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特許7172550三相交流電動機の駆動方法および駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】三相交流電動機の駆動方法および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20221109BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221109BHJP
   B21C 47/00 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
H02P5/46 Z
H02K7/116
B21C47/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018235240
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020099107
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏明
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-026000(JP,U)
【文献】登録実用新案第3158136(JP,U)
【文献】特開2014-030351(JP,A)
【文献】実開平04-047354(JP,U)
【文献】特開平10-066250(JP,A)
【文献】特公昭54-010776(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
H02K 7/116
B21C 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の給電線を通じて並列に接続された台の三相交流電動機のいずれかを選択して駆動する駆動方法であって、
電源として前記給電線に供給される三相交流電源のうち正相または逆相の電源を給電することによって前記台のうち運転すべき三相交流電動機を選択して駆動する、
ことを特徴とする三相交流電動機の駆動方法。
【請求項2】
前記正相または逆相の電源の給電は、前記台の三相交流電動機に至る電源経路に設けた1組の三相交流給電線を介して行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の三相交流電動機の駆動方法。
【請求項3】
前記台の三相交流電動機は同時に駆動されず、選択された三相交流電動機のみが駆動される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の三相交流電動機の駆動方法。
【請求項4】
正相または逆相の三相交流電源を供給する電源部と、
前記電源部の出力側に直列に接続された1組の三相交流給電線と、
前記1組の三相交流給電線の出力側に並列に接続された複数台の三相交流電動機と、
を備え、
前記複数台の三相交流電動機は、
前記1組の三相交流給電線に設けた正相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された第1の三相交流電動機と、
前記1組の三相交流給電線に設けた逆相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された第2の三相交流電動機と、
を有することを特徴とする三相交流電動機の駆動装置。
【請求項5】
前記1組の三相交流給電線は、スリップリングを介して前記複数台の三相交流電動機と接続されてなる、
ことを特徴とする請求項4に記載の三相交流電動機の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三相交流電動機の駆動方法および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流電動機は、例えば、特許文献1に開示されている自動クレーンの吊具や特許文献2に開示されているロータリーコンプレッサの駆動源に使用されている。
【0003】
三相交流電動機の使用態様としては、例えば、空調設備や給水ポンプシステム等において、駆動源としての三相交流電動機を2台設置し、通常時は一方の電動機を駆動させて運転を行い、故障時や点検時など必要に応じて他方の電動機に切り替えて運転を行うことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭54-10776号公報
