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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20221109BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20221109BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08G73/10
C08F8/14
C08F8/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019041295
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2019172976
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018057747
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 岳
(72)【発明者】
【氏名】馬場 修
(72)【発明者】
【氏名】小森 悠佑
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-327695(JP,A)
【文献】特開2014-181334(JP,A)
【文献】特開2000-212216(JP,A)
【文献】特開2015-179121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08F 8/14
C08F 8/30
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有する樹脂と、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち少なくとも1種類の溶媒を含有し、該カルボキシ基を有する樹脂の濃度が5質量%以上50質量%以下で粘度が5cP以上1000cP以下の樹脂溶液Iに対して、エステル化剤を添加し、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基をエステル化するエステル化工程、を含み、
前記エステル化剤が、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、およびN,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、樹脂の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、または炭素数1~6のアルコキシ基を表し、RおよびRは独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(3)中、RからR12は独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(4)中、R13およびR14は独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1または2である。)
【請求項2】
前記カルボキシ基を有する樹脂が、一般式(5)で表される構造を有する樹脂である、請求項1に記載の樹脂の製造方法。
【化2】
(一般式(5)中、Xは2~8価の有機基、Yは2~11価の有機基を表す。R15およびR16は、エステル結合を有する炭素数2~20の有機基、フェノール性水酸基またはスルホン酸基を表し、それぞれ単一のものであっても異なるものが混在していてもよい。p、qおよびsは0~3の整数を表し、rは0~6の整数を表す。ただしq+s>0である。)
【請求項3】
前記エステル化工程によって得られた樹脂溶液IIを水または水溶液と混合し、樹脂を析出させる工程を含む、請求項1または2に記載の樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂溶液IIを水または水溶液と混合し、樹脂を析出させる工程の後、樹脂を水または水溶液で洗浄する工程、および樹脂を乾燥する工程を順に含み、前記樹脂を乾燥する工程において、樹脂中の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒の総含有量を樹脂全量の5質量%以下にする、請求項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、(S1)~(S7)の各式で表される化合物の少なくとも1種類である、請求項1~のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
【化3】
【請求項6】
一般式(1)および一般式(2)で表される溶媒のうち少なくとも1種類と、一般式(3)、一般式(4)および一般式(6)で表される溶媒のうち少なくとも1種類とを含有する前記樹脂溶液Iに対して、前記エステル化工程を行う、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
【化4】
(一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、または炭素数1~6のアルコキシ基を表し、RおよびRは独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(3)中、RからR12は独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(4)中、R13およびR14は独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1または2である。一般式(6)中、R17は2価のヘテロ原子を表し、R18炭素数1~4のアルキル基を表し、nは1または2である。)
【請求項7】
前記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および一般式(6)で表される溶媒が、(S1)~(S8)の各式で表される化合物の少なくとも1種類である、請求項に記載の樹脂の製造方法。
【化5】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボキシ基をエステル化する工程を含む樹脂の製造方法に関する。詳しくは、半導体素子等の電子部品の表面保護膜、層間絶縁膜、有機EL表示素子の絶縁層として適用可能な樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは容易に膜形成が可能であり、耐熱性、機械特性に優れていることから、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜として広く利用されている。ポリイミドを表面保護膜、層間絶縁膜として使用する場合には、スルーホールの形成などの目的でポリイミド膜をパターン加工する必要がある。そこで、耐熱性樹脂、または熱処理などによって耐熱樹脂に変換可能な前駆体を含み、パターン加工可能な感光性樹脂組成物が検討されてきた。
【0003】
ポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物に関しては、そのパターン加工性の向上のために、ポリアミド酸樹脂中のカルボキシ基の一部または全部をエステル化する方法が知られている。特に、アルカリ現像液に対する溶解性(以下、「アルカリ溶解性」とも記載する)を容易に調節可能な方法として、カルボキシ基を有する樹脂をN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(以下、DMFDMAとも記載する)、N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタールなどで処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このとき用いられる溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPとも記載する)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが好ましく、その他、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(以下、DMIとも記載する)、ジメチルスルホキシドなどの溶媒を用いることが可能であり(特許文献1参照)、N,N-ジメチルイソブチルアミド(以下、DMIBとも記載する)、N,N-ジメチルプロパンアミド(以下、DMPAとも記載する)なども用いられている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-119520号公報
