(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】コネクタ装置の製造方法及びコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 43/24 20060101AFI20221109BHJP
H01R 9/05 20060101ALI20221109BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20221109BHJP
H01R 43/18 20060101ALI20221109BHJP
H01R 13/6582 20110101ALI20221109BHJP
【FI】
H01R43/24
H01R9/05 Z
H01R43/16
H01R43/18
H01R13/6582
(21)【出願番号】P 2019019765
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 智行
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-310113(JP,A)
【文献】特開2005-251433(JP,A)
【文献】特開2013-168315(JP,A)
【文献】特開2009-048941(JP,A)
【文献】特開2008-097849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/24
H01R 9/05
H01R 43/16
H01R 43/18
H01R 13/6582
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って配列配置されて複数の同軸ケーブルの各々のシグナル導体が夫々接続されるとともに各々が相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部を有した複数のシグナルコンタクトを夫々成す複数のコンタクト形成部と、該複数のコンタクト形成部を支持して上記第1の方向に沿って伸び、上記複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結して該グラウンド導体にグラウンド電位を伝達するグラウンドバーシェル部を有したインナーシェルとが、一体形成されて成る金属部材を用意し、
上記金属部材が絶縁部材に上記複数のコンタクト形成部の夫々の部分及び上記グラウンドバーシェル部の部分が上記絶縁部材の表面に露出する状態をもって配され、上記絶縁部材に上記複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられて成る絶縁ハウジングを形成し、
上記絶縁部材に設けられた上記複数の透孔を通じて上記複数のコンタクト形成部を上記インナーシェルから切り離し、上記インナーシェルに加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクトが配された絶縁ハウジングを備えて成るコネクタ装置を得ること、
を特徴とするコネクタ装置の製造方法。
【請求項2】
上記金属部材が上記絶縁部材に配され、上記絶縁部材に上記複数の透孔が設けられて成る絶縁ハウジングを、上記金属部材と上記絶縁部材とが一体形成されるインサート成形により得ることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置の製造方法。
【請求項3】
上記インナーシェルを、上記グラウンドバーシェル部と、該グラウンドバーシェル部に対向して上記第1の方向に沿って伸び、上記複数のコンタクト形成部を支持する支持シェル部と、上記グラウンドバーシェル部を上記支持シェル部に連結する連結シェル部とを有して一体形成されたものとし、上記連結シェル部の一部分を、上記相手方コネクタ装置における相手方グラウンドコンタクトに接触接続されるグラウンドコンタクトを成すものとして形成することを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置の製造方法。
【請求項4】
上記連結シェル部における上記グラウンドバーシェル部に近接した部分を、上記複数のシグナルコンタクトに電磁シールド作用を及ぼすものとして形成することを特徴とする請求項3記載のコネクタ装置の製造方法。
【請求項5】
第1の方向に沿って配列配置されて複数の同軸ケーブルの各々のシグナル導体が夫々接続されるとともに各々が相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部を有した複数のシグナルコンタクトと、上記第1の方向に沿って伸びて上記複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結して該グラウンド導体にグラウンド電位を伝達するインナーシェルとが配され、上記相手方コネクタ装置に嵌合連結される絶縁ハウジングを備え、
上記絶縁ハウジングが、上記第1の方向に沿って配列配置されて設けられ、夫々が上記複数のシグナルコンタクトの各々の一端部に対応する位置に配されて、それを通じて上記一端部を部分的に覗くことができる複数の透孔が設けられたものとされたことを特徴とするコネクタ装置。
【請求項6】
上記複数のシグナルコンタクトの各々及び上記インナーシェルの夫々が、上記絶縁ハウジングに部分的に埋め込まれたものとされていることを特徴とする請求項5記載のコネクタ装置。
【請求項7】
上記インナーシェルが、上記第1の方向に沿って伸びて上記複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結するグラウンドバーシェル部と、該グラウンドバーシェル部に対向して上記第1の方向に沿って伸びる支持シェル部と、上記グラウンドバーシェル部を上記支持シェル部に連結する連結シェル部とを有して一体構成されていることを特徴とする請求項5記載のコネクタ装置。
【請求項8】
上記連結シェル部における上記支持シェル部に近接した部分が、上記相手方コネクタ装置における相手方グラウンドコンタクトに接触接続されるグラウンドコンタクトを構成するものとされることを特徴とする請求項7記載のコネクタ装置。
【請求項9】
上記連結シェル部における上記グラウンドバーシェル部に近接した部分が、上記複数のシグナルコンタクトに電磁シールド作用を及ぼすものとされることを特徴とする請求項7記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、複数の同軸ケーブルが接続されたもとで配線基板等に設置された相手方コネクタ装置に嵌合連結され、複数の同軸ケーブルの配線基板等への電気的連結に用いられるコネクタ装置の製造方法及び斯かる方法等により得られるコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の比較的細い同軸ケーブルを、各種の電気部品が取り付けられる配線基板に電気的に連結するにあたっては、複数の同軸ケーブルが接続される、例えば、プラグコネクタとされる第1のコネクタ装置と、配線基板に電気的接続がなされて設置され、第1のコネクタ装置が嵌合連結される、例えば、リセプタクルコネクタとされる第2のコネクタ装置が用いられることが多い。
【0003】