【文献】特開平10-66250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2台の三相交流電動機を併用し、必要に応じて切り換えていずれかの電動機を使用する場合、通常、電源から負荷の間の給電線は1系統しか用意されていないので、それぞれの電動機用に個別の給電線を配設することが困難になっている。電源から2台の三相交流電動機の間を1系統のみの三相交流給電線を介して三相交流を給電しつつ運転電動機を切り換えるために機械的な切り替え部品を敷設すると、部品敷設コストが嵩むうえ、所望の時期に自在に切り換えることが難しいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、機械的な切り替え部品を用いることなく、電気的制御のみによって複数台の三相交流電動機に対し円滑に運転切り換えを行うことのできる三相交流電動機の駆動方法および駆動装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明にかかる三相交流電動機の駆動方法は、
共通の給電線を通じて並列に接続された台の三相交流電動機のいずれかを選択して駆動する駆動方法であって、
電源として前記給電線に供給される三相交流電源のうち正相または逆相の電源を給電することによって前記台のうち運転すべき三相交流電動機を選択して駆動する
ことを特徴とする。
【0008】
上記(1)の発明によれば、三相交流電源の正相または逆相の位相に応じて台の三相交流電動機のいずれかを選択して駆動するので、機械的な切り替え部品を用いることなく、電気的制御のみによって台の三相交流電動機に対し円滑に運転切り換えを行うことができる。
【0009】
(2)上記(1)の三相交流電動機の駆動方法において、
前記正相または逆相の電源の給電は、前記台の三相交流電動機に至る電源経路に設けた1組の三相交流給電線を介して行われる
ことを特徴とする。
【0010】
上記(2)の発明によれば、正相または逆相の電源の給電は、台の三相交流電動機に至る電源経路に設けた1組の三相交流給電線を介して行われるので、新設だけでなく既設の配線系統に対しても何らの付加設備を要することなく、電気的制御のみによって台の三相交流電動機に対し円滑に運転切り換えを行うことができる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)の三相交流電動機の駆動方法において、
前記台の三相交流電動機は同時に駆動されず、選択された三相交流電動機のみが駆動される
ことを特徴とする。
【0012】
上記(3)の発明によれば、台の三相交流電動機が同時に駆動されない環境下に適用して、簡素な構成で円滑な運転切換を実行することができる。
【0013】
(4)本発明にかかる三相交流電動機の駆動装置は、
正相または逆相の三相交流電源を供給する電源部と、
前記電源部の出力側に直列に接続された1組の三相交流給電線と、
前記1組の三相交流給電線の出力側に並列に接続された複数台の三相交流電動機と、
を備え、
前記複数台の三相交流電動機は、
前記1組の三相交流給電線に設けた正相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された第1の三相交流電動機と、
前記1組の三相交流給電線に設けた逆相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された第2の三相交流電動機と、
を有することを特徴とする。
【0014】
上記(4)の発明によれば、複数台の三相交流電動機を、正相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された第1の三相交流電動機と、逆相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された第2の三相交流電動機とで構成しているので、三相交流電源の正相または逆相の位相に応じた電動機の選択駆動制御を円滑に行うことが可能となる。
【0015】
(5)上記(4)の三相交流電動機の駆動装置において、
前記1組の三相交流給電線は、スリップリングを介して前記複数台の三相交流電動機と接続されてなる、
ことを特徴とする。
【0016】
この場合、1組の三相交流給電線の中にスリップリングが介在することにより電源1系統分の制約がある環境下において、複数台の三相交流電動機に対し、三相交流電源の正相または逆相のいずれか1を選択して供給するだけで当該切換制御を実行し得るので、高精度な運転切換を簡素な構成で行うことができる。
【0017】
本発明によれば、機械的な切り替え部品を用いることなく、電気的制御のみによって複数台の三相交流電動機に対し円滑に運転切り換えを行うことのできる三相交流電動機の駆動方法および駆動装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態にかかるカローゼルリール1の概略構成を示す公転ケーシング21の断面構造図である。
