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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】排水弁装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/34 20060101AFI20221109BHJP
   F16K 31/20 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E03D1/34
F16K31/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018245830
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105821
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 春喜
(72)【発明者】
【氏名】比江島 崇
(72)【発明者】
【氏名】篠原 弘毅
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104271(JP,A)
【文献】特開2017-044058(JP,A)
【文献】特開2002-348934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0073993(US,A1)
【文献】米国特許第6112763(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
F16K 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に延在する弁体主軸を備え、洗浄水を貯留する洗浄水タンクの排水口を前記弁体主軸の引き上げに応じて開閉する排水弁体と、
前記洗浄水タンクの水位に連動して上下動するフロートと、
前記弁体主軸に設けられた係合突起と係合可能であり、回転軸を中心とした回転動作によって前記係合突起との係合を解除可能な係合部と
を備え、
前記係合部は、
前記係合突起との係合位置よりも前記弁体主軸から遠い位置に前記回転軸を有し、且つ、前記洗浄水タンクの水位が所定水位よりも上である時、前記フロートに側方から当接することによって前記回転動作が規制され、前記洗浄水タンクの水位が所定水位以下の時、前記フロートの下降に伴って前記回転動作が許容される、排水弁装置。
【請求項2】
前記係合部と前記フロートとの当接位置は、
前記係合突起と前記係合部との係合位置よりも前記弁体主軸から遠く、且つ、前記回転軸よりも前記弁体主軸に近い位置に設けられる、請求項1に記載の排水弁装置。
【請求項3】
前記弁体主軸が引き上げられる前の前記係合部の初期位置において、前記弁体主軸の引き上げに伴って、前記係合突起から上向きの力を受けて回転した場合に、前記係合部が前記初期位置に復帰する初期位置復帰部を備える、請求項1または2に記載の排水弁装置。
【請求項4】
前記初期位置復帰部は、前記初期位置において、前記回転軸よりも前記弁体主軸から遠い位置において前記フロートに下方から支持される前記係合部の一部であり、
前記係合部は、前記弁体主軸の引き上げに伴って前記係合突起から上向きの力を受けた場合に、前記フロートを浮力に抗して押し下げながら前記回転軸まわりに回転し、その後、浮力によって上昇する前記フロートから受ける上向きの力によって前記回転軸まわりに回転して前記初期位置に戻る、請求項3に記載の排水弁装置。
【請求項5】
前記係合部は、
前記フロートに側方から当接する第1当接部材と、
前記第1当接部材とは別体であり、前記係合突起と当接する第2当接部材と
を備える、請求項1乃至4の何れか1項に記載の排水弁装置。
【請求項6】
前記回転軸は、
前記第1当接部材を回転可能に支持する第1回転軸と、
前記第1当接部材に設けられ、前記第1回転軸よりも前記弁体主軸に近い位置において前記第2当接部材を回転可能に支持する第2回転軸と
を含む、請求項5に記載の排水弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、排水弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器に供給される洗浄水を貯留する洗浄水タンクの内部に配置され、洗浄水タンクの底面に設けられた排水口の開閉を制御する排水弁装置が知られている。
【0003】
