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特許7172819液体容器用基材、液体用容器およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】液体容器用基材、液体用容器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20221109BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20221109BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B32B27/10
D21H27/00 E
D21H27/30 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019076653
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020172086
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 友美子
(72)【発明者】
【氏名】槌本 真和
(72)【発明者】
【氏名】平野 大信
(72)【発明者】
【氏名】山中 啓史
(72)【発明者】
【氏名】北島 奈帆
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する液体容器用基材であって、
前記紙基材が3層以上のパルプ層から構成され、
前記紙基材の表裏の最外層の坪量の平均値をW1とし、前記表裏の最外層のすぐ内側に位置する第1内層の坪量の平均値をW2としたとき、W1/W2=1.1~2.4を満足し、
インターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度が200J/m 以上であることを特徴とする液体容器用基材。
【請求項2】
インターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度が200~600J/mであることを特徴とする請求項1に記載の液体容器用基材。
【請求項3】
前記紙基材の水分が6.0~9.5%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体容器用基材。
【請求項4】
前記紙基材が5層以上のパルプ層から構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体容器用基材。
【請求項5】
前記紙基材の内層がポリアクリルアミド系紙力増強剤およびカチオン化澱粉を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体容器用基材。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の液体容器用基材を用いた液体用容器。
【請求項7】
セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有し、インターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度が200J/m 以上である液体容器用基材の製造方法であって、
前記紙基材が3層以上のパルプ層から構成され、
前記紙基材の表裏の最外層の坪量の平均値をW1とし、前記表裏の最外層のすぐ内側に位置する第1内層の坪量の平均値をW2としたとき、W1/W2=1.1~2.4を満足するように、前記パルプ層を積層する積層工程を含む
ことを特徴とする液体容器用基材の製造方法。
【請求項8】
インターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度が200~600J/m であることを特徴とする請求項7に記載の液体容器用基材の製造方法。
【請求項9】
前記紙基材の内層がポリアクリルアミド系紙力増強剤およびカチオン化澱粉を含有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の液体容器用基材の製造方法。
【請求項10】
前記積層工程が、3層以上のパルプ層の多層抄き合わせ工程であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の液体容器用基材の製造方法。
【請求項11】
前記多層抄き合わせ工程において、表裏のいずれか一方の最外層から他方の最外層までを順番に抄き合わせることを特徴とする請求項10に記載の液体容器用基材の製造方法。
【請求項12】
前記多層抄き合わせ工程が、少なくとも1枚のワイヤーで脱水する工程と、当該ワイヤーとは異なるワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の液体容器用基材の製造方法。
【請求項13】
前記多層抄き合わせ工程が、第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水する工程と、これらのワイヤーとは異なる第3ワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の液体容器用基材の製造方法。
【請求項14】
