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特許7172704ステータの組立方法およびステータの組立装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ステータの組立方法およびステータの組立装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
H02K15/085
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019025599
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020137203
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】井出 光洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大将
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-193597(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031573(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186838(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056985(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットを含むステータコアと、コイルエンド部とリード線部とを含み、前記スロットに配置されるコイルとを備えるステータの組立方法であって、
前記ステータコアの径方向の一方側に前記コイルを配置する工程と、
前記コイルを配置する工程の後、コイル挿入部により前記ステータコアの径方向の一方側から他方側に向かって前記コイルを押す挿入作業を複数回行うことにより、前記スロットに前記コイルを挿入する工程とを備え、
前記コイルを挿入する工程は、最後の挿入作業の前記コイルの移動量が、最初の挿入作業の前記コイルの移動量よりも小さくなるように、前記コイル挿入部により前記スロットに前記コイルを挿入する工程である、ステータの組立方法。
【請求項2】
前記コイルを挿入する工程は、複数回の各々の挿入作業において、前記コイルのリード線部が塑性変形しない移動量だけ、前記コイル挿入部により前記コイルを押す工程を含む、請求項1に記載のステータの組立方法。
【請求項3】
前記コイルを挿入する工程は、少なくとも前記最初の挿入作業から途中の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、前記コイルの移動量が徐々に小さくなるように、前記コイル挿入部により前記スロットに前記コイルを挿入する工程である、請求項1または2に記載のステータの組立方法。
【請求項4】
前記コイルを挿入する工程は、前記最初の挿入作業から前記最後の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、前記コイルの移動量が徐々に小さくなるように、前記コイル挿入部により前記スロットに前記コイルを挿入する工程である、請求項3に記載のステータの組立方法。
【請求項5】
前記コイルを挿入する工程は、挿入作業後、押していた前記コイルから前記コイル挿入部を離す工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
【請求項6】
前記コイルを挿入する工程は、押していた前記コイルから前記コイル挿入部を離した状態で、前記コイル挿入部を前記ステータコアに対して所定角度だけ相対回転させるとともに、相対回転後の位置から、前記コイル挿入部により前記コイルを押す工程を含む、請求項5に記載のステータの組立方法。
【請求項7】
前記コイルを挿入する工程は、前記最初の挿入作業において、前記コイルを構成する導線が複数本だけ前記スロットに挿入される移動量だけ、前記コイル挿入部により前記コイルを押す工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
【請求項8】
前記コイルを挿入する工程は、前記コイル挿入部が前記ステータコアの径方向の内側から外側に向かって前記コイルを押す挿入作業を複数回行うことにより、前記スロットに前記コイルを挿入する工程である、請求項1~7のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
【請求項9】
スロットを含むステータコアと、前記スロットに配置されるコイルとを備えるステータの組立装置であって、
前記ステータコアの径方向の一方側から他方側に向かって前記コイルを押す挿入作業を複数回行うことにより、前記スロットに前記コイルを挿入するコイル挿入部と、
最後の挿入作業の前記コイルの移動量が、最初の挿入作業の前記コイルの移動量よりも小さくなるように、前記コイル挿入部により、前記スロットに前記コイルを挿入させる制御を行う制御部と、を備える、ステータの組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの組立方法およびステータの組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットを含むステータコアと、スロットに配置されるコイルとを備えるステータの組立方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、スロットを含むステータコアと、スロットに配置されるコイルとを備えるステータの製造方法(組立方法)が開示されている。この製造方法では、コイルをスロットに配置する際、押し出し手段としてのローラがステータコアの径方向の内側から外側に向かってコイルを押すことにより、コイルをスロットの最終挿入位置まで挿入する。コイルは、スロットの壁面にガイドされつつ(接触しつつ)移動する。また、この製造方法では、一度の作業(挿入作業)で最終挿入位置までコイルを挿入するのではなく、複数回の挿入作業で最終挿入位置までコイルを挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5434704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるように、コイルがスロットの壁面にガイドされつつ(接触しつつ)スロットに挿入される場合、コイルは、スロットの壁面との間の摩擦力に抗しつつスロットに挿入される。
【0006】