排水弁装置は、排水口を開閉する排水弁体と、洗浄水タンク内の水位と連動して上下動するフロートとを備える。洗浄操作に伴って排水弁体が引き上げられると、排水弁体に設けられた係合突起がフロートに設けられた係合部と係合することによって排水弁体の高さが維持され、排水口から洗浄水が排水される。その後、水位の低下に伴ってフロートが下がることで係合突起と係合部との係合が解除されて排水弁体が下がり、排水口が閉じられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-104271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、係合突起と係合部との係合が解除される際に、係合突起と係合部との間で摩擦力が生じることで、係合が解除されるタイミングにずれが生じるおそれがある。係合が解除されるタイミングにずれが生じると、排水弁体が排水口を閉じるタイミングにばらつきが生じ、結果として、洗浄水タンクの死水水位にばらつきが生じることとなる。洗浄水タンクの死水水位にばらつきが生じると、たとえば便器の洗浄不良等が発生する恐れがあるため、死水水位のばらつきが生じないことが好ましい。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、死水水位のばらつきを抑えることができる排水弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る排水弁装置は、上方に延在する弁体主軸を備え、洗浄水を貯留する洗浄水タンクの排水口を前記弁体主軸の引き上げに応じて開閉する排水弁体と、前記洗浄水タンクの水位に連動して上下動するフロートと、前記弁体主軸に設けられた係合突起と係合可能であり、回転軸を中心とした回転動作によって前記係合突起との係合を解除可能な係合部とを備え、前記係合部は、前記係合突起との係合位置よりも前記弁体主軸から遠い位置に前記回転軸を有し、且つ、前記洗浄水タンクの水位が所定水位よりも上である時、前記フロートに側方から当接することによって前記回転動作が規制され、前記洗浄水タンクの水位が所定水位以下の時、前記フロートの下降に伴って前記回転動作が許容される。
【0008】
仮に、係合部の回転軸が係合部と係合突起との係合位置よりも弁体主軸に近い位置に設けられている場合、係合部と係合突起との係合が解除される際、係合部は、係合突起をわずかに持ち上げながら回転することとなるため、係合部と係合突起との係合が解除される際に比較的大きな摩擦力が発生してしまう。これに対し、実施形態の一態様に係る排水弁装置では、係合部の回転軸が係合部と係合突起との係合位置よりも弁体主軸から遠い位置に設けられるため、係合部と係合突起との係合が解除される際、係合部は、係合突起を持ち上げることなく係合突起から離れるように回転する。このため、係合部の回転軸が係合部と係合突起との係合位置よりも弁体主軸に近い位置に設けられている場合と比較して、係合突起と係合部との間で発生する摩擦力の影響を抑えることができる。
【0009】
一方、係合部と係合突起との係合位置よりも弁体主軸から遠い位置に係合部の回転軸を設けた場合、排水弁体の重さによって係合突起と係合部との係合が外れる方向に係合部が回転しようとするため、係合突起と係合部との係合が簡単に外れてしまう恐れがある。これに対し、実施形態の一態様に係る排水弁装置では、洗浄水タンクの水位が所定水位よりも上である時、係合部はフロートに側方から当接して、係合部はフロートによって回転動作が規制されるため、係合突起と係合部との係合が簡単に外れてしまうのを防ぐことができる。
【0010】
以上の作用により、係合突起と係合部との間で発生する摩擦力の影響を抑えつつ、係合突起と係合部との係合が簡単に解除されるのを防ぐことができる。このため、係合突起と係合部との係合が解除されるタイミングにずれが生じにくく、排水弁体が排水口を閉じるタイミングがばらつきにくくなる。結果として、洗浄水の死水水位のばらつきを抑えることができる。
【0011】
また、前記係合部と前記フロートとの当接位置は、前記係合突起と前記係合部との係合位置よりも前記弁体主軸から遠く、且つ、前記回転軸よりも前記弁体主軸に近い位置に設けられる。
【0012】
例えば、係合部とフロートとの当接位置が、回転軸よりも弁体主軸から遠い場合、係合部の回転動作によるフロートと係合部との摩擦力が、フロートに対して上向きに発生する。フロートに上向きの摩擦力が加わると、フロートの下降を阻害するため、摩擦力の大きさによって、フロートの下降するタイミングにばらつきが発生する。その結果、係合部と係合突起との係合が解除されるタイミングにもばらつきが生じるため、洗浄水の死水水位のばらつきが発生してしまう。
