(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】燃料装置の組み付け構造
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20221109BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20221109BHJP
B60K 15/077 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F02M37/00 301C
F02M37/00 301E
B60K15/035 A
B60K15/035 B
B60K15/077 C
(21)【出願番号】P 2019030420
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】イスマエル ソラーノ
(72)【発明者】
【氏名】桑山 健太
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ユルガロニス
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-052616(JP,A)
【文献】特開2003-166448(JP,A)
【文献】特開2006-097599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B60K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に貯留された液体燃料の波立ちを抑制する波消し板に対し、複数の構成部品からなる燃料装置を組み付ける燃料装置の組み付け構造であって、
前記波消し板には、前記燃料装置の前記複数の構成部品のうちの一つが組み付け部として一体で形成されており、
前記燃料装置の残りの構成部品は被組み付け部として、前記波消し板の前記組み付け部に組み付けられて
おり、
前記燃料装置は燃料遮断弁であり、
前記燃料遮断弁は、キャニスタに連通する連通開口を有するハウジングと、前記ハウジング内に配置され、かつ前記液体燃料に浮いて液面の変動に伴い上下動することで前記連通開口を開閉するフロートバルブと、前記ハウジングを上方から覆い、かつ前記被組み付け部の一部を構成するカバーとを備え、
前記ハウジングの一部は、上下方向へ延び、かつ下端に下側開口を有する外ハウジング部材により構成され、
前記燃料遮断弁は、前記燃料タンク内の前記液体燃料の液面が前記下側開口に到達した後に前記燃料タンク内のガス圧が上昇することで前記液体燃料が満タンであることを検知するものであり、
前記外ハウジング部材は組み付け部として前記波消し板に一体に形成されており、
前記外ハウジング部材は係合部を備え、
前記カバーは、上下方向に延びて前記外ハウジング部材に対し上側から装着される下筒部を備え、
前記下筒部は前記係合部に係合される被係合部を備え、
前記被係合部が前記係合部に係合されることにより、前記燃料遮断弁の前記被組み付け部が前記波消し板の前記組み付け部に組み付けられている燃料装置の組み付け構造。
【請求項2】
前記波消し板は、前記液体燃料の波立ちを抑制する平板状の本体壁部と、前記本体壁部に対し、同本体壁部の厚み方向に離間した箇所に配置された前記外ハウジング部材と、前記本体壁部及び前記外ハウジング部材を連結する連結部とを備えている請求項
1に記載の燃料装置の組み付け構造。
【請求項3】
前記波消し板は、前記外ハウジング部材に面するように前記本体壁部から延出する少なくとも1つの側壁部を備えており、
前記側壁部は前記外ハウジング部材から離間しており、
前記波消し板は、前記本体壁部及び前記側壁部により前記外ハウジング部材を囲っている請求項
2に記載の燃料装置の組み付け構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの側壁部は2つの側壁部であり、
前記2つの側壁部は、前記外ハウジング部材を挟むように位置している請求項
3に記載の燃料装置の組み付け構造。
【請求項5】
燃料タンク内に貯留された液体燃料の波立ちを抑制する波消し板に対し、複数の構成部品からなる燃料装置を組み付ける燃料装置の組み付け構造であって、
前記波消し板には、前記燃料装置の前記複数の構成部品のうちの一つが組み付け部として一体で形成されており、
前記燃料装置の残りの構成部品は被組み付け部として、前記波消し板の前記組み付け部に組み付けられており、
前記燃料装置は燃料遮断弁であり、前記波消し板に一体で形成された組み付け部は一体底部であ
る燃料装置の組み付け構造。
【請求項6】
