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特許7172853制御装置、ネットワークシステム、ネットワークシステムの制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】制御装置、ネットワークシステム、ネットワークシステムの制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20221109BHJP
   H04L 43/00 20220101ALI20221109BHJP
【FI】
G05B19/05 L
H04L43/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019096213
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190952
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 宏章
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-325121(JP,A)
【文献】特開2015-220547(JP,A)
【文献】特開2013-236162(JP,A)
【文献】特開2014-171025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0013457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04 -19/05
H04L 41/00 -43/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ装置と、複数のスレーブ装置とを備えたネットワークシステムに用いる、前記マスタ装置である制御装置であって、
前記スレーブ装置は、
前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備え、更に、
前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、
前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部と、を有するものであって、
前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の実行/停止を指示する通信指示部と、
前記スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する診断指示部と、
前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読出す診断結果読出部と、
読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出する算出部と、を備えた制御装置。
【請求項2】
前記スレーブ装置から、前記第2の他機との通信のリンクオフ情報を受信すると、
当該スレーブ装置に対し、前記診断指示部により前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記診断指示部による前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施の指示は、当該通信ケーブルを用いた前記第1の他機または前記第2の他機との通信の、前記通信指示部による停止の指示後に行う、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記診断結果読出部による前記故障診断の結果の読出しは、前記通信指示部により当該故障診断の実施を指示したときから所定時間後に行う、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1検知部の行う故障診断は、前記第1の通信ケーブルが断線故障、ショート故障、正常のいずれであるかの判別を更に実行し、
前記第2検知部の行う故障診断は、前記第2の通信ケーブルが断線故障、ショート故障、正常のいずれであるかの判別を更に実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
マスタ装置と、複数のスレーブ装置とを備えたネットワークシステムであって、
前記スレーブ装置は、
前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備え、更に、
前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、
前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部とを有し、
前記マスタ装置は、
前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の実行/停止を指示する通信指示部と、
前記スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する診断指示部と、
前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読み出す診断結果読出部と、
読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出する算出部と、を備える、ネットワークシステム。
【請求項7】
マスタ装置と、複数のスレーブ装置を備えたネットワークシステムに用いる、ネットワークシステムの制御方法であって、
前記スレーブ装置は、
前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備え、更に、
前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、
前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部と、を有するものであって、
前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の停止を指示するステップと、
