(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】回転式アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 61/32 20060101AFI20221109BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20221109BHJP
H02K 11/215 20160101ALN20221109BHJP
【FI】
F16H61/32
H02K11/33
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2019077982
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】粂 幹根
(72)【発明者】
【氏名】角 弘之
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-72776(JP,A)
【文献】特開2018-194087(JP,A)
【文献】国際公開第2008/102482(WO,A1)
【文献】特開2017-108610(JP,A)
【文献】特開2017-203465(JP,A)
【文献】特開2001-75555(JP,A)
【文献】特開2000-136815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/32
H02K 11/33
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシフトバイワイヤシステム(11)に用いられる回転式アクチュエータ(10)であって、
モータ(30)と、
前記モータを制御する制御部(16)と、
前記制御部を収容している樹脂製のアッパーケース部(61)と、
前記アッパーケース部と共に前記モータを収容しているロアケース部(62)と、
前記アッパーケース部および前記ロアケース部を締結している金属製のケース締結部(111)と、
前記制御部の基板(71)を前記ケース締結部に固定している基板固定部(112)と、
を備え
、
前記ロアケース部は樹脂製であり、インサートナット(113)をインサート成形しており、
前記ケース締結部は、頭部(116)、および、前記頭部から延び前記インサートナットに螺合しているねじ部(117)を有する回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記アッパーケース部は、筒状のカラー(115)をインサート成形しており、
前記カラーは、前記ねじ部の径方向外側において前記頭部と前記インサートナットとの間に挟まれている請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記ケース締結部は、
前記頭
部に雌ねじ(118)が形成されたボルトであり、
前記基板固定部は、前記雌ねじに螺合されたスクリュである請求項1
または2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項4】
前記スクリュの前記雌ねじへの挿入方向は、前記ボルトの前記アッパーケース部への挿入方向と同じである請求項
3に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項5】
前記アッパーケース部は、前記制御部を外部機器に接続する外部接続ターミナル(92)を埋設しており、
前記外部接続ターミナルは、前記アッパーケース部内の基板設置空間(96)で屈曲しているベンド部(98)を有する請求項1~
4のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項6】
前記制御部は、バスバー(121)により前記モータに電気的に接続されており、
前記バスバーのモータターミナル(122)は、前記アッパーケース部内の基板設置空間で屈曲しているベンド部(131)を有する請求項1~
4のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを含む作動部とモータを制御する制御部とが一体に設けられた機電一体型の回転式アクチュエータが知られている。特許文献1では、モータを収容する一方のケース(以下、アッパーケース)に制御部の基板が収容されている。基板は、金属製のアッパーケースにねじ締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、アッパーケースが金属製であるため、回転式アクチュエータの質量が重くなる懸念がある。質量が重いと、車両燃費の低下や耐振動性の低下を招く。また、金属製のアッパーケースは耐食性に劣るため、アッパーケースと他のケース部品とのシール面の腐食により、ケースのシール性を確保できない懸念がある。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量化するとともにケースのシール性を確保することができる回転式アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両のシフトバイワイヤシステム(11)に用いられる回転式アクチュエータ(10)であって、モータ(30)と、モータを制御する制御部(16)と、制御部を収容している樹脂製のアッパーケース部(61)と、アッパーケース部と共にモータを収容しているロアケース部(62)とを備える。
【0007】
このようにアッパーケース部を樹脂製にすることで、ケースが軽くなり、また耐食性が向上する。これにより、回転式アクチュエータを軽量化するとともにケースのシール性を確保することができる。
【0008】
ところで、制御部の耐振動性を確保するには制御部の基板を金属部に固定する必要がある。そのため、例えばアッパーケース部にインサートナットを一体成形し、そのインサートナットに基板を固定することが考えられる。しかし、インサートナットを設けることでアッパーケース部が大型化し、回転式アクチュエータの体格が大きくなる懸念がある。
【0009】
これに対して、本発明の回転式アクチュエータは、アッパーケース部およびロアケース部を締結している金属製のケース締結部(111)と、制御部の基板(71)をケース締結部に固定している基板固定部(112)とをさらに備える。
【0010】
このように金属製のケース締結部を利用して基板を固定することで、制御部の耐振動性を確保しつつ、インサートナットをアッパーケース部に設ける必要がなくなる。これにより、回転式アクチュエータの体格アップを回避することができる。また、基板固定用のインサートナットに相当する機能をケース締結部に持たせることで、インサートナットが不要となり、部品点数を削減できる。
【0011】
以上のようにして回転式アクチュエータを軽量化および小型化することにより、搭載性および耐振動性の向上を図ることができる。
本発明では、ロアケース部は樹脂製であり、インサートナット(113)をインサート成形している。ケース締結部は、頭部(116)、および、頭部から延びインサートナットに螺合しているねじ部(117)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態による回転式アクチュエータが適用されたシフトバイワイヤシステムを示す模式図。
【
図3】第1実施形態による回転式アクチュエータの断面図。
【
図4】
図3の回転式アクチュエータをIV方向から見た図。
【
図5】
図4の回転式アクチュエータのV-V線断面図。
【
図6】
図4の回転式アクチュエータのVI-VI線断面図。
【
図7】
図6の外部接続ターミナル、一次成形体および遮蔽部材を示す図。
【
図8】
図7の外部接続ターミナル、一次成形体および遮蔽部材をVIII方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、回転式アクチュエータ(以下、アクチュエータ)の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
アクチュエータは、車両のシフトバイワイヤシステムの駆動部として用いられている。
【0015】
(シフトバイワイヤシステム)
先ず、シフトバイワイヤシステムの構成について
図1および
図2を参照して説明する。
図1に示すように、シフトバイワイヤシステム11は、変速機12のシフトレンジを指令するシフト操作装置13と、変速機12のシフトレンジ切替機構14を作動させるアクチュエータ10とを備える。アクチュエータ10は、モータ30等を含む作動部15と、シフトレンジの指令信号に応じてモータ30を制御する制御部16とを備える。
【0016】
図2に示すように、シフトレンジ切替機構14は、変速機12(
図1参照)内の油圧作動機構への油圧の供給を制御するレンジ切替弁20と、シフトレンジを保持するディテントスプリング21およびディテントレバー22と、シフトレンジがパーキングレンジに切り替えられるとき変速機12の出力軸のパークギヤ23にパークポール24を嵌合させて、出力軸の回転をロックするパークロッド25と、ディテントレバー22と一体に回転するマニュアルシャフト26と、を備える。
【0017】
