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特許7172893熱硬化性コーティング剤、硬化物及びフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】熱硬化性コーティング剤、硬化物及びフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20221109BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D183/00
C09J11/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019132393
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2020019945
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018135746
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐希
(72)【発明者】
【氏名】久米 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
(72)【発明者】
【氏名】東本 徹
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066263(JP,A)
【文献】特表2001-502009(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価200mgKOH/g以上であり分子量1000以下のポリオール(A)、
ウレタンポリオール(B)、水酸基含有シリコーン変性樹脂(C)、及び
ポリイソシアネートのアロファネート体(D)、並びに
ポリイソシアネートのビウレット体(E1)及び/又はイソシアヌレート体(E2)を
前記ウレタンポリオール(B)100部に対し、前記ポリオール(A)2.5~25部、前記水酸基含有シリコーン変性樹脂(C)10部以下で含む、
熱硬化性コーティング剤。
【請求項2】
前記ウレタンポリオール(B)が、ポリマーポリオール由来の構成単位を35~70質量%含む、請求項1に記載の熱硬化性コーティング剤。
【請求項3】
自己修復性コーティング剤である、請求項1又は2に記載の熱硬化性コーティング剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性コーティング剤の硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を含む、フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性コーティング剤、硬化物及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、自動車用部品等の各種工業製品には、ABS、ポリカーボネート等のプラスチック基材が用いられている。このようなプラスチック基材を保護するためにコーティング剤により表面処理が行われる。
【0003】
コーティング剤には、生じた傷を経時的に消失させることを目的として、自己修復性が付与されたものがある(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-043261号公報
【文献】特開2016-033175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のコーティング剤を用いた場合、強い力(スチールウール等)により生じる傷への耐性が低いという問題があった。また、そのような自己修復性コーティング剤は、用途によって様々な物性が求められる。本発明が解決しようとする課題は、自己修復性、耐摩耗性、防汚性及び破断伸度、耐スチールウール性が良好なフィルムを製造するためのコーティング剤を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の成分を含む熱硬化性コーティング剤により、上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
水酸基価200mgKOH/g以上であり分子量1000以下のポリオール(A)、
ウレタンポリオール(B)、水酸基含有シリコーン変性樹脂(C)、及び
ポリイソシアネートのアロファネート体(D)、並びに
ポリイソシアネートのビウレット体(E1)及び/又はイソシアヌレート体(E2)を含む、
熱硬化性コーティング剤。
(項目2)
前記ウレタンポリオール(B)が、ポリマーポリオール由来の構成単位を35~70質量%含む、上記項目に記載の熱硬化性コーティング剤。
(項目3)
自己修復性コーティング剤である、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化性コーティング剤。
(項目4)
上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化性コーティング剤の硬化物。
(項目5)
上記項目に記載の硬化物を含む、フィルム。
【0008】
本開示において、上述した1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱硬化性コーティング剤を用いることにより、自己修復性、耐摩耗性、防汚性及び破断伸度、耐スチールウール性が良好なフィルムを得ることができる。また、加飾フィルムへのコーティング等にも応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限がA1、A2、A3等が例示され、数値αの下限がB1、B2、B3等が例示される場合、数値αの範囲は、A1以下、A2以下、A3以下、B1以上、B2以上、B3以上、B1~A1、B2~A1、B3~A1、B1~A2、B2~A2、B3~A2、B1~A3、B2~A3、B3~A3等が例示される。
【0011】
[熱硬化性コーティング剤:コーティング剤ともいう]
本開示は、水酸基価200mgKOH/g以上であり分子量1000以下のポリオール(A)、ウレタンポリオール(B)、水酸基含有シリコーン変性樹脂(C)、及びポリイソシアネートのアロファネート体(D)、並びにポリイソシアネートのビウレット体(E1)及び/又はイソシアヌレート体(E2)を含む、熱硬化性コーティング剤を提供する。
【0012】
<水酸基価200mgKOH/g以上であり分子量1000以下のポリオール(A):(A)成分ともいう>
本開示において、「ポリオール」は、例えば、水酸基(-OH)を2個以上有する化合物を意味する。
【0013】
