(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】調量装置
(51)【国際特許分類】
F02M 59/36 20060101AFI20221109BHJP
F02M 59/02 20060101ALI20221109BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20221109BHJP
F02M 59/46 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F02M59/36 F
F02M59/02
F02M59/36 E
F02M59/44 Q
F02M59/44 V
F02M59/46 Y
(21)【出願番号】P 2019094490
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石倉 路久
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206252(US,A1)
【文献】特開2003-120845(JP,A)
【文献】特開2002-004977(JP,A)
【文献】特開2018-076871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射ポンプ(20)から圧送される燃料流量を調量する調量装置(40、80、110)であって、
弁座(42a)と、
前記弁座から離座することにより、プランジャ(34)が加圧室(206)の燃料を加圧する加圧方向と反対方向に移動する吸入行程において前記加圧室に燃料が吸入され、前記プランジャが加圧方向に移動する圧送行程において前記弁座に着座することにより、前記加圧室の燃料が前記プランジャにより加圧されて圧送される弁部材(44)と、
駆動部(68)と、
前記駆動部への通電が制御されることにより位置が変化し、前記位置が変化することにより、前記弁部材が前記弁座に着座するか前記弁座から離座するかを切り替える可動部(50、90、120、130、140)と、
前記可動部の内側と外側との少なくともいずれかを通り、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる燃料流路(214~218、222、230、232、240、250~254、260、270、280)と、
を備え、
前記弁部材と前記可動部とは別部材であり、前記可動部は、前記吸入行程と前記圧送行程とのいずれにおいても、前記駆動部への通電がオンになると前記弁部材が前記弁座に着座する方向に移動し、前記駆動部への通電がオフになると前記弁部材が前記弁座から離座する方向に移動する、
調量装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調量装置であって、
前記可動部の位置の変化により、前記燃料流路を通って排出される余剰燃料の排出量は制御される、
調量装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の調量装置であって、
前記可動部の位置は、前記弁部材が前記弁座に着座している状態と、前記弁部材が前記弁座から離座している状態とのいずれにおいても、前記駆動部への通電が制御されることにより変化する、
調量装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の調量装置であって、
前記弁部材は、前記圧送行程において、前記駆動部への通電がオンになると前記可動部が移動することにより前記弁座に着座し、前記吸入行程において、前記可動部の位置に関係なく前記弁座から離座する、
調量装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の調量装置であって、
前記弁部材は、前記圧送行程において前記弁座に着座すると、前記駆動部への通電制御に関係なく、前記吸入行程が開始されるまで前記弁座に着座する、
調量装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の調量装置であって、
前記燃料流路の流路面積は前記可動部の位置に応じて変化する、
調量装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の調量装置であって、
前記駆動部への通電を制御する制御部(100)をさらに備え、
前記制御部は、前記吸入行程と前記圧送行程との少なくともいずれかの行程において、前記駆動部への通電を制御することにより、前記弁部材の位置を変化させずに、前記可動部の位置を変化させる、
調量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料噴射ポンプの圧送量を調量する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を加圧して圧送する燃料噴射ポンプにおいて、燃料噴射ポンプの圧送量を調量装置で調量する技術が知られている。
例えば、下記の特許文献1には、調量装置に使用される電磁弁において、駆動部であるコイルへの通電を制御されることにより往復移動する可動部に、可動部の往復移動方向の両側の空間を連通する連通路を設けることが記載されている。特許文献1に記載されている技術では、可動部に連通路を設けることにより、可動部の往復移動方向の両側の空間の圧力差を低減し、可動部の往復移動の応答性を向上させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、可動部の往復移動方向の両側の一方の空間には、可動部の連通路以外に余剰燃料が流れる通路が形成されていない。したがって、連通路の入口から一方の空間に流入する余剰燃料は、連通路の入口を出口として他方の空間に戻る。
【0005】
発明者の詳細な検討の結果、特許文献1に記載されている調量装置の構成では、調量装置の余剰燃料が可動部を通って排出されにくいので、調量装置の内部の異物が余剰燃料とともに排出されにくいという課題が見出された。
【0006】
本開示の一つの局面は、調量装置の内部の異物を余剰燃料とともに容易に排出する技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの態様による調量装置(40、80、110)は、燃料噴射ポンプ(20)から圧送される燃料流量を調量する調量装置であって、弁座(42a)と、弁部材(44)と、駆動部(68)と、可動部(50、90、120、130、140)と、燃料流路(214~218、222、230、232、240、250~254、260、270、280)とを備えている。
