IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鳥害防止具 図1
  • 特許-鳥害防止具 図2
  • 特許-鳥害防止具 図3
  • 特許-鳥害防止具 図4
  • 特許-鳥害防止具 図5
  • 特許-鳥害防止具 図6
  • 特許-鳥害防止具 図7
  • 特許-鳥害防止具 図8
  • 特許-鳥害防止具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20221109BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A01M29/32
H02G7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019036647
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137482
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158445(JP,A)
【文献】特開2012-10675(JP,A)
【文献】特開2020-115750(JP,A)
【文献】特開2020-74689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M29/00-29/34
H02G 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を開口し、真直に延びる管状部材と、
前記管状部材の先端部側から基端部側に向けて、前記管状部材の軸方向に一定の間隔を設けて多段に配置され、前記管状部材の外周から放射状に突出すると共に、軸中心が前記管状部材の軸中心と傾斜状態で交差する導出孔を開口している複数の分岐部材と、
前記管状部材の内部に挿通自在に配置した主軸部材と、
基端部を前記主軸部材の外周に固定し、先端部側が前記導出孔に導かれて前記分岐部材の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる、屈曲自在な前記分岐部材と同数の枝棒と、
前記枝棒の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材と、を備え、
前記主軸部材が前記管状部材の基端部側に向かって移動した状態では、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径し、
前記主軸部材が前記管状部材の先端部側に向かって移動した状態では、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径する、鳥害防止具。
【請求項2】
複数の前記分岐部材は、前記管状部材の軸方向に二段に配置している、請求項1記載の鳥害防止具。
【請求項3】
前記管状部材が起立した状態で、前記管状部材の他端部を支持する支持部を一端部側に有し、腕金に着脱自在な保持部を他端部側に有する腕金取り付け金具を更に備えている、請求項1又は2記載の鳥害防止具。
【請求項4】
前記管状部材に対して、前記主軸部材を軸方向に所定の位置で停止できるロック機構を更に備え、
前記ロック機構は、
前記主軸部材の軸方向に連続し、複数の波状の襞を外周に連設したベローズ軸部と、
前記管状部材の内部に配置され、前記ベローズ軸部の襞に転動自在に当接できると共に、前記襞と前記襞の間の窪み部に前記ベローズ軸部の外周方向から中心部に向かって力を付勢した球体と、を含んでいる、請求項1から3のいずれかに記載の鳥害防止具。
【請求項5】
前記主軸部材は、開閉する一対の把持腕を先端部に有する絶縁操作棒で操作できるグリップを基端部に有している、請求項1から4のいずれかに記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具に関する。特に、カラスや鳩などの鳥類が電柱上に巣作りすることを防止する鳥害防止具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カラスのような鳥類が電柱に設置した設備に営巣すると、この巣が原因となって停電が発生する心配がある。例えば、鳥類が巣作りのために、針金などを電柱の設備に運んできた場合には、この針金が電線に接触して、短絡が発生する心配があった。
【0003】
このような鳥害を防止するため、傘状に骨組みした防巣具を電柱に設置した腕金に取り付けることで、鳥類の飛来及び営巣を防止する鳥害防止具が知られている。
【0004】
従来技術による傘形の鳥害防止具は、鉛直状態に配置された主軸部材と、基端部を主軸部材の外周に固定し、主軸部材の周囲に下り傾斜した状態で放射状に延びる複数の枝棒とで構成している。一方、鳥類が営巣可能な電柱上の空間は、腕金の取り付け状況及び開閉器又は変圧器などの有無により異なっている。このため、従来技術による鳥害防止具は、電柱の装柱状況によっては、営巣可能な空間が残り、鳥害を有効に防止できない心配があった。
【0005】
