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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】回転式アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/32 20060101AFI20221109BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F16H61/32
F16H1/32 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019077980
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020176659
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】粂 幹根
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真治
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194087(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180776(WO,A1)
【文献】特開2018-102050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/32
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシフトバイワイヤシステム(11)に用いられる回転式アクチュエータであって、
モータ(30)と、
前記モータのモータ軸(33)と平行に配置された出力軸(40)と、
前記モータの回転を減速して前記出力軸に伝達する減速機構(50)と、
を備え、
前記減速機構は、前記モータ軸上のドライブギヤ(53)および前記出力軸上のドリブンギヤ(54)を含む平行軸式減速部(72)を有し、
前記モータ軸の軸方向において前記減速機構に対する前記モータ側を軸方向一方とし、前記モータに対する前記減速機構側を軸方向他方とすると、
前記ドリブンギヤの歯部(73)の軸方向一方側の端(E1)は、前記モータのステータの軸方向他方側の端(E2)よりも軸方向一方に配置されており、
前記ステータは、ステータコア(91)、前記ステータコアに装着された絶縁部材であるインシュレータ(94)、および、前記インシュレータに巻かれたコイル(38)を有し、
前記ドリブンギヤの歯部(73)の軸方向一方側の端(E1)は、前記ステータの一部である前記インシュレータの軸方向他方側の端(E2)よりも軸方向一方に配置されている回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記インシュレータは、前記コイルが巻かれたボビン部(95)、および、軸方向他方側において前記コイルに対して径方向外側で当該コイルを保持するよう前記ボビン部から突出している突起(96)を有し、
前記ドリブンギヤの歯部(73)の軸方向一方側の端(E1)は、前記インシュレータの一部である前記突起の軸方向他方側の端(E2)よりも軸方向一方に配置されている請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記ドリブンギヤは、前記ドライブギヤと噛み合っている前記歯部と、前記出力軸に回転伝達可能に設けられている連結部(74)と、前記歯部と前記連結部とを接続しているプレート部(75)とを有し、
前記歯部の軸方向厚みは前記プレート部の軸方向厚みよりも大きい請求項1または2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項4】
前記歯部および前記連結部は、前記プレート部に対して軸方向一方にのみ突き出している請求項3に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項5】
前記減速機構は、リングギヤ(51)およびサンギヤ(52)を含み、前記モータ軸の回転を減速する第1減速部(71)と、軸方向において前記モータと前記第1減速部との間に配置され、前記第1減速部の出力回転を減速する第2減速部としての前記平行軸式減速部とを有し、
前記プレート部は、前記連結部から前記歯部まで径方向へ延びるストレート形状である請求項またはに記載の回転式アクチュエータ。
【請求項6】
前記ステータは、軸方向他方側において前記ステータのスロット間の位置に隙間(981)を形成しており、
前記歯部は、前記ドリブンギヤが回転するとき前記隙間を通過する請求項1~のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項7】
前記ステータの前記インシュレータは、軸方向他方側において前記ステータの前記コイルに対して径方向外側で当該コイルを保持している突起(96)を有し、