このような場合、例えば、プラグコネクタとされて、例えば、リセプタクルコネクタとされる第2のコネクタ装置(相手方コネクタ装置)に嵌合連結される第1のコネクタ装置を、その全体もしくはそれに設けられた嵌合部分が、第2のコネクタ装置における被嵌合部分との嵌合状態におかれる絶縁ハウジングを備え、その絶縁ハウジンングに、当該第1のコネクタ装置に接続される複数の同軸ケーブルの夫々におけるシグナル導体(内部導体)との電気的接続がなされる複数のシグナルコンタクトと、当該複数の同軸ケーブルの夫々におけるグラウンド導体(外部導体)を連結して、それらにグラウンド電位を伝達するとともに、複数のシグナルコンタクト及びそれらに夫々接続された複数の同軸ケーブルの夫々におけるシグナル導体に対して電磁妨害を阻止すべく電磁シールド作用を及ぼすインナーシェルとが配されたもの、として構成することが従来提案されている(例えば、特許文献1。)。
【0004】
上述の特許文献1に開示されている、プラグコネクタとされた第1のコネクタ装置であってリセプタクルコネクタとされた相手方コネクタ装置である第2のコネクタ装置に嵌合連結されるもの(電気コネクタ(1))は、合成樹脂製の絶縁ハウジング(絶縁体(2))を備えていて、その絶縁ハウジングに、配列配置された複数のシグナルコンタクト(雄型のコンタクト(4))と複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェル(グランドバーシェル(3))とが、絶縁ハウジングと一体形成された状態をもって設けられている。複数のシグナルコンタクトの夫々には、複数の同軸ケーブル(極細線同軸ケーブル(10)) のうちの対応するもののシグナル導体(中心導体(10a))が半田付けによって接続され、また、インナーシェルには、複数の同軸ケーブル(極細線同軸ケーブル(10)) の夫々のグラウンド導体(外部導体(10b))が半田付けによって接続される。そして、複数のシグナルコンタクトの夫々は、第1のコネクタ装置が相手方コネクタ装置である第2のコネクタ装置に嵌合連結されたとき、第2のコネクタ装置における相手方シグナルコンタクト(信号用のコンタクト(12e / 12f))に接触接続される接触部を有しており、また、インナーシェルは、第1のコネクタ装置が相手方コネクタ装置である第2のコネクタ装置に嵌合連結されたとき、第2のコネクタ装置における相手方グラウンドコンタクト(グランド用コンタクト(12c / 12d))に接触接続される接触部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に示されるような、配列配置された複数のシグナルコンタクトと複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを備えるプラグコネクタとされた第1のコネクタ装置(電気コネクタ(1))にあっては、その製造過程において、絶縁ハウジングが、絶縁性樹脂を用いたインサート成形によって得られるものとされる。絶縁ハウジングのインサート成形は、特定の金型内に複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとがセットされたもとで、溶融状態におかれた絶縁性樹脂が金型に注入され、その後当該溶融状態におかれた絶縁性樹脂が固化せしめられて行われ、それにより、絶縁ハウジングが、複数のシグナルコンタクトとインナーシェルと絶縁ハウジングと絶縁ハウジングとが一体形成されたものとして得られる。
【0007】
上述のように、配列配置された複数のシグナルコンタクトと複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを得るためのインサート成形を行うにあたっては、特定の金型内への溶融状態におかれた絶縁性樹脂の注入に先立って、夫々別体に形成された複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとが特定の金型内に位置決めされてセットされることになる。このようにして、夫々別体に形成された複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとが特定の金型内に位置決めされてセットされるもとにあっては、金型構造の複雑化がまねかれるとともに、複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとの金型内へのセッティング工数の増大がもたらされるという不都合が伴われることになる。
【0008】
斯かる点に鑑み、本願の特許請求の範囲に記載された複数の発明のうちの第1の発明(以下、本願の第1の発明という。)は、配列配置された複数のシグナルコンタクトと複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを備えたコネクタ装置の製造方法であって、複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを得るためのインサート成形を行う際には、金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、金型内への部材セッティングに要される工数の低減がもたらされることになる方法を提供する。また、本願の特許請求の範囲に記載された複数の発明のうちの第2の発明(以下、本願の第2の発明という。)は、配列配置された複数のシグナルコンタクトと複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを備えたコネクタ装置であって、複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングが、それを得るためのインサート成形を行う際には、金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、金型内への部材セッティングに要される工数の低減がもたらされることになるものとされる装置を提供する。
【0009】
本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項4までのいずれかに記載された発明である本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法は、第1の方向に沿って配列配置されて複数の同軸ケーブルの各々のシグナル導体が夫々接続されるとともに各々が相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部を有した複数のシグナルコンタクトを夫々成す複数のコンタクト形成部と、複数のコンタクト形成部を支持して第1の方向に沿って伸び、複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結して複数のグラウンド導体にグラウンド電位を伝達するグラウンドバーシェル部を有したインナーシェルとが、一体形成されて成る金属部材を用意し、当該金属部材が絶縁部材に複数のコンタクト形成部の夫々の部分及びグラウンドバーシェル部の部分が絶縁部材の表面に露出する状態をもって配され、絶縁部材に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられて成る絶縁ハウジングを形成し、その後、絶縁部材に設けられた複数の透孔を通じて複数のコンタクト形成部をインナーシェルから切り離し、インナーシェルに加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクトが配された絶縁ハウジングを備えて成るコネクタ装置を得ること、を特徴とする。
