(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】整列装置および整列コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20221109BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H02K15/085
H02K3/04 E
(21)【出願番号】P 2019084668
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩樹
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097865(WO,A1)
【文献】特開2015-042119(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164236(WO,A1)
【文献】特開2012-151996(JP,A)
【文献】特開2005-065386(JP,A)
【文献】特開2013-165540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びる2本の足部(41、42)とその2本の足部を接続する接続部(43)を有する複数のセグメントコイル(4)を環状に整列させて整列コイル(2)を形成する整列装置において、
前記セグメントコイルの一方の足部(41)が挿入可能な間隔をあけて放射状に配置される複数の仕切部材(11)を有する外側治具(10)と、
複数の前記仕切部材より径方向内側に配置され、前記セグメントコイルの他方の足部(42)が挿入される穴(22)を有する複数の穴部材(21)を有する内側治具(20)と、を備え、
複数の前記穴部材は、前記外側治具に対し前記整列コイルの周方向に相対回転可能であり、且つ、
複数の前記穴部材がそれぞれ前記整列コイルの径方向に移動可能に構成されている、整列装置。
【請求項2】
複数の前記穴部材の有する穴の内径は、前記セグメントコイルの他方の足部が、穴の内側で他方の足部の軸周りに回転可能な大きさに設定されている、請求項1に記載の整列装置。
【請求項3】
前記外側治具の有する複数の前記仕切部材の径方向内側の端面(13)より径方向内側の位置から複数の前記穴部材側へ前記セグメントコイルを押圧する押圧部材(60)をさらに備える請求項1または2に記載の整列装置。
【請求項4】
前記外側治具と前記内側治具は、
前記外側治具と前記内側治具とが同一方向に同じ回転角度で移動する第1動作と、
前記外側治具と前記内側治具とが相対回転する第2動作を行うことが可能に構成されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の整列装置。
【請求項5】
前記セグメントコイルの一方の足部が複数の前記仕切部材同士の間の延長線上に配置され、他方の足部が前記穴部材の穴の延長線上に配置されるように前記セグメントコイルを載置する載置板(51)と、
前記載置板に載せられた前記セグメントコイルの一方の足部が複数の前記仕切部材同士の間に挿入され、他方の足部が前記穴部材の穴に挿入されるように前記セグメントコイルを押圧するプッシャ(52)と、
前記プッシャが前記セグメントコイルを押圧する際、前記載置板に載せられた前記セグメントコイルの他方の足部を摺動可能に支持しつつ、その他方の足部の少なくとも一部が前記穴部材の穴に挿入された後に足部を開放するように動作するコイルガイド(53)と、をさらに備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載の整列装置。
【請求項6】
前記内側治具の回転軸の一方から他方に向かい外径が次第に小さくなるテーパ面(31)を有し、軸方向に移動可能なテーパ部材(30)をさらに備え、
複数の前記穴部材の径方向内側の面は、前記内側治具の回転軸の一方から他方に向かい径方向外側から内側に向けて傾斜する傾斜面(23)とされており、
前記テーパ部材が軸方向に移動すると、前記テーパ面と前記傾斜面とが摺接し、複数の前記穴部材が径方向に移動するように構成されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の整列装置。
【請求項7】
請求項1に記載の整列装置を用いて前記整列コイルを形成する整列コイルの製造方法において、
前記セグメントコイルのうち前記整列コイルを構成する際に径方向内側に配置される足部の位置に合わせて複数の前記穴部材を前記整列コイルの径方向に移動し、複数の前記穴部材の位置を設定することと(S1)、
複数の前記穴部材と複数の前記仕切部材とを同一方向に同じ回転角度で移動しつつ、前記セグメントコイルの一方の足部を複数の前記仕切部材同士の間に挿入し、前記セグメントコイルの他方の足部を複数の前記穴部材の穴に挿入することと(S2~S4)、
前記外側治具と前記内側治具とを相対回転し、前記セグメントコイルの一方の足部を複数の前記仕切部材に沿って径方向内側へ移動させることと(S5)、