前記多層抄き合わせ工程が、初期脱水部で少なくとも1枚のワイヤーで脱水する工程と、両面脱水部で第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水する工程と、これらのワイヤーとは異なる第3ワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の液体容器用基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器用基材、それを用いた液体用容器および液体容器用基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳パック等に利用される液体用容器では、パルプ繊維を主体とする紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層をラミネートしたラミネート紙が多く用いられている。紙基材としては、物性や生産性に優れていることから、パルプ層を複数積層させた多層抄き(多層構造)の紙基材が好ましく用いられる。
【0003】
多層抄きの紙基材は、低坪量のシートを数段重ねてプレスし、乾燥することにより製造される。高坪量の紙を抄紙する場合、多層抄きによる抄紙方法は、乾燥時の負荷が小さく、単層抄きより抄造速度を速くできるため、生産性の観点から有利である。
【0004】
しかし、多層抄きの紙基材を液体用容器等の基材に用いる場合、紙層間の強度が単層抄きより低下するため、成形加工の際に紙層間で剥離が起こるという懸念がある。
【0005】
多層抄きの紙基材の成形加工性を改良しようとする試みは既に種々公開されている。例えば、特許文献1には、3層以上の多層の紙基材において、外層を除く中層に柔軟剤を含有させることによって、罫線に沿って折り曲げ易くした液体容器用紙基材が開示されている。また、特許文献2には、多層構造の紙容器用原紙であって、外層は針葉樹クラフトパルプの配合率を40質量%以上とし、内層は針葉樹クラフトパルプの配合率を30質量%以下とした紙容器用原紙が開示されている。特許文献2の紙容器用原紙は、折り曲げ加工の際に、内層が先に破壊されるため、最表層に応力が集中して樹脂層が破壊されることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-144286号公報
【文献】国際公開第2010/113849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の液体容器用紙基材では、中層に繊維間結合を阻害する柔軟剤を含むことで、中層の強度が低下し、加工時にローラーでしごかれることで層間剥離が発生する懸念を有していた。また、特許文献2の紙容器用原紙でも、内層の強度を低くしており、加工時のしごきによる層間剥離が発生し易くなる懸念を有していた。
【0008】
紙基材をラミネートしたり印刷したりして液体用容器を製造する際には、紙基材は、張力が加えられた状態で、各種ローラーの曲面に沿って走行することになり、また湾曲方向も表側、裏側と絶えず変化するため、紙基材はしごかれた状態となる。そのため、紙基材の層間強度が低いと、しごかれた際に、層間剥離が発生し易くなる。
【0009】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、層間剥離が発生しにくく、ラミネート加工性及び印刷適性に優れた紙基材を有する液体容器用基材および当該液体容器用基材を用いた液体用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、多層構造の紙基材を構成する各パルプ層の坪量に着目した。そして、紙基材として、3層以上のパルプ層から構成される多層構造の紙基材を用い、当該紙基材内の外層の坪量を内層の坪量よりも増大するように調整すると、層間剥離が低減し、ラミネート加工性及び印刷適性が改善されることを見出した。また、紙基材の一方の面から他方の面に向かってパルプ層を順に抄き合わせる抄紙方法が有効であることも見出した。本発明はこのような知見を基に完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
【0011】
(1)セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する液体容器用基材であって、前記紙基材が3層以上のパルプ層から構成され、前記紙基材の表裏の最外層の坪量の平均値をW1とし、前記表裏の最外層のすぐ内側に位置する第1内層の坪量の平均値をW2としたとき、W1/W2=1.1~2.4を満足することを特徴とする液体容器用基材。
【0012】
(2)インターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度が200~600J/mであることを特徴とする前記(1)に記載の液体容器用基材。
【0013】
(3)水分が6.0~9.5%であることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の液体容器用基材。
【0014】
(4)前記紙基材が5層以上のパルプ層から構成されることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の液体容器用基材。
【0015】
(5)前記(1)~(4)のいずれか1項に記載の液体容器用基材を用いた液体用容器。
【0016】
(6)セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する液体容器用基材の製造方法であって、前記紙基材が3層以上のパルプ層から構成され、前記紙基材の表裏の最外層の坪量の平均値をW1とし、前記表裏の最外層のすぐ内側に位置する第1内層の坪量の平均値をW2としたとき、W1/W2=1.1~2.4を満足するように、前記パルプ層を積層する積層工程を含むことを特徴とする液体容器用基材の製造方法。
【0017】
(7)前記積層工程が、3層以上のパルプ層の多層抄き合わせ工程であることを特徴とする前記(6)に記載の液体容器用基材の製造方法。
【0018】
(8)前記多層抄き合わせ工程において、表裏のいずれか一方の最外層から他方の最外層までを順番に抄き合わせることを特徴とする前記(7)に記載の液体容器用基材の製造方法。
