(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】電子装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20221109BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L23/50 G
H01L21/56 H
(21)【出願番号】P 2019003822
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中間 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】平沢 憲也
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0097529(US,A1)
【文献】国際公開第2016/076162(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137134(US,A1)
【文献】特開2005-347369(JP,A)
【文献】特開昭60-113451(JP,A)
【文献】特開2007-173712(JP,A)
【文献】特開2001-024135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/12-23/15
H01L 23/28-23/31
H01L 23/50
H01L 25/00-25/07
H01L 25/10-25/11
H01L 25/16-25/18
H02M 3/00-3/44
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング部(31)が形成された回路チップ(30)およびインダクタ(40)がリードフレーム(10)上に配置され、前記スイッチング部および前記インダクタがモールド樹脂(50)で封止された電子装置であって、
前記スイッチング部が形成された前記回路チップと、
前記回路チップと電気的に接続される前記インダクタと、
前記回路チップおよび前記インダクタが配置される前記リードフレームと、
前記回路チップおよび前記インダクタを封止すると共に前記リードフレームにおける前記回路チップおよび前記インダクタが配置される側の部分を封止し、被実装部材(60)に実装される際に前記被実装部材と対向する一面(50a)を有する前記モールド樹脂と、を備え、
前記リードフレームは、前記回路チップおよび前記インダクタが共に配置され、前記スイッチング部と前記インダクタとを電気的に接続する接続端子部(11)を有し、
前記接続端子部は、前記一面と異なる面から露出
せず、
さらに、前記リードフレームは、前記接続端子部を囲み、グランド電位とされるグランド端子部(12)を有する電子装置。
【請求項2】
前記リードフレームは、前記接続端子部を挟んで対称に配置され、前記スイッチング部に入力電圧を入力する一対の入力端子部(13、17)と、前記接続端子部を挟んで対称に配置された一対のグランド端子部(14、18)と、を有し、
前記一対の入力端子部の一方と前記一対のグランド端子部の一方とを接続するコンデンサ(81)と、前記一対の入力端子部の他方と前記一対のグランド端子部の他方とを接続し、前記コンデンサと対称に配置されたコンデンサ(83)と、を有する請求項
1に記載の電子装置。
【請求項3】
スイッチング部(31)が形成された回路チップ(30)およびインダクタ(40)がリードフレーム(10)上に配置され、前記スイッチング部および前記インダクタがモールド樹脂(50)で封止された電子装置であって、
前記スイッチング部が形成された前記回路チップと、
前記回路チップと電気的に接続される前記インダクタと、
前記回路チップおよび前記インダクタが配置される前記リードフレームと、
前記回路チップおよび前記インダクタを封止すると共に前記リードフレームにおける前記回路チップおよび前記インダクタが配置される側の部分を封止し、被実装部材(60)に実装される際に前記被実装部材と対向する一面(50a)を有する前記モールド樹脂と、を備え、
前記リードフレームは、前記回路チップおよび前記インダクタが共に配置され、前記スイッチング部と前記インダクタとを電気的に接続する接続端子部(11)を有し、
前記接続端子部は、前記一面と異なる面から露出
せず、
さらに、前記リードフレームは、前記接続端子部を挟んで対称に配置され、前記スイッチング部に入力電圧を入力する一対の入力端子部(13、17)と、前記接続端子部を挟んで対称に配置された一対のグランド端子部(14、18)と、を有し、
前記一対の入力端子部の一方と前記一対のグランド端子部の一方とを接続するコンデンサ(81)と、前記一対の入力端子部の他方と前記一対のグランド端子部の他方とを接続し、前記コンデンサと対称に配置されたコンデンサ(83)と、を有する電子装置。
【請求項4】
前記リードフレームは、前記インダクタと接続される出力端子部(15)と、前記接続端子部を挟んで対称に配置された一対のグランド端子部(16、19)と、を有し、
