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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/00 20060101AFI20221109BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20221109BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221109BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H02H7/00 L
B60R16/033 B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 302C
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H02J7/14 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019061756
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162370
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐樹
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093694(JP,A)
【文献】特開2018-078701(JP,A)
【文献】特開2017-154579(JP,A)
【文献】特開2018-139462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/00
H02J 7/00-7/36
H01M 10/42-10/48
B60R 16/03
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量以上の電流を大電流とした場合、作動時には前記大電流が流れ得る大電流負荷(95)に給電する第1電池(11)と、第2電池(12)と、前記第1電池と所定負荷(92)との電気的な接続及び切離しを行う第1スイッチ(21)と、前記第2電池と前記所定負荷との電気的な接続及び切離しを行う第2スイッチ(22)とを有し、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの両スイッチがONになると、前記第2電池が前記両スイッチを通じて前記大電流負荷に電気的に接続され、前記両スイッチのうちの少なくとも一方がOFFになることにより、前記大電流負荷から前記第2電池が電気的に切り離されるように配線されている電源装置(50)を、
制御する電源制御装置(60)において、
前記両スイッチを制御する制御部(63)と、前記第2スイッチの、ONの状態で固着されるON固着故障を検出する故障検出部(61)と、前記大電流負荷により行うべき動作が完了している状態になっていることを示す動作完了情報を検出する情報検出部(62)とを有し、
前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出され且つ前記第1スイッチがONである場合には、前記動作完了情報が検出されないことを条件に、前記第1スイッチをOFFにしてから前記動作完了情報が検出されると前記第1スイッチをONに戻すまでの一連の処理である所定フェイルセーフ処理(A2)を行い、前記第2スイッチのON固着故障が検出されない場合には、前記所定フェイルセーフ処理を行わない、電源制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出されたことを条件に、前記第1スイッチをONにする第1フェイルセーフ処理(A1)を行い、前記第1フェイルセーフ処理を行っている状態において前記動作完了情報が検出されないことを条件に、前記所定フェイルセーフ処理を行う、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
所定量以上の電流を大電流とした場合、作動時には前記大電流が流れ得る大電流負荷(95)に給電する第1電池(11)と、第2電池(12)と、前記第1電池と所定負荷(92)との電気的な接続及び切離しを行う第1スイッチ(21)と、前記第2電池と前記所定負荷との電気的な接続及び切離しを行う第2スイッチ(22)とを有し、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの両スイッチがONになると、前記第2電池が前記両スイッチを通じて前記大電流負荷に電気的に接続され、前記両スイッチのうちの少なくとも一方がOFFになることにより、前記大電流負荷から前記第2電池が電気的に切り離されるように配線されている電源装置(10)を、
制御する電源制御装置(60)において、
前記両スイッチを制御する制御部(63)と、前記第2スイッチの、ONの状態で固着されるON固着故障を検出する故障検出部(61)と、前記大電流負荷により行うべき動作が完了している状態になっていることを示す動作完了情報を検出する情報検出部(62)とを有し、
前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出されたことを条件に、前記第1スイッチをONにする第1フェイルセーフ処理(A1)を行い、前記第1フェイルセーフ処理を行っている状態において前記動作完了情報が検出されないことを条件に、前記第1スイッチをOFFにしてから前記動作完了情報が検出されると前記第1スイッチをONに戻すまでの一連の処理である所定フェイルセーフ処理(A2)を行う、電源制御装置。