従来技術による鳥害防止具は、このような不具合があることから、電柱の装柱状況に対応し、必要な空間に自由に枝棒を延設できるようにし、鳥類の飛来及び営巣を確実に防止できるようにした鳥害防止具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-110571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9は、従来技術による鳥害防止具の装柱状態を示す斜視図である。なお、本願の図9は、特許文献1の図9に相当している。
【0008】
図9を参照すると、電柱Pは、その上部に一組の腕金A・Aを水平状態で固定している。ストラップStは、ピン碍子Piを介して、腕金Aに固定されている。一組の腕金A・Aの両側には、一組の耐張碍子Si・Siを配置している。一組の耐張碍子Si・Siは、揺動自在に互いに連結している。一方の耐張碍子Siは、ストラップStを介して、腕金Aに連結している。他方の耐張碍子Siは、引留クランプCiを揺動自在に連結している。
【0009】
図9を参照すると、引留クランプCiは、絶縁カバーで覆われている。引留クランプCiは、その内部で架空配電線(以下、電線という)Wを挟持している。図9に示した引留め装柱は、電線Wを挟持する引留クランプCiに連結した耐張碍子Siを電柱Pに支持した腕金Aに取り付けて、電線Wを電柱Pに支持している。一対の引留クランプCi・Ciの間には、張力を要することなく電線Wを架設している。電柱Pを迂回する電線Wの部位は、例えば、縁線Weと呼ばれている。なお、特許文献1には、縁線Weを図示していないが、実態の多くは、縁線Weを配設している。
【0010】
図9を参照すると、鳥害防止具9は、鉛直状態に配置された主軸部材91、主軸部材91の軸方向に連設された複数の分岐部材92、及び、分岐部材92から下り傾斜した状態で、基端部が分岐部材92に固定された枝棒93を備えている。
【0011】
図9を参照すると、腕金Aには、腕金取り付け金具Brを介して、鳥害防止具9を固定している。腕金取り付け金具Brの先端部側に設けた筒部に、主軸部材91の下端部を挿入することで、主軸部材91を鉛直状態に配置できる。又、複数の枝棒93を放射状に配置することで、鳥類の飛来及び営巣を防止できる。枝棒93は、下向きに傾斜した状態で支持されているので、巣作りのための針金などが運び込まれても、これが傾斜に沿って落下し、営巣を困難にできる。
【0012】
図9を参照して、特許文献1による鳥害防止具9は、カッターを用いて、枝棒93を適当な長さに簡単に切断できるので、開閉器や変圧器などに接触しないように、かつ、電柱P上の営巣のおそれのある空間に複数の枝棒93を自由に延設できる、としている。
【0013】
特許文献1による鳥害防止具9は、腕金Aの上方から鳥害防止具9を降ろすことで、腕金取り付け金具Brに固定しているが、腕金Aの下方から鳥害防止具9を持ち上げるほうが作業性がよい。これは、傘状に骨組みした既存の防巣具も同様である。
【0014】
しかし、腕金の下方から鳥害防止具を持ち上げると、一組の縁線We・Weの間を通過必要があり、放射状に拡がった複数の枝棒が邪魔になって、一組の縁線We・Weの間を通過することが困難である、という問題がある。
【0015】
一組の縁線We・Weの間に、鳥害防止具を無理矢理に通過させようとすると、縁線Weを絶縁シートなどの防具で事前に覆う必要があるので、作業工程を増やすという問題がある。一組の縁線の間を容易に通過できる鳥害防止具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、一組の縁線の間を容易に通過でき、一組の縁線の間を通過後は、鳥類が電柱上に巣作りすることを防止する鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、真直に延びる管状部材、管状部材の軸方向に多段に配置し、管状部材の外周から放射状に突出した複数の分岐部材、管状部材の内部に挿通自在に配置した主軸部材、基端部を主軸部材の外周に固定し、先端部側が分岐部材の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる複数の枝棒、及び、枝棒の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材で、鳥害防止具を構成し、一組の縁線の間に鳥害防止具を通過させるときは、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径し、鳥害防止具を腕金に設置するときは、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径することで、上記の課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな鳥害防止具を発明するに至った。
【0018】
