(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】燃料噴射制御装置
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20221109BHJP
F02D 41/40 20060101ALI20221109BHJP
F02D 41/36 20060101ALI20221109BHJP
F02D 41/20 20060101ALI20221109BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20221109BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20221109BHJP
F02M 65/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F02M51/06 M
F02D41/40
F02D41/36
F02D41/20
F02D41/02
F02M51/00 A
F02M65/00 306B
(21)【出願番号】P 2019019773
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】森下 幸治
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-252930(JP,A)
【文献】特開2014-055570(JP,A)
【文献】特開2003-027994(JP,A)
【文献】特開2019-002379(JP,A)
【文献】特開2018-127996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/06
F02D 41/40
F02D 41/36
F02D 41/20
F02D 41/02
F02M 51/00
F02M 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に燃料を噴射するインジェクタ(2)が備えるソレノイド(3)にエネルギを印加することで燃料を噴射制御する燃料噴射制御装置(1)であって、
上流側の電源線(L1、L2)から前記ソレノイドへと至る給電経路に設けられる上流側スイッチ(7、8)と、
前記ソレノイドの下流側の端子とグランドとの間に設けられる下流側スイッチ(9)と、
前記ソレノイドの上流側の端子と前記グランドとの間に接続された還流用の短絡スイッチ(12b)と、
前記ソレノイドの上流側の端子と前記グランドとの間に前記グランドの側にアノードを接続した還流用のダイオード(11、12a)と、
前記上流側スイッチ、前記下流側スイッチ及び前記短絡スイッチのオンとオフを制御するものであり、前記下流側スイッチをオンさせ前記上流側スイッチをオンさせることを条件として前記ソレノイドに前記エネルギを印加するように構成された駆動制御部(6)と、を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記ソレノイドに印加した前記エネルギの供給を遮断したときには前記短絡スイッチをオフさせることで前記ダイオードに順方向に通電して前記エネルギを還流可能にすると共に、前記ソレノイドに印加した前記エネルギの供給を遮断した際に前記短絡スイッチをオンすることで前記短絡スイッチに通電して前記エネルギを還流可能にしており、
前記駆動制御部は、前記短絡スイッチによる前記エネルギの還流(以下、スイッチ還流と略す)と前記ダイオードによる前記エネルギの還流(以下、ダイオード還流と略す)とを切換可能に構成されて
おり、
前記インジェクタが開弁完了したか否かを判定する開弁判定部(6、S22、S23、S25)を備え、
前記駆動制御部は、前記ソレノイドに前記エネルギが印加された後、前記開弁判定部により前記インジェクタが開弁完了したと判定するまでの間、前記スイッチ還流又は前記ダイオード還流の何れか一方により還流し続け、前記開弁完了したと判定すると他方の還流に切り換える(S24、S26)燃料噴射制御装置。
【請求項2】
内燃機関に燃料を噴射するインジェクタ(2)が備えるソレノイド(3)にエネルギを印加することで燃料を噴射制御する燃料噴射制御装置(1)であって、
上流側の電源線(L1、L2)から前記ソレノイドへと至る給電経路に設けられる上流側スイッチ(7、8)と、
前記ソレノイドの下流側の端子とグランドとの間に設けられる下流側スイッチ(9)と、
前記ソレノイドの上流側の端子と前記グランドとの間に接続された還流用の短絡スイッチ(12b)と、
前記ソレノイドの上流側の端子と前記グランドとの間に前記グランドの側にアノードを接続した還流用のダイオード(11、12a)と、
前記上流側スイッチ、前記下流側スイッチ及び前記短絡スイッチのオンとオフを制御するものであり、前記下流側スイッチをオンさせ前記上流側スイッチをオンさせることを条件として前記ソレノイドに前記エネルギを印加するように構成された駆動制御部(6)と、を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記ソレノイドに印加した前記エネルギの供給を遮断したときには前記短絡スイッチをオフさせることで前記ダイオードに順方向に通電して前記エネルギを還流可能にすると共に、前記ソレノイドに印加した前記エネルギの供給を遮断した際に前記短絡スイッチをオンすることで前記短絡スイッチに通電して前記エネルギを還流可能にしており、