【文献】国際公開第2017/068936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記エステル化反応において、樹脂溶液I(以下、エステル化前のカルボキシ基含有樹脂溶液を樹脂溶液Iと記載し、エステル化工程後の樹脂溶液を樹脂溶液IIと記載する場合がある。)の樹脂の濃度を高くし、特に15質量%以上にした場合、エステル化効率が顕著に低下するという課題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、樹脂溶液Iの樹脂の濃度が5質量%以上50質量%以下の濃度範囲において、特に15質量%以上の高濃度でも、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基を効率よくエステル化できる、樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の樹脂の製造方法は下記の構成を有する。
[1]カルボキシ基を有する樹脂と、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち少なくとも1種類の溶媒を含有し、該カルボキシ基を有する樹脂の濃度が5質量%以上50質量%以下で粘度が5cP以上1000cP以下の樹脂溶液Iに対して、エステル化剤を添加し、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基をエステル化するエステル化工程、を含む樹脂の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
上記一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、または炭素数1~6のアルコキシ基を表し、RおよびRは独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(3)中、RからR12は独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(4)中、R13およびR14は独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1または2である。
[2]上記カルボキシ基を有する樹脂が、一般式(5)で表される構造を有する樹脂である、[1]に記載の樹脂の製造方法。
【0010】
【化2】
【0011】
上記一般式(5)中、Xは2~8価の有機基、Yは2~11価の有機基を表す。R15およびR16は、エステル結合を有する炭素数1~20の有機基、フェノール性水酸基またはスルホン酸基を表し、それぞれ単一のものであっても異なるものが混在していてもよい。p、qおよびsは0~3の整数を表し、rは0~6の整数を表す。ただしq+s>0である。
[3]上記エステル化剤が、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、およびN,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の樹脂の製造方法。
[4]上記エステル化工程によって得られる樹脂溶液IIを水または水溶液と混合し、樹脂を析出させる工程を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
[5]上記樹脂溶液IIを水または水溶液と混合し、樹脂を析出させる工程の後、樹脂を水または水溶液で洗浄する工程、および樹脂を乾燥する工程を順に含み、前記樹脂を乾燥する工程において、樹脂中の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒の総含有量を樹脂全量の5質量%以下にする、[4]に記載の樹脂の製造方法。
[6]上記溶媒が、(S1)~(S7)の各式で表される化合物の少なくとも1種類である、
[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
【0012】
【化3】
【0013】
[7]一般式(1)および一般式(2)で表される溶媒のうち少なくとも1種類と、一般式(3)、一般式(4)および一般式(6)で表される溶媒のうち少なくとも1種類とを含有する前記樹脂溶液Iに対して、前記エステル化工程を行う、[1]~[5]に記載の樹脂の製造方法。
【0014】
【化4】
【0015】
上記一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、または炭素数1~6のアルコキシ基を表し、RおよびRは独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(3)中、RからR12は独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(4)中、R13およびR14は独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1または2である。一般式(6)中、R17は2価のヘテロ原子を表し、R18炭素数1~4のアルキル基を表し、nは1または2である。
[8]前記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および一般式(6)で表される溶媒が、(S1)~(S8)の各式で表される化合物の少なくとも1種類である、[7]に記載の樹脂の製造方法。
【0016】
【化5】
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、樹脂溶液Iの樹脂の濃度が5質量%以上50質量%以下の濃度範囲において、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基を、効率的にエステル化可能であって、特に、樹脂溶液Iの樹脂の濃度が15質量%以上の高濃度でも、該樹脂溶液中の樹脂のカルボキシ基を、効率よくエステル化できる、樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<エステル化に用いられる溶媒>
本発明の樹脂の製造方法は、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち少なくとも1種類の溶媒を用いて、カルボキシ基を有する樹脂(以下、「カルボキシ基含有樹脂」とも記載する)の少なくとも一部のカルボキシ基をエステル化するエステル化工程を含む樹脂の製造方法である。
【0020】
【化6】
【0021】
上記一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、または炭素数1~6のアルコキシ基を表し、RおよびRは独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表し、RおよびRは独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(3)中、RからR12は独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。一般式(4)中、R13およびR14は独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1または2である。
【0022】