前記出力端子部と当該一対のグランド端子部の一方とを接続するコンデンサ(82)と、前記出力端子部と当該一対のグランド端子部の他方とを接続し、前記コンデンサと対称に配置されたコンデンサ(84)と、を有する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
スイッチング部(31)が形成された回路チップ(30)およびインダクタ(40)がリードフレーム(10)上に配置され、前記スイッチング部および前記インダクタがモールド樹脂(50)で封止された電子装置であって、
前記スイッチング部が形成された前記回路チップと、
前記回路チップと電気的に接続される前記インダクタと、
前記回路チップおよび前記インダクタが配置される前記リードフレームと、
前記回路チップおよび前記インダクタを封止すると共に前記リードフレームにおける前記回路チップおよび前記インダクタが配置される側の部分を封止し、被実装部材(60)に実装される際に前記被実装部材と対向する一面(50a)を有する前記モールド樹脂と、を備え、
前記リードフレームは、前記回路チップおよび前記インダクタが共に配置され、前記スイッチング部と前記インダクタとを電気的に接続する接続端子部(11)を有し、
前記接続端子部は、前記一面と異なる面から露出
せず、
さらに、前記リードフレームは、前記インダクタと接続される出力端子部(15)と、前記接続端子部を挟んで対称に配置された一対のグランド端子部(16、19)と、を有し、
前記出力端子部と当該一対のグランド端子部の一方とを接続するコンデンサ(82)と、前記出力端子部と当該一対のグランド端子部の他方とを接続し、前記コンデンサと対称に配置されたコンデンサ(84)と、を有する電子装置。
【請求項6】
スイッチング部(31)が形成された回路チップ(30)およびインダクタ(40)がリードフレーム(10)上に配置され、前記スイッチング部および前記インダクタがモールド樹脂(50)で封止された電子装置の製造方法であって、
前記回路チップおよび前記インダクタが共に配置されることで前記スイッチング部と前記インダクタとを接続する接続端子部(11)が補助端子部(12)に囲まれつつ前記補助端子部と一体化され、一面(10a)および他面(10b)を有する前記リードフレームを用意することと、
前記接続端子部を構成する部分の前記一面側に、前記回路チップおよび前記インダクタを共に配置することと、
前記回路チップおよび前記インダクタを封止すると共に前記リードフレームの一面側の部分を封止し、被実装部材(60)に実装される際に前記被実装部材と対向する一面(50a)を有する前記モールド樹脂を形成することと、を行い、
前記配置することの前に、前記リードフレームの一面側から前記接続端子部と前記補助端子部とを区画する部分に凹部(100a)を形成することを行い、
前記モールド樹脂を形成することの後、前記リードフレームの他面側から前記凹部と連通する凹部(100b)を形成して前記接続端子部と前記補助端子部とを分離することにより、前記接続端子部が前記モールド樹脂の一面と異なる面から露出しないようにする電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング部が形成された回路チップとインダクタとがモールド樹脂によって一体化された電子装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リードフレーム上にスイッチング部が形成された回路チップとインダクタとが搭載され、これらがモールド樹脂によって一体化された電子装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、この電子装置では、リードフレームは、互いに分離された複数の端子部を有している。そして、回路チップおよびインダクタは、各端子部に搭載されて各端子部と電気的に接続されている。なお、回路チップおよびインダクタは、共通の端子部に搭載されることにより、当該端子部を介して電気的に接続されている。そして、モールド樹脂は、回路チップおよびインダクタを封止しつつ、リードフレームの一部を露出させるように形成されている。
【0004】
なお、この電子装置は、モールド樹脂における一面が被実装部材と対向するように配置される。そして、上記電子装置は、後述するように製造されるため、リードフレームにおける各端子部の一部が少なくともモールド樹脂のうちの被実装部材と対向する一面と異なる面から露出している。
【0005】
上記電子装置は、次のように製造される。まず、複数の端子部を有するリードフレームを用意する。なお、この状態では、リードフレームは、各端子部が吊りリード等によって一体的に保持されている。次に、回路チップおよびインダクタを所定の端子部上に搭載し、モールド樹脂によってこれらを封止する。この際、モールド樹脂は、吊りリードが露出するように形成される。このため、吊りリードに保持される各端子部は、一部がモールド樹脂のうちの被実装部材と対向する一面と異なる面から露出した状態となる。その後、吊りリードを分離して各端子部を分離することにより、上記電子装置が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記電子装置では、スイッチング部とインダクタとを接続する端子部には、スイッチング部のスイッチング動作によるリンギングノイズ等のスイッチングノイズが伝搬され易い。そして、上記電子装置では、スイッチング部とインダクタとを接続する端子部もモールド樹脂のうちの被実装部材と対向する一面と異なる面から露出している。