(A)成分の水酸基価の上限は、2000、1900、1750、1500、1250、1000、900、750、500、300mgKOH/g等が例示され、下限は、1900、1750、1500、1250、1000、900、750、500、300、200mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の水酸基価は、200mgKOH/g以上が好ましく、200~2000mgKOH/gがより好ましい。
【0014】
(A)成分の分子量の上限は、1000、900、750、500、400、250、200、100、90等が例示され、下限は、900、750、500、400、250、200、100、90、50等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の分子量は、1000以下が好ましく、50~1000がより好ましい。
【0015】
本開示において、単に「分子量」と記載する場合、式量又は数平均分子量のどちらかを意味する。特定の化学式で一義的に化合物の構造を表現できる(すなわち分子量分布が1である)場合、上記分子量は式量を意味する。一方、特定の化学式で一義的に化合物の構造を表現できない(すなわち分子量分布が1より大きい)場合、上記分子量は数平均分子量を意味する。
【0016】
(A)成分は、水酸基価が200mgKOH/g以上であり、かつ分子量が1000以下であれば、各種公知のものを使用することができる。
【0017】
(A)成分は、アルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が例示される。
【0018】
<アルキレンポリオール>
アルキレンポリオールは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルキレンポリオールは、アルキレンジオール、アルキレントリオール等が例示される。
【0019】
本開示において、「アルキレンポリオール」は、アルキレン基及び2個以上の水酸基からなる化合物を意味する。
【0020】
アルキレンジオールは、直鎖アルキレンジオール、分岐アルキレンジオール等が例示される。
【0021】
直鎖アルキレンジオールは、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等が例示される。
【0022】
分岐アルキレンジオールは、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール等が例示される。
【0023】
アルキレントリオールは、グリセリン、ブタントリオール、ペンタントリオール、トリメチロールプロパン等が例示される。
【0024】
アルキレンポリオールの炭素数は特に制限されないが、1つの実施形態において、アルキレンポリオールの炭素数は2~6が好ましい。
【0025】
<ポリエーテルポリオール>
本開示において、「ポリエーテルポリオール」は、例えば、水酸基を2個以上及びエーテル結合を含む繰り返し単位を2個以上連続して有する化合物を意味する。ポリエーテルポリオールは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0026】
1つの実施形態において、ポリエーテルポリオールは、下記構造式
HO-(REther-O-)
(式中、REtherは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はアリーレンアルキレンアリーレン基であり、nは2以上の整数である。)で表わされる。
【0027】
アルキレン基は、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基等が例示される。
【0028】
直鎖アルキレン基は、-(CH-(nは1以上の整数)の構造式で表現できる。直鎖アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基等が例示される。
【0029】
分岐アルキレン基は、直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキレン基は、ジエチルペンチレン基、トリメチルブチレン基、トリメチルペンチレン基、トリメチルヘキシレン基等が例示される。
【0030】
シクロアルキレン基は、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基等が例示される。またシクロアルキレン基は、1つ以上の水素が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0031】
本開示において、単環は、炭素の共有結合により形成された内部に橋かけ構造を有しない環状構造を意味する。また、縮合環は、2つ以上の単環が2個の原子を共有している(すなわち、それぞれの環の辺を互いに1つだけ共有(縮合)している)環状構造を意味する。架橋環は、2つ以上の単環が3個以上の原子を共有している環状構造を意味する。
【0032】
単環シクロアルキレン基は、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロデシレン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基等が例示される。
【0033】
架橋環シクロアルキレン基は、トリシクロデシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基等が例示される。
【0034】
縮合環シクロアルキレン基は、ビシクロデシレン基等が例示される。
【0035】
アリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、フルオニレン基等が例示される。
【0036】
アリーレンアルキレンアリーレン基は、
-Rarylene-Ralkylene-Rarylene
(式中、Raryleneは、アリーレン基を表し、Ralkyleneは、アルキレン基を表す)
で表わされる基である。
【0037】
アリーレンアルキレンアリーレン基は、フェニレンジメチルメチレンフェニレン基等が例示される。
【0038】
ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオールのアルキレンオキサイド付加物等が例示される。
【0039】
(ポリオールのアルキレンオキサイド付加物)
ポリオールのアルキレンオキサイド付加物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリオールのアルキレンオキサイド付加物は、アルキレンジオールのアルキレンオキサイド付加物、アルキレントリオールのアルキレンオキサイド付加物等が例示される。
【0040】
