅野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】今村 高明
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 克己
(72)【発明者】
【氏名】平井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩本 昌也
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 俊明
(72)【発明者】
【氏名】畑 雅之
(72)【発明者】
【氏名】麻野 翔太
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-321368(JP,A)
【文献】特開平03-244729(JP,A)
【文献】特開2014-173256(JP,A)
【文献】特開昭63-201232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76,1/80
E04B 2/56,2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネルを備えた建築物であって、
前記複数の外壁パネルの各々は、
軸組と、
前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、
前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、
前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、
前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、
前記軸組の外側に配置されており、前記第1金具と前記第2金具とを連結する連結具と、を備え、
前記複数の外壁パネルは、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が前記隙間における前記連結具の内側において互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されている、建築物。
【請求項2】
水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネルを備えた建築物であって、
前記複数の外壁パネルの各々は、
軸組と、
前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、
前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、
前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、
前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、を備え、
前記複数の外壁パネルは、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されており、
前記複数の外壁パネルの各々は、
前記外壁同士の間の水平方向の隙間を通じて少なくとも前記連結部が開放された状態で、前記第1金具と前記第2金具とを互いに回転可能に連結する連結具と、
前記連結具が外側に開放されるように、前記連結部と前記外壁との間の隙間に配置された第2断熱材と、をさらに備える、建築物。
【請求項3】
水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネルを備えた建築物であって、
前記複数の外壁パネルの各々は、
軸組と、
前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、
前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、
前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、
前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、を備え、
前記複数の外壁パネルは、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されており、
前記複数の外壁パネルの各々は、前記外壁の内面に沿って配置された第3断熱材をさらに備え、
前記第1断熱材は、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなる、建築物。
【請求項4】
前記複数の外壁パネルは、鉛直方向にも互いに隣接するように配置されており、
鉛直方向に隣接する前記外壁パネルの前記第3断熱材の間に介在し、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなる第4断熱材をさらに備えた、請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
前記軸組は、
各々が鉛直方向に延び且つ水平方向に互いに間隔を空けて配置された複数の柱と、
水平方向に隣接する2本の前記柱の間に架け渡された筋交いと、を含み、
前記複数の外壁パネルの各々は、前記第3断熱材と前記筋交いとの間に配置され、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなる第5断熱材をさらに備え、
前記建築物は、前記複数の外壁パネルの各々に組み付けられる複数の内装パネルをさらに備え、
