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特許7172812積層コア、回転電機、および積層コアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】積層コア、回転電機、および積層コアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019073593
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020174427
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】衞藤 順
(72)【発明者】
【氏名】山内 一輝
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-253247(JP,A)
【文献】特開平09-149605(JP,A)
【文献】特開2002-035969(JP,A)
【文献】特開平11-290965(JP,A)
【文献】特開平11-069733(JP,A)
【文献】特開2004-350351(JP,A)
【文献】特開2000-295800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向(TD)に積層された複数の鋼板(21)と、
複数の前記鋼板を連結している線状の溶接痕であって、複数の前記鋼板が露出する端面(22)において複数の前記鋼板にわたって延びており、前記鋼板の厚さ(TH21)より長い波長(LD42)により変動している溶接深さ(DP30)を有する線状の溶接痕(30)とを備え
前記溶接痕は、前記端面において、前記鋼板の厚さより大きい幅(WD30)を有し、
前記溶接痕は、深さ方向に関して、複数の前記鋼板にわたって変動することなく延びる連続部分(34)、および、複数の前記鋼板にわたって周期的に変動する変動部分(35)を有し、
前記連続部分における深さ(DP34)と前記変動部分における深さ(DP35)とは、実質的に等しい、積層コア。
【請求項2】
前記溶接痕は、前記端面において、変動している幅(WD30)を有し、前記幅は、前記鋼板の厚さより小さい片側変動幅(WS30)を有する請求項1に記載の積層コア。
【請求項3】
前記溶接痕は、前記厚さ方向に対して傾斜して延びている請求項1または請求項2に記載の積層コア。
【請求項4】
前記溶接痕をひとつとする複数の前記溶接痕を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層コア。
【請求項5】
複数の前記溶接痕は、等間隔に配置されている請求項4に記載の積層コア。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の前記積層コアをひとつとする複数の前記積層コアが積層的に配置されている積層コア。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の前記積層コアを回転子コア(7)または固定子コア(11)として備える回転電機であって、
前記回転子コアまたは前記固定子コアの軸方向に沿って前記溶接深さが変動している前記溶接痕を備える回転電機。
【請求項8】
複数の鋼板(21)を厚さ方向(TD)に積層する積層工程と、
溶接装置(50)により溶接エネルギーの複数のパルスを発生するパルス発生工程と、
前記溶接エネルギーを、複数の前記鋼板が露出する端面(22)の溶接位置に与え、前記溶接エネルギーに応じた溶接深さの溶接痕を形成する溶接工程と、
前記溶接位置を前記端面の上において複数の前記鋼板にわたって移動させる移動工程とを備え、
前記溶接工程と前記移動工程とは、複数の前記パルスにより、前記鋼板の厚さ(TH21)より長い波長(LD42)で変動する前記溶接深さをもち、前記端面において、前記鋼板の厚さより大きい幅(WD30)を有する線状の前記溶接痕を前記端面の上において形成し、
前記溶接工程と前記移動工程とは、複数の前記パルスにより、深さ方向に関して、複数の前記鋼板にわたって前記溶接深さが変動することなく延びる連続部分(34)、および、複数の前記鋼板にわたって前記溶接深さが周期的に変動し、前記連続部分における深さ(DP34)と実質的に等しい深さ(DP35)を有する変動部分(35)を形成する積層コアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、積層コア、回転電機、および積層コアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、積層コアにおける複数の鋼板を連結する技術を開示する。従来技術として列挙された先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5457753号
【文献】特許第3543328号