燃料タンク内に貯留された液体燃料の波立ちを抑制する波消し板に対し、複数の構成部品からなる燃料装置を組み付ける燃料装置の組み付け構造であって、
前記波消し板には、前記燃料装置の前記複数の構成部品のうちの一つが組み付け部として一体で形成されており、
前記燃料装置の残りの構成部品は被組み付け部として、前記波消し板の前記組み付け部に組み付けられており、
前記燃料装置は燃料遮断弁であり、前記波消し板に一体で形成された組み付け部はカバーであ
る燃料装置の組み付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に貯留された液体燃料の波立ちを抑制する波消し板に対し、複数の構成部品からなる燃料装置を組み付ける燃料装置の組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、液体燃料が貯留される燃料タンク内には、液体燃料の波立ちを抑制する波消し板が配置される。これに加え、燃料タンクには、複数の構成部品からなる燃料装置が配置される。燃料装置としては、例えば、満タンを検知する満タン検知バルブ、揺動時の燃料の漏出を抑制するカットオフバルブ等の燃料遮断弁が挙げられる。
【0003】
ここで、波消し板及び燃料装置の燃料タンクへの組み付けに際しては、まず、保持部(アタッチメント)が燃料タンクに組み付けられる。その後に、波消し板及び燃料装置が保持部に組み付けられる。従って、組み付け作業が煩雑となり、組み付け作業性の点で問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、波消し板に保持部を一体に設け、この保持部に燃料装置を組み付ける技術が提案されている。この技術によれば、燃料装置を組み付けるための保持部を燃料タンクに組み付ける必要がないため、組み付け作業性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1では、波消し板に燃料装置を組み付けるために、同波消し板に設けた保持部に燃料装置を組み付ける作業が必要である。そのため、組み付け作業性が向上したとはいえ、改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、波消し板に対する燃料装置の組み付け作業性を一層高めることのできる燃料装置の組み付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する燃料装置の組み付け構造は、燃料タンク内に貯留された液体燃料の波立ちを抑制する波消し板に対し、複数の構成部品からなる燃料装置を組み付ける燃料装置の組み付け構造であって、前記波消し板には、前記燃料装置の前記複数の構成部品のうちの一つが組み付け部として一体で形成されており、前記燃料装置の残りの構成部品は被組み付け部として、前記波消し板の前記組み付け部に組み付けられている。
【発明の効果】
【0009】
上記燃料装置の組み付け構造によれば、波消し板に対する燃料装置の組み付け作業性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における波消し板の組み付け部(外ハウジング部材)に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられた状態を示す部分斜視図。
【
図2】第1実施形態における波消し板の組み付け部に、燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられる前の状態を示す分解斜視図。
【
図3】
図2の状態を、本体壁部の厚み方向について同
図2とは反対側から見た分解斜視図。
【
図6】第2実施形態における波消し板の組み付け部(カバー)に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられる前の状態を示す分解斜視図。
【
図7】第3実施形態における波消し板の組み付け部(外ハウジング部材)に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられる前の状態を示す分解斜視図。
【
図8】第3実施形態における波消し板の組み付け部(外ハウジング部材)に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられた状態を示す斜視図。
【
図9】第4実施形態における波消し板の組み付け部に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられる前の状態を示す分解斜視図。
【
図10】第4実施形態における波消し板の組み付け部に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられた状態を示す部分斜視図。