【0010】
特に、本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法のうちの請求項2に記載されたものにあっては、金属部材が絶縁部材に配され、絶縁部材に複数の透孔が設けられて成る絶縁ハウジングを、金属部材と絶縁部材とが一体形成されるインサート成形により得ることを特徴とする。
【0011】
本願の特許請求の範囲における請求項5から請求項9までのいずれかに記載された発明である本願の第2の発明に係るコネクタ装置は、第1の方向に沿って配列配置されて複数の同軸ケーブルの各々のシグナル導体が夫々接続されるとともに各々が相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部を有した複数のシグナルコンタクトと、第1の方向に沿って伸びて複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結してそれらのグラウンド導体にグラウンド電位を伝達するインナーシェルとが配され、相手方コネクタ装置に嵌合連結される絶縁ハウジングを備えて構成され、絶縁ハウジングが、第1の方向に沿って配列配置されて設けられ、夫々が複数のシグナルコンタクトの各々の一端部に対応する位置に配されて、それを通じて複数のシグナルコンタクトの各々の一端部を部分的に覗くことができる複数の透孔が設けられたものとされたことを特徴とする。
【0012】
特に、本願の第2の発明に係るコネクタ装置のうちの請求項6に記載されたものにあっては、複数のシグナルコンタクトの各々及びインナーシェルの夫々が、絶縁ハウジングに部分的に埋め込まれたものとされていることを特徴とする。
【0013】
上述のような本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法にあっては、先ず、例えば、金属板材を用いて複数のコンタクト形成部とインナーシェルとが一体形成されて成る金属部材を用意する。複数のコンタクト形成部は、第1の方向に沿って配列配置されていて、複数のシグナルコンタクトを夫々成すものであって、複数のシグナルコンタクトは、第1の方向に沿って配列配置されて複数の同軸ケーブルの各々のシグナル導体が夫々接続されるとともに各々が相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部を有したものとされる。また、インナーシェルは、第1の方向に沿って伸びて複数のコンタクト形成部を支持する支持シェル部と、複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結して複数のグラウンド導体にグラウンド電位を伝達するグラウンドバーシェル部と、グラウンドバーシェル部を支持シェル部に連結する連結シェル部とを有したものとされる。
【0014】
次に、用意された金属部材が、絶縁部材に、複数のコンタクト形成部の夫々の部分及びインナーシェルのグラウンドバーシェル部の部分が絶縁部材の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングを形成する。斯かる絶縁ハウジングの形成は、例えば、絶縁性樹脂を用いたインサート成形によって行う。インサート成形にあたっては、用意された金属部材をインサート成形用金型内にセットする。その際、インサート成形用金型は、成形される絶縁ハウジングの絶縁部材に複数の透孔を設けるための透孔形成部が設けられたものとされる。そして、インサート成形用金型内に金属部材がセットされたもとで、溶融状態におかれた絶縁性樹脂を金型に注入し、その後当該溶融状態におかれた絶縁性樹脂を固化させる。
【0015】
続いて、絶縁ハウジングの絶縁部材に設けられた複数の透孔を通じて複数のコンタクト形成部をインナーシェルから切り離し、インナーシェルに加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクトが配された絶縁ハウジングを得る。絶縁部材に設けられた複数の透孔を通じた複数のコンタクト形成部のインナーシェルからの切離しは、例えば、ダイ(雌型)とポンチ(雄型)とを用いて行う。その際には、絶縁ハウジングの絶縁部材に形成された複数の透孔の夫々にダイに設けられた筒状部を挿入してコンタクト形成部に当接させ、コンタクト形成部をダイの筒状部とで挟む方向からポンチをダイの筒状部内に向けて進出させてコンタクト形成部における透孔に対応する部分を打ち抜くことにより、コンタクト形成部をインナーシェルから切り離す。インナーシェルから切り離されたコンタクト形成部は、独立して絶縁ハウジングに配されたシグナルコンタクトを形成する。
【0016】
その後、得られた絶縁ハウジングに、複数のシグナルコンタクトに各々のシグナル導体が夫々接続された複数の同軸ケーブルの夫々におけるグラウンド導体を連結するグラウンドバー部材、配列配置された複数のコンタクトを覆うカバーシェル部材、取付金具等々を必要に応じて装着して、コネクタ装置を完成させる。
【0017】
また、前述のような本願の第2の発明に係るコネクタ装置は、例えば、本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法によって得られるものであって、第1の方向に沿って配列配置された複数のシグナルコンタクトと第1の方向に沿って伸びるインナーシェルとが配されて相手方コネクタ装置に嵌合連結される絶縁ハウジングを備えている。複数のシグナルコンタクトは、複数の同軸ケーブルの各々のシグナル導体が夫々接続されるものとされており、各々が相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部を有している。インナーシェルは、各々のシグナル導体が複数のシグナルコンタクトに夫々接続された複数の同軸ケーブルの各々のグラウンド導体を連結して、当該グラウンド導体にグラウンド電位を伝達するものとされる。そして、複数のシグナルコンタクトの各々及びインナーシェルの夫々は、例えば、絶縁ハウジングに部分的に埋め込まれたものとされる。
【0018】
そして、本願の第2の発明に係るコネクタ装置にあっては、絶縁ハウジングが、第1の方向に沿って配列配置されて設けられ、夫々が複数のシグナルコンタクトの各々の一端部に対応する位置に配されて、それを通じて複数のシグナルコンタクトの各々の一端部を部分的に覗くことができる複数の透孔が設けられたものとされている。
【発明の効果】
【0019】