前記セグメントコイルの一方の足部が複数の前記仕切部材よりも径方向内側へ移動した後、前記セグメントコイルをさらに複数の前記穴部材側へ近づけて複数の前記セグメントコイルを環状に整列させること(S6)を含む、整列コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整列コイルを形成する整列装置、および、整列コイルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両に搭載されるモータジェネレータ等の回転電機が知られている。この種の回転電機は、ステータのコイルを複数のセグメントコイルにより構成している。そのステータの製造過程では、ステータコアのスロットに複数のセグメントコイルを組み付ける工程の前に、複数のセグメントコイルを環状に整列させた整列コイルを形成する工程が含まれる。なお、整列コイルは、仮組コイルとも呼ばれる。
【0003】
特許文献1には、所定の径の整列コイルを形成するための整列装置が記載されている。この整列装置で形成された整列コイルは、整列装置から取り外された後、径の異なる他の整列コイルと組み合され、ステータコアのスロットに組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステータコアのスロットに組み付けられる整列コイルは、スロットの径方向内側から径方向外側に向かい次第に径の大きいものとなる。これに対し、特許文献1に記載の整列装置は、所定の径の整列コイルのみを形成するものである。そのため、所定のステータのスロットに組み付けるために径の異なる複数の整列コイルを形成する場合、その径の異なる複数の整列コイルそれぞれに対応した複数の整列装置が必要となる。また、その所定のステータとは別の径および体格のステータのスロットに組み付けるために径の異なる複数の整列コイルを形成する場合にも、その径の異なる複数の整列コイルそれぞれに対応した複数の整列装置が必要となる。そのため、複数の整列装置をそれぞれ設置した複数の専用設備が必要となる。したがって、この特許文献1に記載の整列装置を用いると、専用設備の台数が増加し、製造コストが増加するおそれがある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、種々の径の整列コイルを形成することの可能な整列装置、およびその整列装置を用いた整列コイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、互いに平行に延びる2本の足部(41、42)とその2本の足部を接続する接続部(43)を有する複数のセグメントコイル(4)を環状に整列させて整列コイル(2)を形成する整列装置である。整列装置は、外側治具(10)と内側治具(20)を備える。外側治具は、セグメントコイルの一方の足部(41)が挿入可能な間隔をあけて放射状に配置される複数の仕切部材(11)を有する。内側治具は、複数の仕切部材より径方向内側に配置され、セグメントコイルの他方の足部(42)が挿入される穴(22)を有する複数の穴部材(21)を有する。その複数の穴部材は、外側治具に対し整列コイルの周方向に相対回転可能であり、且つ、複数の前記穴部材がそれぞれ整列コイルの径方向に移動可能に構成されている。
【0008】
これによれば、整列装置は、次のように動作して整列コイルを形成する。まず、セグメントコイルのうち整列コイルを構成する際に径方向内側に配置される足部の位置に合わせて複数の穴部材の位置を設定する。次に、全てのセグメントコイルについて、一方の足部を複数の仕切部材同士の間に挿入し、他方の足部を複数の穴部材の穴に挿入する。続いて、外側治具と内側治具とを相対回転し、セグメントコイルの一方の足部を、複数の仕切部材に沿って径方向内側へ移動させる。そして、全てのセグメントコイルの一方の足部が複数の仕切部材よりも径方向内側へ移動した後、その全てのセグメントコイルの一方の足部をさらに複数の穴部材側へ近づけて全てのセグメントコイルを環状に整列させる。これにより、整列装置は、整列コイルを形成することが可能である。
【0009】
このように、請求項1に記載の整列装置は、複数の穴部材の位置を、セグメントコイルのうち整列コイルを構成する際に径方向内側に配置される足部の位置に合わせて設定することで、種々の径の整列コイルを形成することが可能である。すなわち、この整列装置を設置した設備により、所定の電機子のスロットに設けられる複数の径の整列コイルを形成することが可能である。さらに、異なる径および体格の電機子のスロットに設けられる複数の径の整列コイルを形成することも可能である。そのため、この整列装置を用いることで、特定の径の整列コイルのみを形成するための専用設備を廃し、種々の径の整列コイルを形成可能な共通の設備に代えることが可能である。したがって、この整列装置により、整列コイルを形成するための設備の台数を少なくし、製造コストを低減することができる。