前記複数の内装パネルの各々は、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなり、前記第5断熱材との間で前記筋交いを挟む第6断熱材と、前記第5断熱材及び前記第6断熱材を前記第3断熱材との間で挟む第7断熱材と、を備える、請求項3または4に記載の建築物。
【請求項6】
前記複数の外壁パネルの各々は、前記第5断熱材の前記筋交い側を向く面に貼り付けられた透湿防水シートをさらに備える、請求項5に記載の建築物。
【請求項7】
建築物の壁を施工する方法であって、
複数の外壁パネルを準備するパネル準備工程と、
前記複数の外壁パネルを、水平方向に互いに隣接するように設置するパネル設置工程と、を備え、
前記パネル準備工程では、軸組と、前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、前記軸組の外側に配置されており、前記第1金具と前記第2金具とを連結する連結具と、を備えた前記外壁パネルを複数準備し、
前記パネル設置工程では、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が前記隙間における前記連結具の内側において互いに接触するように、前記複数の外壁パネルを水平方向に隣接した状態で配置する、建築物の壁施工方法。
【請求項8】
前記複数の外壁パネルの各々に内装パネルを組み付ける工程であって、水平方向に隣接する前記内装パネルの内装断熱材同士が前記軸組よりも内側において互いに接触するように前記内装パネルを前記複数の外壁パネルの各々に組み付けるパネル組付工程をさらに備えた、請求項7に記載の建築物の壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物及び建築物の壁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、建築物のうち人が居住する住宅において種々の断熱材を配置することが知られている。この断熱材により居住空間の内外間における熱の出入りを防ぎ、住宅の省エネルギー性や快適性を確保することができる。
【0003】
特許文献1には、建築物の外壁パネルに断熱材を配置することが記載されている。具体的に、この外壁パネルは、屋外側を向く矩形板状のサイディング材と、このサイディング材の裏面の周縁に固定された枠材と、サイディング材の裏面から屋内側へ離間して設けられ、グラスウールやロックウールなどからなる無機系断熱材と、を備えるものである。またこの外壁パネルは、取付用金具によって枠材を軸組に押さえ付けることにより、当該軸組に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6119820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、住宅に求められる省エネルギー性や快適性が高まっており、それに伴って住宅の断熱性能の向上が求められている。特許文献1では、水平方向に隣接する外壁パネルの断熱材同士の間に枠材が介在しており、水平方向において外壁パネル間の断熱構造の連続性が途切れている。このため、外壁パネルの目地を通じた屋内空間の内外間における熱の出入りを十分に抑止することが困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接する外壁パネル間の水平方向における断熱構造の連続性を確保することが可能な建築物及びその壁施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る建築物は、水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネルを備えている。前記複数の外壁パネルの各々は、軸組と、前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、前記軸組の外側に配置されており、前記第1金具と前記第2金具とを連結する連結具と、を備えている。前記複数の外壁パネルは、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が前記隙間における前記連結具の内側において互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されている。
【0008】
この建築物では、第1金具と第2金具とが互いに回転可能に連結されることにより外壁が軸組に対して回転可能となっており、且つその連結部と軸組との間の隙間に配置された第1断熱材同士が水平方向において互いに接触している。これにより、外壁パネル間の水平方向における断熱構造の連続性が確保され、外壁同士の隙間を通じた内外間における熱の出入りを防ぐことができる。しかも、第1断熱材は、両金具の連結部と軸組との間、すなわち当該連結部よりも内側に配置されているため、当該連結部の調整作業が第1断熱材
により妨げられることがない。
【0009】
本発明の他の局面に係る建築物は、水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネルを備えている。前記複数の外壁パネルの各々は、軸組と、前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、を備えている。前記複数の外壁パネルは、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されている。前記複数の外壁パネルの各々は、前記外壁同士の間の水平方向の隙間を通じて少なくとも前記連結部が開放された状態で、前記第1金具と前記第2金具とを互いに回転可能に連結する連結具と、前記連結具が外側に開放されるように、前記連結部と前記外壁との間の隙間に配置された第2断熱材と、をさらに備えている