シフトレンジ切替機構14は、マニュアルシャフト26とともにディテントレバー22を回転させて、ディテントレバー22に連結されたレンジ切替弁20の弁体27およびパークロッド25を目標シフトレンジに対応した位置に移動させる。シフトバイワイヤシステム11では、こうしたシフトレンジの切り替えを電動で行うために、マニュアルシャフト26にアクチュエータ10を連結している。
【0018】
(アクチュエータ)
次に、アクチュエータ10の構成について説明する。
図3に示すように、アクチュエータ10は、ハウジング19内に作動部15および制御部16を備える機電一体型のアクチュエータである。
【0019】
ハウジング19は、筒状のアッパーケース部61およびカップ状のロアケース部62を含むケース60と、プレートカバー67とを有する。アッパーケース部61の一端部63と他端部64との間には隔壁部65が形成されている。一端部63の内側には、制御部16が収容されている。制御部16は、一端部63の開口端に設けられたプレートカバー67によりカバーされており、これによりシールド性が確保される。ロアケース部62は、他端部64に組付けられている。またロアケース部62は、アッパーケース部61とは反対側に突き出す筒状突出部69を形成している。マニュアルシャフト26は、筒状突出部69を挿通するように配置される。
【0020】
作動部15は、動力発生源としてのモータ30と、モータ30に対して平行に配置された出力軸40と、モータ30の回転を減速して出力軸40に伝達する減速機構50とを有する。作動部15は、ケース60に収容されている。
【0021】
モータ30は、他端部64のプレートケース68に圧入固定されているステータ31と、ステータ31の内側に設けられているロータ32と、ロータ32と共に回転軸心AX1まわりに回転するモータ軸33とを有する。モータ軸33は、プレートケース68に設けられた軸受34と、ロアケース部62に設けられた軸受35とにより回転可能に支持されている。またモータ軸33は、ロータ32に対してロアケース部62側に、回転軸心AX1に対して偏心する偏心部36を有する。モータ30は、ステータ31を構成するコイル38への通電電流を制御部16にて制御することにより双方向に回転でき、また、所望の回転位置で停止させることができる。プレートカバー67の通孔にはプラグ39が取り付けられている。故障時にはプラグ39を外すことで、モータ軸33を手動で回転させることができる。
【0022】
減速機構50は、リングギヤ51およびサンギヤ52を含む第1減速部17と、ドライブギヤ53およびドリブンギヤ54を含む平行軸式の第2減速部18とを有する。リングギヤ51は、回転軸心AX1上に設けられている。サンギヤ52は、偏心部36に嵌合する軸受55により偏心軸心AX2まわりに回転可能に支持され、リングギヤ51に内接するように噛み合っている。サンギヤ52は、モータ軸33が回転すると、回転軸心AX1まわりに公転しながら偏心軸心AX2まわりに自転する遊星運動を行う。このときのサンギヤ52の自転速度は、モータ軸33の回転速度に対して減速される。サンギヤ52は、回転伝達用の穴部56を有する。
【0023】
ドライブギヤ53は、回転軸心AX1上に設けられており、モータ軸33に嵌合する軸受57により回転軸心AX1まわりに回転可能に支持されている。またドライブギヤ53は、穴部56に挿入された回転伝達用の凸部58を有する。サンギヤ52の自転は、穴部56と凸部58との係合によりドライブギヤ53に伝達される。穴部56および凸部58は伝達機構59を構成している。ドリブンギヤ54は、回転軸心AX1と平行であり且つ筒状突出部69と同軸である回転軸心AX3上に設けられ、ドライブギヤ53に外接するように噛み合っている。ドリブンギヤ54は、ドライブギヤ53が回転軸心AX1まわりに回転すると、回転軸心AX3まわりに回転する。このときのドリブンギヤ54の回転速度は、ドライブギヤ53の回転速度に対して減速される。
【0024】
出力軸40は、筒状に形成され、回転軸心AX3上に設けられている。隔壁部65は、回転軸心AX3と同軸の貫通支持孔66を有する。出力軸40は、貫通支持孔66に嵌合する第1つば付きブッシュ46と、筒状突出部69の内側に嵌合する第2つば付きブッシュ47とにより回転軸心AX3まわりに回転可能に支持されている。ドリブンギヤ54は、出力軸40とは別部材であり、出力軸40の外側に嵌合し、当該出力軸40に回転伝達可能に連結されている。マニュアルシャフト26は、出力軸40の内側に挿入され、例えばスプライン嵌合により出力軸40に回転伝達可能に連結される。
【0025】