【
図11】第5実施形態における波消し板の組み付け部に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられる前の状態を示す分解斜視図。
【
図12】第5実施形態における波消し板の組み付け部に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられた状態を示す部分斜視図。
【
図13】第6実施形態における波消し板の組み付け部に気液分離装置の被組み付け部が組み付けられる前の状態を示す分解斜視図。
【
図14】第6実施形態における波消し板の組み付け部に気液分離装置の被組み付け部が組み付けられた状態を示す部分斜視図。
【
図15】第1実施形態の変形例を示す図であり、波消し板の組み付け部(外ハウジング部材)に燃料遮断弁の被組み付け部が組み付けられた状態を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、燃料装置の組み付け構造の第1実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0012】
自動車には、液体燃料を貯留する燃料タンクが搭載されている。燃料タンクの近傍には、エバポ回路と称される気化燃料循環システムが設けられている。エバポ回路は、気化燃料を燃料タンクから外部のキャニスタに導き、当該気化燃料を活性炭等に吸着させて一時的に蓄えることで、蒸気圧の上昇による燃料タンクの内圧の上昇を抑制するものである。キャニスタは、エンジンの吸気通路に連結されている。キャニスタは、エンジンの吸気負圧により活性炭から気化燃料を放出させ、燃料及び空気の混合気中に混合することで、吸着された気化燃料が燃料として使用されることを可能にする。
【0013】
図4及び
図5は、燃料装置の組み付け構造の適用箇所を示している。燃料タンク11内には、波消し板50と、燃料装置としての燃料遮断弁13とが配置されている。
第1実施形態の燃料遮断弁13は、給油時に満タンとなったことを検知する満タン検知バルブとしての機能を有している。これに加え、燃料遮断弁13は、走行中等に、液体燃料が上記エバポ回路に流入するのを規制するカットオフバルブとしての機能を有している。
【0014】
燃料遮断弁13は、ハウジング14、カバー32、フロートバルブ41、及びスプリング44を備えている。ハウジング14は、外ハウジング部材15、中間ハウジング部材26、及び内ハウジング部材21を備えている。ハウジング14の上記構成部品は、いずれも樹脂材料によって形成されている。
【0015】
外ハウジング部材15は、上下方向へ延び、かつ上下両端が開放された筒状をなしている。外ハウジング部材15は、下端に下側開口17を有している。外ハウジング部材15の外周部には複数の係合部が形成されている。複数の係合部は周方向に互いに離間している。各係合部は、
図2、
図3、及び
図5に示すように、外ハウジング部材15の外周面から径方向における外方へ突出する係合突部18によって構成されている。外ハウジング部材15の下側開口17の高さ位置は、燃料タンク11の満タン時における液体燃料の液位L1と略同じ高さ位置となるように設定されている。
【0016】
図4及び
図5に示すように、内ハウジング部材21は、上下方向へ延び、かつ上下両端が開放された筒状をなしている。内ハウジング部材21の上部を除く大部分は、外ハウジング部材15内に配置されている。内ハウジング部材21の上部は、外ハウジング部材15の上縁部上に載置されている。内ハウジング部材21の上端部には、同内ハウジング部材21の中心軸線CAに近づくほど低くなるよう傾斜するテーパ状の上壁部22が形成されている。上壁部22の中心部には、キャニスタ10に連通する連通開口23が形成されている。この連通開口23により、内ハウジング部材21の内部と外部とが連通されている。内ハウジング部材21の上部の外周部には、Oリング24が装着されている。複数の係止爪25が内ハウジング部材21の外周面から径方向外方へ突出している。これらの係止爪25は、Oリング24よりも下方に位置し、かつ周方向に互いに離間している。
【0017】
中間ハウジング部材26は、筒部27及び底部29を備えている。筒部27は上下方向へ延び、かつ上端が開放された筒状をなしている。筒部27は、外ハウジング部材15と内ハウジング部材21との間に配置されている。筒部27の上端部には、同筒部27を径方向にそれぞれ貫通する複数の係止孔28が形成されている。これらの係止孔28は周方向に互いに離間している。底部29は、筒部27の下端部に形成されており、同筒部27の下端を閉塞している。底部29には、同底部29を上下方向に貫通する連通孔31が形成されている。この連通孔31により、中間ハウジング部材26の内部と外部とが連通されている。そして、各係止孔28が、対応する係止爪25に係合されることにより、中間ハウジング部材26が内ハウジング部材21に装着されている。
