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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20221109BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A01M29/32
H02G7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019036840
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137484
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-99965(JP,A)
【文献】特開2014-158445(JP,A)
【文献】特開2005-287144(JP,A)
【文献】特開2014-117269(JP,A)
【文献】特開2018-85939(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181975(JP,U)
【文献】実開昭57-62580(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/00-29/34
H02G 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真直に延びる主軸部材、及び、前記主軸部材の軸方向に一定の間隔を設けて多段に配置し、前記主軸部材の外周から先端部側が下り傾斜した状態で放射状に突出した複数の屈曲自在な枝棒を有する防止具本体と、
略平行に配置した一対の挟持片、及び、一対の前記挟持片の基端部同士を連結した連結片を有し、一対の前記挟持片の先端部側から腕金を内部に導入して保持する腕金取り付け具と、を備え、
前記腕金取り付け具は、複数の前記枝棒の基端部側を含む前記主軸部材を先端部から導入自在に開口した規制穴を一対の前記挟持片の先端部側に有し、
複数の前記枝棒が前記規制穴を通過中は、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径し、
複数の前記枝棒が前記規制穴を通過後は、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径する、鳥害防止具。
【請求項2】
前記防止具本体は、
前記主軸部材の基端部側に配置し、上部側の前記挟持片に開口した前記規制穴を通過後に、仮想の円周を拡径して前記主軸部材の戻りを阻止する複数の逆止め棒と、
前記主軸部材の基端部側に着脱自在に固定し、複数の前記逆止め棒と協働して、前記主軸部材を起立した状態で前記腕金取り付け具に保持する締結具と、を更に備えている、請求項1記載の鳥害防止具。
【請求項3】
前記腕金取り付け具は、前記挟持片の外面から内部に傾斜した状態で配置され、前記腕金からの脱落を阻止する一つ以上のランスを前記挟持片に備えている、請求項1又は2記載の鳥害防止具。
【請求項4】
前記腕金取り付け具は、間接活線工事用の絶縁操作棒で把持できる把持部を更に有し、
前記把持部は、基端縁を下部側の前記挟持片の底部に回動自在に連結した可動把持板からなる、請求項1から3のいずれかに記載の鳥害防止具。
【請求項5】
前記可動把持板は、前記主軸部材の基端部を導入でき、前記主軸部材の基端部に螺合したナット部材の脱落を防止するナット脱落防止用の長穴を中央部に開口している、請求項4記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具に関する。特に、カラスや鳩などの鳥類が電柱上に巣作りすることを防止する鳥害防止具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カラスのような鳥類が電柱に設置した設備に営巣すると、この巣が原因となって停電が発生する心配がある。例えば、鳥類が巣作りのために、針金などを電柱の設備に運んできた場合には、この針金が電線に接触して、短絡が発生する心配があった。
【0003】
このような鳥害を防止するため、傘状に骨組みした防巣具を電柱に設置した腕金に取り付けることで、鳥類の飛来及び営巣を防止する鳥害防止具が知られている。
【0004】
従来技術による傘形の鳥害防止具は、鉛直状態に配置された主軸部材と、基端部を主軸部材の外周に固定し、主軸部材の周囲に下り傾斜した状態で放射状に延びる複数の枝棒とで構成している。一方、鳥類が営巣可能な電柱上の空間は、腕金の取り付け状況及び開閉器又は変圧器などの有無により異なっている。このため、従来技術による鳥害防止具は、電柱の装柱状況によっては、営巣可能な空間が残り、鳥害を有効に防止できない心配があった。
【0005】