(1)本発明による鳥害防止具は、両端部を開口し、真直に延びる管状部材と、前記管状部材の先端部側から基端部側に向けて、前記管状部材の軸方向に一定の間隔を設けて多段に配置され、前記管状部材の外周から放射状に突出すると共に、軸中心が前記管状部材の軸中心と傾斜状態で交差する導出孔を開口している複数の分岐部材と、前記管状部材の内部に挿通自在に配置した主軸部材と、基端部を前記主軸部材の外周に固定し、先端部側が前記導出孔に導かれて前記分岐部材の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる、屈曲自在な前記分岐部材と同数の枝棒と、前記枝棒の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材と、を備え、前記主軸部材が前記管状部材の基端部側に向かって移動した状態では、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径し、前記主軸部材が前記管状部材の先端部側に向かって移動した状態では、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径する。
【0019】
(2)複数の前記分岐部材は、前記管状部材の軸方向に二段に配置していることが好ましい。
【0020】
(3)本発明による鳥害防止具は、前記管状部材が起立した状態で、前記管状部材の他端部を支持する支持部を一端部側に有し、腕金に着脱自在な保持部を他端部側に有する腕金取り付け金具を更に備えていることが好ましい。
【0021】
(4)記管状部材に対して、前記主軸部材を軸方向に所定の位置で停止できるロック機構を更に備え、前記ロック機構は、前記主軸部材の軸方向に連続し、複数の波状の襞を外周に連設したベローズ軸部と、前記管状部材の内部に配置され、前記ベローズ軸部の襞に転動自在に当接できると共に、前記襞と前記襞の間の窪み部に前記ベローズ軸部の外周方向から中心部に向かって力を付勢した球体と、を含んでいることが好ましい。
【0022】
(5)前記主軸部材は、開閉する一対の把持腕を先端部に有する絶縁操作棒で操作できるグリップを基端部に有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による鳥害防止具は、真直に延びる管状部材、管状部材の軸方向に多段に配置し、管状部材の外周から放射状に突出した複数の分岐部材、管状部材の内部に挿通自在に配置した主軸部材、基端部を主軸部材の外周に固定し、先端部側が分岐部材の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる複数の枝棒、及び、枝棒の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材で、鳥害防止具を構成し、主軸部材を管状部材の先端部側に向かって移動することで、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径でき、一組の縁線の間に鳥害防止具を容易に通過でき、主軸部材を管状部材の基端部側に向かって移動することで、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径でき、鳥類の営巣を困難にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による鳥害防止具の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による鳥害防止具の正面図であり、鳥害防止具の開傘状態図である。
図3】前記実施形態による鳥害防止具の正面図であり、鳥害防止具の閉傘状態図である。
図4】前記実施形態による鳥害防止具の基端部側の要部を拡大した斜視分解組立図である。
図5】前記実施形態による鳥害防止具の平面図であり、図5(A)は、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径した状態図、図5(B)は、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径した状態図である。
図6】前記実施形態による鳥害防止具に備わる腕金取り付け金具の構成を示す図であり、図6(A)は、腕金取り付け金具の正面図、図6(B)は、腕金取り付け金具の平面図、図6(C)は、腕金取り付け金具の右側面図、図6(D)は、腕金取り付け金具の左側面図、図6(E)は、腕金取り付け金具の下面図である。
図7】本発明に係る絶縁操作棒の一例による構成を示す正面図である。
図8図7の要部を拡大した正面図である。
図9】従来技術による鳥害防止具の装柱状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[鳥害防止具の構成]
最初に、本発明の一実施形態による鳥害防止具の構成を説明する。なお、従来技術で使用した符号と同じ符号を有する構成品は、その作用を同じとするので、以下説明を省略することがある。
【0026】
(全体構成)
次に、本発明の一実施形態による鳥害防止具の全体構成を説明する。図1から図4を参照すると、本発明の一実施形態による鳥害防止具10は、真直に延びる管状部材11と管状部材11の軸方向に二段に配置し、管状部材11の外周から放射状に突出した一組の分岐部材12・13を備えている。又、鳥害防止具10は、主軸部材15と複数の屈曲自在な枝棒16を備えている。更に、鳥害防止具10は、枝棒16の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材17・17を備えている。
【0027】