【0010】
この建築物では、第1金具と第2金具とが互いに回転可能に連結されることにより外壁が軸組に対して回転可能となっており、且つその連結部と軸組との間の隙間に配置された第1断熱材同士が水平方向において互いに接触している。これにより、外壁パネル間の水平方向における断熱構造の連続性が確保され、外壁同士の隙間を通じた内外間における熱の出入りを防ぐことができる。しかも、第1断熱材は、両金具の連結部と軸組との間、すなわち当該連結部よりも内側に配置されているため、当該連結部の調整作業が第1断熱材により妨げられることがない。
さらに、この構成によれば、第1断熱材に加えて第2断熱材をさらに備えることにより、壁の厚み方向における断熱性能をより向上させることができる。しかも、第2断熱材は、連結具が外側に開放されるように配置されているため、連結具の調整作業が第2断熱材により妨げられることがない。
【0011】
本発明の他の局面に係る建築物は、水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネルを備えている。前記複数の外壁パネルの各々は、軸組と、前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、を備えている。前記複数の外壁パネルは、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されている。前記複数の外壁パネルの各々は、前記外壁同士の間の水平方向の隙間を通じて少なくとも前記連結部が開放された状態で、前記第1金具と前記第2金具とを互いに回転可能に連結する連結具と、前記連結具が外側に開放されるように、前記連結部と前記外壁との間の隙間に配置された第2断熱材と、をさらに備えている
【0012】
この建築物では、第1金具と第2金具とが互いに回転可能に連結されることにより外壁が軸組に対して回転可能となっており、且つその連結部と軸組との間の隙間に配置された第1断熱材同士が水平方向において互いに接触している。これにより、外壁パネル間の水平方向における断熱構造の連続性が確保され、外壁同士の隙間を通じた内外間における熱の出入りを防ぐことができる。しかも、第1断熱材は、両金具の連結部と軸組との間、すなわち当該連結部よりも内側に配置されているため、当該連結部の調整作業が第1断熱材により妨げられることがない。
さらに、この構成によれば、外壁が軸組に対して回転して第1断熱材同士が強く接触する場合でも、第1断熱材の柔軟性によりその衝撃を吸収することができるため、第1断熱材の割れを防止することができる。
【0013】
上記建築物において、前記複数の外壁パネルは、鉛直方向にも互いに隣接するように配置されていてもよい。上記建築物は、鉛直方向に隣接する前記外壁パネルの前記第3断熱材の間に介在し、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなる第4断熱材をさらに備えていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第3断熱材の間に柔軟な第4断熱材を挟むことにより、第3断熱材同士の繋ぎ部分において隙間が生じにくくなる。これにより、建築物の鉛直方向における断熱構造の連続性をより確実に確保することができる。
【0015】
上記建築物において、前記軸組は、各々が鉛直方向に延び且つ水平方向に互いに間隔を空けて配置された複数の柱と、水平方向に隣接する2本の前記柱の間に架け渡された筋交いと、を含んでいてもよい。前記複数の外壁パネルの各々は、前記第3断熱材と前記筋交いとの間に配置され、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなる第5断熱材をさらに備えていてもよい。前記建築物は、前記複数の外壁パネルの各々に組み付けられる複数の内装パネルをさらに備えていてもよい。前記複数の内装パネルの各々は、前記第3断熱材よりも柔軟性が高い材料からなり、前記第5断熱材との間で前記筋交いを挟む第6断熱材と、前記第5断熱材及び前記第6断熱材を前記第3断熱材との間で挟む第7断熱材と、を備えていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第5~第7断熱材をさらに備えることにより、壁の厚み方向における断熱性能をさらに向上させることができる。しかも、柔軟な第5及び第6断熱材によって筋交いを挟むことにより、当該筋交いの周囲の空間を断熱材により簡単に充填することができる。また外壁パネルに対して内装パネルを組み付けるだけで壁を組み立てることができるため、壁の施工を省力化し、また工期を短縮することができる。
【0017】
上記建築物において、前記第5断熱材及び前記第6断熱材は、繊維系断熱材であってもよい。
【0018】
この構成によれば、筋交いの周囲の空間を断熱材によりさらに充填し易くなる。
【0019】
上記建築物において、前記複数の外壁パネルの各々は、前記第5断熱材の前記筋交い側を向く面に貼り付けられた透湿防水シートをさらに備えていてもよい。
【0020】
この構成によれば、先に外壁パネルを組み付けた後に内装パネルを貼り合わせるという手順で施工を行う場合において、雨除けがない環境においても、繊維系断熱材(第5断熱材)が濡れるのを防止することができる。また当該繊維系断熱材に含まれる水分の放出も許容することができる。