コイルが摩擦力に抗しつつスロットに挿入される場合、スロットよりも回転軸線方向の外側に突出するコイルのリード線部の根元部が、スロットの回転軸線方向の角部に周方向に押し付けられつつ、コイルがスロットに挿入される場合がある。この場合、一度の挿入作業における移動量が大き過ぎると、コイルのリード線部が、スロットの回転軸線方向の角部との摩擦力に起因して、この角部を起点として折れ曲がるように塑性変形する。このため、一度の挿入作業における移動量が大き過ぎると、コイルのリード線部が不必要に塑性変形するという問題点がある。
【0007】
一方、コイルのリード線部の不必要な変形を低減するために、一度の挿入作業における移動量を小さくし過ぎると、挿入作業の回数が増加する。挿入作業の回数が増加すると、コイルの挿入工程に要する時間が増加するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルをスロットに挿入する際における、コイルのリード線部塑性変形を効果的に低減しつつ、コイルの挿入工程に要する時間の増加を抑制することが可能なステータの組立方法およびステータの組立装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるステータの組立方法は、スロットを含むステータコアと、コイルエンド部とリード線部とを含み、スロットに配置されるコイルとを備えるステータの組立方法であって、ステータコアの径方向の一方側にコイルを配置する工程と、コイルを配置する工程の後、コイル挿入部によりステータコアの径方向の一方側から他方側に向かってコイルを押す挿入作業を複数回行うことにより、スロットにコイルを挿入する工程とを備え、コイルを挿入する工程は、最後の挿入作業のコイルの移動量が、最初の挿入作業のコイルの移動量よりも小さくなるように、コイル挿入部によりスロットにコイルを挿入する工程である。
【0010】
ここで、コイルの挿入作業を複数回行う場合、コイルの挿入作業が進行するにつれて、コイルのコイルエンド部が変形しにくくなるため、コイル挿入部がコイルを押す力(コイル挿入部がコイルに加える荷重)が大きくなる。コイル挿入部がコイルを押す力が大きくなると、コイルのリード線部に加わる摩擦力が大きくなるため、コイルのリード線部を塑性変形させずに挿入可能な移動量が小さくなる。
【0011】
そこで、この発明の第1の局面によるステータの組立方法では、上記のように、最後の挿入作業のコイルの移動量が、最初の挿入作業のコイルの移動量よりも小さくなるように、コイル挿入部によりスロットにコイルを挿入する工程を備える。これにより、コイルのリード線部を塑性変形させずに挿入可能な移動量が小さい最後の挿入作業では、コイルの移動量が小さくなるので、コイルのリード線部が塑性変形しやすい最後の挿入作業において、コイルのリード線部の塑性変形を効果的に低減することができる。また、コイルのリード線部を塑性変形させずに挿入可能な移動量が大きい最初の挿入作業では、コイルの移動量が大きいので、コイルの挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。これらの結果、コイルをスロットに挿入する際における、コイルのリード線部の塑性変形を効果的に低減しつつ、コイルの挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。
【0012】
この発明の第2の局面におけるステータの組立装置は、スロットを含むステータコアと、スロットに配置されるコイルとを備えるステータの組立装置であって、ステータコアの径方向の一方側から他方側に向かってコイルを押す挿入作業を複数回行うことにより、スロットにコイルを挿入するコイル挿入部と、最後の挿入作業のコイルの移動量が、最初の挿入作業のコイルの移動量よりも小さくなるように、コイル挿入部により、スロットにコイルを挿入させる制御を行う制御部と、を備える。
【0013】
この発明の第2の局面によるステータの組立装置では、上記のように、最後の挿入作業のコイルの移動量が、最初の挿入作業のコイルの移動量よりも小さくなるように、コイル挿入部により、スロットにコイルを挿入させる制御を行う制御部を設ける。これにより、コイルのリード線部を塑性変形させずに挿入可能な移動量が小さい最後の挿入作業では、コイルの移動量が小さくなるので、コイルのリード線部が塑性変形しやすい最後の挿入作業において、コイルのリード線部の塑性変形を効果的に低減することができる。また、コイルのリード線部を塑性変形させずに挿入可能な移動量が大きい最初の挿入作業では、コイルの移動量が大きいので、コイルの挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。これらの結果、コイルをスロットに挿入する際における、コイルのリード線部の塑性変形を効果的に低減しつつ、コイルの挿入工程に要する時間の増加を抑制することができるステータの組立装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、コイルをスロットに挿入する際における、コイルのリード線部の塑性変形を効果的に低減しつつ、コイルの挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態によるステータの斜視断面図である。
図2】一実施形態によるステータをZ方向から見た部分拡大図である。
図3】一実施形態によるコイルの斜視図である。
図4】一実施形態による絶縁部材の斜視図である。
図5】一実施形態によるステータの組立装置の装置上側に配置されたコイル挿入部、コア保持部、ガイド治具が挿入されたステータコアおよびコイルの斜視断面図および装置下側に配置された絶縁部材開放部の斜視断面図である。
図6】一実施形態によるステータの組立装置のブロック図である。
図7】一実施形態によるコイル挿入部をZ方向から見た図である。
図8】一実施形態によるコイル挿入部の曲率半径およびコイルの曲率半径を説明するための図である。
図9】一実施形態による絶縁部材開放部の斜視断面図である。
図10】一実施形態による絶縁部材開放部の開放治具を説明するための図である。
図11】一実施形態による絶縁部材をスロットに配置する工程を説明するための図である。
図12】一実施形態による絶縁部材開放部により絶縁部材を開放させる工程を説明するための図である。
図13】一実施形態によるコイルをスロットに挿入する工程を説明するための図(1)であって、(A)は、挿入前のコイルおよび挿入後のコイルをZ方向から見た図であり、(B)は、挿入前のコイルおよび挿入後のコイルをC1方向から見た図である。
図14】一実施形態によるコイルをスロットに挿入する工程を説明するための図(2)であって、(A)は、最初の挿入作業を示す図であり、(B)は、2回目の挿入作業を示す図であり、(C)は、3回目の挿入作業を示す図であり、(D)は、4回目の挿入作業を示す図であり、(E)は、5回目の挿入作業を示す図であり、(F)は、最後(6回目)の挿入作業を示す図である。
図15】一実施形態による絶縁部材開放部を絶縁部材から退避させる工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(ステータの構成)