図1から図4を参照すると、管状部材11は、両端部を開口している。一組の分岐部材12・13は、管状部材11の先端部側から基端部側に向けて、管状部材11の軸方向に一定の間隔を設けて、二段に配置している。これらの分岐部材12・13は、管状部材11の外周から放射状に突出している。これらの分岐部材12・13・14は、導出孔Hiを開口している。導出孔Hiは、その軸中心が管状部材11の軸中心と傾斜状態で交差している。
【0028】
図1から図4を参照すると、主軸部材15は、管状部材11の内部に挿通自在に配置している。複数の枝棒16は、それらの基端部を主軸部材15の外周に固定している。又、枝棒16は、その先端部側が導出孔Hiに導かれて、分岐部材12・13・14の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる。
【0029】
又、図1又は図2及び図5(A)を参照すると、枝棒16の先端部側が導出孔Hiから突出した状態では、一対の針葉部材17・17は、枝棒16の外方に向けて湾曲している。一方、図1又は図3及び図5(B)を参照すると、枝棒16の先端部側が導出孔Hiの内部に引き込まれた状態では、一対の針葉部材17・17は、導出孔Hiに導かれて、収束している。枝棒16には、一対の針葉部材17・17を収容する溝を設けることが好ましい。
【0030】
図1又は図2を参照して、主軸部材15が管状部材11の基端部側に向かって移動した状態では、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを拡径している。一方、図3を参照して、主軸部材15が管状部材11の先端部側に向かって移動した状態では、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径している。
【0031】
図1から図3を参照すると、実施形態による鳥害防止具10は、真直に延びる管状部材11、管状部材11の軸方向に多段に配置し、管状部材11の外周から放射状に突出した複数の分岐部材12・13、管状部材11の内部に挿通自在に配置した主軸部材15、基端部を主軸部材15の外周に固定し、先端部側が分岐部材12・13の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる複数の枝棒16、及び、枝棒の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材17で構成している。
【0032】
図9を参照して、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させるときは、主軸部材15を管状部材11の先端部側に向かって移動することで、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径できる(図3参照)。これにより、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を容易に通過できる。
【0033】
図9を参照して、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させた後に、主軸部材15を管状部材11の基端部側に向かって移動することで、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを拡径できる(図1又は図2参照)。図1又は図2に示した状態では、複数の枝棒16及び一対の針葉部材17・17が下り傾斜しているので、鳥類の営巣を困難にできる。
【0034】
(管状部材の構成)
次に、実施形態による管状部材11の構成を説明する。図1から図4を参照すると、管状部材11は、円盤状の鍔部11fと管状の延出部11tを含んでいる。
【0035】
(鍔部の構成)
図1から図4を参照すると、鍔部11fは、管状部材11の基端縁に接合されている。管状部材11と鍔部11fを一体に成形してもよい。鍔部11fは、その外径を管状部材11の外径より大きく形成している。鍔部11fは、後述するロック機構1Rを構成する球体11bを内部に保持している(図2又は図4参照)。又、鍔部11fは、後述するロック機構1Rを構成するベローズ軸部15bを進退自在に中心部に保持している。
【0036】
(延出部の構成)
図1から図4を参照すると、延出部11tは、鍔部11fの底面から管状部材11と同軸上に突出している。延出部11tは、その外径を管状部材11の外径より小さく形成していることが好ましい。延出部11tは、ベローズ軸部15bが内部に挿通されている(図2又は図4参照)。又、延出部11tは、雄ねじ部111を外周に形成している(図2又は図3参照)。雄ねじ部111には、ナット11nを螺合できる(図1参照)。
【0037】
(分岐部材の構成)
次に、実施形態による分岐部材12・13の構成を説明する。図1から図4を参照すると、鳥害防止具10は、その上段に配置した複数の分岐部材12、下段に配置した複数の分岐部材13を備えている。なお、分岐部材12・13は、同じものであるが説明の便宜上符号を変えて区別した。
【0038】