本発明では、上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)表される溶媒のうち、少なくとも1種類の溶媒を使用することが重要である。本発明の上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒を用いると、樹脂溶液Iの樹脂の濃度が5質量%以上50質量%以下の濃度範囲において、エステル化効率が向上し、特に15質量%以上の高濃度においてもエステル化効率が向上する。また、樹脂濃度を50質量%以下とすることで、樹脂溶液Iの粘度を1000cP以下とすることが容易になり、撹拌効率向上させ、エステル化効率が向上する。
【0023】
上記エステル化工程に用いられる溶媒は、上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、および下記一般式(6)で表される溶媒のうち、少なくとも2種類以上を含有することが好ましい。
【0024】
【化7】
【0025】
一般式(6)中、R17は2価のヘテロ原子を表し、R18炭素数1~4のアルキル基を表し、nは1または2である。
【0026】
2種類以上の溶媒の組み合わせとしては、エステル化効率向上の観点で、一般式(1)および一般式(2)で表される溶媒群(T群)のうち少なくとも1種類と、一般式(3)、一般式(4)および一般式(6)で表される溶媒群(U群)のうち少なくとも1種類とを含有する組み合わせが好ましい。
2種類以上の溶媒の混合比率について、T群に属する溶媒の総重量を100質量%としたとき、U群に属する溶媒の総重量は、エステル化効率向上の観点で、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。また、T群に属する溶媒の総重量を100質量%としたとき、U群に属する溶媒の総重量は、エステル化効率向上の観点で、1000質量%以下が好ましく、400質量%以下がより好ましい。
【0027】
上記一般式(1)で表される溶媒の具体例としては、下記の各式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
【化8】
【0029】
上記一般式(2)で表される溶媒の具体例としては、下記の各式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
【化9】
【0031】
上記一般式(3)で表される溶媒の具体例としては、下記の各式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
【化10】
【0033】
上記一般式(4)で表される溶媒の具体例としては、下記の各式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
【化11】
【0035】
上記一般式(6)で表される溶媒の具体例としては、下記の各式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
【化12】
【0037】
上記エステル化工程に用いられる溶媒として、さらに好ましくは、エステル化工程後に得られる樹脂中の残存溶媒量を少なくする観点から、下記(S1)~(S8)の各式で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化13】
【0039】
上記エステル化工程に用いられる溶媒として、特に好ましくは、エステル化工程後に得られる樹脂中の残存溶媒量をさらに少なくする観点から、DMPA(上記S1)、DMIB(上記S2)、および3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(上記S3、以下、MPAとも記載する)を含有する溶媒が挙げられる。
【0040】
上記エステル化工程に用いられる溶媒は、上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)一般式(4)および必要に応じて一般式(6)で表される溶媒以外の溶媒を単独または2種類以上含んでいてもよい。上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および一般式(6)以外の溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホン類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、および水などがあげられるが、これらに限定されない。これら上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および必要に応じて一般式(6)で表される溶媒以外の溶媒の含有量は、上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および必要に応じて一般式(6)で表される溶媒の総質量の20質量%まで含有してもよい。
【0041】
上記エステル化工程に用いられる溶媒は、カルボキシ基含有樹脂の重合に用いてもよく、これによって、樹脂の重合工程とエステル化工程を連続して、ワンポットにて行うことができる。
【0042】
<カルボキシ基含有樹脂>
本発明の製造方法は、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基を、エステル化する工程を含む。樹脂がカルボキシ基を含有することにより、樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。さらに、このカルボキシ基を任意の割合でエステル化することで、該樹脂のアルカリ溶解性を調節することができる。
【0043】
アルカリ可溶性とは、樹脂をγ-ブチロラクトン(以下、GBLとも記載する)に溶解した溶液をシリコンウエハ上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
【0044】
本発明のエステル化工程に用いられるカルボキシ基を有する樹脂は、例えば、ポリアミド酸、アクリル樹脂、ポリペプチド、およびカルド樹脂が挙げられる。さらに、変性することでカルボキシ基を含有させ、本発明のエステル化工程に用いられる樹脂としては、例えば、シクロオレフィン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリシロキサン、ポリベンゾオキサゾール、ポリヒドロキシアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ベンゾシクロブテン、およびフェノール樹脂が挙げられる。これらの中でも、下記一般式(5)で表される構造を主成分とするポリアミド酸であることが好ましい。下記一般式(5)で表される構造を主成分とするポリアミド酸は、前記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)一般式(4)および一般式(6)で表される溶媒と相溶性がよく、エステル化が円滑に進行しやすい。ここで、主成分とは、一般式(5)の構造単位を、樹脂の全構造単位中50モル%以上有することを意味する。
【0045】
【化14】
【0046】
上記一般式(5)中、Xは2~8価の有機基、Yは2~11価の有機基を表す。R15およびR16は、エステル結合を有する炭素数2~20の有機基、フェノール性水酸基またはスルホン酸基を表し、それぞれ単一のものであっても異なるものが混在していてもよい。p、qおよびsは0~3の整数を表し、rは0~6の整数を表す。ただしq+s>0である。
【0047】
一般式(5)で表される構造を主成分とする樹脂は、公知の製造方法に準じて製造することができる。具体的には、テトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどとジアミン、対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンを反応させて得ることができる。
ここで得られたポリアミド酸は、単離することなく、本発明の製造方法でエステル化することができる。また、単離したうえで、本発明の製造方法でエステル化することもできる。