【0019】
(9)前記多層抄き合わせ工程が、少なくとも1枚のワイヤーで脱水する工程と、当該ワイヤーとは異なるワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことを特徴とする前記(7)または前記(8)に記載の液体容器用基材の製造方法。
【0020】
(10)前記多層抄き合わせ工程が、第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水する工程と、これらのワイヤーとは異なる第3ワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことを特徴とする前記(7)または前記(8)に記載の液体容器用基材の製造方法。
【0021】
(11)前記多層抄き合わせ工程が、初期脱水部で少なくとも1枚のワイヤーで脱水する工程と、両面脱水部で第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水する工程と、これらのワイヤーとは異なる第3ワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことを特徴とする前記(7)または前記(8)に記載の液体容器用基材の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液体容器用基材は、多層構造の紙基材を有し、層間剥離が発生しにくく、ラミネート加工性及び印刷適性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の液体容器用基材(以下、適宜、「基材」とも記載する。)は、セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有している。以下、本実施形態を構成する各部材について説明する。
【0025】
[紙基材]
紙基材は、セルロースパルプを主成分とする。ここで、主成分とは、紙基材を構成する成分のうち50質量%以上を占める成分をいう。
【0026】
(パルプ)
セルロースパルプの種類には特に制限はないが、強度の観点から化学パルプを含有することが好ましい。化学パルプとしては特に限定されないが、広葉樹クラフトパルプ(LKP)または針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することが好ましい。パルプは晒パルプでもよく、未晒パルプでもよい。以下、特に断りのない限り、LKPとNKPにはそれぞれ晒パルプまたは未晒パルプを含むが、広葉樹晒クラフトパルプをLBKP、針葉樹晒クラフトパルプをNBKPということがある。LKPとしては、アカシア材やユーカリ材等を、NKPとしてはラジアータパイン材等を使用することができる。
【0027】
LKPはNKPと比較して繊維が短く強度に劣るが、抄紙された紙の地合や平滑性に優れる。良好な印刷適性を得るためには、紙基材の良好な地合や平滑性が必要であるため、LKPの含有量は、パルプ成分の合計質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
紙基材には、上記NKPおよびLKP以外のパルプ(以下、他のパルプと称す)が含まれていてもよい。他のパルプとしては、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ(DIP)、あるいはケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等が挙げられる。他のパルプの含有量は、パルプ成分の合計質量に対して、3質量%未満であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましい。
【0029】
一般に、パルプ成分のフリーネス(濾水度)が小さくなれば、抄紙された製品の引張強度を大きくすることができる。しかし、フリーネスを小さくすると、引張強度が大きくなるだけでなく紙が硬くなる傾向にある。紙が硬すぎると成形加工性が悪くなるため、引張強度がある程度大きく、硬くなりすぎないバランスに優れた紙基材を実現するためには、パルプの離解フリーネス(csf)が410~600mlであることが好ましい。離解フリーネス(csf)は420~590mlであることがより好ましく、430~580mlであることがさらに好ましい。
【0030】
なお、離解フリーネス(csf)とは、紙基材を離解して得られたパルプスラリーを用いて測定したカナディアンスタンダードフリーネスの値を指す。離解フリーネス(csf)は、抄紙される前のセルロースパルプのフリーネスを増減することで調整することができる。抄紙される前のセルロースパルプのフリーネス(csf)は360~550mlであることが好ましく、370~540mlであることがより好ましく、380~530mlであることがさらに好ましい。
【0031】
(填料)
紙基材を抄紙する際に配合する填料は、製紙分野で一般に使用されている填料が使用可能であり、特に限定されない。填料の例としては、クレー、焼成カオリン、デラミネートカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が挙げられる。これらの填料はその目的に応じ、単独または2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0032】
(内添助剤)
紙基材を抄紙する際に、各種内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。内添助剤の例としては、サイズ剤、歩留まり向上剤、ろ水度向上剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、カチオン化澱粉等の澱粉類、嵩高向上剤、硫酸バンド、多価金属化合物、シリカゾル、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。