【0021】
本発明の他の局面に係る建築物の壁施工方法は、建築物の壁を施工する方法であって、複数の外壁パネルを準備するパネル準備工程と、前記複数の外壁パネルを、水平方向に互いに隣接するように設置するパネル設置工程と、を備えている。前記パネル準備工程では、軸組と、前記軸組から離間して前記軸組の外側に配置された外壁と、前記軸組に取り付けられると共に、前記軸組から前記外壁側に延びる第1金具と、前記外壁に取り付けられると共に前記外壁から前記軸組側に延び、前記第1金具に対して回転可能に連結された第2金具と、前記第1金具と前記第2金具との連結部と前記軸組との間の隙間に配置された第1断熱材と、前記軸組の外側に配置されており、前記第1金具と前記第2金具とを連結する連結具と、を備えた前記外壁パネルを複数準備する。前記パネル設置工程では、前記外壁同士の間に水平方向の隙間が形成されると共に前記第1断熱材同士が前記隙間における前記連結具の内側において互いに接触するように、前記複数の外壁パネルを水平方向に隣接した状態で配置する。
【0022】
この方法によれば、第1断熱材同士が互いに接触するように複数の外壁パネルを水平方向に隣接した状態で配置することにより、外壁パネル間の水平方向における断熱構造の連続性が確保され、外壁同士の隙間を通じた内外間における熱の出入りを防ぐことができる。しかも、第1金具と第2金具との連結部と軸組との間、すなわち当該連結部よりも内側に配置された第1断熱材同士を互いに接触させることにより、当該連結部の調整作業が第1断熱材により妨げられることもない。
【0023】
上記建築物の壁施工方法は、前記複数の外壁パネルの各々に内装パネルを組み付ける工程であって、水平方向に隣接する前記内装パネルの内装断熱材同士が前記軸組よりも内側において互いに接触するように前記内装パネルを前記複数の外壁パネルの各々に組み付けるパネル組付工程をさらに備えていてもよい。
【0024】
この方法によれば、軸組より内側においてもパネル間の水平方向における断熱構造の連続性を確保することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、隣接する外壁パネル間の水平方向における断熱構造の連続性を確保することが可能な建築物及びその壁施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る建築物の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る建築物における水平方向の断熱構造の連続性を説明するための断面図である。
図3】建築物に水平方向の外力が加わった時の軸組の動きを説明するための模式図である。
図4】建築物に水平方向の外力が加わった時の外壁の動きを説明するための模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る建築物における鉛直方向の断熱構造の連続性を説明するための断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る建築物の壁施工方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る建築物及び建築物の壁施工方法について詳細に説明する。
【0028】
(建築物)
図1は、本実施形態に係る建築物1の全体構成を模式的に示している。本実施形態に係る建築物1は、二階建ての鉄骨住宅であり、図1に示すように、基礎2と、当該基礎2上に配置された一階壁3と、当該一階壁3上に配置された二階壁4と、当該二階壁4上に配置された屋根5と、を主に備えている。なお、建築物1の階数は特に限定されない。
【0029】
基礎2は、一階壁3、二階壁4及び屋根5を支持するための部分であり、例えば鉄筋コンクリートからなる。基礎2は、地面(図示しない)から立ち上がるように設けられている。
【0030】
一階壁3は、水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネル6を備えている。図1に示すように、各外壁パネル6は、矩形状を有しており、その長さ方向が鉛直方向に沿った姿勢で基礎2上に並べられている。各外壁パネル6の上部は床梁8(一階と二階との間に位置する梁)に固定されており、各外壁パネル6の下部はアンカーボルト(図示しない)などにより基礎2に固定されている。また隣接する外壁パネル6同士も互いに連結されている。
【0031】
二階壁4は、床梁8を挟んで一階壁3の上側に設けられている。二階壁4は、一階壁3と同様に、水平方向に互いに隣接する複数の外壁パネル6を備えている。二階壁4を構成する外壁パネル6は、一階壁3を構成する外壁パネル6と同じものである。二階壁4を構成する各外壁パネル6の上部は小屋梁に固定されており、その下部は床梁8に固定されている。
【0032】
図2は、外壁パネル6の配列方向に沿った一階壁3の水平断面図であり、複数(二枚)の外壁パネル6及び当該外壁パネル6に組み付けられる複数(二枚)の内装パネル7が示されている。図2中において、一点鎖線L1よりも外側(屋外側)の部分が外壁パネル6に相当し、当該一点鎖線L1よりも内側(屋内側)の部分が内装パネル7に相当する。
【0033】
まず、外壁パネル6の構成について説明する。図2に示すように、各外壁パネル6は、軸組10と、外壁20と、第1金具30と、第2金具40と、連結具50と、第1断熱材61と、第2断熱材62と、第3断熱材63と、第5断熱材64と、透湿防水シート70と、を主に備えている。以下、外壁パネル6の各構成要素についてそれぞれ説明する。
【0034】