前記駆動制御部は、前記短絡スイッチによる前記エネルギの還流(以下、スイッチ還流と略す)と前記ダイオードによる前記エネルギの還流(以下、ダイオード還流と略す)とを切換可能に構成されて
おり、
前記駆動制御部が、前記スイッチ還流又は前記ダイオード還流の何れか一方により還流し続けた後に、他方により長時間の間、還流する場合、
前記他方の還流をするときには前記スイッチ還流又は前記ダイオード還流のうち回路の損失を低減可能にする還流制御を行う燃料噴射制御装置。
【請求項3】
内燃機関に燃料を噴射するインジェクタ(2)が備えるソレノイド(3)にエネルギを印加することで燃料を噴射制御する燃料噴射制御装置(1)であって、
上流側の電源線(L1、L2)から前記ソレノイドへと至る給電経路に設けられる上流側スイッチ(7、8)と、
前記ソレノイドの下流側の端子とグランドとの間に設けられる下流側スイッチ(9)と、
前記ソレノイドの上流側の端子と前記グランドとの間に接続された還流用の短絡スイッチ(12b)と、
前記ソレノイドの上流側の端子と前記グランドとの間に前記グランドの側にアノードを接続した還流用のダイオード(11、12a)と、
前記上流側スイッチ、前記下流側スイッチ及び前記短絡スイッチのオンとオフを制御するものであり、前記下流側スイッチをオンさせ前記上流側スイッチをオンさせることを条件として前記ソレノイドに前記エネルギを印加するように構成された駆動制御部(6)と、を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記ソレノイドに印加した前記エネルギの供給を遮断したときには前記短絡スイッチをオフさせることで前記ダイオードに順方向に通電して前記エネルギを還流可能にすると共に、前記ソレノイドに印加した前記エネルギの供給を遮断した際に前記短絡スイッチをオンすることで前記短絡スイッチに通電して前記エネルギを還流可能にしており、
前記駆動制御部は、前記短絡スイッチによる前記エネルギの還流(以下、スイッチ還流と略す)と前記ダイオードによる前記エネルギの還流(以下、ダイオード還流と略す)とを切換可能に構成されて
おり、
前記インジェクタが開弁完了したか否かを判定する開弁判定部(6、S22、S23、S25)を備え、
前記駆動制御部は、前記インジェクタが開弁完了と判定する前には前記ダイオード還流により還流し続ける燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記ソレノイドに印加された前記エネルギにより流れるインジェクタ通電電流を検出する電流検出部(13)を備え、
前記開弁判定部は、前記電流検出部により検出される電流の変曲点を用いて開弁完了したか否かを判定する
請求項1記載の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記ソレノイドに印加された前記エネルギにより流れるインジェクタ通電電流を検出する電流検出部(13)を備え、
前記電流検出部により検出される前記インジェクタ通電電流がピークに達した後に、電流変化量が比較的大きい第1期間(T2)を経て前記電流変化量が比較的小さい第2期間(T3)に至る場合には、
前記駆動制御部は、前記第1期間には前記スイッチ還流又は前記ダイオード還流のうち何れか一方により還流し続け、前記第2期間には他方の還流に切り換える
請求項1又は2記載の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記インジェクタの開弁完了と判定した後に前記スイッチ還流に切り換える
請求項3記載の燃料噴射制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射するインジェクタが有するソレノイドにエネルギを印加することで燃料を噴射制御する燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射制御装置は、指令噴射量に応じてインジェクタ(噴射弁とも称される)のソレノイドにエネルギを印加することでインジェクタの噴射孔から燃料を噴射させる。インジェクタへの印加エネルギは、還流ダイオードから還流することで消弧されるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人は、還流ダイオードに代えて短絡スイッチを接続し、この短絡スイッチを通じてソレノイドの蓄積エネルギによる通電電流を還流することで、短絡スイッチの素子の特性によっては熱損失を低減できることを確認している。
その後、出願人は、引き続き技術改良を施しているものの、インジェクタによる燃料の噴射量の安定性、各素子の特性などを総合的に考慮すると、条件によっては還流ダイオードにより還流させる方が良いことが判明し、還流ダイオード又は短絡スイッチによる還流方法を適切に選択することが望ましいということが判明した。
本発明の開示の目的は、還流ダイオード又は短絡スイッチによる還流方法を適切に選択して還流できるようにした燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、内燃機関に燃料を噴射するインジェクタ(2)が有するソレノイド(3)にエネルギを印加することで燃料を噴射制御するものであり、上流側スイッチ(7、8)、下流側スイッチ(9)、還流用のダイオード(11、12a)、短絡スイッチ(12b)、及び駆動制御部(6)を備える。
【0006】