【請求項4】
前記情報検出部(62)は、さらに、前記第1電池の電圧(V1)と前記第2電池の電圧(V2)とに関する情報である電圧情報を検出するものであり、
前記制御部は、さらに、前記電圧情報において、前記第1電池の電圧よりも前記第2電池の電圧の方が高いことを条件に、前記所定フェイルセーフ処理を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記第1電池の電圧は、前記大電流負荷の作動により前記第1電池から前記大電流負荷に前記大電流が流れて、前記大電流と前記第1電池の内部抵抗とにより前記第1電池の端子間電圧が降下した際になると予想される前記端子間電圧である、請求項4に記載の電源制御装置。
【請求項6】
情報検出部(62)は、前記大電流負荷が作動する兆候があることを示す作動予測情報を検出するものであり、
前記制御部は、さらに、前記作動予測情報が検出されていることを条件に、前記所定フェイルセーフ処理を行う、請求項1~のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記第2スイッチは、その構成要素に複数の半導体スイッチ(22s)を有し、
前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出されていることを条件に、全ての前記半導体スイッチがONである状態にする、
請求項1~のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記電源装置は、前記第1電池と発電機(99)との電気的な接続及び切離しを行う第3スイッチ(23)と、前記第2電池と前記発電機との電気的な接続及び切離しを行う第4スイッチ(24)とを有し、
前記電源装置は、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの双方のスイッチがONになると、前記第2電池が前記双方のスイッチを通じて前記大電流負荷に電気的に接続され、前記双方のスイッチのうちの少なくとも一方がOFFになることにより、前記大電流負荷から前記第2電池が電気的に切り離されるように配線されており、
前記制御部は、さらに前記双方のスイッチを制御するものであり、
前記故障検出部は、さらに、前記第4スイッチの、ONの状態で固着されるON固着故障を検出するものであり、
前記情報検出部は、前記大電流負荷により行うべき動作が完了している状態になっていることを示す動作完了情報、及び前記第1電池の電圧(V1)と前記第2電池の電圧(V2)とに関する情報である電圧情報、の少なくともいずれか一方を検出するものであり、
前記制御部は、前記第4スイッチのON固着故障が検出され且つ前記第3スイッチがONである場合には、前記動作完了情報が検出されないこと、及び前記電圧情報において、前記第1電池の電圧よりも前記第2電池の電圧の方が高いこと、の少なくともいずれか一方を条件に、前記第3スイッチをOFFにする、
請求項1~のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電気機器等の所定負荷に対して給電を行う電源装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置の中には、次のように構成されたものがある。電源装置は、第1電池と第2電池と第1スイッチと第2スイッチとを有する。第1電池は、始動装置に給電する。第1スイッチは、第1電池と所定負荷との電気的な接続及び切離しを行う。第2スイッチは、第2電池と所定負荷との電気的な接続及び切離しを行う。そして、このような構成の電源装置を示す文献としては、次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-234479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電源装置は、回路上、両スイッチのうちの少なくとも一方がOFFになることにより、始動装置から第2電池が電気的に切り離される。他方、両スイッチがONになると、第2電池が両スイッチを通じて始動装置に電気的に接続される。
【0005】
そのため、第2スイッチにON固着故障が発生し且つ第1スイッチもONになる状況下では、第2電池が両スイッチを通じて始動装置に電気的に接続される。その状態で、消費電力の大きい始動装置が作動すると、第2電池から両スイッチを通じて始動装置に大電流が流れる可能性がある。このとき、第2スイッチは、ON固着故障により電気抵抗が高くなっている可能性があるので、上記の大電流と第2スイッチの電気抵抗とにより、第2スイッチが焼損してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、第2スイッチにON固着故障が発生した場合にも、第2スイッチが焼損しないようにすることを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の電源制御装置は、電源装置を制御する。前記電源装置は、第1電池と第2電池と第1スイッチと第2スイッチとを有する。前記第1電池は、所定量以上の電流を大電流とした場合、作動時には前記大電流が流れ得る大電流負荷に給電する。前記第1スイッチは、前記第1電池と所定負荷との電気的な接続及び切離しを行う。前記第2スイッチは、前記第2電池と前記所定負荷との電気的な接続及び切離しを行う。
【0008】
前記電源装置は配線上、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの両スイッチがONになると、前記第2電池が前記両スイッチを通じて前記大電流負荷に電気的に接続される。他方、前記両スイッチのうちの少なくとも一方がOFFになることにより、前記大電流負荷から前記第2電池が電気的に切り離される。