【0010】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の整列装置を用いて整列コイルを形成する整列コイルの製造方法に関する。この製造方法は次の工程を含むものである。その工程は、まず、セグメントコイルのうち整列コイルを構成する際に径方向内側に配置される足部の位置に合わせて複数の穴部材を整列コイルの径方向に移動し、複数の穴部材の位置を設定する(S1)。次に、複数の穴部材と複数の仕切部材とを同一方向に同じ回転角度で移動しつつ、セグメントコイルの一方の足部を複数の仕切部材同士の間に挿入し、セグメントコイルの他方の足部を複数の穴部材の穴に挿入する(S2~S4)。続いて、外側治具と内側治具とを相対回転し、セグメントコイルの一方の足部を複数の仕切部材に沿って径方向内側へ移動させる(S5)。そして、セグメントコイルの一方の足部が複数の仕切部材よりも径方向内側へ移動した後、セグメントコイルをさらに複数の穴部材側へ近づけて複数のセグメントコイルを環状に整列させる(S6)。
これにより、請求項7に係る発明も、請求項1と同様の作用効果を奏することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る整列装置、および、整列装置により形成された整列コイルの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る整列装置により形成された整列コイルがステータコアのスロットに挿入された状態を示す平面図である。
【
図3】ステータコアのスロットの中で径方向内側に設けられるセグメントコイルを示す側面図である。
【
図4】ステータコアのスロットの中で径方向外側に設けられるセグメントコイルを示す側面図である。
【
図5】整列コイルを構成する複数のセグメントコイルのうち3本のみを示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る整列装置が備える外側治具と内側治具を示す平面図である。
【
図7】第1実施形態に係る整列装置が備える外側治具と内側治具を示す平面図である。
【
図8】第1実施形態に係る整列装置が備える外側治具、内側治具およびテーパ部材を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係る整列装置において内側治具とテーパ部材の動作を説明するための説明図である。
【
図10】第1実施形態に係る整列装置において内側治具とテーパ部材の動作を説明するための説明図である。
【
図11】第1実施形態に係る整列装置が備える外側治具、内側治具および載置板などを示す斜視図である。
【
図12】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図13】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図14】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図15】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図16】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図17】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図18】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図19】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図20】第1実施形態による整列コイルの製造方法の説明図である。
【
図21】第1実施形態による整列コイルの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図22】第2実施形態に係る整列装置において内側治具とカム機構の動作を説明するための説明図である。
【
図23】第2実施形態に係る整列装置において内側治具とカム機構の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の整列装置は、回転電機の電機子(例えばステータ)のスロットに複数のセグメントコイルを組み付ける前の工程で、その複数のセグメントコイルを環状に整列させた整列コイルを形成するものである。この整列装置は、整列コイルを形成するための図示しない設備の一部に設置されるものである。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る整列装置1と、その整列装置1により形成された1個の整列コイル2が整列装置1から取り出された状態を示している。この整列コイル2は、後の工程で径の異なる他の整列コイル2と組み合され、ステータコアのスロットに組み付けられる。なお、