【0008】
このため、被実装部材に上記電子装置が他の電子部品等と共に実装されて用いられる場合、電子装置から他の電子部品にスイッチングノイズが放射され、他の電子部品が誤作動してしまう可能性がある。
【0009】
本発明は上記点に鑑み、被実装部材に搭載された際にスイッチングノイズを放射することを抑制できる電子装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1、3、5の電子装置は、スイッチング部が形成された回路チップと、回路チップと電気的に接続されるインダクタと、回路チップおよびインダクタが配置されるリードフレームと、回路チップおよびインダクタを封止すると共にリードフレームにおける回路チップおよびインダクタが配置される側の部分を封止し、被実装部材(60)に実装される際に被実装部材と対向する一面(50a)を有するモールド樹脂と、を備え、リードフレームは、回路チップおよびインダクタが共に配置され、スイッチング部とインダクタとを電気的に接続する接続端子部(11)を有し、接続端子部は、一面と異なる面から露出しないようにしている。
そして、請求項1は、さらに、リードフレームは、接続端子部を囲み、グランド電位とされるグランド端子部(12)を有する構成とする。
請求項3は、さらに、リードフレームは、接続端子部を挟んで対称に配置され、スイッチング部に入力電圧を入力する一対の入力端子部(13、17)と、接続端子部を挟んで対称に配置された一対のグランド端子部(14、18)と、を有し、一対の入力端子部の一方と一対のグランド端子部の一方とを接続するコンデンサ(81)と、一対の入力端子部の他方と一対のグランド端子部の他方とを接続し、コンデンサと対称に配置されたコンデンサ(83)と、を有する構成とする。
請求項5は、さらに、リードフレームは、インダクタと接続される出力端子部(15)と、接続端子部を挟んで対称に配置された一対のグランド端子部(16、19)と、を有し、出力端子部と当該一対のグランド端子部の一方とを接続するコンデンサ(82)と、出力端子部と当該一対のグランド端子部の他方とを接続し、コンデンサと対称に配置されたコンデンサ(84)と、を有する構成とする。
【0011】
これによれば、接続端子部がモールド樹脂の一面と異なる面から露出しないため、接続端子部からスイッチングノイズが放射されることを抑制できる。したがって、被実装部材に実装された際、被実装部材に実装される他の電子部品が誤作動してしまうことを抑制できる。
【0012】
また、請求項6の電子装置の製造方法は、回路チップおよびインダクタが共に配置されることでスイッチング部とインダクタとを接続する接続端子部(11)が補助端子部(12)に囲まれつつ補助端子部と一体化され、一面(10a)および他面(10b)を有するリードフレームを用意することと、接続端子部を構成する部分の一面側に、回路チップおよびインダクタを共に配置することと、回路チップおよびインダクタを封止すると共にリードフレームの一面側の部分を封止し、被実装部材(60)に実装される際に被実装部材と対向する一面(50a)を有するモールド樹脂を形成することと、を行う。そして、この製造方法は、配置することの前に、リードフレームの一面側から接続端子部と補助端子部とを区画する部分に凹部(100a)を形成することを行い、モールド樹脂を形成することの後、リードフレームの他面側から凹部と連通する凹部(100b)を形成して接続端子部と補助端子部とを分離することにより、接続端子部がモールド樹脂の一面と異なる面から露出しないようにする。
【0013】
これによれば、接続端子部がモールド樹脂の一面と異なる面から露出しない電子装置を容易に製造できる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における電子装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示す電子装置をモールド樹脂の一面側から視た平面図である。
【
図3】
図1に示す電子装置を被実装部材に実装した際の回路構成を示す図である。
【
図4】
図1に示す電子装置を被実装部材に実装した際の断面図である。
【
図5A】
図1に示す電子装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5B】
図5Aに続く電子装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5C】
図5Bに続く電子装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5D】
図5Cに続く電子装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5E】
図5Dに続く電子装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態における電子装置の斜視図である。
【
図7】