【0018】
カバー32は、上筒部33、下筒部34、フランジ部36、及びニップル37を備えており、樹脂材料によって形成されている。上筒部33は、上下方向へ延び、かつ上端が閉塞された筒状をなしている。下筒部34は、上下両端が開口された筒状をなしている。下筒部34には複数の被係合部が形成されている。これらの被係合部は、下筒部34の周方向に互いに離間している。各被係合部は、下筒部34を径方向に貫通する係合孔35によって構成されている。フランジ部36は、上筒部33及び下筒部34の境界部分に形成されている。ニップル37は、上筒部33から径方向における外方へ延びている。
【0019】
上記キャニスタ10と燃料遮断弁13とは、チューブ38によって連結されている。このチューブ38の一端部は、ニップル37に被せられている。
そして、カバー32がハウジング14の上半部に対し上方から被せられている。上筒部33の内周面が上記Oリング24に密着している。このOリング24により、内ハウジング部材21と上筒部33との間の気密性が確保されている。また、各係合孔35が、対応する係合突部18に係合されることにより、カバー32が外ハウジング部材15に装着されている。
【0020】
内ハウジング部材21の上部には、複数の貫通孔39が形成されている。また、上記カバー32の下筒部34、及び外ハウジング部材15のそれぞれにおいて、燃料タンク11の最上部に対応する箇所には、図示しない貫通孔が形成されている。これらの貫通孔39、及び図示しない貫通孔によって、内ハウジング部材21の内部が燃料タンク11の気相部分と連通している。
【0021】
フロートバルブ41は、フロート42及びバルブシート43を備えている。フロート42は、内ハウジング部材21内に上下動自在に配置されている。バルブシート43は、フロート42の上端部に装着されている。なお、バルブシート43は、フロート42の一部によって構成されてもよい。そして、フロートバルブ41は、液体燃料の液面の上昇に伴いフロート42が上昇し、バルブシート43が上壁部22に対し下側から当接することで、連通開口23を閉塞するように構成されている。
【0022】
スプリング44は、フロート42と中間ハウジング部材26の底部29との間において、圧縮されることにより付勢力を蓄えられた状態で配置されている。この付勢力は、フロートバルブ41の重量よりも小さい。そのため、大気中及び気化燃料中では、フロート42は重力によりスプリング44を圧縮させて、同フロート42の下端面において上記底部29に当接している。
【0023】
図1~
図3に示すように、波消し板50は、本体壁部51、上記燃料遮断弁13の外ハウジング部材15、連結部53、2つの側壁部54、及び側壁部54毎の上壁部55を備えており、樹脂材料によって形成されている。
【0024】
本体壁部51は、波消し板50の主要部を構成し、上下方向に延びる平板状をなしている。本体壁部51は、当該本体壁部51をその厚み方向に貫通する複数の孔52を有している。燃料遮断弁13の外ハウジング部材15は、組み付け部として、本体壁部51において波消し板50に一体に形成されている。
図4に示すように、外ハウジング部材15は、本体壁部51から、同本体壁部51の厚み方向に間隔D1離間している。間隔D1は、5mm以上に設定されていることが好ましい。
【0025】
図2及び
図3に示すように、連結部53は、本体壁部51から外ハウジング部材15に向けて突出して、その外ハウジング部材15に繋がっている。連結部53は、外ハウジング部材15を同本体壁部51に連結している。
【0026】
各側壁部54は、外ハウジング部材15に面するように本体壁部51から延出している。両側壁部54は、外ハウジング部材15を挟むように位置している。両側壁部54は、外ハウジング部材15から離間している。したがって、両側壁部54と本体壁部51とによって外ハウジング部材15が三方から囲まれている。
【0027】
各上壁部55は、対応する側壁部54の上端部において、外ハウジング部材15から遠ざかる側へ突出するように形成されている。各上壁部55上には取り付け座56が設けられている。そして、波消し板50は、両取り付け座56において燃料タンク11の上部に対し、溶着等により固定されている。
【0028】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用及び効果について説明する。
