(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
C23C14/34 M
(21)【出願番号】P 2019086521
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225324(WO,A1)
【文献】特開2017-53005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容される成膜室が内部に形成された真空容器と、
前記基板と対向するように設けられ、プラズマを発生させる複数のアンテナと、
前記複数のアンテナに対して前記基板側とは反対側に設けられ、スパッタリングの対象である複数のターゲットと、を備え、
前記成膜室には、前記成膜室内にガスを導入するための複数のガス導入口と、前記成膜室内のガスを排気するための複数のガス排気口と、が形成され、
前記複数のターゲットのうち、隣り合う2枚のターゲットのいずれにおいても、前記2枚のターゲットの間に形成される第1空間に対して、前記アンテナが所定の第1位置関係で配置されているとともに、前記第1空間内に配置される前記ガス導入口および前記ガス排気口に対して前記アンテナが所定の第2位置関係で配置されていることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記第1位置関係は、前記アンテナと、前記複数のターゲットのうち隣り合う2枚のターゲットのそれぞれと、の距離が同一となる位置関係であり、
前記第2位置関係は、前記アンテナが前記ガス導入口および前記ガス排気口と対向する位置関係であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
ガス導入管と、前記ターゲットおよびターゲット保持部との間に形成される第2空間を経由してガスが排気されるよう、前記ガス排気口が前記第2空間における前記成膜室と連通する側とは反対側に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記アンテナの延伸方向と同一の方向に延伸し、前記アンテナと対向する側が開放された断面凹形状を有するガス導入管と、
前記ガス導入管の開放側に対して設けられるとともに、前記複数のガス導入口が形成され、前記ターゲットから放出されたスパッタ粒子が前記ガス導入管に付着することを防止するための防着板と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記ガス導入管の開放側とは反対側に設けられ、前記複数のガス排気口が形成された排気プレートをさらに備え、
前記防着板には、前記成膜室内のガスを前記複数のガス排気口へ排気するための複数の第2ガス排気口が形成されることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記複数のガス導入口が並ぶ方向と前記複数のアンテナの延伸方向とが同一であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットの表面に磁界を形成してプラズマを生成し、プラズマ中のイオンをターゲットに衝突させることで、ターゲットからスパッタ粒子が飛び出すように構成されたスパッタリング装置が従来技術として知られている。このようなスパッタリング装置としては、例えば、特許文献1に開示されているスパッタリング装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示されているスパッタリング装置は、隣り合う2枚のターゲットを1組として、1組のターゲット間に電圧が印加されるターゲット装置を有する。ターゲット装置は、1組のターゲットの側面と対向して配置された隔壁を有し、隔壁とターゲットとの間にガス導入口が形成され、真空槽の底面に主排気口が形成される。ガス導入口から導入された反応ガスは、1組のターゲット間を通って主排気口から排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-49884号公報(2013年3月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているスパッタリング装置では、隔壁とターゲットとの間にはガス導入口が形成されているが、1組のターゲット間にはガス導入口が形成されていない。また、1組のターゲット間には主排気口が形成されているが、隔壁とターゲットとの間には主排気口が形成されていない。