図6に示す電子装置をモールド樹脂の一面側から視た平面図である。
【
図8】
図6に示す電子装置を被実装部材に実装した際の回路構成を示す図である。
【
図9】第3実施形態における電子装置の斜視図である。
【
図10】
図9に示す電子装置をモールド樹脂の一面側から視た平面図である。
【
図11】
図9に示す電子装置を被実装部材に実装した際の回路構成を示す図である。
【
図12】第4実施形態における電子装置をモールド樹脂の一面側から視た平面図である。
【
図13】第5実施形態における電子装置を被実装部材に実装した際の回路構成を示す図である。
【
図14】第5実施形態の変形例における電子装置を被実装部材に実装した際の回路構成を示す図である。
【
図15】第6実施形態における電子装置の斜視図である。
【
図16】
図15に示す電子装置をモールド樹脂の一面側から視た平面図である。
【
図17A】第7実施形態における電子装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態の電子装置1について、
図1~
図3を参照しつつ説明する。本実施形態の電子装置1は、リードフレーム10に回路チップ30およびインダクタ40が搭載され、これらがモールド樹脂50によって一体化されることで構成されている。
【0018】
リードフレーム10は、例えば、Cu(銅)やFe(鉄)等の金属材料で構成された板状とされており、複数の端子部11~15、21を有する構成とされている。本実施形態では、リードフレーム10は、第1~第5端子部11~15および複数の制御端子部21を有する構成とされている。なお、リードフレーム10は、例えば、1枚の金属板がプレス打ち抜き等されることによって複数の端子部11~15、21を有する構成とされ、各端子部11~15、21が分離した状態となっている。
【0019】
第1端子部11は、一方向を長手方向とする長方形状の第1領域11aと、一方向と直交する方向を長手方向とし、第1領域11aにおける長辺の中央部に備えられている第2領域11bとを有する形状とされている。つまり、本実施形態の第1端子部11は、略T字状とされている。なお、本実施形態では、第1端子部11が接続端子部に相当する。
【0020】
第2端子部12は、第1端子部11の外形に沿った開口部12dが形成された枠状とされ、当該開口部12d内に第1端子部11が配置される構成とされている。つまり、第2端子部12は、第1端子部11を囲むように配置されている。本実施形態では、第2端子部12は、第1領域11aを囲む第1部位12a、第2領域11bを囲む第2部位12b、第2部位12bにおける第1部位12aと反対側に備えられ、一方向に沿って延びる第3部位12cとを有する形状とされている。なお、第2端子部12は、後述するように、被実装部材60に実装された際にグランドに接続される。つまり、本実施形態では、第1端子部11は、グランド電位に維持された第2端子部12で囲まれるように配置されている。また、本実施形態では、第2端子部12がグランド端子部に相当する。
【0021】
第3端子部13および第4端子部14は、第2端子部12の第2部位12bを挟んで対称となるように配置されている。第5端子部15は、第2端子部12の第1部位12aを挟んで当該第2端子部12の第2部位12bと反対側に配置されている。制御端子部21は、複数備えられており、第2端子部12の第3部位12cを挟んで当該第2端子部12の第2部位12bと反対側にそれぞれ配置されている。
【0022】
なお、第3端子部13は、後述するように、被実装部材60に実装された際に入力端子と接続されて所定の入力電圧Vinが入力される。第4端子部14は、後述するように、被実装部材60に実装された際にグランドに接続される。第5端子部15は、後述するように、被実装部材60に実装された際に出力端子と接続されて出力電圧Voutを出力する。制御端子部21は、被実装部材60に実装された際に後述する所定の信号回路等と接続される。また、本実施形態では、第5端子部15が出力端子部に相当する。
【0023】
回路チップ30は、
図3に示されるように、スイッチング部31および処理部32を有する構成とされている。本実施形態では、スイッチング部31は、ゲート電極を有するpチャネル型のMOSFET素子で構成される第1素子31aと、ゲート電極を有するnチャネル型のMOSFET素子で構成される第2素子31bとが直列に接続されて構成される同期整流型とされている。なお、MOSFETは、metal oxide semiconductor field effect transistorの略である。
【0024】
処理部32は、ゲート駆動回路、信号処理回路、増幅回路等を有する構成とされている。なお、
図3では省略しているが、処理部32は、実際には第1素子31aおよび第2素子31bのゲート電極と接続されている。そして、処理部32は、第1素子31aおよび第2素子31bのゲート電極に印加するゲート電圧を調整したり、各種信号を処理、増幅したりする。
【0025】
そして、このような回路チップ30は、
図1に示されるように、リードフレーム10上に配置されている。具体的には、回路チップ30は、板状とされており、第1端子部11における第2領域11b、第3端子部13、第4端子部14、制御端子部21と電気的、機械的に接続されるように、図示しないはんだ等の接合部材を介して配置されている。