図1に示した整列コイル2は、48本のセグメントコイル4により構成されている。ただし、整列コイル2を構成するセグメントコイル4の数は、これに限るものではない。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る整列装置1により形成された4個の整列コイル2がステータコア3のスロットに挿入された状態を示している。4個の整列コイル2は、それぞれ径が異なるものである。具体的には、4個の整列コイル2の径は、ステータコア3のスロットの中で径方向内側に配置されるものに対し、径方向外側に配置されるものが次第に大きいものとされている。
【0017】
図3は、ステータコア3のスロットの中で径方向内側に配置される整列コイル2を構成するセグメントコイル4を示している。一方、
図4は、ステータコア3のスロットの中で径方向外側に配置される整列コイル2を構成するセグメントコイル4を示している。いずれのセグメントコイル4も、略U字形に形成され、互いに平行に延びる2本の足部41、42と、その2本の足部41、42を接続する接続部43を有している。
図3に示したセグメントコイル4の2本の足部41、42同士の間隔D1は、
図4に示したセグメントコイル4の2本の足部41、42同士の間隔D2より狭い。すなわち、セグメントコイル4の2本の足部41、42同士の間隔は、ステータコア3のスロットの中で径方向内側に配置されるものが狭く、径方向内側に配置されるものが広い。
【0018】
図4は、整列コイル2を構成する複数のセグメントコイル4のうち3本のみを示している。
図4に示すように、セグメントコイル4の接続部43の中央には、クランク部44が設けられている。クランク部44は、ステータの径方向に屈曲し、且つ、ステータの軸方向に屈曲する部位である。これにより、整列コイル2を構成する複数のセグメントコイル4は、周方向の一方に位置するセグメントコイル4のうちクランク部44より周方向の一方の部位の下側に、周方向の他方に位置するセグメントコイル4のうちクランク部44より周方向の一方の部位が入り込む形となる。また、複数のセグメントコイル4は、周方向の一方に位置するセグメントコイル4のうちクランク部44より周方向の他方の部位の上側に、周方向の他方に位置するセグメントコイル4のうちクランク部44より周方向の他方の部位が乗り上げる形となる。
【0019】
なお、以下の説明では、セグメントコイル4の2本の足部41、42のうち、整列コイル2を構成したときに径方向外側に配置される足部を「一方の足部41」といい、径方向内側に配置される足部を「他方の足部42」という。また、以下の説明では、整列装置1の周方向、径方向、軸方向を単に周方向、径方向、軸方向という。なお、整列装置1の周方向、径方向、軸方向と、その整列装置1により形成される整列コイル2の周方向、径方向、軸方向とは一致している。
【0020】
次に、整列装置1の構成について説明する。
図1、
図6および
図7に示すように、整列装置1は、外側治具10および内側治具20などを備えている。
外側治具10は、複数の仕切部材11と、その複数の仕切部材11同士を連結する連結部12を有している。複数の仕切部材11は、板状に形成され、セグメントコイル4の一方の足部41が挿入可能な間隔を空けて放射状に配置されている。複数の仕切部材11の径方向内側の端面13は、この整列装置1により形成される整列コイル2の外径よりも径方向外側に位置している。また、複数の仕切部材11の径方向内側の端面13同士の間は、セグメントコイル4の一方の足部41が通過することが可能な開口となっている。外側治具10は、48個の仕切部材11を有している。ただし、外側治具10の有する仕切部材11の数は、これに限るものではない。また、外側治具10は、図示しない回転機構の駆動により、周方向に回転可能である。
【0021】
内側治具20は、円環状に配置される複数の穴部材21を有している。複数の穴部材21は、複数の仕切部材11の径方向内側の端面13よりも径方向内側に配置されている。複数の穴部材21はそれぞれ、セグメントコイル4の他方の足部42が挿入される穴22を有している。穴部材21の有する穴22の内径は、そこに挿入されるセグメントコイル4の他方の足部42が、穴22の内側で、他方の足部42の軸周りに回転可能な大きさに設定されている。
【0022】
内側治具20が有する複数の穴部材21は、図示しない回転機構の駆動により、周方向に回転可能である。内側治具20が有する複数の穴部材21の回転軸と、外側治具10の有する複数の仕切部材11の回転軸とは、一致している。
内側治具20と外側治具10は、同一方向に同じ回転角度で移動することが可能である。以下の説明では、その動作を第1動作ということがある。
また、外側治具10と内側治具20とは、相対回転することも可能である。以下の説明では、その動作を第2動作ということがある。
【0023】
さらに、本実施形態では、内側治具20が有する複数の穴部材21はそれぞれ図示しないガイドレール等に案内され、径方向に移動可能に構成されている。
図6は、複数の穴部材21が、円環状に配置され、且つ、径方向内側に位置している状態を示している。これに対し、
図7は、複数の穴部材21が、円環状に配置され、且つ、径方向外側に位置している状態を示している。このように、複数の穴部材21は、円環状に配置され、且つ、径方向に移動可能である。したがって、複数の穴部材21は、整列コイル2の径に合わせて径方向の位置を変えることができる。