図2】公転ケーシング21およびその付設物を軸方向から視た模式図である。
図3】カローゼルリール1に用いる潤滑油供給装置の概略配管系統図である。
図4】カローゼルリールユニット8の電源入力側の構成を示す電源入力側回路図である。
図5】カローゼルリールユニット8の出力側の構成を示す出力側回路図である。
図6】カローゼルリールユニット8の切換制御動作における三相交流電源の正相および逆相の電源供給状態の因果関係を模式的に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るカローゼルリール1について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明にかかる三相交流電動機の駆動方法に基づいて駆動制御を行う駆動装置を、公転ケーシング21の軸回転により、例えば金属板の巻取り位置に交互に移動する一対の巻胴を配置し、2台の給油ポンプ91を該一対の巻胴の各巻胴に対応する給油ポンプにより構成し、該2台の給油ポンプ91はそれぞれ、三相交流電動機の駆動モータm1、m2により駆動され、正相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された給油ポンプと、逆相の三相交流電源を通過させるように構成された接触器と直列に接続された給油ポンプであるカローゼルリール1に適用した場合である。
【0020】
カローゼルリール1は、公転ケーシング21に金属板(図示省略)を巻き取るドラム4(本発明でいう巻胴)が2箇所に設けられ、公転ケーシング21が軸回転することによりドラム4が公転するように構成されている。金属板を巻き取る際には、公転ケーシング21の軸回転により、一方のドラム4(例えば第1ドラム41)が巻き取り位置に配置され、当該ドラム4が自転することにより、当該ドラム4への金属板の巻き取りが行われる。また、当該一方のドラム4への巻き取りが完了すると、公転ケーシング21が180°軸回転(反転)して他方のドラム4(例えば第2ドラム42)が巻き取り位置に配置され、当該他方のドラム4が自転することにより、当該ドラム4への金属板の巻き取りが行われる。
【0021】
なお、この実施形態では、カローゼルリール1に設けられたドラム4により巻き取られる金属板として、鋼板、特に圧延鋼板を例に挙げて、以下に説明する。
【0022】
公転ケーシング21は、主軸3を中心に180°毎回転し、当該ケーシング21に設けられた各ドラム41,42を巻き取り位置または搬出位置の何れかに配置する。公転ケーシング21の端面の外周部には、リングギヤからなる公転ギヤ22が固設されている。この公転ギヤ22は、ピニオンギヤ23と噛合しており、公転モータ25によって減速機24を介してピニオンギヤ23が回転されることにより、公転ギヤ22とともに公転ケーシング21が回転する。公転ケーシング21には、図1および図2に示すように、主軸3が貫通して一体に設けられている。公転ケーシング21の内部に形成された軸受ハウジングには、後述する軸受65~67が嵌着されている。
【0023】
第1ドラム41および第2ドラム42は、図1に示すように、それぞれ、その軸(以下「ドラム軸41a,42a」という。)が、公転ケーシング21内に設けられた軸受65、66に支持されている。また、各ドラム軸41a,42aには、それぞれギヤ61,63が固設されている。
【0024】
主軸3は、図1に示すように、後述する中空シャフト31,32を介して主軸軸受67に支持されている。主軸3の基端部には、回転継手34を介してスリップリング33の回転部が設けられている。このスリップリング33は、公転ケーシング等の回転物と共に回転する配線(各種モータや、選択部8に含まれるセンサ、計器、電源、アースなどの配線)と回転物上にない配線とを電気的に接続する。
【0025】
ドラム41,42は、それぞれ、第1および第2ドラム駆動モータ51,52の回転動力によって回転駆動される。すなわち、第1ドラム駆動モータ51の出力軸53から駆動機5を介して内側中空シャフト31に動力が伝達され、内側中空シャフト31に固設されたギヤ62およびドラム軸41aに固設けられたギヤ61を介して第1ドラム41に回転動力が伝達される。また、第2ドラム駆動モータ52の出力軸53から駆動機5を介して外側中空シャフト32に動力が伝達され、外側中空シャフト32に固設されたギヤ64およびドラム軸42aに固設されたギヤ63を介して第2ドラム42に回転動力が伝達される。なお、駆動機5は2軸の入力を、内側中空シャフト31および外側中空シャフト32に各別に伝達する機構を備える。
【0026】