【文献】特許第3546579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3の積層コアは、複数の鋼板の連結不良を生じる場合がある。連結不良は、溶接不良、溶接後における溶接痕の割れなど、多様な要因によって発生する場合がある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、積層コア、回転電機、および積層コアの製造方法にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、複数の鋼板が安定的に連結された積層コア、回転電機、および積層コアの製造方法を提供することである。
【0006】
開示される他のひとつの目的は、溶接不良が抑制された積層コア、回転電機、および積層コアの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された積層コアは、厚さ方向(TD)に積層された複数の鋼板(21)と、複数の鋼板を連結している線状の溶接痕であって、複数の鋼板が露出する端面(22)において複数の鋼板にわたって延びており、鋼板の厚さ(TH21)より長い波長(LD42)により変動している溶接深さ(DP30)を有する線状の溶接痕(30)とを備え、溶接痕は、端面において、鋼板の厚さより大きい幅(WD30)を有し、溶接痕は、深さ方向に関して、複数の鋼板にわたって変動することなく延びる連続部分(34)、および、複数の鋼板にわたって周期的に変動する変動部分(35)を有し、連続部分における深さ(DP34)と変動部分における深さ(DP35)とは、実質的に等しい
【0008】
開示される積層コアによると、線状の溶接痕が複数の鋼板を連結している。この溶接痕は、変動している溶接深さを有する。しかも、溶接深さは、鋼板の厚さより長い波長で変動している。変動する溶接深さは、鋼板と鋼板との合わせ部における応力集中を緩和し、割れの発生、割れの成長を抑制する。この結果、複数の鋼板が安定的に連結された積層コアが提供される。
【0009】
ここに開示された回転電機は、上記積層コアを回転子コア(7)または固定子コア(11)として備える回転電機であって、回転子コアまたは固定子コアの軸方向に沿って溶接深さが変動している溶接痕を備える。
【0010】
ここに開示された積層コアの製造方法は、複数の鋼板(21)を厚さ方向(TD)に積層する積層工程と、溶接装置(50)により溶接エネルギーの複数のパルスを発生するパルス発生工程と、溶接エネルギーを、複数の鋼板が露出する端面(22)の溶接位置に与え、溶接エネルギーに応じた溶接深さの溶接痕を形成する溶接工程と、溶接位置を端面の上において複数の鋼板にわたって移動させる移動工程とを備え、溶接工程と移動工程とは、複数のパルスにより、鋼板の厚さ(TH21)より長い波長(LD42)で変動する溶接深さをもち、端面において、鋼板の厚さより大きい幅(WD30)を有する線状の溶接痕を端面の上において形成し、溶接工程と移動工程とは、複数のパルスにより、深さ方向に関して、複数の鋼板にわたって溶接深さが変動することなく延びる連続部分(34)、および、複数の鋼板にわたって溶接深さが周期的に変動し、連続部分における深さ(DP34)と実質的に等しい深さ(DP35)を有する変動部分(35)を形成する
【0011】
開示される積層コアの製造方法によると、鋼板の厚さより長い波長で変動する溶接深さをもつ溶接痕が形成される。変動する溶接深さは、鋼板と鋼板との合わせ部における応力集中を緩和し、割れの発生、割れの成長を抑制する。この結果、複数の鋼板が安定的に連結される積層コアの製造方法が提供される。
【0012】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る回転電機を示す断面図である。
図2】回転子コアを示す側面図である。
図3】固定子コアを示す平面図である。
図4】固定子コアを示す側面図である。
図5】溶接痕を示す部分拡大図である。
図6】溶接痕を示す断面図である。
図7】製造装置を示す断面図である。
図8】製造方法を示すフローチャートである。
図9】複数のパルスと距離との関係を示す波形図である。
図10】複数のパルスと時間との関係を示す波形図である。
図11】ひとつのスポットにおける温度変化を示す波形図である。
図12】降伏応力と温度との関係を示す波形図である。
図13】第2実施形態に係る固定子コアを示す側面図である。
図14】第3実施形態に係る固定子コアを示す側面図である。
図15】第4実施形態に係る固定子コアを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
複数の実施形態が、図面を参照しながら説明される。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0015】
第1実施形態
図1において、回転電機1が示されている。回転電機1は、例えば、電動発電機を提供する。回転電機1は、機器の動力系統2(PWT)と作用的に連結されている。回転電機1は、動力系統2から供給される動力により発電する発電機として機能することができる。回転電機1は、動力系統2に動力を供給する電動機として機能することができる。回転電機1は、発電機、または電動機でもよい。動力系統2は、内燃機関を含む場合がある。動力系統2は、機器の主要な動力を提供する。この明細書において、機器は、乗り物、空調装置、揚水装置などを含む。さらに、乗り物の語は、車両、船舶、航空機、シミュレーション装置、アミューズメント装置を含む。