【0006】
このため、特許文献1に開示されているスパッタリング装置では、真空槽内においてターゲットに対して供給するガスの圧力を十分に均一にすることができず、基板に形成される薄膜を十分に均一にすることができないという問題がある。本発明の一態様は、成膜室内においてターゲットに対して供給するガスの圧力を均一にし、基板に形成される薄膜の均一性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るスパッタリング装置は、基板が収容される成膜室が内部に形成された真空容器と、前記基板と対向するように設けられ、プラズマを発生させる複数のアンテナと、前記複数のアンテナに対して前記基板側とは反対側に設けられ、スパッタリングの対象である複数のターゲットと、を備え、前記成膜室には、前記成膜室内にガスを導入するための複数のガス導入口と、前記成膜室内のガスを排気するための複数のガス排気口と、が形成され、前記複数のターゲットのうち、隣り合う2枚のターゲットのいずれにおいても、前記2枚のターゲットの間に形成される第1空間に対して、前記アンテナが所定の第1位置関係で配置されているとともに、前記第1空間内に配置される前記ガス導入口および前記ガス排気口に対して前記アンテナが所定の第2位置関係で配置されている。
【0008】
前記構成によれば、隣り合う2枚のターゲットのいずれにおいても、アンテナとターゲットとガス導入口とガス排気口との位置関係が一定であるため、成膜室内においてターゲットに対して供給するガスの圧力を均一にすることができる。これにより、基板に形成される薄膜の均一性を向上させることができる。
【0009】
前記第1位置関係は、前記アンテナと、前記複数のターゲットのうち隣り合う2枚のターゲットのそれぞれと、の距離が同一となる位置関係であり、前記第2位置関係は、前記アンテナが前記ガス導入口および前記ガス排気口と対向する位置関係であってもよい。前記構成によれば、アンテナと隣り合う2枚のターゲットのそれぞれとの距離が同一となり、かつ、アンテナがガス導入口およびガス排気口と対向するため、隣り合う2枚のターゲットのそれぞれに対して供給するガスの圧力を均一にすることができる。
【0010】
ガス導入管と、前記ターゲットおよびターゲット保持部との間に形成される第2空間を経由してガスが排気されるよう、前記ガス排気口が前記第2空間における前記成膜室と連通する側とは反対側に形成されてもよい。前記構成によれば、ガス導入口から導入されたガスが、ガス導入管とターゲットおよびターゲット保持部との間に形成される第2空間を経由して排気されるため、成膜室内にガスが均一に行き渡る。これにより、成膜室内において、基板に形成される薄膜の均一性を向上させることができる。
【0011】
前記スパッタリング装置は、前記アンテナの延伸方向と同一の方向に延伸し、前記アンテナと対向する側が開放された断面凹形状を有するガス導入管と、前記ガス導入管の開放側に対して設けられるとともに、前記複数のガス導入口が形成され、前記ターゲットから放出されたスパッタ粒子が前記ガス導入管に付着することを防止するための防着板と、をさらに備えてもよい。前記構成によれば、ガス導入管に対して防着板が設けられているため、ターゲットから放出されたスパッタ粒子が付着した防着板を交換してメンテナンスを容易に行うことができる。
【0012】
前記スパッタリング装置は、前記ガス導入管の開放側とは反対側に設けられ、前記複数のガス排気口が形成された排気プレートをさらに備え、前記防着板には、前記成膜室内のガスを前記複数のガス排気口へ排気するための複数の第2ガス排気口が形成されてもよい。前記構成によれば、ガス排気口に加えて第2ガス排気口が形成されるため、ガス排気口と第2ガス排気口との2段階でガスの排気量を調整することができる。よって、ガスを均一に排気するための構造を容易に実現することができる。
【0013】
前記複数のガス導入口が並ぶ方向と前記複数のアンテナの延伸方向とが同一であってもよい。前記構成によれば、成膜室内に導入されたガスがアンテナに均一に供給される。よって、アンテナにより生成されたプラズマがターゲットの表面に均一に拡散されるため、成膜室内において、基板に形成される薄膜の均一性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、成膜室内においてターゲットに対して供給するガスの圧力を均一にすることができ、基板に形成される薄膜の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すスパッタリング装置の内部の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図3に示すスパッタリング装置の内部の平面図である。