公転ケーシング21には、給油タンク7と、給油タンク7に貯留された潤滑油Oを給油ポンプ91により吸引して潤滑対象部6に循環供給する潤滑油供給装置9を有する。本実施形態では、潤滑対象部6は、公転ケーシング21内に設けられたギヤ61~64、軸受65~67等である。
【0027】
給油タンク7は、例えば図2に示すように、潤滑油Oを貯留する第1タンク71および第2タンク72と、これら第1タンク71および第2タンク72を連通する連通路74とを含んで構成されている。図2に例示する給油タンク7は、両方のタンク71,72が何れも軸方向から視て略台形形状とされ、台形長辺を対向させた状態で公転ケーシング21内に設置され、これら第1タンク71と第2タンク72との間に、ドラム軸41a,42aおよび主軸3が配設されている。第1タンク71および第2タンク72には、第1ドラム41又は第2ドラム42が圧延鋼板の巻取り位置にあるときに、最下位置ないし最下位置近傍となる部分に給油口73がそれぞれ設けられている。図2に示す例では、軸方向から視て台形短辺側の一端近傍に給油口73が設けられている。この給油口73は潤滑油供給装置9との接続ポートとなる。
【0028】
なお、連通路74は、第1タンク71と第2タンク72とを接続した筒内に形成されており、公転ケーシング21が回転することを考慮して、主軸3に対して対称位置に配設されている。連通路74は1つでもよいが、高い位置にある給油タンク7に潤滑油が残留しないように、複数設けられていることが望ましい。
【0029】
潤滑油供給装置9は、図3に示すように、給油タンク7に貯留されている潤滑油を潤滑対象部6に循環供給するための潤滑油路92を有している。この潤滑油路92は、一方の給油口73を始点として合流点Pに至るまで形成された第1油路O1と、もう一方の給油口73を始点として合流点Pに至るまで形成された第2油路O2と、合流点Pから潤滑対象部6に至るまで形成された合流油路O3とを含んで構成されている。第1油路O1および第2油路O2の途中位置には、それぞれ給油ポンプ91が設けられている。よって、2つの給油ポンプ91の吸込側は、各別に給油タンク7に形成された給油口73に接続され、2つの給油ポンプ91の吐出側は合流点Pにおいて合流している。なお、図3に示すように、潤滑油路92上には、給油ポンプ91のほか、フィルタ94、開閉バルブ95、流量調整弁96等も設けられている。
【0030】
つぎに、カローゼルリール1における給油動作の概要について説明する。
【0031】
まず、図2に示すように、第1ドラム41が圧延鋼板の巻取位置にある場合で、圧延鋼板を巻き取っている状態では、2つの給油口73のうち、下側(最も下位置)にある給油口73に接続された給油ポンプ91が駆動対象として選択される。すなわち、カローゼルリールユニット8は、選択された給油ポンプ91を駆動可能とするとともに、公転ケーシング21が回転を停止していると判定して、選択された給油ポンプ91を駆動させる。
【0032】
選択された一方の給油ポンプ91が駆動されると、当該選択された給油ポンプ91によって下側の給油口73から潤滑油が吸引され、第2油路O2および合流油路O3を経由して潤滑対象部6へ給油される。このとき、上側に位置する給油口73は潤滑油に浸っていないが、当該給油口73に接続された給油ポンプ91は駆動されないため、上側に位置する給油タンク71内の空気が給油ポンプ91に吸い込まれることはない。
【0033】
つぎに、第1ドラム41への圧延鋼板の巻き取りが完了すると、カローゼルリールユニット8は、給油ポンプ91の駆動を停止し、その後、公転モータ25が駆動され、図2に示した状態から、公転ケーシング21が回転される。その後、公転ケーシング21が回転することにより、2つの給油口73の高さ位置が逆転する。これに対して、カローゼルリールユニット8は、元々上側にあった給油口73に接続された給油ポンプ91を給油対象に切り換えて、新たに選択された給油ポンプ91のみを駆動可能にする。
【0034】
なお、公転ケーシング21が図2に示した状態から180°回転すると、公転モータ25が停止し、公転ケーシング21も回転停止する。公転ケーシング21が回転停止すると、カローゼルリールユニット8は、新たに選択された給油ポンプ91を駆動させ、当該選択された給油ポンプ91によって下側の給油口73から潤滑油が吸引され、第1油路O1および合流油路O3を経由して潤滑対象部6へ給油される。この場合も、上側に位置する給油口73は潤滑油に浸っていないが、当該給油口73に接続された給油ポンプ91は駆動されないため、上側に位置する給油タンク71内の空気が給油ポンプ91に吸い込まれることはない。なお、第2ドラム42への圧延鋼板の巻き取りは、給油ポンプ91の駆動が開始した後、適宜のタイミングで開始される。
【0035】