当該スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルのうちの通信を停止した通信ケーブルの故障診断の実施を指示するステップと、
前記故障診断の実施を指示するステップから所定時間後に、前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読出すステップと、
読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出するステップと、を備えたネットワークシステムの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の各ステップを制御装置に実行させることにより当該制御装置を機能させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、ネットワークシステム、ネットワークシステムの制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ファクトリーオートメーション(Factory Automation:FA)の分野においては、作業の工程を分担する様々な種類の装置の制御が行われる。工場施設等一定の領域において作業に用いられる各種のコントローラ、リモートI/O、および製造装置を連携して動作させるために、これらの装置を接続する、フィールドネットワークとも呼ばれる産業用ネットワークシステムが構築されている。
【0003】
一般的な産業用ネットワークシステムでは、各種のスレーブ装置と、マスタ装置などから構成されるマスタスレーブ方式のネットワークが用いられる。スレーブ装置は、工場内に設置される設備の制御あるいはデータ収集を行う装置である。マスタ装置は、これらのスレーブを集中管理する、例えば(PLC:Programmable Logic Controller)と呼ばれる装置である。EtherCAT(登録商標)あるいはEthernet/IPはそうした産業用ネットワークシステムの方式の例である(ETHERNET:登録商標)。このような産業用ネットワークシステムにおいては、通信用ケーブルが各装置間に張り巡らされ、ネットワークが構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-236162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スレーブ装置間を接続する通信用ケーブルに断線等の故障が発生すると、当該スレーブ装置間での通信が遮断される。上記のような産業用ネットワークシステムにおいては、スレーブ装置間での通信途絶を知らせるリンクオフ情報を、スレーブ装置からマスタ装置に報知するようにすることができる。よって管理者はマスタ装置を通じて、特定のスレーブ装置間で何らかの通信の異常が発生していることを知ることができる。しかし、通信途絶の原因が通信ケーブルの故障によるものか否かを知ることはできない。また故障の個所が、通信ケーブルのどの位置にあるかを知ることもできない。
【0006】
一方、特許文献1によれば、通信端末に通信ケーブルの故障状態を判別する機能を備える技術が開示されている。しかし、特定の通信端末から、その端末に接続された通信ケーブルの故障状態が判別できるに留まる。
【0007】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、管理者が、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所を容易に特定することができるようになり、よって通信ケーブルの保全作業を効率的に実行することを可能とさせるマスタ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
本発明の一側面に係る制御装置は、マスタ装置と、複数のスレーブ装置とを備えたネットワークシステムに用いる、前記マスタ装置である制御装置であって、前記スレーブ装置は、前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備え、更に、前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部と、を有するものであって、前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の実行/停止を指示する通信指示部と、前記スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する診断指示部と、前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読出す診断結果読出部と、読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出する算出部と、を備えている。
【0010】
上記構成によれば、管理者が、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所を容易に特定することができるようになり、よって通信ケーブルの保全作業を効率的に実行することを可能とさせるマスタ装置を実現することができる。
【0011】
上記一側面に係る制御装置において、前記スレーブ装置から、前記第2の他機との通信のリンクオフ情報を受信すると、当該スレーブ装置に対し、前記診断指示部により前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する構成を備えていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、管理者が、ケーブル故障を気付かずに放置してしまうことが無く、またネットワークシステムのどの箇所で故障が生じているかも直ちに知ることができるから、迅速な修理の対応を実行することが可能となる。
【0013】
上記一側面に係る制御装置において、前記診断指示部による前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施の指示は、当該通信ケーブルを用いた前記第1の他機または前記第2の他機との通信の、前記通信指示部による停止の指示後に行う構成を備えていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、スレーブ装置の検知部による通信ケーブルの故障診断を、ネットワークシステムにおいて通信との干渉を起こすことなく実行させることができるようになる。