軸組10は、複数本の鉄骨フレームが矩形枠状に組み付けられたものであり、二本の柱12と、当該二本の柱12の間に架け渡された筋交い(ブレース)13と、を含む。図2に示すように、柱12は、C形鋼からなり、隣接する外壁パネル6と反対向きに開口するように配置されている。図1に示すように、二本の柱12は、各々が鉛直方向に延び、且つ水平方向に互いに間隔を空けて配置されている。また筋交い13は、軸組10の矩形枠の二つの対角線上にそれぞれ配置されている。なお、柱12は、C形鋼からなるものに限定されず、任意の形状の鋼材を用いることができる。また建築物1における全ての外壁パネル6が筋交い13を備える場合に限定されず、例えば開口部が設けられた外壁パネルにおいては筋交い13が省略される。
【0035】
外壁20は、軸組10から離間して当該軸組10の外側(屋外側)に配置されている。
外壁20は、軸組10の外形に沿った矩形状を有するコンクリート製のものであり、屋外側を向く外面20Cと、屋内側を向く内面20Aと、外面20Cと内面20Aとを接続する側面20Bと、を含む。外面20Cには、意匠用の凹凸(図示しない)が設けられている。内面20Aには、鉛直方向に延びるC形鋼からなるフレーム21が、屋内側に開口する向きで配置されている。
【0036】
図2に示すように、複数の外壁パネル6は、外壁20の側面20B同士の間に水平方向の隙間G2(目地)が形成されるように、水平方向に隣接して配置されている。この隙間G2は、屋内側から屋外側に向かって徐々に大きくなっているが、これに限定されない。例えば、当該隙間G2が屋内側から屋外側に向かって徐々に小さくなっていてもよいし、建築物1の内外方向において均一であってもよい。
【0037】
第1金具30は、軸組10に取り付けられると共に、当該軸組10から外壁20側に延びている。具体的には、図2に示すように、第1金具30は、ボルトなどの締結具33により柱12の開口側の面に固定され且つ外側(屋外側)に延びる板状の第1金具部31と、当該第1金具部31の端部から隣りの外壁パネル6側に延びる板状の第2金具部32と、を含む。図2の断面視において、第1金具部31と第2金具部32とは互いに直角を成しており、第1金具30はL字形状を有している。また第2金具部32は、柱12の外面12A(屋外側を向く面)に対して外側に離間しており、より具体的には、柱12の外面12Aと外壁20の内面20Aとの間のほぼ中間に位置している。
【0038】
第2金具40は、外壁20に取り付けられると共に当該外壁20から軸組10側に延びている。具体的には、図2に示すように、第2金具40は、ボルトなどの締結具43によりフレーム21の開口側の面に固定され且つ内側(屋内側)に延びる板状の第1金具部41と、当該第1金具部41の端部から隣りの外壁パネル6側に延びる板状の第2金具部42と、を含む。第2金具40の第2金具部42は、第1金具30の第2金具部32に沿って平行に延びており、当該第2金具部32と重なっている。また第2金具部42は、外壁20の内面20Aに対して内側に離間しており、より具体的には、外壁20の内面20Aと柱12の外面12Aとの間のほぼ中間に位置している。
【0039】
連結具50は、外壁20同士の間の水平方向の隙間G2を通じて少なくとも第1金具30と第2金具40との連結部100(第2金具部32,42の板同士が重なり合う部分)が開放された状態で第1金具30と第2金具40とを互いに回転可能に連結するものであり、連結ボルト51と、押さえ板52と、を有している。連結ボルト51は、第1金具30の第2金具部32を貫通しており、当該第2金具部32に形成されたネジ孔に挿入された状態で固定されている。また図2に示すように、連結ボルト51は、頭部が外壁20同士の隙間G2に臨むように位置している。より具体的には、連結ボルト51の頭部に設けられた被操作部(例えばネジ穴)が、隙間G2を通じて建築物1の外側に開放されている。
【0040】
押さえ板52は、第2金具40の第2金具部42を第1金具30の第2金具部32に対して押さえ付けることにより、第1金具30と第2金具40とを連結する。このときに第2金具40が第1金具30を押さえる力を、連結ボルト51の締め具合により調整することができる。
【0041】
このように、第1金具30と第2金具40とを完全には固定せず、押さえ板52によって第2金具40を第1金具30に対して押さえ付けるように構成することで、第2金具40が第1金具30に対して回転可能に連結されている。これにより、外壁20が軸組10に対して回転(相対移動)可能となっている。具体的には、以下に説明する通りである。
【0042】
図3に示すように、地震発生時などにおいては、建築物1に対して水平方向に大きな外力Fが加わる。この外力Fによって床梁8及び小屋梁9がそれぞれ水平方向に変位し、これに伴って軸組10の柱の上部が下部に対して水平方向に変位する。これにより、軸組10の柱が鉛直方向に対して傾いた状態となる。
【0043】
このとき、上述のように第1金具30と第2金具40との回転が許容されているため、外壁20は、図4に示すように回転運動する。これにより、外壁20のひび割れや脱落を防ぎ、外壁20を保護することができる。
【0044】
図2に示すように、第1断熱材61は、第1金具30と第2金具40との連結部100(第2金具部32,42の板同士が重なり合う部分)と軸組10(柱12の外面12A)との間の隙間G1に配置されている。より具体的には、第1断熱材61は、断面視矩形状を有し、第1金具30の第1金具部31及び第2金具部32の各々に接触(密着)すると共に、柱12の外面12Aに接触(密着)している。第1断熱材61は、第1金具30の第1金具部31及び第3断熱材63に当接するように接着等で固定されている。また第1断熱材61は、外壁20の幅方向両端において、外壁20の長さ方向(鉛直方向)に沿って延びている。第1断熱材61は、第3断熱材63よりも柔軟性が高い軟質断熱材であり、例えば発泡系断熱材又は繊維系断熱材を用いることができる。より具体的には、第1断熱材61は、連続気泡が形成された発泡樹脂(例えばポリウレタンフォーム)であって、形状の復元力を有するものである。