カローゼルリール1は、何れか低い位置にある方の給油口73に接続された給油ポンプ91を電気的制御系統のみにより選択制御する駆動制御手段としてのカローゼルリールユニット8を有する。カローゼルリールユニット8により選択された給油ポンプ91のみが駆動可能とする駆動ポンプ制御が行われる。
【0036】
図4はカローゼルリール1のカローゼルリールユニット8の電源入力側の構成を示す。図5はカローゼルリールユニット8の出力側の構成を示す。
【0037】
カローゼルリールユニット8は、本発明を適用した制御ユニットであり、電源入力側に設けた給油ポンプ切換制御部81と、2つの給油ポンプ91の各駆動モータm1、m2に電源供給を行う出力部83とを有する。駆動モータm1、m2は三相交流電動機(交流モータ)であり、カローゼルリール1においては同時に運転されない電動機である。給油ポンプ切換制御部81と出力部83は三相交流電源(440Vのモータ動力電源)の給電線R、S、Tの配線系に設けたスリップリング82を介して接続され、三相交流電源が出力部83の駆動モータm1、m2に給電可能になっている。スリップリング82は、回転軸上に取付けられ、ブラシとすり接触をさせて回転部分と静止部分との電流の通路として給電可能な環状電極である。スリップリング82の3出力u,v,wは出力部83に入力される。
【0038】
(給油ポンプ切換制御部81の構成)
給油ポンプ切換制御部81は三相交流電源の給電線R、S、Tの動力電源系統と制御電源(110V)の制御系統とを含む。
【0039】
(動力電源系統の構成)
動力電源系統には、動力電源とスリップリング82の入力側との間に、配線用遮断器MCCB、正相接触器MC、逆相接触器RMC、サーマルリレーTHR、および電流リレーのコイル84aの電流検出器が設置されている。正相接触器MCおよび逆相接触器RMCは配線用遮断器の2次側を構成し、給電線R、S、Tを通じて正相電源、逆相電源が給電可能に設置されている。
【0040】
このとき、正相接触器MCおよび逆相接触器RMCは可逆式電磁接触器を用いて構成されており、逆相接触器RMCの入力側ではR相とT相とを入れ替えて接続している。これによって、正相接触器MCがONのときは正相の三相交流電源が給電線(u,v,w)へ出力され、逆相接触器RMCがONのときは逆相の三相交流電源が給電線(u,v,w)へ出力されることになる。
【0041】
(制御電源系統の構成)
制御電源(110V)の制御線dには、配線用遮断器MCCBの接点、サーマルリレーTHRの接点および電流リレーのコイル84aが配置されている。制御線dの電流リレーのコイル84a側の端部は、制御電源(110V)の別の制御線eに接続されている。コイル84aと接点84bで構成された電流リレーは三相交流電源のうちの一相により励磁可能な継電器である。
【0042】
制御線eは、途中で2系統に分岐して制御線dに接続されている。分岐系統の一方には、第1ドラム41の巻取位置を検知する近接スイッチ87、逆相接触器RMCの接点および正相接触器MCのコイルが配置されている。分岐系統の他方には、第2ドラム42の巻取位置を検知する近接スイッチ88、正相接触器MCの接点および逆相接触器RMCのコイルが配置されている。両分岐系統にわたって後段側に配設された正相接触器MCおよび逆相接触器RMCは可逆式電磁接触器86により構成されている。
【0043】
さらに、制御線eには、分岐系統の手前に、全自動操作スイッチ(図示せず)のONにより自動運転が指示されたとき閉成する自動運転用接点100およびカローゼルリール1の稼働(公転)状態時にOFFになる公転中接点89が設置されている。近接スイッチ87、88、自動運転用接点100および公転中接点89は、巻取位置に応じて運転対象の給油ポンプを指定する指定信号を発生する運転ポンプ指定処理部85を構成している。
【0044】
なお、この運転ポンプ指定処理部85は、運転対象の給油ポンプを指定する外部信号により構成してもよい。
【0045】
(給油ポンプ切換制御部81の動作)
第1ドラム41が巻取り位置に配置されると、その状態を検知して近接スイッチ87がONになる。すると、近接スイッチ87と直列に入っている正相接触器MCのコイルが作動して動力電源系統の正相接触器MCの接点がONになり、給油ポンプ切換制御部81に入力されている三相交流(R相、S相、T相)がスリップリング82側にそのまま出力される。このとき、近接スイッチ88と直列に入っている逆相接触器RMCのコイルは作動しないから動力電源系統の逆相接触器RMCの接点はOFFであり、スリップリング82側に逆相の三相交流が出力されることはない。
【0046】