【0024】
図6では、複数の穴部材21のうち径方向の一方に配置されている穴部材21の有する穴22の中心と、径方向の他方に配置されている穴部材21の有する穴22の中心との距離DH1を示している。また、
図7では、複数の穴部材21のうち径方向の一方に配置されている穴部材21の有する穴22の中心と、径方向の他方に配置されている穴部材21の有する穴22の中心との距離DH2を示している。
【0025】
図6に示した距離DH1は、
図7に示した距離DH2より小さい。そして、それらの距離DH1、DH2は、整列コイル2の径方向の一方に配置されるセグメントコイル4の径方向内側の足部42と、整列コイル2の径方向の他方に配置されるセグメントコイル4の径方向内側の足部42との距離に相当する。このように、本実施形態の整列装置1は、複数の穴部材21の穴22の位置を、セグメントコイル4のうち整列コイル2を構成する際に径方向内側に配置される足部42の位置に合わせて設定することで、種々の径の整列コイル2を形成することが可能である。
【0026】
図8~
図10に示すように、複数の穴部材21の移動方法として、例えば、テーパ部材30を用いた移動方法が挙げられる。テーパ部材30は、内側治具20の回転軸方向の一方から他方に向かい次第に外径が小さくなるように形成されたテーパ面31を有している。テーパ部材30は、図示しない駆動機構により軸方向に移動可能に構成されている。そして、テーパ部材30は、複数の穴部材21の内側に挿入可能に設けられている。
【0027】
一方、複数の穴部材21の径方向内側の面は、内側治具20の回転軸方向の一方から他方に向かい径方向外側から内側に向けて傾斜する傾斜面23とされている。そのため、
図9および
図10に示すように、テーパ部材30が軸方向に移動すると、テーパ面31と傾斜面23とが摺接し、複数の穴部材21が径方向に移動する。なお、
図9および
図10では、テーパ部材30が移動する方向を矢印Aで示し、複数の穴部材21が移動する方向を矢印Bで示している。これにより、複数の穴部材21は、円環状に並んだ状態で径方向に移動する。
【0028】
さらに、
図11に示すように、整列装置1は、挿入機構50を備えている。挿入機構50は、載置板51、プッシャ52、コイルガイド53等により構成されている。
載置板51は、外側治具10および内側治具20に挿入する前のセグメントコイル4を載置するための板部材である。具体的には、載置板51は、セグメントコイル4の一方の足部41が複数の仕切部材11同士の間の延長線上に配置され、他方の足部42が穴部材21の穴22の延長線上に配置されるようにセグメントコイル4を載置する。
【0029】
プッシャ52は、載置板51に載せられたセグメントコイル4を、外側治具10および内側治具20に向けて押圧する部材である。具体的には、プッシャ52は、載置板51に載せられたセグメントコイル4の一方の足部41を複数の仕切部材11同士の間に挿入し、他方の足部42を穴部材21の穴22に挿入するようにセグメントコイル4を押圧する。
【0030】
コイルガイド53は、載置板51に載せられたセグメントコイル4の他方の足部42を穴22に案内するための部材である。コイルガイド53は、プッシャ52がセグメントコイル4を押圧する際、載置板51に載せられたセグメントコイル4の他方の足部42を摺動可能に支持する。そして、コイルガイド53は、その他方の足部42の少なくとも一部が穴部材21の穴22に挿入された後に足部42を開放するように動作する。これにより、挿入機構50は、載置板51、プッシャ52およびコイルガイド53により、セグメントコイル4の一方の足部41を複数の仕切部材11同士の間に挿入し、他方の足部42を穴部材21の穴22に正確に挿入することが可能である。
【0031】
さらに、
図19および
図20に示すように、整列装置1は、押圧部材としてのローラ60を備えている。ローラ60は、複数の仕切部材11の径方向内側の端面13より径方向内側の位置から複数の穴部材21側へセグメントコイル4を押圧するための部材である。
【0032】
続いて、整列装置1の動作について
図12~
図20を参照して説明する。なお、この整列装置1の動作の説明および
図12~
図17では、1本目、2本目、3本目のセグメントコイル4に対し、それぞれ符号4a、4b、4cを付すものとする。
また、
図13~
図16、
図18、
図19では、内側治具20の回転方向を矢印R1で示す。
図13~
図16では、外側治具10の回転方向を矢印R2で示す。
そして、
図12~
図17では、外側治具10と内側治具20がそれぞれ回転していることを示すため、外側治具10が有する連結部12の所定の位置に○印を記載し、内側治具20が有する所定の穴部材21に×印を記載している。
【0033】
まず、
図12に示すように、1本目のセグメントコイル4aの一方の足部41を複数の仕切部材11同士の間に挿入し、他方の足部42を穴部材21の穴22に挿入する。なお、セグメントコイル4の挿入は、上述した挿入機構50により行われる。
【0034】
次に、