波消し板50には、燃料遮断弁13の構成部品の1つである外ハウジング部材15が組み付け部として一体に形成されている。表現を変えると、波消し板50が、燃料遮断弁13の複数の構成部品のうちの外ハウジング部材15を自身の一部として有している。
【0029】
そのため、燃料遮断弁13の波消し板50への組み付けに際しては、波消し板50における外ハウジング部材15(組み付け部)に対し、燃料遮断弁13の残りの構成部品が被組み付け部45として組み付けられる。より詳しくは、カバー32に対し、内ハウジング部材21、中間ハウジング部材26、フロートバルブ41、及びスプリング44を予め組み付けることにより、被組み付け部45が形成される。この被組み付け部45が外ハウジング部材15(組み付け部)の上方に配置される。ニップル37の延びる方向と、本体壁部51の厚み方向のうち同本体壁部51に近付く方向とが合致するように、被組み付け部45の周方向における位置が合わせられる。この位置合わせにより、下筒部34における係合孔35が、外ハウジング部材15(組み付け部)における係合突部18の上方に位置するようになる。この状態で被組み付け部45が下降させられ、中間ハウジング部材26が外ハウジング部材15内に挿入されるとともに、カバー32の下筒部34が外ハウジング部材15の上部に対し、外側から被せられる。外ハウジング部材15が、中間ハウジング部材26の筒部27と、カバー32の下筒部34とによって挟み込まれる。被組み付け部45の下降に伴い、各係合孔35が、対応する係合突部18に接近する。そして、各係合孔35が各係合突部18と略同じ高さ位置に到達するまで被組み付け部45が下降させられると、各係合孔35が、対応する係合突部18に係合される。この係合により、被組み付け部45が外ハウジング部材15(組み付け部)に組み付けられた状態となる。被組み付け部45が外ハウジング部材15に合体されることで、燃料遮断弁13が組み立てられる。
【0030】
このようにして、燃料遮断弁13の組み立てと、その燃料遮断弁13の波消し板50に対する結合とが同時に行なわれる。
第1実施形態では、燃料遮断弁13の構成部品の1つである外ハウジング部材15が波消し板50の一部として本体壁部51に一体で形成されている。そのため、特許文献1とは異なり、波消し板に設けられた保持部に燃料遮断弁を組み付ける作業が不要となり、その分、組み付け作業性が特許文献1よりも一層高くなる。
【0031】
また、燃料遮断弁13を波消し板50に組み付けるための保持部(アタッチメント)が不要となり、その分、特許文献1よりも部品点数が低減される。さらには、特許文献1とは異なり、保持部から燃料装置が外れる懸念がなくなる。
【0032】
ところで、上記波消し板50及び燃料遮断弁13は次のように作用する。
図4及び
図5に示すように、液体燃料の液面が大きく変動しない平常時において、同液面が液位L1よりも低い液位L2に位置すると、フロートバルブ41の重量がスプリング44の付勢力に打ち勝ち、バルブシート43が連通開口23よりも下方に位置し、同連通開口23が開放される。
【0033】
従って、燃料タンク11内のガスは、上述したように、下筒部34の貫通孔(図示略)、外ハウジング部材15の貫通孔(図示略)、外ハウジング部材15の下側開口17から同外ハウジング部材15の内部に入る。このガスは、貫通孔39を通って内ハウジング部材21内に入る。上記ガスは、連通開口23からニップル37及びチューブ38を通過してキャニスタ10に流入する。この流入により、燃料タンク11のガス圧の上昇が抑制される。
【0034】
一方、自動車が凹凸の大きな道路を走行したり、カーブを走行したりした場合(車両揺動時)には、液体燃料が大きく波立つ。液体燃料が燃料遮断弁13内に入り込み、キャニスタ10に流入することが抑制される。すなわち、フロート42が液体燃料によって浮き上がり、バルブシート43が連通開口23を塞ぎ、カットオフバルブとして機能する。
【0035】
また、給油ガンを用いた給油時において、燃料タンク11内の液体燃料の液面が液位L1よりも低い場合、例えば、液位L2に位置する場合には、燃料タンク11内の気相部のガスは、液面の上昇に伴って外ハウジング部材15の下側開口17から流入してキャニスタ10へ流れる。そのため、燃料タンク11の内圧の上昇が抑制されつつ給油が続行される。
【0036】
そして、給油時において、液体燃料の液面が液位L1、すなわち、外ハウジング部材15の下側開口17まで上昇すると、燃料タンク11内の気相部のガスは、外部との連通を遮断される。従って、燃料タンク11内のガス圧が上昇し、燃料タンク11の気相部と内ハウジング部材21内の気相部との間に差圧が発生し、内ハウジング部材21内の液体燃料の液面が上昇して、燃料タンク11内の液体燃料の液面より高くなる。これに伴いフロート42が浮き上がり、バルブシート43が連通開口23を塞ぐことで通気が遮断される。この遮断により、燃料タンク11内のガス圧が一気に高まり、満タンであることが検知されて給油ガンのオートストップが促される。すなわち、燃料遮断弁13は、燃料タンク11内の液体燃料の液面が外ハウジング部材15の下側開口17(液位L1)に到達した後に燃料タンク11内のガス圧が上昇することで、液体燃料が満タンであることを検知する。