上流側スイッチは、上流側の電源線(L1、L2)からソレノイドへと至る給電経路に設けられる。下流側スイッチは、ソレノイドと下流側のグランドとの間に設けられる。
【0007】
還流用のダイオードは、ソレノイドの上流側の端子とグランドとの間にグランドの側をアノードとして設けられる。短絡スイッチは、ソレノイドの上流側の端子とグランドとの間に還流用ダイオードと並列に設けられる。駆動制御部は、上流側スイッチ、下流側スイッチ及び短絡スイッチのオンとオフを制御するものであり、下流側スイッチをオンすると共に上流側スイッチをオンすることによりソレノイドにエネルギを印加する。
【0008】
上記構成では、上流側スイッチ及び下流側スイッチがオンされるとソレノイドにエネルギが印加される。また、上記構成では、短絡スイッチがオフされるとダイオードの両端が短絡されていない状態となり、短絡スイッチがオンされるとダイオードの両端が短絡された状態となる。
【0009】
駆動制御部は、少なくともソレノイドに印加したエネルギの供給を遮断したときに短絡スイッチをオフさせていることでダイオードに順方向通電してエネルギを還流可能にすると共に、ソレノイドに印加したエネルギの供給を遮断した際に短絡スイッチをオンすることで短絡スイッチに通電してエネルギを還流可能にしている。
【0010】
駆動制御部は、短絡スイッチによるエネルギの還流(以下、スイッチ還流と略す)とダイオードによるエネルギの還流(以下、ダイオード還流と略す)とを切換可能に構成されているため、インジェクタによる燃料噴射量の安定性、各素子の特性などに応じて、スイッチ還流、ダイオード還流による還流方法を切り換えることができる。この結果、還流ダイオード又は短絡スイッチによる還流方法を適切に選択して還流できる。
駆動制御部は、インジェクタが開弁完了したと判定した後に他方の還流に切り換えているため、インジェクタによる開弁を完了したと判定した後に還流制御を切り換えることができる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、駆動制御部は、第1期間には何れか一方により還流し続け、第2期間には他方の還流に切り換えるため、電流変化量が比較的大きい第1期間中に還流方法を切り換えることがなくなり、インジェクタの通電電流波形を極力変化させることなく制御でき、インジェクタの燃料噴射量を極力目標値に一致させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、開弁判定部は、電流検出部により検出される電流の変曲点を用いて開弁完了したか否かを判定することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、駆動制御部は、他方の還流を長時間するときにはスイッチ還流又はダイオード還流のうち回路の損失を低減可能にする還流制御を行っている。例えば、(使用するダイオードの順方向電圧VF)<(使用する短絡スイッチのオン抵抗×通電電流)を満たすときには、ダイオードの方が回路の損失を低減できる。逆に、(使用するダイオードの順方向電圧VF)>(使用する短絡スイッチのオン抵抗×通電電流)を満たすときには、短絡スイッチにより還流した方が回路の損失を低減できる。このような場合、スイッチ還流又はダイオード還流を適切に選択することで回路損失を低減できる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、インジェクタの開弁完了するまではダイオード還流により還流し続けることで、インジェクタの通電電流波形を極力変化させることなく制御できるようになり、インジェクタの燃料噴射量を安定的に保持できる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、インジェクタの開弁完了後にスイッチ還流に切り換えているため、短絡スイッチのオン抵抗による損失がダイオードに通電されることによる損失よりも小さい場合に、回路の損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における燃料噴射制御装置の構成ブロック図
【
図4】還流切換判定処理を概略的に示すフローチャート
【
図7】第2実施形態における処理の流れを概略的に示すフローチャート
【
図9】第3実施形態における処理の流れを概略的に示すフローチャート
【
図11】還流切換判定処理を概略的に示すフローチャート
【
図13】第4実施形態における燃料噴射制御装置の構成ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、燃料噴射制御装置の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施形態において、同一又は類似の動作を行う構成については、同一又は類似の符号を付して必要に応じて説明を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1から
図6は、第1実施形態の説明図を示している。
図1は燃料噴射制御装置としての電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)101の電気的構成例を概略的に示す。電子制御装置101は、例えば自動車などの車両に搭載された内燃機関に燃料を噴射制御するソレノイド式のインジェクタ2を駆動する装置であり、そのインジェクタ2を構成する誘導性負荷としてのソレノイド3の通電開始タイミング及び通電時間を制御する。
