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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】3次元積層造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20221109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y10/00
B29C64/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018244254
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020049928
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2018174825
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷中 輝之
(72)【発明者】
【氏名】安井 章文
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-252087(JP,A)
【文献】特開2013-213308(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168771(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/106
B33Y 10/00
B29C 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を準備する第1工程、
前記熱可塑性樹脂を軟化させることにより、糸状の造形材料を得る第2工程、
前記糸状の造形材料により3次元造形物を製造する第3工程、を含み、
前記第3工程は、
前記糸状の造形材料により面方向に空隙を有する層である繊維層を形成すること、
前記繊維層上に開口部を有するコレクタを前記繊維層の面方向と略平行に配置すること、
前記コレクタの上側表面に前記繊維層を更に形成すると共に、前記コレクタの開口部を介して前記繊維層同士を前記糸状の造形材料により接続させること、
が順次繰り返され、前記繊維層が積層されつつそれぞれの前記繊維層間が接続される連結構造を有する前記3次元造形物を製造する工程を含む、
3次元造形物の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程において前記コレクタを除去することを含む、請求項1に記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項3】
前記3次元造形物に含まれる複数の前記繊維層のうち、少なくとも1つの前記繊維層とその他の前記繊維層とは異なる平面形状を有する、請求項1または請求項2に記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリグリコール酸、およびグリコール酸/L-乳酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~請求項3のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項5】
前記3次元造形物に含まれる複数の前記繊維層のうち、少なくとも1つの前記繊維層とその他の前記繊維層とは、異なる前記熱可塑性樹脂を用いて製造される請求項4に記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項6】
前記3次元造形物は、50%以上99.5%以下の空隙率を有する、請求項1~請求項5のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項7】
前記糸状の造形材料は、その断面形状が円形、楕円形、異形のいずれかである、請求項1~請求項6のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項8】
前記糸状の造形材料は、その構造が中実構造、中空構造、シースコア構造、サイドバイサイド構造のいずれかである、請求項1~請求項7のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項9】
前記糸状の造形材料は、スクリューから前記熱可塑性樹脂を押出して作製される、請求項1~請求項8のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元積層造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-209871号公報(特許文献1)は、3次元造形装置を開示しており、特開2016-79379号公報(特許文献2)は、3次元造形物の製造に用い得る可溶性材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-209871号公報