【0033】
紙基材の坪量は、特に限定されるものではないが、150~500g/mとすることが好ましい。150g/m以下であると、液体用容器に成型した際に剛性が不足するおそれがある。また500g/m2以上であると、原料を多量に使用するためコスト高となるおそれがある。
【0034】
(抄紙)
紙基材は、3層以上のパルプ層から構成される。紙基材は、5層以上であることが好ましい。複数のパルプ層から構成される紙基材は、一般に、複数のインレットから抄き合わされる多層抄き合わせによって製造される。層数が多い方が、各層の坪量を小さくできるため、地合が取りやすくなり、紙基材の表面性が向上し、面質がより良好な液体容器用基材とすることができる。また、層数が多い方が、適度に曲げ剛性が低下し、罫線部で折り曲げ易くなるため、罫線適性に優れた液体容器用基材とすることができる。
【0035】
ここで、紙基材を構成する複数の各パルプ層を特定するため、各パルプ層に名称を付けることとする。例えば、5層からなる多層構造の紙基材であれば、各層を表側から裏側に向かって第1層から第5層としたとき、最外部に位置する第1層と第5層とを表裏の最外層と呼ぶことにする。また、表裏の最外層のすぐ内側に位置する第2層と第4層とを第1内層と呼ぶことにする。さらに、第1内層の内側に位置する第3層を第2内層と呼ぶことにする。なお、ここで表側とは液体用容器とした際に外側となる面のことを指し、裏側とは液体用容器の内側となる面のことを指す。
【0036】
(水溶性樹脂層)
紙基材の両面あるいは片面に、水溶性樹脂層を形成してもよいし、形成しなくてもよい。水溶性樹脂は、造膜性を有する水溶性高分子であれば特に限定されない。水溶性樹脂としては、例えば、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール、澱粉類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロースエーテルおよびその誘導体などが挙げられる。これらを単独、あるいは2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層は、紙基材上に熱可塑性樹脂層をラミネートすることによって形成される。熱可塑性樹脂層は、紙基材の片面だけに積層されていてもよいし、紙基材の両面に積層されていてもよい。通常は少なくとも、液体と接する液体用容器の内側となる面に形成される。
【0038】
熱可塑性樹脂は、用途に応じて、結晶性樹脂と非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(LDPE、MDPE、HDPE、LLDPE等)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸、PHB、PBS、PBAT、PCL、PHBH等の生分解性樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。熱可塑性樹脂層は、単一の樹脂の単層で形成してもよいし、複数の樹脂を混合して単層で形成してもよいし、同種や異種の樹脂からなる複数の層として形成してもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、通常は、10~100μm程度の厚さである。
【0040】
液体容器用基材の層構成としては、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなる2層構成または3層構成が基本であるが、それ以外に、用途に応じて、種々の多様な層構成を形成することができる。例えば、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなる液体容器用基材上にさらに同種または異種の熱可塑性樹脂層を設けたり、熱可塑性樹脂層と熱可塑性樹脂層の間に熱可塑性樹脂層以外の層を設けることもできる。熱可塑性樹脂以外の層としては、水溶性高分子(PVA等)や、顔料及び接着剤を主成分とする塗工層、アルミニウム箔(Al箔)、印刷層等がある。
【0041】
[液体容器用基材]
本発明者らは、ラミネートや印刷時にしごかれた際に起きる層間剥離の発生を抑える方法を検討した。その結果、紙基材の表裏の2つの最外層の坪量の平均値をW1とし、表裏の最外層のすぐ内側の2つの第1内層の坪量の平均値をW2としたとき、W1/W2=1.1~2.4を満足することが層間強度を向上させ、層間剥離の抑制に有効であることを見出した。W1/W2が1.1を下回る場合は、最後に抄き合わされる層の水分量が十分でなく、抄き合わせ面での水素結合が十分に得られないため、層間強度の低下を招く。一方、W1/W2が2.4を超える場合は、最後に抄き合わされる層が水分を持ち過ぎることで、脱水が不十分となってしまい、逆に層間強度の低下を招いたり操業性の悪化につながる等の影響がある。そのため、W1/W2=1.1~2.4から外れると、層間強度が200J/m未満となる傾向にある。W1/W2は、1.2~2.4の範囲であることが好ましく、1.3~1.8の範囲であることがより好ましい。
【0042】
多層構造の紙基材において、表裏の最外層のそれぞれの坪量は、全体の坪量に対して25~40%であることが好ましい。例えば、300g/mの紙基材であれば、最外層は75~120g/mとなることが好ましい。表裏の最外層のそれぞれの坪量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。表裏最外層のすぐ内側の第1内層のそれぞれの坪量は、最外層の坪量よりも小さく、300g/mの5層からなる紙基材であれば、35g/m~62.5g/mとなることが好ましい。第2内層の坪量は、第1内層の坪量と同等であってもよいし、小さくてもよい。