【0026】
なお、本実施形態では、回路チップ30は、第1端子部11、第3端子部13、第4端子部14と接続される部分側にスイッチング部31が形成されており、制御端子部21と接続される側に処理部32が形成されている。言い換えると、回路チップ30は、スイッチング部31が第1端子部11、第3端子部13、第4端子部14と接続される部分側に位置し、処理部32が制御端子部21と接続される側に位置するように配置されている。また、本実施形態では、回路チップ30は、第2端子部12とは電気的、機械的に接続されていない。
【0027】
インダクタ40は、第1端子部11における第1領域11aおよび第5端子部15と電気的、機械的に接続されるように、図示しないはんだ等の接合部材を介して配置されている。つまり、回路チップ30およびインダクタ40は、共通の第1端子部11に搭載されており、
図3に示されるように、第1端子部11を介して電気的に接続されている。
【0028】
モールド樹脂50は、エポキシ樹脂等で構成され、
図1に示されるように、回路チップ30およびインダクタ40を封止しつつ、リードフレーム10における回路チップ30およびインダクタ40が配置される側と反対側の面が露露出するように配置されている。つまり、本実施形態では、電子装置1は、いわゆるハーフモールド構造とされている。
【0029】
本実施形態では、モールド樹脂50は、略直方体形状に構成されており、リードフレーム10側の一面50a、一面50aと反対側の他面50b、一面50aと他面50bとを繋ぐ四つの側面50cを有する構成とされている。なお、電子装置1は、後述するように、モールド樹脂50の一面50aが被実装部材60と対向するように、被実装部材60に実装される。
【0030】
そして、第2~第5端子部12~15および制御端子部21は、一部がモールド樹脂50の側面50cからも露出している。言い換えると、第2~第5端子部12~15および制御端子部21は、一部が一面50aと異なる面からも露出している。但し、第1端子部11は、一面50aと異なる面から露出していない。つまり、第1端子部11は、一面50aと異なる面においてはモールド樹脂50に封止されている。
【0031】
以上が本実施形態における電子装置1の構成である。そして、このような電子装置1は、
図4に示されるように、プリント基板等の被実装部材60に実装される。具体的には、被実装部材60は、ランド61が形成されていると共にランド61を露出させるように保護膜62が形成されている。なお、
図4は、
図2中のIV-IV線に沿った断面に相当している。また、保護膜62は、例えば、ソルダーレジスト等で構成される。
【0032】
電子装置1は、モールド樹脂50の一面50a側が被実装部材60側に向けられて配置される。そして、電子装置1は、第2~第5端子部12~15、制御端子部21におけるモールド樹脂50から露出する部分が、被実装部材60に形成されているランド61にはんだ等の接合部材70を介して実装される。この際、
図3に示されるように、第2端子部12は、被実装部材60のグランドに接続される。第3端子部13は、入力電圧Vinが入力されるように被実装部材60に接続される。第4端子部14は、被実装部材60のグランドに接続される。第5端子部15は、出力電圧Voutを出力できるように被実装部材60に実装される。
【0033】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、被実装部材60には、入力電圧Vinを平滑化できるように、第3端子部13と接続される信号線とグランドとの間に入力用の第1コンデンサ81が配置されている。また、被実装部材60には、出力電圧Voutを平滑化できるように、第5端子部15と接続される信号線とグランドとの間に出力用の第2コンデンサ82が配置されている。そして、第1端子部11は、回路チップ30とインダクタ40とを接続する端子部であり、被実装部材60に形成されたランド61とは接続されない。
【0034】
そして、被実装部材60には、電子装置1や各コンデンサ81、82の他にも各種電子部品が搭載される。この際、本実施形態では、第1端子部11が一面50aと異なる面から露出していない。さらに、第1端子部11は、グランド電位に維持された第2端子部12によって囲まれている。このため、第1端子部11からスイッチングノイズが放射されることを抑制でき、他の電子部品が誤作動してしまうことを抑制できる。
【0035】
次に、上記電子装置1の製造方法について、
図5A~
図5Eを参照しつつ説明する。なお、
図5A~
図5Eは、
図2中のIV-IV線に沿った断面に相当しており、以下では、第1端子部11と第2端子部12との分離方法について主に説明する。
【0036】
まず、
図5Aに示されるように、一面10aおよび他面10bを有し、第1端子部11を構成する部分が第2端子部12を構成する部分に囲まれつつ第2端子部12に一体化されたリードフレーム10を用意する。なお、
図5Aとは別断面では、第1端子部11および第2端子部12を構成する部分と、第3~第5端子部13~15および制御端子部21とは既に分離されているが、これらは図示しない吊りリード等によって一体化されている。また、本実施形態では、第2端子部12が補助端子部に相当する。