【0037】
ここで、
図1~
図3に示すように、波消し板50における本体壁部51は、燃料タンク11内に貯留された液体燃料が孔52を通過する際にその液体燃料に抵抗を付与することで、液体燃料の波立ちを抑制する。
【0038】
燃料遮断弁13における外ハウジング部材15の下側開口17は、上述したように満タンを検知する機能の一部を担っている。この満タンを検知する精度を高めるには、液体燃料の液面を安定させることが重要である。
【0039】
この点、第1実施形態では、外ハウジング部材15が本体壁部51に接近した状態で波消し板50に一体に形成されている。そのため、本体壁部51による波打ちの抑制効果が外ハウジング部材15に及びやすく、外ハウジング部材15の近傍の液体燃料の液面が安定する。そのため、外ハウジング部材15が本体壁部51から大きく遠ざかった箇所に配置された場合に比べ、満タンを精度よく検知することができる。
【0040】
なお、仮に、外ハウジング部材15が本体壁部51に接近しすぎると、液体燃料の液面が液位L1よりも低い液位L2に位置していても、表面張力により、液体燃料が外ハウジング部材15と本体壁部51との隙間を上昇するおそれがある。この場合、上昇した燃料により、誤って満タンであると検知されるおそれがある。
【0041】
この点、第1実施形態では、外ハウジング部材15が本体壁部51から5mm以上離されている。そのため、外ハウジング部材15と本体壁部51との隙間を液体燃料が表面張力により上昇することが抑制される。液体燃料の液面が安定するため、表面張力による液面上昇が原因で満タンであると誤検知されるのを抑制することができる。上述の効果は、車両が傾斜等している場合等に発揮される。
【0042】
さらに、
図1に示すように、波消し板50には、外ハウジング部材15に面するように本体壁部51から延出する側壁部54が形成されている。本体壁部51と側壁部54とによって囲まれた外ハウジング部材15の近傍では、液面が安定する。そのため、この点においても、満タンを精度よく検知することができる。
【0043】
さらに、第1実施形態では、2つの側壁部54が外ハウジング部材15を挟んでいる。そのため、外ハウジング部材15を本体壁部51及び両側壁部54によって三方から囲むことになり、外ハウジング部材15の近傍では、液面がより一層安定する。従って、満タンを一層精度よく検知することができる。このように、第1実施形態によると、液面が波立つことによる影響を小さくしたうえで、満タンの検知を精度よく行なうことができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、燃料装置の組み付け構造の第2実施形態について、
図6を参照して説明する。
第2実施形態では、燃料遮断弁13の構成部品のうち、カバー32が組み付け部とされている。そして、このカバー32が波消し板50の一部として、本体壁部51において、同波消し板50に一体に形成されている。カバー32は、フランジ部36において本体壁部51に連結されている。カバー32の下筒部34は、本体壁部51から離間している。
【0045】
燃料遮断弁13の残りの構成部品は、被組み付け部61として、上記カバー32(組み付け部)に組み付けられている。被組み付け部61には、上記ハウジング14、フロートバルブ41等が含まれる。
【0046】
上記組み付けは、カバー32(組み付け部)における下筒部34に形成された複数の係合孔35に対し、被組み付け部61の外ハウジング部材15に形成された複数の係合突部18が係合されることによりなされている。カバー32の下筒部34が本体壁部51から離間していることから、カバー32に被組み付け部61が組み付けられた状態では、外ハウジング部材15が本体壁部51から離間する。
【0047】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第2実施形態では、燃料遮断弁13の複数の構成部品のうち、波消し板50に一体に形成される対象が、外ハウジング部材15からカバー32に変更される点で第1実施形態と異なるものの、波消し板50に一体に形成された組み付け部(カバー32)に被組み付け部61が組み付けられる点で第1実施形態と共通する。そのため、第2実施形態によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、燃料装置の組み付け構造の第3実施形態について、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0049】