前記隙間は、一対の前記突起の間であって、前記ドリブンギヤが回転するときの前記歯部の軌跡(Tg)上の二箇所に形成されている請求項に記載の回転式アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシフトバイワイヤシステムの駆動部として用いられる回転式アクチュエータが知られている。特許文献1には、モータのモータ軸と平行に配置された出力軸を持つ2軸タイプのアクチュエータが開示されている。モータから出力軸までの動力伝達経路には減速機構が設けられている。減速機構は、ドライブギヤおよびドリブンギヤからなる平行軸式減速部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特願2017-98270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転式アクチュエータを複数種類の車両用変速機に搭載するためには、周辺部品の制約がある中で搭載性を確保する必要がある。そのため、回転式アクチュエータの小型化が求められている。一方で、作動中のフェイルセーフ時の最大トルク、およびディテントプレートの駐車位置からの解除トルクを考慮した減速機構のギヤ強度が必要であり、ギヤの歯部の噛み合い長さの確保が必要である。そのため、単純にモータや減速機構を小型化することが出来ない。したがって、限られたスペースの中で搭載性およびギヤ強度を満足させる必要がある。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ギヤ強度を確保しつつ搭載性を向上させることができる回転式アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両のシフトバイワイヤシステム(11)に用いられる回転式アクチュエータであって、モータ(30)と、モータのモータ軸(33)と平行に配置された出力軸(40)と、モータの回転を減速して出力軸に伝達する減速機構(50)とを備える。
【0007】
減速機構は、モータ軸上のドライブギヤ(53)および出力軸上のドリブンギヤ(54)を含む平行軸式減速部(72)を有する。モータ軸の軸方向において減速機構に対するモータ側を軸方向一方とし、モータに対する減速機構側を軸方向他方とする。ドリブンギヤの歯部(73)の軸方向一方側の端(E1)は、モータのステータの軸方向他方側の端(E2)よりも軸方向一方に配置されている。
【0008】
このようにステータの径方向内側のスペースを有効活用して、ドリブンギヤの歯部とステータとを軸方向にオーバーラップさせることで、減速機構をモータ側に寄せて配置することができる。そのため、ドライブギヤとドリブンギヤとの噛み合い長さを確保しつつ、上記オーバーラップさせる分だけ回転式アクチュエータの装置体格を軸方向に小型化することができる。これにより、ギヤ強度を確保しつつ搭載性を向上させることができる
ステータは、ステータコア(91)、ステータコアに装着された絶縁部材であるインシュレータ(94)、および、インシュレータに巻かれたコイル(38)を有する。ドリブンギヤの歯部(73)の軸方向一方側の端(E1)は、ステータの一部であるインシュレータの軸方向他方側の端(E2)よりも軸方向一方に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による回転式アクチュエータが適用されたシフトバイワイヤシステムを示す模式図。
図2図1のシフトレンジ切替機構を説明する図。
図3】一実施形態による回転式アクチュエータの断面図。
図4図3のIV部拡大図。
図5図3のステータおよびドリブンギヤをV方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[一実施形態]
以下、一実施形態による回転式アクチュエータ(以下、アクチュエータ)を図面に基づき説明する。アクチュエータは、車両のシフトバイワイヤシステムの駆動部として用いられている。
【0011】
(シフトバイワイヤシステム)
先ず、シフトバイワイヤシステムの構成について図1および図2を参照して説明する。図1に示すように、シフトバイワイヤシステム11は、変速機12のシフトレンジを指令するシフト操作装置13と、変速機12のシフトレンジ切替機構14を作動させるアクチュエータ10と、アクチュエータ10の通電を実施する駆動回路15と、制御回路17とを備える。制御回路17は、シフトレンジの指令信号に応じて駆動回路15を制御してアクチュエータ10を駆動する。駆動回路15および制御回路17は、電子制御ユニット(以下、ECU)18を構成している。
【0012】
図2に示すように、シフトレンジ切替機構14は、変速機12(図1参照)内の油圧作動機構への油圧の供給を制御するレンジ切替弁20と、シフトレンジを保持するディテントスプリング21およびディテントレバー22と、シフトレンジがパーキングレンジに切り替えられるとき変速機12の出力軸のパークギヤ23にパークポール24を嵌合させて、出力軸の回転をロックするパークロッド25と、ディテントレバー22と一体に回転するマニュアルシャフト26と、を備える。
【0013】