【文献】特開2016-79379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空隙率の高い複雑な形状を有する3次元積層造形物の製造方法の開発が望まれている。空隙率の高い製造方法は、たとえば光造形法(特許文献1)や熱溶解積層法(特許文献2)などが挙げられる。光造形法については、光硬化させる樹脂であり汎用性が少なく、比較的高価な光硬化樹脂を多量に必要とするなど環境負荷や経済的な面、また未硬化の樹脂が成形物の表面に残留するなど健康衛生面が課題となっている。熱溶解積層法では、二種類の樹脂を使用する方法が一般的であり、有機溶媒や水等で除去可能な可溶性樹脂とそれらで除去不可能な樹脂との二種類で構造物を成形させ、空隙構造を得たい部分を可溶性樹脂で形成させ、残存させたい部分を除去不可能な樹脂で形成させ、形成後に有機溶媒や水等で可溶性樹脂を除去する方法が一般的である。これらの方法では、空隙率の高い構造を形成させるのに時間が掛かることや、可溶性樹脂の除去という煩雑で環境負荷の高い工程を要すること、可溶性樹脂の除去が困難であり除去後も残存するなどが課題となっていた。すなわち、従来の造形方法では、空隙率の高い構造をより広範囲な樹脂で比較的簡便に成形することは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、空隙率の高い複雑な形状を有する3次元積層造形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す3次元積層造形物の製造方法を提供する。
[1] 造形物の製造方法であって、熱可塑性樹脂を準備する第1工程、前記熱可塑性樹脂を軟化させることにより、糸状の造形材料を得る第2工程、前記糸状の造形材料により3次元造形物を製造する第3工程、を含み、前記第3工程は、前記糸状の造形材料により面方向に空隙を有する層である繊維層を形成すること、前記繊維層上に開口部を有するコレクタを前記繊維層の面方向と略平行に配置すること、前記コレクタの上側表面に前記繊維層を更に形成すると共に、前記コレクタの開口部を介して前記繊維層同士を前記糸状の造形材料により接続させること、が順次繰り返され、前記繊維層が積層されつつそれぞれの前記繊維層間が接続される連結構造を有する前記3次元造形物を製造する工程を含む、3次元造形物の製造方法。
【0007】
[2] 前記第3工程において前記コレクタを除去することを含む、[1]に記載の3次元造形物の製造方法。
【0008】
[3] 前記3次元造形物に含まれる複数の前記繊維層のうち、少なくとも1つの前記繊維層とその他の前記繊維層とは異なる平面形状を有する、[1]または[2]に記載の3次元造形物の製造方法。
【0009】
[4] 前記熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリグリコール酸、およびグリコール酸/L-乳酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【0010】
[5] 前記3次元造形物に含まれる複数の前記繊維層のうち、少なくとも1つの前記繊維層とその他の前記繊維層とは、異なる前記熱可塑性樹脂を用いて製造される[4]に記載の3次元造形物の製造方法。
【0011】
[6] 前記3次元造形物は、50%以上99.5%以下の空隙率を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【0012】
[7] 前記糸状の造形材料は、その断面形状が円形、楕円形、異形のいずれかである、[1]~[6]のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【0013】
[8] 前記糸状の造形材料は、その構造が中実構造、中空構造、シースコア構造、サイドバイサイド構造のいずれかである、[1]~[7]のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
【0014】
[9] 前記糸状の造形材料は、スクリューから前記熱可塑性樹脂を押出して作製される、[1]~[8]のいずれかに記載の3次元造形物の製造方法。
なお、上述の本発明の製造方法により製造された3次元造形物、また、上述の本発明の製造方法を実施するためのコレクタを含む装置についても、本発明の範疇である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空隙率の高い複雑な形状を有する3次元積層造形物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、3次元積層造形物の製造過程を図解する第1概略図である。
図2図2は、3次元積層造形物の製造過程を図解する第2概略図である。
図3図3は、3次元積層造形物の製造過程を図解する第3概略図である。
図4図4は、3次元積層造形物の製造過程を図解する第4概略図である。
図5図5は、実施例1で用いたコレクタの概略図である。
図6図6は、図5に示すコレクタをA方向から見た際の概略図である。
図7図7は、実施例1における第2コレクタと第3コレクタとの位置関係を図解する概略図である。
図8図8は、実施例1により製造された3次元積層造形物の概略図である。
図9図9は、実施例2により製造された3次元積層造形物の概略図である。