【0020】
インジェクタ2はソレノイド3を備え、電子制御装置101がソレノイド3に通電してエネルギを印加することでインジェクタ2から燃料を噴射する。インジェクタ2には、燃料ポンプにより加圧された燃料が供給され、インジェクタ2が開弁したときには加圧された燃料を内燃機関に噴射する。
【0021】
図1に示すように、電子制御装置101は、電源IC4、マイコン5、制御IC6、放電スイッチ7、定電流制御スイッチ8、並びに気筒選択スイッチ9を主構成として備え、インジェクタ2のソレノイド3に通電・停止制御することでインジェクタ2から燃料を噴射する。放電スイッチ7及び定電流制御スイッチ8は上流側スイッチとして構成され、気筒選択スイッチ9は下流側スイッチとして構成される。
【0022】
電源IC4は、バッテリ電圧による電源電圧VBを電源線L1を通じて入力し、安定化した直流の電源電圧VCCを生成し、マイコン5及び制御IC6に電源電圧VCCを供給する。マイコン5及び制御IC6は、電源電圧VCCを電源として動作する。また電子制御装置101は、これらの主構成に付随する周辺回路、例えば逆流防止用のダイオード10、還流ダイオード11、還流用スイッチ12、電流検出部としての電流検出抵抗13などを備える。制御IC6は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)による集積回路装置を用いて構成され、例えばロジック回路などによる制御主体と、RAM、ROM、EEPROMなどの記憶部を備え、ハードウェア及びソフトウェアに基づいて各種制御を実行するもので、駆動制御部として構成される。
【0023】
制御IC6は、放電スイッチ7、定電流制御スイッチ8、気筒選択スイッチ9及び還流用スイッチ12をオン・オフ制御し、電流検出抵抗13に流れる電流を当該電流検出抵抗13の端子間電圧により検出し、この検出信号に応じて各種制御を実行する。制御IC6は、気筒選択スイッチ9をオンさせ、放電スイッチ7又は定電流制御スイッチ8をオンさせることを条件としてソレノイド3にエネルギを印加するように構成されている。放電スイッチ7、定電流制御スイッチ8及び気筒選択スイッチ9は、それぞれnチャネル型のMOSトランジスタにより構成される。
【0024】
放電スイッチ7の制御端子は制御IC6に接続されている。放電スイッチ7は、上流側に設けられる昇圧電圧Vboostの電源線L2からソレノイド3の上流側の端子1aへと至る給電経路に設けられている。
【0025】
また定電流制御スイッチ8の制御端子は制御IC6に接続されている。定電流制御スイッチ8は、上流側に設けられる電源電圧VBの電源線L1からソレノイド3の上流側の端子1aへと至る給電経路に設けられている。また、逆流防止用のダイオード10が電源線L1から上流側の端子1aにかけて順方向接続されている。
【0026】
またソレノイド3の上流側の端子1aとグランドGとの間には、還流ダイオード11がグランドGの側をアノードとして逆方向接続されている。ソレノイド3の上流側の端子1aとグランドGとの間には、還流用スイッチ12が接続されている。還流用スイッチ12は、ボディダイオード12a付きのnチャネル型のMOSトランジスタ12bにより構成されている。MOSトランジスタ12bのドレインが上流側の端子1aに接続されており、ソースがグランドGに接続されており、ゲート(制御端子)が制御IC6に接続されている。MOSトランジスタ12bが短絡スイッチ相当となる。ボディダイオード12aは、グランドGの側をアノードとして、ソレノイド3の上流側の端子1aとグランドGとの間に接続されている。
【0027】
電子制御装置101の上流側の端子1aと下流側の端子1bとの間には、駆動対象となるソレノイド3が接続されている。なお制御IC6は、駆動対象となるソレノイド3にエネルギを供給した後、そのエネルギ供給を遮断することになるが、MOSトランジスタ12bをオフに保持することで還流ダイオード11を通じてエネルギ還流可能に構成されている。また、制御IC6は、ソレノイド3にエネルギを供給した後、エネルギ供給を遮断した際にMOSトランジスタ12bをオンさせることでMOSトランジスタ12bに通電してエネルギを還流可能に構成されている。したがって、制御IC6は、還流ダイオード11を通じてエネルギ還流するか、MOSトランジスタ12bを通じてエネルギ還流するか、を切換可能になっている。
【0028】
気筒選択スイッチ9の制御端子は制御IC6に接続されている。気筒選択スイッチ9は、ソレノイド3とグランドGとの間に接続されている。電流検出抵抗13が、ソレノイド3及び気筒選択スイッチ9に直列接続されており、これによりソレノイド3の通電電流を検出可能に構成されている。
【0029】
電流検出抵抗13の端子間電圧は制御IC6に入力されている。制御IC6は、内蔵アンプや比較器を用いて電流検出抵抗13の端子間電圧と閾値とを比較し、ソレノイド3の通電電流が所定の閾値(例えば、ピーク電流閾値Ip、定電流制御範囲の上限値Itu1と下限値Itd1)に達したか否かを判定し、各スイッチ7~9、12のオン・オフを制御する。
【0030】
図2から
図4も参照しながら作用、動作を説明する。図示しないイグニッションスイッチなどにより電源スイッチがオンされると、