【0048】
上記ポリアミド酸の合成に関して、例えば酸二無水物を用いる場合、用いられる酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および下記に示した構造の酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの環状脂肪族基を含有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0049】
【化15】
【0050】
上記一般式のR19は酸素原子、C(CFまたはC(CHを表す。R20およびR21は独立に水素原子またはヒドロキシ基を表す。
【0051】
上記ポリアミド酸の合成に用いられるジアミンとしては、具体的には、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジヒドロキシベンジジン、3,5-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、これらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物などの芳香族ジアミン、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの環状脂肪族基を含有する脂肪族ジアミンおよび下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0052】
【化16】
【0053】
上記一般式のR19は酸素原子、C(CFまたはC(CHを表す。R20~R23はそれぞれ独立に水素原子またはヒドロキシ基を表す。
【0054】
これらのジアミンは、そのまま使用してもよいし、対応するジイソシアネート化合物やトリメチルシリル化ジアミンとして使用してもよい。
【0055】
また、樹脂の溶液中での保存安定性向上のため、これらの樹脂の末端を、モノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。
モノアミンとしては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0056】
酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシ基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシ基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0057】
樹脂中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を、酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるアミン成分と酸成分に分解し、これをガスクロマトグラフ(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出できる。また、末端封止剤が導入された樹脂を、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や、赤外スペクトル及び13C-NMRスペクトル測定することよっても検出することが可能である。
【0058】
さらに、本発明におけるカルボキシ基含有樹脂は、一般式(5)で表される構造以外の構造を含んでもよい。上記一般式(5)で表される構造以外の構造について、特に限定されないが、例えば、樹脂構造中にポリイミド、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらが共重合した構造から選択される1種以上を有することが、樹脂の耐熱性の観点で好ましい。ポリイミドは、例えば、上記の方法で得られるポリアミド酸や、ポリアミド酸の一部または全部のカルボキシ基をエステル化することで得られるポリアミド酸エステルを、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。ポリベンゾオキサゾール前駆体とは、加熱処理や化学処理によりポリベンゾオキサゾールに変換される樹脂を指し、例えば、ポリヒドロキシアミドなどが挙げられる。例えば、ポリヒドロキシアミドは、ビスアミノフェノールとジカルボン酸、対応するジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができる。ポリベンゾオキサゾールは、例えば、上記の方法で得たポリヒドロキシアミドを、加熱あるいは無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。本発明に好ましく用いられるポリアミドイミド前駆体は、例えば、トリカルボン酸、対応するトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物ハライドなどとジアミンやジイソシアネートを反応させて得ることができる。ポリアミドイミドは、例えば、上記の方法で得た前駆体を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0059】
アクリル樹脂は不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、および、その他のビニル系単量体などを反応させて得ることができる。
また、上記カルボキシ基含有樹脂は、より高いアルカリ溶解性を付与するために、樹脂の構造単位中にカルボキシ基以外の酸性基を有することが好ましい。カルボキシ基以外の酸性基としては、例えば、フェノール性水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。また、カルボキシ基含有樹脂は、撥水性を付与するため、フッ素原子を有することが好ましい。
【0060】
<樹脂溶液I>
本発明における、カルボキシ基含有樹脂と、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち少なくとも1種類の溶媒を含有する樹脂溶液について、エステル化剤を混合する直前の樹脂溶液Iの濃度は、5質量%以上50質量%以下である。
エステル化剤を混合する直前の樹脂溶液Iの濃度は、樹脂溶液I中のカルボキシ基含有樹脂の総質量を樹脂溶液Iの総質量で除して求める。カルボキシ基含有樹脂の重合とエステル化をワンポットで行う場合においては、カルボキシ基含有樹脂のモノマー成分の総質量を樹脂溶液Iの総質量で除して求める。樹脂溶液Iの濃度が、5質量%以上の場合、エステル化効率の向上が達成できる。50質量%の場合、エステル化効率が悪化する傾向にある。さらに好ましい濃度は、エステル化効率の観点で、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、エステル化効率の観点で、45質量%以下が好ましく、34質量%以下がより好ましく、24質量%以下がさらに好ましい。
【0061】
また、エステル化剤を混合する直前の樹脂溶液Iの粘度は、5cP以上1000cP以下である。エステル化剤を混合する直前の樹脂溶液Iの粘度は、エステル化剤を投入する直前の樹脂溶液Iを反応容器から1mL採取し、その採取した樹脂溶液Iの粘度を測定して求める。樹脂溶液Iの粘度は25℃の温度において、E型粘度計を用いて測定する。粘度が5cP以上の場合、エステル化効率の向上が達成できる。1000cP超の場合、エステル化効率が悪化する。さらに好ましい粘度は、エステル化効率の観点で、10cP以上が好ましく、30cP以上がより好ましく、70cP以上がさらに好ましく、また、エステル化効率の観点で、700cP以下が好ましく、300cP以下がより好ましく、130cP以下がより好ましい。
【0062】
<エステル化剤>
本発明の樹脂の製造方法は、エステル化剤によって、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基をエステル化する工程を含む。ここでエステル化剤とは、カルボキシ基を有する化合物に作用し、カルボン酸エステルを生じさせる化合物をいい、一般式(7)または一般式(8)で表される化合物である。