【0015】
上記一側面に係る制御装置において、前記診断結果読出部による前記故障診断の結果の読出しは、前記通信指示部により当該故障診断の実施を指示したときから所定時間後に行う構成を備えていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、スレーブ装置の検知部による通信ケーブルの故障診断を、ネットワークシステムにおいて通信との干渉を起こすことなく実行させることができるようになる。
【0017】
上記一側面に係る制御装置において、前記第1検知部の行う故障診断は、前記第1の通信ケーブルが断線故障、ショート故障、正常のいずれであるかの判別を更に実行し、前記第2検知部の行う故障診断は、前記第2の通信ケーブルが断線故障、ショート故障、正常のいずれであるかの判別を更に実行する構成を備えていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、管理者は、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所の特定に加えて、生じている故障の種類を認知することができ、通信ケーブルの保全のための対策をより的確に行うことが可能となる。
【0019】
本発明の一側面に係るネットワークシステムは、マスタ装置と、複数のスレーブ装置とを備えたネットワークシステムであって、前記スレーブ装置は、前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備え、更に、前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部とを有し、前記マスタ装置は、前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の実行/停止を指示する通信指示部と、前記スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する診断指示部と、前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読み出す診断結果読出部と、読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出する算出部と、を備える。
【0020】
上記構成によれば、管理者が、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所を容易に特定することができるようになり、よって通信ケーブルの保全作業を効率的に実行することを可能とさせるネットワークシステムを実現することができる。
【0021】
本発明の一側面に係るネットワークシステムの制御方法は、マスタ装置と、複数のスレーブ装置を備えたネットワークシステムに用いる、ネットワークシステムの制御方法であって、前記スレーブ装置は、前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備え、更に、前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部と、を有するものであって、前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の停止を指示するステップと、当該スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルのうちの通信を停止した通信ケーブルの故障診断の実施を指示するステップと、前記故障診断の実施を指示するステップから所定時間後に、前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読出すステップと、読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出するステップと、を備える。
【0022】
上記構成によれば、管理者が、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所を容易に特定することができるようになり、よって通信ケーブルの保全作業を効率的に実行することを可能とさせる制御装置を実現することができる。
【0023】
本発明の一側面に係る制御プログラムは、上記一側面に係る制御方法に記載の各ステップを制御装置に実行させることにより当該制御装置を機能させる構成を備える。
【0024】
上記構成によれば、管理者が、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所を容易に特定することができるようになり、よって通信ケーブルの保全作業を効率的に実行することを可能とさせる制御装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一側面に係る制御装置、本発明の一側面に係るネットワークシステム、本発明の一側面に係るネットワークシステムの制御方法のいずれかによれば、管理者が、産業用ネットワークシステム中の通信ケーブルの故障個所を容易に特定することができるようになり、よって通信ケーブルの保全作業を効率的に実行することを可能とさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態1に係る制御装置を適用したネットワークシステムを示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る制御装置及びネットワークシステムを示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態1に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態2に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態3に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)が、図面に基づいて説明される。
【0028】
§1 適用例