【0008】
弁部材は、弁座から離座することにより、プランジャが加圧室の燃料を加圧する加圧方向と反対方向に移動する吸入行程において加圧室に燃料が吸入され、プランジャが加圧方向に移動する圧送行程において弁座に着座することにより、加圧室の燃料がプランジャにより加圧されて圧送される。
【0009】
可動部は、駆動部への通電が制御されることにより位置が変化し、位置が変化することにより、弁部材が弁座に着座するか弁座から離座するかを切り替える。
燃料流路は、可動部の内側と外側との少なくともいずれかを通り、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる。
【0010】
このような構成によれば、調量装置の内部の異物は、可動部の内側と外側との少なくともいずれかを通る燃料流路から、余剰燃料とともに排出される。さらに、余剰燃料が排出される燃料流路の入口と出口とは、同じではなく異なっているので、調量装置の内部の異物は、燃料流路の入口側に戻されることなく、余剰燃料とともに燃料流路の出口から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の燃料噴射ポンプの構成を示す模式図。
【
図8】第1実施形態の燃料排出流路とロッドとを示す模式図。
【
図10】調量弁への通電をオン、オフするときの燃料排出流路の流路面積の変化を示す特性図。
【
図11】調量弁への通電をデューティ制御するときの燃料排出流路の流路面積の変化を示す特性図。
【
図14】第2実施形態の開弁時の調量弁を示す断面図。
【
図16】第3実施形態の開弁時の調量弁を示す断面図。
【
図19】第5実施形態の燃料排出流路とロッドとを示す模式図。
【
図21】調量弁への通電をオン、オフするときの燃料排出流路の流路面積の変化を示す特性図。
【
図22】調量弁への通電をデューティ制御するときの燃料排出流路の流路面積の変化を示す特性図。
【
図23】第6実施形態の燃料排出流路とロッドとを示す模式図。
【
図24】調量弁への通電をオン、オフするときの燃料排出流路の流路面積の変化を示す特性図。
【
図25】調量弁への通電をデューティ制御するときの燃料排出流路の流路面積の変化を示す特性図。
【
図26】第7実施形態の燃料排出流路とロッドとを示す模式図。
【
図27】第7実施形態の調量弁への通電と燃料排出流路の流路面積との関係を示す特性図。
【
図28】第8実施形態の燃料排出流路とロッドとを示す模式図。
【
図29】第8実施形態の調量弁への通電と燃料排出流路の流路面積との関係を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す本実施形態の燃料供給システム2は、例えば、図示しない燃料噴射弁に供給する燃料を蓄圧する図示しないコモンレールに燃料を供給する。燃料供給システム2は、燃料フィルタ10と、メインタンク12と、サブタンク14と、フィードポンプ16と、ジェットポンプ18と、燃料噴射ポンプ20と、ECU100とを備えている。ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【0013】
燃料フィルタ10は、電動のフィードポンプ16によりメインタンク12から燃料流路200を取って供給される燃料中の異物を除去する。燃料フィルタ10で異物を除去された燃料は、燃料噴射ポンプ20に供給される。
【0014】
メインタンク12とサブタンク14とは、燃料室はそれぞれ独立しているがタンクケースは結合している所謂鞍型の燃料タンクであってもよいし、タンクケースがそれぞれ独立し離れて設置されている構成でもよい。
【0015】
ジェットポンプ18は、メインタンク12から燃料噴射弁までの燃料供給流路から燃料排出流路202を介してメインタンク12に排出される余剰燃料をノズルから噴出して負圧を発生する。ジェットポンプ18は、発生した負圧によりサブタンク14の燃料を吸い上げてメインタンク12に移送する。燃料排出流路202には、燃料噴射ポンプ20とコモンレールと燃料噴射弁とから、余剰燃料が排出される。
【0016】
燃料噴射ポンプ20は、オリフィス22と、ローラ30と、タペット32と、プランジャ34と、スプリング36と、逆止弁38と、調量弁40とを備えている。
オリフィス22は、燃料フィルタ10を通り燃料噴射ポンプ20に供給される燃料のうち、排出される余剰燃料の最大流量をオリフィス径により決定する。
【0017】
ローラ30とタペット32とプランジャ34とは、スプリング36からカムに向かって荷重を受けている。ローラ30が図示しないカムの回転によりカムのプロフィールに沿って回転することにより、タペット32とプランジャ34とは、ローラ30とともに往復移動する。
【0018】
プランジャ34が往復移動することにより、燃料フィルタ10を通り燃料流路204から加圧室206に吸入される燃料が加圧され、逆止弁38から加圧された燃料が圧送される。逆止弁38から圧送される燃料は、燃料流路208を通ってコモンレールに供給される。
【0019】
調量弁40は、開弁することにより燃料流路204から加圧室206に燃料が吸入されることを許可し、閉弁することにより燃料流路204から加圧室206に燃料が吸入されることを禁止する。プランジャ34が加圧室206の燃料を加圧する加圧方向に移動する圧送行程において、調量弁40が閉弁すると、加圧室206の燃料の加圧が開始される。
【0020】
ECU100は、CPUと、RAMまたはROM等の半導体メモリと、を有するマイクロコンピュータを備える。ECU100は、一つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0021】
ECU100は、調量弁40の後述するコイル68への通電を制御することにより、調量弁40の閉弁タイミングを制御する。圧送行程において、ECU100が調量弁40の閉弁タイミングを制御することにより、燃料噴射ポンプ20から圧送される燃料の圧送量が調量される。
【0022】
次に、
図2に基づいて、調量弁40の構成を説明する。
調量弁40は、弁ボディ42と、弁部材44と、スプリング座46と、スプリング48と、可動部50と、弁ボディ56と、ストッパ58と、スプリング60と、磁性部材62と、非磁性部材64と、固定コア66と、コイル68と、ヨーク70と、を備えている。
【0023】