まず、図1図4を参照して、本実施形態によるステータ100の構成について説明する。なお、図1では、ステータ100の斜視断面図(半円環形状)を示しているが、ステータ100は、円環形状に形成されている。
【0018】
なお、本願明細書では、「中心軸線方向」とは、図1に示すステータコア10(ステータ100)の中心軸線A(ロータの回転軸線)に沿った方向(Z方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータコア10の周方向(B1方向またはB2方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータコア10の半径方向を意味する。また、「径方向の内側」とは、ステータコア10の中心に向かう方向(C1方向)側を意味する。また、「径方向の外側」とは、ステータコア10の外に向かう方向(C2方向)側を意味する。なお、径方向の内側は、特許請求の範囲の「径方向の一方側」の一例である。また、径方向の外側は、特許請求の範囲の「径方向の他方側」の一例である。
【0019】
ステータ100は、ロータ(回転子、図示せず)と共に、回転電機を構成する固定子である。図1および図2に示すように、ステータ100は、ステータコア10と、コイル20とを備える。
【0020】
〈ステータコア〉
ステータコア10は、たとえば、中心軸線方向に積層された複数の電磁鋼板からなる。ステータコア10は、円環形状に形成されている。ステータコア10は、円環の内径側であって中心軸線Aを含む領域に、ロータを配置するための空間を有する。
【0021】
ステータコア10は、バックヨーク11を含む。バックヨーク11は、ステータコア10のうちの外周部分(外径側部分)である。バックヨーク11は、円環形状に形成されている。
【0022】
また、ステータコア10は、複数のティース12を含む。複数のティース12は、バックヨーク11から径方向の内側に向かって突出する凸部である。複数のティース12は、ステータコア10の周方向に沿って等角度間隔に配置されている。隣接する2つのティース12の間には、スロット13が形成されている。
【0023】
スロット13は、径方向の内側から外側に向かって窪む凹部である。スロット13は、中心軸線方向から見て、U字形状に形成されている。スロット13は、径方向の内側に開口する開口部13aを有する。スロット13は、コイル20の後述するスロット収容部21を収容して保持する。スロット13は、複数形成されている。複数のスロット13は、ステータコア10の周方向に沿って等角度間隔に配置されている。スロット13およびティース12は、周方向に沿って交互に配置されている。
【0024】
〈コイル〉
図1図3に示すように、コイル20は、通電されることにより、ロータを回転させる磁界を発生させる。コイル20は、平角導線により構成されている。平角導線は、矩形形状の断面を有する導線であって、導電性が高い金属(銅、アルミニウムなど)からなる。コイル20は、1本の平角導線を複数回だけ巻回する(螺旋状に巻回する)ことにより形成されている。コイル20は、環形状(六角形形状、八角形形状など)に形成されている。コイル20は、分布巻きされている。コイル20は、複数設けられている。複数のコイル20は、各スロット13に配置(挿入)されている。複数のコイル20は、周方向に沿って配列されている。周方向に沿って配列された複数のコイル20は、コイルアッセンブリ30を構成する。コイルアッセンブリ30は、円環形状に形成されている。
【0025】
コイル20は、スロット収容部21と、コイルエンド部22と、リード線部23とを含む。スロット収容部21は、コイル20のうちのスロット13に収容される部分である。スロット収容部21は、中心軸線方向に沿って延びる直線形状に形成されている。スロット収容部21は、周方向に間隔を隔てて一対形成されている。一対のスロット収容部21は、周方向に間隔を隔てた互いに異なるスロット13に収容されている。
【0026】
コイルエンド部22は、コイル20のうちの周方向に間隔を隔てた一対のスロット収容部21を接続する部分である。コイルエンド部22は、径方向の内側から見て、三角形状に形成されている。コイルエンド部22は、中心軸線方向の一方側および他方側にそれぞれ形成されている。中心軸線方向の一方側のコイルエンド部22は、中心軸線方向の一方側において一対のスロット収容部21を接続するとともに、スロット13から中心軸線方向の一方側に突出している。中心軸線方向の他方側のコイルエンド部22は、中心軸線方向の他方側において一対のスロット収容部21を接続するとともに、スロット13から中心軸線方向の他方側に突出している。
【0027】
リード線部23は、コイル20のうちの交流電源部から交流電力が供給されるか、または、他のコイル20のリード線部23と接続(接合)される部分である。リード線部23は、折り曲げられるように形成されている。リード線部23は、スロット収容部21から連続して延びるように、最も径方向の内側のスロット収容部21、および、最も径方向の外側のスロット収容部21にそれぞれ形成されている。径方向の内側のリード線部23および径方向の外側のリード線部23は、共に、中心軸線方向の他方側に形成されている。径方向の内側のリード線部23および径方向の外側のリード線部23は、スロット13から中心軸線方向の他方側に突出している。以下では、リード線部23が設けられた中心軸線方向の他方側を、「リード側」と称し、リード線部23が設けられていない中心軸線方向の一方側を、「反リード側」と称することが有る。
【0028】
〈絶縁部材〉
図1図2および図4に示すように、各スロット13には、スロット13とコイル20とを電気的に絶縁する絶縁部材40が配置されている。絶縁部材40は、折り曲げ可能なシート状の部材である。絶縁部材40は、スロット13に沿った形状に形成されている。具体的には、絶縁部材40は、スロット13の周方向に互いに対向する内壁面13b、および、径方向の外側の内壁面13cに沿った形状に形成されている。絶縁部材40は、折り曲げられることにより、中心軸線方向から見てU字形状に形成されている。
【0029】
絶縁部材40は、周方向に互いに対向する一対の側壁部41と、径方向の外側において一対の側壁部41を接続する側壁部42とを含む。一対の側壁部41は、コイル20のスロット収容部21とスロット13の一対の内壁面13bとの間に配置されている。一対の側壁部41は、コイル20のスロット収容部21とスロット13の一対の内壁面13bとを絶縁する。絶縁部材40では、一対の側壁部41のうちの径方向の内側の部分により、径方向の内側に開口する開口部40aが形成されている。
【0030】