【0009】
前記電源装置は、制御部と故障検出部と情報検出部とを有する。前記制御部は、前記両スイッチを制御する。前記故障検出部は、前記第2スイッチの、ONの状態で固着されるON固着故障を検出する。前記情報検出部は、前記大電流負荷により行うべき動作が完了している状態になっていることを示す動作完了情報を検出する。
【0010】
前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出され且つ前記第1スイッチがONである場合には、前記動作完了情報が検出されないことを条件に、前記第1スイッチをOFFにしてから前記動作完了情報が検出されると前記第1スイッチをONに戻すまでの一連の処理である所定フェイルセーフ処理を行う。他方、前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出されない場合には、前記所定フェイルセーフ処理を行わない。
【0011】
第1発明によれば、第2スイッチのON固着故障が検出され且つ第1スイッチがONである場合に、第1スイッチをOFFにすることにより、第2電池から両スイッチを通じて大電流負荷に大電流が流れるのを回避できる。そのため、上記の大電流と、ON固着故障した第2スイッチの電気抵抗とにより、第2スイッチが焼損してしまうのを回避できる。
【0012】
他方、このような場合に常に第1スイッチをOFFにするようにすれば、第1電池から所定負荷に給電できなくなるといった弊害が生じる。その点、本発明では、上記の場合には、作動完了情報が検出されないことを条件に第1スイッチをOFFにし、動作完了情報が検出されると前記第1スイッチをONに戻す。それにより、第2電池から大電流負荷に大電流が流れるおそれもないのに第1スイッチをOFFにする期間を、なるべく減らして、第1電池から所定負荷へ給電できない期間を、なるべく短くすることができる。
【0013】
さらに、第2スイッチのON固着故障が検出されない場合には、上記の所定フェイルセーフ処理を行わない。これによっても、必要もないのに第1スイッチをOFFにして、第1電池から所定負荷へ給電できなくするのを回避できる。
【0014】
第2発明は、第1発明の電源制御装置において、さらに次の構成を有している。前記制御部は、前記第2スイッチのON固着故障が検出されることを条件に、前記第1スイッチをONにする第1フェイルセーフ処理を行い、前記第1フェイルセーフ処理を行っている状態において前記動作完了情報が検出されないことを条件に、前記所定フェイルセーフ処理を行う。
【0015】
第2スイッチがON固着故障した際には、第2電池から、そのON固着故障した第2スイッチを通じて所定負荷へ行う給電に懸念が生じる。その点、第2発明によれば、第2スイッチにON固着故障が検出されることを条件に、第1スイッチをONにする第1フェイルセーフ処理を行うことにより、第1電池から所定負荷への給電を確保できる。
【0016】
しかし、この第1フェイルセーフ処理を行ったままの状態だと、大電流負荷の作動時に、第2電池から大電流負荷に大電流が流れ得る。そのため、第2発明では、この第1フェイルセーフ処理を行った状態において、動作完了情報が検出されないことを条件に、敢えて、第1フェイルセーフ処理とは真逆の、第1スイッチをOFFにする所定フェイルセーフ処理を行う。これにより、なるべく第1電池から所定負荷への給電を確保しつつも、第2スイッチが焼損してしまうのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の電源制御装置を示す回路図
図2】ON固着故障が発生した状態を示す回路図
図3】仮に第2フェイルセーフ処理を行わなかった場合の比較例を示す回路図
図4】第2フェイルセーフ処理を行った状態を示す回路図
図5】フェイルセーフ処理を示すフローチャート
図6】フェイルセーフ処理による各値の推移を示すグラフ
図7】第2実施形態の電源制御装置を示す回路図
図8】第3実施形態の電源制御装置を示す回路図
図9】ON固着故障が発生した状態の第2スイッチを示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電源制御装置60及びその周辺を示す回路図である。車両には、エンジンの他、発電機96、始動装置95、第1負荷91、第2負荷92、電源装置50、電源制御装置60等が設けられている。電源装置50は、第1電池11及び第2電池12と、第1スイッチ21及び第2スイッチ22と、メカリレー31とを備える。電源制御装置60は、故障検出部61と情報検出部62と制御部63とを有する。
【0020】
始動装置95は、エンジンを始動する装置である。始動装置95が、本発明でいう「大電流負荷」に該当する。始動装置95は、その作動時には、所定量以上の電流である大電流が流れ得る。発電機96は、発電を行い、第1電池11及び第2電池12を充電する。第1負荷91及び第2負荷92は、車両に搭載されている各種電気機器や各種電子制御装置(ECU)等である。第1負荷91及び第2負荷92は、始動装置95とは別の回転電機(ISG)等を含んでいてもよい。
【0021】
次に電源装置50について詳述する。第1電池11は、本実施形態では鉛電池である。第1電池11は、第1スイッチ21、第2スイッチ22及びメカリレー31の開閉に関係なく、常に発電機96と始動装置95と第1負荷91とに電気的に接続される。また、第1電池11は、第1スイッチ21及びメカリレー31の少なくともいずれか一方がONになると、第2負荷92に電気的に接続され、第1スイッチ21及びメカリレー31の両方がOFFになると、第2負荷92から電気的に切り離される。