【0045】
図2に示すように、複数の外壁パネル6は、第1断熱材61の外側面61A(隣りの外壁パネル6側を向く面)同士が互いに接触するように、水平方向に隣接して配置されている。これにより、複数の外壁パネル6間の水平方向における断熱構造の連続性を確保することが可能となり、外壁20同士の隙間G2を通じた建築物1の内外間における熱の出入りを第1断熱材61により遮断することができる。しかも、この第1断熱材61は、第1金具30と第2金具40との連結部100と軸組10(柱12)との間、つまり当該連結部100よりも内側(屋内側)に配置されている。このため、例えば連結ボルト51の締め具合を調整する作業が、第1断熱材61により妨げられることがない。
【0046】
さらに、図4に示したように、地震発生時などにおいて外壁20が回転(ロッキング)運動する場合には、第1断熱材61の外側面61A同士が強く押し合うことがある。このため、第1断熱材61が硬質の材料からなる場合には、第1断熱材61同士が押し合うときの力により割れが生じることも考えられる。これに対し、上述のように第1断熱材61として軟質断熱材を用いることにより、第1断熱材61同士が押し合うときの力を変形によって吸収することができ、その結果、第1断熱材61の割れを防ぐことができる。
【0047】
図2に示すように、第2断熱材62は、第1金具30と第2金具40との連結部100と外壁20との間の隙間G3に配置されている。より具体的には、第2断熱材62は、第1断熱材61と同様に断面視矩形状を有し、第2金具40の第1金具部41及び第2金具部42の各々に接触(密着)すると共に、外壁20の内面20Aに接触(密着)している。第2断熱材62は、第2金具40の第1金具部41及び第3断熱材63に当接するように接着等で固定されている。第2断熱材62は、外壁20の幅方向両端において、外壁20の長さ方向(鉛直方向)に沿って延びている。また第2断熱材62は、第1断熱材61と同様に、第3断熱材63よりも柔軟性が高い軟質断熱材であり、例えば発泡系断熱材又は繊維系断熱材を用いることができる。
【0048】
第2断熱材62は、連結具50が建築物1の外側(屋外側)に開放されるように配置されている。具体的には、図2に示すように、第2断熱材62は、連結ボルト51の頭部が屋外側に露出するように、水平方向において互いに離間して配置されている。換言すると
、連結ボルト51は、水平方向において隣り合う二つの第2断熱材62の間に位置している。これにより、連結ボルト51の締め具合を調整する作業が、第2断熱材62により妨げられることがない。
【0049】
第3断熱材63は、例えばポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材であり、外壁20の内面20Aに沿って配置されている。この硬質発泡系断熱材は、第1断熱材61及び第2断熱材62に用いられる軟質発泡系断熱材に比べて断熱性能が高いものである。
【0050】
第3断熱材63は、外壁20よりもやや小さい矩形状を有しており、図2に示すように、外壁20の内面20Aとの間に空間S1を空けて配置されている。この空間S1は、壁内における通気路であり、ここにスペーサ90が配置されてもよい。また第3断熱材63は、柱12の外面12Aよりも外側(屋外側)に配置されているが、これに限定されない。
【0051】
第3断熱材63は、外壁パネル6の配列方向において第1断熱材61及び第2断熱材62の間に配置されている。なお、図2では、外壁20の幅方向両端に配置された第1断熱材61及び第2断熱材62のうち、一方の第1断熱材61及び第2断熱材62のみが示されている。
【0052】
第5断熱材64は、第3断熱材63と筋交い13との間に配置されている。第5断熱材64は、第3断熱材63よりも柔軟性が高い材料からなり、具体的には、グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材からなる。図2に示すように、第5断熱材64は、ピン91により第3断熱材63に固定されている。
【0053】
ここで、軸組10の内側は、上述したように筋交い13が架け渡されることにより入り組んだ構造となっており、当該筋交い13は、第5断熱材64を設ける上での干渉物となる。例えば、第5断熱材64として硬質発泡系断熱材を用いた場合には、筋交い13を避けるように第5断熱材64を加工する必要がある。これに対し、本実施形態のように柔軟な繊維系断熱材からなる第5断熱材64を用いることにより、軸組10の内側における筋交い13の周囲の空間を繊維系断熱材により簡単に充填することが可能になる。なお、第5断熱材64は、繊維系断熱材からなるものに限定されず、例えば軟質発泡系断熱材であってもよい。
【0054】
また図2に示すように、第5断熱材64の筋交い13側を向く面(第3断熱材63と反対側を向く面)には、透湿防水シート70がその全面に貼り付けられている。これにより、繊維系断熱材である第5断熱材64が濡れて性能が低下するのを防止することができ、また第5断熱材64に含まれる水分を外部に放出することもできる。また透湿防水シート70は、筋交い13側を向く面だけでなく、その反対側の面(第3断熱材63側を向く面)を含む第5断熱材64の表面全体を覆うように貼り付けられていてもよい。