従来技術による鳥害防止具は、このような不具合があることから、電柱の装柱状況に対応し、必要な空間に自由に枝棒を延設できるようにし、鳥類の飛来及び営巣を確実に防止できるようにした鳥害防止具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-110571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10は、従来技術による鳥害防止具の装柱状態を示す斜視図である。なお、本願の図10は、特許文献1の図9に相当している。
【0008】
図10を参照すると、電柱Pは、その上部に一組の腕金A・Aを水平状態で固定している。ストラップStは、ピン碍子Piを介して、腕金Aに固定されている。一組の腕金A・Aの両側には、一組の耐張碍子Si・Siを配置している。一組の耐張碍子Si・Siは、揺動自在に互いに連結している。一方の耐張碍子Siは、ストラップStを介して、腕金Aに連結している。他方の耐張碍子Siは、引留クランプCiを揺動自在に連結している。
【0009】
図10を参照すると、引留クランプCiは、絶縁カバーで覆われている。引留クランプCiは、その内部で架空配電線(以下、電線という)Wを挟持している。図10に示した引留め装柱は、電線Wを挟持する引留クランプCiに連結した耐張碍子Siを電柱Pに支持した腕金Aに取り付けて、電線Wを電柱Pに支持している。一対の引留クランプCi・Ciの間には、張力を要することなく電線Wを架設している。電柱Pを迂回する電線Wの部位は、例えば、縁線Weと呼ばれている。なお、特許文献1には、縁線Weを図示していないが、実態の多くは、縁線Weを配設している。
【0010】
図10を参照すると、鳥害防止具9は、鉛直状態に配置された主軸部材91、主軸部材91の軸方向に連設された複数の分岐部材92、及び、分岐部材92から下り傾斜した状態で、基端部が分岐部材92に固定された枝棒93を備えている。
【0011】
図10を参照すると、腕金Aには、腕金取り付け金具Brを介して、鳥害防止具9を固定している。腕金取り付け金具Brの先端部側に設けた筒部に、主軸部材91の下端部を挿入することで、主軸部材91を鉛直状態に配置できる。又、複数の枝棒93を放射状に配置することで、鳥類の飛来及び営巣を防止できる。枝棒93は、下向きに傾斜した状態で支持されているので、巣作りのための針金などが運び込まれても、これが傾斜に沿って落下し、営巣を困難にできる。
【0012】
図10を参照して、特許文献1による鳥害防止具9は、カッターを用いて、枝棒93を適当な長さに簡単に切断できるので、開閉器や変圧器などに接触しないように、かつ、電柱P上の営巣のおそれのある空間に複数の枝棒93を自由に延設できる、としている。
【0013】
特許文献1による鳥害防止具9は、腕金Aの上方から鳥害防止具9を降ろすことで、腕金取り付け金具Brに固定しているが、腕金Aの下方から鳥害防止具9を持ち上げるほうが作業性がよい。これは、傘状に骨組みした既存の防巣具も同様である。
【0014】
しかし、腕金の下方から鳥害防止具を持ち上げると、一組の縁線We・Weの間を通過必要があり、放射状に拡がった複数の枝棒が邪魔になって、一組の縁線We・Weの間を通過することが困難である、という問題がある。
【0015】
一組の縁線We・Weの間に、鳥害防止具を無理矢理に通過させようとすると、縁線Weを絶縁シートなどの防具で事前に覆う必要があるので、作業工程を増やすという問題がある。一組の縁線の間を容易に通過できる鳥害防止具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、一組の縁線の間を容易に通過でき、一組の縁線の間を通過後は、鳥類が電柱上に巣作りすることを防止する鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、真直に延びる主軸部材、及び、主軸部材の軸方向に多段に配置し、主軸部材の外周から放射状に突出した複数の屈曲自在な枝棒を有する防止具本体と、主軸部材を先端部から導入自在に開口した規制穴を一対の挟持片の先端部側に有する腕金取り付け具で、鳥害防止具を構成し、一組の縁線の間に鳥害防止具を通過させるときは、複数の枝棒を規制穴に通過させて、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径し、複数の枝棒が規制穴を通過後は、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周が拡径することで、鳥害防止具を腕金に設置できると考え、これに基づいて、以下のような新たな鳥害防止具を発明するに至った。
【0018】