【0022】
第2電池12は、本実施形態ではリチウム電池であり、直列接続された複数の電池セルからなる。第2電池12は、第2スイッチ22がONになると第2負荷92に電気的に接続され、第2スイッチ22がOFFになると第2負荷92から電気的に切り離される。また、第2電池12は、第2スイッチ22がONの状態において、第1スイッチ21又はメカリレー31がONになると、発電機96と始動装置95と第1負荷91とに電気的に接続される。他方、第2電池12は、第2スイッチ22がOFFになるか、又は第1スイッチ21及びメカリレー31の両方がOFFになると、発電機96と始動装置95と第1負荷91とから電気的に切り離される。
【0023】
第1スイッチ21及び第2スイッチ22の各スイッチ21,22は、制御部63からON指令を受信しない限りはOFFになるノーマリOFFのスイッチであり、制御部63からON指令を受信するとONになる。
【0024】
詳しくは、第2スイッチ22は、その構成要素に2つの半導体スイッチ22sを有する。各半導体スイッチ22sは、いずれもMOSFETであり、寄生ダイオードが互いに逆向きになるように直列に接続されている。そのため、これら両方の半導体スイッチ22sをOFFにすれば、第2スイッチ22に電流が流れることを完全に遮断できる。各半導体スイッチ22sは、いずれも制御部63からON指令を受信しない限りはOFFとなるノーマリOFFのスイッチあり、制御部63からON指令を受信するとONになる。よって、上記のとおり、第2スイッチ22は、その全体としてノーマリOFFのスイッチである。
【0025】
また、第1スイッチ21も、図示は省略しているが、第2スイッチ22と同様に、構成要素に2つの半導体スイッチを有する。第1スイッチ21についての説明は、上記の第2スイッチ22についての説明と同様である。
【0026】
メカリレー31は、制御部63からOFF指令を受信しない限りはONになるノーマリONのスイッチであり、制御部63からOFF指令を受信するとOFFになる。第1スイッチ21は、エンジン停止中にはONになることにより、第1電池11から第2負荷92への暗電流の給電を確保する。
【0027】
次に電源制御装置60について詳述する。制御部63は、第1スイッチ21と第2スイッチ22とメカリレー31とを制御する。詳しくは、制御部63は、ノーマリOFFの第1スイッチ21にON指令を送信することにより第1スイッチ21をONにする。また、制御部63は、ノーマリOFFの第2スイッチ22にON指令を送信することにより第2スイッチ22をONにする。また、制御部63は、ノーマリONのメカリレー31にOFF指令を送信することによりメカリレー31をOFFにする。
【0028】
故障検出部61は、第2スイッチ22の、ONの状態で固着されるON固着故障を検出する。詳しくは、故障検出部61は、第2スイッチ22がOFFに制御されるべき期間に、第2スイッチ22のソース電圧を検出する。
【0029】
そのソース電圧は、第2スイッチ22を構成する2つの半導体スイッチ22sどうしの間にある被検出部分61aの電位とグランド電位との差である。第2スイッチ22がON固着故障していない状態において、第2スイッチ22がOFFに制御されている状態では、被検出部分61aの電位は約ゼロになる。
【0030】
他方、例えば、第2スイッチ22の第2電池12側(図において下側)の半導体スイッチ22sがON固着故障すれば、被検出部分61aの電位が第2電池12のプラス端子の電位になることにより、ソース電圧が上がる。また例えば、第1スイッチ21及びメカリレー31の少なくてもいずれか一方がONの状態において、第2スイッチ22の第1電池11側(図において上側)の半導体スイッチ22sがON固着故障すれば、被検出部分61aの電位が第1電池11のプラス端子の電位になることにより、ソース電圧が上がる。
【0031】
よって、第2スイッチ22は、いずれの半導体スイッチ22sがON固着故障してもソース電圧が上がる。そのソース電圧を,故障検出部61が検出して、その情報を制御部63に送信する。
【0032】
制御部63は、故障検出部61から受信した情報に基づいて、第2スイッチ22がON固着故障か否かを判定する。詳しくは、第2スイッチ22が制御部63からOFF指令を受信しているOFF指令受信時において、故障検出部61により検出されたソース電圧が所定の判定値以上である期間が、所定の判定時間以上であれば、第2スイッチ22がON固着故障であると判定する。他方、それ以外の場合は、第2スイッチ22がON固着故障ではないと判定する。
【0033】
制御部63は、第2スイッチ22がON固着故障であると判定した場合、フェイルセーフ処理Aを行う。そのフェイルセーフ処理Aは、まず、第1フェイルセーフ処理A1を行い、さらに必要に応じて第2フェイルセーフ処理A2を行うものである。他方、制御部63は、第2スイッチ22がON固着故障であると判定しない場合、第1フェイルセーフ処理A1及び第2フェイルセーフ処理A2のいずれも行わない。
【0034】
第1フェイルセーフ処理A1は、第2スイッチ22のON固着故障が検出されたことを条件に、第1スイッチ21に対してON信号の送信を開始して、第1スイッチ21をONに固定する処理である。これにより、第1電池11から第2負荷92への給電を確保する。その理由を以下に説明する。
【0035】
第2スイッチ22は、ON固着故障により電気抵抗が上がってしまっている可能性がある。その電気抵抗によるドロップ電圧により、第2電池12から第2負荷92へ充分な電圧を給電できないおそれがあるからである。また、第2電池12から、電気抵抗が上がった状態の第2スイッチ22を通じて第2負荷92へ電流が流れることにより、第2スイッチ22の状態が悪化したり、第2スイッチ22の電気抵抗で電力が無駄に消費されたりするおそれがある。それらを回避するためである。