弁ボディ42には、燃料フィルタ10から燃料噴射ポンプ20に供給される燃料を加圧室206に導く燃料流路204が形成されている。弁ボディ42は、弁部材44を往復移動可能に支持している。さらに、弁ボディ42には、弁部材44が着座する弁座42aが形成されている。
【0024】
弁部材44が弁座42aに着座すると、調量弁40は閉弁し、燃料流路204から加圧室206への燃料の吸入が遮断される。弁部材44が弁座42aから離座すると、調量弁40は開弁し、燃料流路204から加圧室206への燃料の吸入が許可される。
【0025】
弁部材44の外周面には、弁部材44の往復移動方向に沿って周方向に複数個、平面部が形成されている。この弁部材44の平面部と円筒状の弁ボディ42の内周面とにより、弁部材44の周方向に複数個、燃料流路204と後述する燃料空間212とを連通する燃料流路210が形成されている。
【0026】
スプリング座46は、例えば溶接等により弁部材44に固定されている。スプリング48は、後述する可動部50のロッド52に弁部材44を押し付ける方向、つまり弁部材44が弁座42aに着座する方向にスプリング座46に荷重を加える。スプリング座46とスプリング48とは、弁ボディ42と弁ボディ56とにより形成される燃料空間212に収容されている。
【0027】
可動部50は、ロッド52と可動コア54とを備えている。ロッド52は、例えば溶接等により可動コア54に固定されている。可動コア54は燃料空間220に収容されている。
【0028】
図2~
図6に示すように、ロッド52の外周面には、ロッド52の往復移動方向に沿って周方向に複数個、平面部が形成されている。このロッド52の平面部と円筒状の弁ボディ56の内周面とにより、ロッド52の周方向に複数個、燃料空間212と燃料空間220とを連通する燃料流路214が形成されている。
【0029】
さらに、
図2~
図4と
図6とに示すように、ロッド52の外周面には、前述したロッド52の周方向に隣り合う平面部と平面部とを接続する溝が形成されている。このロッド52の溝と弁ボディ56の内周面とにより、周方向に隣り合う燃料流路214と燃料流路214とを連通する連通路216が形成されている。可動コア54には、可動コア54を軸方向に貫通して周方向に複数の連通路222が形成されている。
【0030】
弁ボディ56は、ロッド52を往復移動可能に支持している。弁ボディ56には、コイル68への通電がオフにされている
図2に示す状態で、ロッド52側に形成された連通路216と連通する燃料排出流路218が形成されている。燃料排出流路218は、燃料排出流路202に余剰燃料を排出する。
【0031】
したがって、コイル68への通電がオフにされている
図2に示す状態では、調量弁40内の余剰燃料は、燃料流路214を入口として燃料流路214、連通路216、燃料排出流路218の順番に流れ、燃料流路214とは異なる燃料排出流路218を出口として排出される。したがって、調量弁40の余剰燃料は、燃料流れが入口から出口に戻ったり、逆流したりせずに燃料排出流路202に排出される。
【0032】
ストッパ58は、コイル68への通電がオンにされて可動コア54と固定コア66との間に働く磁気吸引力により、可動コア54とともに固定コア66側に移動するロッド52を
図3に示す位置で停止させる。ロッド52が固定コア66側に移動すると、弁部材44はスプリング48から受ける荷重により弁座42aに着座する。弁部材44が弁座42aに着座すると、調量弁40は開弁する。
【0033】
コイル68への通電がオンにされることにより、
図2に示す状態からロッド52がストッパ58に接触して停止するまでの移動距離は、
図2に示す状態から弁部材44が弁座42aに着座するまでの移動距離よりも長い。そして、弁部材44とロッド52とは別部材であるから、コイル68への通電がオンにされた
図3に示す状態では、弁部材44とロッド52との間には、ロッド52が往復移動可能な間隔が形成されている。
【0034】
スプリング60は、ストッパ58の周囲に装着されており、弁部材44にロッド52を押し付ける方向、つまり弁部材44が弁座42aから離座する方向にロッド52に荷重を加える。弁部材44が弁座42aから離座する方向にスプリング60がロッド52に加える荷重は、弁部材44が弁座42aに着座する方向にスプリング座46に加える荷重よりも大きい。
【0035】
したがって、コイル68への通電がオフにされ、可動コア54と固定コア66との間に磁気吸引力が働いていない
図2に示す状態では、スプリング48とスプリング60との荷重の差により、ロッド52は弁座42aから離座する方向に弁部材44を押す。これにより、弁部材44が弁座42aから離座すると、調量弁40は開弁する。
【0036】
磁性部材62と非磁性部材64とは、可動コア54の外周を覆っている。磁性部材62は、可動コア54を往復移動可能に支持している。非磁性部材64は、磁性部材62と固定コア66との間に設置され、磁性部材62と固定コア66とが磁気的に短絡することを抑制している。
【0037】
コイル68は、磁性部材62と非磁性部材64と固定コア66との外周を覆っている。ヨーク70は、コイル68の外周を覆っており、磁性部材62と固定コア66とを磁気的に接続している。
【0038】
通電がオンにされることによりコイル68が発生する磁束は、可動コア54と磁性部材62と固定コア66とヨーク70とが形成する磁気回路を流れる。そして、可動コア54と固定コア66との間の磁気ギャップを磁束が流れて可動コア54と固定コア66との間に磁気吸引力が働くことにより、
図3に示すように、スプリング60の荷重に抗して可動コア54は固定コア66側に吸引される。
【0039】
また、
図3に示すように、コイル68への通電がオンにされ、スプリング60の荷重に抗して可動コア54が固定コア66側に吸引されることによりロッド52が移動すると、連通路216と燃料排出流路218との軸方向の位置がずれる。その結果、連通路216と燃料排出流路218との連通は遮断されるので、燃料排出流路218を通って調量弁40から排出される余剰燃料の排出量は0になる。
【0040】
[1-2.処理]
次に、ECU100が調量弁40への通電を制御することにより調量弁40から排出される余剰燃料の流量制御処理について説明する。
【0041】
(1)通常制御時
図7に示すように、通常の通電制御では、ECU100は、プランジャ34が加圧室206の燃料を加圧する加圧方向とは反対方向に移動する吸入行程において、コイル68への通電をオフにしている。その結果、
図2に示すように、弁部材44は弁座42aから離座するので、調量弁40は開弁する。
【0042】