【0013】
実施形態の一態様に係る排水弁装置は、係合部の回転動作によるフロートと係合部との摩擦力が、フロートに対して上向きに発生しないため、フロートの下降を阻害することなく、係合部と係合突起との係合が解除されるタイミングがばらつきにくくなる。結果として、洗浄水の死水水位のばらつきを抑えることができる。
【0014】
また、実施形態の一態様に係る排水弁装置は、前記弁体主軸が引き上げられる前の前記係合部の初期位置において、前記弁体主軸の引き上げに伴って、前記係合突起から上向きの力を受けて回転した場合に、前記係合部が前記初期位置に復帰する初期位置復帰部を備える。これにより、弁体主軸が引き上げられた後、弁体主軸が下りてくるまでに、係合部が係合突起と係合できる初期位置に速やかに戻ることができる。
【0015】
また、前記初期位置復帰部は、前記初期位置において、前記回転軸よりも前記弁体主軸から遠い位置において前記フロートに下方から支持される前記係合部の一部であり、前記係合部は、前記弁体主軸の引き上げに伴って前記係合突起から上向きの力を受けた場合に、前記フロートを浮力に抗して押し下げながら前記回転軸まわりに回転し、その後、浮力によって上昇する前記フロートから受ける上向きの力によって前記回転軸まわりに回転して前記初期位置に戻る。
【0016】
これにより、簡単な構成で係合部の初期位置復帰をさせることができるため、排水弁装置を小型にすることができる。
【0017】
また、前記係合部は、前記フロートに側方から当接する第1当接部材と、前記第1当接部材とは別体であり、前記係合突起と当接する第2当接部材とを備える。これにより、弁体主軸が引き上げに伴って係合突起から第2当接部材が上向きの力を受けた場合、第1当接部材は回転軸まわりに回転せず、第2当接部材だけが回転するため、第1当接部材が回転するスペースがいらず、排水弁装置を小型にすることができる。
【0018】
前記回転軸は、前記第1当接部材を回転可能に支持する第1回転軸と、前記第1当接部材に設けられ、前記第1回転軸よりも前記弁体主軸に近い位置において前記第2当接部材を回転可能に支持する第2回転軸とを含む。
【0019】
これにより、第2当接部材が係合突起との係合を解除する時間が短くなり、第2当接部材と係合突起との間に発生する摩擦の影響を受けにくくなる。結果として、洗浄水の死水水位のばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
実施形態の一態様によれば、死水水位のばらつきを抑えることができる排水弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係るトイレ装置を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る洗浄水タンクの断面図である。
図3図3は、実施形態に係る弁体部が下りている状態の排水弁装置を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る弁体部が引き上げられている状態の排水弁装置を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る排水弁装置の断面図である。
図6図6は、実施形態に係る排水前の排水弁装置を表した模式図である。
図7図7は、実施形態に係る排水中の排水弁装置を表した模式図である。
図8図8は、実施形態に係る排水中の排水弁装置を表した模式図である。
図9図9は、実施形態に係る排水中の排水弁装置を表した模式図である。
図10図10は、実施形態に係る排水中の排水弁装置を表した模式図である。
図11図11は、実施形態に係る排水中の排水弁装置を表した模式図である。
図12図12は、実施形態に係る排水中の排水弁装置を表した模式図である。
図13図13は、実施形態に係る排水後の排水弁装置を表した模式図である。
図14図14は、実施形態に係る排水後の排水弁装置を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する排水弁装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
まず、実施形態に係る排水弁装置を備えたトイレ装置の全体構成について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係るトイレ装置1を示す図である。
【0024】