アルキレンジオール及びアルキレントリオールは、上述のもの等が例示される。
【0041】
アルキレンオキサイド付加物は、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等が例示される。
【0042】
<ポリエステルポリオール>
本開示において、「ポリエステルポリオール」は、例えば、水酸基を2個以上及びエステル結合を含む繰り返し単位を2個以上連続して有する化合物を意味する。ポリエステルポリオールは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、ポリカプロラクトンポリオールはポリエステルポリオールの1種である。
【0043】
1つの実施形態において、ポリエステルポリオールは、下記構造式
HO-{RaEster-OC(=O)-RbEster-C(=O)O}-RcEster-OH
(式中、RaEster、RbEster、及びRcEsterはそれぞれ独立に、アルキレン基、又はシクロアルキレン基であり、mは2以上の整数である。)で表わされる。
【0044】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸又はその無水物と、ポリオールとの反応生成物等が例示される。
【0045】
ポリカルボン酸は、ジカルボン酸等が例示される。
【0046】
ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸等が例示される。
【0047】
ポリカルボン酸無水物は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸等が例示される。
【0048】
ポリオールは、上記アルキレンポリオール等が例示される。
【0049】
<ポリカーボネートポリオール>
本開示において、「ポリカーボネートポリオール」は、例えば、ヒドロキシ基を2個以上及びカーボネート結合を含む繰り返し単位を2個以上有する化合物を意味する。ポリカーボネートポリオールは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0050】
1つの実施形態において、ポリカーボネートポリオールは、下記構造式
HO-{RaCarbo-OC(=O)O}-RbCarbo-OH
(式中、RaCarbo、及びRbCarboはそれぞれ独立に、アルキレン基、又はシクロアルキレン基であり、pは2以上の整数である。)で表わされる。
【0051】
ポリカーボネートポリオールは、ポリオールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が例示される。
【0052】
ポリオールは、上記アルキレンポリオール等が例示される。
【0053】
アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が例示される。
【0054】
上記熱硬化性コーティング剤中の(A)成分の含有量の上限は、15、14、13、11、10、9、7、5、4、3、2質量%等が例示され、下限は、14、13、11、10、9、7、5、4、3、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記熱硬化性コーティング剤中の(A)成分の含有量は、1~15質量%が好ましい。
【0055】
<ウレタンポリオール(B):(B)成分ともいう>
1つの実施形態において、ウレタンポリオールは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物である。
【0056】
(ポリオール)
ポリオールは、アルキレンポリオール、ポリマーポリオール等が例示される。
【0057】
アルキレンポリオールは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。アルキレンポリオールは、上述のもの等が例示される。
【0058】
ウレタンポリオールのポリオール由来の構成単位中100質量%に対するアルキレンポリオール由来の構成単位の含有量の上限は、30、25、20、15質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10質量%等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールのポリオール由来の構成単位中100質量%に対するアルキレンポリオール由来の構成単位の含有量は、10~30質量%が好ましい。
【0059】
ポリマーポリオールは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が例示される。
【0060】
なお、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールの構成単位は、上述のもの等が例示される。
【0061】
ウレタンポリオールのポリオール由来の構成単位中100質量%に対するポリマーポリオール由来の構成単位の含有量の上限は、30、25、20、15質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10質量%等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールのポリオール由来の構成単位中100質量%に対するポリマーポリオール由来の構成単位の含有量は、10~30質量%が好ましい。
ウレタンポリオール中におけるポリマーポリオール由来の構成単位の含有量の上限は、70、65、60、55、50、45、40質量%等が例示され、下限は65、60、55、50、45、40、35質量%等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオール(B)は、ポリマーポリオール由来の構成単位を35~70質量%含む。
【0062】
ウレタンポリオールに構成単位として含まれるポリマーポリオールの重量平均分子量(Mw)の上限は、2000、1900、1750、1500、1250、1000、900、750、600等が例示され、下限は、1900、1750、1500、1250、1000、900、750、600、500等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールに構成単位として含まれるポリマーポリオールの重量平均分子量(Mw)は、500~2000が好ましい。
【0063】
ウレタンポリオールに構成単位として含まれるポリマーポリオールの数平均分子量(Mn)の上限は、2000、1900、1750、1500、1250、1000、900、750、600等が例示され、下限は、1900、1750、1500、1250、1000、900、750、600、500等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールに構成単位として含まれるポリマーポリオールの数平均分子量(Mn)は、500~2000が好ましい。