【0016】
回転電機1は、制御装置3(CNT)と電気的に接続されている。制御装置3は、インバータ回路を含む。回転電機1は、発電機として機能するとき、動力系統2によって駆動され、電力を出力する。制御装置3は、回転電機1が発電機として利用されるとき、回転電機1から出力される電力を整流する整流回路として機能する。回転電機1は、電動機として機能するとき、動力系統2の回転を支援する。制御装置3は、回転電機1が電動機として利用されるとき、回転電機1に多相交流電力を供給する。この実施形態では、多相交流電力は、三相電力である。
【0017】
回転電機1は、回転子4および固定子10を有する。回転子4は、軸AXの周りを回転可能である。固定子10は、軸AXを有する筒状の部材である。以下の説明において、軸方向、径方向、および周方向の語は、軸AXによって規定される。回転子4と固定子10とは、ハウジング6に収容されている。ハウジング6は、固定子10を固定し、かつ回転子4を回転可能に支持している。ハウジング6は、動力系統2の部品を提供する場合がある。例えば、ハウジング6は、クランクケースの一部、またはトランスミッションケースの一部を提供する場合がある。
【0018】
回転子4は、固定子10と磁気的に結合されている。回転子4は、シャフト5によって、ハウジング6に対して回転可能に支持されている。シャフト5は、回転軸を提供する。回転軸は、動力系統2に連結されている。回転子4は、固定子10の径方向内側に配置されている。回転子4は、周方向に沿って配置された複数の磁極を有する。複数の磁極は、回転子4に埋設された複数の永久磁石によって形成されている。回転子4は、多様な構造によって提供することができる。回転子4は、例えば、8個(N極:4個、S極:4個)の磁極を有する。
【0019】
固定子10は、固定子コア11を有する。固定子コア11は、筒状である。固定子コア11は、円環状でもある。固定子コア11は、軸方向に沿って積層された複数の鋼板を有する。固定子コア11は、周方向に配置された複数のスロットを有する。複数のスロットは、周方向に関して、等しいピッチで配置されている。複数のスロットは、いくつかの異なるピッチで配置されていてもよい。複数のスロットは、複数の鋼板を貫通するように、軸方向に延びている。さらに、複数のスロットは、径方向に広がっている。典型的な固定子コア11は、環状のバックコアを有する。固定子コア11は、バックコアから径方向内側に延び出す複数のティースを有する。複数のティースは、それらの間に、複数のスロットを形成している。
【0020】
固定子10は、固定子コイル12を有する。固定子コイル12は、固定子コア11に装着されている。固定子コイル12は、収容導体13と、コイルエンド14、15とを有する。収容導体13は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている。収容導体13は、スロットに収容されている。コイルエンド14、15は、固定子コア11の端部に位置づけられている。コイルエンド14、15は、固定子コア11から軸方向に突出している。コイルエンド14、15は、固定子コイル12に含まれる複数のセグメント導体の集合体である。コイルエンド14、15において、ひとつのセグメント導体は、ひとつのスロット内に位置する収容導体13を、他の異なるスロット内に位置する収容導体13に接続している。コイルエンド14、15は、連続したセグメント導体のターン部によって提供される場合がある。コイルエンド14、15は、異なるセグメント導体を接合した接合部によって提供される場合がある。
【0021】
ひとつのコイルは、連続線によって、または複数のセグメントを接合することによって提供することができる。この実施形態では、接合された複数のセグメントによって、ひとつのコイルが提供されている。なお、複数のセグメントは、多様な接合手法によって接合することができる。接合手法は、例えば、TIG溶接、電気抵抗溶接、はんだ接合などを利用することができる。また、ひとつのコイルは、ひとつの相とみなすことができるコイルである。ひとつのコイルは、その中に、電気角が異なる複数のコイル要素を含んでいてもよい。例えば、ひとつのコイルは、電気角が数度異なる複数のコイル要素を含むことができる。
【0022】
固定子コイル12は、結線ユニットを有する場合がある。結線ユニットは、多相結線を形成するように固定子コイル12を電気的に接続する。結線ユニットは、スター結線、またはデルタ結線を提供するように複数の引出線を接続する。結線ユニットは、複数の結線導体を含む。複数の結線導体は、固定子コイル12のための接続部材である。複数の結線導体は、導電部材製である。結線ユニットは、スター結線における3つの入出力端(電力端)を提供する端部導体を有する。結線ユニットは、スター結線における中性点を提供する中性点導体を有する。結線導体は、バスバーとも呼ばれる。
【0023】