シフトレンジ切替機構14は、マニュアルシャフト26とともにディテントレバー22を回転させて、ディテントレバー22に連結されたレンジ切替弁20の弁体27およびパークロッド25を目標シフトレンジに対応した位置に移動させる。シフトバイワイヤシステム11では、こうしたシフトレンジの切り替えを電動で行うために、マニュアルシャフト26にアクチュエータ10を連結している。
【0014】
(アクチュエータ)
次に、アクチュエータ10の構成について説明する。図3に示すように、アクチュエータ10は、動力発生源としてのモータ30と、モータ30に対して平行に配置された出力軸40と、モータ30の回転を減速して出力軸40に伝達する減速機構50と、モータ30、出力軸40および減速機構50を収容しているケース60と、回転位置検出部80とを備える。
【0015】
ケース60は、モータ30側に位置する筒状のアッパーケース部61、および、減速機構50側に位置するカップ状のロアケース部62を有する。アッパーケース部61は、一端部63と他端部64との間に隔壁部65を形成している。一端部63の内側には、駆動回路および制御回路(図1参照)を搭載した制御基板66が設けられている。制御基板66は、例えば熱かしめにより隔壁部65に固定されている。制御基板66は鉄製のプレートカバー67によりカバーされており、これによりシールド性が確保される。ロアケース部62は、他端部64に組付けられている。ロアケース部62は、アッパーケース部61とは反対側に突き出す筒状突出部69を形成している。マニュアルシャフト26は、筒状突出部69を挿通するように配置される。
【0016】
モータ30は、他端部64のプレートケース68に圧入固定されているステータ31と、ステータ31の内側に設けられているロータ32と、ロータ32と共に回転軸心AX1まわりに回転するモータ軸33とを有する。モータ軸33は、プレートケース68に設けられた軸受34と、ロアケース部62に設けられた軸受35とにより回転可能に支持されている。またモータ軸33は、ロータ32に対してロアケース部62側に、回転軸心AX1に対して偏心する偏心部36を有する。モータ30は、ステータ31を構成するコイル38への通電電流を制御回路(図1参照)にて制御することにより双方向に回転でき、また、所望の回転位置で停止させることができる。プレートカバー67は通孔を有しており、この通孔にはプラグ39が取り付けられている。故障時にはプラグ39を外すことで、モータ軸33を手動で回転させることができる。
【0017】
減速機構50は、リングギヤ51およびサンギヤ52を含む第1減速部71と、ドライブギヤ53およびドリブンギヤ54を含む平行軸式減速部である第2減速部72とを有する。リングギヤ51は、回転軸心AX1上に設けられている。サンギヤ52は、偏心部36に嵌合する軸受55により偏心軸心AX2まわりに回転可能に支持され、リングギヤ51に内接するように噛み合っている。サンギヤ52は、モータ軸33が回転すると、回転軸心AX1まわりに公転しながら偏心軸心AX2まわりに自転する遊星運動を行う。このときのサンギヤ52の自転速度は、モータ軸33の回転速度に対して減速される。サンギヤ52は、回転伝達用の穴部56を有する。
【0018】
ドライブギヤ53は、回転軸心AX1上に設けられており、モータ軸33に嵌合する軸受57により回転軸心AX1まわりに回転可能に支持されている。またドライブギヤ53は、穴部56に挿入された回転伝達用の凸部58を有する。サンギヤ52の自転は、穴部56と凸部58との係合によりドライブギヤ53に伝達される。穴部56および凸部58は伝達機構59を構成している。ドリブンギヤ54は、回転軸心AX1と平行であり且つ筒状突出部69と同軸である回転軸心AX3上に設けられ、ドライブギヤ53に外接するように噛み合っている。ドリブンギヤ54は、ドライブギヤ53が回転軸心AX1まわりに回転すると、回転軸心AX3まわりに回転する。このときのドリブンギヤ54の回転速度は、ドライブギヤ53の回転速度に対して減速される。
【0019】
出力軸40は、筒状に形成され、回転軸心AX3上に設けられている。隔壁部65は、回転軸心AX3と同軸の貫通支持孔89を有する。出力軸40は、貫通支持孔89に嵌合する第1つば付きブッシュ46と、筒状突出部69の内側に嵌合する第2つば付きブッシュ47とにより回転軸心AX3まわりに回転可能に支持されている。ドリブンギヤ54は、出力軸40とは別部材であり、出力軸40の外側に嵌合し、当該出力軸40に回転伝達可能に連結されている。マニュアルシャフト26は、出力軸40の内側に挿入され、例えばスプライン嵌合により出力軸40に回転伝達可能に連結される。
【0020】
出力軸40の一端部41は、第1つば付きブッシュ46により回転可能に支持されている。出力軸40の他端部42は、第2つば付きブッシュ47により回転可能に支持されている。ドリブンギヤ54は、第1つば付きブッシュ46の第1つば部48と第2つば付きブッシュ47の第2つば部49とに挟まれる形で軸方向に支持されている。なお、他の実施形態では、ドリブンギヤ54は、例えばケース60や他のプレート等から構成される一対の支持部に挟まれる形で軸方向に支持されてもよい。
【0021】