【0064】
重量平均分子量及び数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により適切な溶媒下で測定したポリスチレン換算値として求められ得る。
【0065】
ウレタンポリオールに構成単位として含まれるポリマーポリオールの分子量分布(Mw/Mn)の上限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1等が例示され、下限は、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールに構成単位として含まれるポリマーポリオールの分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~1.5が好ましい。
【0066】
ウレタンポリオールの全構成単位100質量%に対するポリオール由来の構成単位の含有量の上限は、99、95、90、80、70、60、55質量%等が例示され、下限は、95、90、80、70、60、55、50質量%等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの全構成単位100質量%に対するポリオール由来の構成単位の含有量は、50~99質量%が好ましい。
【0067】
ウレタンポリオール中のアルキレンポリオール由来の構成単位とポリマーポリオール由来の構成単位との質量比の上限は、3、2.9、2.5、2、1.9、1.5、1.1等が例示され、下限は、2.9、2.5、2、1.9、1.5、1.1、1等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオール中のアルキレンポリオール由来の構成単位とポリマーポリオール由来の構成単位との質量比は、1~3が好ましい。
【0068】
(ポリイソシアネート)
本開示において、「ポリイソシアネート」は、2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。ポリイソシアネートは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が例示される。
【0070】
脂肪族ポリイソシアネートは、直鎖脂肪族ポリイソシアネート、分岐脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が例示される。
【0071】
直鎖脂肪族基は、上述の直鎖アルキレン基等が例示される。
【0072】
直鎖脂肪族ポリイソシアネートは、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0073】
分岐脂肪族基は、上述の分岐アルキレン基等が例示される。
【0074】
分岐脂肪族ポリイソシアネートは、ジエチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルブチレンジイソシアネート、トリメチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0075】
脂環族基は、上述の単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基等が例示される。
【0076】
脂環族ポリイソシアネートは、単環シクロアルキレンポリイソシアネート、架橋環シクロアルキレンポリイソシアネート、縮合環シクロアルキレンポリイソシアネート等が例示される。
【0077】
単環シクロアルキレンポリイソシアネートは、水添キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、シクロヘプチレンジイソシアネート、シクロデシレンジイソシアネート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。
【0078】
架橋環シクロアルキレンポリイソシアネートは、トリシクロデシレンジイソシアネート、アダマンタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が例示される。
【0079】
縮合環シクロアルキレンポリイソシアネートは、ビシクロデシレンジイソシアネート等が例示される。
【0080】
脂肪族基の炭素数は、特に限定されないが、その上限は、30、29、25、20、16、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2等が例示され、下限は、29、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1等が例示される。1つの実施形態において、脂肪族基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~16がさらに好ましく、1~12が特に好ましい。
【0081】
芳香族基は、上述のアリーレン基、アリーレンアルキレンアリーレン基等が例示される。
【0082】
芳香族ポリイソシアネートは、キシレンジイソシアネート等が例示される。
【0083】
ウレタンポリオールの全構成単位100質量%に対するポリイソシアネート由来構成単位の含有量の上限は、50、45、40、30、20、15質量%等が例示され、下限は、45、40、30、20、15、10質量%等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの全構成単位100質量%に対するポリイソシアネート由来構成単位の含有量は、10~50質量%が好ましい。
【0084】
ウレタンポリオール中のアルキレンポリオール由来の構成単位とポリイソシアネート由来の構成単位との質量比(アルキレンポリオール由来の構成単位/ポリイソシアネート由来の構成単位)の上限は、3、2.9、2.5、2.3、2、1.9、1.7、1.5、1.4、1.2、1、0.9、0.7、0.5、0.3等が例示され、下限は、2.9、2.5、2.3、2、1.9、1.7、1.5、1.4、1.2、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.2等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオール中のアルキレンポリオール由来の構成単位とポリイソシアネート由来の構成単位との質量比(アルキレンポリオール由来の構成単位/ポリイソシアネート由来の構成単位)は、0.2~3が好ましい。
【0085】