図5を参照すると、複数の分岐部材12は、それらの先端部が十字状に延びている。複数の分岐部材13は、それらの先端部が十字状に延びている。しかし、複数の分岐部材13は、平面視では、複数の分岐部材12と略45度、変位している。つまり、複数の分岐部材12・13は、平面視では、八等分された状態で配置されている。
【0039】
図1から図4を参照すると、一組の分岐部材12・13は、それらの形状を同一に構成しているので、以下、分岐部材13を代表して説明する。図2又は図3を参照すると、分岐部材13は、その基端部を内部に空洞を有する円錐台状に形成している。又、分岐部材13は、その先端部側を円筒状に形成している。導出孔Hiは、管状部材11の内部と連通している。そして、導出孔Hiは、枝棒16及び一対の針葉部材17・17を進退自在に案内できる。
【0040】
図1から図4を参照すると、管状部材11と分岐部材13は、別体で構成してもよく、分岐部材13の基端部を管状部材11の外周に接合してもよい。管状部材11と分岐部材13は、一体で成形することもできる。
【0041】
(主軸部材の構成)
次に、実施形態による主軸部材15の構成を説明する。図1から図3を参照すると、主軸部材15は、円盤状のフランジ部15fを頭部に有している。フランジ部15fは、その外径を管状部材11の外径と略同じに形成している。
【0042】
図2を参照して、主軸部材15を管状部材11の基端部側に向かって移動すると、フランジ部15fが管状部材11の先端縁に当接することで、管状部材11に対して主軸部材15の停止位置を規定できる。
【0043】
図4を参照すると、主軸部材15は、外周から円弧状に穿設した八つの溝15dを形成している。これらの溝15dは、主軸部材15の先端縁から基端縁に至り、穿設されている。これらの溝15dには、接着などの接合手段を用いて、枝棒16の基端部を固定している。又、これらの溝15dには、枝棒16の先端部側を導入できる。
【0044】
図2から図4を参照すると、主軸部材15は、ベローズ軸部15bを基端部から同軸上に突出している。ベローズ軸部15bは、複数の波状の襞151を外周に連設している(図4参照)。ベローズ軸部15bは、雄ねじ部15sを基端部から突出している(図4参照)。雄ねじ部15sには、グリップ15gを締結している。
【0045】
後述する絶縁操作棒5に備わる一対の把持腕5a・5bを用いて(図7又は図8参照)、グリップ15gを把持できる。後述する絶縁操作棒5を操作して、主軸部材15を管状部材11の基端部側に向かって移動でき(図2参照)、又、主軸部材15を管状部材11の先端部側に向かって移動できる(図3参照)。
【0046】
(ロック機構の構成)
次に、実施形態による鳥害防止具10に備わるロック機構1Rの構成を説明する。図2又は図4を参照すると、ロック機構1Rは、管状部材11に対して、主軸部材15を軸方向に所定の位置で停止できる。
【0047】
図2又は図4を参照すると、ロック機構1Rは、ベローズ軸部15bと球体11bを含んでいる。ベローズ軸部15bは、主軸部材15の軸方向に連続している。又、ベローズ軸部15bは、複数の波状の襞151を外周に連設している。
【0048】
図4を参照すると、球体11bは、管状部材11の鍔部11fの内部に配置されている。球体11bは、圧縮コイルばね11sで力を付勢されている。球体11b及び圧縮コイルばね11sを収容した収容室は、止栓11pで封鎖されている。そして、球体11bは、ベローズ軸部15bの襞151に転動自在に当接できる。
【0049】
図4を参照すると、球体11bは、襞151と襞151の間の窪み部152に、ベローズ軸部15bの外周方向から中心部に向かって力を付勢している。これにより、管状部材11に対して、ベローズ軸部15bを軸方向に移動すると、管状部材11に対して、主軸部材15を任意の位置で停止できる。つまり、複数の枝棒16を分岐部材12・13・14の先端部から任意の長さで一斉に進退できる。
【0050】
(管状部材の構成)
次に、実施形態による枝棒16の構成を説明する。図1から図4を参照すると、枝棒16は、絶縁性を有する合成樹脂からなることが好ましい。絶縁性を有する合成樹脂を成形して、円柱状の枝棒16を得ることができる。
【0051】
又、図1から図4を参照すると、枝棒16は、弾性を有する合成樹脂からなることが好ましい。枝棒16の先端部側が導出孔Hiに導かれて屈曲し、分岐部材12・13・14の先端縁から進退自在に突出できる。枝棒16の基端部は、接着又は溶着などの接合手段を用いて、主軸部材15の外周に固定できる。この場合、枝棒16の基端部は、溝15dに嵌合しておくことが好ましい(図4参照)。
【0052】
(針葉部材の構成)
次に、実施形態による針葉部材17の構成を説明する。図1から図3及び図5を参照すると、針葉部材17は、絶縁性を有する合成樹脂からなることが好ましい。絶縁性を有する合成樹脂を成形して、円柱状の針葉部材17を得ることができる。
【0053】
又、図1から図3及び図5を参照すると、針葉部材17は、弾性を有する合成樹脂からなることが好ましい。針葉部材17が導出孔Hiに導かれて収束し、分岐部材12・13の先端縁から進退自在に突出できる。針葉部材17の基端部は、接着又は溶着などの接合手段を用いて、枝棒16の外周に固定できる。この場合、枝棒16の先端部側は、針葉部材17を収容する溝を設けておくことが好ましい。
【0054】
(腕金取り付け金具の構成)