回転位置検出部80は、磁気回路部81および磁気センサ82を有する。磁気回路部81は、出力軸40に取り付けられている。具体的には、磁気回路部81は、ホルダ83とマグネット84とが一体的に成形されてなる。ホルダ83は、スラスト方向の位置がアッパーケース部61により規制され、また、ラジアル方向の位置が出力軸40により規制される。回転位置検出部80は、出力軸40およびそれと一体に回転するマニュアルシャフト26の回転位置を検出し、ECU18に出力する。なお、他の実施形態では、磁気回路部は、出力軸またはそれと一体に回転する部材(例えばマニュアルシャフトなど)に設けられてもよい。例えば、磁気回路部のホルダが出力軸またはマニュアルシャフトと同一部品から構成され、磁気回路部のマグネットが上記ホルダに一体に固定(例えば接着、一体成形など)されてもよい。
【0022】
ホルダ83は、一端部41の内側に挿入されている。ホルダ83と一端部41との間にはOリング85が設けられている。ホルダ83の出力軸40側の端部は有底穴86を有する。有底穴86には、スプリング87が嵌められている。スプリング87は、マニュアルシャフト26の端部に形成された二面幅部28をスプリング力により保持しており、マニュアルシャフト26との隙間をなくしている。
【0023】
出力軸40の他端部42と筒状突出部69との間にはXリング88が設けられている。従来は、アクチュエータと変速機のトランスミッションケースとの間に設けられるシール部材によりシールする構造であった。しかし上記位置にXリング88が設けられることで、アクチュエータ10単体でシール性を保証することができるようになった。
【0024】
(減速機構)
次に、減速機構50およびそれらの周辺箇所の構成について説明する。図4に示すように、リングギヤ51はロアケース部62に固定されている。本実施形態では、リングギヤ51は圧入により固定されている。なお、他の実施形態では、リングギヤ51は、例えばロアケース部62にインサート成形されてもよいし、ねじ等の締結部材により固定されてもよい。
【0025】
ドライブギヤ53は、軸方向においてモータ30と第1減速部71との間に配置されている。つまり、ドライブギヤ53は、アッパーケース部61に固定されたモータ30と、ロアケース部62の底部に固定された第1減速部71との間のスペースに配置されている。これにより、ドライブギヤ53とリングギヤ51とが軸方向でオーバーラップしないようになっている。
【0026】
ドリブンギヤ54は、ドライブギヤ53と噛み合うドリブン歯部73と、出力軸40に回転伝達可能に嵌合した連結部74と、連結部74とドリブン歯部73とを接続するプレート部75とを有する。連結部74とドリブン歯部73とは、軸方向位置が互いにオーバーラップするように配置されている。
【0027】
伝達機構59の穴部56はサンギヤ52に設けられ、また凸部58はドライブギヤ53に設けられている。穴部56は、サンギヤ52を支持する軸受55と軸方向においてオーバーラップするように設けられている。そして、凸部58と穴部56との係合箇所も同様に、軸受55と軸方向においてオーバーラップするようになっている。
【0028】
ドライブギヤ53は、小径部76および大径部77を有する段付き形状である。小径部76はモータ30側に位置し、大径部77はサンギヤ52側に位置する。凸部58は、大径部77の外周部から軸方向へ突出している。ドライブギヤ53は、凸部58よりも径方向内側でドリブンギヤ54と噛み合うドライブ歯部78を有する。ドライブ歯部78は、軸方向位置がドライブギヤ53の途中で止まっている止まり形状の歯である。
【0029】
以下の説明では、モータ軸33の軸方向において減速機構50に対するモータ30側を軸方向一方とし、モータ30に対する減速機構50側を軸方向他方とする。
【0030】
ドリブンギヤ54のドリブン歯部73の軸方向一方側の端E1は、ステータ31の軸方向他方側の端E2よりも軸方向一方に配置されている。すなわち、ドリブン歯部73およびステータ31は、軸方向においてオーバーラップするように配置されている。
【0031】
プレート部75は、ステータ31の端E2よりも軸方向他方に配置されている。プレート部75は、連結部74からドリブン歯部73まで径方向へ延びるストレート形状である。ドリブン歯部73の軸方向厚みはプレート部75の軸方向厚みよりも大きくなっている。ドリブン歯部73は、プレート部75に対して軸方向他方に突き出すことなく、軸方向一方にのみ突き出している。
【0032】
図3図5に示すように、ステータ31は、ステータコア91と、ステータコア91に装着された絶縁部材であるインシュレータ94と、インシュレータ94のボビン部95に巻かれたコイル38とを有する。ステータコア91は、環状のバックヨーク部92と、バックヨーク部92から径方向内側に突き出すティース部93とを有する。インシュレータ94は、ステータコア91に被さるように装着されている。
【0033】
インシュレータ94は、軸方向他方側においてコイル38に対して径方向外側で当該コイル38を保持している突起96を有する。突起96は、ティース部93、ボビン部およびコイル38からなるスロット97に対応して設けられており、周方向において所定間隔を空けて並ぶように複数配置されている。
【0034】