図1に示すように、バッテリによる電源電圧VBが電源IC4に供給され、電源IC4は安定化電源電圧VCCを生成しマイコン5及び制御IC6に供給する。図示しない昇圧回路は、制御IC6の制御に基づいて電源電圧VBを昇圧して昇圧電圧Vboostを生成し、電源線L2に出力する。昇圧電圧Vboostは電源電圧VBより高い電圧である。
【0031】
制御IC6は、初期状態においてMOSトランジスタ12bをオフに保持し、ダイオード還流するようにフラグを保持する(
図2のS1:ダイオード還流)。これにより、MOSトランジスタ12bは回路上無いものと見做されることになり、上流側の端子1aとグランドGとの間には還流ダイオード11及びボディダイオード12aが逆方向接続された状態となり、ソレノイド3の蓄積エネルギを還流ダイオード11を通じて還流可能に調整している。
【0032】
電気的には、還流ダイオード11及びボディダイオード12aが上流側の端子1aとグランド間に並列接続されることになるため、順方向電圧VFが低いダイオードを通じて還流することになるが、以下では、還流ダイオード11の順方向電圧VFが低く設定されており、還流ダイオード11を通じて還流することと想定して説明する。
なお、ボディダイオード12aの順方向電圧VFが還流ダイオード11の順方向電圧VFよりも低く設定されることで、当該ボディダイオード12aを還流用ダイオードとして用いても良い。
【0033】
内燃機関に燃料を噴射するときに、マイコン5は、
図3に示すように噴射指令信号のアクティブレベル(例えば「H」)を制御IC6に出力する。制御IC6は、
図3のタイミングt1において気筒選択スイッチ9をオン制御する。このタイミングt1と同時又はその直後に、制御IC6は放電スイッチ7をオン制御する。気筒選択スイッチ9及び放電スイッチ7が共にオンされると、昇圧電圧Vboostがソレノイド3に印加されるようになり、
図3のタイミングt1~t2のピーク電流制御期間T1に示すように、ソレノイド3の通電電流(インジェクタ通電電流とも称す)を上昇させることができる。
【0034】
制御IC6は、
図2のS3~S4においてインジェクタ通電電流が目標ピーク電流(=ピーク電流閾値Ip)に達するまで昇圧通電を継続するが、インジェクタ通電電流が目標ピーク電流に達すると、ピーク電流制御期間T1を終了し、S5において放電スイッチ7をオフ制御することで昇圧通電を終了する。制御IC6は、ピーク電流制御期間T1中、
図2のS3~S4の処理を実行している間に、S20に示す還流切換判定処理(開弁完了判定処理)を実行しても実行しなくても良い。本形態ではS20の処理を実行しない形態を説明し、この処理の詳細は後述する。
【0035】
図2のS5において放電スイッチ7がオフすると、ソレノイド3に印加されたエネルギの供給が遮断される。このときMOSトランジスタ12bがオフに保持されているため、ソレノイド3に印加されたエネルギが還流ダイオード11を通じて還流し、インジェクタ通電電流は低下する(定電流制御遷移期間T2参照)。定電流制御遷移期間T2は、インジェクタ通電電流の電流変化量が後述する定電流制御期間T3よりも比較的大きい期間であり、この期間T2中には還流ダイオード11により還流し続けると良い。
【0036】
図2のS5~S6においてインジェクタ通電電流が目標電流下限(=定電流制御範囲の下限値Itd)に達するまで昇圧通電終了を継続するが、インジェクタ通電電流が目標電流下限に達すると、制御IC6は、S7において定電流制御スイッチ8をオン制御することで電源電圧VBを通電開始する。制御IC6が、定電流制御遷移期間T2中、
図2のS5~S6を実行している間に、S20に示す還流切換判定処理(開弁完了判定処理)を実行しても実行しなくても良い。本形態ではS20の処理を実行しない形態を説明し、この処理の詳細は後述する。
【0037】
図2のS8~S9においてインジェクタ通電電流が定電流目標上限(=定電流制御範囲の上限値Itu)に達するまで、制御IC6は電源電圧VBの通電を継続するが、S9においてインジェクタ通電電流が定電流目標上限に達したとを判定すると、S10において定電流制御スイッチ8をオフ制御することで電源電圧VBの通電を停止する。
また制御IC6は、S11においてMOSトランジスタ12bを通じて還流させるようにフラグを設定し、MOSトランジスタ12bをオンすることでソレノイド3の蓄積エネルギをMOSトランジスタ12bを通じて還流させる(S11のMOS還流:スイッチ還流相当)。
【0038】
そして、制御IC6は、S12において指令通電時間経過したか否かを判定する。制御IC6は指令通電時間を経過していなければ、S13においてインジェクタ通電電流が定電流目標下限(定電流制御範囲の下限値Itd)に達したか否かを判定し、達していなければS11、S7の処理を繰り返し、定電流目標下限に達すればS8に戻って処理を繰り返す。したがって、定電流制御期間T3中には、制御IC6は、定電流制御スイッチ8及びMOSトランジスタ12bを相補的にオン・オフする制御を繰り返す。そして、制御IC6は指令通電時間を経過すると、S14において定電流制御スイッチ8及びMOSトランジスタ12bをオフ制御すると共に気筒選択スイッチ9をオフ制御することで電源電圧VBの通電を停止する。これにより、1噴射期間の処理を終了する。
【0039】
本形態では、
図3に示すように、1噴射期間中の当初の定電流制御遷移期間T2には、ソレノイド3の蓄積エネルギが還流ダイオード11を通じて還流し、その後、少なくとも定電流制御期間T3中にはMOSトランジスタ12bを通じて還流している。定電流制御期間T3は、開弁を保持するための制御期間であり、ピーク電流制御期間T1及び定電流制御遷移期間T2より長時間となる。