側壁部42は、コイル20のスロット収容部21とスロット13の内壁面13cとの間に配置されている。側壁部42は、コイル20のスロット収容部21とスロット13の内壁面13cとを絶縁する。絶縁部材40では、一対の側壁部41のうちの中心軸線方向の一方側の部分、および、側壁部42のうちの中心軸線方向の一方側の部分により、中心軸線方向の一方側に開口する開口部40bが形成されている。また、一対の側壁部41のうちの中心軸線方向の他方側の部分、および、側壁部42のうちの中心軸線方向の他方側の部分により、中心軸線方向の他方側に開口する開口部40cが形成されている。
【0031】
(ステータの組立装置の構成)
次に、図5図10を参照して、ステータ100の組立装置200の構成について説明する。
【0032】
組立装置200は、コイル20(コイルアッセンブリ30)を、ステータコア10のスロット13に挿入(装着)する装置である。図5および図6に示すように、組立装置200は、コア保持部210と、コイル挿入部220と、絶縁部材開放部230と、制御部240とを備える。なお、図5では、装置下側に配置される絶縁部材開放部230を、紙面上側に示し、装置上側に配置されるコア保持部210、コイル挿入部220を、紙面下側に示している。
【0033】
〈コア保持部〉
図5に示すように、コア保持部(パレット)210は、ステータコア10およびコイル20(コイルアッセンブリ30)を保持している。具体的には、コア保持部210は、ガイド治具250が挿入(装着)されたステータコア10およびコイル20を保持している。
【0034】
ガイド治具250は、コイル20をステータコア10のスロット13に挿入する際、コイル20をガイドする治具である。ガイド治具250は、第1ガイド治具251と、第2ガイド治具252とを含んでいる。第1ガイド治具251は、ステータコア10のティース12に対して中心軸線方向の外側に配置されたガイド治具である。第1ガイド治具251は、ステータコア10に対して中心軸線方向の一方側および他方側のそれぞれに配置されている。第2ガイド治具252は、ステータコア10のティース12に対して径方向の内側に配置されたガイド治具である。第1ガイド治具251および第2ガイド治具252は、共に、ティース12毎に配置されている。第1ガイド治具251および第2ガイド治具252は、共に、コイルアッセンブリ30のティース孔(ティース12が挿入される孔)に挿入されている。
【0035】
図6に示すように、コア保持部210は、コア保持部210を周方向に回転させる駆動モータ211により、周方向に沿って回転可能に構成されている。コア保持部210は、ステータコア10およびコイル20を保持した状態で、周方向に沿って回転可能に構成されている。コア保持部210に保持されたステータコア10およびコイル20は、コア保持部210と共に、周方向に沿って回転される。
【0036】
〈コイル挿入部〉
図5および図7に示すように、コイル挿入部220は、コイル20(コイルアッセンブリ30)を、ステータコア10のスロット13に挿入する治具である。コイル挿入部220は、径方向の内側から外側に向かってコイル20を押す。これにより、コイル挿入部220は、コイル20(コイルアッセンブリ30)を径方向の内側から外側に向かって移動させるように構成されている。また、コイル挿入部220は、コイル20を径方向の内側から外側に向かって移動させることにより、ステータコア10のスロット13に挿入するように構成されている。本実施形態では、コイル挿入部220は、径方向の内側から外側に向かってコイル20を押す挿入作業を複数回行うことにより、ステータコア10のスロット13にコイル20を挿入するように構成されている。
【0037】
コイル挿入部220は、コイル挿入部220を径方向に移動させる駆動モータ221(図6参照)により、径方向に沿って移動可能に構成されている。つまり、コイル挿入部220は、駆動モータ221により、径方向の内側から外側に向かって移動可能で、かつ、径方向の外側から内側に向かって移動可能に構成されている。これにより、コイル挿入部220は、原点位置P1(実線により示す)、挿入位置P2(二点鎖線により示す)、および、退避位置P3(破線により示す)の間で径方向に移動可能に構成されている。
【0038】
原点位置P1は、最初の挿入作業の前にコイル挿入部220が配置されているコイル挿入部220の初期位置である。原点位置P1は、コイル挿入部220が最も径方向の内側に配置された位置である。挿入位置P2は、挿入作業を行う際、コイル挿入部220がコイル20に接触してコイル20を押す位置である。挿入位置P2は、コイル20の挿入作業が進行するにつれて、径方向の内側に徐々にシフトする。退避位置P3は、挿入作業同士の間に、コイル挿入部220がステータコア10に対して周方向に相対回転される際、コイル20から離れて退避する位置である。退避位置P3は、原点位置P1よりも径方向の外側で、かつ、挿入位置P2よりも径方向の内側に位置する位置である。
【0039】
また、コイル挿入部220は、周方向に沿って複数(8つ)設けられている。複数のコイル挿入部220は、周方向に沿って等角度間隔に配置されている。複数のコイル挿入部220は、径方向の内側から外側に向かって放射状に移動することにより、周方向に沿って等角度間隔離れた位置において、互いに異なるコイル20の部分(コイルアッセンブリ30の部分)を押すように構成されている。これにより、一度に広範囲でコイル20の挿入を行うことができるので、コイル20の挿入工程に要する時間を短縮可能である。なお、コイル20を押す際、複数のコイル挿入部220は、同期して移動される。
【0040】
ここで、複数のコイル挿入部220が径方向の内側から外側に向かって放射状に移動すると、周方向に隣接するコイル挿入部220同士が周方向に離れる。コイル挿入部220同士が周方向に離れると、周方向に沿って配列されたコイル20の全部(コイルアッセンブリ30の全部分)を均一に押すことが困難である。
【0041】
そこで、本実施形態では、ステータコア10およびコイル20を周方向に所定角度だけ回転させることにより、複数のコイル挿入部220をステータコア10に対して所定角度だけ周方向に相対回転させる回転作業を行う。また、相対回転後の位置から、複数のコイル挿入部220によりコイル20を押す挿入作業を再び行う。本実施形態では、回転作業と挿入作業とが交互に行われつつ、コイル20がステータコア10のスロット13に挿入される。これにより、周方向に沿って配列されたコイル20の全部(コイルアッセンブリ30の全部分)を均一に押すことが可能である。回転作業では、コイル挿入部220の数に応じた所定角度だけ、複数のコイル挿入部220がステータコア10に対して周方向に相対回転される。たとえば、コイル挿入部220の数が8つである場合、所定角度として、22.5度(=360度/8/2)、11.25度(=360度/8/4)などを採用することができる。
【0042】