【0063】
【化17】
【0064】
上記一般式(7)中、R24は水素原子または炭素数1以上の1価の有機基を表し、R25は水素原子または炭素数1以上の1価の有機基、含窒素有機基、含酸素有機基のいずれかを表し、R26は炭素数1以上の1価の有機基を表す。一般式(8)中、R27は炭素数1以上の2価の有機基、含窒素有機基、含酸素有機基のいずれかを表し、R28は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
【0065】
エステル化剤としては、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジブチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジベンジルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドビス[2-(トリメチルシリル)エチル]アセタール、N,N-ジメチルアセトアミドジエチルアセタール、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルト安息香酸トリメチル、オルト安息香酸トリエチル等が挙げられる。より好ましいエステル化剤としては、エステル化効率向上の観点から、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタールが挙げられる。これらは単独に用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0066】
また、エステル化反応の反応温度は、好ましくは0℃以上80℃以下であり、より好ましくは10℃以上60℃以下である。反応時間は、好ましくは0.1時間以上20時間以下であり、より好ましくは0.5時間以上5時間以下である。反応温度や反応時間をこのような範囲で適宜調整することで、ポリアミド酸のうち所望の割合をエステル化させることができ、副反応であるイミド化反応も抑えることが可能である。
【0067】
エステル化反応を促進する目的で、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、りん酸等の酸を上記エステル化剤の総量に対して0.01から10モル%の範囲で併せて使用することもできる。
【0068】
カルボキシ基を有する樹脂に対する、上記エステル化剤の使用量は、樹脂中のカルボキシ基を100モル%としたとき、エステル化を進行させる観点で、1モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましく、副反応を抑制する観点から、1000モル%以下が好ましく、500モル%以下がより好ましく、200モル%以下がさらに好ましく、130モル%以下が特に好ましい。
【0069】
<エステル化工程>
本発明におけるエステル化工程について、好ましい例として、カルボキシ基を有する樹脂の少なくとも一部のカルボキシ基をエステル化する方法を以下に述べる。
【0070】
カルボキシ基を有する樹脂と、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち、少なくとも1種類を含む溶媒を混合し、樹脂濃度が5質量%以上50質量%以下で、粘度が5cP以上1000cP以下の樹脂溶液Iを調製する。この樹脂溶液Iを10℃以上60℃以下の温度とし、撹拌しながら、上記エステル化剤を加える。このエステル化反応時の樹脂溶液の撹拌速度は、50rpm以上が好ましい。撹拌速度を50rpm以上とすることで、エステル化効率が向上する。
【0071】
<ワンポットでの重合工程とエステル化工程>
樹脂の重合工程とエステル化工程を連続してワンポットにて行う場合、カルボキシ基含有樹脂を重合した樹脂溶液Iから樹脂を単離することなく、重合後の樹脂溶液Iに直接エステル化剤を添加し、カルボキシ基含有樹脂のエステル化を行う。好ましい例として、一般式(5)で表される構造を主成分とするポリアミド酸の重合とワンポットでのエステル化について以下に述べるが、これに限定されない。上記の方法にて、一般式(5)で表される構造を主成分とするポリアミド酸を重合する。重合反応終了後、この反応溶液に適宜溶媒を添加し、樹脂濃度を5質量%以上50質量%以下に、粘度を5cP以上1000cP以下に調整する。ここで添加する溶媒は、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち少なくとも1種類を含有する溶媒を用いることが好ましく、エステル化工程後に得られる樹脂中の残存溶媒量を少なくする観点から、前記(S1)~(S7)の各式で表される溶媒のうち少なくとも1種類を含有する溶媒がさらに好ましく、エステル化工程後に得られる樹脂中の残存溶媒量をさらに少なくする観点から、DMPA(前記S1)、DMIB(前記S2)、およびMPA(前記S3)を含有する溶媒が特に好ましい。また、エステル化効率向上の観点から、反応溶液の温度を10℃以上80℃以下に、撹拌速度を50rpm以上に適宜調整することが好ましい。この反応溶液にエステル化剤を添加する。続いて、反応温度、撹拌速度を適宜調整しながら、0.1時間以上20時間以下時間撹拌することがエステル化効率向上の観点で好ましく、これによって、カルボキシ基の所望の割合をエステル化した樹脂溶液IIを得る。
<樹脂を析出させる工程>
本発明の樹脂の製造方法は、前記エステル化工程の後に、樹脂溶液IIを水または水溶液と混合し、樹脂を析出させる、樹脂の再沈殿工程を含むことが好ましい。水溶液に関して、樹脂中の残存溶媒量を少なくする観点から、有機溶媒と水の混合液を用いることが好ましい。ここで用いられる有機溶媒の好ましい例として、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、エチレングリコール、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
樹脂の再沈殿の方法の好ましい例としては、樹脂溶液IIの総質量の100質量%~10000質量%の水または水溶液を撹拌させ、そこに該樹脂溶液IIを加え、1分間以上撹拌する方法が挙げられる。
<樹脂を洗浄、乾燥する工程>
本発明の製造方法は、前記樹脂を析出させる工程の後、樹脂を水または水溶液で洗浄する、洗浄工程、および樹脂を乾燥する、乾燥工程を順に含むことが好ましい。水溶液に関して、樹脂中の残存溶媒量を少なくする観点から、有機溶媒と水の混合液を用いることが好ましい。ここで用いられる有機溶媒の好ましい例として、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、エチレングリコール、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
樹脂の洗浄工程の好ましい方法の例を以下に述べる。樹脂と、樹脂溶液IIの総質量の100質量%~10000質量%の水または水溶液とを混合し、1分間以上撹拌した後、この懸濁液をろ過し、水分を除去する。これを3回以上繰り返す。
【0074】
一方、樹脂の乾燥工程の好ましい方法を以下に述べる。前記洗浄工程の後に得られた樹脂を30℃~120℃の真空乾燥機に入れて、1分間以上乾燥する。
【0075】
また、エステル化工程後に得られた樹脂を洗浄、乾燥した後に、樹脂中の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒の総含有量は8質量%以下が好ましい。8質量%超の場合、該樹脂のアルカリ溶解性の調節が難しくなる。さらに樹脂のアルカリ溶解性の調節を容易にする観点から、樹脂全量の5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0076】
本発明において、樹脂中の溶媒含有量は、H-NMRスペクトルで求められる値とする。
【0077】
<樹脂組成物>