【0055】
具体的には、建築物1の壁施工において、まず外壁パネル6を基礎2上に固定し、その後、当該外壁パネル6に対して内装パネル7を組み付ける、という手順が採用される場合がある。ここで、外壁パネル6を固定した後であって内装パネル7を組み付ける前の状態では、第5断熱材64の表面が露出した状態となり、雨除けがない施工環境であれば、第5断熱材64の濡れが問題となる。これを防ぐために、上記透湿防水シート70を用いることができる。
【0056】
なお、透湿防水シート70は、本発明の建築物において必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。例えば、第5断熱材64が強い撥水性を有し、吸水しにくいものであれば
、透湿防水シート70を省略した場合でも性能低下を防ぐことができる。
【0057】
次に、内装パネル7の構成について説明する。図2に示すように、各内装パネル7は、第6断熱材65と、第7断熱材66と、内装断熱材85と、木製フレーム86と、を主に備えている。また内装パネル7の内側には、第7断熱材66の内面及び木製フレーム86の内面に当接するように内装材67が配置されている。
【0058】
第6断熱材65は、第5断熱材64との間で筋交い13を挟むものである。第6断熱材65は、第5断熱材64と同様に、第3断熱材63よりも柔軟性が高い材料、具体的には、グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材からなる。第6断熱材65は、ピン92により第7断熱材66に固定されている。なお、第6断熱材65として繊維系断熱材を用いる理由は、上述した第5断熱材64として繊維系断熱材を用いる理由と同じである。
【0059】
第7断熱材66は、第5断熱材64及び第6断熱材65を、第3断熱材63との間で挟むものである。この第7断熱材66は、基本的に第3断熱材63と同様のものである。すなわち、第7断熱材66は、外壁20よりもやや小さい矩形状を有しており、ポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材からなる。内装材67は、例えば石膏ボードなどであり、第7断熱材66の内面(第6断熱材65と反対側を向く面)に貼り付けられている。
【0060】
また図2に示すように、柱12の内面12B(屋内側を向く面)に接触するように内装断熱材85が配置され、当該内装断熱材85と内装材67との間に木製フレーム86が配置されている。内装断熱材85は柱12の内面12Bに当接するように配置されており、木製フレーム86は内装断熱材85の内面85B(屋内側を向く面)に接着等で固定されている。内装断熱材85は、第1断熱材61と同様に第3断熱材63よりも柔軟性が高い軟質断熱材であり、例えば発泡系断熱材である。
【0061】
各内装断熱材85は、隣接する内装断熱材85側に向かって水平方向外向きに突出している。具体的には、図2に示すように、内装断熱材85の側面85Aは、木製フレーム86の側面86Aよりも水平方向外側に位置している。そして、隣接する内装断熱材85の側面85A同士が互いに押し合うことにより、当該内装断熱材85は水平方向に圧縮されている。これにより、隣接する内装断熱材85同士の間に隙間が生じにくくなり、軸組10よりも屋内側においてもパネル間の断熱構造の連続性を確保することができる。
【0062】
また内装断熱材85は、発泡系断熱材に限定されず、繊維系断熱材であってもよい。なお、本発明の建築物において、内装断熱材85及び木製フレーム86はいずれも必須の構成要素ではなく、省略可能である。
【0063】
図5は、一階壁3及び二階壁4の鉛直断面図である。図5に示すように、複数の外壁パネル6(一階壁3を構成する外壁パネル6及びその上側に位置する二階壁4を構成する外壁パネル6)は、鉛直方向に隣接するように配置されている。
【0064】
建築物1は、一階の外壁パネル6の第3断熱材63と二階の外壁パネル6の第3断熱材63との間に介在する第4断熱材80をさらに備えている。図5に示すように、第4断熱材80は、断面視矩形状を有しており、一階の外壁パネル6の第3断熱材63の上部と二階の外壁パネル6の第3断熱材63の下部との間で鉛直方向に挟まれている。第4断熱材80は、二階の第3断熱材63の下面により鉛直方向下向きに圧縮されている。なお、二階の第3断熱材63が配置されていない状態(非圧縮状態)では、第4断熱材80の上面は、1階の外壁20の上面20Dよりも鉛直方向上側に位置する。
【0065】
第4断熱材80は、第1断熱材61及び第2断熱材62と同様に、第3断熱材63よりも柔軟性が高い軟質断熱材(例えば発泡系断熱材)からなる。これにより、上下の第3断熱材63により第4断熱材80を挟むことで、第3断熱材63同士の繋ぎ部分において隙間が生じにくくなる。これにより、建築物1の鉛直方向における断熱構造の連続性も確実に確保することができる。
【0066】
また図5に示すように、床梁8は、例えばH形鋼からなるものである。一階の軸組10の上部フレーム材が床梁8の下側フランジ8Aに対して連結されており、二階の軸組10の下部フレーム材が床梁8の上側フランジ8Bに対して連結されている。
【0067】