【0036】
第1フェイルセーフ処理A1では、第1スイッチ21をONに固定するのに伴い、メカリレー31をOFFに固定する。さらに、このとき、制御部63は、既にON固着されている第2スイッチ22に対しても、ON指令の送信を開始して、第2スイッチ22をONに固定する。その理由を以下に説明する。
【0037】
本実施形態のように、第2スイッチ22がその構成要素に2つの半導体スイッチ22sを有する場合、2つの半導体スイッチ22sのうちの一方のみがON固着故障する場合が大半を占める。2つ同時に故障する確率は極めて低いからである。そして、2つの半導体スイッチ22sのいずれが故障した場合でも、上記のとおり、被検出部分61aの電位が上がる。その電位が故障検出部61により検出されると、制御部63は、第2スイッチ22がON固着故障したと判定する。そのため、制御部63は、どちらの半導体スイッチ22sがON固着故障したかまでは、判定することができない。
【0038】
そして、寄生ダイオードが逆向きである2つの半導体スイッチ22sの一方の半導体スイッチ22sのみがON固着故障した場合において、第2スイッチ22をOFFに制御しようとした場合には、次の状態に陥る。すなわち、ON固着故障した半導体スイッチ22sがONのまま、他方の半導体スイッチ22sのみがOFFになる。その場合、第2スイッチ22は、OFFになった半導体スイッチ22sの寄生ダイオードの反対方向には通電不能になるが、その寄生ダイオードの方向には通電可能になる。そのため、充電及び放電のうちの一方はできるが他方はできないといった状態になる。
【0039】
よって、本実施形態では、上記のとおり、第1フェイルセーフ処理A1と同時に、第2スイッチ22にもON指令を送信して、第2スイッチ22を構成する両方の半導体スイッチ22sをONに固定する。以上の第1フェイルセーフ処理A1により、第1スイッチ21と第2スイッチ22との両スイッチ21,22がONに固定される。
【0040】
情報検出部62は、次に示す、動作完了情報と電圧情報と作動予測情報とを検出して、制御部63に送信する。
【0041】
動作完了情報は、始動装置95が既に作動してエンジンがかかっていることを示す情報である。作動完了情報は、例えば、エンジン回転数(アイドリング時の回転数以上にまで上昇)や、始動装置95の回転数や、始動装置95の出力(電流)から、エンジンが始動したと判定することにより、取得できる。
【0042】
電圧情報は、第1電池11の電圧V1と第2電池12の電圧V2とに関する情報である。詳しくは、第1電池11の電圧V1は、始動装置95の作動により第1電池11から始動装置95に大電流が流れて、その大電流と第1電池11の内部抵抗とにより第1電池11の端子間電圧が降下したとする状態において、なると予想される当該端子間電圧である。他方、第2電池12の電圧V2は、現在の、すなわち始動装置95が作動する前の第2電池12の端子間電圧である。
【0043】
第1電池11の電圧V1の予測は、例えば、第1電池11の内部抵抗と、始動装置95の作動時に使用されると予想される電流から、第1電池11のドロップ電圧を予測することにより、行うことができる。例えば、第1電池11の内部抵抗が5mΩであり、始動装置95の作動時に使用されると予想される電流が500Aであるの場合、第1電池11のドロップ電圧は、0.005Ω×500A=2.5Vとなる。
【0044】
作動予測情報は、始動装置95が作動する兆候があることを示す情報である。この作動予測情報は、例えば、ブレーキが押下されたことや、プッシュスタートボタンが押下されたこと等を検出することにより、取得することができる。
【0045】
第2フェイルセーフ処理A2は、第1スイッチ21をONにする第1フェイルセーフ処理A1が行われている状態において、次の第1~第3の要件が全て満たされることを条件に、実行される。第1の要件は、動作完了情報が検出されないことである。第2条件は、電圧情報において、第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が高いことである。第3要件は、作動予測情報が検出されることである。第2フェイルセーフ処理A2は、第1スイッチ21をOFFにしてから、動作完了情報が検出されると第1スイッチ21をONに戻すまでの一連の処理である。その第2フェイルセーフ処理A2により、第1スイッチ21がOFFの状態で始動装置95が作動することになる。
【0046】
図2は、第2スイッチ22がON固着故障して、そのON固着故障が故障検出部61により検出された状態を示す回路図である。この場合、制御部63は、上記の第1フェイルセーフ処理A1を実行する。これにより、両スイッチ21,22がONになる。そのため、第2電池12が始動装置95に電気的に接続される。
【0047】
図3は、図2に示す状態から、仮に第2フェイルセーフ処理A2を行わなかった場合の比較例を示す回路図である。この場合、第2電池12が始動装置95に電気的に接続されたまま、始動装置95が作動することになる。ただし、この場合においても、第1電池11の電圧V1の方が第2電池12の電圧V2よりも高い場合は、図に示す矢印とは違い、主に第1電池11から始動装置95に電流が流れ、第2電池12から始動装置95にはさほど電流は流れない。しかし、第1電池11が消耗している状態等、第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が高い場合には、図に矢印で示すように、主に第2電池12から始動装置95に電流が流れる。そのため、両スイッチ21,22を通じて始動装置95に大電流が流れる。そのため、ON固着故障により電気抵抗が高くなっているおそれがある第2スイッチ22が、焼損してしまうおそれがある。