【0043】
(層間強度)
前記したように、多層構造の紙基材を有する基材が加工時にしごかれると、紙基材を構成する層間で剥離する現象が生じることになる。ここで、紙基材の層間強度の定量化方法を検討したところ、インターナルボンドテスターによる測定方法が有効であることを見出した。そこで、紙基材自体の層内における剥離を抑制するために、インターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度として保持するべき数値範囲を液体容器用基材から検討したところ、200~600J/mであることが好ましいことを見出した。
【0044】
層間強度が200J/m以上であると、しごかれた部分において層間剥離が発生しにくい。また、ラミネートや印刷での加熱時に紙基材内の水分が気化することにより層間剥離が発生する懸念が少ない。一方、層間強度が600J/m以下であると、紙基材が硬くなりにくく、折り曲げ加工時に罫線割れが生じにくい。液体容器用基材を用いて液体用容器を製造する際には、基材に対して必要箇所に罫線を設け、折り曲げ加工を行うが、基材が硬くなると罫線を入れる際や、折り曲げる際に、罫線部に割れが発生することがある。層間強度は、300~500J/mであることがより好ましい。ここで、層間強度は、縦方向で測定した層間強度の数値と横方向で測定した層間強度の数値との相乗平均として求めた数値である。なお、インターナルボンドテスターによる層間強度の測定方法は、J.TAPPI 18-2に準拠して測定される。
【0045】
基材のインターナルボンドテスターを用いて測定した層間強度を上記の所定の数値範囲に制御するための方法としては、抄紙工程中のプレス工程における線圧、紙基材の離解フリーネス、紙力向上剤等の内添助剤の添加量、抄き合せの層間に吹き付ける水や澱粉や紙力剤の量や濃度等を調整する方法がある。
【0046】
(坪量)
紙基材と熱可塑性樹脂層とからなる基材は、坪量が150~500g/mであることが好ましく、200~400g/mであることがより好ましい。
【0047】
(水分)
基材の水分は、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなる液体容器用基材が含有する水分となる。基材の水分は、6.0~9.5%であることが好ましく、6.2~8.0%であることがより好ましい。基材の水分が6.0%以上であると、紙基材にシワが発生しにくいため、操業性が低下しにくい。一方、基材の水分が9.5%以下であると、ラミネートや印刷での加熱時に紙基材内の水分が気化し層間剥離が発生するという懸念が少ない。基材の水分は、調湿後、JIS P8127;2010に準じて測定される。
【0048】
[液体容器用基材の製造方法]
液体容器用基材を構成する紙基材は、3層以上のパルプ層から構成される。また、紙基材の製造方法は、紙基材の表裏の最外層の坪量の平均値をW1とし、最外層のすぐ内側に位置する第1内層の坪量の平均値をW2としたとき、W1/W2=1.1~2.4を満足するように、パルプ層を積層する積層工程を含む。
【0049】
前記積層工程は、3層以上のパルプ層を合わせて抄き合わせる多層抄き合わせ工程であることが好ましい。当該多層抄き合わせ工程においては、表裏のいずれか一方の最外層から他方の最外層までを順番に抄き合わせることが好ましい。また、最後に抄き合わされることになる最外層の坪量を他のパルプ層の坪量より大きくすることが好ましい。これにより、抄き合わされる際に十分な水分量を各層に保持させることができ、抄き合わせ面において水素結合が十分に得られ、層間強度を向上させることができる。
【0050】
前記多層抄き合わせ工程は、少なくとも1枚のワイヤーで脱水された湿紙を、当該ワイヤーとは別のワイヤーまたはフェルトの平面上に移行させ、当該別のワイヤーまたはフェルトの平面上に1層ずつ順番に抄き合わせる方法によって積層することが好ましい。換言すると、前記多層抄き合わせ工程は、少なくとも1枚のワイヤーで脱水する工程と、当該ワイヤーとは異なるワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことが好ましい。
【0051】
また、前記多層抄き合わせ工程は、第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水された湿紙を、これらのワイヤーとは別の第3ワイヤーまたはフェルトの平面上に移行させ、当該別の第3ワイヤーまたはフェルトの平面上に1層ずつ順番に抄き合わせる方法によって積層することが好ましい。換言すると、前記多層抄き合わせ工程は、第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水する工程と、これらのワイヤーとは異なる第3ワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことが好ましい。
【0052】
また、前記多層抄き合わせ工程は、初期脱水部で少なくとも1枚のワイヤーで脱水され、さらに両面脱水部で第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水された湿紙を、これらのワイヤーとは別の第3ワイヤーまたはフェルトの平面上に移行させ、当該別の第3ワイヤーまたはフェルトの平面上に1層ずつ順番に抄き合わせる方法によって積層することが好ましい。換言すると、前記多層抄き合わせ工程は、初期脱水部で少なくとも1枚のワイヤーで脱水する工程と、両面脱水部で第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水する工程と、これらのワイヤーとは異なる第3ワイヤーまたはフェルト上で積層する工程とを含むことが好ましい。これらの方法により、地合を向上させ、層間強度を高めることができる。