【0037】
次に、
図5Bに示されるように、第1端子部11と第2端子部12とを区画する部分に対し、一面10a側から凹部100aを形成する。但し、凹部100aは、リードフレーム10を貫通しないように形成される。すなわち、
図5Bの工程を終了した後では、第1端子部11および第2端子部12はまだ分離されていない。
【0038】
なお、凹部100aは、図示しないマスクを形成し、一面10a側からドライエッチングを行うことによって形成される。この際、マスクは、例えば、はんだ付け用の表面処理としてのPd(パラジウム)メッキ膜等を用いることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0039】
続いて、
図5Cに示されるように、リードフレーム10上に、図示しない接合部材を介してインダクタ40を配置する。なお、
図5Cとは別断面において、リードフレーム10上に回路チップ30も配置する。
【0040】
次に、
図5Dに示されるように、リードフレーム10における回路チップ30およびインダクタ40が配置される一面10a側と反対側の他面10bが露出するように、モールド樹脂50を成形する。なお、モールド樹脂50は、例えば、トランスファーモールド成形等によって形成される。この際、リードフレーム10は、吊りリード等が金型に挟持されることによって金型内に保持されている。
【0041】
その後、
図5Eに示されるように、リードフレーム10に対し、他面10bから凹部100aと連通する凹部100bを形成することにより、開口部12dを形成する。これにより、第1端子部11と第2端子部12とが分離された状態となる。その後、第2~第5端子部12~15および制御端子部21を保持する吊りリードをカットする。このため、第2~第5端子部12~15および制御端子部21は、モールド樹脂50の側面50cからも露出した構成となる。但し、第1端子部11は、上記のようにモールド樹脂50を形成した後に第2端子部12から分離されるため、モールド樹脂50の側面50cからは露出しない。つまり、本実施形態の製造方法では、第1端子部11をモールド樹脂50の一面50aと異なる面から露出させずに電子装置1を製造できる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、第1端子部11がモールド樹脂50の側面50cから露出していない。このため、第1端子部11からスイッチングノイズが放射されることを抑制でき、被実装部材60に実装された際に他の電子部品が誤作動してしまうことを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、第1端子部11がグランド電位に維持された第2端子部12によって囲まれている。このため、第1端子部11からスイッチングノイズが放射されることをさらに抑制できる。
【0044】
そして、本実施形態では、モールド樹脂50を形成した後に第2端子部12から第1端子部11を分離するようにしている。このため、第1端子部11がモールド樹脂50の側面50cから露出しない電子装置1を容易に製造できる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1、第2コンデンサ81、82を備えるようにしたものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
本実施形態では、
図6および
図7に示されるように、リードフレーム10は、第1~第5端子部11~15に加えて第6端子部16を有している。そして、第6端子部16は、本実施形態では、第4端子部14を挟んで第3端子部13と反対側であって、第4端子部14と第5端子部15との間に配置されている。なお、第6端子部16は、電子装置1が被実装部材60に実装された際、グランドに接続される。
【0047】
そして、第1コンデンサ81は、第3端子部13と第4端子部14とを接続するように配置されている。また、第2コンデンサ82は、第5端子部15と第6端子部16とを接続するように配置されている。このため、本実施形態の回路構成は、
図8に示されるようになる。
【0048】
そして、
図6に示されるように、モールド樹脂50は、回路チップ30およびインダクタ40と共に、第1コンデンサ81および第2コンデンサ82も封止するように形成されている。つまり、本実施形態の電子装置1は、上記第1実施形態で説明した電子装置1に対し、第1コンデンサ81および第2コンデンサ82も備えるようにしたものである。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、第1コンデンサ81および第2コンデンサ82を含む電子装置1としている。このため、第1コンデンサ81および第2コンデンサ82が被実装部材60に配置されている場合と比較して、第1コンデンサ81を含む電流ループの経路、および第2コンデンサ82を含む電流ループの経路を小さくできる。したがって、当該電流ループの経路に電流が流れることによって発生する磁界を小さくでき、被実装部材60に実装された際、電子装置1に電流が流れることによって発生する磁界が他の電子部品に影響することを抑制できる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、第1端子部11を基準として対称となる構成としたものである。その他に関しては、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、