ウレタンポリオール中のポリマーポリオール由来の構成単位とポリイソシアネート由来の構成単位との質量比(ポリマーポリオール由来の構成単位/ポリイソシアネート由来の構成単位)の上限は、3、2.9、2.5、2.3、2、1.9、1.7、1.5、1.4、1.2、1、0.9、0.7、0.5、0.3等が例示され、下限は、2.9、2.5、2.3、2、1.9、1.7、1.5、1.4、1.2、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.2等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオール中のポリマーポリオール由来の構成単位とポリイソシアネート由来の構成単位との質量比(ポリマーポリオール由来の構成単位/ポリイソシアネート由来の構成単位)は、0.2~3が好ましい。
【0086】
(その他のモノマー)
上記ウレタンポリオールには、ポリマーポリオールでもアルキレンポリオールでもポリイソシアネートでもないモノマー(その他のモノマーともいう)に由来する構成単位が含まれ得る。
【0087】
その他のモノマーは、アリーレンポリオール等が例示される。
【0088】
1つの実施形態において、ウレタンポリオールの全構成単位100質量%に対するその他のモノマー由来の構成単位の含有量は、5、1、0.9、0.5、0.1質量%未満、0質量%等が例示される。
【0089】
1つの実施形態において、ウレタンポリオールの全構成単位100モル%に対するその他のモノマー由来の構成単位の含有量は、5、1、0.9、0.5、0.1モル%未満、0モル%等が例示される。
【0090】
<ウレタンポリオールの物性等>
ウレタンポリオールの酸価の上限は、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1mgKOH/g等が例示され、下限は、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1、0mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの酸価は、0~1mgKOH/gが好ましい。
【0091】
本開示において、酸価は、例えば、JIS K0070に準拠する方法により測定される。
【0092】
ウレタンポリオールの水酸基価の上限は、130、120、110、100、90、80、75、50mgKOH/g等が例示され、下限は、120、110、100、90、80、75、50、45mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの水酸基価は、45~130mgKOH/gが好ましい。
【0093】
本開示において、水酸基価は、例えば、JIS K1557-1に準拠する方法により測定される。
【0094】
ウレタンポリオールの重量平均分子量(Mw)の上限は、80000、75000、70000、60000、55000等が例示され、下限は、75000、70000、60000、55000、50000等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの重量平均分子量(Mw)は、50000~80000程度がより好ましい。
【0095】
ウレタンポリオールの数平均分子量(Mn)の上限は、30000、25000、20000、15000等が例示され、下限は、25000、20000、15000、10000等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの数平均分子量(Mn)は、10000~30000程度がより好ましい。
【0096】
ウレタンポリオールの分子量分布(Mw/Mn)の上限は、4.0、3.5、3.0、2.0、1.5等が例示され、下限は、3.5、3.0、2.0、1.5、1.0等が例示される。1つの実施形態において、ウレタンポリオールの分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~4.0が好ましい。
【0097】
ウレタンポリオールは、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる各種公知の方法で製造され得る。ウレタンポリオールを製造する際に用いられる有機溶媒は、後述のもの等が例示される。
【0098】
上記コーティング剤中のウレタンポリオールの含有量の上限は、30、25、20、15、10質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10、5質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のウレタンポリオールの含有量は、5~30質量%が好ましい。
【0099】
上記コーティング剤中の(A)成分の含有量とウレタンポリオールとの質量比((A)成分/ウレタンポリオール)の上限は、3、2.9、2.5、2、1.5、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05等が例示され、下限は、2.9、2.5、2、1.5、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05、0.03等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.03~3が好ましい。
【0100】
<水酸基含有シリコーン変性樹脂(C):(C)成分ともいう>
本開示において、「水酸基含有シリコーン変性樹脂」は、例えば、水酸基含有シリコーン部位を有する樹脂を意味する。
【0101】
水酸基含有シリコーン変性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。水酸基含有シリコーン変性樹脂は、水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂、水酸基含有シリコーン変性ポリエステル樹脂、水酸基含有シリコーン変性ポリエーテル樹脂、水酸基含有シリコーン変性カルビノール樹脂等が例示される。また、上記樹脂部位は、シリコーン鎖の片末端、両末端、及び側鎖のいずれかに導入されていればよい。
【0102】
水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂の市販品は、ZX-028-G((株)T&K TOKA製)、BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製)、サイマックUS-270(東亞合成(株)製)等が例示される。
【0103】