【0040】
本形態においては、定電流制御期間T3中のMOSトランジスタ12bのオン抵抗による電力損失が、還流ダイオード11の順方向電圧Vfによる電力損失よりも少ないという条件を満たしていれば、回路による電力損失を低減できる。
【0041】
制御IC6は、インジェクタ2の電流変化量が比較的大きい第1期間(定電流制御遷移期間T2)中には何れか一方(本形態では還流ダイオード11)により還流し続け、インジェクタ2の電流変化量が比較的小さい第2期間(定電流制御期間T3)中には他方の還流(本形態ではMOSトランジスタ12bによる還流)に切り換えている。電流変化量が比較的大きい定電流制御遷移期間T2中に還流方法を切り換えることがなくなり、インジェクタ通電電流波形を極力変化させることなく制御でき、1噴射期間中のインジェクタ2の燃料噴射量を指示噴射量の示す目標量に合わせることができる。
【0042】
本実施形態によれば、インジェクタ2による燃料噴射量の安定性、各素子の特性などを考慮して、MOSトランジスタ12bによる還流(スイッチ還流相当)、還流ダイオード11による還流(ダイオード還流相当)を切り換えることができる。
【0043】
(第1実施形態の変形例)
前述の
図2のS20に示したように、制御IC6が開弁判定部として開弁完了判定処理を実行し、開弁完了と判定したタイミングにて還流方法を切換えても良い。開弁完了判定処理は必要に応じて設ければ良い。
【0044】
ソレノイド3に電流が流れるとインジェクタ2は開弁するが、この開弁タイミングは、インジェクタ2に供給される燃料の圧力や温度、加減速状態、始動時などの走行条件に応じて変化する。インジェクタ2は、
図5、
図6に示したように前述したピーク電流制御期間T1、定電流制御遷移期間T2の途中で開弁する。
【0045】
制御IC6は、
図2に示したようにピーク電流制御期間T1及び定電流制御遷移期間T2の途中でS20にて開弁判定処理を実行し、この判定処理に合わせて還流方法を切り換えるか否かを判定すると良い。
【0046】
図4に示すように、制御IC6は還流切換判定処理のS21にてソレノイド3の通電電流をモニタし、S22にて「2回なまし値」が閾値th1よりも小さいか否かを判定する。制御IC6は、「2回なまし値」を次のように求める。制御IC6は、(1μs前の電流検出値-現在の電流検出値)/なまし度+1μs前電流検出値=「1回なまし値」として求め、その後、(1μs前1回なまし値-現在の1回なまし値)/なまし度+1μs前1回なまし処理値=「2回なまし値」として求める。
【0047】
前述の「なまし度」は、予め定められた所定値(例えば2)などを用いるが、このなまし度は適宜変更可能である。また1μs毎の2回なまし値を求めているが、1μs毎に限らず所定時間毎のなまし値を求めれば良い。このときの「1回なまし値」「2回なまし値」の時間変化を
図5、
図6に示している。
【0048】
図5、
図6に示したように、インジェクタ2が開弁するとソレノイド3の通電電流に変曲点を生じ、2回なまし値が大きな値となり閾値th1を超える。このため、この「2回なまし値」が閾値th1より大きくなったタイミングを検出することでインジェクタ2が開弁したか否かを判定できる。
具体的には、制御IC6は、
図4のS22において「2回なまし値」が閾値th1より小さいと判定したときには、S23において開弁未完了と判定し、
図4のS22において2回なまし値が閾値th1以上となるときにはS25において開弁完了と判定する。
【0049】
開弁タイミングの判定方法として、2回なまし値と閾値th1とを比較して判定する方法を説明したが、開弁タイミングの判定方法は、これに限定されるものではない。例えば特開2018-44473号公報に挙げられるように、電圧又は電流を高速サンプリングしたサンプル値の分散値を算出し、分散値が閾値以上となる上昇点を算出し、この上昇点に基づいて開弁タイミングを判定するようにしても良い。
【0050】
制御IC6は、インジェクタ2が開弁未完了と判定した場合にはS24においてダイオード還流を継続するようにフラグを保持し、開弁完了と判定した場合にはS26においてMOSトランジスタ12bを通じて還流するようにフラグを設定する(S26のMOS還流)。制御IC6は、S26にてフラグを切り替えた後には、制御IC6は、ソレノイド3の蓄積エネルギを還流させるときにMOSトランジスタ12bを通じて還流させる。これにより、インジェクタ2が開弁完了した後にはMOSトランジスタ12bを通じて還流させることができる。
図5に示すように、ピーク電流制御期間T1中に開弁完了したときには、制御IC6は当該ピーク電流制御期間T1中のタイミングt1aにおいてMOSトランジスタ12bを通じて還流するようにフラグを変更し、これにより、定電流制御遷移期間T2中の全期間においてMOSトランジスタ12bを通じて還流させることができる。
また
図6に示すように、定電流制御遷移期間T2中に開弁完了したときには、制御IC6は、当該定電流制御遷移期間T2中のタイミングt2aにてMOSトランジスタ12bを通じて還流するようにフラグを設定するため、このタイミングt2a以降、MOSトランジスタ12bを通じて還流させることができる。
【0051】