図10図10は、実施例3で用いたコレクタの概略図である。
図11図11は、図10に示すコレクタをA方向から見た際の概略図である。
図12図12は、実施例3により製造された3次元積層造形物の概略図である。
図13図13は、実施例4により製造された3次元積層造形物の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」と記される)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0018】
本明細書において、下記の用語の意味は次のとおりである。
(1)「繊維径」とは、3次元造形物中の線状体をランダムに3箇所ノギスで測定し、その測定値の算術平均値(単位:mm)をいう。
(2)「見掛け体積」とは、形成された3次元造形物の外形から算出した値をいう(単位:cm)。
(3)「見掛け密度」とは、形成された3次元造形物の重さを、見掛け体積で除した値をいう(単位:g/cm)。
(4)「真密度」とは、形成された3次元造形物が全く間隙なく充填されていると仮定したときの密度をいう(単位:g/cm)。
(5)「空隙率」とは、見掛け密度を真密度で除した値を算出し、1からこの算出値を引いて百分率で示す(単位:%)。
(6)融点(Tm)
示差走査熱量計Q200(TAインスツルメント社製)を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。吸熱ピークが複数ある場合は、最も高い温度ピークを融点とする。
(7)「x方向」とは、3次元造形物や3次元造形物を構成する繊維層の面の長さ方向をいう。
(8)「y方向」とは、3次元造形物や3次元造形物を構成する繊維層の面の幅方向をいう。
(9)「z方向」とは、3次元造形物や3次元造形物を構成する繊維層の面の高さ方向をいう。
【0019】
<第1工程>
本発明に係る造形物の製造方法は、熱可塑性樹脂を準備する第1工程を含む。熱可塑性樹脂は特に限定されるべきではない。熱可塑性樹脂は、たとえばポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリグリコール酸、グリコール酸/L-乳酸共重合体等であってもよい。1種の熱可塑性樹脂が単独で使用されてもよい。2種以上の熱可塑性樹脂が組み合わされて使用されてもよい。
【0020】
<第2工程>
本発明に係る造形物の製造方法は、第1工程で準備された熱可塑性樹脂を軟化させることにより、糸状の造形材料を得る第2工程を含む。熱可塑性樹脂を軟化させるための加熱温度は、たとえば各樹脂の融点より10℃以上100℃未満高い紡糸温度であってもよい。加熱温度が融点より10℃未満しか高くない場合、熱可塑性樹脂が十分に軟化せず、糸状の造形材料を得られないため造形物の製造が困難になる可能性がある。加熱温度が融点よりも100℃を超えて高い場合、熱可塑性樹脂が過度に軟化し、糸状の造形材料を得られないことや、高温に伴う熱分解が加速してしまうため造形物の製造が困難になる可能性がある。
【0021】
<第3工程>
本発明に係る造形物の製造方法は、第2工程で準備された糸状の造形材料により3次元造形物を製造する第3工程を含む。第3工程は、糸状の造形材料により面方向に空隙を有する層である繊維層を形成すること、繊維層上に開口部を有するコレクタを繊維層の面方向と略平行に配置すること、コレクタの上側表面に繊維層を更に形成すると共に、コレクタの開口部を介して繊維層同士を糸状の造形材料により接続させること、が順次繰り返され、繊維層が積層されつつそれぞれの繊維層間が接続される連結構造を有する3次元造形物を製造する工程を含む。以下、第3工程について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、3次元積層造形物の製造過程を図解する第1概略図である。
積層造形装置100は、支持台101、および糸状の造形材料102を導出するためのノズル103を少なくとも備える。糸状の造形材料102を支持台101に堆積させることにより、糸状の造形材料102の集合体である、面方向に空隙を有する層である繊維層(第1繊維層p1)が形成される。すなわち第3工程は、糸状の造形材料102により面方向に空隙を有する層である繊維層p1を形成することを含む。なお、本明細書において「面方向」とは、支持台101の厚み方向に直交する方向を示す。図1において、上下方向が第1繊維層p1の厚み方向であり、左右方向が第1繊維層p1の面方向である。なお、本明細書において「面方向に空隙を有する」とは、後述する図8に示されるように、x,y方向に空隙を有することを示す。
【0023】
図2は3次元積層造形物の製造過程を図解する第2概略図である。
第1繊維層p1上に、コレクタ104が配置される。コレクタ104は、上方視において略矩形であるアルミ板104a~104eにより形成される。図2に示されるように、各アルミ板104a~104eの間には、d1の隙間(すなわち、開口部)が存在し、コレクタ104は1繊維層p1の面方向と略平行に配置されている。すなわち第3工程は、繊維層上に開口部を有するコレクタ104を繊維層の面方向と略平行に配置することを含む。
【0024】
図3は3次元積層造形物の製造過程を図解する第3概略図である。