また、複数のコイル挿入部220は、中心軸線方向に沿って一対設けられている。一対の複数のコイル挿入部220により、コイル20のうちの中心軸線方向の一方側の部分および他方側の部分を同時に押すことが可能である。その結果、コイル20をスロット13に挿入する際、回転軸線方向の一方側または他方側のいずれかにおいてコイル20が傾くことを低減可能である。なお、コイル20を押す際、一対の複数のコイル挿入部220は、同期して移動される。
【0043】
中心軸線方向の一方側(反リード側)の複数のコイル挿入部220は、コイル20の中心軸線方向の一方側(反リード側)のコイルエンド部22を押すように構成されている。コイル20を押す際、中心軸線方向の一方側の複数のコイル挿入部220は、コイル20の中心軸線方向の一方側のコイルエンド部22に対して径方向の内側で、かつ、このコイルエンド部22と径方向に対向する位置に配置されている。また、中心軸線方向の他方側(リード側)の複数のコイル挿入部220は、コイル20の中心軸線方向の他方側(リード側)のコイルエンド部22を押すように構成されている。コイル20を押す際、中心軸線方向の他方側の複数のコイル挿入部220は、コイル20の中心軸線方向の他方側のコイルエンド部22に対して径方向の内側で、かつ、径方向に対向する位置に配置されている。
【0044】
また、図7および図8に示すように、コイル挿入部220は、周方向に沿って湾曲するコイル押し面220aを含んでいる。コイル押し面220aは、径方向の外側に向かって突出する凸形状に形成されている。コイル20を押す際、コイル押し面220aは、コイル20のコイルエンド部22のうちの径方向の内側の部分と接触している。コイル押し面220aは、曲率半径R1(図8参照)を有している。曲率半径R1は、スロット13への挿入前のコイル20の曲率半径R2よりも大きい。このため、最初の挿入作業では、コイル押し面220aのうちの周方向の両端部がコイル20と接触しやすく、コイル押し面220aのうちの周方向の中央部がコイル20と接触しにくい。その結果、最初の挿入作業では、コイル押し面220aのうちの周方向の両端部により押されるコイル20の移動量が、コイル押し面220aのうちの周方向の中央部により押されるコイル20の移動量よりも大きくなる。なお、図8では、理解の容易のため、コイル挿入部220およびコイル20(コイルアッセンブリ30)を、破線により模式的に示している。
【0045】
〈絶縁部材開放部〉
図9に示すように、絶縁部材開放部230は、ステータコア10のスロット13に配置された絶縁部材40のうちの径方向の一方側の部分(開口部40a)を開放させる治具である。絶縁部材開放部230は、絶縁部材開放部230を中心軸線方向に移動させる駆動モータ231(図6参照)により、中心軸線方向に沿って移動可能に構成されている。つまり、絶縁部材開放部230は、駆動モータ231により、中心軸線方向の一方側から他方側に向かって移動可能で、かつ、中心軸線方向の他方側から一方側に向かって移動可能に構成されている。
【0046】
絶縁部材開放部230は、複数の開放治具232を含む。複数の開放治具232は、スロット13(絶縁部材40)毎に設けられている。複数の開放治具232は、周方向に沿ってスロット13と同じ角度間隔に配置されている。開放治具232は、中心軸線方向の一方側(反リード側)から他方側(リード側)に向かってスロット13に配置された絶縁部材40に挿入されることにより、絶縁部材40の開口部40aを開放させるように構成されている。絶縁部材40に挿入された開放治具232は、中心軸線方向の他方側から一方側に向かってスロット13に配置された絶縁部材40から退避されるように構成されている。
【0047】
図10に示すように、開放治具232は、第1開放治具232aと、第2開放治具232bとを有する。第1開放治具232aおよび第2開放治具232bは、共に、平板形状に形成されている。第1開放治具232aは、スロット13に配置された絶縁部材40のうちの径方向の外側の部分に挿入されるように構成されている。第1開放治具232aは、第2開放治具232bに対して径方向の外側に配置されている。第2開放治具232bは、スロット13に配置された絶縁部材40のうちの径方向の内側の部分に挿入されるように構成されている。第2開放治具232bは、第1開放治具232aに対して径方向の内側に配置されている。第2開放治具232bは、径方向に移動可能に構成されている。具体的には、第2開放治具232bは、第2開放治具232bを径方向の内側に付勢する付勢部材233(コイルばねなど)による付勢力に抗して、径方向の内側に移動可能に構成されている。これにより、コイル挿入部220によりコイル20がスロット13に挿入された際、コイル20と共に第2開放治具232bを径方向の内側に移動させることが可能である。
【0048】
〈制御部〉
制御部240は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを含み、組立装置200の動作を制御する制御回路である。具体的には、制御部240は、駆動モータ211、221および231を制御することにより、コア保持部210、コイル挿入部220および絶縁部材開放部230の動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0049】
(ステータの組立方法)
次に、図11図15を主に参照して、組立装置200によるステータ100の組立方法について説明する。この組立方法では、コア保持部210、コイル挿入部220および絶縁部材開放部230の動作は、制御部240により制御されている。
【0050】
〈絶縁部材を配置する工程〉
まず、図11に示すように、ステータコア10のスロット13に絶縁部材40が配置される。具体的には、スロット13の開口部13aを介して、径方向の内側から外側に向かって挿入されることにより、絶縁部材40がスロット13に配置される。なお、後述する絶縁部材40を開放させる工程の前は、絶縁部材40の開口部40aは、完全に開放した状態(開放治具232が配置された状態)よりも閉じた状態(図11の最も右側の絶縁部材40参照)になっている場合がある。
【0051】
〈コイルを配置する工程〉
次に、図5に示すように、ステータコア10に対して径方向の内側にコイル20(コイルアッセンブリ30)が配置される。具体的には、ステータコア10のティース12およびスロット13に径方向に対向する位置にコイル20が配置される。そして、ステータコア10およびコイル20にガイド治具250の第1ガイド治具251および第2ガイド治具252が挿入(装着)される。そして、ガイド治具250が挿入されたステータコア10およびコイル20がコア保持部210に保持される。
【0052】
〈絶縁部材を開放させる工程〉
次に、図12に示すように、中心軸線方向の一方側(反リード側)から他方側(リード側)に向かってスロット13に配置された絶縁部材40に絶縁部材開放部230の開放治具232が挿入される。開放治具232が挿入されると、開放治具232の第2開放治具232bにより、絶縁部材40の開口部40aが開放される。これにより、コイル20と絶縁部材40とが衝突することを防止可能である。その結果、衝突に起因して絶縁部材40の形状が崩れることを防止することができるので、絶縁部材40によるコイル20とスロット13との間の絶縁を確保可能である。