水酸基含有シリコーン変性ポリエステル樹脂又は水酸基含有シリコーン変性ポリエーテル樹脂の市販品は、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-SILCLEAN3720(ビックケミー・ジャパン(株)製)、X-22-4952、KF-6123(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0104】
水酸基含有シリコーン変性カルビノール樹脂の市販品は、X-22-4039、X-22-4015、X-22-4952、X-22-4272、X-22-170BX、X-22-170DX、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、KF-6123、X-22-176F(信越化学工業(株)製)、サイラプレーンFM-4411、サイラプレーンFM-4421、サイラプレーンFM-4425、サイラプレーンFM-0411、サイラプレーンFM-0421、サイラプレーンFM-DA11、サイラプレーンFM-DA21、サイラプレーンFM-DA26(JNC(株)製)等が例示される。
【0105】
上記コーティング剤中の水酸基含有シリコーン変性樹脂の含有量の上限は、3.0、2.5、2.0、1.5、1.0質量%等が例示され、下限は、2.5、2.0、1.5、1.0、0.5質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中の水酸基含有シリコーン変性樹脂の含有量は、0.5~3.0質量%が好ましい。
【0106】
上記コーティング剤中の(A)成分の含有量と水酸基含有シリコーン変性樹脂との質量比((A)成分/水酸基含有シリコーン変性樹脂)の上限は、30、29、25、20、19、17、15、13、10、9、7、5、3等が例示され、下限は、29、25、20、19、17、15、13、10、9、7、5、3、2等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、2~30が好ましい。
【0107】
上記コーティング剤中のウレタンポリオールと水酸基含有シリコーン変性樹脂との質量比(ウレタンポリオール/水酸基含有シリコーン変性樹脂)の上限は、60、59、50、40、30、20、10、9、5、4、2等が例示され、下限は、59、50、40、30、20、10、9、5、4、2、1等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のウレタンポリオールと水酸基含有シリコーン変性樹脂との質量比(ウレタンポリオール/水酸基含有シリコーン変性樹脂)は、1~60が好ましい。
【0108】
<ポリイソシアネートのアロファネート体(D):(D)成分ともいう>
ポリイソシアネートのアロファネート体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートのアロファネート体を製造する際、ポリイソシアネートは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートは上述のもの等が例示される。
【0109】
ポリイソシアネートのアロファネート体は、
下記構造式:
【化1】
[式中、nは、0以上の整数であり、RaAは、アルキル基又はアリール基であり、RaB~RaGはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Raα~Raγはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化2】
(na1は、0以上の整数であり、Ra1~Ra6はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R''' はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRaα~Raγ自身の基である。Ra1~Ra4、R’~R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RaB~RaE、Raα~Raβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0110】
ポリイソシアネートのアロファネート体の市販品は、タケネートD-178NL(三井化学(株)製)、コロネート2770(東ソー(株)製)、コロネート2793(東ソー(株)製)、デュラネートA201H(旭化成(株)製)等が例示される。
【0111】
ポリイソシアネートのアロファネート体の重量平均分子量(Mw)の上限は、3500、3300、3100、3000、2900、2750、2500、2250、2000、1750、1500、1250、1000、900等が例示され、下限は、3300、3100、3000、2900、2750、2500、2250、2000、1750、1500、1250、1000、900、800等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのアロファネート体の重量平均分子量(Mw)は、800~3500が好ましい。
【0112】
ポリイソシアネートのアロファネート体の数平均分子量(Mn)の上限は、3000、2900、2750、2500、2250、2000、1750、1500、1250、1000、900、800等が例示され、下限は、2900、2750、2500、2250、2000、1750、1500、1250、1000、900、800、700等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのアロファネート体の数平均分子量(Mn)は、700~3000が好ましい。
【0113】
ポリイソシアネートのアロファネート体の分子量分布(Mw/Mn)の上限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1等が例示され、下限は、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのアロファネート体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~1.5が好ましい。
【0114】
ポリイソシアネートのアロファネート体のNCO含有率(NCO%)の上限は、30、25、20、15、10質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10、5質量%等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのアロファネート体のNCO含有率(NCO%)は、5~30質量%が好ましい。