第1繊維層p1の形成と同じ手順により、コレクタ104の上側表面に第2繊維層p2が形成される。併せて、コレクタ104の開口部(d1)を介して第1繊維層p1と第2繊維層p2とが糸状の造形材料により接続される。なお、繊維層同士を糸状の造形材料により接続させることは、たとえば繊維層同士を融着させることにより行ってもよい。すなわち第3工程は、コレクタ104の上側表面に繊維層を更に形成すると共に、コレクタ104の開口部を介して繊維層同士を糸状の造形材料により接続させることを含む。
【0025】
上記工程を順次繰り返すことにより、図4に示すように繊維層(p1~p6)が積層されつつそれぞれの繊維層同士が接続される連結構造を有する3次元造形物1000を製造することができる。図4においては、3次元造形物1000は6つの繊維層(p1~p6)から形成されている。すなわち3次元造形物1000は、繊維層(p1~p6)が積層されつつそれぞれの繊維層間が接続される連結構造を有している。
【0026】
第3工程は、コレクタ104を除去することを含んでもよい。コレクタ104は、3次元造形物1000が形成された後にまとめて除去してもよいし、コレクタ104の上側表面に繊維層が形成された後、順次除去してもよい。
【0027】
第3工程において、3次元造形物1000に含まれる複数の繊維層のうち少なくとも1つの繊維層とその他の繊維層とは異なる平面形状を有してもよい。また、3次元造形物1000に含まれる繊維層のうち、少なくとも1つの繊維層とその他の繊維層とは、異なる熱可塑性樹脂を用いて製造されてもよい。これにより、複雑な形状を有する3次元積層造形物の製造が可能となる。たとえば、一部に欠損部分を有する3次元造形物1000の製造が可能となる。
【0028】
(糸状の造形材料の断面形状)
糸状の造形材料の断面形状は、特に限定されるべきではない。糸状の造形材料の断面形状は、たとえば円形であってもよいし、楕円形であってもよいし、異形であってもよい。本明細書において「異形」とは、円形および楕円形以外の形状を示す。特定の断面形状を有する糸状の造形材料が単独で使用されてもよい。異なった断面形状を有する糸状の造形材料が組み合わされて使用されてもよい。
【0029】
(糸状の造形材料の構造)
糸状の造形材料の構造は、特に限定されるべきではない。造形材料の構造は、たとえば中実構造であってもよいし、中空構造であってもよいし、シースコア構造であってもよいし、サイドバイサイド構造であってもよい。特定の構造を有する糸状の造形材料が単独で使用されてもよい。異なった構造を有する糸状の造形材料が組み合わされて使用されてもよい。
【0030】
(糸状の造形材料の作製方法)
糸状の造形材料は、上記第2工程において、軟化された熱可塑性樹脂を押出して作製されるものであってもよい。押し出し手段は、特に限定されるべきではない。押し出し手段は、たとえばスクリューにより押し出すものであってもよい。すなわち、糸状の造形材料は、スクリューから熱可塑性樹脂を押出して作製されてもよい。
【0031】
(コレクタ)
コレクタ104は、開口部を有しており、その上側表面に繊維層を配置することが可能であれば、特に制限されるべきではない。コレクタ104は、たとえば少なくとも一つの空隙(すなわち、開口部)を有する1枚のアルミ板であってもよいし、複数のアルミ板を所定の間隔で配置したものであってもよいし、複数の針金を所定の間隔で配置したものであってもよい。繊維層に繊維層が積層された後に下の繊維層を配置させているコレクタ104が容易に除去できるようになっているのが好ましい。よって、たとえばコレクタがアルミ板である場合、その形状は平坦であることが好ましい。
【0032】
<積層造形物>
本実施形態の製造方法により製造された3次元造形物1000は、上記の製造方法により製造される。上記製造方法により製造された3次元造形物1000は、高い空隙率を有しつつ、良好な強度を有するものと期待される。本実施形態の3次元造形物1000は、一例としてテーラーメイドデザインの枕やシートクッション、創傷被覆材、および3次元細胞培養スキャフォールドになり得ると期待される。
【0033】
(空隙率)
本実施形態の製造方法により高い空隙率の3次元造形物1000を製造することが可能となる。たとえば、本実施形態の製造方法により、好ましくは50%以上99.5%以下の空隙率を有する3次元造形物1000を製造することができる。さらに好ましくは60%以上99.4%以下、より好ましくは70%以上99.3%以下、なおさら好ましくは80%以上99.2%以下、最も好ましくは89.7%以上99.1%以下の空隙率の3次元造形物100を製造することが可能となる。本実施形態の製造方法により製造された3次元構造物1000は、上記した空隙率を有するものとなる。
【0034】
ここで、空隙率の制御は、各繊維層(各コレクタ上のxy平面)における糸状造形材料の形成方法(糸状造形密度)、コレクタのz軸方向の間隔(コレクタとその下の層の間の距離)、z軸方向の連結構造を形成する密度、糸状造形物の繊維径や断面形状の少なくとも1以上の変更によって行うことができる。上記の各因子は、コレクタの幅、長さ、厚み、コレクタのxyz空間における配置方法、ノズルのxyz方向に対する描写方法、ノズル径、糸状造形材料の吐出速度、ノズルの移動速度、ポリマーの吐出温度、のうちの1以上の条件の組み合わせによって、制御することができる。また、上記以外の繊維層内及び/または繊維層間において空隙を設けるための条件によって空隙率を制御しても構わない。本実施形態では、上述のように、コレクタを始めとする各因子を連動して制御することで、これまでにない、空隙率の高い複雑な形状を有する3次元積層造形物を容易に且つ迅速に形成させることが可能となった。