床梁8には、第8断熱材83が嵌め込まれており、これにより建築物1の断熱性能がさらに向上している。図5に示すように、第8断熱材83は、ポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材からなる第1断熱部82と、当該第1断熱部82の上下にそれぞれ設けられ、第1断熱部82よりも柔軟な軟質発泡系断熱材からなる一対の第2断熱部81と、を含む。第2断熱部81は、ボルトなどの締結具と干渉する位置に配置されるため、第1断熱部82に用いられるような硬質発泡系断熱材ではなく、軟質発泡系断熱材からなることが好ましい。なお、この第8断熱材83は、本発明の建築物において必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0068】
軸組10の下部フレーム材には、第3断熱材63及び外壁20の下部を支持するための支持金具94が取り付けられている。支持金具94は、下部フレーム材の開口側の面に固定される第1金具部94Aと、第1金具部94Aの屋外側の端部から垂下する第2金具部94Bと、第2金具部94Bの下端から屋外側に延びる第3金具部94Cと、を含む。第3金具部94Cにより、第3断熱材63及び外壁20の下部が支持されている。これにより、第3断熱材63のズレ落ちを防止することができる。
【0069】
(建築物の壁施工方法)
次に、本実施形態に係る建築物の壁施工方法について説明する。この方法は、上記本実施形態に係る建築物1の壁(一階壁3及び二階壁4)を施工する方法であり、図6のフローチャートに示す手順に従って行われる。
【0070】
まず、複数の外壁パネル6を準備する(パネル準備工程、図6中の工程S1)。各外壁パネル6の構成は上述した通りである。次に、複数の外壁パネル6を、水平方向に互いに隣接するように基礎2(図1)上に設置する(パネル設置工程、図6中の工程S2)。具体的には、図1に示すように、各外壁パネル6が鉛直方向に沿った姿勢で基礎2上に配置され、アンカーボルト(図示しない)などにより基礎2に固定される。
【0071】
図2に示すように、パネル設置工程では、外壁20の側面20B同士の間に水平方向の隙間G2が形成されると共に、第1断熱材61の外側面61A同士が互いに接触するように、複数の外壁パネル6を水平方向に隣接した状態で配置する。これにより、外壁パネル6間における水平方向の断熱構造の連続性を確保することが可能となり、また壁施工後における連結ボルト51の調整作業が第1断熱材61により妨げられることもない。
【0072】
次に、内装パネル7を、基礎2上に設置された複数の外壁パネル6の各々に組み付ける(パネル組付工程、図6中の工程S3)。内装パネル7の構成は上述した通りであって、別途準備される。内装パネル7は、第6断熱材65を筋交い13側に向け且つ内装材67を居住空間側に向けた状態で外壁パネル6に組み付けられる。これにより、図2に示すように、筋交い13が第5断熱材64と第6断熱材65とにより挟まれた状態となる。
【0073】
パネル組付工程では、水平方向に隣接する内装パネル7の内装断熱材85同士が軸組1
0よりも内側(屋内側)において互いに接触するように、内装パネル7を各外壁パネル6に組み付ける。具体的には、図2に示すように、内装断熱材85を柱12の内面12Bに当接するように配置し、隣接する内装断熱材85の側面85A同士が互いに押し合うことにより内装断熱材85が水平方向に圧縮されるように各内装パネル7を組み付ける。これにより、内装断熱材85の圧縮に伴う反力が生じるため、隣接する内装断熱材85の間で隙間が生じにくくなる。したがって、第1断熱材61同士の接触部分だけでなく、内装断熱材85同士の接触部分においても水平方向の断熱構造の連続性を確保することができる。
【0074】
以上のようにして、建築物1の外周全体に亘って一階壁3が施工される。また二階壁4も一階壁3の施工と基本的に同じ要領で施工することができる。
【0075】
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0076】
本発明の建築物は、上記実施形態で説明したような鉄骨軸組構造のものに限定されず、木造軸組構造のものであってもよいし、2×4(ツーバイフォー)工法の建築物にも適用することができる。また住宅に限定されるものでもなく、他の種類の建築物にも適用することができる。
【0077】
本発明の建築物において、第2断熱材62は必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0078】
第3断熱材は、硬質発泡系断熱材に限定されるものではなく、軟質発泡系断熱材であってもよい。しかし、第3断熱材は、外壁パネルにおいて広範囲を占める部材であるため、上記実施形態のように断熱性能が高い硬質発泡系断熱材を用いることが好ましい。
【0079】
本発明の建築物において、第4断熱材80は必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0080】
上記実施形態では、内装材67が内装パネル7の構成要素ではない場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、内装パネル7は、第6断熱材65、第7断熱材66、内装断熱材85及び木製フレーム86に加えて、内装材67も含めて構成されていてもよい。
【0081】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 建築物
6 外壁パネル
7 内装パネル
10 軸組
12 柱
13 筋交い
20 外壁
20A 内面
30 第1金具
40 第2金具
50 連結具
61 第1断熱材
62 第2断熱材
63 第3断熱材
64 第5断熱材
65 第6断熱材
66 第7断熱材
70 透湿防水シート
80 第4断熱材
100 連結部
F 外力
G1,G2,G3 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6