ステータ31は、軸方向他方側においてスロット97間の位置に隙間98を形成している。隙間98は、所定の円周上において周方向に間隔を空けて並ぶように設けられている。各隙間98のうち特定隙間981は、一対の突起96の間であって、ドリブンギヤ54が回転するときのドリブン歯部73の軌跡Tg上の二箇所に形成されている。ドリブン歯部73は、ドリブンギヤが回転するとき特定隙間981を通過する。
【0035】
(効果)
以上説明したように、本実施形態では、アクチュエータ10は、モータ30と、モータ30のモータ軸33と平行に配置された出力軸40と、モータ30の回転を減速して出力軸40に伝達する減速機構50とを備える。
【0036】
減速機構50は、モータ軸33上のドライブギヤ53および出力軸40上のドリブンギヤ54を含む平行軸式の第2減速部72を有する。ドリブンギヤ54のドリブン歯部73の軸方向一方側の端E1は、ステータ31の軸方向他方側の端E2よりも軸方向一方に配置されている。
【0037】
このようにステータ31の径方向内側のスペースを有効活用して、ドリブンギヤ54のドリブン歯部73とステータ31とを軸方向にオーバーラップさせることで、減速機構50をモータ30側に寄せて配置することができる。そのため、ドライブギヤ53とドリブンギヤ54との噛み合い長さを確保しつつ、上記オーバーラップさせる分だけアクチュエータ10の装置体格を軸方向に小型化することができる。これにより、ギヤ強度を確保しつつ搭載性・耐振性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、ドリブンギヤ54は、ドライブギヤ53と噛み合っているドリブン歯部73と、出力軸40に回転伝達可能に設けられている連結部74と、ドリブン歯部73と連結部74とを接続しているプレート部75とを有する。ドリブン歯部73の軸方向厚みはプレート部75の軸方向厚みよりも大きい。ギヤ強度向上において必要なドリブン歯部73のみを厚くすることにより、ギヤ軽量化およびイナーシャ低減を図り、耐振性、応答性および位置制御性が向上する。
【0039】
ここで、ギヤ強度確保のために浸炭処理を施すことが考えられるが、熱処理歪みによりギヤ歯部精度が確保できない懸念がある。そのため、本実施形態のようにドリブン歯部73のみを厚くすることで噛み合い長さを確保し、ギヤ強度向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ドリブン歯部73は、プレート部75に対して軸方向一方にのみ突き出している。これにより、噛み合い長さが同等である場合、歯部が軸方向両側に突き出す形態と比べて、減速機構50をできるだけモータ30側に寄せて配置することができる。
【0041】
また、本実施形態では、減速機構50は、リングギヤ51およびサンギヤ52を含み、モータ軸33の回転を減速する第1減速部71と、軸方向においてモータ30と第1減速部71との間に配置され、第1減速部71の出力回転を減速する第2減速部72とを有する。プレート部75は、連結部74からドリブン歯部73まで径方向へ延びるストレート形状である。従来は各減速部の配置の制約によりプレート部を段付き形状にする必要があったが、本実施形態のように各減速部を配置することでプレート部75をストレート形状にすることが可能となる。これによりドリブンギヤ54の軽量化およびイナーシャ低減を図ることができ、耐振性、応答性および位置制御性が向上する。また、ストレート形状のプレート部75は製造が容易である。
【0042】
また、本実施形態では、ステータ31は、軸方向他方側においてステータ31のスロット97間の位置に特定隙間981を形成している。ドリブン歯部73は、ドリブンギヤ54が回転するとき特定隙間981を通過する。これにより、スペースを有効活用し、減速機構50を軸方向に拡大することなくギヤ噛み合い長さを確保することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ステータ31のインシュレータ94は、軸方向他方側においてステータ31のコイル38に対して径方向外側で当該コイル38を保持している突起96を有する。特定隙間981は、一対の突起96の間であって、ドリブンギヤ54が回転するときのドリブン歯部73の軌跡Tg上の二箇所に形成されている。これにより、ドリブンギヤ54の回転方向の両側のスペースを有効活用し、減速機構50を軸方向に拡大することなくギヤ噛み合い長さを確保することができる。
【0044】
[他の実施形態]
他の実施形態では、減速機構は、少なくとも平行軸式減速部を有していればよい。また、他の実施形態では、ドリブンギヤが出力軸と同一部材から構成されてもよい。また、他の実施形態では、穴部がドライブギヤに設けられ、凸部がサンギヤに設けられてもよい。また、他の実施形態では、歯部が凸部よりも径方向外側に位置していてもよい。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0046】
10:回転式アクチュエータ 11:シフトバイワイヤシステム
30:モータ 33:モータ軸
40:出力軸 50:減速機構
53:ドライブギヤ 54:ドリブンギヤ
71:第1減速部 72:第2減速部
73:ドリブン歯部(歯部) E1:軸方向一方側の端
E2:軸方向他方側の端
図1
図2
図3
図4
図5