本発明の製造方法によって製造した樹脂は、感光性樹脂組成物に好適に用いられる。例えば、本発明の製造方法によってエステル化された樹脂と、必要により、本発明の製造方法によって得られる樹脂以外のアルカリ可溶性樹脂、感光性化合物、着色剤、熱架橋剤、溶剤、密着改良剤、界面活性剤、フェノール性水酸基を有する化合物、無機粒子および熱酸発生剤など公知のものを溶解させることにより、樹脂組成物を得ることができる。
【0078】
本発明の製造方法で得られた樹脂を含有する樹脂組成物は、前記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒のうち、少なくとも1種類を含有してもよい。樹脂組成物中に含まれる一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される溶媒は、例えば、該樹脂組成物をガスクロマトグラフ(GC)を測定することにより、容易に検出できる。樹脂組成物中の上記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される溶媒の総含有量は、該樹脂組成物が感光性樹脂組成物である場合には、感度向上の観点で、樹脂組成物全量の2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以下が特に好ましい。
【0079】
さらに、上記感光性樹脂組成物は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層および平坦化層などの用途に好適に用いられる。
【実施例
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
なお、表1および表2中、「wt%」は質量%を、「DMFDMA」はN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを、「DMFDEA」はジメチルホルムアミドジエチルアセタールを、「DMAcDMA」はジメチルアセトアミドジメチルアセタールを、「TMOF」はオルトギ酸トリメチルを表し、S1~9およびS’10~11は下記の溶媒を表す。
S1:DMPA(N,N-ジメチルプロパンアミド)
S2:DMIB(N,N-ジメチルイソブチルアミド)
S3:MPA(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)
S4:BPA(3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)
S5:TMU(N,N,N’,N’-テトラメチル尿素)
S6:DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)
S7:DMPU(N,N’-ジメチルプロピレン尿素)
S8:3-メチル-2-オキサゾリドン
S9:DMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)
S’10:NMP(N-メチル-2-ピロリドン)
S’11:GBL(γ-ブチロラクトン)
(1)エステル化率、エステル化効率、および溶媒含有量
核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子(株)製EX-270)を用いて、樹脂10mg、内部標準物質として安息香酸ベンジル1mg、および重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d)0.8gの混合溶液のH-NMRを測定し、樹脂の芳香族プロトンに由来するピークの積分値を求めた。芳香族プロトンを持たない樹脂は、芳香族プロトンの替わりに脂肪族プロトンに由来するピークの積分値を求めた。カルボン酸アルキルエステルのメチルプロトンまたはメチレンプロトンに由来するピークとの面積比から、樹脂のエステル化率を算出した。エステル化剤の投入量から計算されるエステル化率の理論値と、実際のエステル化率の比を、エステル化効率として求めた。エステル化効率が、80%以上のものを極めて良好、65%以上80%未満のものを良好、65%未満のものを不良と判定した。
【0081】
また、安息香酸ベンジルのベンジル位プロトンに由来する化学シフトδ=5.4ppmのピークと、溶媒のプロトンに由来するピークとの面積比から、樹脂中の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒の総含有量を算出した。一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒の総含有量が、5.0質量%以下のものを極めて良好、5.0質量%超8.0質量%以下のものを良好、8.0質量%超のものを不良と判定した。ただし、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒を使用しない、比較例1、比較例2、比較例5および比較例6に関しては、NMPおよびGBLの樹脂中の含有量を算出し、含有量が、5.0質量%以下のものを極めて良好、5.0質量%超8.0質量%以下のものを良好、8.0質量%超のものを不良と判定した。
【0082】
(2)粘度測定
樹脂溶液Iの粘度は、粘度計(東機産業株式会社、TVE-22H)を用いて、25℃における粘度を測定した。
【0083】
表3と表4において、エステル化効率が65%以上で良好、かつ、溶媒含有量が8質量%以下で良好であるものを合格とし、それ以外を不合格とした。
【0084】
[合成例1]ジアミン化合物(HA)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下BAHFとも記載する)329.6g(0.9モル)をアセトン1.8L、プロピレンオキシド313.6g(5.4モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド367.4g(1.98モル)をアセトン1.8Lに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体を濾別し、50℃で真空乾燥した。
【0085】
固体540gをステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ4.5Lに分散させ、5%パラジウム-炭素を18g加えた。ここに水素を導入して、還元反応を室温で行なった。2時間後反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるジアミン化合物(以下HAと呼ぶ)を得た。
【0086】
【化18】
【0087】
[実施例1]
乾燥窒素気流下、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(以下、ODPAとも記載する)31.02g(0.1モル)をDMPA(前記S1)200gに溶解させた。次に、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAHFとも記載する)29.30g(0.08モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(以下、SiDAとも記載する)1.24g(0.005モル)をDMPA20gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここに、末端封止剤として4-アミノフェノール3.27g(0.03モル)をDMPA10gとともに加え、40℃で2時間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体である樹脂(A-1)の粉末を得た。
【0088】
[実施例2]
DMPAをDMIB(前記S2)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-2)を得た。
【0089】
[実施例3]
DMPAをMPA(前記S3)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-3)を得た。
【0090】
[実施例4]
DMPAを3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(前記S4、以下、BPAとも記載する)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-4)を得た。