さらに、最外層の初期脱水部の長さが最外層を除いた他のいずれのパルプ層の初期脱水部の長さよりも長いことが好ましい。
【0053】
紙基材の抄紙方法および抄紙機の型式は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公知の抄紙方法および抄紙機が選択可能である。多層抄き合わせ抄紙機として、少なくとも1枚のワイヤーで脱水する長網式の初期脱水部を有するオントップフォーマーが好ましい。
【0054】
抄紙時のpHは、酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれであってもよい。
【0055】
紙基材は、抄紙後に、必要に応じて平滑化処理を行う。平滑化処理は、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の平滑化処理装置を用いて、オンマシンまたはオフマシンで行われる。
【0056】
液体容器用基材は、上記の製造方法で得られた紙基材の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂層をラミネートすることによって製造される。紙基材上に熱可塑性樹脂層をラミネートする方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法等の各種公知の方法を適宜使用することができる。
【0057】
[液体用容器の製造方法]
本実施形態の液体用容器は、液体容器用基材を用いて製造される。液体容器用基材を用いて液体用容器を製造する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができる。
【0058】
本実施形態の液体用容器は、牛乳パック、酒パック等の各種液体を充填した包装容器として好適に使用することができる。
【実施例
【0059】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明する。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0060】
実施例および比較例で用いた原材料は以下のとおりである。
(1)パルプ:NBKP、LBKP
(2)紙力増強剤:ポリアクリルアミド系紙力増強剤(PAM)
(3)湿潤紙力増強剤:ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系(PAE系)樹脂
(4)カチオン化澱粉
(5)硫酸バンド
(6)サイズ剤:アルキルケテンダイマー系サイズ剤(AKD)
(7)熱可塑性樹脂:低密度ポリエチレン(LDPE)
【0061】
各種性能の測定方法は以下のとおりである。
(1)パルプの離解フリーネス(csf):基材をJIS P8220:2012に準じて離解することで得られたパルプスラリーについて、JIS P8121-2:2012に準じて測定した。
(2)坪量:JIS P8124:2011に準じて、紙基材の坪量を測定した。
(3)水分:調湿後、JIS P8127;2010に準じて、基材の水分を測定した。
(4)層間強度:JAPAN TAPPI 18-2に準拠して、基材の縦方向と横方向について測定し、その相乗平均値を求めた。なお、両面テープは3M社製400を使用した。
【0062】
各層における坪量の測定は、1枚の紙基材をそれぞれの層に分割して測定を行う。層への分割は、以下のようにして行う。
1)28cm×28cmサイズに切り出したサンプルを80℃の湯に24時間つける。
2)サンプルを湯から取り出し、水でぬらした吸取紙の上に乗せる。吸取紙はJIS P 8222:2015に定めるものを用いる。
3)サンプルの上から吸取紙を乗せて軽く手で押し、余剰の水分を取る。
4)サンプル上の吸取紙を取り除き、紙の端部から1枚1枚ゆっくりと剥がす。その際、紙が乾燥しないように適宜サンプルを水でぬらしながら行う。
5)剥いだ紙をそれぞれ別々に、JIS P 8222:2015に定める乾燥プレートと乾燥プレートに対する手抄き紙固定器具の間に拘束して、1日以上乾燥させる。
【0063】
[実施例1]
(紙基材)
LBKP70部とNBKP30部を叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100質量%(固形分換算)に対し、硫酸バンド0.5質量%、カチオン化澱粉0.40質量%、紙力増強剤(PAM系紙力増強剤)0.25質量%、アルキルケテンダイマー系サイズ剤0.23質量%、PAE系湿潤紙力増強剤0.07質量%を添加した紙料スラリーを得た。得られた紙料スラリーを用いて、長網式の初期脱水部を有するオントップフォーマーを使って、5層抄き合わせとし、抄紙した。抄紙に際しては、各層を初期脱水部で各1枚のワイヤーで脱水し、さらに両面脱水部で初期脱水部のワイヤーとは別の第1ワイヤーおよび第2ワイヤーで挟み脱水した湿紙とし、順番に1層ずつ同一のフェルト平面上に移行させて抄き合わせ、積層した。抄き合わせ順は、第1層、第2層、第3層、第4層、第5層の順であった。第1層から第5層までの坪量を表1に示すように調整し、紙基材とした。
【0064】
得られた紙基材は、坪量296g/mであった。また、得られた紙基材を再離解したパルプの離解フリーネス(csf)は510mlであった。
【0065】
(液体容器用基材)
上記紙基材の両面に対し、熱可塑性樹脂層としてLDPEをラミネートした。ラミネートは押し出しラミネート法により、ラミネート温度330℃、ラミネート速度200m/分の条件で行い、熱可塑性樹脂層を形成して、実施例1の液体容器用基材を得た。
【0066】
[実施例2]