図2において、回転子4は、回転子コア7を有する。回転子コア7は、複数の鋼板21を積層した積層体である。複数の鋼板21は、厚さ方向TDに積層されている。厚さ方向TDは、軸方向ADでもある。厚さ方向TDは、積層方向とも呼ばれる。鋼板21は、電磁鋼板によって提供することができる。回転子コアの外周面は、複数の鋼板21が露出する端面22によって提供されている。複数の鋼板21は、互いに接合されて、ひとかたまりの磁性体コアとして取り扱い可能である。
【0024】
複数の鋼板21は、線状の溶接痕30によって連結されている。溶接痕30は、溶接工程における溶融池の痕跡を示している。溶接痕30は、溶融痕とも呼ばれる。複数の鋼板21は、複数の溶接痕30において部分的に溶接されている。溶接痕30は、端面22において複数の鋼板21にわたって延びている。溶接痕30は、複数の鋼板21が、溶接エネルギーによって部分的に溶融した後に、再び凝固することにより形成されている。溶接痕30は、複数の鋼板21にわたって連続的に延びている。
【0025】
図3において、固定子10は、固定子コア11を有する。固定子コア11は、複数の鋼板21を積層した積層体である。複数の鋼板21は、厚さ方向TDに積層されている。厚さ方向TDは、軸方向ADでもある。鋼板21は、電磁鋼板によって提供することができる。固定子コア11の外周面は、複数の鋼板21が露出する端面22によって提供されている。複数の鋼板21は、互いに接合されて、ひとかたまりの磁性体コアとして取り扱い可能である。複数の鋼板21は、複数の溶接痕30において部分的に溶接されている。溶接痕30は、端面22において複数の鋼板21にわたって延びている。溶接痕30は、複数の鋼板21が、溶接エネルギーによって部分的に溶融した後に、再び凝固することにより形成されている。溶接痕30は、複数の鋼板21にわたって連続的に延びている。
【0026】
固定子コア11は、複数の溶接痕30を備える。複数の溶接痕30は、互いに相似である。複数の溶接痕30は、固定子コア11の周方向CDに関して、等間隔に配置されている。複数の溶接痕30の間隔は、360×1/8(度)である。
【0027】
図4において、固定子コア11は、複数の部分コア11a、11b、11cを有する。複数の部分コア11a、11b、11cは、厚さ方向TDに積層されている。この実施形態では、固定子コア11は、複数の部分コア11a、11b、11cが積層的に配置されている積層コアによって提供されている。
【0028】
以下の説明において、積層コア20は、回転子コア7、または、固定子コア11、または、回転子コア7と固定子コア11との両方を指す場合がある。積層コア20は、代表的に、固定子コア11を示す場合がある。回転子コア7の溶接痕31と、固定子コア11の溶接痕32とは、代表的に溶接痕30と呼ばれる。
【0029】
図5は、図3の矢印Vにおける溶接痕30を示している。この実施形態では、軌道線41は、厚さ方向TDに延びる直線である。軌道線41は、曲線でもよい。溶接痕30の縁33は、軌道線41に沿って波状に変動している。縁33は、溶接時に形成された溶融池の形状に対応している。縁33は、溶接痕30の幅WD30を規定している。溶接痕30は、端面22において、鋼板21の厚さTH21より大きい幅WD30を有する(TH21<WD30)。溶接痕30は、端面22において、変動している幅WD30を有する。幅WD30は、鋼板21の厚さTH21より小さい片側変動幅WS30を有する(WS30<TH21)。溶接痕30の幅WD30の両側変動幅は、2×WS30である。両側変動幅2×WS30は、鋼板21の厚さTH21より小さい(2×WS30<TH21)。
【0030】
図中において、破線の円は、端面22におけるレーザ溶接のためのレーザスポット42を示す。レーザスポット42は、直径D42を有する。レーザスポット42は、楕円形でもよい。溶接痕30は、複数のレーザスポット42によって断続的に形成された複数の溶融池の痕跡でもある。溶接痕30の縁33は、レーザスポット42よりやや小さいか、または、やや大きい。図示の例では、縁33は、レーザスポット42より大きく描かれている。
【0031】
後述する製造方法において、複数のレーザスポット42は、距離LD42だけ離れて照射されている。距離LD42は、複数のレーザスポット42の中心の間の距離である。距離LD42は、複数の鋼板21にわたって連続的に延びる溶接痕30を形成するように設定されている。距離LD42は、鋼板21の厚さTH21より大きい。距離LD42は、後述する溶接深さDP30の変動の波長LD42を規定している。
【0032】