【0053】
〈コイルを挿入する工程〉
次に、コイル挿入部220により径方向の内側から外側に向かってコイル20を押す挿入作業が複数回行われることにより、スロット13にコイル20が挿入される。
【0054】
図13(A)に示すように、コイル20は、スロット収容部21およびリード線部23の根元部がスロット13の内壁面13bおよびガイド治具250の側面に接触しつつ、内壁面13bおよびガイド治具250にガイドされながらスロット13に挿入される。また、所定のコイル20のリード線部23の根元部が、ガイド治具250の第1ガイド治具251の中心軸線方向の角部に周方向に押し付けられつつ、コイル20がスロット13に挿入される。また、コイル20は、挿入作業が進行するにつれて、スロット13への挿入前のコイル20(二点鎖線により示す)の曲率半径R2から、スロット13への挿入完了後のコイル20(実線により示す)の曲率半径R3(=R1>R2)まで、曲率半径が大きくなるように変形しつつ、スロット13に挿入される。また、コイル20は、挿入作業が進行するにつれて、周方向に拡張されるように変形しつつ、スロット13に挿入される。
【0055】
具体的には、図13(B)に示すように、コイル20は、挿入作業が進行するにつれて、コイルエンド部22が周方向に拡張され、かつ、中心軸線方向に縮むように変形しつつ、スロット13に挿入される。この場合、挿入作業が進行するにつれて、コイル20のコイルエンド部22が変形しにくくなるため、コイル挿入部220がコイル20を押す力(コイル挿入部220がコイル20に加える荷重)が大きくなる。コイル挿入部220がコイル20を押す力が大きくなると、コイル20のスロット収容部21およびリード線部23の根元部に加わる摩擦力が大きくなる。また、コイル20が摩擦力に抗しつつスロット13に挿入される場合、1回の挿入作業における移動量が大き過ぎると、スロット13よりも回転軸線方向の外側に突出するコイル20のリード線部23が、ガイド治具250の第1ガイド治具251の回転軸線方向の角部との摩擦力に起因して、この角部を起点として折れ曲がるように塑性変形する場合がある。なお、図13(B)では、理解の容易のため、折れ曲がるように塑性変形した場合のリード線部23を二点鎖線により示している。
【0056】
そこで、本実施形態では、図14(A)~(F)に示すように、最後の挿入作業のコイル20の移動量が、最初の挿入作業のコイル20の移動量よりも小さくなるように、スロット13にコイル20が挿入される。また、コイル20が挿入される際、コイル挿入部220により、各挿入作業において、コイル20のリード線部23が塑性変形しない移動量(弾性変形のみする移動量)だけ、コイル20が押される。なお、各挿入作業におけるコイル20のリード線部23が塑性変形しない移動量は、予め実験などにより決定されている。
【0057】
また、本実施形態では、少なくとも最初の挿入作業から途中の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、コイル20の移動量が徐々に小さくなるように、スロット13にコイル20が挿入される。好ましくは、最初の挿入作業から最後の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、コイル20の移動量が徐々に小さくなるように、スロット13にコイル20が挿入される。
【0058】
図14(A)~(F)を参照して、挿入作業の一例について説明する。ここでは、6回の挿入作業により、あるコイル20のスロット13への挿入が完了する場合を例に説明する。なお、図14(A)~(F)では、理解の容易のため、コイル20の導線の一部のみを示している。
【0059】
図14(A)に示すように、まず、最初の挿入作業において、コイル20を構成する導線が複数本(3本など)だけスロット13に挿入される移動量L1だけ、コイル挿入部220によりコイル20が押される。好ましくは、コイル挿入部220により押される複数のコイル20のうちの最も移動量が小さいコイル20を構成する導線が複数本だけスロット13に挿入される移動量L1だけ、コイル20が押される。最も移動量が小さいコイル20は、たとえば、コイル挿入部220のコイル押し面220aのうちの周方向の中央部により押されるコイル20である。
【0060】
次に、図14(B)に示すように、2回目の挿入作業において、移動量L1よりも小さい移動量L2だけ、コイル挿入部220によりコイル20が押される。2回目の挿入作業では、最初の挿入作業により挿入された位置からさらに径方向の外側にコイル20が挿入される。
【0061】
次に、図14(C)に示すように、3回目の挿入作業において、移動量L2よりも小さい移動量L3だけ、コイル挿入部220によりコイル20が押される。3回目の挿入作業では、2回目の挿入作業により挿入された位置からさらに径方向の外側にコイル20が挿入される。
【0062】
次に、図14(D)に示すように、4回目の挿入作業において、移動量L3よりも小さい移動量L4だけ、コイル挿入部220によりコイル20が押される。4回目の挿入作業では、3回目の挿入作業により挿入された位置からさらに径方向の外側にコイル20が挿入される。
【0063】
次に、図14(E)に示すように、5回目の挿入作業において、移動量L4よりも小さい移動量L5だけ、コイル挿入部220によりコイル20が押される。5回目の挿入作業では、4回目の挿入作業により挿入された位置からさらに径方向の外側にコイル20が挿入される。
【0064】
次に、図14(F)に示すように、最後(6回目)の挿入作業において、移動量L5よりも小さい移動量L6だけ、コイル挿入部220によりコイル20が押される。最後の挿入作業では、5回目の挿入作業により挿入された位置からさらに径方向の外側にコイル20が挿入されるとともに、挿入完了位置までコイル20が挿入される。
【0065】
以上のように、挿入作業が進行するにつれて、各挿入作業における移動量(L1>L2>L3>L4>L5>L6)が徐々に小さくなるように、コイル挿入部220によりコイル20が挿入される。なお、移動量L1~L6は、コイル20のリード線部23が塑性変形しない移動量である。
【0066】