上述のような本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法にあっては、配列配置された複数のシグナルコンタクトとグラウンドバーシェル部を有したインナーシェルとが配されて相手方コネクタ装置に嵌合連結される絶縁ハウジングを得るにあたり、先ず、複数のコンタクト形成部とインナーシェルとが一体形成されて成る金属部材を用意し、複数のコンタクト形成部の夫々の部分及びインナーシェルのグラウンドバーシェル部の部分が絶縁部材の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングを形成した後、絶縁ハウジングの絶縁部材に設けられた複数の透孔を通じて複数のコンタクト形成部をインナーシェルから切り離して、インナーシェルに加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクトが配された絶縁ハウジングを得るようにしている。それにより、複数のコンタクト形成部の夫々の部分及びインナーシェルのグラウンドバーシェル部の部分が絶縁部材の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングを、絶縁性樹脂を用いたインサート成形によって得る場合には、インサート成形用金型内への溶融状態におかれた絶縁性樹脂の注入に先立って、夫々別体に形成された複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとをインサート成形用金型内に位置決めしてセットする必要がなく、複数のコンタクト形成部とインナーシェルとが一体形成されて成る金属部材をインサート成形用金型内にセットすることで足りる。
【0020】
その結果、複数のコンタクト形成部の夫々の部分及びインナーシェルのグラウンドバーシェル部の部分が絶縁部材の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングを、絶縁性樹脂を用いたインサート成形によって得るにあたり、夫々別体に形成された複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとをインサート成形用金型内に位置決めしてセットする場合に比して、金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、金型内への部材セッティングに要される工数の低減をもたらすことができる。斯かる金型構造の簡易化及び部材セッティング工数の低減は、製造されるコネクタ装置のコストの低減に貢献することになる。
【0021】
また、本願の第2の発明に係るコネクタ装置にあっては、配列配置された複数のシグナルコンタクトとグラウンドバーシェル部を有したインナーシェルとが配されて相手方コネクタ装置に嵌合連結される絶縁ハウジングが、配列配置されて設けられて夫々が複数のシグナルコンタクトの各々の一端部に対応する位置に配され、それを通じて複数のシグナルコンタクトの各々の一端部を部分的に覗くことができる複数の透孔が設けられたものとされているので、絶縁ハウジングに配された複数のシグナルコンタクトの夫々が、同じく絶縁ハウジングに配されたインナーシェルから適正に離隔したものとされているか否かを、絶縁ハウジングに設けられた透孔を通じて視覚的に確認することができる。
【0022】
さらに、本願の第2の発明に係るコネクタ装置は、配列配置された複数のシグナルコンタクトとグラウンドバーシェル部を有したインナーシェルとが配され、夫々が複数のシグナルコンタクトの各々の一端部に対応する位置に配された複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングを備えたものとされるので、斯かる絶縁ハウジングを、絶縁性樹脂を用いたインサート成形を用いて得る場合には、複数のコンタクト形成部とインナーシェルとが一体形成されて成る金属部材を用意し、複数のコンタクト形成部の夫々の部分及びインナーシェルのグラウンドバーシェル部の部分等が絶縁部材の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングをインサート成形により形成した後、絶縁ハウジングの絶縁部材に設けられた複数の透孔を通じて複数のコンタクト形成部をインナーシェルから切り離して、インナーシェルに加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクトが配された絶縁ハウジングを得るようにすることができる。その結果、本願の第2の発明に係るコネクタ装置によれば、絶縁ハウジングのインサート成形にあたり、金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、金型内への部材セッティングに要される工数の低減をもたらすことができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例の実施に供される、複数のコンタクト形成部とインナーシェルとが一体形成されて成る金属部材の一例を示す斜視図である。
【
図2】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例の実施に供される、複数のコンタクト形成部とインナーシェルとが一体形成されて成る金属部材の一例を示す斜視図である。
【
図3】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例の実施に用いられるインサート成形の説明に供される断面図である。
【
図4】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例の実施に用いられるインサート成形の説明に供される断面図である。
【
図5】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例における工程中で得られる、複数のコンタクト形成部及びインナーシェルが配され、複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングの一例を示す平面図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線断面を示す断面図である。
【
図7】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例におけるコンタクト形成部のインナーシェルからの切離工程の説明に供される断面図である。
【
図8】本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例における工程中で得られる、複数のシグナルコンタクト及びインナーシェルが配され、複数のシグナルコンタクトの夫々の一端部に対応する位置に配された複数の透孔が設けられた絶縁ハウジングの一例を示す平面図である。
【
図9】
図8におけるIX-IX線断面を示す断面図である。
【
図10】本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例をそれに接続された複数の同軸ケーブルと共に示す斜視図である。
【
図11】本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例を、絶縁ハウジングからカバーシェル部材が取り外された状態をもって、それに接続された複数の同軸ケーブルと共に示す斜視図である。
【
図12】本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例を構成する絶縁ハウジングをそれに接続される複数の同軸ケーブルと共に示す斜視図である。
【
図13】本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例を構成する絶縁ハウジングを単体で示す斜視図である。