【
図5】
図4に示すスパッタリング装置の変形例に係る内部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
<スパッタリング装置1の構成>
図1は、本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置1の構成を示す断面図である。
図2は、
図1に示すスパッタリング装置1の内部の平面図である。具体的には、
図2は、
図1において基板Wからアンテナ20に向かう方向から見た場合のスパッタリング装置1の内部の平面図である。また、
図2において、基板保持部70および真空排気装置81,91を省略している。さらに、
図1から
図5において、図上で同一視できる形状のものについては、部材番号を省略している。
【0017】
スパッタリング装置1は、
図1に示すように、真空容器10と、複数のアンテナ20と、複数のターゲット30と、複数のターゲット保持部31と、複数のガス導入管40と、排気プレート50と、複数の絶縁部60と、基板保持部70と、真空排気装置81,91と、を備えている。
【0018】
スパッタリング装置1は、誘導結合型のプラズマを用いてターゲット30をスパッタリングして基板Wに成膜するものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。
【0019】
真空容器10は、真空排気され、かつ、内部にガスが供給される容器である。また、真空容器10は、基板Wが収容される成膜室11が内部に形成された容器である。成膜室11は、真空容器10の側壁12と、真空容器10の底面13と、基板保持部70と、複数のターゲット30と、複数のガス導入管40と、によって囲まれることにより形成される。成膜室11には、複数のガス導入口41と複数のガス排気口51とが形成される。ガス導入口41およびガス排気口51については後述する。
【0020】
複数のアンテナ20は、それぞれ、基板Wと対向するように成膜室11内に設けられ、プラズマを発生させるICP(Inductively Coupled Plasma)アンテナである。具体的には、複数のアンテナ20は、成膜室11内における基板Wの表面側に、基板Wの表面に沿うように同一平面上に並列に配置されている。例えば、複数のアンテナ20は、基板Wの表面と実質的に平行に配置されている。
【0021】
各アンテナ20における真空容器10内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー21により覆われている。なお、各アンテナ20は、
図2に示すように、平面視において直線状で同一の構成である。ここでは、平面視とは、基板Wからアンテナ20に向かう方向から見た場合を意味している。
【0022】
複数のターゲット30は、それぞれ、複数のアンテナ20に対して基板W側とは反対側に設けられ、スパッタリングの対象である。各ターゲット30は、平面視において矩形状をなす平板状のものであり、例えば、InGaZnO等の酸化物半導体材料である。各ターゲット保持部31は、基板保持部70に保持された基板Wと対向するようにターゲット30を保持する。ターゲット保持部31は、基板Wと対向する側とは反対側において、真空シール機能を有する絶縁部60を介して排気プレート50に設けられている。
【0023】
複数のガス導入管40は、それぞれ、
図2に示すように、アンテナ20の延伸方向D1と同一の方向に延伸する。各ガス導入管40は、複数のガス導入管40が並ぶ方向D2と同一の方向に延伸する中間配管100と、接続配管101を介して接続されている。つまり、接続配管101は、各ガス導入管40と中間配管100とを接続している。複数のガス導入管40のサイズは、成膜室11内に導入すべきガスの量に応じて、適宜決定されてもよい。
【0024】
中間配管100について、方向D2における中央部分には、ガス供給機構110が接続されている。ガス供給機構110は、O2(酸素)やN2(窒素)等の反応性ガスとAr(アルゴン)等のスパッタ用ガスとの混合ガスを中間配管100の内部に供給する。中間配管100の内部に供給された混合ガスは、接続配管101を通ってガス導入管40の内部に供給される。ガス導入管40の内部に供給された混合ガスは、ガス導入口41から、成膜室11内におけるターゲット30の基板W側に向かって導入される。