【0035】
(機械的強度)
本実施形態の製造方法により製造された3次元造形物1000は、優れた機械的強度を有するものと考えられる。たとえば、隣り合う繊維層間を接続している箇所を手で触っても、壊れない程度の機械的強度を有するものと期待される。
【実施例
【0036】
以下、実施例が説明される。ただし以下の例は、本開示の発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
<実施例1>
(熱可塑性樹脂の準備)
熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸(PLA)繊維のフィラメント(繊維径1.75mm、真密度1.25g/cm、融点163℃、後述の3Dプリンタに付属されていたフィラメント)が準備された。
【0038】
(糸状の造形材料の準備)
3DプリンタであるHomecube 3D stereo drawing pen(HomeSun(amazon.co.jp)より入手)が準備された。該3DプリンタにPLAのフィラメントが供給され、軟化された。これにより、糸状の造形材料102が準備された。準備された糸状の造形材料102の断面形状は円形であり、中実構造を有していた。
【0039】
(第1繊維層の形成)
水平な長方形の支持台101が準備された。支持台101に対して、ノズル温度200℃、吐出速度10mm~20mm/秒の条件で3Dプリンタのノズル103から軟化された白色のPLA繊維のフィラメント(すなわち、糸状の造形材料102)を吐出することにより、面方向に空隙を有する層である第1繊維層p1の形成を行った。なお、ノズル移動速度は吐出速度と釣り合う速度とした。具体的には、支持台101上に支持台101の長手方向および幅方向に対して平行な直線を複数描いた。支持台101の長手方向に対して平行な直線は、それぞれ20mmの間隔を空けて描かれた(すなわち、20mm周期で描かれた)。支持台101の幅方向に対して平行な直線も、同様に20mm周期で描かれた。支持台101の長手方向に描かれた平行な直線と支持台101の幅方向に描かれた平行な直線とが融着した。これにより、縦70mm、横75mmの略正方形状の第1繊維層p1が支持台101上に形成された。
【0040】
(コレクタ)
図5は実施例1で用いたコレクタ104の概略図であり、図6図5に示すコレクタ104をA方向から見た際の概略図である。図5および図6に示されるように、アルミ板104a~104eが水平に並べられたコレクタ104が準備された。アルミ板104a~104eは、それぞれ100mmの長さ、10mmの幅、および2mmの厚みを有している。アルミ板104aと104bとの間、アルミ板104bと104cとの間、アルミ板104cと104dとの間、およびアルミ板104dと104eとの間には、それぞれ20mmの間隔が設けられている。すなわち、コレクタ104は開口部を有している。コレクタ104には、樹脂との溶着を防止するためにシリコンが塗布されている。
【0041】
(第2繊維層の形成)
第2繊維層の形成のためのコレクタ104(第2コレクタ)が第1繊維層p1に接するように配置された。より詳細には、支持台101に対してz方向2mm上方に、第1繊維層p1の面方向と略平行になりつつ、第1繊維層p1の中心部を覆うように第2コレクタ104が設置された。PLA繊維の色を青色としたことを除いては第1繊維層p1の形成と同様の条件で第2コレクタ104の上側表面に繊維層(第2繊維層p2)を更に形成すると共に、コレクタ104の開口部を介して第1繊維層p1と第2繊維層p2とが糸状の造形材料102により接続された。
【0042】
(第3繊維層の形成)
図7は、実施例1における第2コレクタと第3コレクタとの位置関係を図解する概略図である。なお、図7において繊維層は省略している。第3繊維層の形成のためのコレクタ104(第3コレクタ)が第2繊維層p2に接するように配置された。より詳細には、第2コレクタ104に対してz方向2mm上方に、第2繊維層p2の面方向と略平行となりつつ、第2繊維層p2の中心部を覆うように第3コレクタが配置された。図7に示されるように、第2コレクタ104を構成するアルミ板(104a~104e)と第3コレクタ104を構成するアルミ板(104a~104e)とは略直交となるように配置されている。PLA繊維の色を黒色としたことを除いては第1繊維層p1の形成と同様の条件で第3コレクタ104の上側表面に繊維層(第3繊維層p3)を更に形成すると共に、第3コレクタ104の開口部を介して第2繊維層p2と第3繊維層p3とが糸状の造形材料102により接続された。
【0043】
(第4繊維層~第6繊維層の形成)