【
図14】本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例を構成する絶縁ハウジングを単体で示す斜視図である。
【
図15】
図13における一点鎖線環XV内を拡大して示す部分斜視図である。
【
図16】本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例が嵌合連結される相手方コネクタ装置をそれが搭載された配線基板と共に示す斜視図である。
【
図17】複数の同軸ケーブルが接続された本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例が、配線基板に搭載された相手方コネクタ装置に嵌合連結された状態を示す斜視図である。
【
図18】複数の同軸ケーブルが接続された本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例が相手方コネクタ装置に嵌合連結された状態を示す平面図である。
【
図19】
図18におけるXIX-XIX線断面を示す断面図である。
【
図20】
図18におけるXX-XX線断面を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本願発明を実施するための最良の形態は、以下に述べられる本願発明についての実施例1及び実施例2をもって説明される。
【実施例1】
【0025】
本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例にあっては、その各工程が以下のとおりに説明される。
【0026】
本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例が実施される際には、先ず、
図1及び
図2に示されるような、複数のコンタクト形成部11及びインナーシェル12とが一体形成されて成る金属部材13を用意する。金属部材13は、例えば、金属板材により形成され、複数のコンタクト形成部11は、第1の方向に沿って配列配置されていて、複数のシグナルコンタクト15(後述される
図8及び
図9等に示されている。)を夫々成すものとされ、また、インナーシェル12は、複数のコンタクト形成部11を支持するものされる。
【0027】
用意された金属部材13にあっては、インナーシェル12が、第1の方向に沿って伸びて複数のコンタクト形成部11を支持する支持シェル部17と、複数の同軸ケーブル(例えば、後述される
図10,
図12,
図17等に示される同軸ケーブル16)の各々のグラウンド導体(例えば、後述される
図12等に示されるグラウンド導体16a)を連結して複数のグラウンド導体にグラウンド電位を伝達するグラウンドバーシェル部18と、グラウンドバーシェル部18を支持シェル部17に連結する連結シェル部19とを有して一体形成されたものとされており、支持シェル部17は、グラウンドバーシェル部18に対向して第1の方向に沿って伸びるものとされている。連結シェル部19は、それにおける支持シェル部17に近接した部分が複数のグラウンドコンタクト19aを成し、また、それにおけるグラウンドバーシェル部18に近接した部分が、複数のシグナルコンタクト15に電磁シールド作用を及ぼすシールド部19bを成すものとされている。複数のグラウンドコンタクト19aは、複数のコンタクト形成部11の配列中に分散されて配されたものとされており、
図1及び
図2に示される金属部材13の一例にあっては、隣り合う2個のコンタクト形成部11が、一対のグラウンドコンタクト19aによって挟まれた状態におかれている。
【0028】
次に、用意された金属部材13を、
図3に示されるような、固定金型20とそれに対向して配された可動金型21とを含んで成るインサート成形用金型における固定金型20内にセットする。斯かる際、固定金型20は、透孔形成部22が可動金型21に向かって突出して設けられているものとされる。透孔形成部22は、セットされた金属部材13における複数のコンタクト形成部11の夫々に対応する位置に複数個設けられている。そして、
図3に示されるように、固定金型20内に金属部材13がセットされたもとで、可動金型21を、矢印Aにより示される方向に沿って固定金型20に向けて変位させ、
図4に示されるように固定金型20に係合させて、固定金型20と可動金型21との間に、金属部材13が配された成形用空間が形成されるようになす。
【0029】
その後、
図4に示されるように、固定金型20と可動金型21との間に形成されて金属部材13が配された成形用空間を形成する固定金型20と可動金型21とを含んで成るインサート成形用金型に、溶融状態におかれた絶縁性樹脂Rを注入し、その後当該溶融状態におかれた絶縁性樹脂Rを固化させるインサート成形を行う。そして、絶縁性樹脂が固化した後にインサート成形による成形物を、固定金型20と可動金型21とを含んで成るインサート成形用金型から取り出し、
図5及び
図5におけるVI-VI線断面を示す
図6に示されるような、金属部材13が、絶縁部材23に、複数のコンタクト形成部11の夫々の部分,インナーシェル12におけるグラウンドバーシェル部18及び連結シェル部19の複数のグラウンドコンタクト19aを成す部分が絶縁部材23の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材23に複数のコンタクト形成部11に夫々対応する位置をとる複数の透孔24が設けられた絶縁ハウジング25を得る。絶縁ハウジング25における絶縁部材23に設けられた複数の透孔24は、前述の固定金型20に設けられ複数の透孔形成部22に応じて形成されたものであり、複数のコンタクト形成部11の配列方向に沿って配列配置されている。
【0030】
続いて、絶縁ハウジング25の絶縁部材23に設けられた複数の透孔24を通じて複数のコンタクト形成部11をインナーシェル12の支持シェル部17から切り離し、絶縁部材23に、インナーシェル12に加えて、支持シェル部17から切り離された複数のコンタクト形成部11が成す、各々が独立した複数のシグナルコンタクト15が配列配置されて配された絶縁ハウジング25を得る(
図8)。斯かる絶縁部材23に設けられた複数の透孔24を通じた複数のコンタクト形成部11のインナーシェル12の支持シェル部17からの切離しは、例えば、
図7に示されるような、ダイ(雌型)26とポンチ(雄型)27とを用いて行う。その際には、
図7に示されるように、絶縁ハウジング25の絶縁部材23に形成された複数の透孔24の夫々にダイ26に設けられた筒状部26aを挿入してコンタクト形成部11に当接させ、コンタクト形成部11をダイ26の筒状部26aとで挟む方向からポンチ27を、矢印Bにより示される方向に沿ってダイ26の筒状部26aの内部へと進出させて、コンタクト形成部11における透孔24に対応する部分を打ち抜くことにより、コンタクト形成部11をインナーシェル12の支持シェル部17から切り離す。このようにして、インナーシェル12の支持シェル部17から切り離した複数のコンタクト形成部11は、各々が独立して絶縁ハウジング23に配列配置されて配された複数のシグナルコンタクト15を形成する。その結果、
図8及び
図8におけるIX-IX線断面を示す