また、本実施形態では、図15に示すように、最初の挿入作業では、スロット13に挿入されたコイル20と共に、開放治具232の第2開放治具232bが径方向の内側に移動される。そして、最初の挿入作業後、中心軸線方向の他方側から一方側に向かってスロット13に配置された絶縁部材40から開放治具232が退避される。この際、コイル挿入部220がコイル20に接触した状態で、スロット13に配置された絶縁部材40から開放治具232が退避される。なお、開放治具232が退避される際、コイル挿入部220は、コイル20に単に接触しているだけであってもよいし、コイル20に接触して押して(荷重を加えて)いてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、図7に示すように、最初の挿入作業では、原点位置P1から挿入位置P2まで、コイル挿入部220が径方向の内側から外側に向かって移動される。そして、最初の挿入作業後、押していたコイル20(挿入位置P2)から退避位置P3までコイル挿入部220が離れる。そして、押していたコイル20から退避位置P3までコイル挿入部220を離した後、コイル挿入部220をステータコア10に対して所定角度(22.5度など)だけ相対回転させる回転作業が行われる。回転作業では、コア保持部210を周方向に所定角度だけ回転させることにより、ステータコア10およびコイル20が周方向に所定角度だけ回転される。そして、ステータコア10およびコイル20が周方向に所定角度だけ回転されることにより、コイル挿入部220がステータコア10およびコイル20に対して周方向に所定角度だけ相対的に回転される。そして、相対回転後の位置から、コイル挿入部220によりコイル20が再び押される。以後、最後の挿入作業まで、挿入作業、退避位置P3への退避作業および回転作業が繰り返して行われる。そして、挿入完了位置まで全部のコイル20が挿入された後、リード線部23が、他のリード線部23と接合可能なように、折り曲げられるように成形される。その後、図1に示すステータ100の組立が完了する。
【0068】
(本実施形態の組立方法の効果)
本実施形態の組立方法では、以下のような効果を得ることができる。
【0069】
上記実施形態では、最後の挿入作業のコイル(20)の移動量が、最初の挿入作業のコイル(20)の移動量よりも小さくなるように、コイル挿入部(220)によりスロット(13)にコイル(20)を挿入する工程を備える。これにより、コイル(20)のリード線部(23)を塑性変形させずに挿入可能な移動量が小さい最後の挿入作業では、コイル(20)の移動量が小さくなるので、コイル(20)のリード線部(23)が塑性変形しやすい最後の挿入作業において、コイル(20)のリード線部(23)の塑性変形を効果的に低減することができる。また、コイル(20)のリード線部(23)を塑性変形させずに挿入可能な移動量が大きい最初の挿入作業では、コイル(20)の移動量が大きいので、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。これらの結果、コイル(20)をスロット(13)に挿入する際における、コイル(20)のリード線部(23)の塑性変形を効果的に低減しつつ、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。なお、コイル(20)の挿入工程の後に、コイルのリード線部の成形工程が有る場合、コイル(20)のリード線部(23)が塑性変形していると、コイル(20)のリード線部(23)の成形工程を容易に行うことが困難である。これに対して、上記実施形態では、コイル(20)のリード線部(23)の塑性変形を効果的に低減することができるので、コイル(20)のリード線部(23)の成形工程を容易に行うことができる。
【0070】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、複数回の各々の挿入作業において、コイル(20)のリード線部(23)が塑性変形しない移動量だけ、コイル挿入部(220)によりコイル(20)を押す工程を含む。このように構成すれば、複数回の各々の挿入作業においてコイル(20)のリード線部(23)が塑性変形することを確実に低減することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、少なくとも最初の挿入作業から途中の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、コイル(20)の移動量が徐々に小さくなるように、コイル挿入部(220)によりスロット(13)にコイル(20)を挿入する工程である。このように構成すれば、コイル(20)のリード線部(23)を塑性変形させずに挿入可能な移動量が大きいうちに、コイル(20)を大きく移動させることができるので、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を効果的に抑制することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、最初の挿入作業から最後の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、コイル(20)の移動量が徐々に小さくなるように、コイル挿入部(220)によりスロット(13)にコイル(20)を挿入する工程である。このように構成すれば、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加をより効果的に抑制することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、挿入作業後、押していたコイル(20)からコイル挿入部(220)を離す工程を含む。このように構成すれば、挿入作業後、コイル(20)をコイル挿入部(220)が押す力から解放することができるので、コイル(20)のリード線部(23)が弾性変形していたとしても、弾性変形したコイル(20)のリード線部(23)を元の状態(弾性変形していない状態)に戻すことができる。その結果、コイル(20)をコイル挿入部(220)が押す力から解放することなく連続して押す場合に比べて、コイル(20)のリード線部(23)を元の状態に戻した分だけ、コイル(20)のリード線部(23)が塑性変形することを低減することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、押していたコイル(20)からコイル挿入部(220)を離した状態で、コイル挿入部(220)をステータコア(10)に対して所定角度だけ相対回転させるとともに、相対回転後の位置から、コイル挿入部(220)によりコイル(20)を押す工程を含む。このように構成すれば、相対回転させている間、コイル(20)をコイル挿入部(220)が押す力から解放し続けることができる。その結果、コイル(20)をコイル挿入部(220)が押す力から十分に解放することができるので、コイル(20)のリード線部(23)が塑性変形することをより低減することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、最初の挿入作業において、コイル(20)を構成する導線が複数本だけスロット(13)に挿入される移動量だけ、コイル挿入部(220)によりコイル(20)を押す工程を含む。