第2繊維層p2の形成と同様の操作、第3繊維層p3の形成と同様の操作、および第2繊維層p2の形成と同様の操作を行う事により、第4繊維層p4、第5繊維層p5、および第6繊維層p6が形成された。第6繊維層p6が形成された後、全てのコレクタ104が除去された。これにより、6層からなる3次元造形物1000が製造された。実施例1に係る3次元造形物1000は、図8に示されている。
【0044】
実施例1に係る3次元造形物1000は、第1繊維層p1から順番に白、青、黒、白、青、黒となる三色の立体格子構造を有していた。実施例1に係る3次元造形物1000は、繊維径が0.59mm、外形サイズが70mm×75mm×10mm、重さが2.93g、見掛け体積が52.5cm、見掛け密度が0.0558g/cm、空隙率が95.5%であった。
【0045】
<実施例2>
熱可塑性樹脂として、熱可塑性ポリウレタン(TPU)繊維のフィラメント(黒色、繊維径1.75mm、真密度1.25g/cm、融点176℃、Pxmalion Flexible TPU 3Dプリンター用 FLEX弾性樹脂フィラメント素材、Pxmalion(amazon.co.jp)より入手)を用いたこと、ノズル温度を220℃としたこと、各繊維層を描く際の周期を支持台101の長手方向に対して平行な直線および支持台101の幅方向に対して平行な直線ともに4mm周期としたこと、各繊維層を縦40mm、横40mmの略正方形状としたこと、コレクタ104として長さ90mm径1mmの針金を各針金の間隔が6mmとなるように5本を平行に並べたものを用いたこと、各繊維層が形成された後その繊維層を形成するためのコレクタを順次除去したこと、を除いては、実施例1と同様に第1繊維層p1~第11繊維層p11を含む3次元造形物1000が製造された。実施例2に係る3次元造形物1000は、図9に示されている。
【0046】
実施例2に係る3次元造形物1000は、第1繊維層p1~第11繊維層p11からなる空隙を有する立体格子構造を有していた。実施例2に係る3次元造形物1000は、繊維径が0.64mm、外形サイズが40mm×40mm×20mm、重さが4.13g、見掛け体積が32.0cm、見掛け密度が0.1291g/cm、空隙率が89.7%であった。
【0047】
<実施例3>
(熱可塑性樹脂の準備および糸状の造形材料の準備)
ノズル温度を210℃としたことを除いては、実施例2と同様の熱可塑性樹脂が準備され、実施例2と同様に該熱可塑性樹脂からなる糸状の造形材料102が準備された。
【0048】
(コレクタ)
図10は実施例3で用いたコレクタ104の概略図であり、図11図10に示すコレクタ104をA方向から見た際の概略図である。図11に示されるように、アルミ板104a、104c、および104eがz方向において同一の高さを有し、アルミ板104bおよび104dがz方向において同一の高さを有している。アルミ板104a、104c、および104eがアルミ板104bおよび104dに比してz方向に4mm高く配置されていることを除いては、実施例1と同様のコレクタが準備された。以下、係るコレクタを「アルミ板がw型に配置されたコレクタ」とも記す。コレクタに、樹脂との溶着を防止するためにシリコンが塗布された。
【0049】
(第1繊維層の形成)
水平な長方形の支持台101が準備された。支持台101に対して、ノズル温度210℃、吐出速度15mm~20mm/秒の条件でノズル103から軟化されたTPU繊維のフィラメント(すなわち、糸状の造形材料102)を吐出することにより、第1繊維層p1の形成を行った。具体的には、支持台101上にループ径が12~24mmとなるような円をランダムに且つ出来るだけそれぞれが外接するように描いた。なお、それぞれが外接するように描いたが、いくつかの円は重複した。これにより、縦85mm、横55mmの略長方形状の第1繊維層p1が形成された。なお、ノズル移動速度は吐出速度と釣り合う速度とした。
【0050】
(第2繊維層の形成)
第2繊維層p2の形成のためのコレクタ104(第2コレクタ)が第1繊維層p1に接するように配置された。より詳細には、支持台101に対してz方向7mm上方に、第1繊維層p1の面方向と略平行になりつつ、第1繊維層p1の中心部を覆うように第2コレクタが配置された。なお、実施例3における「支持台101に対してz方向7mm上方」とは、支持台101とコレクタ104に含まれるアルミ板104bまたは104eが支持台101に対してz方向7mm上方に配置されることを示す。以下も同様である。
【0051】
第1繊維層p1の形成と同様の条件で第2コレクタ104の上側表面に繊維層(第2繊維層p2)の形成を行った。まず、第2コレクタ104の開口部を介してノズル103から吐出された軟化されたTPU繊維のフィラメントが第1繊維層p1に供給された。これにより、第1繊維層p1と第2繊維層p2とを接続させるための連結糸構造を予め全体に形成した。第2コレクタ104の上側表面上にループ径が12~24mmとなるような円をランダムに且つ出来るだけそれぞれが外接するように描いた。なお、それぞれが外接するように描いたが、いくつかの円は重複した。これにより、縦85mm、横55mmの略長方形状の第2繊維層p2が形成された。第1繊維層p1と第2繊維層p2とは、予め形成された連結糸構造により接続されている。
【0052】
(第3繊維層~第19繊維層の形成)