インジェクタ2の開弁タイミングはソレノイド3の通電電流の積算値に応じて決定されると共に、ソレノイド3の通電電流の変動の影響が燃料噴射量に大きく影響する。1噴射期間中において当初からスイッチ還流させると、MOSトランジスタ12bによる還流時にソレノイド3に印加する電流波形が変化し、インジェクタ2の挙動が変化することがある。特に、インジェクタ2の開弁中の電流は、開弁タイミングに与える影響が大きく燃料噴射量に影響する。
【0052】
そこで制御IC6は、当初は還流ダイオード11により還流するように処理し、インジェクタ2が開弁完了したと判定した後にMOSトランジスタ12bを用いて還流させると良い。これにより、燃料の噴射量を指令値に合わせることができ、インジェクタ2の挙動の変化を抑制できる。
【0053】
本変形例によれば、インジェクタ2が開弁完了したと判定した後に還流制御を切り換えることができる。特に、インジェクタ2が開弁完了したと判定する前には還流ダイオード11を通じて還流し続け、インジェクタ2が開弁完了したと判定した後には、MOSトランジスタ12bを通じて還流させることができる。本変形例によれば、制御IC6は、インジェクタ通電電流の変曲点を検出するまで一方の還流制御をし続けることができる。
【0054】
(第2実施形態)
図7及び
図8に第2実施形態の説明図を示す。
図7、
図8に示すように、定電流制御期間T3中に還流ダイオード11を通じて還流させるようにしても良い。
図7のS1bのダイオード還流、
図8のt3~t4の定電流制御期間T3参照。
第2実施形態が第1実施形態と異なるところは、
図7に示すように、ステップS6とS7の間に、S1bとして還流ダイオード11を通じて還流させるようにフラグを設定する処理を追加していることである。
【0055】
図8には、定電流制御遷移期間T2中に開弁完了している例を示している。制御IC6が、
図7の処理を実行すると、開弁完了した後の定電流制御遷移期間T2中にMOSトランジスタ12bをオンすることでMOSトランジスタ12bを通じて還流させ、その後、定電流制御期間T3中には還流ダイオード11により還流させることになる。
【0056】
本形態では、
図8に示すように、制御IC6が開弁完了と判定するまで、ソレノイド3の蓄積エネルギが還流ダイオード11を通じて還流し、その後、定電流制御遷移期間T2中にはエネルギがMOSトランジスタ12bを通じて還流し、その後、定電流制御期間T3中にはエネルギは還流ダイオード11を通じて還流している。定電流制御期間T3は、開弁を保持するための制御期間であり、ピーク電流制御期間T1及び定電流制御遷移期間T2より長時間となる。
【0057】
本形態においては、定電流制御期間T3中の還流ダイオード11の順方向電圧VFに応じた電力損失が、MOSトランジスタ12bのオン抵抗による電力損失よりも少なければ、回路による電力損失を低減できる。
【0058】
(第3実施形態)
図9及び
図10に第3実施形態の説明図を示す。
図9に示すように、定電流制御遷移期間T2中にMOSトランジスタ12bを用いて還流させるようにしても良い(S11のMOS還流参照)。第1実施形態と同様に、本形態ではS20の還流切換判定処理を実行しない形態を説明する。
【0059】
制御IC6は、1噴射期間中の初期においてMOSトランジスタ12bを通じて還流させるようにフラグを保持する(S11のMOS還流)。これにより、
図10の定電流制御遷移期間T2に示すように、制御IC6が、
図9のS5において放電スイッチ7をオフし昇圧通電終了した直後からMOSトランジスタ12bを通じて還流させることができる。その後、S6においてインジェクタ通電電流が目標電流下限(=定電流制御範囲の下限値Itd)にまで低下すると、制御IC6は、S1bにおいてMOSトランジスタ12bをオフしダイオード還流するようにフラグを設定することで、還流ダイオード11を通じて還流させることができる。
【0060】
その後、制御IC6は、S7において定電流制御スイッチ8をオン制御することで電源電圧VBを通電開始し、S9においてインジェクタ通電電流が定電流目標上限(定電流制御範囲の上限値Itu)に達したことを判定すると、S10において定電流制御スイッチ8をオフ制御することで電源電圧VBの通電を停止する。このときソレノイド3の蓄積エネルギは還流ダイオード11を通じて還流する。
【0061】
そして、制御IC6はS12において指令通電時間経過したか否かを判定する。制御IC6は指令通電時間経過していなければ、S13においてインジェクタ通電電流が定電流目標下限(定電流制御範囲の下限値Itd)に達したか否かを判定し、達していなければ還流ダイオード11による還流を継続させる。
【0062】
そして、インジェクタ通電電流が定電流目標下限(定電流制御範囲の下限値Itd)に達すればS7に戻して処理を繰り返す。そして、制御IC6は、S12において指令通電時間経過すると、S14において定電流制御スイッチ8をオフ制御すると共に気筒選択スイッチ9をオフ制御することで電源電圧VBの通電を停止する。これにより、1噴射期間中の処理を終了する。
【0063】
本実施形態では、1噴射期間中の当初の定電流制御遷移期間T2中にはMOSトランジスタ12bを用いて同期整流し、定電流制御期間T3中には還流ダイオード11により還流している。定電流制御期間T3は開弁を保持するための制御期間であり、ピーク電流制御期間T1及び定電流制御遷移期間T2より長時間となる。
定電流制御期間T3中の還流ダイオード11の順方向電圧Vfに応じた電力損失が、MOSトランジスタ12bのオン抵抗による電力損失よりも少なければ、回路による電力損失を低減できる。
【0064】