まず、本発明が適用される場面の一例が述べられる。本実施形態に係る制御装置は、マスタ装置と、複数のスレーブ装置を備えたネットワークシステムに用いる、前記マスタ装置である。
【0029】
前記ネットワークシステムにおいて、前記スレーブ装置は、前記マスタ装置側の第1の他機と第1の通信ケーブルで接続される第1通信部と、前記マスタ装置とは反対側の第2の他機と第2の通信ケーブルで接続される第2通信部と、を備えるものである。前記スレーブ装置は、更に、前記第1通信部に設けられた、前記第1の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第1検知部及び前記第1検知部による故障診断の結果を保持する第1記録部と、前記第2通信部に設けられた、前記第2の通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を行う第2検知部及び前記第2検知部による故障診断の結果を保持する第2記録部と、を有するものである。
【0030】
本実施形態に係る制御装置は、通信指示部、診断指示部、診断結果読出部と算出部とを備える。前記通信指示部は、前記スレーブ装置に対し、前記第1の他機または前記第2の他機との通信の実行/停止を指示する。前記診断指示部は、前記スレーブ装置に対し、前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの故障診断の実施を指示する。
【0031】
前記診断結果読出部は、前記スレーブ装置の前記第1記録部または前記第2記録部から、前記故障診断の結果を読出す。前記算出部は、読み出した前記故障診断の結果から、前記スレーブ装置から故障個所までの前記第1の通信ケーブルまたは前記第2の通信ケーブルの長さを算出する。
【0032】
本実施形態によれば、マスタ装置である制御装置は、所要のスレーブ装置に対し、通信の停止を指示し、当該スレーブ装置に接続された通信ケーブルの故障個所探知を含む故障診断を実行させることができる。また、当該スレーブ装置から故障診断の結果を読み出し、所要の通信ケーブルにおける故障個所を特定することができる。よってネットワークシステムの管理者は、ネットワークシステム中に張り巡らされた通信ケーブルにおける故障個所を容易に特定することができる。従ってネットワークシステムの管理者が、フィールドネットワークにおけるケーブル故障の発生個所の除去と交換、ケーブル異常の頻発個所の特定と対策などの保全作業を効率的に実行することが可能となる。
【0033】
§2 構成例
(ネットワークシステムの全体概要)
図1は、実施形態1に係るマスタ装置10(制御装置)を備えたネットワークシステム1を示す概略構成図である。ネットワークシステム1は、マスタ装置10と、複数のスレーブ装置20を含んで構成されている。ネットワークシステム1には、具体例として、EtherCAT(登録商標)あるいはEthernet/IPが適用される(ETHERNET:登録商標)。
【0034】
スレーブ装置20は、マスタ側(上流側)の通信部(図1で不図示)とその反対側(下流側)の通信部(図1で不図示)を有し、それぞれが他機(マスタ装置10またはスレーブ装置20)と通信ケーブル30によって接続されている。
【0035】
マスタ装置10には、表示装置11が接続されてもよい。マスタ装置10と表示装置11との接続には例示としてイーサネット(登録商標)や、Ethernet/IPのような通信ネットワークが適用され得る。また、マスタ装置10には、ツールとも称されるコンピュータ12が接続されてもよい。マスタ装置10とコンピュータ12との接続には例示としてUSB(Universal Serial Bus)が適用され得る。
【0036】
(マスタ装置の構成)
図2は、実施形態1に係るマスタ装置10の構成とともに、ネットワークシステム1を示すブロック図である。マスタ装置10(制御装置)は、マスタ制御部110、マスタ通信部120、マスタ記録部130、マスタ出力部140と、マスタ入力部150とを備える。
【0037】
マスタ通信部120は、複数のスレーブ装置20(20a~20d等)との間で通信を行う機能ブロックである。マスタ記録部130は、データの記録、読出し、保持を行う機能ブロックである。マスタ出力部140は、表示装置11に情報の表示を行わせるインターフェースである。なお、図2においては情報の表示を行わせる装置として表示装置11が示されているが、コンピュータ12であってもよい。
【0038】
マスタ入力部150は、スイッチやタッチパネル等のユーザインターフェースを備えており、管理者の操作による動作の指示や選択を受け付ける。なお、マスタ入力部150は必ずしも設けられていなくてもよく、その場合に、管理者の操作による動作の指示や選択は、マスタ装置10が、コンピュータ12等の他の機器から指示されてする行うものであってもよい。
【0039】
マスタ制御部110は、マスタ通信部120を含むこれらの機能ブロックを制御する。マスタ制御部110は、マスタ通信部120、マスタ入力部150を通じて、あるいはマスタ記録部130、から取得したデータの処理を実行し、その結果により上記制御を調整し得る。また、マスタ制御部110は、これらデータの処理を実行し、その結果をマスタ出力部140を通じて表示装置11に表示させ得る。
【0040】
マスタ制御部110は、少なくとも選択部111、通信指示部112、診断指示部113、診断結果読出部114、算出部115、出力指示部116の各機能ブロックを有する。これら機能ブロックの働きについては後述される。
【0041】
(スレーブ装置の構成)
図2には、例示として、マスタ装置10の側から順に、スレーブ装置20a~20dが順次通信ケーブル30a~30dによって接続されていることが示されている。各スレーブ装置20a~20dは通信に関して同様の構成を備えるが、図2においては、スレーブ装置20cについてのみ構成が示される。
【0042】
スレーブ装置20cは、スレーブ制御部210、第1通信部220と、第2通信部230とを備えている。第1通信部220は、通信ケーブル30cを通じて他機であるスレーブ装置20bと接続されている。第2通信部230は、通信ケーブル30dを通じて他機であるスレーブ装置20dと接続されている。つまり、第1通信部220は、マスタ側(上流側、IN側)の通信部であり、第2通信部はその反対側(下流側、OUT側)の通信部である。第1通信部220、第2通信部230は、それぞれPHYとも称される回路である。