図1に示すように、トイレ装置1は、便器本体2と、タンク部4とを備える。便器本体2は、汚物を受けるボウル部20と、ボウル部20の上縁部に内側にオーバーハングしたリム22と、タンク部4から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口24と、溜水が溜水面W0まで溜まっている溜水部26と、溜水部26と連通する排水トラップ管路27とを備える。
【0025】
また、便器本体2は、ボウル部20の溜水面W0よりも上方位置に、タンク部4から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口28を備える。第1吐水口24によって吐水された洗浄水は、ボウル部20を旋回しながら流下し、ボウル部20を洗浄する。第2吐水口28によって吐水された洗浄水は、溜水部26の溜水を上下方向に旋回させ、旋回流を発生させる。
【0026】
タンク部4は、洗浄水を貯水するとともに、底面にボウル部と連通する排水口400(図3等参照)が設けられる貯水タンク40と、貯水タンク40の上方に載置される洗浄水タンク蓋42とを備える。また、洗浄水タンク蓋42は、上面に押しボタン式の手動操作装置420を備えており、使用者が手動操作装置420を押すことで、タンク部4内に貯水されている洗浄水をボウル部20へ供給することができる。タンク部4内の詳細な排水機構については後述する。
【0027】
次に、タンク部4内の構成について図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係るタンク部4の断面図である。図2に示すように、タンク部4は、給水装置6と、排水弁装置8と、手動操作装置420とを備える。
【0028】
給水装置6は、給水管60と、フロート62と、給水バルブ64と、リフィール管66とを備える。給水管60は、水道管等の給水源(図示しない)に接続され、貯水タンク40の底面から上方に延びるように設けられており、給水管60の上端には給水バルブ64が取り付けられる。給水バルブ64は、貯水タンク40内の水位に伴って上下動するフロート62によって開閉が制御される。
【0029】
また、給水管60は、外周側下端部に吐水口(図示しない)を備える。吐水口は、給水バルブ64が開くと、給水管60から供給される洗浄水をタンク部4内に吐水し、給水バルブ64が閉じると止水する。
【0030】
リフィール管66は、下流端部が後述する排水弁装置8のオーバーフロー管80の上端開口800に位置し、リフィール管66の一部はオーバーフロー管80またはタンク部4内の所定箇所に固定されている。リフィール管66から流出する一部の洗浄水は、オーバーフロー管80内に流れ込み、便器本体2のボウル部20内に補給水として供給される。
【0031】
手動操作装置420は、トイレ装置1の大洗浄モードの洗浄操作の開始を機械的に指令する大洗浄ボタン422と、トイレ装置1の小洗浄モードの洗浄操作の開始を機械的に指令する小洗浄ボタン424と、大洗浄ボタン422の下面側に固定され且つ下方に延びる大洗浄用棒部材426と、小洗浄ボタン424の下面側に固定され且つ下方に延びる小洗浄用棒部材428とを備えている。
【0032】
使用者が大洗浄ボタン422を押すと、大洗浄用棒部材426が押し下げられ、大洗浄用棒部材426の先端が排水弁装置8の大洗浄操作部823を押し下げる。また、使用者が小洗浄ボタン424を押すと、小洗浄用棒部材428が押し下げられ、小洗浄用棒部材428の先端が排水弁装置8の小洗浄操作部822を押し下げる。使用者がこの大洗浄ボタン422または小洗浄ボタン424を押すことで、排水弁装置8を大洗浄モードまたは小洗浄モードいずれかの洗浄操作に応じて駆動させることができるようになっている。
【0033】
次に、排水弁装置8の構成と排水弁装置8内に設けられる弁体部84の引き上げ機構について図3および図4を参照して説明する。図3は、実施形態に係る弁体部84が下りている状態の排水弁装置8を示す図であり、図4は、実施形態に係る弁体部84が引き上げられている状態の排水弁装置8を示す図である。
【0034】
まず、排水弁装置8は、排水弁装置8の外観を形成するケーシング82と、ケーシング82内に配置され、排水口400を開閉する弁体部84と、弁体部84を引き上げる弁体引き上げ機構86とを備える。
【0035】
ケーシング82は、ケーシング82の側面を形成する筒状の胴部820と、胴部820の頂部の開口を覆うように形成されている蓋部821と、オーバーフロー管80(図2参照)とを備える。胴部820は、弁体部84が着座する弁座824と、排水口400に差し込まれる排水筒部826と、弁座824と排水筒部826との間で上流側から下流側に向かって縮径する縮径部828とを備える。
【0036】