以下の表1に示す条件で、第3繊維層~第19繊維層を形成した。これにより、第1繊維層p1~第19繊維層p19を含む3次元造形物1000が製造された。なお、表1に示されるようにコレクタ104は順次除去された。具体的には、第3繊維層が形成された後、第2繊維層の形成のために用いられたコレクタ104が除去された。第3繊維層以降の繊維層形成のために用いられたコレクタ104の除去についても同様である。実施例3に係る3次元造形物は、図12に示されている。
【0053】
【表1】
【0054】
図12に示されるように、実施例3に係る3次元造形物1000は、第1繊維層~第19繊維層からなる空隙を有する立体格子構造を有していた。実施例3に係る3次元造形物1000は、繊維径が0.61mmであり、外形サイズが85mm×55mm×124mmであり、重さが18.95gであり、見掛け体積が469.7cmであり、見掛け密度が0.040g/cmであり、空隙率が96.8%であった。図12に示されるように、実施例3に係る3次元造形物1000は第8繊維層から第12繊維層に相当する箇所において40mm×50mm×55mmの欠損部分を有していた。このように、本発明によれば空隙率の高い複雑な形状を有する3次元造形物1000を製造することができる。
【0055】
<実施例4>
(熱可塑性樹脂の準備および糸状の造形材料の準備)
実施例2と同様の熱可塑性樹脂が準備され、実施例2と同様に該熱可塑性樹脂からなる糸状の造形材料が準備された。
【0056】
(コレクタ)
各アルミ板間の間隔を30mmとしたことを除いては、実施例3と同様にアルミ板がw型に配置されたコレクタが準備された。コレクタに、樹脂との溶着を防止するためにシリコンが塗布された。
【0057】
(第1繊維層の形成)
水平な長方形の支持台101が準備された。支持台101に対して、ノズル温度220℃、吐出速度15mm~20mm/秒の条件でノズル103から軟化されたTPU繊維のフィラメント(すなわち、糸状の造形材料102)を吐出することにより、第1繊維層p1の形成を行った。具体的には、支持台101上にループ径が10~30mmとなるような円をランダムに且つ出来るだけそれぞれが外接するように描いた。なお、それぞれが外接するように描いたが、いくつかの円は重複した。これにより、縦130mm、横50mmの略長方形状の第1繊維層p1が形成された。なお、ノズル移動速度は吐出速度と釣り合う速度とした。
【0058】
(第2繊維層の形成)
第2繊維層p2の形成のためのコレクタ104(第2コレクタ)が第1繊維層p1に接するように配置された。より詳細には、支持台101に対してz方向11mm上方に、支持台101および第1繊維層p1の面方向と略平行になりつつ、第1繊維層p1の中心部を覆うように第2コレクタが設置された。第1繊維層p1の形成と同様の条件で第2コレクタ104の上側表面に繊維層(第2繊維層p2)の形成を行った。まず、第2コレクタ104の空隙を介してノズル103から吐出された軟化されたTPU繊維のフィラメントが第1繊維層p1に供給された。これにより、第1繊維層p1と第2繊維層p2とを接続させるための連結糸構造を予め全体に形成した。第2コレクタ104の上側表面にループ径が10~30mmとなるような円をランダムに且つ出来るだけそれぞれが外接するように描いた。なお、それぞれが外接するように描いたが、いくつかの円は重複した。これにより、第2コレクタ104の上側表面に縦130mm、横55mmの第2繊維層p2が形成された。第1繊維層p1と第2繊維層p2とは、予め形成された連結糸構造により融着されている。
【0059】
(第3繊維層~第7繊維層の形成)
以下の表2に示す条件で、第3繊維層~第7繊維層を形成した。
【0060】
【表2】
【0061】
(第8繊維層の形成)
第8繊維層p8の形成のためのコレクタ104(第8コレクタ104)が第7繊維層p7に接するように配置された。より詳細には、第7コレクタ104に対しとx,y平面で一致させつつ、第7コレクタ104に対してz方向12mm上方に第8コレクタ104を配置した。第8コレクタ104の空隙を介してノズル103から吐出された軟化されたTPU繊維のフィラメントが第7繊維層p7に供給された。これにより、第7繊維層p7と第8繊維層p8とを接続させるための連結糸構造を予め形成した。この連結糸構造は、x方向の片側いずれか一方の開始点からy方向中央を中心としてx方向に40mm、y方に50mmの欠損部分を有する“コ”形状とされた。
【0062】
上記連結糸構造が形成された領域のみに対し、第8コレクタ104の上側表面にループ径が10~30mmとなるような円をランダムに且つ出来るだけそれぞれが外接するように描いた。場合によっては、円が重複する部分が生じたが、出来るだけ発生させないように形成し、1層目の外形と一致するように外形130mm×50mm、且つx方向の片側いずれか一方の開始点からy方向中央を中心として50mm×40mmの欠損部分を有する“コ”形状の第8繊維層が形成された。その後、第7コレクタ104が抜き取られた。
【0063】
(第9繊維層~第17繊維層の形成)
以下の表3に示す条件で、第9繊維層~第17繊維層を形成した。
【0064】
【表3】
【0065】