【0043】
スレーブ制御部210は、第1通信部220及び第2通信部230を含む機能ブロックを制御し得る機能ブロックである。またスレーブ制御部210は、スレーブ装置20cにおける各種制御の統括や情報処理の実行を行う。
【0044】
第1通信部220には、第1通信制御部221、第1通信実行部222、第1検知部223、第1記録部224の各機能ブロックが設けられている。第1通信制御部221は、第1通信部220全体を統括し、第1通信部220による通信を制御する機能ブロックである。第1通信実行部222は、第1通信制御部221の指示に基づき、通信ケーブル30cを通じて他機20bとの通信パケットの交換を実行する機能ブロックである。
【0045】
第1検知部223は、第1通信制御部221の指示に基づき、通信ケーブル30cの故障診断を実行する機能ブロックである。第1記録部224は、第1検知部223の取得した故障診断の結果を記録するレジスタである。故障診断では、少なくとも故障の有無と、故障があった場合に通信ケーブル30cにおける故障個所までの第1通信部220からの長さと相関する距離情報を検知する。
【0046】
第1検知部223は、故障診断を実行する際に、接続された通信ケーブル30cに対して特定の信号波形を送出し、その反射信号を検出する。これにより第1検知部223は、故障個所までの通信ケーブル30cの長さと相関する距離情報を検知する。更に、通信ケーブル30cの状態、すなわち、正常、断線故障、またはショート故障のいずれにあるかを判断する故障判定を行ってもよい。第1検知部223は故障診断を実行すると、第1記録部224にその結果を記録する。
【0047】
第2通信部230には、第2通信制御部231、第2通信実行部232、第2検知部233、第2記録部234の各機能ブロックが設けられている。第2通信制御部231は、第2通信部230全体を統括し、第2通信部230による通信を制御する機能ブロックである。第2通信実行部232は、第2通信制御部231の指示に基づき、通信ケーブル30dを通じて他機20dとの通信パケットの交換を実行する機能ブロックである。
【0048】
第2検知部233は、第2通信制御部231の指示に基づき、通信ケーブル30dの故障診断を実行する機能ブロックである。第2記録部234は、第2検知部233の取得した故障診断の結果を記録するレジスタである。故障診断では、少なくとも、通信ケーブル30dにおける故障個所までの第2通信部230からの長さと相関する距離情報を検知する。
【0049】
第2検知部233は、故障診断を実行する際に、接続された通信ケーブル30dに対して特定の信号波形を送出し、その反射信号を検出する。これにより第2検知部233は、故障個所までの通信ケーブル30dの長さと相関する距離情報を検知する。更に、通信ケーブル30dの状態、すなわち、正常、断線故障、またはショート故障のいずれにあるかを判断する故障判定を行ってもよい。第2検知部233は故障診断を実行すると、第2記録部234に結果を記録する。
【0050】
§3 動作例
FAシステムであるネットワークシステム1が稼働中、マスタ装置10は、各スレーブ装置20と、各機器の制御及びデータ収集等に関する通信を行う。更に実施形態1においては、マスタ装置10は通信ケーブル30の監視のための以下の特徴的な動作を繰り返し実行する。
【0051】
図3は、マスタ装置10が実行する通信ケーブル30の監視のための特徴的な動作を説明するフローチャートである。マスタ装置10はネットワークシステム1が稼働中に、以下のステップS101からステップS109までのフローを繰り返し実行する。
【0052】
ステップS101:選択部111は、マスタ通信部120を通じ、スレーブ装置20(20a~20d等)から他機との通信が途絶したことを示すリンクオフ情報が通知されていないかを監視する。マスタ装置10へのリンクオフ情報は、互いに直接接続されたスレーブ装置20間のうち、通常、マスタ側(上流側)に位置するスレーブ装置20から報知される。通信の途絶により下流側のスレーブ装置20からの情報はマスタ装置10に上がらないからである。リンクオフ情報が検出された場合(S101でYES)、ステップS102に進み、それ以外の場合(S101でNO)、フローは終了する。
【0053】
ステップS102:選択部111は、リンクオフ情報を通知したスレーブ装置20を選択する。本動作例では、当該スレーブ装置20を図2におけるスレーブ装置20cとし、その第2通信部230側(OUT側)でリンクオフが発生したものとして説明する。通信指示部112が、選択されたスレーブ装置20cに対し、第2通信部230での通信を停止するように指示する。
【0054】
するとスレーブ装置20cでは、第2通信制御部231が第2通信実行部232によるスレーブ装置20dとの通信(通信の試行)を停止させる。
【0055】
ステップS103:続いて診断指示部113が、選択されたスレーブ装置20cに対し、第2通信部230からケーブル診断を実行することを指示する。
【0056】
ステップS104:続いてマスタ制御部110は、所定時間待機する。
【0057】
この間にスレーブ装置20cでは、第2通信制御部231が第2検知部233による通信ケーブル30dの故障診断を実行させる。第2検知部233は通信ケーブル30dの故障診断の結果を第2記録部234に保存する。
【0058】
ステップS105:続いて診断結果読出部114が、選択されたスレーブ装置20cの第2記録部234から、通信ケーブル30dの故障診断の結果を読み出す。
【0059】
ステップS106:続いて算出部115が、故障診断の結果を解析する。通信ケーブル30dについてその状態、すなわち正常、断線故障、ショート故障のいずれかであるかを取得する。更に算出部115は、故障診断の結果の距離情報を参照し、それを通信ケーブル30d上の実距離に変換する。
【0060】
ステップS107:続いて算出部115は、マスタ記録部130に、算出した異常情報を記録する。ここで異常情報は、選択したスレーブ装置20cの情報、ケーブル診断を実施した通信部(第1通信部または第2通信部)の情報、断線故障/ショート故障/正常の状態の情報、故障個所までの実距離の情報、時刻情報等を含み得る。
【0061】