【0025】
なお、ガス供給機構110は、反応性ガスのみを中間配管100の内部に供給してもよい。この場合、中間配管100の内部に供給された反応性ガスは、接続配管101を通ってガス導入管40の内部に供給される。ガス導入管40の内部に供給された反応性ガスは、ガス導入口41から、成膜室11内におけるターゲット30の基板W側に向かって導入される。
【0026】
また、ガス供給機構110が、反応性ガスのみを中間配管100の内部に供給する場合、真空容器10の側壁12に、成膜室11内にスパッタ用ガスを導入するためのガス導入口(図示せず)が形成されていてもよい。この場合、スパッタ用ガスを供給するガス供給機構(図示せず)によって当該ガス導入口から成膜室11内にスパッタ用ガスが導入される。当該ガス供給機構は、真空容器10に接続される。
【0027】
複数のガス導入管40は、それぞれ、平面視において複数のターゲット30の長手方向と平行な方向に延伸するように配置されている。各ガス導入管40には、成膜室11内にガスを導入するための複数のガス導入口41が形成されている。複数のガス導入口41の形状は、円形であることが好ましいが、これに限定されず、例えば、三角形または四角形等であってもよい。
【0028】
複数のガス導入口41が並ぶ方向は、複数のアンテナ20の延伸方向と同一であり、複数のガス導入口41は、アンテナ20に沿って形成されている。前記構成によれば、成膜室11内に導入されたガスがアンテナ20に均一に供給される。よって、アンテナ20により生成されたプラズマがターゲット30の表面に均一に拡散されるため、成膜室11内において、基板Wに形成される薄膜の均一性を向上させることができる。
【0029】
排気プレート50は、ガス導入管40の基板W側とは反対側に設けられ、成膜室11内のガスを排気するための複数のガス排気口51が形成されている。排気プレート50には、ターゲット30とガス導入管40とが交互に配置されている。複数のガス排気口51は、それぞれ、ガス導入管40の延伸方向に沿って形成されており、ガス導入管40の両側に形成されている。
【0030】
複数のガス排気口51の総開口面積は、
図2に示すように、複数のガス導入口41の総開口面積よりも大きい。これにより、成膜室11内へのガスの導入よりも、成膜室11から外部へのガスの排気を優先して行うことができる。このため、成膜室11内の圧力と排気室15内の圧力との差圧を確保し、成膜室11内の圧力を適切に維持することができる。
【0031】
さらに、ガス導入管40と、ターゲット30およびターゲット保持部31との間に形成される第2空間S2を経由してガスが排気されるよう、ガス排気口51が第2空間S2における成膜室11と連通する側とは反対側に形成される。
【0032】
前記構成によれば、ガス導入口41から導入されたガスが、ガス導入管40とターゲット30およびターゲット保持部31との間に形成される第2空間S2を経由して排気されるため、成膜室11内にガスが均一に行き渡る。これにより、成膜室11内において、基板Wに形成される薄膜の均一性を向上させることができる。なお、ガス排気口51は、真空容器10の側壁12とガス導入管40との間の空間における成膜室11と連通する側とは反対側にも形成される。
【0033】
ここで、複数のターゲット30のうち、隣り合う2枚のターゲット30のいずれにおいても、2枚のターゲット30の間に形成される第1空間S1に対して、アンテナ20が所定の第1位置関係で配置されている。また、第1空間S1内に配置されるガス導入口41およびガス排気口51に対してアンテナ20が所定の第2位置関係で配置されている。
【0034】
前記構成によれば、隣り合う2枚のターゲット30のいずれにおいても、アンテナ20とターゲット30とガス導入口41とガス排気口51との位置関係が一定である。このため、成膜室11内においてターゲット30に対して供給するガスの圧力を均一にすることができる。これにより、基板Wに形成される薄膜の均一性を向上させることができる。
【0035】
具体的には、ガスの利用効率を向上させることができ、基板Wに形成される薄膜に係る膜厚および膜質の均一性を向上させることができる。ここで、特に、ターゲット30がInGaZnO等の酸化物半導体材料である場合を考える。
【0036】