弁体部84は、上方に延在する弁体主軸840と、弁体主軸840の引き上げに応じて洗浄水を貯留するタンク部4の排水口400を開閉する排水弁体842とを備える。排水弁体842は、弁座824の上に着座することで排水口400を閉じる。また、弁体主軸840は側方へ延びる直方体状の平板部材844を上端開口部の周縁に備えており、平板部材844の中央付近には、取り付け穴846が設けられる。
【0037】
弁体引き上げ機構86は、第1リンク860と、第1リンク860の一端に回転可能に取り付けられ、第1リンク860の回転量に応じて上方へ移動する第2リンク862とを備える。大洗浄用棒部材426または小洗浄用棒部材428によって、大洗浄操作部823または小洗浄操作部822が下方へ押し下げられると、第1リンク860は、後述する第1回転軸898(図5等参照)を中心に回転し、第2リンク862が引き上げられる。
【0038】
第2リンク862の下端部は、平板部材844の取り付け穴846に挿入された後、向きを変えて配置されていることにより、第2リンク862が引き上げられる時、平板部材844の下面と係合して、弁体部84全体を引き上げることができる。
【0039】
図3に示すように、使用者が手動操作装置420を操作する前の待機状態において、第1リンク860と連結される第2リンク862の下端部は平板部材844と係合しておらず、排水弁体842は排水口400を閉じた状態である。
【0040】
図4は、使用者が大洗浄ボタン422を押し、大洗浄用棒部材426が押し下げられている状態の排水弁装置8の断面図である。大洗浄用棒部材426(ここでは図示せず)が押し下げられることで、ケーシング82の大洗浄操作部823(ここでは図示せず)は下方へ下がる。大洗浄操作部823が下方へ下がると、第1リンク860は比較的大きな回転量だけ回転し、第2リンク862が上方に比較的大きな移動量引き上げられる。そして、第2リンク862の下端部が平板部材844と係合し、平板部材844を比較的大きな移動量引き上げる。平板部材844が引き上げられることで、排水弁体842が引き上げられ、排水口400が開き、タンク部4内の洗浄水がボウル部20へと供給される。これが大洗浄モードの洗浄動作である。
【0041】
また、図示しないが、使用者が小洗浄ボタン424を押すと、小洗浄用棒部材428が押し下げられる。小洗浄用棒部材428が押し下げられることで、ケーシング82の小洗浄操作部822は下方へ下がる。小洗浄操作部822が下方へ下がると、第1リンク860が比較的小さな回転量だけ回転し、第2リンク862が上方に比較的小さな移動量引き上げられる。そして、第2リンク862の下端部が平板部材844と係合し、平板部材844は引き上げられる。平板部材844が引き上げられることで、排水弁体842が引き上げられ、排水口400が開き、タンク部4内の洗浄水がボウル部20へと供給される。これが小洗浄モードの洗浄動作である。
【0042】
次に、排水弁装置8の具体的な構成について、図5を参照して説明する。図5は、排水弁装置8の断面図である。
【0043】
図5に示すように、排水弁装置8は、上述した排水弁装置8の外観を形成するケーシング82と、排水口400を開閉する弁体部84と、弁体部84を引き上げる弁体引き上げ機構86に加えて、ケーシング82内に配置される小洗浄フロート機構88と、大洗浄フロート機構89とを備える。また、ケーシング82は、タンク部4内に連通する上端開口800と縮径部828に連通する下端開口802を備えるオーバーフロー管80を備える。オーバーフロー管80は、貯水タンク40内の洗浄水がオーバーフロー管80の上端開口800に相当する高さの水位を超えた場合に、洗浄水を下端開口802から排出することができる。
【0044】
ケーシング82の蓋部821は、小洗浄操作部822と大洗浄操作部823とを備える。洗浄水タンク蓋42の小洗浄ボタン424が押されると、小洗浄操作部822は、第1リンク860を比較的小さい回転量だけ回転させる。また、洗浄水タンク蓋42の大洗浄ボタン422が押されると、大洗浄操作部823は、第1リンク860を比較的大きな回転量だけ回転させる。
【0045】
弁体部84の弁体主軸840は、後述する小洗浄係合部884に係合する小洗浄係合突起847と、大洗浄係合部892に係合する大洗浄係合突起848とを備える。
【0046】
小洗浄フロート機構88は、小洗浄フロート880と、フロート支持軸882と、小洗浄係合部884とを備える。小洗浄フロート880は、貯水タンク40内の水位が所定の小洗浄水量を排出する水位(死水水位)まで低下する場合に、貯水タンク40内の水位と共に下降する。フロート支持軸882は、上下方向に延びて設けられ、小洗浄フロート880を支持する。