ステップS108:続いて出力指示部116が、マスタ出力部140を通じて表示装置11に異常情報を表示させる。
【0062】
ステップS109:続いて通信指示部112が、選択されたスレーブ装置20cに対し、第2通信部230での通信を開始するように指示する。通信の途絶が一時的なものであれば、実際に通信が再開し得るが、途絶が継続する場合には、実際には通信は再開し得ない。なお、ステップS109に先だって、管理者による再開指示の操作を受け付けてから、当該通信の開始の指示を発するようにしてもよい。次にフローは終了する。
【0063】
§4 作用、効果
実施形態1によれば、マスタ装置10はスレーブ装置20cから通信ケーブル30dの故障診断の結果を読み出して報知するため、ネットワークシステム1の管理者が、各スレーブ装置20をそれぞれ確認することなく、容易にケーブル異常の発生を認識することができる。
【0064】
しかも、異常の生じた通信ケーブル30dの故障個所が、スレーブ装置20からの距離として示されるため、容易にケーブル異常の発生個所を知ることができる。産業用ネットワークにおいて機器間を接続する通信ケーブル30の長さは、時として100m程度にも及ぶことがあるが、このような場合に故障の生じた通信ケーブル全体を交換することは不経済である。そのため例えば20mの通信ケーブルをコネクタで接続してより長い一本の通信ケーブルとして用いることが行われる。このような場合に、実施形態1に係るマスタ装置10によれば、異常の発生個所が特定されるから、故障箇所を含む例えば20m分の通信ケーブルのみ交換すればよく、ネットワークシステム1のメンテナンスが経済的に行える。
【0065】
更に、故障個所が一意に特定されるから、工場内のどの場所において通信ケーブルの故障が発生したのかを、管理者は容易に知ることができる。通信ケーブルにダメージを及ぼす怖れのある状態は、工場内においては例えば次のように多様に発生し得る。通信ケーブルがロボットアームや移動ステージなどの可動部分に沿って設けられ、運動によってストレスが生じること。振動や圧迫を受ける箇所に設置されること。温度変化にさらされる箇所に設置されること。火花や高温あるいは低温にさらされること。薬品やガス等の化学物質にさらされること。
【0066】
通信ケーブルの特定の位置において故障が発生したことが判明すれば、工場内におけるこれらケーブル異常を引き起こす要因のいずれが実際に故障を発生させたのかを、管理者は現場にて容易に調べることができる。よって、次に同様の故障を発生させないように対策を取ることが容易となる。
【0067】
従ってネットワークシステムの管理者が、フィールドネットワークにおけるケーブル異常の発生個所の除去と交換、ケーブル異常の発生しやすい個所の特定と対策などの保全作業を効率的に実行することが可能となる。
【0068】
また、実施形態1によれば、マスタ装置10は、通信ケーブルの故障が発生した怖れのあるときに、自動的にケーブル診断を実施し、その結果を報知する。よって、ネットワークシステム1の管理者が、通信ケーブルの故障に気付かずに放置してしまうことが無く、またネットワークシステム1のどの箇所で故障が生じているかも直ちに知ることができるから、迅速な修理の対応を実行することが可能となる。
【0069】
しかし、本発明において、スレーブ装置20からのリンクオフ情報を受信した際に自動的にケーブル診断を実施する構成と必ずしもしなくともよい。図3のフローチャートにおいて、マスタ装置10がリンクオフ情報を受信する(ステップS101でYES)と、そのことを管理者に報知し、管理者の指示を受けてから、ステップS102以降に進み、ケーブル診断を実施するような構成としてもよい。スレーブ装置20からのリンクオフ情報を受信した際に自動的に診断を実施するか否かは、管理者の選択により、マスタ装置10において任意に設定し得るものである。
【0070】
実施形態1によれば、マスタ装置10は、スレーブ装置に通信を停止させてから、ケーブル診断を実行させるから、スレーブ装置によるケーブル診断の実行時において、通信と干渉してケーブル診断の結果が誤ったものとなることを防止できる。また、ケーブル診断の実行を指示してから、ケーブル診断が完了する所定の時間待機した後に、スレーブ装置の記録部の情報を読み出すから、マスタ装置10からの通信がケーブル診断と干渉してケーブル診断の結果が誤ったものとなることを防止できる。
【0071】
なお、実施形態1において、マスタ装置10が実行する動作のフローチャートのステップS102からステップS109までの一連の動作は、当該動作を実行させるプログラムを搭載したコンピュータ12(ツール)を管理者がスレーブ装置20に直接接続して実行できるように構成することも可能である。この場合ステップS108における異常情報の表示は、コンピュータ12が備えるディスプレイ上に行い得る。
【0072】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態が、以下に説明される。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
実施形態2に係るマスタ装置10(制御装置)の構成は、図2に示された実施形態1の場合と同様である。また実施形態2に係るマスタ装置10が適用されるネットワークシステム1の構成は、図1及び図2に示された実施形態1の場合と同様である。
【0074】
図5のフローチャートに示される、マスタ装置10が実行し得る別の特徴的な動作が、実施形態2では説明される。マスタ装置10はネットワークシステム1が稼働中に、以下のステップS201からステップS210までのフローを繰り返し実行する。
【0075】
ステップS201:マスタ入力部150は、管理者によるケーブル診断の指示を受け付ける。ケーブル診断の指示が検出された場合(S201でYES)、ステップS202に進み、それ以外の場合(S201でNO)、フローは終了する。
【0076】
ステップS202:選択部111は、ステップS201においてマスタ入力部150が受け付けた管理者の指示によるケーブル診断を行う範囲のスレーブ装置20を選択する。ここで例として、当該スレーブ装置20は図2におけるスレーブ装置20a以下(スレーブ装置20aから下流側)の全てのスレーブ装置20であるものとする。通信指示部112が、選択されたスレーブ装置20(20a以下)に対し、第1通信部220(IN側の通信部)及び第2通信部230(OUT側の通信部)での通信を停止するように指示する。すると選択されたスレーブ装置20では、第1通信部220及び第2通信部230において接続された他機との通信を停止させる。