この場合、酸素分圧の制御を行うとき、多層構造として酸素分圧を変更するとき、または、結晶構造を有する薄膜を基板Wに形成するとき、ターゲット30に対して供給するガスの圧力が均一になる。これにより、基板Wに形成される薄膜の比抵抗および結晶性を極めて均一にすることができる。また、全てのターゲット30に対して、方向D2における反応性ガスの分圧を均一にすることができる。
【0037】
さらに、前記第1位置関係は、アンテナ20と、複数のターゲット30のうち隣り合う2枚のターゲット30のそれぞれと、の距離が同一となる位置関係であり、前記第2位置関係は、アンテナ20がガス導入口41およびガス排気口51と対向する位置関係である。前記構成によれば、隣り合う2枚のターゲット30のそれぞれに対して供給するガスの圧力を均一にすることができる。
【0038】
また、前記第2位置関係は、ガス導入口41が、基板Wからアンテナ20に向かう方向と平行な方向であり、かつ、アンテナ20を通る直線上に配置されている位置関係であることが好ましい。これにより、ガス導入口41から導入されたガスを、アンテナ20に通過させ、ターゲット30に対して供給することができる。
【0039】
基板保持部70は、成膜室11内において基板Wを、例えば水平状態となるように保持するホルダである。平面視において、真空容器10の上面14の中央には、主排気口80が形成されている。主排気口80は、ガス導入口41から成膜室11内に導入されたガスを、成膜室11の外部へ排気するために形成されている。
【0040】
複数のガス排気口51から排気された成膜室11内のガスは、真空ポンプ等の真空排気装置81によって主排気口80から真空容器10の外部に排気される。真空排気装置81は、真空容器10に接続される。また、真空容器10の底面13には、副排気口90が形成されている。副排気口90は、基板Wに対して成膜を行う前後に、成膜室11内のガスを成膜室11の外部に排気するために形成されている。成膜室11内のガスは、基板Wに対して成膜を行う前後に、真空ポンプ等の真空排気装置91によって副排気口90から真空容器10の外部に排気される。真空排気装置91は、真空容器10に接続される。
【0041】
なお、主排気口80は、真空容器10の上面14に複数形成されてもよい。これにより、スパッタリング装置1のサイズが大きい場合、つまり、真空容器10のサイズが大きい場合であっても、成膜室11内のガスを十分に排気することができる。また、成膜室11内のガスを均一に排気することができるため、成膜室11内においてターゲット30に対して供給するガスの圧力を均一にすることができる。副排気口90も、真空容器10の底面13に複数形成されてもよい。
【0042】
ここで、複数のガス排気口51は、それぞれ、ガスの排気速度が等しくなるように、その数や大きさや配置が適宜決定されて、排気プレート50に形成されてもよい。例えば、主排気口80からの距離が大きい程、ガス排気口51の数を多くしたり、ガス排気口51を大きくしたりしてもよい。また、主排気口80からの距離が小さい程、ガス排気口51の数を少なくしたり、ガス排気口51を小さくしたりしてもよい。
図2において、ガス排気口51の数と大きさと配置とが均一である構成は一例である。
【0043】
また、複数のガス導入口41は、それぞれ、各ガス導入口41から成膜室11へ等しい流量のガスが導入されるように、その数や大きさや配置が適宜決定されて、ガス導入管40に形成されてもよい。例えば、ガス供給機構110からの距離が大きい程、ガス導入口41の数を多くしたり、ガス導入口41を大きくしたりしてもよい。また、ガス供給機構110からの距離が小さい程、ガス導入口41の数を少なくしたり、ガス導入口41を小さくしたりしてもよい。
図2において、ガス導入口41の数と大きさと配置とが均一である構成は一例である。
【0044】
〔実施形態2〕
図3は、本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置2の構成を示す断面図である。
図4は、
図3に示すスパッタリング装置2の内部の平面図である。具体的には、
図4は、
図3において基板Wからアンテナ20に向かう方向から見た場合のスパッタリング装置2の内部の平面図である。また、
図4において、アンテナ20、基板保持部70および真空排気装置81,91を省略している。
【0045】
なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。スパッタリング装置2は、