出力軸40の一端部41は、第1つば付きブッシュ46により回転可能に支持されている。出力軸40の他端部42は、第2つば付きブッシュ47により回転可能に支持されている。ドリブンギヤ54は、第1つば付きブッシュ46の第1つば部48と第2つば付きブッシュ47の第2つば部49とに挟まれる形で軸方向に支持されている。なお、他の実施形態では、ドリブンギヤ54は、例えばケース60や他のプレート等、一対の支持部に挟まれる形で軸方向に支持されてもよい。
【0026】
制御部16は、モータ30を制御する複数の電子部品と、それらの電子部品を実装した制御基板71と、制御基板71に実装された出力軸位置検出センサ72と、制御基板71に実装されたモータ位置検出センサ73とを有する。
【0027】
上記複数の電子部品には、マイクロコンピュータ81、MOSFET82、コンデンサ83、ダイオード84、ASIC85、インダクタ86、レジスタ87およびコンデンサチップ88等が含まれる。
【0028】
出力軸位置検出センサ72は、制御基板71のうちマグネット43に対向する位置に設けられている。マグネット43は、出力軸40に取り付けられたホルダ44に固定されている。出力軸位置検出センサ72は、マグネット43が発生する磁束を検出することで、出力軸40およびそれと一体に回転するマニュアルシャフト26の回転位置を検出する。
【0029】
モータ位置検出センサ73は、制御基板71のうちマグネット45に対向する位置に設けられている。マグネット45は、モータ軸33に取り付けられたホルダ37に固定されている。モータ位置検出センサ73は、マグネット45が発生する磁束を検出することで、モータ軸33およびロータ32の回転位置を検出する。
【0030】
(基板固定構造)
次に、制御基板71の固定構造、および、モータ30および図示しない外部機器との電気的な接続構造について説明する。以降、制御基板71と平行な方向を「基板平面方向」と記載する。また、モータ30の径方向のことを単に「径方向」と記載し、モータ30の軸方向のことを単に「軸方向」と記載し、また、モータ30の周方向のことを単に「周方向」と記載する。
【0031】
図3~
図6に示すように、アッパーケース部61は樹脂製であり、プレートケース68、複数の外部接続ターミナル92および一次成形体93をインサート成形により埋設している。
【0032】
アッパーケース部61は、モータ30を収容する収容部94と外部接続用のコネクタ部95とを一体にもつ樹脂成形体である。収容部94は、一端部63、他端部64および隔壁部65を含む。コネクタ部95は、制御部16を外部機器に接続するとき、図示しない外部コネクタに脱着可能に接続される。
【0033】
図6に示すように、外部接続ターミナル92は、制御部16を外部機器に電気的に接続する。外部接続ターミナル92は、制御部16を外部機器に接続するとき、外部コネクタの端子に接続され、給電や信号伝送を行う。一次成形体93は、複数の外部接続ターミナル92を一体化している。
【0034】
図5に示すように、アクチュエータ10は、アッパーケース部61およびロアケース部62を締結している金属製のケース締結部としてのボルト111と、制御基板71をボルト111に固定している基板固定部としてのスクリュ112とを備える。
【0035】
ロアケース部62は樹脂製であり、インサートナット113をインサート成形している。アッパーケース部61とロアケース部62との組付け面にはシール部材114が設けられている。アッパーケース部61は、カラー115をインサート成形している。ボルト111は、カラー115に着座している頭部116と、頭部116からカラー115を通じてインサートナット113まで延び、インサートナット113に螺合しているねじ部117とを有する。頭部116には雌ねじ118が形成されている。スクリュ112は、雌ねじ118に螺合しており、頭部116との間に制御基板71を挟持している。スクリュ112の雌ねじ118への挿入方向は、ボルト111のアッパーケース部61への挿入方向と同じである。制御基板71は、金属部である頭部116にリジッドに固定されている。
【0036】
図6に示すように、外部接続ターミナル92は、制御基板71と外部接続ターミナル92との結線部にかかる温度変形または振動による応力を緩和する構造として、ベンド部98を有する。具体的には、外部接続ターミナル92は、制御基板71の基板設置空間96に基板平面方向へ突き出している基部97と、基部97から制御基板71に向けて屈曲しているベンド部98と、ベンド部98から制御基板71まで延びている先端部99とを有する。
【0037】