この場合、コイル68への通電をオンにして可動コア54が固定コア66側に吸引され、ロッド52が可動コア54とともに移動しても、燃料流路204から加圧室206に流入する燃料流れにより、弁部材44は弁座42aから離座している状態を保持する。したがって、吸入行程においては、コイル68への通電がオンであるかオフであるかに関係なく、つまり可動部50の位置に関係なく、調量弁40は開弁し、加圧室206に燃料が流入する。
【0043】
つまり、吸入行程において、ECU100は、コイル68への通電をオンにする時間の長さを制御して、弁部材44の位置を変化させることなく可動部50の位置を変化させることにより、調量弁40から排出される余剰燃料の排出量を制御できる。
【0044】
また、ECU100は、プランジャ34が加圧室206の燃料を加圧する加圧方向に移動する圧送行程において、今回の圧送行程で要求される圧送量となるように、圧送行程の所定のタイミングでコイル68への通電をオンにする。
【0045】
コイル68への通電がオンになると、ロッド52が可動コア54とともに固定コア66側に移動してストッパ58に接触する上端に達するので、弁部材44はスプリング48から受ける荷重により、弁座42aに着座する。その結果、調量弁40は閉弁し、プランジャ34が加圧方向に移動することにより、加圧室206の燃料は加圧され、逆止弁38から加圧された燃料が圧送される。
【0046】
図7に示すように、コイル68への通電をオンにしてから弁部材44が弁座42aに着座して調量弁40が閉弁するまでには時間遅れがある。
圧送行程において弁部材44が弁座42aに着座すると、コイル68への通電をオフにしても、ロッド52がスプリング60から開弁方向に受ける荷重よりも、加圧室206の燃料圧力から受ける力とスプリング48から受ける荷重との合計により弁部材44が閉弁方向に受ける力の方が大きい。
【0047】
したがって、圧送行程において、弁部材44が弁座42aに着座して調量弁40が閉弁すると、コイル68への通電はオンまたはオフのいずれに制御してもよい。
つまり、圧送行程において弁部材44が弁座42aに着座して調量弁40が閉弁すると、ECU100は、コイル68への通電をオンにする時間の長さを制御して、弁部材44の位置を変化させることなく可動部50の位置を変化させることにより、調量弁40から排出される余剰燃料の排出量を制御できる。
【0048】
このように、吸入行程と圧送行程とのいずれにおいても、コイル68への通電がオンになると、可動部50は弁部材44が弁座42aに着座する方向に移動し、コイル68への通電がオフになると、可動部50は弁部材44が弁座42aから離座る方向に移動する。そして、吸入行程と圧送行程とのいずれにおいても、コイル68への通電が制御されることにより、余剰燃料の排出量が制御される。
【0049】
例えば、メインタンク12の燃料残量が低減したために、ジェットポンプ18を流れる燃料流量を増加して、サブタンク14からメインタンク12に移送する燃料流量を増加したい場合には、コイル68への通電をオンにする時間を短くして調量弁40から排出される余剰燃料の流量を増加させる。
【0050】
これに対し、電動のフィードポンプ16に対する要求圧送量が増加すると、フィードポンプ16の回転数を上昇させるためにフィードポンプ16に供給される駆動電流が増えるので、フィードポンプ16の電力消費量が増加する。フィードポンプ16の電力消費量が増加すると、発電機の発生電力を増加するために燃料消費量が増加する。
【0051】
フィードポンプ16の燃料消費量の増加を抑制するためには、電動のフィードポンプ16に対する要求圧送量の増加を極力抑制したい。そこで、調量弁40のコイル68への通電をオンにする時間を長くして調量弁40から排出される余剰燃料の排出量を低減することが考えられる。調量弁40から排出される余剰燃料の排出量が低減すれば、フィードポンプ16に対する要求圧送量は低減する。
【0052】
通常、フィードポンプ16の電力消費量よりも、調量弁40のコイル68の電力消費量の方が少ない。したがって、調量弁40のコイル68への通電をオンにする時間を長くして調量弁40の電力消費量が増加しても、フィードポンプ16の電力消費量の低減量の方が大きくなる。その結果、全体として、燃料消費量の増加を抑制できる。
【0053】
(2)高速回転で無圧送
エンジンが高速回転している状態で燃料噴射ポンプ20に対する要求圧送量が0の無圧送の場合、調量弁40は圧送行程の全期間において開弁した状態である。この場合、コイル68への通電をオフのままにして、余剰燃料の排出量を増加させることが考えられる。
【0054】
その結果、プランジャ34が加圧方向に移動することにより、燃料流路204側に戻される燃料流量が低減するので、燃料の低圧側に発生する圧力脈動を低減できる。
(3)高速回転で圧送
エンジンが高速回転し、吸入行程の期間が短くなっても、燃料流路204から加圧室206に必要な流量の燃料を吸入することが要求される。この場合、吸入行程においてコイル68への通電をオンにして、余剰燃料の排出量を0にすることが考えられる。
【0055】
これにより、吸入行程において燃料流路204から加圧室206に吸入される燃料の一部が燃料排出流路218から排出されず、燃料空間212側の燃料圧力が上昇する。その結果、吸入行程の期間が短くなっても、燃料流路204から加圧室206に必要な流量の燃料が流入する。
【0056】
(4)高速回転で高負荷
エンジンが高負荷の状態で高速回転する場合、コモンレールやエンジン側から排出される余剰燃料の温度は上昇する。この場合、コイル68への通電をオフにする時間を長くして調量弁40から排出される余剰燃料の排出量を増加させることが考えられる。
【0057】
通常、調量弁40から排出される余剰燃料の温度は、コモンレールやエンジン側から排出される余剰燃料の温度よりも低い。したがって、調量弁40から排出される余剰燃料の排出量を増加させることにより、余剰燃料全体の温度の上昇を抑制できる。
【0058】
以上説明したコイル68への通電制御では、
図8および
図9に示すように、コイルへ68への通電がオフの場合、可動部50は実線が示す位置にあるので、燃料排出流路218から余剰燃料が排出される。コイルへ68への通電がオンの場合、可動部50は2点鎖線が示す位置にあるので、燃料排出流路218から余剰燃料は排出されない。
【0059】
尚、
図8および
図9は、コイル68への通電のオン、オフの切り替えと、可動部50による燃料排出流路218の開閉との関係を模式的に示すものであり、実際の可動部50および燃料排出流路218の構成とは異なっている。
【0060】