実施例1において、5層に代えて3層抄き合わせとし、表1に示すような坪量比率となるように調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量300g/mの紙基材を得た。抄き合わせ順は、第1層、第2層(表中の第2-4層に該当)、第3層(表中の第5層に該当)の順であった。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、実施例2の液体容器用基材を得た。
【0067】
[実施例3]
実施例1において、表1に示すような坪量比率となるように調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量315g/mの紙基材を得た。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、実施例3の液体容器用基材を得た。
【0068】
[実施例4]
実施例1において、LBKP70部とNBKP30部に代えてLBKP100部とし、表1に示すような坪量比率となるように調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量301g/mの紙基材を得た。得られた紙基材を再離解したパルプの離解フリーネス(csf)は480mlであった。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、実施例4の液体容器用基材を得た。
【0069】
[実施例5]
LBKP70部とNBKP30部を叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100質量%(固形分換算)に対し、硫酸バンド0.5質量%、カチオン化澱粉0.40質量%、紙力増強剤(PAM系紙力増強剤)0.85質量%、アルキルケテンダイマー系サイズ剤0.23質量%、PAE系湿潤紙力増強剤0.07質量%を添加した紙料スラリーを得た。得られた紙料スラリーを用いて、表1に示すような坪量比率となるように調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量300g/mの紙基材を得た。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、実施例5の液体容器用基材を得た。
【0070】
[実施例6]
実施例1において、表1に示すような坪量比率となるように調整し、さらに、含水率が9.5%以上となるようにドライヤーの蒸気圧を調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量300g/mの紙基材を得た。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、実施例6の液体容器用基材を得た。
【0071】
[比較例1]
実施例1において、表1に示すような坪量比率となるように調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量300g/mの紙基材を得た。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、比較例1の液体容器用基材を得た。
【0072】
[比較例2]
実施例1において、表1に示すような坪量比率となるように調整した以外は、実施例1と同様に抄紙して、坪量300g/mの紙基材を得た。
その後、実施例1と同様に熱可塑性樹脂層を形成して、比較例2の液体容器用基材を得た。
【0073】
得られた液体容器用基材の表面にオフセット印刷を施した後、断裁して所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランク材を得た。次にフレームシールによりブランク材の一部の樹脂材料を溶融し、胴部を貼り合わせて、筒状のスリーブを得た。続いて、この筒状スリーブを液体充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、トップ部をシールし、ゲーブルトップ型液体用容器を得た。
【0074】
[評価方法]
以上のようにして得られた液体用容器および液体容器用基材について以下の評価を行った。評価結果は、表1に示すとおりであった。なお、性能評価においては○と△を合格、×を不合格と判定した。
【0075】
(印刷・ラミネート加工性:しごかれることによる剥離および加熱時の剥離)
液体容器用基材に印刷、ラミネート加工をした際における、液体容器用基材を目視で観察して、下記の基準で評価を行った。
○:紙基材に層間の剥離が見られない。
△:紙基材自体の層内に若干のひずみがみられるが、層間の剥離が見られない。
×:紙基材に層間の剥離が非常に多く目立つ。
【0076】
(罫線割れ)
液体容器用基材に罫線入れ加工をした際における、液体容器用基材を目視で観察して、下記の基準で評価を行った。
○:液体容器用基材の罫線部に割れが見られない。
△:液体容器用基材の罫線部にシワが若干みられるが、割れがほとんど見られない。
×:液体容器用基材の罫線部に割れが非常に多くみられる。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から分かるように、実施例1~実施例6の液体容器用基材は、坪量比率W1/W2の規定をいずれも満足するものであり、印刷・ラミネート加工性および罫線割れにおいて優れたものであった。実施例5の液体容器用基材は、紙力増強剤の添加量が大きいため、層間強度が大きく、罫線部にシワが若干みられた。実施例6の液体容器用基材は、基材の水分が大きく、印刷・ラミネート加工での加熱時に基材内の水分が気化して、紙基材自体の層内に若干のひずみがみられた。
一方、比較例1と比較例2の液体容器用基材は、坪量比率W1/W2の規定を満足しないため、層間強度が低く、加工時に層間剥離が目立つなど、印刷・ラミネート加工性に劣るものであった。