複数のレーザスポット42は、互いに重複している。この重複の痕跡は、縁33の形状として溶接痕30にあらわれている。距離LD42は、鋼板21の厚さTH21より大きく、レーザスポット42の直径D42より小さい(TH21<LD42<D42)。望ましい形態では、距離LD42は、鋼板21の厚さTH21より大きく、レーザスポット42の半径D42/2より小さい(TH21<LD42<D42/2)。この結果、軌道線41の上において、少なくとも2つのレーザスポット42が部分的に重複している。さらに、軌道線41の上において、3つのレーザスポット42が部分的に重複している。図示の例では、第1のレーザスポット42aに対して、次に照射された第2のレーザスポット42bと、さらに次に照射された第3のレーザスポット42cとが部分的に重なっている。2つのレーザスポット42の重複量は、直径D42の60±10%とすることができる。複数のレーザスポット42の重複は、後述する溶接深さの変動による傾斜を規定する。複数のレーザスポット42の重複は、レーザ溶接による細く鋭い溶け込み形状においても、溶接深さの変動による傾斜角を小さくすることを可能とする。
【0033】
図6は、図3のVI-VI線における断面を示している。図中には、軌道線41における溶接痕30の断面が図示されている。溶接痕30は、積層コアである固定子コア11の一端から他端まで連続的に延びている。溶接痕30は、初期位置LSと終了位置LFとの間の距離LLにおいて実行されるレーザ溶接工程によって形成されている。初期位置LSは、最初の照射位置である。終了位置LFは、最後の照射位置である。レーザ溶接工程は、距離LLにおいて、複数のパルス状のレーザ照射を含む。レーザ溶接工程は、積層コアの範囲外から開始され、積層コアの範囲外において終端されてもよい。
【0034】
積層コアとしての回転子コア7において、溶接痕30の溶接深さDP30は、軸方向ADに沿って変動している。積層コアとしての固定子コア11において、溶接痕30の溶接深さDP30は、軸方向ADに沿って変動している。溶接深さDP30は、径方向RDにおける溶接痕30の厚さでもある。
【0035】
溶接痕30は、複数の鋼板21にわたって連続する一連の溶接深さDP30を有する。溶接深さDP30は、厚さ方向TDに沿って変動している。溶接痕30は、鋼板21の厚さTH21より長い波長LD42により変動している溶接深さDP30を有する。溶接深さDP30の最も深い頂点44は、ひとつのレーザスポット42によって生成された溶け込み形状の頂点でもある。溶接深さDP30の最も浅い頂点45は、2つのレーザスポット42によって生成された溶け込み形状の交点でもある。溶接痕30は、複数の鋼板21にわたって変動することなく延びる連続部分34、および、複数の鋼板21にわたって周期的に変動する変動部分35を有する。連続部分34における深さDP34と、変動部分35における深さDP35とは、実質的に等しい。
【0036】
複数の鋼板21は、合わせ部23において接している。言い換えると、複数の鋼板21は、合わせ部23において分離可能でもある。溶接痕30は、立体的な曲面状の境界面を有している。境界面は、複数の鋼板21と、溶接痕30との境界である。さらに、変動する溶接深さDP30は、境界面の最深部においても、曲線を提供している。この結果、境界面と合わせ部23とは、合わせ部23に対して直交することなく、合わせ部23に対して傾斜して交差する。言い換えると、溶接深さDP30の変動は、合わせ部23に対して直交することがないように調節されている。溶接深さDP30の変動は、少なくとも合わせ部23に対して直交する機会を抑制するように調節されている。傾斜した交差は、合わせ部23における応力集中を緩和する。この結果、合わせ部23から溶接痕30への割れの発生、割れの成長が抑制される。
【0037】
図7は、積層コアを製造するための製造装置を示す。製造装置は、対象物としての積層コア20を設置するための溶接ステージ51(STG)を有する。溶接ステージ51は、積層コア20を固定する。後述のように、溶接ステージ51は、積層コア20を移動させる場合がある。積層コア20は、溶接装置50に端面22を対向させるように溶接ステージ51に保持される。溶接装置50は、パルス方式のレーザ溶接装置である。溶接装置50は、パルス式のレーザ発振器52を有する。溶接装置50は、端面22に対向して位置づけられるノズル53を有する。ノズル53は、レーザビーム54を照射するとともに、シールドガス55を供給する。レーザビーム54は、端面22の上の溶接位置において、図5のレーザスポット42を形成する。レーザスポット42に与えられる溶接エネルギーは、鋼板21を溶融させ、溶融池56を形成する。レーザビーム54は、パルス状に照射される。図中において、任意の溶接位置PLが例示されている。
【0038】
溶接装置50は、制御装置(CNT)57を有する。制御装置57は、レーザ発振器52を制御する。さらに、制御装置57は、ノズル53および溶接ステージ51を制御する。制御装置57は、ノズル53と積層コア20とを相対的に移動させることにより、溶接位置を端面22の上において複数の鋼板21にわたって移動させる。この結果、ノズル53は、例えば、移動方向FDに移動する。
【0039】
この明細書における制御装置3、57は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。制御装置、または制御システムは、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理としてのアルゴリズム、または(b)機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。制御装置は、少なくともひとつのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアである少なくともひとつのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、または(iii)により提供することができる。