【0048】
図4は、図2に示す状態から、上記第1~第3の要件が全て満たされると、第2フェイルセーフ処理A2を行う本実施形態の場合を示す回路図である。本実施形態の場合、第2フェイルセーフ処理A2が行われることにより、第1スイッチ21をOFFにした状態で始動装置95が作動することになる。そのため、図4に矢印で示すように、第1電池11から始動装置95に電流が流れ、第2電池12から始動装置95に電流が流れることはない。そのため、第2スイッチ22が大電流で焼損してしまうのを回避できる。
【0049】
図5は、以上に示したフェイルセーフ処理Aを示すフローチャートである。まず、制御部63は、第2スイッチ22をOFFに制御している状況下(S101)において、第2スイッチ22のソース電圧が判定値Vj以上である時間Txが所定の判定時間Tj以上、継続したか否かを判定する(S102)。判定時間Tj以上継続していないと判定した場合(S102:NO)、第2スイッチ22は正常であるとして、フェイルセーフ処理Aを終了する。他方、判定時間Tj以上継続していると判定した場合(S102:YES)、第2スイッチ22のON固着故障が生じたと判定して(S103)、第1フェイルセーフ処理A1を行う(S110)。すなわち、第1スイッチ21をONに固定して、第1電池11から第2負荷92への給電を確保する。また、これに伴い、メカリレー31をOFFに固定し、既にON固着故障している第2スイッチ22もONに固定する。
【0050】
次に、制御部63は、始動装置95の動作完了情報があるか否かを判定する(S111)。動作完了情報がある場合(S111:YES)、既にエンジンがかかっており、始動装置95を作動することはないとして、第1スイッチ21をONに固定したまま、フェイルセーフ処理Aを終了する。
【0051】
他方、始動装置95の動作完了情報がない場合(S111:NO)、始動装置95が作動し得るとして、始動装置95の作動予想情報があるか否かを判定する(S112)。作動予想情報がない場合(S112:NO)、S112の判定を所定周期で繰り返す。他方、作動予想がある場合(S112:YES)、第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が高いか否かを判定する(S113)。
【0052】
第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が低い場合(S113:NO)、たとえ始動装置95が作動しても、第2電池12から始動装置95に大電流が流れることはない。また逆に、第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が低い状態で、第1スイッチ21をOFFにしてしまうと、第2負荷92への電源失陥につながるおそれがある。そのため、第1スイッチ21をONに固定する第1フェイルセーフ処理A1を維持したまま、フェイルセーフ処理Aを終了する。
【0053】
ここで、第1電池11の電圧V1は、上記のとおり始動装置95の始動時になると予想される電圧である。他方、第2電池12の電圧V2は、上記のとおり現在の電圧である。このように、単に現在の第1電池11の電圧V1と現在の第2電池12の電圧V2とを比較するのではなく、始動装置95の作動時における電圧低下後の第1電池11の電圧V1を予測し、それと現在の第2電池12の電圧V2とを比較することにより、第2電池12からの電流の持出をより確実に防止できる。これにより、第2スイッチ22に電流が流れるリスクをより低減できる。
【0054】
他方、S113で、第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が高いと判定した場合(S113:YES)、このままでは、第2電池12から始動装置95に大電流が持ち出されるおそれがあるとして、第2フェイルセーフ処理A2を行う(S120~122)。具体的には、まず、第1スイッチ21をOFFにする(S120)。
【0055】
次に、始動装置95の動作完了情報があるか否かを判定する(S121)。動作完了情報がない場合(S121:NO)、S121の判定を所定周期で繰り返す。他方、動作完了情報がある場合(S121:YES)、始動装置95の作動が終了したとして、第1スイッチ21をONに戻して(S122)、フェイルセーフ処理Aを終了する。
【0056】
図6(a)~(k)は、以上に示したフェイルセーフ処理Aによる各値の推移を示すグラフである。なお、各図に示す破線の太線は、第1フェイルセーフ処理A1のみを行い、第2フェイルセーフ処理A2を行わなかった場合の比較例の各値の推移を示すグラフである。実線の太線のみが示され、破線の太線が示されていないグラフについては、実線の太線と破線の太線とが重なっている。
【0057】
図6(a)は、第2スイッチ22に対する指令を示すグラフである。図6(b)は、第2スイッチ22のソース電圧を示すグラフである。図6(c)は、第1スイッチ21のON、OFFの状態を示すグラフである。図6(d)は、第2スイッチ22のON、OFFの状態を示すグラフである。図6(e)は、メカリレー31のON、OFFの状態を示すグラフである。図6(f)は、第1電池11の電圧V1と、第2電池12の電圧V2とを示すグラフである。
【0058】
図6(g)は、始動装置95に流れる電流の推移を示すグラフである。図6(h)は、第2負荷92に流れる電流の推移を示すグラフである。図6(i)は、第1スイッチ21に流れる電流の推移を示すグラフである。図6(j)は、第2スイッチ22に流れる電流の推移を示すグラフである。図6(k)は、メカリレー31に流れる電流の推移を示すグラフである。