【0115】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのアロファネート体の含有量の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2質量%等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のポリイソシアネートのアロファネート体の含有量は、1~99質量%が好ましい。
【0116】
上記コーティング剤中の(A)成分の含有量とポリイソシアネートのアロファネート体との質量比((A)成分/ポリイソシアネートのアロファネート体)の上限は、15、13、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05、0.02等が例示され、下限は、13、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05、0.02、0.01等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.01~15が好ましい。
【0117】
上記コーティング剤中のウレタンポリオールとポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(ウレタンポリオール/ポリイソシアネートのアロファネート体)の上限は、30、29、25、20、19、15、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0.09等が例示され、下限は、29、25、20、19、15、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のウレタンポリオールとポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(ウレタンポリオール/ポリイソシアネートのアロファネート体)は、0.05~30が好ましい。
【0118】
上記コーティング剤中の水酸基含有シリコーン変性樹脂とポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(水酸基含有シリコーン変性樹脂/ポリイソシアネートのアロファネート体)の上限は、3、2、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05、0.01、0.009、0.006等が例示され、下限は、2、1、0.9、0.5、0.1、0.09、0.05、0.01、0.009、0.006、0.005等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中の水酸基含有シリコーン変性樹脂とポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(水酸基含有シリコーン変性樹脂/ポリイソシアネートのアロファネート体)は、0.005~3が好ましい。
【0119】
<ポリイソシアネートのビウレット体(E1):(E1)成分ともいう>
ポリイソシアネートのビウレット体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートのビウレット体を製造する際、ポリイソシアネートは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートは上述のもの等が例示される。
【0120】
ポリイソシアネートのビウレット体は、
下記構造式:
【化3】
[式中、nは、1以上の整数であり、RbA~RbEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rbα~Rbβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化4】
(nb1は、0以上の整数であり、Rb1~Rb5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R'' はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRbα~Rbβ自身の基である。Rb4~Rb5、R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RbD~RbE、Rbβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0121】
ポリイソシアネートのビウレット体の市販品は、デュラネート24A-100、デュラネート22A-75P、デュラネート21S-75E(以上旭化成(株)製)、デスモジュールN3200A(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体)(以上住友バイエルウレタン(株)製)等が例示される。
【0122】
ポリイソシアネートのビウレット体の重量平均分子量(Mw)の上限は、1500、1400、1250、1100、1000、900、750、600等が例示され、下限は、1400、1250、1100、1000、900、750、600、500等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのビウレット体の重量平均分子量(Mw)は、500~1500が好ましい。
【0123】
ポリイソシアネートのビウレット体の数平均分子量(Mn)の上限は、1500、1400、1250、1100、1000、900、750、600等が例示され、下限は、1400、1250、1100、1000、900、750、600、500等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのビウレット体の数平均分子量(Mn)は、500~1500が好ましい。
【0124】
ポリイソシアネートのビウレット体の分子量分布(Mw/Mn)の上限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1等が例示され、下限は、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのビウレット体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~1.5が好ましい。
【0125】
ポリイソシアネートのビウレット体のNCO含有率(NCO%)の上限は、30、25、20、15、10質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10、5質量%等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのビウレット体のNCO含有率(NCO%)は、5~30質量%が好ましい。