図13に示されるように、実施例4に係る3次元造形物1000は、第1繊維層~第17繊維層からなる空隙を有する立体格子構造を有していた。実施例4に係る3次元造形物1000は、繊維径が0.44mmであり、外形サイズが170mm×130mm×50mmであり、重さが11.18gであり、見掛け体積が985cmであり、見掛け密度が0.0113g/cmであり、空隙率が99.1%であった。図13に示されるように、実施例4に係る3次元造形物1000は、第8繊維層から第12繊維層に相当する箇所において、40mm×50mm×60mmのyz平面の片側のみに貫通した欠損部分を有していた。このように、本発明によれば空隙率の高い複雑な形状を有する3次元造形物1000を製造することができる。
【0066】
<実施例5>
熱可塑性樹脂として、ポリエステル系熱可塑性エラストマー〔商品名:「ペルプレンGP300」(東洋紡(株))より入手〕を用いたこと、スクリューにより熱可塑性樹脂をφ2.0mmの中実ノズルから押出すことにより糸状の造形材料102を準備したこと、スクリュー温度およびノズル温度を240℃としたことを除いては、実施例1と同様に3次元造形物1000が製造された。準備された糸状の造形材料102の断面形状は円形であり、糸状の造形材料102は中実構造を有していた。
【0067】
実施例5に係る3次元造形物1000は、繊維径が1.02mm、外形サイズが100mm×80mm×50mm、重さが24.5g、見掛け体積が400cm、見掛け密度が0.0612g/cm、空隙率が94.9%であった。
【0068】
<実施例6>
熱可塑性樹脂として、2種類のポリエステル系エラストマー〔商品名:「ペルプレンGP300」および「ペルプレンGP400」(東洋紡(株))より入手〕を用いたこと、2本のスクリューにより各熱可塑性樹脂をφ2.0mmの中実ノズルから押出すことにより、シースコア構造の糸状の造形材料102を準備したことを除いては、実施例5と同様に3次元造形物1000が製造された。作製された糸状の造形材料102の断面形状は円形であり、糸状の造形材料102は上述の通りシースコア構造を有していた。
【0069】
実施例6に係る3次元造形物1000は、繊維径が1.11mm、外形サイズが100mm×80mm×50mm、重さが25.5g、見掛け体積が400cm、見掛け密度が0.0637g/cm、空隙率が94.7%であった。
【0070】
<実施例7>
糸状の造形材料102がφ1.0mmの中空ノズルから押出されることにより準備されたことを除いては、実施例5と同様に3次元造形物1000が製造された。作製された糸状の造形材料102の断面形状は円形であり、糸状の造形材料102は中空構造を有していた。
【0071】
実施例7に係る3次元造形物1000は、繊維径が0.58mm、外形サイズが100mm×80mm×50mm、重さが23.1g、見掛け体積が400cm、見掛け密度が0.0577g/cm、空隙率が95.2%であった。
【0072】
<実施例8>
糸状の造形材料102がノズル断面がY断面であるノズルから押出されることにより準備されたことを除いては、実施例5と同様に3次元造形物1000が製造された。作製された糸状の造形材料102の断面形状はY断面(すなわち、異形)であり、糸状の造形材料102は中実構造を有していた。
【0073】
実施例8に係る3次元造形物1000は、外形サイズが100mm×80mm×50mm、重さが25.3g、見掛け体積が400cm、見掛け密度が0.0632g/cm、空隙率が94.7%であった。
【0074】
<評価>
《触診による強度の評価》
実施例1~実施例8に係る3次元造形物に対して、評価者の手指を当てると共に、親指と中指で3次元造形物をその中心に向けて軽く押圧するという触診試験を行った。この触診試験では、各実験例の3次元造形物の強度を次のように評価した。結果は以下の表3の「触診評価」の欄に示されている。
A:触診による損壊は認められず、各繊維層間が十分な強度を有していた。
B:触診により一部損壊が認められ、一部の繊維層間の強度に改善の余地が有った。
C:触診により著しい損壊が認められ、繊維層間の強度に改善の余地が有った。
【0075】
【表4】
【0076】
<結果>
表4に示されるように、各実施例に係る3次元造形物は各繊維層間が十分な強度を有していた。コレクタの空隙を介して繊維層同士が第3工程において接続されるため、各繊維層間が十分な強度を有するものと考えられる。
【0077】
なお、実施例には含まれてはいないが、実施例1に記載の製造方法において糸状の造形材料の断面形状を楕円形としても、得られた3次元造形物は各繊維層間が十分な強度を有するものと推測される。同様に、実施例1に記載の製造方法において造形材料の構造をサイドバイサイド構造としても、得られた3次元造形物は各繊維層間が十分な強度を有するものと推測される。
【0078】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0079】
100 積層造形装置、101 支持台、102 糸状の造形材料、103 ノズル、104 コレクタ、1000 3次元造形物、d1 開口部、104a,104b,104c,104d,104e アルミ板、p1 第1繊維層、p2 第2繊維層、p3 第3繊維層、p4 第4繊維層、p5 第5繊維層、p6 第6繊維層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13