ここで、コネクタがアッパーケースとは別部材である比較形態について考える。比較形態では、コネクタ脱着時の荷重や振動時のワイヤーハーネス重量に対して、コネクタ強度が不足する懸念がある。また、コネクタとアッパーケースとの間にシール剤を塗布する必要があるが、コネクタをアッパーケースに嵌合して上下で挟み込む必要があることから、シール剤を塗布し難く、ケースのシール性を確保できない懸念がある。
【0038】
これに対して、第1実施形態では、コネクタ部95を収容部94と一体で樹脂成形することにより、コネクタを別部材のケースに嵌合させる比較形態と比べるとコネクタ強度を確保しやすい。また、コネクタ部95と収容部94との間に隙間が形成されないので、シール剤を塗布する必要がない。したがって、コネクタ強度およびケースのシール性を確保することができる。
【0039】
ただし、外部接続ターミナル92の応力緩和構造を機能させるためには、コネクタ部95を収容部94と一体で樹脂成形する場合であっても、ベンド部98を樹脂で埋もれないようにする必要がある。つまり、アッパーケース部61を成形するとき、ベンド部98の周囲に樹脂がまわらないようにするための樹脂切りが課題である。
【0040】
第1実施形態では、
図6~
図8に示すように、アッパーケース部61は遮蔽部材101をさらに有する。遮蔽部材101は、アッパーケース部61と基部97およびベンド部98との間に配置されており、基部97およびベンド部98との間に応力緩和空間102を設けている。遮蔽部材101は、基部97およびベンド部98に対して制御基板71とは反対側に配置された背壁部103と、基部97およびベンド部98とを囲むように配置された周壁部104とを有する。
【0041】
遮蔽部材101は、アッパーケース部61を二次成形するとき、一次成形体93に嵌合した状態で二次成形型に設置され、二次成形型内に注入された溶融樹脂がベンド部98の周囲にまわらないように樹脂切りを行う。第1実施形態では、周壁部104が隔壁部65よりも制御基板71側に突出するように設けられており、確実に樹脂切りが行われるようになっている。
【0042】
図3、
図9~
図11に示すようにアクチュエータ10はバスバー121を備える。バスバー121は、コイル38と制御基板71とを電気的に接続しているモータ接続ターミナル122と、モータ接続ターミナル122の一部をモールドしている樹脂製の保持部材123とを有する。保持部材123は樹脂製であり、絶縁体である。
【0043】
保持部材123は、ハウジング19とは別部材であり、環状に形成され、ステータ31と同心上に配置されている。保持部材123は、アッパーケース部61の隔壁部65のうち制御基板71に対向する部分に例えば熱かしめ等により固定されている。
【0044】
モータ接続ターミナル122は複数設けられている。各モータ接続ターミナル122は周方向に並ぶように配置されている。モータ接続ターミナル122は、保持部材123から径方向内側に延出するモータ側延出部124と、モータ側延出部124の先端に設けられ、コイル38のコイル端129に接続しているヒュージング部125と、保持部材123から径方向外側に延出する基板側延出部126と、基板側延出部126から制御基板71に向けて突出し、制御基板71に接続している接続ピン部127とを有する。
【0045】
保持部材123は、モータ側延出部124と基板側延出部126との接続部分をモールドしている。ヒュージング部125は、ヒュージングによりコイル端129に圧着されている。接続ピン部127は、制御基板71に例えばはんだやスナップフィット等により接続されている。
【0046】
基板側延出部126は、制御基板71と平行な仮想平面L(
図9参照)に沿って延出方向が2回以上変化する応力緩和部としてのベンド部131を含む。
図10は、仮想平面Lに垂直な方向から見たバスバー121を示している。本実施形態では、ベンド部131は、保持部材123から径方向外側に延出する基部132の先端に設けられている。具体的には、ベンド部131は、基部132の先端から略周方向へ直線的に延出する第1直線部133と、第1直線部133の一端から略径方向内側へ直線的に延出する第2直線部134と、第2直線部134の一端から略周方向へ直線的に延出する第3直線部135と、第3直線部135の一端から略径方向外側へ直線的に延出する第4直線部136と、第4直線部136の一端から略周方向へ直線的に延出する第5直線部137とから構成されている。ベンド部131は、延出方向が断続的に変化するとともに渦巻き形状に形成された第1~第5直線部133~137から構成されている。接続ピン部127は、その渦巻き形状の中心部、すなわち第5直線部137の一端から突き出すように形成されている。
【0047】