【0077】
ステップS203:続いて選択部111は、ステップS202で選択したスレーブ装置20のうちから未だステップS203で選択していない一つのスレーブ装置を選択する。
診断指示部113が、ここで選択されたスレーブ装置20に対し、第1通信部220及び第2通信部230からケーブル診断を実行することを指示する。
【0078】
ステップS204:続いてマスタ制御部110は、所定時間待機する。この間に選択されたスレーブ装置20では、第1検知部223(IN側の通信部の検知部)及び第2検知部233(OUT側の通信部の検知部)による通信ケーブル30の故障診断を実行させる。第1検知部223は接続された通信ケーブル30の故障診断の結果を第1記録部224に保存する。第2検知部233は接続された通信ケーブル30の故障診断の結果を第2記録部234に保存する。
【0079】
ステップS205:続いて診断結果読出部114が、選択されたスレーブ装置20の第1記録部224及び第2記録部234から、通信ケーブル30の故障診断の結果を読み出す。
【0080】
ステップS206:続いて算出部115が、第1検知部223及び第2検知部233による故障診断の結果をそれぞれ解析する。通信ケーブル30について、その状態、すなわち正常、断線故障、ショート故障のいずれかであるかを取得する。更に算出部115は、故障診断の結果の距離情報を参照し、それを通信ケーブル30上の実距離に変換する。
【0081】
ステップS207:続いて算出部115は、マスタ記録部130に、算出した異常情報を記録する。ここで異常情報は、選択したスレーブ装置20の情報、ケーブル診断を実施した通信部(第1通信部220または第2通信部230)の情報、断線異常/ショート異常/正常の状態の情報、故障個所までの実距離の情報、時刻情報等を含み得る。
【0082】
ステップS208:続いて選択部111は、ステップS202で選択したスレーブ装置20のうちから未だステップS203で選択していないスレーブ装置が残っているか否かを判断する。残っていると判断される場合(S208でYES)、ステップS203に進み、それ以外の場合(S208でNO)、ステップS209に進む。
【0083】
ステップS209:続いて出力指示部116が、マスタ出力部140を通じて表示装置11に異常情報を表示させる。
【0084】
ステップS210:続いて通信指示部112が、ステップS202で選択されたスレーブ装置20に対し、各通信部(第1通信部220、第2通信部230)での通信を再開するように指示する。すると、各々のスレーブ装置20において、第1通信実行部222及び第2通信実行部232による接続された他機との通信が再開する。次にフローは終了する。
【0085】
上記フローにおいて、ステップS201で管理者によりケーブル診断の実行を指示される方法として、マスタ装置10が備えるスイッチ等の手段によってもよい。あるいは、コンピュータ12(ツール)やその他の機器を通じて、指示されるものであってもよい。
【0086】
上記フローにおいて、ステップS201で管理者により指示される対象のスレーブ装置20の範囲としては、様々なケースがあり得る。例えば、図2におけるスレーブ装置20c以下(スレーブ装置20cから下流側のスレーブ装置)であってもよい。あるいは図1におけるネットワークシステム1の一分岐上のスレーブ装置20であってもよい。
【0087】
上記フローにおいて、ステップS203で選択されるスレーブ装置20は、マスタ側から時系列で20a、20b、20cのような順に選択されてよいし、またその逆の順に選択されてもよい。
【0088】
上記フローにおいて、ステップS204で実行される通信ケーブル30の故障診断は、各スレーブ装置20のIN側(第1通信部220)及びOUT側(第2通信部230)で行われるものとした。しかし、IN側でのみ行われるものであってもよいし、OUT側のみ行われるものであってもよい。
【0089】
実施形態2においても、実施形態1における、ケーブル故障が発生した怖れのあるときに、マスタ装置10が自動的にケーブル診断を実施することによる効果を除いて、実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0090】
更に実施形態2によれば、管理者の発意によりネットワークシステム1の所要の範囲についてのケーブル診断を実行することができる。従って、ネットワークシステム1の稼動中に任意にケーブル診断を実行することができるようになる。特に、管理者はネットワークシステム1の設置時や変更時にケーブル診断を実行することで、通信ケーブルに不具合が発生していないかを容易に確認することができるようになる。
【0091】
実施形態2によれば、マスタ装置10の指示により、上述のフローのステップS203からS208の繰り返しにおいて、一台ずつ順にスレーブ装置20がケーブル診断を実行するから、複数のスレーブ装置が同時にケーブル診断を実行してしまって互いに干渉し、ケーブル診断の結果が誤ったものとなってしまうことが防止される。
【0092】
〔実施形態3〕
実施形態3に係るマスタ装置10(制御装置)の構成は、図2に示された実施形態1の場合と同様である。また実施形態2に係るマスタ装置10が適用されるネットワークシステム1の構成は、図1及び図2に示された実施形態1の場合と同様である。
【0093】
図5のフローチャートに示される、マスタ装置10が実行し得る別の特徴的な動作が、実施形態3では説明される。マスタ装置10はネットワークシステム1が稼働中に、以下のステップS301からステップS308までのフローを繰り返し実行する。
【0094】
ステップS301:マスタ入力部150は、管理者によるケーブル診断の指示を受け付ける。ケーブル診断の指示が検出された場合(S301でYES)、ステップS302に進み、それ以外の場合(S301でNO)、フローは終了する。
【0095】