カローゼルリールが公転して第2ドラム42が巻取り位置に配置されると、その状態を検知して近接スイッチ88がONになる。すると、近接スイッチ88と直列に入っている逆相接触器MCのコイルが作動して動力電源系統の逆相接触器RMCの接点がONになり、給油ポンプ切換制御部81に入力されている三相交流(R相、S相、T相)が逆相になって、スリップリング82側に出力される。このとき、近接スイッチ87と直列に入っている正相接触器MCのコイルは作動しないから動力電源系統の正相接触器MCの接点はOFFであり、スリップリング82側に正相の三相交流が出力されることはない。
【0047】
(出力部83の構成)
出力部83には、駆動モータm1、m2のそれぞれにスリップリング82を介して三相交流電源を給電する配線が設けられている。出力部83において、給電線u,v,wを通じて給電された三相交流電源は、駆動モータm1、m2に対して2系統に分岐した供給線103、104を通じて供給可能になっている。供給線103は三相交流電源を並行して駆動モータm1に供給可能であり、供給線104は符号105に示すように駆動モータm2の手前で2線を入れ替えて三相交流電源を駆動モータm2に供給可能になっている。
【0048】
具体的には、供給線103には接触器MC1と駆動モータm1が直列に、また、供給線104には接触器MC2と駆動モータm2が直列に接続されている。そして供給線103、104には、それぞれ逆相リレーのコイルRPR1と逆相リレーのコイルRPR2も接続されている。
【0049】
出力部83に供給された三相交流電源は変圧器102にも接続されている。変圧器102は440V電源を110Vに降圧することができる。変圧器102の降圧出力側には、逆相リレーRPR1の接点、接触器MC2の接点、および接触器MC1のコイルが直列に接続された回路と、逆相リレーRPR2の接点、接触器MC1の接点、および接触器MC2のコイルが直接に接続された回路とが設けられている。
【0050】
(出力部83の動作)
出力部83にスリップリング82を介して正相の三相交流電源(u,v,w)が供給されたとき、供給線103の逆相リレーRPR1が作動し、逆相リレーRPR1の接点がONとなって接触器MC1がONになる。その結果、接触器MC1と直列に接続された駆動モータm1に正相の三相交流電源(u,v,w)が供給され、駆動モータm1が駆動されることになる。このとき、正相の三相交流電源(u,v,w)が供給された供給線104の逆相リレーRPR2は作動しないので、逆相リレーRPR2の接点がOFFになり、そのため接触器MC2はOFFとなり、正相の三相交流(u,v,w)は接触器MC2により遮断され、駆動モータm2が駆動されることはない。
【0051】
出力部83にスリップリング82を介して逆相の三相交流電源(w,v,u)が供給されたとき、供給線104の逆相リレーRPR2が作動し、逆相リレーRPR2の接点がONとなって接触器MC2がONになる。その結果、接触器MC2と直列に接続された駆動モータm2に三相交流電源が供給され、駆動モータm2が駆動されることになる。このとき、逆相の三相交流電源(w,v,u)が供給された供給線103の逆相リレーRPR1は作動しないので、逆相リレーRPR1の接点がOFFになり、そのため接触器MC1はOFFとなり、逆相の三相交流(u,v,w)は接触器MC1により遮断され、駆動モータm1が駆動されることはない。
【0052】
図6は、カローゼルリールユニット8の切換制御動作における三相交流電源の正相および逆相の電源供給状態の因果関係を模式的に示すタイムチャートである。
【0053】
図6の(6A)~(6C)はそれぞれ、三相交流電源の正相供給時の制御動作を示す。同図(6D)~(6F)はそれぞれ、三相交流電源の逆相供給時の制御動作を示す。同図(6A)及び(6D)はそれぞれ、スリップリング82を介して出力部85に供給された三相交流電源が正相であるか逆相であるかの区別をONまたはOFFにより模式的に示す。示す。同図(6B)及び(6E)はそれぞれ、MC1、2の動作状態信号を示す。同図(6C)、(6F)は逆相リレーRPR1、2の動作状態信号を示す。
【0054】
運転ポンプ指定処理部85において、第1ドラム41または第2ドラム42の巻取位置が検知されると近接スイッチ87または88がONになり、それに連動して可逆式電磁接触器86が作動する。例えば、近接スイッチ87のONにより給油ポンプ切換制御部81における正相接触器MCがONになる。これにより正相電源(u,v,w)が、給電線に流れて出力部83に供給される。出力部83においては、スリップリング82を介して正相の三相交流電源(u,v,w)が供給されたとき、すなわち(6A)に示すON状態になったとき、逆相リレーRPR1、2のうち逆相リレーRPR1のみがONする(すなわち(6C)に示すON状態)ことによって接触器MC1がONとなり(すなわち(6B)に示すON状態)、駆動モータm1のみに正相電源が供給されて、給油ポンプ1を駆動することができる。