図9に示される、絶縁部材23にインナーシェル12に加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクト15が配列配置された絶縁ハウジング25が得られる。複数のシグナルコンタクト15には、複数の同軸ケーブル16の各々のシグナル導体(例えば、後述される
図12等に示されるシグナルド導体16b)が夫々接続される。
【0031】
図8及び
図9に示される絶縁ハウジング25にあっては、絶縁部材23に、夫々が配列配置された複数のシグナルコンタクト15の各々の一端部に対応する位置に配された複数の透孔24が形成されており、各透孔24は、それを通じて、それに対応するシグナルコンタクト15の一端部を部分的に覗くことができるものとされている。また、絶縁ハウジング25にあっては、絶縁部材23に、インナーシェル12における連結シェル部19が形成する複数のグラウンドコンタクト19aが、複数のシグナルコンタクト15の配列中に分散されて配されており、隣り合う2個のシグナルコンタクト15が、一対のグラウンドコンタクト19aによって挟まれた状態におかれている。
【0032】
そして、
図9に示されるように、絶縁ハウジング25における絶縁部材23に配列配置された複数のシグナルコンタクト15の夫々は、透孔24に対応する一端部から屈曲して伸びる接触部15aを有している。斯かる接触部15aは、絶縁ハウジング25を備えたコネクタ装置が相手方コネクタ装置に嵌合連結されるとき、相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される。また、絶縁部材23に配されたインナーシェル12におけるグラウンドバーシェル部18が複数のシグナルコンタクト15の配列方向に沿って伸びており、さらに、絶縁部材23に配されたインナーシェル12における連結シェル部19が成すシールド部19bが、複数のシグナルコンタクト15に電磁シールド作用を及ぼすものとして設けられている。
【0033】
このようにして、絶縁性樹脂を用いたインサート成形により得られた、グラウンドバーシェル部18及びグラウンドコンタクト19aを成す連結シェル部19を有したインナーシェル12と各々が独立したものとされて配列配置された複数のシグナルコンタクト15とが絶縁部材23に配されて成る絶縁ハウジング25に、複数のシグナルコンタクト15に各々のシグナル導体16bが夫々接続された複数の同軸ケーブル16の夫々におけるグラウンド導体16aを連結するグラウンドバー部材,配列配置された複数のシグナルコンタクト15を覆うカバーシェル部材,取付金具等々を必要に応じて装着して、絶縁ハウジング25を備えたコネクタ装置を完成させる。
【0034】
このような本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例によれば、絶縁ハウジング25を、絶縁性樹脂を用いたインサート成形によって得るにあたり、インサート成形用金型内への溶融状態におかれた絶縁性樹脂Rの注入に先立って、夫々別体に形成された複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとをインサート成形用金型内に位置決めしてセットする必要がなく、複数のコンタクト形成部11とインナーシェル12とが一体形成されて成る金属部材13をインサート成形用金型内にセットすることで足り、それにより、夫々別体に形成された複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとをインサート成形用金型内に位置決めしてセットする場合に比して、金型構造の簡易化を図ることができるとともに、金型内への部材セッティングに要される工数の低減をもたらすことができ、その結果、製造されるコネクタ装置のコストの低減に貢献することができる。
【0035】
上述の本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法の一例においては、絶縁ハウジング25を絶縁性樹脂を用いたインサート成形により得ているが、本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法にあっては、絶縁ハウジング25を絶縁性樹脂を用いたインサート成形により得るものに限られることなく、絶縁ハウジング25に相当する絶縁ハウジングをインサート成形以外の手法により得るものとすることも可能である。
【実施例2】
【0036】
図10は、本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例を、それに接続された複数の同軸ケーブルと共に示し、
図11は、本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例をその部材の一部が取り外された状態をもって、それに接続された複数の同軸ケーブルと共に示す。
【0037】
図10及び
図11において、本願の第2の発明に係るコネクタ装置の一例を成すコネクタ装置31は、複数の同軸ケーブル16が接続されたもとで、例えば、配線基板等に取り付けられて当該配線基板との電気的接続がなされた相手方コネクタ装置であるリセプタクルコネクタに対する嵌合連結に供される、プラグコネクタとして用いられるものとされており、合成樹脂等の絶縁材料によって形成された絶縁ハウジング32,接続された複数の同軸ケーブル16の夫々のグラウンド導体を連結するグラウンドバー部材33、及び、外部からの電磁波ノイズ対策のためグラウンドバー部材33が配された絶縁ハウジング32の上面側を略全体的に覆うものとして絶縁ハウジング32に取り付けられる金属製のカバーシェル34を備えている(
図11においては、カバーシェル34が絶縁ハウジング32から取り外されている。)。
【0038】
複数の同軸ケーブル16は、
図12に示されるように、それらの各々が、グラウンド導体16aとグラウンド導体16aにより包囲されたシグナル導体16bとを有したものとされている。グラウンド導体16aとシグナル導体16bとは、必要に応じて露出せしめられる。
【0039】
絶縁ハウジング32は、
図12,
図13及び
図14に示されるように、夫々が絶縁ハウジング32の長手方向である第1の方向(
図12における矢印Lにより示される方向。)に沿って配列配置された複数のシグナルコンタクト35と複数のグラウンドコンタクト36とが設けられ、さらに、第1の方向に沿って伸びるインナーシェル37とが配されたものとされている。複数のグラウンドコンタクト36は、複数のシグナルコンタクト35の配列中に分散されて配されており、隣り合う2個のシグナルコンタクト35が、一対のグラウンドコンタクト36によって挟まれた状態におかれている。複数のシグナルコンタクト35及び複数のグラウンドコンタクト36とインナーシェル37とは、絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に、それらの一部分が絶縁部材38の表面に露出する状態をもって、部分的に埋め込まれている。
【0040】