【0059】
第2スイッチ22に対する指令がOFFの状態において、第1時点t1でON固着故障が発生すると、図6(j)に示すように、第1時点t1から、第2スイッチ22に電流が流れるようになる。その分だけ、図6(k)に示すように、第1時点t1から、メカリレー31に流れる電流が減る。そして、図6(b)に示すように、第2スイッチ22に流れるソース電圧が判定値Vj以上の状態が、判定時間Tj以上継続すると、第2時点t2において、第2スイッチ22がON固着故障していると判定される(S103:YES)。
【0060】
それにより、図6(c)(i)に示すように、第2時点t2から第1スイッチ21をONに固定する第1フェイルセーフ処理A1が行われる(S110)。これに伴い、図6(j)に示すように、第2時点t2から、第2スイッチ22はONに固定され、図6(e)(k)に示すように、第2時点t2から、メカリレー31はOFFに固定される。
【0061】
その後の第3時点t3で、始動装置95の作動予測情報があると(S112:YES)、図6(f)に示すように、第1電池11の電圧V1よりも第2電池12の電圧V2の方が高いこと(S113:YES)を条件に、第3時点t3から第2フェイルセーフ処理A2(S120~S122)が行われる。
【0062】
詳しくは、まず、図6(c)に実線の太線で示すように、第3時点t3で、第1スイッチ21がOFFになる。そのため、第3時点t3の後に、図6(g)に示すように、始動装置95が作動しても、第2電池12から始動装置95に大電流が持ち出されることはない。そのため、図6(i)(j)に実線の太線で示すように、両スイッチ21,22に大電流が流れることはない。その後の第4時点t4で、始動装置95の動作完了情報が検出されると(S121:YES)、第1スイッチ21がONに戻される。
【0063】
他方、比較例の場合は、第3時点t3の後も、図6(c)に破線の太線で示すように、第2フェイルセーフ処理A2が行われず、第1スイッチ21がONに維持される。そのため、第3時点t3の後に、図6(g)に示すように、始動装置95が作動すると、第2電池12から始動装置95に大電流が持ち出されて、図6(i)(j)に破線で示すように、両スイッチ21,22に大電流が流れる。
【0064】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。第2スイッチ22がON固着故障であると判定した際には、第1スイッチ21をONに固定する第1フェイルセーフ処理A1を行う。それにより、第1電池11から第2負荷92への給電を確保できる。
【0065】
しかし、このように第1スイッチ21をONに固定したままでは、始動装置95の作動時に、第2電池12から両スイッチ21,22を通じて始動装置95に大電流が流れて、第2スイッチ22が焼損してしまうおそれがある。
【0066】
その点、本実施形態では、第1フェイルセーフ処理A1を行っている状態において、第1~第3の要件すべてを満たすことを条件に、第1スイッチ21をOFFにしてからONに戻す第2フェイルセーフ処理A2を行う。それにより、第1スイッチ21がOFFの状態で始動装置95が作動するようにできる。そのため、第2電池12から両スイッチ21,22を通じて始動装置95に大電流が流れるのを回避できる。
【0067】
しかも、このように、第2フェイルセーフ処理A2を行う期間を、第1~第3の要件すべてを満たす期間に限定することで、必要もないのに第1スイッチ21をOFFにする期間をなるべく減らして、第1電池11から第2負荷92へ給電できなくなる期間を、なるべく短くすることができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等は、同一の符号を付して説明する。本実施形態は、第1実施形態をベースに、これと異なる点を中心に説明する。
【0069】
図7は、第2実施形態の電源制御装置60及びその周辺を示す回路図である。電源装置50は、第1実施形態でいう発電機96は有しておらず、代わりにそれとは別の発電機99を有する。さらに、電源装置50は、第1実施形態の構成に加えて、第3スイッチ23と第4スイッチ24と第2メカリレー33とを有する。第3スイッチ23は、第1電池11と発電機99との電気的な接続及び切離しを行う。第4スイッチ24は、第2電池12と発電機99との電気的な接続及び切離しを行う。
【0070】
なお、図7では、図1と比べて、第1スイッチ21、第2スイッチ22、メカリレー31、及び第2負荷92の位置が異なるが、それらと他の部材との電気的な接続関係は、図1の場合と同様である。
【0071】
第4スイッチ24は、第2スイッチ22の場合と同様に、2つの半導体スイッチ24sを有する。第3スイッチ23も、第1スイッチ21の場合と同様に、2つの半導体スイッチ22sを備える。第2メカリレー33は、ノーマリONのリレーであり、第3スイッチ23と並列に設けられている。
【0072】
制御部63は、第1スイッチ21、第2スイッチ22、メカリレー31に加え、第3スイッチ23、第4スイッチ24、第2メカリレー33を制御する。
【0073】
故障検出部61は、第2スイッチ22のソース電圧に加え、第4スイッチ24のソース電圧も検出する。そして、制御部63は、第2スイッチ22のソース電圧から第2スイッチ22のON固着故障を検出するのに加え、第4スイッチ24のソース電圧から第4スイッチ24のN固着故障を検出する。
【0074】