図13に示すように、外側治具10と内側治具20を同一方向に、周方向に隣り合う仕切部材11同士の角度分(以下、「1ピッチ」という)、回転させる。すなわち、外側治具10と内側治具20は、上述した第1動作を行う。
続いて、
図14に示すように、2本目のセグメントコイル4bの一方の足部41を複数の仕切部材11同士の間に挿入し、他方の足部42を穴部材21の穴22に挿入する。
【0035】
次に、
図15に示すように、外側治具10と内側治具20を同一方向に1ピッチ回転させる。
続いて、
図16に示すように、3本目のセグメントコイル4cの一方の足部41を複数の仕切部材11同士の間に挿入し、他方の足部42を穴部材21の穴22に挿入する。
このようにして、外側治具10と内側治具20を同一方向に1ピッチずつ回転させながら、4本目以降のセグメントコイル4も順に挿入してゆく。
図17は、全てのセグメントコイル4を挿入した状態を示している。
【0036】
次に、
図18に示すように、外側治具10を停止させた状態で、内側治具20のみを回転する。これにより、外側治具10と内側治具20とは相対回転する。すなわち、外側治具10と内側治具20は、上述した第2動作を行う。この動作により、複数の仕切部材11同士の間に挿入されている全てのセグメントコイル4の一方の足部41は、複数の仕切部材11に沿って径方向内側へ移動する。そのとき、穴部材21の穴22に挿入されている全てのセグメントコイル4の他方の足部42は、穴22の内側で、他方の足部42の軸周りに回転する。
【0037】
図19に示すように、内側治具20が所定角度回転すると、全てのセグメントコイル4の一方の足部41は、複数の仕切部材11の径方向内側の端面13よりも径方向内側へ移動する。次に、整列装置1は、押圧部材としてのローラ60により、セグメントコイル4を径方向内側(すなわち、穴部材21側)へ押圧する。
図19では、ローラ60がセグメントコイル4を押圧する方向を、矢印Cで示している。整列装置1は、ローラ60によりセグメントコイル4を径方向内側へ押圧しつつ、内側治具20を回転させる。これにより、全てのセグメントコイル4の一方の足部41は複数の穴部材21側へ近づいてゆく。
そして、
図20に示すように、全てのセグメントコイル4は環状に整列した状態となり、整列コイル2が完成する。
【0038】
次に、整列コイル2の製造方法について、
図21のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1で、
図8~
図10に示したように、所定の径の整列コイル2を形成するため、その所定の整列コイル2の径に対応するよう、複数の穴部材21の位置を設定する。具体的には、複数のセグメントコイル4のうち整列コイル2を構成する際に径方向内側に配置される足部42の位置に合わせて複数の穴部材21を径方向に移動し、複数の穴部材21の穴22の位置を設定する。
【0039】
次に、ステップS2で、
図12等に示したように、セグメントコイル4の一方の足部41を複数の仕切部材11同士の間に挿入し、他方の足部42を穴部材21の穴22に挿入する。
続いて、ステップS3で、
図13等に示したように、外側治具10と内側治具20を同一方向に1ピッチ回転する。
次のステップS4で、全てのセグメントコイル4の挿入が完了していないと判定される場合、ステップS2とステップS3の工程を繰り返し行う。すなわち、
図14~
図16に示したように、ステップS2で説明した1本のセグメントコイル4を所定の位置に挿入する工程と、ステップS3で説明した外側治具10と内側治具20を同一方向に1ピッチ回転する工程を繰り返し行う。
【0040】
一方、ステップS4で、
図17に示したように、整列コイル2を構成する全てのセグメントコイル4の挿入が完了し、全てのセグメントコイル4が外側治具10と内側治具20に収容されていることが判定された場合、ステップS5に移行する。
【0041】
ステップS5では、
図18に示したように、外側治具10を停止させた状態で、内側治具20のみを回転する。これにより、複数の仕切部材11同士の間に挿入されている全てのセグメントコイル4の一方の足部41が、複数の仕切部材11に沿って径方向内側へ移動する。そのとき、穴部材21の穴22に挿入されている全てのセグメントコイル4の他方の足部42は、穴22の内側で、他方の足部42の軸周りに回転する。
【0042】
続いて、ステップS6では、
図19に示したように、ローラ60により、セグメントコイル4を径方向内側(すなわち、穴部材21側)へ押圧しつつ、内側治具20を回転させる。これにより、全てのセグメントコイル4の一方の足部41は複数の穴部材21側へ近づいてゆく。その結果、
図20に示したように、整列コイル2が完成する。
【0043】
次に、ステップS7では、整列コイル2を図示しないチャック治具により一括で掴み、外側治具10と内側治具20から整列コイル2を取り出す。その整列コイル2は、
図1に示した状態ものである。その後の工程で、整列コイル2は、径の異なる他の整列コイル2と組み合され、ステータコア3のスロットに組み付けられる。
【0044】