また、絶縁ハウジング32にあっては、絶縁部材38が、配線基板等に取り付けられたリセプタクルコネクタとされる相手方コネクタ装置に設けられた嵌合凹部に挿入されるべく、第1の方向に沿って伸びる嵌合凸部39を形成している。嵌合凸部39は、絶縁ハウジング32からその外方に突出するものとして形成され、嵌合凸部39の長手方向(第1の方向)に伸びる、当該第1の方向に直交する方向において相互対向する一対の対向側壁面部を有している。さらに、絶縁部材38に、第1の方向に沿って配列配置され、夫々が複数のシグナルコンタクト35の各々の一端部に対応する位置に配された複数の透孔40が設けられている。
図13における一点鎖線環XV内を拡大して示す
図15に示されるように、複数の透孔40の夫々は、それを通じて複数のシグナルコンタクト35の各々の一端部を部分的に覗くことができるものとされている。
【0041】
複数のシグナルコンタクト35の夫々は、絶縁部材38が形成する嵌合凸部39における一対の対向側壁面部のうちの一方に配されて、絶縁ハウジング32を備えたコネクタ装置31が相手方コネクタ装置に嵌合連結されるとき、相手方コネクタ装置における相手方シグナルコンタクトに接触接続される接触部35aと複数の同軸ケーブル16の各々のシグナル導体16bが接続される接続部35bとを有している。
【0042】
インナーシェル37は、複数のグラウンドコンタクト36を支持する支持シェル部37aと、各々のシグナル導体16bがシグナルコンタクト35の接続部35bに接続された複数の同軸ケーブル16の夫々のグラウンド導体16aを連結するグラウンドバーシェル部37bと、絶縁部材38が形成する嵌合凸部39における一対の対向側壁面部のうちの他方に配されて、複数のシグナルコンタクト35に電磁シールド作用を及ぼすものとして設けられたシールド部37c(後述される
図19及び
図20に示されている。)とを有している。シールド部37cは、絶縁ハウジング32を備えたコネクタ装置31が相手方コネクタ装置に嵌合連結されるとき、相手方コネクタ装置における相手方グラウンドコンタクトに接触接続される。
【0043】
複数のグラウンドコンタクト36の各々は、後述される
図20に示されるように、グラウンドバー部材33の一端部が接続される接続部36aと、絶縁部材38が形成する嵌合凸部39における一対の対向側壁面部のうちの一方に配されて、絶縁ハウジング32を備えたコネクタ装置31が相手方コネクタ装置に嵌合連結されるとき、相手方コネクタ装置における相手方グラウンドコンタクトに接触接続される接触部36bとを有している。そして、インナーシェル37は、各々のシグナル導体16bが複数のシグナルコンタクト35に夫々接続された複数の同軸ケーブル16の各々のグラウンド導体16aにグラウンド電位を伝達する役割を果たす。
【0044】
グラウンドバー部材33は、各々のシグナル導体16bがシグナルコンタクト35の接続部35bに接続された複数の同軸ケーブル16の夫々のグラウンド導体16aを連結するものとして絶縁ハウジング32に取り付けられたもとにあっては、後述される
図20に示されているように、その一端部が複数のグラウンドコンタクト36の夫々の接続部36aに接続されたものとされる。また、カバーシェル34は、グラウンドバー部材33が配された絶縁ハウジング32の上面側を略全体的に覆うものとして絶縁ハウジング32に取り付けられたもとにあっては、後述される
図19及び
図20に示されているように、その内側においてグラウンドバー部材33に接触接続されている。
【0045】
上述のようなコネクタ装置31によれば、絶縁ハウジング32が、配列配置されて設けられて夫々が複数のシグナルコンタクト35の各々の一端部に対応する位置に配され、それを通じて複数のシグナルコンタクト35の各々の一端部を部分的に覗くことができる複数の透孔40が設けられたものとされているので、絶縁ハウジング32に配された複数のシグナルコンタクト35の夫々が、同じく絶縁ハウジング35に配されたインナーシェル37から適正に離隔したものとされているか否かを、絶縁ハウジング32に設けられた透孔40を通じて視覚的に確認することができる。
【0046】
さらに、上述のようなコネクタ装置31にあっては、複数のシグナルコンタクト35及び複数のグラウンドコンタクト36とインナーシェル37とが絶縁部材38に配されて成る絶縁ハウジング32を、絶縁性樹脂を用いたインサート成形により得られるものとすることができる。絶縁ハウジング32を絶縁性樹脂を用いたインサート成形により得るに際しては、例えば、複数のシグナルコンタクト35を成すことになるコンタクト形成部とインナーシェル37とが一体形成されて成る金属部材を用意し、当該金属部材をインサート成形用金型内にセットしたもとで、インサート成形用金型内に溶融状態におかれた絶縁性樹脂を注入し、その後溶融状態におかれた絶縁性樹脂を硬化させるインサート成形を行って、複数のコンタクト形成部の夫々の部分,複数のグラウンドコンタクト36の夫々の部分、及び、インナーシェル37におけるグラウンドバーシェル部37b及びシールド部37c等の部分が、絶縁部材38の表面に露出する状態をもって配されて成り、絶縁部材38に複数のコンタクト形成部に夫々対応する位置をとる複数の透孔40が設けられた絶縁ハウジング32を形成した後、絶縁部材38に設けられた複数の透孔40の夫々を通じて複数のコンタクト形成部をインナーシェル37から切り離して、インナーシェル37に加えて各々が独立した複数のシグナルコンタクト35が配された絶縁ハウジング32を得る。このようにして、絶縁ハウジング32を絶縁性樹脂を用いたインサート成形により得る場合には、複数のシグナルコンタクト35を成すことになるコンタクト形成部とインナーシェル37とが一体形成されて成る金属部材を用いることにより、インサート成形用金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、インサート成形用金型内への部材セッティングに要される工数の低減をもたらすことができることになる。
【0047】
図16は、上述のコネクタ装置31が嵌合連結されるリセプタクルコネクタを成す相手方コネクタ装置41をそれが搭載された配線基板42と共に示す。
【0048】
図16において、相手方コネクタ装置41は、配線基板42に、それに設けられた電気回路構成部との電気的接続がなされて取り付けられており、合成樹脂等の絶縁材料によって形成された相手方絶縁ハウジング43を備えている。相手方絶縁ハウジング43は、コネクタ装置31における絶縁ハウジング32における絶縁部材38が形成する嵌合凸部39が嵌合挿入される、相手方絶縁ハウジング43の長手方向に伸びる嵌合凹部44を形成している。
【0049】
相手方絶縁ハウジング43における嵌合凹部44を形成する部分、即ち、相手方コネクタ装置41における嵌合凹部形成部分には、コネクタ装置31における複数のシグナルコンタクト35の接触部35a及び複数のグラウンドコンタクト36の接触部36bに夫々接触することになる複数の相手方シグナルコンタクト45(後述される
図19に示されている。)及び複数の相手方グラウンドコンタクト46(後述される
図20にも示されている。)が夫々配される溝部45G及び46Gが、相手方絶縁ハウジング43の長手方向に沿って配列配置されている。斯かる溝部45G及び46Gの配列においては、相互隣接する2個の溝部45Gが一対の溝部46Gによって挟まれている。これらの溝部45G及び溝部46Gに夫々配された複数の相手方シグナルコンタクト45及び複数の相手方グラウンドコンタクト46は、相手方コネクタ装置41が取り付けられた配線基板42に設けられた電気回路構成部に接続されている。