【0047】
小洗浄係合部884は、弁体主軸840に設けられる小洗浄係合突起847に係合可能に形成される。使用者が小洗浄ボタン424を押し、上述した小洗浄モードで洗浄動作が実行されると、弁体部84が持ち上げられ、弁体主軸840に設けられた小洗浄係合突起847が小洗浄係合部884に係合する。小洗浄係合突起847が小洗浄係合部884に係合することで、弁体部84が保持され、排水口400が開いた状態が維持される。その後、排水口400から洗浄水が排出され、貯水タンク40内の水位が低下すると、小洗浄フロート880が下降し、小洗浄係合突起847と小洗浄係合部884との係合は解除される。小洗浄係合突起847と小洗浄係合部884の係合が解除されると、弁体部84が下降して排水口400を閉じる。
【0048】
大洗浄フロート機構89は、大洗浄フロート890と、大洗浄係合部892とを備える。大洗浄フロート890は、貯水タンク40内の水位に連動して上下動するフロートであり、貯水タンク40内の水位が所定の大洗浄水量を排出する死水水位まで低下する場合に、貯水タンク40内の水位と共に下降する。
【0049】
使用者が大洗浄ボタン422を押し、上述した大洗浄モードで洗浄動作が実行されると、大洗浄係合部892は、弁体主軸840の外周に設けられた大洗浄係合突起848と係合する。大洗浄モード時の大洗浄係合部892の詳細な機構については後述する。
【0050】
また、大洗浄係合部892は、大洗浄フロート890に側方から当接する第1当接部材894と、第1当接部材894とは別体であり、大洗浄係合突起848と当接する第2当接部材896とを備える。
【0051】
さらに、排水弁装置8は、第1当接部材894を回転可能に支持する第1回転軸898を備える。また、第1当接部材894は、第2当接部材896を回転可能に支持する第2回転軸899を備える。
【0052】
次に、大洗浄モードでのタンク部4内の洗浄水排水前、洗浄水排水時、およびタンク部4内への給水時における大洗浄係合部892の詳細な機構について図6図14を参照して説明する。図6図14は、実施形態に係る排水中の排水弁装置8を表した模式図である。
【0053】
図6は、弁体主軸840がタンク部4の排水口400を閉じている状態を表している。第1当接部材894は、大洗浄フロート890の側面に当接し、第2当接部材896は、大洗浄フロート890の上面に当接する。弁体主軸840が引き上げられる前の状態における大洗浄係合部892の位置を初期位置とする。
【0054】
図7に示すように、使用者が大洗浄ボタン422を押すと、弁体部84が上方へと引き上げられる。この時弁体主軸840の大洗浄係合突起848が第2当接部材896を下から上に押し上げる。第2当接部材896は、第2回転軸899を中心に右回転するとともに、大洗浄フロート890を押し下げる。
【0055】
実施形態に係る排水弁装置8は、第1当接部材894と第2当接部材896を別体で備えているため、弁体部84によって第2当接部材896が上方へと押し上げられて回転しても、第1当接部材894は回転しない。これにより、第1当接部材894が回転するスペースを必要とせず、排水弁装置8を小型にすることができる。
【0056】
次に、初期位置復帰部である大洗浄係合部892は、大洗浄フロート890を浮力に抗して押し下げながら第2回転軸899まわりに回転した後、図8に示すように浮力によって上昇する大洗浄フロート890から受ける上向きの力によって第2回転軸899まわりに左回転して、図9に示すように初期位置に戻る。
【0057】
このように実施形態に係る排水弁装置8は、上述した初期位置において、弁体主軸840の引き上げに伴って、大洗浄係合突起848から上向きの力を受けて回転した場合に、大洗浄係合部892が初期位置に復帰する初期位置復帰部を備える。これにより、弁体主軸840が引き上げられた後、弁体主軸840が下りてくるまでに、大洗浄係合部892の第2当接部材896は大洗浄係合突起848と係合できる初期位置に速やかに戻ることができる。
【0058】
実施形態に係る排水弁装置8の初期位置復帰部は、第2回転軸899よりも弁体主軸840から遠い位置において大洗浄フロート890に下方から支持される大洗浄係合部892の一部897である。これにより、簡単な構成で大洗浄係合部892を初期位置に復帰させることができるため、排水弁装置8を小型にすることができる。
【0059】
なお、初期位置復帰部は、必ずしも大洗浄係合部892の一部であることを要さず、たとえばバネ(樹脂バネ、板バネ、トーションバネ)や錘であっても良い。初期位置復帰部として上述したバネを用いる場合、バネの一端は第2当接部材896と当接し、他端はバネが第2当接部材896から受ける力を逃がさないように保持される。