引き続き、鳥害防止具10の構成を説明する。図1又は図6を参照すると、鳥害防止具10は、腕金取り付け金具2を更に備えている。腕金取り付け金具2は、支持部2sを一端部側に有し、保持部2kを他端部側に有している。
【0055】
図1を参照すると、支持部2sは、管状部材11が起立した状態で、管状部材11の他端部を支持できる。保持部2kは、腕金Aに着脱できる。
【0056】
図1又は図6を参照すると、腕金取り付け金具2は、C形チャンネル状の第1把持金具21とクランク状に屈曲した第2把持金具22を備えている。又、腕金取り付け金具2は、ボルト部材23と把持片24を備えている。
【0057】
図1又は図6を参照すると、第2把持金具22の中間部は、第1把持金具21の底面に溶接により接合されている。第1把持金具21の一端部側と第2把持金具22の一端部側は、対向配置されている。
【0058】
図6(B)を参照すると、第1把持金具21の一端部側には、取り付け穴21hを開口している。図6(E)を参照すると、第2把持金具22の一端部側には、取り付け穴22hを開口している。取り付け穴21hと取り付け穴22hは、同心上に配置されている。又、取り付け穴21hには、管状部材11の延出部11tを挿入できる(図1参照)。取り付け穴22hからは、ベローズ軸部15bを突出できる(図1参照)。
【0059】
図2又は図3を参照すると、延出部11tの他端部側には、雄ねじ部111を形成している。延出部11tの他端部側を取り付け穴21hに挿入して、一組のナット11n・11nを雄ねじ部111に締結することで、支持部2sは、管状部材11が起立した状態で、管状部材11の他端部を支持できる。
【0060】
又、図1又は図6を参照すると、第1把持金具21の他端部側と第2把持金具22の他端部側は、対向配置されている。第1把持金具21の他端部側と第2把持金具22の他端部側の間には、腕金Aを外周方向から導入できる。
【0061】
図1又は図6を参照すると、ボルト部材23は、回動軸23sを頭部にT字状に接合している。回動軸23sの両端部は、第1把持金具21の折り曲げ片に回動自在に連結している。図5(A)の想像線で示すように、ボルト部材23を反時計方向に回動したときは、腕金取り付け金具2の保持部2kに腕金Aを導入できる。
【0062】
一方、図1又は図6を参照して、腕金取り付け金具2の保持部2kに腕金Aを導入後に、ボルト部材23を時計方向に回動し、ボルト部材23にナット部材を締結することで、第1把持金具21の他端部側と第2把持金具22の他端部側で腕金Aを挟持できる。
【0063】
図1又は図6を参照すると、把持片24は、第2把持金具22の中間部に溶接により接合されている。後述する絶縁操作棒5を用いて、把持片24を把持できる。そして、鳥害防止具10に腕金取り付け金具2を取り付けた状態で、鳥害防止具10を移動できる。
【0064】
(絶縁操作棒の構成)
次に、腕金取り付け金具2付き鳥害防止具10を操作するための絶縁操作棒の構成を説明する。
【0065】
図7又は図8を参照すると、絶縁操作棒5は、長尺の操作棒51と把持工具52で構成している。又、絶縁操作棒5は、作動棒53を備えている。把持工具52は、操作棒51の先端部に取り付けている。
【0066】
図7又は図8を参照すると、把持工具52は、開閉する一対の湾曲した把持腕5a・5bで構成している。そして、一方の把持腕5aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕5bは、一方の把持腕5aの基端部に設けた回動軸5cを中心に回動する可動腕となっている。
【0067】
図7を参照すると、作動棒53は、操作棒51に沿って保持されている。作動棒53の先端部は、他方の把持腕5bに回動自在に連結している。そして、作動棒53の基端部に設けた操作レバー54を操作すると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開閉できる。絶縁操作棒5は、操作棒51及び作動棒53の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0068】
図7を参照して、操作レバー54を握って、操作レバー54を操作棒51に近づけると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを閉じることができる。操作レバー54を解放すると、操作レバー54に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開くことができる。図7又は図8は、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bが最大に開いた状態を示している。
【0069】
図7又は図8を参照して、一方の把持腕5aは、先細り状の把持爪51aを突出している。把持爪51aは、把持面50aを形成している。把持面50aは、回動軸5cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕5bは、先細り状の把持爪51bを突出している。把持爪51bは、把持面50bを形成している。把持面50bは、把持面50aと所定の開角を設けて配置されている。図6又は図7を参照して、操作レバー54を握ると、把持面50bを把持面50aに近づけることができる。