(第3実施形態の変形例)
また、
図9のS20に示したように開弁完了判定処理を設け、開弁判定したタイミングで還流方法を切換えても良い。
【0065】
制御IC6は、ピーク電流制御期間T1及び定電流制御遷移期間T2の途中で
図6のS20にて開弁判定処理を実行し、この判定処理に合わせて還流方法を切り換えるか否か判定すると良い(還流切換判定処理)。
【0066】
本変形例において、制御IC6は、
図11に示すように、S23においてインジェクタ2が開弁未完了と判定した場合には、これまでの還流方法を継続し、S25において開弁完了と判定した場合には、S26bにおいてMOSトランジスタ12bをオフに保持してダイオード還流に切り換えるようにフラグを設定する。これにより、
図12に示すように、開弁完了する前にはMOSトランジスタ12bを通じて還流させることができ、開弁完了した後には還流ダイオード11を通じて還流させることができる。
【0067】
インジェクタ2の開弁完了後には、還流ダイオード11による還流を継続することで、インジェクタ2の通電電流を極力変化させることなく制御でき、インジェクタ2の燃料噴射量を目標量に合わせることができる。
【0068】
(第4実施形態)
図13は第4実施形態の説明図を示す。電子制御装置201が、電子制御装置101と異なるところは、還流ダイオード11を設けず、還流用スイッチ12に代えて還流用スイッチ212を設けたところであり、その他の構成は電子制御装置101と同様である。このため、「還流用スイッチ」に符号「12」に代わる符号「212」を付して説明を行う。還流用スイッチ212がボディダイオード212a付きのMOSトランジスタ212bを用いて構成されていれば、
図13に示すように、還流用スイッチ212と並列に還流ダイオード11を接続しなくても良い。
【0069】
電子制御装置201の回路構成を用いた場合、(ボディダイオード212aの順方向電圧VF)<(MOSトランジスタ212bのオン抵抗×通電電流)を満たすときには、ボディダイオード212aを通じて還流した方が回路損失を低減できる。逆に、(ボディダイオード212aの順方向電圧VF)>(MOSトランジスタ212bのオン抵抗×通電電流)を満たすときには、MOSトランジスタ212bを通じて還流した方が回路損失を低減できる。
【0070】
したがって、還流用スイッチ212を構成するMOSトランジスタ212b及びボディダイオード212aの半導体構造を考慮して、定電流制御遷移期間T2又は定電流制御期間T3においてMOSトランジスタ212b又はボディダイオード212aの何れを通じて還流させるか決定すると良い。これにより、前述実施形態と同様の効果を奏するようになる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば以下に示す変形又は拡張が可能である。
【0072】
特に、定電流制御遷移期間T2よりも長時間の定電流制御期間T3には、制御IC6は、MOS還流(スイッチ還流相当)又はダイオード還流のうち回路の損失を低減可能にする還流制御を行うとよい。MOSトランジスタ12bのオン抵抗による損失と、還流ダイオード11又はボディダイオード12aの順方向電圧VFの損失とを比較し、制御IC6はこれらの電力損失が低い還流方法を定電流制御期間T3に実行すると良い。マイコン5及び制御IC6を別体で用いた形態を示したが、一体に構成しても良い。
【0073】
前述実施形態では、説明の簡略化のため、1気筒分のインジェクタ2の駆動用のソレノイド3を表記して説明を行ったが、2気筒、4気筒、6気筒などでも同様に適用でき、気筒数は限られるものではない。
【0074】
前述実施形態では、放電スイッチ7、定電流制御スイッチ8、気筒選択スイッチ9は、MOSトランジスタを用いて説明を行ったが、バイポーラトランジスタなど他種類のトランジスタ、各種のスイッチを用いても良い。
還流用スイッチ12、212は、ボディダイオード12a、212a付きのMOSトランジスタ12b、212bにより構成されている形態を示したが、これに限定されるものではない。
【0075】
前述した複数の実施形態を組み合わせて構成しても良い。また、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、本発明の一つの態様として前述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。前述実施形態の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も実施形態と見做すことが可能である。また、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される発明の本質を逸脱しない限度において、考え得るあらゆる態様も実施形態と見做すことが可能である。
【0076】
本開示は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0077】
図面中、101、201は電子制御装置(燃料噴射制御装置)、1aは上流側の端子、1bは下流側の端子、2はインジェクタ、3はソレノイド、6は制御IC(駆動制御部)、7は放電スイッチ(上流側スイッチ)、8は定電流制御スイッチ(上流側スイッチ)、9は気筒選択スイッチ(下流側スイッチ)、11は還流ダイオード、12aはボディダイオード、12bはMOSトランジスタ(短絡スイッチ)、13は電流検出抵抗(電流検出部)、を示す。