(1)本発明による鳥害防止具は、真直に延びる主軸部材、及び、前記主軸部材の軸方向に一定の間隔を設けて多段に配置し、前記主軸部材の外周から先端部側が下り傾斜した状態で放射状に突出した複数の屈曲自在な枝棒を有する防止具本体と、略平行に配置した一対の挟持片、及び、一対の前記挟持片の基端部同士を連結した連結片を有し、一対の前記挟持片の先端部側から腕金を内部に導入して保持する腕金取り付け具と、を備え、前記腕金取り付け具は、複数の前記枝棒の基端部側を含む前記主軸部材を先端部から導入自在に開口した規制穴を一対の前記挟持片の先端部側に有し、複数の前記枝棒が前記規制穴を通過中は、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径し、複数の前記枝棒が前記規制穴を通過後は、複数の前記枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径する。
【0019】
(2)前記防止具本体は、前記主軸部材の基端部側に配置し、上部側の前記挟持片に開口した前記規制穴を通過後に、仮想の円周を拡径して前記主軸部材の戻りを阻止する複数の逆止め棒と、前記主軸部材の基端部側に着脱自在に固定し、複数の前記逆止め棒と協働して、前記主軸部材を起立した状態で前記腕金取り付け具に保持する締結具と、を更に備えていることが好ましい。
【0020】
(3)前記腕金取り付け具は、前記挟持片の外面から内部に傾斜した状態で配置され、前記腕金からの脱落を阻止する一つ以上のランスを前記挟持片に備えていることが好ましい。
【0021】
(4)前記腕金取り付け具は、間接活線工事用の絶縁操作棒で把持できる把持部を更に有し、前記把持部は、基端縁を下部側の前記挟持片の底部に回動自在に連結した可動把持板からなることが好ましい。
【0022】
(5)前記可動把持板は、前記主軸部材の基端部を導入でき、前記主軸部材の基端部に螺合したナット部材の脱落を防止するナット脱落防止用の長穴を中央部に開口していることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による鳥害防止具は、真直に延びる主軸部材の軸方向に多段に配置し、主軸部材の外周から放射状に突出した複数の屈曲自在な枝棒を有する防止具本体と、主軸部材を先端部から導入自在に開口した規制穴を一対の挟持片の先端部側に有する腕金取り付け具と、を備え、一組の縁線の間に鳥害防止具を通過させるときは、複数の枝棒を規制穴に通過させて、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周を縮径し、複数の枝棒が規制穴を通過後は、複数の枝棒の先端縁を結ぶ仮想の円周が拡径することで、鳥害防止具を腕金に容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による鳥害防止具の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による鳥害防止具に備わる防止具本体を拡大した斜視図である。
図3】前記実施形態による鳥害防止具に備わる腕金取り付け具の構成を示す図であり、図3(A)は、腕金取り付け具の右側面図、図3(B)は、図3(A)の平面図、図3(C)は、図3(A)の背面図、図3(D)は、図3(A)の下面図である。
図4】前記実施形態による鳥害防止具の構成を示す右側面図であり、鳥害防止具を腕金に装柱した状態図である。
図5】前記実施形態による鳥害防止具に備わる腕金取り付け具の使用状態を示す図であり、腕金取り付け具を腕金に装着する前の状態図である。
図6】前記実施形態による鳥害防止具に備わる腕金取り付け具の使用状態を示す図であり、腕金取り付け具を腕金の端部に装着した状態図である。
図7】前記実施形態による鳥害防止具の使用状態を示す図であり、腕金取り付け具の下方から防止具本体を規制穴に挿入する前の状態図である。
図8】本発明による鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を示す正面図である。
図9図8の要部を拡大した正面図である。
図10】従来技術による鳥害防止具の装柱状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
本発明による腕金用鳥害防止具の構成を説明する前に、本発明による鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を説明する。
【0027】
(絶縁操作棒の構成)
図8又は図9を参照すると、絶縁操作棒5は、長尺の操作棒51と工具部52で構成している。又、絶縁操作棒5は、作動棒53を備えている。工具部52は、操作棒51の先端部に取り付けている。
【0028】
図8又は図9を参照すると、工具部52は、開閉する一対の湾曲した把持腕5a・5bで構成している。そして、一方の把持腕5aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕5bは、一方の把持腕5aの基端部に設けた回動軸5cを中心に回動する可動腕となっている。