図10に示すように、燃料排出流路218の流路面積400は、コイルへ68への通電のオン、オフが切り替えられることにより、0または最大のいずれかに変化する。
これに対し、
図11に示す特性402のように、コイル68への通電を0~100%の間でデューティ制御することにより、燃料排出流路218の流路面積を可変に制御してもよい。燃料排出流路218の流路面積を可変に制御することにより、燃料排出流路218から排出される燃料の排出量は可変に制御される。
【0061】
可動部50の往復移動位置は、コイル68への通電がオン、オフ制御またはデューティ制御されることにより、弁部材44が弁座42aに着座している状態と弁部材44が弁座42aから離座している状態とのいずれにおいても変化する。
【0062】
[1-3.第1実施形態の望ましい構成]
第1実施形態の構成では、ロッド52の回転方向の位置がずれると、コイル68への通電がオフにされ、連通路216と燃料排出流路218とが連通する往復移動位置にロッド52が位置しても、連通路216と燃料排出流路218とが連通せず、余剰燃料を排出できないことがある。
【0063】
そこで、
図12に示すように、可動コア54の外周面に平面部54aを形成するか、あるいは
図13に示すように、ロッド52の外周面に平面部52aを形成することにより、可動部50の回転を防止することが望ましい。
【0064】
可動コア54に平面部54aを形成する場合には、可動コア54を往復移動可能に支持する磁性部材62の内周面の平面部54aと対応する周方向位置に、平面部54aと接触する平面部が形成される。
【0065】
ロッド52に平面部52aを形成する場合には、ロッド52を往復移動可能に支持する弁ボディ56の内周面の平面部52aと対応する周方向位置に、平面部52aと接触する平面部が形成される。
【0066】
上記第1実施形態では、燃料流路214と連通路216と燃料排出流路218とが、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。また、コイル68が駆動部に対応し、ECU100が制御部に対応する。
【0067】
また、調量弁40だけが調量装置に対応してもよいし、調量弁40とECU100とが調量装置に対応してもよい。
[1-4.効果]
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
(1a)調量弁40の余剰燃料は、燃料流路214と連通路216と燃料排出流路218とにより形成される入口と出口とが異なる燃料流路を通って、燃料流れが入口から出口に戻ったり逆流したりせずに、調量弁40から排出される。したがって、調量弁40の内部の異物は、調量弁40の内部に留まらず、調量弁40から容易に排出される。
【0069】
(1b)コイル68への通電を制御することにより、燃料流路214と連通路216と燃料排出流路218とを通って調量弁40から余剰燃料が排出されるので、余剰燃料を排出するために新たな部品を追加する必要がない。
【0070】
(1c)調量弁40の閉弁タイミングを制御して燃料噴射ポンプ20の圧送量を調量する調量制御に関係のない期間で、コイル68への通電をオフまたはオンにする時間の長さを制御することにより、要求される排出量の余剰燃料を調量弁40から排出できる。コイル68への通電をオフにする時間が長くなると、余剰燃料の排出量は増加する。
【0071】
(1d)コイル68への通電をデューティ制御する場合は、要求される排出量に応じてデューティを設定することにより、要求される排出量の余剰燃料を調量弁40から排出できる。
【0072】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、実質的に同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0073】
第2実施形態では、調量弁から余剰燃料を排出する燃料流路の構成が、前述した第1実施形態の燃料流路の構成と異なる。
図14および
図15に示すように、第2実施形態の調量弁80では、可動部90のロッド92は、コイル68への通電がオンになると移動する側に、可動コア54から突出して延びる突出部94を有している。
【0074】
そして、スプリング60のストッパ96と固定コア66とに燃料排出流路230が形成されている。さらに、固定コア66の内周面には、可動コア54側の開口端から軸方向に延びる溝により、燃料空間220と突出部94の周囲の固定コア66の内部空間とを連通する連通路232が形成されている。
【0075】
そして、
図14に示すように、コイル68への通電がオフの場合、ロッド92は、スプリング60から受ける荷重によりストッパ96から離れるので、調量弁80の余剰燃料は、燃料流路214を入口とし、連通路222、232から、燃料流路214とは異なる燃料排出流路230を出口として燃料排出流路202に排出される。
【0076】
図15に示すように、コイル68への通電がオンの場合、ロッド92は、可動コア54とともにストッパ96側に移動して突出部94の端面で燃料排出流路230を閉じる。したがって、余剰燃料は調量弁80から排出されない。
【0077】
上記第2実施形態では、燃料流路214と連通路222、232と燃料排出流路230とが、調量弁80の余剰燃料を排出する入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。
[2-2.効果]
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1c)において、調量弁40を調量弁80に置き換え、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる燃料流路を、燃料流路214と連通路222、232と燃料排出流路230とに置き換えた効果を得ることができる。
【0078】
さらに、第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(2a)ロッド92が突出部94の端面で燃料排出流路230を閉じるので、コイル68への通電をオンにすれば、ロッド92の回転方向の位置に関係なく燃料排出流路230を閉じることができる。したがって、可動コア54またはロッド92に、可動部90の回転を防止する加工を施す必要がない。
【0079】
[3.第3実施形態]
[3-1.第2実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0080】