【0070】
図7又は図8に示した絶縁操作棒5は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪51a・51bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0071】
次に、鳥害防止具10の説明を続行する。図3を参照して、鳥害防止具10の仮想の円周Cvを縮径した状態から、主軸部材15を管状部材11の基端部側に向かって移動することで、鳥害防止具10の仮想の円周Cvを拡径できる(図1又は図2参照)。
【0072】
図2から図4を参照して、絶縁操作棒5に備わる一対の把持腕5a・5bを用いて(図6又は図7参照)、グリップ15gを把持できる。絶縁操作棒5を用いて、主軸部材15を操作することができる。絶縁操作棒5を用いて、鳥害防止具10の仮想の円周Cvを拡径又は縮径できる。
【0073】
[鳥害防止具の作用]
次に、実施形態による鳥害防止具10の作用及び効果を説明する。
【0074】
図1又は図3を参照すると、鳥害防止具10は、管状部材11の他端部に腕金取り付け金具2を固定した状態で、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径しておくことが好ましい(図3参照)。
【0075】
絶縁操作棒5を用いて(図7又は図8参照)、腕金取り付け金具2に設けた把持片24を把持し、腕金取り付け金具2付き鳥害防止具10を上昇させることで、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を容易に通過できる(図9参照)。
【0076】
図1を参照して、腕金取り付け金具2を腕金Aに固定後は、絶縁操作棒5を用いて(図7又は図8参照)、グリップ15gを把持し、複数の枝棒16付き主軸部材15を管状部材11の基端部側に向かって移動することで、鳥害防止具10の仮想の円周Cvを拡径できる(図1又は図2参照)。
【0077】
図2又は図4を参照して、鳥害防止具10は、管状部材11に対して、複数の枝棒16付き主軸部材15を軸方向に所定の位置で停止できるロック機構1Rを備えているので、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvが拡径した状態を保持できる(図1又は図2参照)。複数の枝棒16付き主軸部材15を管状部材11の先端部側に向かって移動することで、鳥害防止具10の仮想の円周Cvを縮径できる(図3参照)。
【0078】
実施形態による鳥害防止具10は、真直に延びる管状部材11、管状部材11の軸方向に二段に配置し、管状部材11の外周から放射状に突出した複数の分岐部材12・13、管状部材11の内部に挿通自在に配置した主軸部材15、基端部を主軸部材15の外周に固定し、先端部側が分岐部材12・13・14の先端縁から外周方向に下り傾斜した状態で進退自在に突出できる複数の枝棒16、及び、枝棒16の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材17・17で構成している。
【0079】
実施形態による鳥害防止具10は、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径することで、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を容易に通過でき、複数の枝棒16の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを拡径することで、鳥類の営巣を困難にできる。
【0080】
実施形態による鳥害防止具10は、管状部材11に対して、複数の枝棒16付き主軸部材15を軸方向に所定の位置で停止できるロック機構1Rを備えているので、複数の枝棒16の突出長を任意に設定できる。
【0081】
図5を参照すると、実施形態による鳥害防止具10は、枝棒16の中間部から先端部に向けて二股に分岐した針葉部材17・17を備えているので、従来技術による傘形の鳥害防止具のように、主軸部材から多数の枝棒を配置することなく、枝棒の本数を削減して、鳥類が営巣困難な空間を確保できる。
【0082】
本発明による鳥害防止具は、次のような効果が期待できる。
(1)飛来防止棒の突出長を最適な状態で設定できる。
(2)縁線の状態を観察しながら、飛来防止棒の突出長を調整できる。
(3)鳥害防止具を腕金に取り付け後に、飛来防止棒の突出長を調整できる。
(4)邪魔になる飛来防止棒をあらかじめ撤去・切断する必要が無くなる。
(5)枝棒の本数を削減して、鳥類が営巣困難な空間を確保できる。
【0083】
本発明による鳥害防止具は、八本の飛来防止棒を管状部材の外周に放射状に配置した実施形態を開示したが、これらの飛来防止棒は、増減することも考えられる。
【符号の説明】
【0084】
10 鳥害防止具
11 管状部材
12・13 分岐部材
15 主軸部材
16 枝棒
17 一対の針葉部材
Cv 仮想の円周
Hi 導出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9