このように構成すれば、最初の挿入作業において、十分な移動量だけ、コイル(20)を挿入することができるので、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を効果的に抑制することができる。また、スロット(13)に絶縁部材(40)が配置される場合、コイル(20)の挿入工程の前に、絶縁部材(40)の径方向の内側(コイル(20)が導入される側)を開放する開放治具(232)が、スロット(13)に配置された絶縁部材(40)に挿入される場合がある。この場合、上記のように、最初の挿入作業において、コイル(20)を構成する導線が複数本だけスロット(13)に挿入されれば、最初の挿入作業後に、開放治具(232)が退避されたとしても、スロット(13)に挿入されたコイル(20)の導線により、絶縁部材(40)が開放された状態を維持することができる。また、導線が複数本だけスロット(13)に挿入されることにより、導線がスプリングバックしたとしても、導線をスロット(13)内(絶縁部材(40)内)に留めることができるので、絶縁部材(40)が開放された状態を確実に維持することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、コイル(20)を挿入する工程は、コイル挿入部(220)がステータコア(10)の径方向の内側から外側に向かってコイル(20)を押す挿入作業を複数回行うことにより、スロット(13)にコイル(20)を挿入する工程である。このように構成すれば、コイル挿入部(220)がステータコア(10)の径方向の内側から外側に向かってコイル(20)を挿入する場合にも、コイル(20)の塑性変形を効果的に低減しつつ、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。
【0077】
(本実施形態の組立装置の効果)
本実施形態の組立装置では、以下のような効果を得ることができる。
【0078】
上記実施形態では、最後の挿入作業のコイル(20)の移動量が、最初の挿入作業のコイル(20)の移動量よりも小さくなるように、コイル挿入部(220)により、スロット(13)にコイル(20)を挿入させる制御を行う制御部(240)を設ける。これにより、コイル(20)のリード線部(23)を塑性変形させずに挿入可能な移動量が小さい最後の挿入作業では、コイル(20)の移動量が小さくなるので、コイル(20)のリード線部(23)が塑性変形しやすい最後の挿入作業において、コイル(20)のリード線部(23)の塑性変形を効果的に低減することができる。また、コイル(20)のリード線部(23)を塑性変形させずに挿入可能な移動量が大きい最初の挿入作業では、コイル(20)の移動量が大きいので、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を抑制することができる。これらの結果、コイル(20)をスロット(13)に挿入する際、コイル(20)のリード線部(23)の塑性変形を効果的に低減しつつ、コイル(20)の挿入工程に要する時間の増加を抑制することができるステータ(100)の組立装置(200)を提供することができる。
【0079】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、径方向の内側にスロットの開口部が設けられたステータコアを備えるステータの組立方法、および、このステータの組立装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、径方向の外側にスロットの開口部が設けられたステータコアを備えるステータの組立方法、および、このステータの組立装置に適用されてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、最初の挿入作業から最後の挿入作業までの間、挿入作業が進行するにつれて、コイルの移動量が徐々に小さくなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、最初の挿入作業から途中の挿入作業までの間のみ、挿入作業が進行するにつれて、コイルの移動量が徐々に小さくなり、かつ、この途中の挿入作業よりも後の挿入作業では、一定の(同じ)移動量であってもよい。また、途中の挿入作業から最後の挿入作業までの間のみ、挿入作業が進行するにつれて、コイルの移動量が徐々に小さくなり、かつ、この途中の挿入作業よりも前の挿入作業では、一定の(同じ)移動量であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、挿入作業後、押していたコイルから退避位置までコイル挿入部が離れる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、挿入作業後、押していたコイルから原点位置までコイル挿入部が離れてもよい。また、コイル挿入部をステータコアおよびコイルに対して相対回転可能であれば、挿入作業後、押していたコイルからコイル挿入部が離れなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ステータコアおよびコイルを周方向に回転させることにより、ステータコアおよびコイルに対してコイル挿入部が相対回転される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コイル挿入部自体を周方向に回転させることにより、ステータコアおよびコイルに対してコイル挿入部が相対回転されてもよい。また、ステータコアおよびコイルとコイル挿入部との両方を周方向に回転させることにより、ステータコアおよびコイルに対してコイル挿入部が相対回転されてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、最初の挿入作業において、コイルを構成する導線が複数本だけスロットに挿入される移動量だけ、コイル挿入部によりコイルが押される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、最初の挿入作業において、コイルを構成する導線が1本だけスロットに挿入される移動量だけ、コイル挿入部によりコイルが押されてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、コイル挿入部が8つ設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コイル挿入部が8つ以外の複数設けられてもよい。また、コイル挿入部が1つのみ設けられてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ステータコア
13 スロット
20 コイル
22 コイルエンド部
23 リード線部
100 ステータ
200 組立装置
220 コイル挿入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15