第3実施形態では、第1実施形態とは異なる形状を有する波消し板62が用いられている。波消し板62は、組み付け部としての外ハウジング部材15と、外ハウジング部材15を間に挟む板状の一対の本体壁部63とを備えている。一対の本体壁部63は、外ハウジング部材15の径方向に直線状に配置されている。各本体壁部63は、当該本体壁部63を厚み方向に貫通する複数の孔64を有している。各本体壁部63には、上下方向に互いに離間した複数の補強リブ65が形成されている。各補強リブ65は、対応する本体壁部63を厚み方向の両側から挟んでおり、外ハウジング部材15に繋がっている。このようにして、波消し板62には、燃料遮断弁13の構成部品の1つである外ハウジング部材15が一体で形成されている。
【0050】
燃料遮断弁13の残りの構成部品は、被組み付け部45として、波消し板62の外ハウジング部材15(組み付け部)に組み付けられている。この組み付けは、第1実施形態と同様に、外ハウジング部材15に設けられた複数の係合突部18に対し、カバー32に形成された複数の係合孔35を係合させることによってなされている。また、燃料遮断弁13は、カバー32に形成された被嵌合部32aと、燃料タンク11に形成された図示しない嵌合部とが嵌合されることによって、燃料タンク11に組み付けられる。
【0051】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第3実施形態では、燃料遮断弁13の複数の構成部品のうち、外ハウジング部材15(組み付け部)が一体で形成される波消し板62の構成が第1実施形態における波消し板50の構成と異なるものの、外ハウジング部材15(組み付け部)に燃料遮断弁13の被組み付け部45が組み付けられる点で第1実施形態と共通する。そのため、第3実施形態によっても、特許文献1とは異なり、波消し板に設けられた保持部に燃料遮断弁を組み付ける作業が不要であるため、組み付け作業性をさらに高める効果が得られる。
【0052】
また、本実施形態においても、液体燃料の液面が安定し、満タンを検知する精度が高まる効果が得られる。
(第4実施形態)
次に、燃料装置の組み付け構造の第4実施形態について、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0053】
第4実施形態では、燃料装置として、カットオフバルブとしての機能を有する燃料遮断弁66が用いられている。
そして、燃料遮断弁66の構成部品のうちの一つ、より詳しくは、一体底部69が組み付け部67として、本体壁部51において波消し板50に一体に形成されている。燃料遮断弁66の残りの構成部品は被組み付け部68として、波消し板50の上記組み付け部67に組み付けられている。この組み付けは、第1実施形態と同様に、係合孔に係合突部を係合させることによってなされてもよい。被組み付け部68における内ハウジング部材21は開口部21aを有している。
【0054】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第4実施形態では、燃料遮断弁66の構成が第1実施形態の燃料遮断弁13と異なるものの、波消し板50に一体に形成された組み付け部67に燃料遮断弁66の被組み付け部68が組み付けられる点で第1実施形態と共通する。そのため、第4実施形態によっても、特許文献1とは異なり、波消し板に設けられた保持部に燃料遮断弁を組み付ける作業が不要であるため、組み付け作業性を一層高める効果が得られる。また、燃料遮断弁66における一体底部69が波消し板50に一体で形成されているため、燃料遮断弁66内に液体燃料が流入するのを抑制することができる。
【0055】
(第5実施形態)
次に、燃料装置の組み付け構造の第5実施形態について、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0056】
第5実施形態では、燃料遮断弁66の構成部品のうち、組み付け部71及び被組み付け部72が、第4実施形態における組み付け部67及び被組み付け部68とは異なるものに変更されている。そして、組み付け部71、より詳しくはカバー32が波消し板50の一部として、本体壁部51において同波消し板50に一体に形成されている。燃料遮断弁66の残りの構成部品は、被組み付け部72として、上記組み付け部71に組み付けられている。この組み付けは、第1実施形態と同様に、係合孔に係合突部を係合させることによってなされてもよい。
【0057】