【0055】
巻取動作が進行して巻取位置が変更され、近接スイッチ88がONになると、近接スイッチ87のON時とは反対に、給油ポンプ切換制御部81における逆相接触器RMCがONになり、逆相電源(w,v,u)が、給電線に流れて出力部83に供給される。出力部83においては、スリップリング82を介して逆相の三相交流電源(w,v,u)が供給されたとき、すなわち(6D)に示すON状態になったとき、逆相リレーRPR1、2のうち逆相リレーRPR2のみがONする(すなわち(6F)に示すON状態)ことによって接触器MC2がONとなり(すなわち(6E)に示すON状態)、駆動モータm2のみに三相交流電源が供給されて、給油ポンプ2を駆動することができる。カローゼルリール1の公転状態時には公転中接点89がOFFになり、運転ポンプ指定処理部85における制御線は開成されてしまい、給油対象ポンプの指定信号の発生は行われない。
【0056】
以上のように、本実施形態にかかるカローゼルリール1によれば、本発明の駆動方法に基づいて、同時に運転される必要のない2台の給油ポンプ91それぞれに接続された駆動モータm1,m2のうちの1台を、カローゼルリールユニット8の切換制御のみにより三相交流電源の正相または逆相の位相に応じて切り換えて駆動させることができる。そのため、リミットスイッチによる選択制御を行うことなく、スリップリングの介在による電源1系統分の制約に抗して運転すべき給油ポンプの切換を確実に行うことができ、カローゼルリールにおける潤滑油給油システムの安全稼働の実行を実現することが可能となる。
【0057】
また、出力部83においては、三相交流電源の供給線に逆相リレーRPR1、2を備えることにより、三相の逆接続異常を検出可能にして同時駆動を未然に防止できる。そのため、複数の給油ポンプ91を、正相の三相交流電源を通過させる逆相接触器と直列に接続された給油ポンプと、逆相の三相交流電源を通過させる逆相接触器と直列に接続された給油ポンプとにより構成し、運転すべき給油ポンプの選択切換を確実にかつ円滑に行うことができる。
【0058】
殊に、カローゼルリールユニット8の電流リレー84は、出力部83への正相または逆相の3相のうちの1により作動する継電器であり、いずれかの給油ポンプが運転されている限り電流リレーは励磁可能になっている。すなわち、正相および逆相のいずれかであるかにかかわらず、電流が流れていれば電流リレーは励磁される。換言すれば、給油ポンプのいずれもが停止している場合、電流リレーは励磁されず接点84bが開になることでその状態の検知が可能になる。したがって、カローゼルリールユニット8によれば、給油ポンプすべてが停止していることを状態検知し得る外部監視が可能になり、カローゼルリールの潤滑油給油システムの安全稼働を実施することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態においては、電気的制御系統のみで給油ポンプの切換制御を行うので、給油タンク7、潤滑油供給装置9等の給油系統を全て公転ケーシング21等の回転体に搭載可能であり、公転ケーシングとは別に設けられていた給油タンクを無くすことができ、給油系統を簡素化することができる。
【0060】
上記の実施形態では、共通の給電線に並列接続され、同時に運転される必要のない2台の三相交流電動機(駆動モータm1、m2)を用いた場合であるが、本発明はこれに限らず、2台を超える台数の三相交流電動機を使用する環境下においても適用することができる。さらに、カローゼルリール1の実施例以外にも、例えば、空調設備や給水ポンプシステム等において、通常運転用のほかに予備駆動源としての三相交流電動機を含む環境下において本発明を適用することができる。
【0061】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものである。例えば、カローゼルリールユニット8の構成回路要素は実質的に同等の機能を構成し得る回路要素を使用することができ、また、本発明は図4および図5の制御回路と等価な回路で構成される制御回路に適用し得ることはいうまでもない。
【0062】
本発明は、例えば圧延鋼板等の金属板を巻き取るカローゼルリールに好適である。
【符号の説明】
【0063】
1 カローゼルリール
3 主軸
4 ドラム(巻胴)
6 潤滑対象部
7 給油タンク
8 カローゼルリール制御ユニット
9 潤滑油供給装置
21 公転ケーシング
73 給油口
81 給油ポンプ切換制御部
82 スリップリング
83 出力部
84 電流リレー
85 運転ポンプ指定処理部
86 可逆式電磁接触器
87 近接スイッチ
88 近接スイッチ
91 給油ポンプ
92 潤滑油路
O 潤滑油
図1
図2
図3
図4
図5
図6