【0040】
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくともひとつのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくともひとつのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくともひとつのメモリと、少なくともひとつのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、RISC-CPUなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
【0041】
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC:Application-Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、SoC:System on a Chip、PGA:Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどとも呼ばれる。デジタル回路は、プログラムおよび/またはデータを格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0042】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
【0043】
制御装置と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、ブロック、モジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、機能的な手段と呼ばれる。
【0044】
この開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0045】
図8において、回転電機の製造方法は、積層コアの製造方法を含む。以下の説明では、回転電機の製造方法を説明し、積層コア20の製造方法を詳細に説明する。工程、段階、ステップの語は、相互に入れ替え可能である。回転電機の製造方法170は、回転電機1のための複数の要素を準備する準備工程を含む。準備工程では、回転子4と、固定子10と、ハウジング6とが準備される。以下のステップ171-178は、固定子10を準備する工程を示す。この中には、積層コア20としての固定子コア11の製造方法が含まれている。
【0046】
ステップ171において、複数の鋼板21を厚さ方向TDに積層することにより積層体が形成される。ステップ171は、積層工程を提供する。ステップ172において、積層コア20は、溶接ステージ51に位置づけられる。ステップ172において、積層コア20とノズル53とは、レーザ溶接を開始するための初期位置LSに位置づけられる。ステップ172において、ノズル53が供給するレーザビーム54は、端面22の溶接位置の初期位置LSに位置づけられる。ステップ173において、溶接ステージ51とノズル53とを相対的に移動させることにより、相対的移動が開始される。相対的移動は、ステップ176まで継続される。ステップ173-176における工程は、溶接位置を端面22の上において複数の鋼板21にわたって移動させる移動工程を提供する。
【0047】
ステップ174において、レーザ発振器52は、溶接用のレーザのパルスを供給する。レーザ発振器52は、溶接エネルギーの複数のパルスを発生させる。このレーザは、レーザ溶接用であって、溶接エネルギーを有している。ステップ174は、レーザ発振工程を提供する。同時に、ステップ174において、端面22にレーザが照射される。溶接装置50は、溶接エネルギーを、複数の鋼板21が露出する端面22の溶接位置に与える。同時に、溶接装置50は、溶接エネルギーに応じた溶接深さの溶接痕30を形成する溶接工程を提供する。
【0048】
図9は、レーザの出力LP(W)の波形を示す。横軸は距離L(mm)である。レーザは、複数のパルスP1、P2、P3・・・Pnとして供給される。複数のパルスの間隔は、距離LD42である。レーザの出力LVは、溶接エネルギーを供給する。
【0049】
図10は、レーザの出力LP(W)の波形を示す。横軸は時間T(sec)である。レーザパルスP1は、時刻t1において開始され、時刻t2において停止される。次のレーザパルスP2は、時刻t2において開始される。レーザパルスの供給期間であるパルス幅TAと、パルス間の休止期間TRとは、デューティ比を規定している。デューティ比は、移動工程によって提供される溶接位置の相対的な移動速度との関係の下において、溶接痕30の形状、および溶接深さDP30の形状を規定する。
【0050】