上記以外の構成は第4実施形態と同様である。そのため、第4実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第5実施形態では、組み付け部71及び被組み付け部72が第4実施形態における組み付け部67及び被組み付け部68とは異なるものの、波消し板50に一体に形成された組み付け部71に燃料遮断弁66の被組み付け部72が組み付けられる点で第4実施形態と共通する。そのため、第5実施形態によっても、特許文献1とは異なり、波消し板に設けられた保持部に燃料遮断弁を組み付ける作業が不要であるため、組み付け作業性を一層高める効果が得られる。
【0058】
(第6実施形態)
次に、燃料装置の組み付け構造の第6実施形態について、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0059】
第6実施形態では、燃料装置として、上記燃料遮断弁13,66に代えて気液分離装置73が用いられている。気液分離装置73は、燃料タンク11とキャニスタ10との間に介在される。気液分離装置73は、燃料タンク11とキャニスタ10とを通気するとともに、燃料タンク11からキャニスタ10への液体燃料の流出を規制するための装置であり、複数の構成部品を組み付けることによって構成されている。気液分離装置73の構成部品の1つは組み付け部74とされている。そして、この組み付け部74が波消し板50の一部として、本体壁部51において同波消し板50に一体に形成されている。気液分離装置73の残りの構成部品は、被組み付け部75として、上記組み付け部74に組み付けられている。この組み付けは、第1実施形態と同様に、係合孔に係合突部を係合させることによってなされてもよい。
【0060】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第6実施形態では、燃料装置が第1実施形態の燃料遮断弁13から気液分離装置73に変わるものの、波消し板50に一体に形成された組み付け部74に気液分離装置73の被組み付け部75が組み付けられる点で第1実施形態と共通する。そのため、第6実施形態によっても、特許文献1とは異なり、波消し板に設けられた保持部に気液分離装置を組み付ける作業が不要であるため、組み付け作業性を一層高める効果が得られる。
【0061】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・
図15に示すように、第1実施形態の波消し板50における一方の側壁部54が省略されてもよい。この場合であっても、一つの側壁部54と本体壁部51とによって組み付け部(外ハウジング部材15)を二方向から囲むことができる。そのため、両方の側壁部54がともに省略された場合に比べ、液体燃料の液面を安定させ、満タンを検知する精度を高めることができる。
【0062】
また、図示はしないが、両方の側壁部54がともに省略されてもよい。この場合であっても、組み付け部(外ハウジング部材15)が本体壁部51から大きく遠ざかった箇所に配置される場合に比べ、同組み付け部(外ハウジング部材15)の近くの本体壁部51によって液体燃料の液面を安定させ、満タンを検知する精度を高めることができる。
【0063】
・燃料遮断弁は、満タン検知バルブとしての機能、及びカットオフバルブとしての機能のうち、どちらか一方、又はその両方を有するものであってもよい。
・組み付け部に対する被組み付け部の組み付けのために、係合孔に係合突部を係合させる係合構造以外の係合構造が用いられてもよい。
【0064】
・波消し板50は、溶着以外にも嵌合等の固定方法によって燃料タンク11内に固定されてもよい。
・第4実施形態及び第5実施形態においては、内ハウジング部材21が組み付け部として波消し板50に一体に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…キャニスタ、11…燃料タンク、13…燃料遮断弁(燃料装置)、14…ハウジング、15…外ハウジング部材(第1実施形態の組み付け部)、17…下側開口、18…係合突部(係合部)、23…連通開口、32…カバー(第2実施形態の組み付け部)、34…下筒部、35…係合孔(被係合部)、39…貫通孔、41…フロートバルブ、45…被組み付け部(第1実施形態)、50…波消し板、51…本体壁部、53…連結部、54…側壁部、61…被組み付け部(第2実施形態)、66…燃料遮断弁(第4実施形態の燃料装置)、67…組み付け部(第4実施形態)、68…被組み付け部(第4実施形態)、71…組み付け部(第5実施形態)、72…被組み付け部(第5実施形態)、73…気液分離装置(第6実施形態の燃料装置)、74…組み付け部(第6実施形態)、75…被組み付け部(第6実施形態)。