【0050】
上述のような相手方コネクタ装置41に前述のコネクタ装置31が嵌合連結されるときには、コネクタ装置31の絶縁ハウジング32における絶縁部材38が形成する嵌合凸部39が、相手方コネクタ装置41の相手方絶縁ハウジング43が形成する嵌合凹部44に嵌合挿入される。
【0051】
図17は、
図16に示される配線基板42に搭載された相手方コネクタ装置41に、
図10に示される複数の同軸ケーブル16が接続されたコネクタ装置31が嵌合接続された状態を示し、また、
図18は、相手方コネクタ装置41に嵌合接続されたコネクタ装置31を、それに接続された複数の同軸ケーブル16と共に示す。
【0052】
複数の同軸ケーブル16が接続されたコネクタ装置31が相手方コネクタ装置41に嵌合接続されたもとにあっては、
図18におけるXIX-XIX線断面を示す
図19に示されるように、コネクタ装置31において、複数の同軸ケーブル16の各々におけるシグナル導体16b及びグラウンド導体16aが、絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に配された複数のシグナルコンタクト35のうちの対応するものにおける接続部35a及び同じく絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に配されたインナーシェル37におけるグラウンドバーシェル部37bに夫々接続される。さらに、各々のシグナル導体16bが複数のシグナル導体16bに夫々接続された複数の同軸ケーブル16の各々におけるグラウンド導体16aを連結するものとされたグラウンドバー部材33に、カバーシェル34が接触当接せしめられる。そして、コネクタ装置31の絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38が形成する嵌合凸部39が、相手方コネクタ装置41の相手方絶縁ハウジング43が形成する嵌合凹部44に嵌合挿入されており、それに伴って、コネクタ装置31の絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に配された複数のシグナルコンタクト35の夫々における接触部35aが、相手方コネクタ装置41の相手方絶縁ハウジング43に配された複数の相手方シグナルコンタクト45に夫々接触接続される。
【0053】
また、
図18におけるXX-XX線断面を示す
図20に示されるように、コネクタ装置31において、複数の同軸ケーブル16の各々におけるグラウンド導体16aを連結するものとされたグラウンドバー部材33の一端部が、絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に配された複数のグラウンドコンタクト36の夫々における接続部36aに接触接続される。さらに、コネクタ装置31の絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に配された複数のグラウンドコンタクト36の夫々における接触部36aが、相手方コネクタ装置41の相手方絶縁ハウジング43に配された複数の相手方グラウンドコンタクト46に夫々接触接続され、それに加えて、コネクタ装置31の絶縁ハウジング32を構成する絶縁部材38に配されたインナーシェル37におけるシールド部37cが、相手方コネクタ装置41の相手方絶縁ハウジング43に配された複数の相手方グラウンドコンタクト46に接触接続される。
【0054】
それにより、複数の同軸ケーブル16の夫々におけるシグナル導体16bが、コネクタ装置31におけるシグナルコンタクト35と相手方コネクタ装置41における相手方シグナルコンタクト45とを通じて、相手方コネクタ装置41が取り付けられた配線基板42に設けられた電気回路構成部に電気的に連結されるとともに、複数の同軸ケーブル16の夫々におけるグラウンド導体16aが、コネクタ装置31におけるグラウンドバー部材33,インナーシェル37及びグラウンドコンタクト36と相手方コネクタ装置41における相手方グラウンドコンタクト46とを通じて、相手方コネクタ装置41が取り付けられた配線基板42に設けられた電気回路構成部に電気的に連結される。さらに、このようなもとにおいて、コネクタ装置31のインナーシェル37は、グラウンド電位が印加されてそれを複数の同軸ケーブル16の各々のグラウンド導体16aに伝達するものとされ、斯かるインナーシェル37におけるシールド部37cは、複数の同軸ケーブル16の夫々におけるシグナル導体16bが夫々接続された複数のシグナルコンタクト35に、電磁シールド作用を及ぼすものとされる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のような本願の第1の発明に係るコネクタ装置の製造方法は、配列配置された複数のシグナルコンタクトと複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを備えたコネクタ装置の製造方法であって、複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを得るためのインサート成形を行う際には、金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、金型内への部材セッティングに要される工数の低減がもたらされることになるものであり、例えば、複数の同軸ケーブルが接続される各種のコネクタ装置の製造に広く適用され得るものである。また、本願の第2の発明に係るコネクタ装置は、配列配置された複数のシグナルコンタクトと複数のシグナルコンタクトの配列方向に沿って伸びる金属性のインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングを備えたコネクタ装置であって、複数のシグナルコンタクトとインナーシェルとが一体的に設けられた絶縁ハウジングが、それを得るためのインサート成形を行う際には、金型構造の簡易化を図ることができ、かつ、金型内への部材セッティングに要される工数の低減がもたらされることになるものであり、様々な電子機器等に広く適用され得るものである。
【符号の説明】
【0056】
11・・・コンタクト形成部, 12,37・・・インナーシェル, 13・・・金属部材, 15,35・・・シグナルコンタクト, 15a,35a,36b・・・接触部, 16・・・同軸ケーブル, 16a ・・・グラウンド導体, 16b・・・シグナル導体, 17,37a・・・支持シェル部, 18,37b・・・グラウンドバーシェル部, 19・・・連結シェル部, 19a,36・・・グラウンドコンタクト, 19b,37c・・・シールド部, 20・・・固定金型, 21・・・可動金型, 22・・・透孔形成部, 23,38・・・絶縁部材, 24,40・・・透孔, 25,32・・・絶縁ハウジング, 26・・・ダイ, 27・・・ポンチ, 31・・・コネクタ装置, 33・・・グラウンドバー部材, 34・・・カバーシェル, 35b,36a・・・接続部, 39・・・嵌合凸部、 41・・・相手方コネクタ装置, 42・・・配線基板, 43・・・相手方絶縁ハウジング, 44・・・嵌合凹部, 45・・・相手方シグナルコンタクト, 45G,46G・・・溝部, 46・・・相手方グラウンドコンタクト