【0029】
図8を参照すると、作動棒53は、操作棒51に沿って保持されている。作動棒53の先端部は、他方の把持腕5bに回動自在に連結している。そして、作動棒53の基端部に設けた操作レバー54を操作すると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開閉できる。絶縁操作棒5は、操作棒51及び作動棒53の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0030】
図8を参照して、操作レバー54を握って、操作レバー54を操作棒51に近づけると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを閉じることができる。操作レバー54を解放すると、操作レバー54に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開くことができる。図8又は図9は、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bが最大に開いた状態を示している。
【0031】
図8又は図9を参照して、一方の把持腕5aは、先細り状の把持爪51aを突出している。把持爪51aは、把持面50aを形成している。把持面50aは、回動軸5cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕5bは、先細り状の把持爪51bを突出している。把持爪51bは、把持面50bを形成している。把持面50bは、把持面50aと所定の開角を設けて配置されている。図8又は図9を参照して、操作レバー54を握ると、把持面50bを把持面50aに近づけることができる。
【0032】
図8又は図9に示した絶縁操作棒5は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪51a・51bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0033】
[鳥害防止具の構成]
(全体構成)
次に、本発明の一実施形態による鳥害防止具の構成を説明する。図1から図4を参照すると、本発明の一実施形態による鳥害防止具10は、腕金Aに取り付けることができる。腕金Aは、略水平状態で電柱Pに装架されている(図10参照)。
【0034】
図1から図4を参照すると、鳥害防止具10は、防止具本体1と腕金取り付け具2を備えている。防止具本体1は、真直に延びる主軸部材11と複数の屈曲自在な枝棒12を備えている。
【0035】
図1又は図2及び図4を参照すると、複数の枝棒12は、主軸部材11の先端部側から基端部側に向けて、主軸部材11の軸方向に一定の間隔を設けて、多段に配置している。これらの枝棒12は、主軸部材11の外周から放射状に突出している。又、これらの枝棒12は、先端部側が下り傾斜した状態で主軸部材11の外周から突出している。
【0036】
図1又は図3及び図4を参照すると、腕金取り付け具2は、一対の挟持片2t・2uと連結片2cを有している。一対の挟持片2t・2uは、略平行に配置している。連結片2cは、一対の挟持片2t・2uの基端部同士を連結している。腕金取り付け具2は、一対の挟持片2t・2uの先端部側から腕金Aを内部に導入して保持できる。
【0037】
図1又は図3及び図4を参照すると、腕金取り付け具2は、規制穴2hを一対の挟持片2t・2uの先端部側に開口している(図3参照)。これらの規制穴2hには、複数の枝棒12の基端部側を含む主軸部材11を先端部から導入できる(図7参照)。
【0038】
図7を参照して、複数の枝棒12が規制穴2hを通過中は、複数の枝棒12の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径できる。図1又は図4を参照して、複数の枝棒12が規制穴2hを通過後は(図7参照)、複数の枝棒12の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを拡径できる。
【0039】
実施形態による鳥害防止具10は、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させるときは(図10参照)、複数の枝棒12を規制穴2hに通過させて、複数の枝棒12の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径し、複数の枝棒12が規制穴2hを通過後は、複数の枝棒12の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvが拡径することで、鳥害防止具10を腕金Aに容易に設置できる。
【0040】
(防止具本体の構成)