【0091】
[実施例5]
DMPAをN,N,N’,N’-テトラメチル尿素(前記S5、以下、TMUとも記載する)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-5)を得た。
【0092】
[実施例6]
DMPAをDMI(前記S6)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-6)を得た。
【0093】
[実施例7]
DMPAをN,N’-ジメチルプロピレン尿素(前記S7、以下、DMPUとも記載する)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-7)を得た。
【0094】
[実施例8]
DMPAをN,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcとも記載する)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-8)を得た。
【0095】
[実施例9]
ODPA31.02g(0.1モル)を溶解するDMPAの量を550gに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-9)の粉末を得た。
【0096】
[実施例10]
ODPA31.02g(0.1モル)を溶解するDMPAの量を310gに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-10)の粉末を得た。
【0097】
[実施例11]
ODPA31.02g(0.1モル)を溶解するDMPAの量を90gに変更し、BAHFの量を25.64g(0.07モル)に変更し、4-アミノフェノールの量を5.46g(0.05モル)に変更した以外は実施例1と同様に合成し、樹脂(A-11)の粉末を得た。
【0098】
[実施例12]
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.1モル)をDMPA(前記S1)40gに溶解させた。次に、BAHF20.14g(0.055モル)とSiDA3.73g(0.015モル)と4-アミノフェノール6.55g(0.06モル)をDMPA30gとともに加えて、40℃で5分間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体との共重合体である樹脂(A-12)の粉末を得た。
【0099】
[実施例13]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をDMFDMA19.1g(0.16モル)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-13)を得た。
【0100】
[実施例14]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をDMFDMA19.1g(0.16モル)に変更した以外は、実施例2と同様に合成し、樹脂(A-14)を得た。
【0101】
[実施例15]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をDMAcDMA21.3g(0.16モル)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-15)を得た。
【0102】
[実施例16]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をDMAcDMA21.3g(0.16モル)に変更した以外は、実施例2と同様に合成し、樹脂(A-16)を得た。
【0103】
[実施例17]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をオルトギ酸トリメチル17.0g(0.16モル)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-17)を得た。
【0104】
[実施例18]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をオルトギ酸トリメチル17.0g(0.16モル)に変更した以外は、実施例2と同様に合成し、樹脂(A-18)を得た。
【0105】
[実施例19]
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.1モル)をDMPA(前記S1)200gに溶解させた。次に、BAHF29.30g(0.08モル)とSiDA1.24g(0.005モル)をDMPA20gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここに、末端封止剤として4-アミノフェノール3.27g(0.03モル)をDMPA10gとともに加え、40℃で2時間反応させた。その後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリイミド-ベンゾオキサゾール前駆体樹脂を得た。この樹脂を、乾燥窒素気流下でDMPA230gに溶解させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体である樹脂(A-19)の粉末を得た。
【0106】
[実施例20]
DMFDEAの量を17.7g(0.12モル)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-20)を得た。
【0107】
[実施例21]
DMFDEAの量を29.4g(0.20モル)に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-21)を得た。
【0108】
[実施例22]
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.1モル)をDMPA(前記S1)230gに溶解させた。次に、HA24.18g(0.04モル)、BAHF14.65g(0.04モル)とSiDA1.24g(0.005モル)をDMPA20gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここに、末端封止剤として4-アミノフェノール3.27g(0.03モル)をDMPA10gとともに加え、40℃で2時間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体である樹脂(B-1)の粉末を得た。
【0109】
[実施例23]
DMPAをDMIB(前記S2)に変更した以外は、実施例22と同様に合成し、樹脂(B-2)を得た。
【0110】
[実施例24]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をDMFDMA19.1g(0.16モル)に変更した以外は、実施例22と同様に合成し、樹脂(B-3)を得た。
【0111】
[実施例25]
DMFDEA23.6g(0.16モル)をDMFDMA19.1g(0.16モル)に変更した以外は、実施例23と同様に合成し、樹脂(B-4)を得た。
【0112】
[実施例26]
乾燥窒素気流下、60℃にてp-フェニレンジアミン(以下、PDAとも記載する。)21.63g(0.2モル)をDMPA900gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物57.67g(0.2モル)をDMPA240gとともに加えて、60℃で2時間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、樹脂溶液を40℃に冷却し、DMFDEA47.1g(0.32モル)を投入した。投入後、40℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体樹脂(C-1)の粉末を得た。
【0113】
[実施例27]