図11は、端面22の上における任意の溶接位置PLにおける温度変化の波形を示す。図は、溶接位置PLから溶接を開始した場合を示している。ひとつめのレーザのパルスP1により、溶接位置PLの温度は、急激に上昇する。温度は、溶融温度MTを超える。これにより、溶接位置PLにおいて溶融池が形成される。レーザの照射が終了すると、温度は急速に低下する。これにより、溶融池の金属は凝固し、溶接が実行される。溶接位置PLの温度が常温域BTに戻る前に、さらに、ふたつめのレーザのパルスP2が照射される。ふたつめのパルスP2により、溶接位置PLの温度は、再び上昇する。溶接位置PLの温度は、溶融温度MTを超える場合がある。ふたつめのパルスP2により、溶接位置PLの温度は、溶融温度MTを超えない場合もある。複数のレーザスポット42が60(%)程度重複している場合、パルスP2によってひとつめのレーザスポット42の中心は、再び溶融温度MTを超える。いずれの場合も、溶接位置PLを中心とする溶接痕30の全体において温度が上昇する。さらに、みっつめのパルスP3により、溶接位置PLの温度は、溶融温度MTを超えないが、上昇する。このように、溶接位置PLの温度は、その位置を溶接するひとつめのパルスP1が照射された後に、繰り返して上昇する。しかも、溶接位置PLの温度は、溶融温度MTを超える温度に加熱され、冷却された後に、再び溶融温度MTの近傍まで加熱される。この結果、温度が上昇するたびに溶接痕30の焼きなましが実行される。
【0051】
図12は、鋼板21の材料の降伏応力YS(MPa)の温度特性を示す。降伏応力YSは、高温ほど低い。焼きなましは、降伏応力の低下をもたらす。また、焼きなましは、ひとつめのパルスP1による溶融と、凝固とに伴う残留応力を低下させる。この結果、後続のパルスにより与えられる温度上昇は、先行するパルスによる溶接箇所の応力を低下させる。
【0052】
レーザにより与えられる溶接エネルギーは、比較的深い溶け込み形状を生成する。この結果、複数の鋼板21にわたる深い溶け込形状が得られる。さらに、溶け込み形状に応じた、溶接痕30が得られる。特に、深い溶融池は、変動する溶接深さをもつ溶接痕30を形成する。
【0053】
図8に戻り、ステップ175において、制御装置57は、溶接位置が終了位置LFに到達したか否かを判定する。制御装置57は、溶接ステージ51による移動量、またはノズル53の移動量を計測するセンサを備えることができる。ステップ175において、溶接位置が終了位置LFではないと判定された場合(NO)、ステップ174の処理が繰り返される。ステップ175において、溶接位置が終了位置LFを超えたことが判定された場合(YES)、ステップ176へ進む。
【0054】
ステップ174と、ステップ175との繰り返しにより、ひとつのレーザパルスの照射と、距離LD42の相対的な移動とが提供される。溶接工程と移動工程とは、複数のパルスにより、端面22の上において線状の溶接痕30を形成するように実行される。線状の溶接痕30は、鋼板21の厚さTH21より長い波長LD42で変動する溶接深さDP30をもつ。溶接工程と移動工程とは、合わせ部23において、傾斜している溶接深さDP30の変動を形成する。合わせ部23における溶接深さDP30の変動は、合わせ部23における応力の集中を抑制する。合わせ部23における溶接深さDP30の変動は、複数の合わせ部23に応力を分散させる。
【0055】
さらに、溶接工程と移動工程とは、複数のパルスにより、深さ方向に関して、連続部分34と、変動部分35とを形成する。連続部分34は、複数の鋼板21にわたって深さDP34が変動することなく延びる。変動部分35は、複数の鋼板21にわたって深さDP35が周期的に変動し、連続部分34における深さDP34と実質的に等しい深さDP35を有する。
【0056】
ステップ176では、相対的移動が停止される。ステップ177では、溶接ステージ51から、積層コア20が取り出される。ステップ178では、積層コア20が、回転子コア7、または固定子コア11として、利用される。積層コア20が回転子コア7である場合には、回転子コイル、または磁石が装着される。積層コア20が固定子コア11である場合には、固定子コイル12が装着される。ステップ179では、ハウジング6に固定子10と回転子4とが装着され、回転電機1が組み立てられる。こうして、回転電機1が製造される。
【0057】
上記実施形態において、レーザの出力は、1000(W)以上、3000(W)以下とすることができる。レーザスポット42の直径は、0.6(mm)以上、3.5(mm)以下とすることができる。レーザパルスの発生周波数は、6(Hz)以上、60(Hz)以下とすることができる。溶接位置の相対的な送り速度は、5(mm/sec)以上、30(mm/sec)以下とすることができる。レーザの出力は、例えば、1500(W)である。レーザのパルス幅TAは、例えば、10(msec)とすることができる。鋼板21の厚さTH21は、例えば、0.25(mm)とすることができる。複数のレーザパルスの距離LD42は、例えば、0.6(mm)とすることができる。レーザスポット42の直径は、1.5(mm)とすることができる。レーザパルスのデューティは、50(%)以下とすることができ、例えば、36(%)とすることができる。