次に、実施形態による防止具本体1の構成を説明する。図1又は図2及び図4を参照すると、防止具本体1は、半球状のキャップ部材13、屈曲自在な複数の逆止め棒14、及び、締結具であるナット部材15を更に備えている。
【0041】
(キャップ部材の構成)
図1又は図2及び図4を参照すると、キャップ部材13は、主軸部材11の先端面に着脱自在に固定できる。図2を参照すると、キャップ部材13は、雄ねじ部13mを底部から突出している。一方、図2を参照すると、主軸部材11は、雄ねじ部13mと螺合する雌ねじ部11fを先端面に螺設している。
【0042】
図1又は図4を参照すると、キャップ部材13の外径は、複数の枝棒12の基端部側を含む主軸部材11の外径より僅かに大きく形成している。キャップ部材13を主軸部材11の先端に固定することで、主軸部材11をその先端部から容易に導入できる(図7参照)。
【0043】
(主軸部材の構成)
図1又は図2及び図4を参照すると、主軸部材11は、絶縁性を有する合成樹脂からなることが好ましい。絶縁性を有する合成樹脂を成形して、円柱状の主軸部材11を得ることができる。
【0044】
図2を参照すると、主軸部材11は、外周から円弧状に穿設した八つの溝11dを形成している。これらの溝11dは、主軸部材11の先端縁から基端部側に至り、穿設されている。これらの溝11dには、接着などの接合手段を用いて、枝棒12の基端部を固定している。
【0045】
(枝棒の構成)
図1又は図2及び図4を参照すると、枝棒12は、絶縁性を有する合成樹脂からなることが好ましい。絶縁性を有する合成樹脂を成形して、屈曲した枝棒12を得ることができる。
【0046】
図1又は図2及び図4を参照すると、複数の枝棒12は、それらの先端部が十字状に延びている。実施の形態では、複数の枝棒12は、主軸部材11の軸方向に、三段に配置している。複数の枝棒12は、平面視では、上段の複数の枝棒12と中段の複数の枝棒12とは、略45度、変位している。中段の複数の枝棒12と下段の複数の枝棒12とは、平面視では、同じに配置されている。つまり、複数の枝棒12は、平面視では、八等分された状態で配置されている。
【0047】
(逆止め棒の構成)
図1又は図2及び図4を参照すると、複数の逆止め棒14は、それらの基端部側が溝11dに嵌合した状態で、それらの基端部側が主軸部材11に固定されている。複数の逆止め棒14は、主軸部材11の外周から放射状に突出している。又、これらの逆止め棒14は、先端部側が下り傾斜した状態で主軸部材11の外周から突出している。
【0048】
図7を参照して、主軸部材11をその先端部から規制穴2hに導入し、複数の逆止め棒14が規制穴2hを通過後は、複数の逆止め棒14が弾性復帰して、複数の逆止め棒14の先端縁を結ぶ仮想の円周を拡径できる。そして、複数の逆止め棒14は、規制穴2hの周縁に当接して、主軸部材11の戻りを阻止できる(図1又は図4参照)。
【0049】
(ナット部材の構成)
図2又は図4を参照すると、ナット部材15は、主軸部材11の基端部側に着脱自在に固定できる。主軸部材11は、雄ねじ部11mを基端部側に形成している。ナット部材15は、主軸部材11の所定の位置で停止できるように、雄ねじ部11mと締結している。
【0050】
図7を参照して、主軸部材11をその先端部から規制穴2hに導入すると、ナット部材15は、下部側の挟持片2uに底面側から当接できる。そして、ナット部材15は、複数の逆止め棒14と協働して、主軸部材11を起立した状態で、腕金取り付け具2に保持できる(図1又は図4参照)。
【0051】
(腕金取り付け具の構成)
次に、実施形態による腕金取り付け具2の構成を説明する。図1又は図3及び図4を参照すると、腕金取り付け具2は、一対一組のランス2r・2rを一対の挟持片2t・2uに備えている。
【0052】
(ランスの構成)
図3を参照すると、一方のランス2r・2rは、上部側の挟持片2tの外面から腕金取り付け具2の内部に傾斜した状態で配置されている。他方のランス2r・2rは、下部側の挟持片2uの外面から腕金取り付け具2の内部に傾斜した状態で配置されている。
【0053】
図5から図6を参照して、腕金取り付け具2の開口側から、腕金Aを腕金取り付け具2の内部に相対的に導入すると、対向する一対のランス2r・2rを互い拡げることができる。そして、連結片2cの内壁に腕金Aが当接した状態では、一対一組のランス2r・2rが弾性復帰して、一対一組のランス2r・2rの先端縁を腕金Aに対向できる。これにより、一対一組のランス2r・2rは、腕金Aからの脱落を阻止できる。
【0054】
(把持部の構成)
図1又は図3及び図4を参照すると、腕金取り付け具2は、下部側の挟持片2uの底部から突出した把持部21を有している。把持部21は、間接活線工事用の絶縁操作棒5の工具部52に設けた一対の把持腕5a・5bで把持できる(図8又は図9参照)。把持部21は、基端縁をヒンジ21hで下部側の挟持片2uに回動自在に連結した可動把持板からなっている。