図9および
図10に示されるように、リードフレーム10は、第1~第6端子部11~16に加え、第7~第9端子部17~19を有している。本実施形態では、第1端子部11を挟み、第7端子部17が第3端子部13と対称となるように配置され、第8端子部18が第4端子部14と対称となるように配置され、第9端子部19が第6端子部16と対称となるように配置されている。
【0052】
そして、第7端子部17は、第3端子部13と同様に、被実装部材60に実装された際に入力端子と接続されて所定の入力電圧Vinが入力される。第8端子部18は、第4端子部14と同様に、被実装部材60に実装された際にグランドに接続される。第9端子部19は、第6端子部16と同様に、被実装部材60に実装された際にグランドに接続される。なお、本実施形態では、第3端子部13および第7端子部17が入力端子部に相当し、第4端子部14、第6端子部16、第8端子部18および第9端子部19がグランド端子部に相当する。
【0053】
また、リードフレーム10上には、回路チップ30、インダクタ40、第1、第2コンデンサ81、82に加え、第3、第4コンデンサ83、84も配置されている。具体的には、第3コンデンサ83は、第7端子部17と第8端子部18とを接続すると共に、第1端子部11を挟んで第1コンデンサ81と対称となるように配置されている。また、第4コンデンサ84は、第9端子部19と第5端子部15とを接続すると共に、第1端子部11を挟んで第2コンデンサ82と対称となるように配置されている。このため、本実施形態の回路構成は、
図11に示されるようになる。
【0054】
そして、
図9に示されるように、モールド樹脂50は、回路チップ30、インダクタ40、第1、第2コンデンサ81、82と共に、第3コンデンサ83および第4コンデンサ84も封止するように形成されている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、第3~第9端子部17~19および第1~4コンデンサ81~84は、第1端子部11を基準としてそれぞれ対称となるように配置されている。このため、第1コンデンサ81を含む電流ループの経路と、第3コンデンサ83を含む電流ループの経路が第1端子部11を基準として対称に形成されるため、各電流ループに電流が流れることによって形成される磁界が相殺され易くなる。同様に、第2コンデンサ82を含む電流ループの経路と、第4コンデンサ84を含む電流ループの経路が第1端子部11を基準として対称に形成されるため、各電流ループに電流が流れることによって形成される磁界を相殺し易くできる。したがって、被実装部材60に実装された際、電子装置1に電流が流れることによって発生する磁界が他の電子部品に影響することをさらに抑制できる。
【0056】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対し、第2端子部12の構成を変更したものである。その他に関しては、第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、
図12に示されるように、第2端子部12は、第2部位12bを備えない構成とされており、第1部位12aと第3部位12cとが分離された状態となっている。なお、本実施形態では、第1部位12aは、第5端子部15側の部分のみを有する構成とされている。
【0058】
すなわち、本実施形態では、第1端子部11は、第2端子部12に完全に囲まれていない構成となっている。但し、本実施形態では、第4端子部14、第6端子部16、第8端子部18および第9端子部19がグランドに接続されている。このため、第1端子部11は、グランド電位に維持されている端子部によって略囲まれているともいえる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、第1端子部11は、第2端子部12によって完全に囲まれていないが、モールド樹脂50の一面50aと異なる面から露出していないため、スイッチングノイズを放射することを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態の第1端子部11は、グランド電位に維持されている端子部によって略囲まれるため、さらにスイッチングノイズを放射することを抑制できる。
【0061】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、スイッチング部31の形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、
図13に示されるように、スイッチング部31は、第1素子31aおよび第2素子31bがnチャネル型のMOSFET素子で構成されている。そして、スイッチング部31には、第1素子31aのゲート電極と接続されるブートストラップコンデンサ91およびダイオード92が備えられている。