ベンド部131は、各直線部103~107が協同することで種々の向きの制御基板71の相対移動に追従して変形することができる。そのため、各モータ接続ターミナル122の延出方向が異なっている状態においても、全てのモータ接続ターミナル122において制御基板71との接続部にかかる温度変形または振動による応力を緩和することができる。
【0048】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態では、アッパーケース部61は樹脂製である。これによりケース60が軽くなり、また耐食性が向上する。そのためアクチュエータ10を軽量化するとともにケース60のシール性を確保することができる。
【0049】
ところで、制御部16の耐振動性を確保するには制御基板71を金属部に固定する必要がある。そのため、例えばアッパーケース部にインサートナットを一体成形し、そのインサートナットに基板を固定することが考えられる。しかし、インサートナットを設けることでアッパーケース部が大型化し、回転式アクチュエータの体格が大きくなる懸念がある。
【0050】
この点において第1実施形態のアクチュエータ10は、アッパーケース部61およびロアケース部62を締結している金属製の「ケース締結部」としてのボルト111と、制御基板71をボルト111に固定している「基板固定部」としてのスクリュ112とをさらに備える。
【0051】
このように金属製のボルト111を利用して制御基板71を固定することで、制御部16の耐振動性を確保しつつ、インサートナットをアッパーケース部61に設ける必要がなくなる。これにより、アクチュエータ10の体格アップを回避することができる。また、基板固定用のインサートナットに相当する機能をボルト111に持たせることで、インサートナットが不要となり、部品点数を削減できる。
【0052】
以上のようにしてアクチュエータ10を軽量化および小型化することにより、搭載性および耐振動性の向上を図ることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、ボルト111の頭部116に雌ねじ118が形成されており、スクリュ112は雌ねじ118に螺合されている。これにより金属製のボルト111を利用して制御基板71をスクリュ112で固定することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、スクリュ112の雌ねじ118への挿入方向は、ボルト111のアッパーケース部61への挿入方向と同じである。これによりボルト111を締め付けた後、アッパーケース部61を反転することなくそのままスクリュ112を締め付けることができる。そのため組付け性が向上する。
【0055】
ここで、制御基板71を金属部にねじ締結することにより制御基板71がリジッドに固定されるため、制御部とターミナルとの結線部に温度変形または振動による応力がかかり、当該結線部にクラックが発生する懸念がある。
【0056】
この点において、第1実施形態では、アッパーケース部61に埋設された外部接続ターミナル92は、アッパーケース部61内の基板設置空間で屈曲しているベンド部98を有する。そのため、制御基板71と外部接続ターミナル92との結線部にかかる温度変形または振動による応力を緩和し、信頼性を向上することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、バスバー121のモータターミナル122は、アッパーケース部61内の基板設置空間96で屈曲しているベンド部131を有する。そのため、制御基板71とモータ接続ターミナル122との結線部にかかる温度変形または振動による応力を緩和し、信頼性を向上することができる。
【0058】
[他の実施形態]
他の実施形態では、制御基板は、スクリュに限らず、他の締結部材によりボルトの頭部に固定されてもよい。他の実施形態では、スクリュの挿入方向は、ボルトの挿入方向と異なっていてもよい。他の実施形態では、モータ接続ターミナルは、渦巻き形状に限らず、L字状、C字状、または波形状等の他の形状であってもよいし、直線部と曲線部とが複合した形状であってもよい。他の実施形態では、バスバーは、アッパーケース部に一体成形されてもよいし、ステータ等の他の部材に固定されてもよい。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
10:回転式アクチュエータ、11:シフトバイワイヤシステム、16:制御部
30:モータ、61:アッパーケース部、62:ロアケース部、71:制御基板
111:ボルト(ケース締結部)、112:スクリュ(基板固定部)