前述した第2実施形態では、ロッド92は、ロッド92の突出部94の端面で燃料排出流路230を閉じる。
これに対し、
図16および
図17に示す第3実施形態の調量弁110では、可動部120のロッド122が、突出部124の外周側面で燃料排出流路240を閉じる点で第2実施形態と相違している。
【0081】
具体的には、可動部120のロッド122は、コイル68への通電がオンになるとロッド122が移動するストッパ58側に、可動コア54から突出する突出部124を有している。そして、突出部124のストッパ58側の空間と連通可能な燃料排出流路240が、固定コア66と非磁性部材64と弁ボディ56とに形成されている。連通路232は、燃料空間220と突出部124のストッパ58側の空間とを連通している。
【0082】
図16に示すように、コイル68への通電がオフの場合、ロッド122は、スプリング60から受ける荷重により弁部材44側に移動するので、燃料排出流路240が突出部124のストッパ58側の空間と連通する開口は、突出部124の外周側面により閉じられず開放されている。燃料空間220と突出部124のストッパ58側の空間とは、連通路232により連通している。
【0083】
したがって、調量弁110の余剰燃料は、燃料流路214を入口とし、連通路222、232を通り、燃料流路214とは異なる燃料排出流路240を出口として燃料排出流路202に排出される。
【0084】
図17に示すように、コイル68への通電がオンの場合、ロッド122は、可動コア54とともに固定コア66側に移動して突出部124の外周側面で燃料排出流路240を閉じる。したがって、余剰燃料は調量弁110から排出されない。
【0085】
上記第3実施形態では、燃料流路214と連通路222、232と燃料排出流路240とが、調量弁110の余剰燃料を排出する入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。
[3-2.効果]
以上説明した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1d)と第2実施形態の効果(2a)とにおいて、調量弁40、80を調量弁110に置き換え、可動部50、90を可動部120に置き換え、突出部94の端面を突出部124の外周側面に置き換え、燃料排出流路218、230を燃料排出流路240に置き換えた効果を得ることができる。
【0086】
[4.第4実施形態]
[4-1.第1実施形態との相違点]
第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0087】
前述した第1実施形態では、ロッド52の外側であるロッド52の外周面と弁ボディ56の内周面との間に、余剰燃料を排出するための燃料流路214と連通路216とが形成されている。
【0088】
これに対し、
図18に示す第4実施形態では、可動部130のロッド132の内側に、余剰燃料を排出する燃料流路250が形成されている点が第1実施形態と相違する。
燃料流路250は、ロッド132の軸方向に延びて形成されており、ロッド132の往復移動方向の位置に関係なく燃料空間212と連通している。さらに、燃料流路250は、軸方向に離れた位置でロッド132の外周面に向けて径方向に延びてロッド132の外周面に開口している。
【0089】
弁ボディ56の内周面には、環状の燃料排出流路252と、燃料排出流路252と連通し、余剰燃料を燃料排出流路202に排出する燃料排出流路254とが形成されている。
コイル68への通電がオフの場合、ロッド132は
図14に示す位置にあるので、ロッド132の回転方向の位置に関係なく、燃料流路250と燃料排出流路252とは連通する。したがって、調量弁40の余剰燃料は、燃料流路250を入口とし、燃料排出流路252から燃料流路250とは異なる燃料排出流路254を出口として、燃料排出流路202に排出される。
【0090】
コイル68への通電がオンの場合、ロッド132は、
図14に示す位置から可動コア54とともに固定コア66側に移動するので、燃料流路250と燃料排出流路252との連通はロッド132の外周面により遮断される。したがって、調量弁40の余剰燃料は、燃料流路250から燃料排出流路252、254を通り、燃料排出流路202に排出されない。
【0091】
上記第4実施形態では、燃料流路250と燃料排出流路252、254とが、調量弁40の余剰燃料を排出する入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。
[4-2.効果]
以上説明した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1d)において、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる燃料流路を、燃料流路250と燃料排出流路252、254とに置き換えた効果を得ることができる。
【0092】
さらに、第4実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(4a)コイル68への通電がオフの場合、ロッド132の回転方向の位置に関係なく、燃料流路250と燃料排出流路252とが連通するので、調量弁40の余剰燃料を排出することができる。したがって、ロッド132または可動コア54に可動部130の回転を防止する加工を施す必要がない。
【0093】
[5.第5実施形態]
[5-1.第1実施形態との相違点]
第5実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0094】
前述した第1実施形態では、弁ボディ56に形成されている燃料排出流路218の流路面積は、弁ボディ56の内部と、ロッド52により開閉される弁ボディ56の内周面側の開口部とで同じである。
【0095】
これに対し、第5実施形態では、
図19および
図20に示すように、ロッド140を往復移動可能に支持する弁ボディの内部に形成される燃料排出流路260の流路面積よりも、燃料排出流路260が弁ボディの内周面側に開口する開口部262の流路面積が大きくなっている。
【0096】
尚、コイル68への通電のオン、オフを切り替えるときのロッド140の往復移動方向の移動量は、第1実施形態のロッド52と同じである。
コイル68への通電がオフの場合、ロッド140は、
図19および
図20の実線に示す位置にある。コイル68への通電がオフの場合、ロッド140に覆われていない開口部262の実開口部262aの流路面積をS1、燃料排出流路260の流路面積をS2とすると、S1≦S2である。また、第1実施形態の燃料排出流路218の流路面積をS0とすると、S0<S1である。