【0060】
続いて、図10に示すように、弁体部84が低下すると、第2当接部材896が大洗浄係合突起848と係合することで、弁体部84が排水口400を開けた状態で維持される。弁体部84が排水口400を開けた状態である時、洗浄水はタンク部4から排出され、ボウル部20に供給される。図10には、貯水タンク40内の水位をWLで表している。
【0061】
ここで、大洗浄係合突起848と係合した大洗浄係合部892は、貯水タンク40内の水位が所定水位よりも上である時、大洗浄フロート890に側方から当接することによって、回転動作が規制される。すなわち、初期位置において、第1当接部材894は、大洗浄フロート890の側面に側方から当接することで、左回転の回転動作が大洗浄フロート890によって規制されている。また、初期位置において、第2当接部材896は、かかる第1当接部材894によって下方から支持されている。このため、大洗浄係合突起848と係合した第2当接部材896の左回転の回転動作は、第1当接部材894によって規制される。なお、所定水位は、貯水タンク40の満水水位と死水水位との間で規定される。
【0062】
その後、タンク部4内の洗浄水が排出され、水位が低下するにつれて、大洗浄フロート890は下方へ移動する。図11に示すように、大洗浄フロート890が下方へ移動すると、第1当接部材894が大洗浄フロート890に形成された傾斜面891を摺動する。
【0063】
そして、図12に示すように、貯水タンク40内の水位が所定水位以下の時、大洗浄フロート890の下降に伴って、大洗浄フロート890に当接した状態が解除されて回転動作が許容される。すなわち、貯水タンク40内の水位低下に伴って、大洗浄フロート890が低下すると、第1当接部材894が大洗浄フロート890に形成された傾斜面891を摺動し始め、大洗浄係合突起848と係合した第2当接部材896の左回転の回転動作は許容される。
【0064】
実施形態に係る排水弁装置8の第2回転軸899は、第1回転軸898よりも弁体主軸840に近い位置において第2当接部材896を回転可能に支持する。このため、貯水タンク40内の水位低下に伴って、大洗浄フロート890が低下する時、第2回転軸899が第1回転軸898よりも弁体主軸840から遠い位置において第2当接部材896を回転可能に支持する時と比較して、第2当接部材896のより少ない回転量で、第2当接部材896と大洗浄係合突起848との係合が解除される。
【0065】
すなわち、大洗浄フロート890が低下し始めた時から第2当接部材896と大洗浄係合突起848との係合が解除される時までの時間を短縮することができる。結果として、第2当接部材896と大洗浄係合突起848との間に発生する摩擦の影響を小さくすることができるため、洗浄水の死水水位のばらつきを抑えることができる。
【0066】
続いて、図13に示すように、さらに弁体部84が下方へと移動すると、排水弁体842はタンク部4の排水口400を閉じる。排水弁体842が排水口400を閉じると、給水装置6から給水される洗浄水がタンク部4内に貯留され、貯水タンク40内の水位が上昇する。貯水タンク40内の水位が上昇するにつれて、大洗浄フロート890が上方へと移動し、第1当接部材894は大洗浄フロート890に形成された傾斜面891を摺動する。
【0067】
仮に、第1当接部材894と大洗浄フロート890との当接位置が、大洗浄係合突起848と第2当接部材896との係合位置よりも弁体主軸840から遠く、且つ、第1回転軸898よりも弁体主軸840から遠い位置に設けられているとする。この場合、貯水タンク40内の水位が低下し、大洗浄フロート890が下方へと移動する際、第1当接部材894の回転動作によって、第1当接部材894が大洗浄フロート890に対して上方への力が作用する。
【0068】
これに対し、実施形態に係る排水弁装置8では、第1当接部材894と大洗浄フロート890との当接位置は、大洗浄係合突起848と第2当接部材896との係合位置よりも弁体主軸840から遠く、且つ、第1回転軸898よりも弁体主軸840に近い位置に設けられる。このような位置関係で構成することで、貯水タンク40内の水位が低下し、大洗浄フロート890が下方へと移動する際、第1当接部材894が大洗浄フロート890に対して上方への力を与えることを防ぐことができる。したがって、大洗浄フロート890の動作が第1当接部材894によって阻害されることを抑制することができる。
【0069】