図3に示すように、スパッタリング装置1と比べて、ガス導入管40がガス導入管40aに変更されている点および防着板120を備えている点が異なる。
【0046】
ガス導入管40aは、アンテナ20の延伸方向と同一の方向に延伸し、アンテナ20と対向する側が開放された断面凹形状を有する。具体的には、ガス導入管40aの凹面42aが、アンテナ20と対向する。ガス導入管40aの断面凹形状としては、例えば、コの字型の形状、凹面42aが曲面となるような形状またはV字型の形状であってもよい。
【0047】
防着板120は、ガス導入管40aの開放側に対して設けられるとともに、複数のガス導入口121が形成され、ターゲット30から放出されたスパッタ粒子がガス導入管40aに付着することを防止するためのものである。前記構成によれば、ガス導入管40aに対して防着板120が設けられているため、ターゲット30から放出されたスパッタ粒子が付着した防着板120を交換してメンテナンスを容易に行うことができる。
【0048】
また、防着板120は、
図4に示すように、基板Wからアンテナ20に向かう方向から見て、ガス導入管40aを覆っている。防着板120は、隣り合う2枚のターゲット30の間に配置されている。つまり、防着板120は、前述した第1空間S1内に配置されている。排気プレート50は、ガス導入管40aの開放側とは反対側に設けられ、複数のガス排気口51が形成されている。防着板120には、成膜室11内のガスを複数のガス排気口51へ排気するための複数の第2ガス排気口122が形成されている。
【0049】
前記構成によれば、ガス排気口51に加えて第2ガス排気口122が形成されるため、ガス排気口51と第2ガス排気口122との2段階でガスの排気量を調整することができる。よって、ガスを均一に排気するための構造を容易に実現することができる。
【0050】
複数の第2ガス排気口122は、防着板120の延伸方向に沿った両端に形成されている。複数の防着板120は、アンテナ20の延伸方向D1と同一の方向に延伸する。複数の第2ガス排気口122のうち一部の第2ガス排気口122は、ガス導入口121とターゲット30との間に形成されている。
【0051】
防着板120に形成される第2ガス排気口122の数は、
図4に示すように、防着板120に形成されるガス導入口121の数よりも多い。これに加えて、複数のガス排気口51の総開口面積が複数のガス導入口121の総開口面積よりも大きいことにより、成膜室11内へのガスの導入よりも、成膜室11から外部へのガスの排気を優先して行うことができる。このため、成膜室11内の圧力と排気室15内の圧力との差圧を確保し、成膜室11内の圧力を適切に維持することができる。
【0052】
<変形例>
次に、スパッタリング装置2の変形例について、
図5に基づいて説明する。
図5は、
図4に示すスパッタリング装置2の変形例に係る内部の平面図である。スパッタリング装置2の変形例をスパッタリング装置2aと称する。スパッタリング装置2aは、
図5に示すように、スパッタリング装置2と比べて、中間配管100およびガス供給機構110が、それぞれ、2つ設けられている点が異なる。
【0053】
スパッタリング装置2aでは、真空容器10の両側に対して、中間配管100およびガス供給機構110が、それぞれ、2つ設けられている。真空容器10の両側において、2つの中間配管100は、それぞれ、接続配管101を介して複数のガス導入管40aに接続されている。2つの中間配管100には、それぞれ、ガス供給機構110が接続されている。また、中間配管100およびガス供給機構110は、それぞれ、真空容器10に対して3つ以上設けられてもよい。この場合、複数の中間配管100は、それぞれ、接続配管101を介して複数のガス導入管40aに接続される。
【0054】
これにより、スパッタリング装置2aのサイズが大きい場合、つまり、真空容器10のサイズが大きい場合であっても、成膜室11内へガスを十分に導入することができる。よって、成膜室11内へガスが十分に導入されるため、基板Wに薄膜を適切に形成することができる。
【0055】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1、2、2a スパッタリング装置
10 真空容器
11 成膜室
20 アンテナ
30 ターゲット
31 ターゲット保持部
40、40a ガス導入管
41、121 ガス導入口
50 排気プレート
51 ガス排気口
120 防着板
122 第2ガス排気口
D1 アンテナの延伸方向
S1 第1空間
S2 第2空間