【0097】
ロッド140の往復移動方向と交差する方向の開口部262の長さは、S0<S1≦S2となるように設定されている。
コイル68への通電がオフの場合、実開口部262aの流路面積が燃料排出流路260の流路面積よりも小さいので、実開口部262aと燃料排出流路260とを流れる燃料流量は、実開口部262aの流路面積により決定される。実開口部262aの流路面積を最小流路面積とも言う。
【0098】
図21に示すように、コイル68への通電がオフの場合の最小流路面積410が第1実施形態の燃料排出流路218の流路面積400よりも大きいので、第5実施形態において調量弁から排出される余剰燃料の排出量は、第1実施形態において調量弁から排出される余剰燃料の排出量よりも多い。
【0099】
コイル68への通電がオンの場合、ロッド140は、可動コア54とともに移動して
図19および
図20の2点鎖線に示す位置にある。この場合、開口部262はロッド140により覆われ閉じられるので、調量弁の余剰燃料は燃料排出流路260から排出されない。
【0100】
また、第5実施形態では、コイル68への通電がオフの場合、燃料排出流路260の実開口部262aの流路面積は、第1実施形態の燃料排出流路218の開口部の流路面積よりも大きい。したがって、コイル68への通電をオン、オフではなくデューティ制御する場合、
図22の特性412が示すように、デューティに応じて流路面積を可変に制御することが容易である。
【0101】
上記第5実施形態では、燃料排出流路260が、調量弁の余剰燃料を排出する入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。
[5-2.効果]
以上説明した第5実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1d)において、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる燃料流路を、燃料排出流路260に置き換えた効果を得ることができる。
【0102】
さらに、第5実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(5a)コイル68への通電がオフの場合、第5実施形態において余剰燃料を排出する燃料流路の流路面積410は、第1実施形態において余剰燃料を排出する燃料流路の流路面積400よりも大きい。したがって、可動部のロッドの往復方向の移動量が同じであれば、第5実施形態では、第1実施形態よりも燃料排出流路260から多くの余剰燃料を排出できる。
【0103】
(5b)コイル68への通電をデーティ制御する場合、燃料排出流路260から排出される単位時間当たりの余剰燃料の排出量を、デューティ制御により容易に可変に制御できる。
【0104】
[6.第6実施形態]
[6-1.第5実施形態との相違点]
第6実施形態は、基本的な構成は第5実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第5実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0105】
前述した第5実施形態では、コイル68への通電をオンにすると、開口部262はロッド140により覆われ閉じられるので、調量弁の余剰燃料は燃料排出流路260から排出されない。
【0106】
これに対し、
図23に示す第6実施形態では、コイル68への通電がオンの場合、燃料排出流路260の開口部262の一部である実開口部262bは、ロッド140により覆われておらず閉じられていない。したがって、コイル68への通電をオンにしても、調量弁の余剰燃料は、実開口部262bから燃料排出流路260を通って排出される。
この場合、
図24の最小流路面積420が示すように、コイル68への通電をオンにしたときの実開口部262bは、燃料排出流路260の流路を絞るオリフィスとして機能する。
【0107】
また、第6実施形態において、第1実施形態の燃料排出流路218の流路面積S0と、コイル68への通電がオフの場合の開口部262の実開口部262aの流路面積S1と、燃料排出流路260の流路面積S2との関係は、第5実施形態と図同様に、S0<S1≦S2である。したがって、コイル68への通電をデューティ制御する場合、
図25の特性422が示すように、デューティに応じて流路面積を可変に制御することが容易である。
【0108】
[6-2.効果]
以上説明した第6実施形態によれば、前述した第5実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0109】
(6a)コイル68への通電をオンにしたときの実開口部262bは、燃料排出流路260の流路を絞るオリフィスとして機能するので、第1実施形態において
図1に示すオリフィス22を廃止することができる。
【0110】
[7.第7実施形態]
[7-1.第5実施形態との相違点]
第7実施形態は、基本的な構成は第5実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第5実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0111】
前述した第5実施形態では、燃料排出流路260が弁ボディの内周面側に開口する開口部262は矩形状に形成されている。
これに対し、
図26に示す第7実施形態では、燃料排出流路270が弁ボディの内周面側に開口する開口部272は、ロッド140が可動コア54とともに固定コア側66側に移動するにしたがい先細りになる台形状に形成されている。
【0112】
第7実施形態において、第1実施形態の燃料排出流路218の流路面積S0と、コイル68への通電がオフの場合の開口部272の実開口部272aの流路面積S1と、燃料排出流路270の流路面積S2との関係は、S0<S1≦S2である。
【0113】
このような構成により、
図27に示すように、コイル68を通電制御するデューティと最小流路面積との関係を示す第7実施形態の特性430では、第5実施形態の特性412に対し、コイル68を通電制御するデューティが0%から100%に増加して最小流路面積が小さくなるにしたがい、最小流路面積の低下率が低下する。
【0114】
これに対し、前述した第5実施形態の場合、
図27に示す特性412のように、コイル68を通電制御するデューティが0%から100%に増加しても、流路面積の低下率は一定である。