乾燥窒素気流下、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル6.01g(0.03モル)とBAHF35.71g(0.098モル)とSiDA1.86g(0.0075モル)をDMPA220gに溶解させた。ここに無水トリメリット酸クロリド31.59g(0.15モル)をDMPA60gとともに30℃以上にならないように冷却しながら加え、30℃で4時間撹拌した。次に末端封止剤として4-アミノフェノール3.27g(0.03モル)をDMPA10gとともに加え、30℃で2時間撹拌した。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDMA14.3g(0.12モル)を投入した。投入後、30℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリアミドイミド前駆体樹脂(D-1)の粉末を得た。
【0114】
[実施例28]
乾燥窒素気流下、メタクリル酸42.18g(0.49モル)とメタクリル酸シクロヘキシル35.33g(0.21モル)をDMPA270gに溶解した。これにp-トルエンスルホン酸・1水和物を9.5g(0.05モル)加え、60℃で2時間撹拌した。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、樹脂溶液を40℃に冷却し、DMFDMA46.5g(0.39モル)を投入した。投入後、40℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、メタクリル樹脂(E-1)の粉末を得た。
【0115】
[実施例29]
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.1モル)をDMPA100gとDMI100gに溶解させた。次に、BAHF29.30g(0.08モル)とSiDA1.24g(0.005モル)を、DMPA10gとDMI10gともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここに、末端封止剤として4-アミノフェノール3.27g(0.03モル)を、DMPA5gとDMI5gともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体である樹脂(A-26)の粉末を得た。
【0116】
[実施例30]
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.1モル)をDMPA170gとDMI30gに溶解させた。次に、BAHF29.30g(0.08モル)とSiDA1.24g(0.005モル)を、DMPA17gとDMI3gともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここに、末端封止剤として4-アミノフェノール3.27g(0.03モル)を、DMPA8.5gとDMI1.5gともに加えて、40℃で2時間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体である樹脂(A-27)の粉末を得た。
【0117】
[実施例31]
DMIを3-メチル-2-オキサゾリドンに変更した以外は、実施例29と同様に合成し、樹脂(A-28)を得た。
【0118】
[実施例32]
DMIをBPAに変更した以外は、実施例29と同様に合成し、樹脂(A-29)を得た。
【0119】
[実施例33]
DMPAをTMUに変更し、DMIを3-メチル-2-オキサゾリドンに変更した以外は、実施例29と同様に合成し、樹脂(A-30)を得た。
【0120】
[比較例1]
DMPAをNMPに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-22)を得た。
【0121】
[比較例2]
DMPAをGBLに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-23)を得た。
【0122】
[比較例3]
ODPA31.02g(0.1モル)を溶解するDMPAの量を2070gに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、樹脂(A-24)の粉末を得た。
【0123】
[比較例4]
ODPA31.02g(0.1モル)を溶解するDMPAの量を30gに変更した以外は、実施例12と同様に合成し、樹脂(A-25)の粉末を得た。
【0124】
[比較例5]
DMPAをNMPに変更した以外は、実施例22と同様に合成し、樹脂(B-5)を得た。
【0125】
[比較例6]
DMPAをGBLに変更した以外は、実施例22と同様に合成し、樹脂(B-6)を得た。
【0126】
[比較例7]
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.1モル)をDMPA(前記S1)40gに溶解させた。次に、HA18.14g(0.03モル)とBAHF10.99g(0.03モル)とSiDA2.49g(0.01モル)と4-アミノフェノール6.55g(0.06モル)をDMPA30gとともに加えて、40℃で5分間反応させた。ここで、樹脂溶液を1mL採取し、その粘度を測定した。次に、DMFDEA23.6g(0.16モル)を投入した。投入後、40℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、樹脂中のカルボキシ基を部分エステル化した、ポリイミド前駆体-ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体である樹脂(B-7)の粉末を得た。
[比較例8]
p-フェニレンジアミン21.63g(0.2モル)を溶解するDMPAの量を230gに変更し、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物57.67g(0.2モル)とともに加えるDMPAの量を50gに変更した以外は、実施例26と同様に合成し、樹脂(C-2)の粉末を得た。
【0127】
実施例1~33および比較例1~8について、カルボキシ基を有する樹脂の一般式(5)の構造有無、重合工程とエステル化工程の連続性(ワンポットで合成しているか否か)、エステル化剤を混合する前の樹脂溶液の溶媒、濃度、および粘度、ならびにエステル化剤の種類およびカルボキシ基100モル%に対する投入量を、表1および表2に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
実施例1~33および比較例1~8で合成された樹脂について、樹脂のエステル化率、エステル化効率、および一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される残溶媒の総量の評価結果、ならびに合否判定を、表3および表4に示す。なお、表3および表4中、「wt%」は質量%を表す。
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
表3において、実施例1~33に示すものはいずれも、エステル化効率が65%以上あり、溶媒含有量が8.0質量%以下の、良好な結果であった。溶媒を変更して評価した実施例1~8を比較すると、DMPA(S1)、DMIB(S2)、およびMPA(S3)を用いた、実施例1~3が、エステル化効率が80%以上、かつ一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される溶媒の総含有量が5.0質量%以下の、極めて良好な結果であった。
【0134】
一方、表4において、溶媒にNMP(S’10)を用いた比較例1および比較例5は、エステル化効率が65%未満であり、溶媒にGBL(S’11)を用いた比較例2および比較例6は、エステル化効率が65%未満、かつ、NMPまたはGBLの含有量が8.0質量%超ある、不良な結果であった。また、エステル化剤を混合する前の樹脂溶液の濃度が、5質量%未満の比較例3、50質量%超の比較例4と比較例7、およびエステル化剤を混合する前の樹脂溶液の粘度が1000cP超の比較例8に関しても、エステル化効率が65%未満の不良な結果であった。