第3スイッチ23及び第4スイッチ24についての説明は、第1実施形態における第1スイッチ及び第2スイッチ22についての説明において、「第1スイッチ21」を「第3スイッチ23」に読み替え、「第2スイッチ22」を「第4スイッチ24」に読み替えると共に、「第2負荷92」を「発電機99」に読み替えて略同様である。第4スイッチ24がON固着故障した際に、第3スイッチ23をONにする第1フェイルセーフ処理A1を行う理由は、発電機99からの給電先として、ON固着故障した第4スイッチ24を通じての第2電池12以外に、第1電池11を確保するためである。
【0075】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第2スイッチ22の焼損を防止することができる。さらに、それと同様のメカニズムで、第4スイッチ24の焼損を防止することができる。
【0076】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0077】
図8は、第3実施形態の電源制御装置60を示す回路図である。第2スイッチ22は、直列に接続された2つずつの半導体スイッチ22sが2並列に接続された計4つの半導体スイッチ22sを有している。直列に接続された各2つの半導体スイッチ22sは、寄生ダイオードの向きを互いに反対に向けて接続されている。
【0078】
図9は、第2スイッチ22を示す回路図である。本実施形態では、図9(a)に示すように、第2スイッチ22のいずれかの列(図では左側)にON固着故障が検出されると、第2スイッチ22を構成する4つすべての半導体スイッチ22sにON指令を出して、図9(b)に示すように、4つ全ての半導体スイッチ22sをONに固定する。これにより、ON固着故障が検出されていない列(図では右側)からも電流が流れるようになる。
【0079】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。もし仮に図9(a)に示すように、ON固着故障した側の列のみから電流が流れる場合には、ON固着故障した半導体スイッチ22sの電気抵抗により、第2スイッチ22全体の電気抵抗が大きくなるおそれがある。その点、本実施形態では、片側の列にON固着故障が検出された場合には、ON固着故障が検出されていない他方の列もONに固定する。その他方の列から主に電流が流れることにより、第2スイッチ22全体の電気抵抗が大きくなるのを抑えることができる。
【0080】
[他の実施形態]
以上の実施形態は、例えば次のように変更して実施することができる。始動装置95とは別に、アイドリングストップ等の際のエンジンの再始動を行うISGを設け、当該ISGを、第1負荷91の1つとしてもよい。そして、電源制御装置60は、始動装置95の作動に対して行うのと同様に、ISGの作動に対しても第2フェイルセーフ処理A2を行うようにしてよい。この場合には、ISGも本発明でいう「大電流負荷」に該当する。
【0081】
リアガラス等の曇り止めを行う電熱線やエアコン等を第1負荷91の1つとしてもよい。そして、電源制御装置60は、始動装置95の作動に対して行うのと同様に、電熱線やエアコン等の作動に対しても第2フェイルセーフ処理A2を行うようにしてよい。この場合には、電熱線やエアコン等も本発明でいう「大電流負荷」に該当する。
【0082】
車両を、障害者用の車両にして、障害者又は車いすを持ち上げるリフトを、第1負荷91の1つとして設けてもよい。そして、電源制御装置60は、始動装置95の作動に対して行うのと同様に、リフトの作動に対しても第2フェイルセーフ処理A2を行うようにしてよい。この場合には、リフトも本発明でいう「大電流負荷」に該当する。
【0083】
また、第1実施形態及び第3実施形態において、第1スイッチ21を、第3実施形態の第2スイッチ22と同様に4つの半導体スイッチ22sを有するスイッチにしてもよい。また、第2実施形態において、第1~第4の各スイッチ21~24を、第3実施形態の第2スイッチ22と同様に4つの半導体スイッチ22sを有するスイッチにしてもよい。
【0084】
各実施形態において、作動予測情報が検出されているか否かを判定するステップ(S112)をなくしてもよい。また、各実施形態において、動作完了情報が検出されているか否かを判定するステップ(S111,S121)、及び第1電池11の電圧V1と第2電池12の電圧V2とを比較するステップ(S113)のうちのいずれか一方をなくしてもよい。それらの場合は、3つの要件のうち残った要件を満たすことを条件に、第2フェイルセーフ処理A2を行うことになる。
【0085】
各実施形態において、S113で第2電池12の電圧V2と比較する第1電池11の電圧V1を、第1電池11の現在の電圧V1にしてもよい。各実施形態において、S113で第1電池11の電圧V1と比較する第2電池12の電圧V2を、始動装置95が作動した場合において、なると推定される第2電池12の電圧V2にしてもよい。
【0086】
各実施形態において、第1フェイルセーフ処理A1を行わないようにして、第1フェイルセーフ処理A1を行わなくても第1スイッチ21がONになるときにのみ、第2フェイルセーフ処理A2を行うようにしてもよい。ON固着故障が検出された場合のみならず、ON固着故障は検出されていないが第2スイッチ22がONである場合においても、第2フェイルセーフ処理A2を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
11…第1電池、12…第2電池、21…第1スイッチ、22…第2スイッチ、50…電源装置、60…電源制御装置、61…故障検出部、62…情報検出部、63…制御部、92…第2負荷、95…始動装置、A1…第1フェイルセーフ処理、A2…所定フェイルセーフ処理、V1…第1電池の電圧、V2…第2電池の電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9