【0058】
以上に述べた実施形態によると、線状の溶接痕30は、積層コアにおける複数の鋼板21を連結している。この溶接痕30は、深さが変動している溶接深さDP30を有する。しかも、溶接深さDP30は、鋼板21の厚さTH21より長い波長LD42で変動している。溶接深さの変動は、鋼板21と鋼板21との合わせ部23における応力集中を緩和し、割れの発生、割れの成長を抑制する。この結果、複数の鋼板が安定的に連結された積層コアが提供される。また、積層コアは、回転電機の回転子コア、または、固定子コアとして用いて好適である。さらに、積層コアの製造方法によると、複数の鋼板が安定的に連結される積層コアの製造方法が提供される。
【0059】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、溶接痕32は、複数の部分溶接痕32a、32b、32cを有している。これに代えて、溶接痕30は、多様な線を描くように形成することができる。
【0060】
図13において、溶接痕30は、溶接痕232によって提供されてもよい。溶接痕232は、積層コア20としての固定子コア11の全域にわたって連続して延びている。溶接痕232は、厚さ方向TDに沿って直線状に延びている。溶接痕232は、軸方向ADと平行に直線状に延びている。溶接痕232は、複数の鋼板21の厚さ方向TDに沿って一端から他端まで連続して延びている。
【0061】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図14において、溶接痕30は、溶接痕332によって提供されてもよい。溶接痕332は、積層コアとしての固定子コア11の全域にわたって連続して延びている。溶接痕332は、直線状に延びている。溶接痕332は、複数の鋼板21の厚さ方向TDに対して傾斜している。
【0062】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図15において、溶接痕30は、溶接痕432によって提供されてもよい。溶接痕432は、複数の部分溶接痕432a、432b、432cを有する。厚さ方向TDに隣接する2つの部分溶接痕432は、厚さ方向TDおよび周方向CDに関して重複している。図示において、部分溶接痕432aは、部分溶接痕432bと重複している。図示において、部分溶接痕432bは、部分溶接痕432cと重複している。厚さ方向TDに隣接する2つの部分溶接痕432は、周方向CDに関して重複範囲VLにわたって重複している。厚さ方向TDに隣接する2つの部分溶接痕432は、厚さ方向TDに関して全域で重複している。この結果、複数の部分溶接痕432a、432b、432cは、実質的に積層コアとしての固定子コア11の全域にわたって延びている。複数の部分溶接痕432a、432b、432cのそれぞれは、直線状に延びている。複数の部分溶接痕432a、432b、432cのそれぞれは、複数の鋼板21の厚さ方向TDに対して傾斜している。
【0063】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0064】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0065】
上記実施形態では、溶接痕30は、直線状に延びている。これに代えて、溶接痕30は、曲線状に延びていてもよい。また、溶接痕30は、振動的な軌道線に沿って延びていてもよい。溶接痕30は、例えば、三角波、正弦波、または矩形波に沿って延びていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、溶接装置50として、パルス方式のレーザ溶接装置を採用した。これに代えて、パルス方式の電子ビーム溶接装置を採用してもよい。
【0067】
上記実施形態では、積層コア20は、回転電機1の回転子コア7または固定子コア11を提供する。これに代えて、積層コア20は、静止電機のコアを提供してもよい。積層コア20は、例えば、トランスのコアとして利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 回転電機、 2 動力系統、 3 制御装置、 4 回転子、
5 シャフト、 6 ハウジング、 7 回転子コア、 10 固定子、
11 固定子コア、 11a、11b、11c 部分コア、
12 固定子コイル、 13 収容導体、 14、15 コイルエンド、
20 積層コア、 21 鋼板、 22 端面、 23 合わせ部、
30 溶接痕、 31、32 溶接痕、
33 縁、 34 連続部分、 35 変動部分、
41 軌道線、 42 レーザスポット、 44、45 頂点、
50 溶接装置、 51 溶接ステージ、 52 レーザ発振器、
53 ノズル、 54 レーザビーム、 55 シールドガス、
56 溶融池、 57 制御装置、
232 溶接痕、
332 溶接痕、
432 溶接痕。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15