ステップS302:選択部111は、ステップS301においてマスタ入力部150が受け付けた管理者の指示によるケーブル診断を行う範囲のスレーブ装置20を選択する。ここで例として、当該スレーブ装置20は図2におけるスレーブ装置20a以下(スレーブ装置20aから下流側)の全てのスレーブ装置20であるものとする。通信指示部112が、選択されたスレーブ装置20(20a以下)に対し、各通信部での通信を停止するように指示する。すると選択されたスレーブ装置20では、第1通信部220及び第2通信部230において接続された他機との通信を停止させる。
【0096】
ステップS303:続いて診断指示部113が、選択されたスレーブ装置20に対し、第1通信部220(IN側の通信部)からケーブル診断を実行することを指示する。
【0097】
ステップS304:続いてマスタ制御部110は、所定時間待機する。
【0098】
この間に選択されたスレーブ装置20cでは、各々の第1検知部223(IN側の通信部の検知部)による通信ケーブル30の故障診断を実行させる。各々の第1検知部223は通信ケーブル30の故障診断の結果を各々の第1記録部224に保存する。
【0099】
ステップS305:続いて診断結果読出部114が、選択されたスレーブ装置20の第1記録部224から、通信ケーブル30の故障診断の結果を読み出す。
【0100】
ステップS306:続いて算出部115が、故障診断の結果を解析する。通信ケーブル30について、その状態、すなわち正常、断線故障、ショート故障のいずれかであるかを取得する。更に算出部115は、断線故障またはショート故障であった場合に、故障診断の結果の距離情報を参照し、それを通信ケーブル30上の実距離に変換する。
【0101】
ステップS307:続いて算出部115は、マスタ記録部130に、算出した異常情報を記録する。ここで異常情報は、選択したスレーブ装置20の情報、ケーブル診断を実施した通信部(第1通信部)の情報、断線異常/ショート異常/正常の状態の情報、異常個所までの実距離の情報、時刻情報等を含み得る。
【0102】
ステップS308:続いて出力指示部116が、マスタ出力部140を通じて表示装置11に異常情報を表示させる。
【0103】
ステップS309:続いて通信指示部112が、ステップS302で選択された選択されたスレーブ装置20に対し、各通信部(第1通信部220、第2通信部230)での通信を実行するように指示する。すると、各々のスレーブ装置20において、第1通信実行部222及び第2通信実行部232による接続された他機との通信が再開する。次にフローは終了する。
【0104】
上記フローにおいて、ステップS301で管理者によりケーブル診断の実行を指示される方法として、マスタ装置10が備えるスイッチ等の手段によってもよい。あるいは、コンピュータ12(ツール)やその他の機器を通じて、指示されるものであってもよい。
【0105】
上記フローにおいて、ステップS301で管理者により指示される対象のスレーブ装置20の範囲としては、様々なケースがあり得る。例えば、図2におけるスレーブ装置20c以下(スレーブ装置20bより下流側のスレーブ装置)であってもよい。あるいは図1におけるネットワークシステム1の一分岐上のスレーブ装置20であってもよい。
【0106】
上記フローにおいて、ステップS304で実行される通信ケーブル30の故障診断は、各スレーブ装置20のIN側(第1通信部220)で行われるものとした。しかし、OUT側(第2通信部)で行われるものであってもよい。
【0107】
実施形態3においても、実施形態1における、マスタ装置10がケーブル故障が発生した怖れのあるときに、自動的にケーブル診断を実施することによる効果を除いて、実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0108】
更に実施形態3によれば、管理者の発意によりネットワークシステム1の所要の範囲についてのケーブル診断を実行することができる。従って、ネットワークシステム1の稼動中に任意にケーブル診断を実行することができるようになる。特に、管理者はネットワークシステム1の設置時や変更時にケーブル診断を実行することで、通信ケーブル30に不具合が発生していないかを容易に確認することができるようになる。
【0109】
実施形態3によれば、フローのステップS304において、マスタ装置10の指示により、各々のスレーブ装置のIN側(上流側)のみ(あるいはOUT側のみ)でケーブル診断が実行されるから、複数のスレーブ装置20が同時にケーブル診断を実行しても互いに干渉してケーブル診断の結果が誤ったものとなってしまうことが防止される。
【0110】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置(マスタ装置10)の機能ブロック(特に、マスタ制御部110)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0111】
後者の場合、制御装置は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。
【0112】
上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを更に備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0113】
本発明は上述した各実施形態、実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態、実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 ネットワークシステム
10 マスタ装置(制御装置)
110 マスタ制御部
111 選択部
112 通信指示部
113 診断指示部
114 診断結果読出部
115 算出部
116 出力指示部
120 マスタ通信部
130 マスタ記録部
140 マスタ出力部
150 マスタ入力部
11 表示装置
12 コンピュータ
20、20a、20b、20c、20d スレーブ装置
210 スレーブ制御部
220 第1通信部
221 第1通信制御部
222 第1通信実行部
223 第1検知部
224 第1記録部
230 第2通信部
231 第2通信制御部
232 第2通信実行部
233 第2検知部
234 第2記録部
30、30a、30b、30c、30d、30e 通信ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5