最後に、図14に示すように、大洗浄係合部892は、第1当接部材894が大洗浄フロート890の側面に当接し、第2当接部材896が大洗浄フロート890に下方から支持された初期位置の状態となる。給水装置6から給水される洗浄水がタンク部4内に貯留され、貯水タンク40内の水位が上昇し、フロート62が上方へ移動することによって、給水バルブ64は閉じられ、タンク部4への給水が停止する。
【0070】
上述してきたように、実施形態に係る排水弁装置8では、排水弁体842と、大洗浄フロート890と、大洗浄係合部892とを備える。排水弁体842は、上方に延在する弁体主軸840を備え、洗浄水を貯留するタンク部4の排水口400を弁体主軸840の引き上げに応じて開閉する。大洗浄フロート890は、貯水タンク40内の水位に連動して上下動する。大洗浄係合部892は、弁体主軸840の外周に設けられた大洗浄係合突起848と係合可能であり、回転軸(一例として、第1回転軸898および第2回転軸899)を中心とした回転動作によって大洗浄係合突起848との係合を解除可能である。
【0071】
また、大洗浄係合部892は、大洗浄係合突起848との係合位置よりも弁体主軸840から遠い位置に回転軸を有する。さらに、大洗浄係合部892は、貯水タンク40内の水位が所定水位よりも上である時、大洗浄フロート890に側方から当接することによって回転動作が規制され、貯水タンク40内の水位が所定水位以下の時、大洗浄フロート890の下降に伴って大洗浄フロート890に当接した状態が解除されて回転動作が許容される。
【0072】
仮に、大洗浄係合部の回転軸が大洗浄係合部と大洗浄係合突起との係合位置よりも弁体主軸に近い位置に設けられている場合、大洗浄係合部と大洗浄係合突起との係合が解除される際、大洗浄係合部は、大洗浄係合突起をわずかに持ち上げながら回転することとなる。これに対し、実施形態に係る排水弁装置8では、大洗浄係合部892の回転軸(一例として、第1回転軸898および第2回転軸899)が大洗浄係合部892と大洗浄係合突起848との係合位置よりも弁体主軸840から遠い位置に設けられるため、大洗浄係合部892と大洗浄係合突起848との係合が解除される際、大洗浄係合部892は、大洗浄係合突起848を持ち上げることなく大洗浄係合突起848から離れるように回転する。このため、大洗浄係合部の回転軸が大洗浄係合部と大洗浄係合突起との係合位置よりも弁体主軸に近い位置に設けられている場合と比較して、大洗浄係合突起848と大洗浄係合部892との間で発生する摩擦力の影響を抑えることができる。また、大洗浄係合部892は大洗浄フロート890に側方から当接するため、大洗浄係合部892や大洗浄フロート890の重量による摩擦力が発生せず、大洗浄フロート890と大洗浄係合部892との間で発生する摩擦力を抑えることができる。
【0073】
また、大洗浄係合突起848と大洗浄係合部892との係合位置よりも弁体主軸840から遠い位置に大洗浄係合部892の回転軸を設けた場合、弁体部84の重さによって大洗浄係合突起848と大洗浄係合部892との係合が外れる方向に大洗浄係合部892が回転しようとするため、大洗浄係合突起848と大洗浄係合部892との係合が簡単に外れてしまう恐れがある。これに対し、実施形態の一態様に係る排水弁装置8では、貯水タンク40内の水位が所定水位よりも上である時、大洗浄係合部892は大洗浄フロート890に側方から当接して、大洗浄係合部892は大洗浄フロート890によって回転動作が規制されるため、大洗浄係合突起848と大洗浄係合部892との係合が簡単に外れてしまうのを防ぐことができる。
【0074】
以上の作用により、大洗浄係合突起848と第2当接部材896との間で発生する摩擦力の影響を抑えつつ、大洗浄係合突起848と第2当接部材896との係合が簡単に解除されるのを防ぐことができる。このため、大洗浄係合突起848と第2当接部材896との係合が解除されるタイミングにずれが生じにくく、排水弁体842が排水口400を閉じるタイミングがばらつきにくくなる。結果として、洗浄水の死水水位のばらつきを抑えることができる。
【0075】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 トイレ装置
2 便器本体
4 タンク部
6 給水装置
8 排水弁装置
84 弁体部
89 大洗浄フロート機構
840 弁体主軸
842 排水弁体
848 大洗浄係合突起
890 大洗浄フロート
892 大洗浄係合部
894 第1当接部材
896 第2当接部材
898 第1回転軸
899 第2回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14