【0055】
図3(C)を参照すると、把持部21は、長穴211を中央部に開口している。図4を参照して、把持部21を時計方向に回動すると、長穴211には、主軸部材11の雄ねじ部11mを先端部から導入できる(図1参照)。なお、ヒンジ21hは、把持部21の姿勢が維持できるように、緊締されている。
【0056】
図1又は図3及び図4を参照すると、把持部21は、主軸部材11の雄ねじ部11mに係合できる長穴211を開口しているので、既存のナット脱落防止用キャップ(図示せず)を用いることなく、ナット部材15の脱落を防止できる。
【0057】
[鳥害防止具の作用]
次に、実施形態による鳥害防止具10の操作手順を説明しながら、鳥害防止具10の作用及び効果を説明する。
【0058】
最初に、図5を参照して、一対の把持腕5a・5b(図8又は図9参照)で把持部21を把持し、腕金取り付け具2の開口側と腕金Aの一方の側面を対向配置する。次に、一対の把持腕5a・5bで把持部21を把持した状態で、腕金取り付け具2を腕金Aに向かって移動する。図6に示した状態では、腕金取り付け具2の開口側に、腕金Aが相対的に導入されている。
【0059】
次に、図6に示した状態から、腕金Aに対して、腕金取り付け具2を左側に移動することで、腕金Aを腕金取り付け具2の奥部に相対的に移動できる(図7参照)。図7に示した状態では、一対一組のランス2r・2rが腕金Aからの脱落を阻止している。
【0060】
次に、図7を参照して、一対の把持腕5a・5b(図8又は図9参照)で主軸部材11の基端部を把持し、複数の枝棒12の基端部側を含む主軸部材11を先端部から規制穴2hに導入する。この場合、一対の把持腕5a・5b(図8又は図9参照)を用いて、把持部21を反時計方向に回動して、退避させておくことが好ましい(図7参照)。
【0061】
次に、図1又は図4を参照して、複数の逆止め棒14が規制穴2hの周縁に当接して、主軸部材11の戻りを阻止すると共に、ナット部材15が挟持片2uの底面側から当接することで、複数の逆止め棒14と協働して、主軸部材11を起立した状態で、腕金取り付け具2に保持できる(図1又は図4参照)。
【0062】
次に、図4を参照して、一対の把持腕5a・5b(図8又は図9参照)を用いて、把持部21を時計方向に回動することで、主軸部材11の雄ねじ部11mに長穴211を係合することで(図1参照)、ナット部材15の脱落を防止できる。そして、一連の操作手順を終了する。
【0063】
実施形態による鳥害防止具10は、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させるときは(図10参照)、複数の枝棒12を規制穴2hに通過させて、複数の枝棒12の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvを縮径し、複数の枝棒12が規制穴2hを通過後は、複数の枝棒12の先端縁を結ぶ仮想の円周Cvが拡径することで、鳥害防止具10を腕金Aに容易に設置できる。
【0064】
実施形態による鳥害防止具10は、挟持片2t・2uに開口した規制穴2hを通過後に、仮想の円周を拡径して主軸部材11の戻りを阻止する複数の逆止め棒14と、複数の逆止め棒14と協働して、挟持片2uに当接するナット部材15と、を備えているので、主軸部材11を起立した状態で腕金取り付け具2に容易に保持できる。
【0065】
実施形態による腕金取り付け具2は、挟持片2t・2uの外面から内部に傾斜した状態で配置され、腕金Aからの脱落を阻止する複数のランス2rを挟持片2t・2uに備えているので、腕金Aからの脱落を阻止できる。
【0066】
実施形態による把持部21は、腕金取り付け具2の下部から突出しているので、絶縁操作棒5で下方からアプローチし易いという効果がある。
【0067】
又、把持部21は、主軸部材11の雄ねじ部11mに係合できる長穴211を開口しているので、既存のナット脱落防止用キャップ(図示せず)を用いることなく、ナット部材15の脱落を防止できる。
【0068】
本発明による鳥害防止具は、以下の効果が期待できる。
(1)間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、傘形の鳥害防止具を腕金に容易に取り付けることができる。
(2)鳥害防止器を取付ける時の作業箇所が高圧線よりも高い位置にいくことがない。
(3)高所作業車のバケットでの作業位置を低くすることができる。
(4)作業者が不用意に高圧線に触れて感電する心配がなくなる。
【符号の説明】
【0069】
1 防止具本体
2 腕金取り付け具
2c 連結片
2h 規制穴
2t・2u 一対の挟持片
10 鳥害防止具
11 主軸部材
12 複数の枝棒
A 腕金
Cv 仮想の円周
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10