以上説明した本実施形態の整列装置1は、複数の穴部材21の位置を、セグメントコイル4のうち整列コイル2を構成する際に径方向内側に配置される足部42の位置に合わせて設定することで、種々の径の整列コイル2を形成することが可能である。すなわち、この整列装置1を設置した設備により、所定の電機子のスロットに設けられる複数の径の整列コイル2を形成することが可能である。さらに、異なる径および体格の電機子のスロットに設けられる複数の径の整列コイル2を形成することも可能である。そのため、この整列装置1を用いることで、特定の径の整列コイル2のみを形成するための専用設備を廃し、種々の径の整列コイル2を形成可能な共通の設備に代えることが可能である。したがって、この整列装置1により、整列コイル2を形成するための設備の台数を少なくし、製造コストを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態の整列コイル2の製造方法も、上記と同様に、種々の径の整列コイル2を形成するための設備の台数を少なくし、製造コストを低減することができる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して内側治具20の有する複数の穴部材21の移動方法の別の例を示すものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図22~
図24に示すように、第2実施形態では、内側治具20の有する複数の穴部材21は、カム機構70により径方向に移動可能に構成されている。
具体的には、内側治具20の軸方向の一方には回転盤71が設けられている。その回転盤71には、カム溝72が設けられている。そのカム溝72は、回転盤71の径方向に対して斜めに延びている。一方、内側治具20の有する複数の穴部材21のうち回転盤71側の端部には突起25が設けられている。その穴部材21に設けられた突起25は、回転盤71のカム溝72に挿入されている。
この構成により、
図22の状態から回転盤71が矢印Eの方向に回転すると、複数の穴部材21は矢印Fに示すように径方向外側に移動し、
図23の状態となる。
一方、
図23の状態から回転盤71が矢印Gの方向に回転すると、複数の穴部材21は矢印Hに示すように径方向内側に移動し、
図22の状態となる。
【0048】
このように、第2実施形態においても、内側治具20の有する複数の穴部材21の位置を、セグメントコイル4のうち整列コイル2を構成する際に径方向内側に配置される足部の位置に合わせて設定することが可能である。したがって、第2実施形態の整列装置1も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0050】
(1)上記各実施形態において、内側治具20の有する複数の穴部材21は、テーパ部材30またはカム機構70により径方向に移動する構成としたが、これに限るものではない。複数の穴部材21は、例えば、図示しないアクチュエータにより径方向に移動する構成としてもよい。
【0051】
(2)上記各実施形態において、整列コイル2の製造方法のステップS2、S3では、外側治具10と内側治具20を同一方向に1ピッチずつ回転させながら、セグメントコイル4を1本ずつ挿入したが、これに限るものではない。例えば、セグメントコイル4は、複数本を同時に挿入してもよい。
【0052】
(3)上記各実施形態において、整列コイル2の製造方法のステップS5では、外側治具10を停止させた状態で、内側治具20のみを回転したが、これに限るものではない。上記実施形態において内側治具20が回転した方向を正方向とした場合、例えば、内側治具20を停止させた状態で、外側治具10を逆方向に回転させてもよい。または、内側治具20を正方向に回転させ、外側治具10を逆方向に回転させてもよい。
【0053】
(4)上記各実施形態において、整列コイル2の製造方法のステップS6では、ローラ60により、セグメントコイル4を径方向内側へ押圧しつつ、内側治具20を回転させたが、これに限るものではない。例えば、ローラ60により、セグメントコイル4を径方向内側へ押圧しつつ、そのローラ60を内側治具20の周方向に回転させてもよい。
【0054】
(5)上記各実施形態において、複数の穴部材21の有する穴22の内径は、セグメントコイル4の他方の足部42が、穴22の内側で他方の足部42の軸周りに回転可能な大きさに設定したが、これに限るものではない。例えば、セグメントコイル4の他方の足部42と共にそれぞれの穴部材21が個々に回転する構成としてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、整列コイルが組み付けられる電機子としてステータを例示したが、これに限らず、整列コイルが組み付けられる電機子はロータであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 整列装置
2 整列コイル
4 セグメントコイル
10 外側治具
11 仕切部材
20 内側治具
21 穴部材
22 穴
41 一方の足部
42 他方の足部