【0115】
上記第7実施形態では、燃料排出流路270が、調量弁の余剰燃料を排出する入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。
[7-2.効果]
以上説明した第7実施形態によれば、前述した第5実施形態の効果において、燃料排出流路260を燃料排出流路270に置き換えた効果を得ることができる。
【0116】
さらに、第7実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(7a)コイル68を通電制御するデューティが0%から100%に増加して最小流路面積が小さくなるにしたがい、最小流路面積の低下率が低下するので、燃料排出流路270から排出される余剰燃料の排出量が少ないときに、余剰燃料の排出量を高精度にデューティ制御できる。
【0117】
[8.第8実施形態]
[8-1.第7実施形態との相違点]
第8実施形態は、基本的な構成は第7実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第7実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0118】
前述した第7実施形態では、燃料排出流路270が弁ボディの内周面側に開口する開口部272は、ロッド140が可動コア54とともに固定コア側66側に移動するにしたがい先細りになる台形状に形成されている。
【0119】
これに対し、
図28に示す第8実施形態では、燃料排出流路280が弁ボディの内周面側に開口する開口部282は、ロッド140が可動コア54とともに固定コア側66側に移動するにしたがい先太りになる台形状に形成されている。
【0120】
第8実施形態において、第1実施形態の燃料排出流路218の流路面積S0と、コイル68への通電がオフの場合の開口部282の実開口部282aの流路面積S1と、燃料排出流路280の流路面積S2との関係は、S0<S1≦S2である。
【0121】
このような構成により、
図29に示すように、コイル68を通電制御するデューティと最小流路面積との関係を示す第8実施形態の特性440では、第5実施形態の特性412に対し、デューティが100%から0%に低下し、最小流路面積が大きくなるにしたがい、最小流路面積の増加率が低下する。
【0122】
上記第8実施形態では、燃料排出流路280が、調量弁の余剰燃料を排出する入口と出口とが異なる燃料流路に対応する。
[8-2.効果]
以上説明した第8実施形態によれば、前述した第5実施形態の効果において、燃料排出流路260を燃料排出流路280に置き換えた効果を得ることができる。
【0123】
さらに、第8実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(8a)コイル68を通電制御するデューティが100%から0%に低下し、最小流路面積が大きくなるにしたがい、最小流路面積の増加率が低下するので、燃料排出流路280から排出される余剰燃料の排出量が多いときに、余剰燃料の排出量を高精度にデューティ制御できる。
【0124】
[9.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0125】
(9a)上記実施形態では、コイル68への通電を制御することにより、調量弁の可動部の往復移動位置を変化させて、調量弁から排出される余剰燃料の流量を制御した。
これに対し、可動部の外部と内部との少なくともいずかを通り、余剰燃料が排出される入口と出口とが異なる燃料流路を調量弁が備えているのであれば、調量弁の可動部の往復移動位置に関係なく、調量弁の余剰燃料を燃料流路から排出してもよい。
【0126】
(9b)上記実施形態では、調量弁の可動部と弁部材とは別部材で構成され、可動部と弁部材とは別々に移動することができる。これに対し、調量弁の可動部の往復移動位置が変化することにより、調量弁から排出される余剰燃料の流量を、余剰燃料を排出する燃料流路を単に開閉するだけであることも含めて制御できるのであれば、調量弁の可動部と弁部材とは一体になって往復移動する構成でもよい。
【0127】
(9c)上記の第1実施形態~第5実施形態、第7実施形態、第8実施形態では、コイル68への通電がオフの場合、調量弁から余剰燃料を排出し、コイル68への通電がオンの場合、調量弁から余剰燃料を排出しない構成である。
【0128】
これに対し、可動部の往復移動位置と、可動部により開閉される燃料排出流路の開口の位置との関係によっては、コイル68への通電がオンの場合、調量弁から余剰燃料を排出し、コイル68への通電がオフの場合、調量弁から余剰燃料を排出しない構成としてもよい。
【0129】
(9d)上記実施形態では、可動部の外部または内部のいずれかを通って、調量弁の余剰燃料を排出する燃料流路が形成されている。
これに対し、可動部の外部と内部との両方を通って、調量弁の余剰燃料を排出する燃料流路が形成されてもよい。
【0130】
(9e)上記実施形態では、可動部を往復駆動する駆動部としてコイル68を使用した。これに対し、通電をオン、オフすることにより調量弁から余剰燃料を排出するか排出しないかを切り替える場合、駆動部として圧電素子を使用してもよい。
【0131】
(9f)上記実施形態における一つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、一つの構成要素が有する一つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、一つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される一つの機能を、一つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0132】
(9g)上述した調量装置の他、当該調量装置を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0133】
2:燃料噴射システム、20:燃料噴射ポンプ、34:プランジャ、40、80、110:調量弁(調量装置)、42a:弁座、44:弁部材、50、90、120、130:可動部、52、92、122、132、140:ロッド(可動部)、54:可動コア(可動部):68:コイル(駆動部)、100:ECU(制御部、調量装置)、206:加圧室、214、250:燃料流路、216、222、232:連通路(燃料流路)、218、230、240、252、254、260、270、280:燃料排出流路(燃料流路)