【0063】
以上説明したように、スイッチング部31の構成を変更しても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(第5実施形態の変形例)
上記第5実施形態の変形例について説明する。上記第5実施形態において、例えば、
図14に示されるように、スイッチング部31は、第1素子31aがpチャネル型のスイッチング素子で構成され、第2素子31bがダイオードで構成される非同期整流型とされていてもよい。なお、特に図示しないが、第1素子31aは、nチャネル型のスイッチング素子で構成されていてもよい。また、特に図示しないが、スイッチング部31は、第1素子31aおよび第2素子31bがpチャネル型のスイッチング素子で構成されていてもよい。この場合は、第2素子31bのゲート電極と接続されるようにブートストラップコンデンサ91およびダイオード92を備えるようにすればよい。
【0065】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第5実施形態に対し、ブートストラップコンデンサ91もリードフレーム10上に搭載するようにしたものである。その他に関しては、第5実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、
図15および
図16に示されるように、第1端子部11は、第2領域11bのうちの第1領域11aと反対側の端部に、一方向に沿って延びる第3領域11cを有している。但し、第3領域11cは、モールド樹脂50内で終端するように構成されている。すなわち、本実施形態においても、第1端子部11は、モールド樹脂50の一面50aと異なる面から露出しないように構成されている。
【0067】
また、リードフレーム10は、第1~第9端子部11~19に加え、第10端子部20を有している。そして、第10端子部20は、第1端子部11における第3領域11cを挟み、第7端子部17と反対側に配置されている。
【0068】
リードフレーム10上には、回路チップ30、インダクタ40、第1~第4コンデンサ81~84に加え、ブートストラップコンデンサ91も配置されている。具体的には、ブートストラップコンデンサ91は、第1端子部11と第10端子部20とを接続するように配置されている。
【0069】
以上説明したように、ブートストラップコンデンサ91をリードフレーム10上に配置するようにしても、上記第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、電子装置1の製造方法を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、
図5Aの工程にてリードフレーム10を用意した後、
図17Aに示されるように、ドライエッチング等によって開口部12dを形成することにより、第1端子部11と第2端子部12とを分離する。その後、
図17Bに示されるように、開口部12d内に樹脂部材500を注入することにより、第1端子部11と第2端子部12とを機械的に接続する。
【0072】
その後は、
図17Cおよび
図17Dに示されるように、
図5Dおよび
図5Eと同様の工程を行う。これにより、上記第1実施形態と同様の電子装置1が製造される。
【0073】
以上説明したように、回路チップ30やインダクタ40をリードフレーム10上に配置する前に第1端子部11と第2端子部12とを分離し、その後に樹脂部材500によって第1端子部11と第2端子部12とを機械的に接続するようにしてもよい。このようなリードフレーム10を用意して電子装置1を製造しても、第1端子部11が第2端子部12に固定されるため、容易に電子装置1を製造できる。
【0074】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0075】
例えば、上記各実施形態において、スイッチング部31を構成するスイッチング素子は、MOSFET素子ではなく、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistorの略)素子等であってもよい。
【0076】
また、上記各実施形態において、回路チップ30の構成は適宜変更可能であり、処理部32は、スイッチング部31が形成される回路チップ30とは別の回路チップや被実装部材60に形成されるようにしてもよい。
【0077】
さらに、上記第3実施形態では、第1、第2コンデンサ81、82を備えない電子装置1としてもよい。同様に、上記第3実施形態では、第3、第4コンデンサ83、84を備えない電子装置としてもよい。
【0078】
また、上記各実施形態を適宜組み合わせた電子装置1としてもよい。例えば、上記第5~第7実施形態は、適宜第2~第4実施形態に組み合わせることができる。また、上記各実施形態を組み合わせたもの同士をさらに組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 リードフレーム
11 接続端子部(第1端子部)
30 回路チップ
40 インダクタ
50 モールド樹脂
50a 一面