【0126】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのビウレット体の含有量の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1質量%等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のポリイソシアネートのビウレット体の含有量は、0~99質量%が好ましい。
【0127】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのビウレット体とポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(ビウレット体/アロファネート体)の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~99が好ましい。
【0128】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのビウレット体と(A)成分の含有量との質量比(ポリイソシアネートのビウレット体/(A)成分)の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~99が好ましい。
【0129】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのビウレット体とウレタンポリオールとの質量比(ポリイソシアネートのビウレット体/ウレタンポリオール)の上限は、20、19、15、10、5、2、1等が例示され、下限は、19、15、10、5、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~20が好ましい。
【0130】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのビウレット体と水酸基含有シリコーン変性樹脂との質量比(ポリイソシアネートのビウレット体/水酸基含有シリコーン変性樹脂)の上限は、200、190、175、150、125、100、90、75、50、25、10、9、5、4、2、1等が例示され、下限は、190、175、150、125、100、90、75、50、25、10、9、5、4、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~200が好ましい。
【0131】
<ポリイソシアネートのイソシアヌレート体(E2):(E2)成分ともいう>
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートのイソシアヌレート体を製造する際、ポリイソシアネートは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートは上述のもの等が例示される。
【0132】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、
下記構造式:
【化5】
[式中、nは、0以上の整数であり、RiA~RiEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Riα~Riβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化6】
(ni1は、0以上の整数であり、Ri1~Ri5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R'' はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRiα~Riβ自身の基である。Ri5、R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RiD~RiE、Riβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0133】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の市販品は、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートMHG-80B(以上旭化成(株)製)、コロネートHXR(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上東ソー(株)製)、タケネートD-127N(水添キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上三井化学(株)製)、VESTANAT T1890/100(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(以上エボニック・ジャパン(株)製)等が例示される。
【0134】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の重量平均分子量(Mw)の上限は、1500、1400、1250、1100、1000、900、750、600等が例示され、下限は、1400、1250、1100、1000、900、750、600、500等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の重量平均分子量(Mw)は、500~1500が好ましい。
【0135】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の数平均分子量(Mn)の上限は、1500、1400、1250、1100、1000、900、750、600等が例示され、下限は、1400、1250、1100、1000、900、750、600、500等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の数平均分子量(Mn)は、500~1500が好ましい。
【0136】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の分子量分布(Mw/Mn)の上限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1等が例示され、下限は、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~1.5が好ましい。
【0137】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体のNCO含有率(NCO%)の上限は、30、25、20、15、10質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10、5質量%等が例示される。1つの実施形態において、ポリイソシアネートのイソシアヌレート体のNCO含有率(NCO%)は、5~30質量%が好ましい。
【0138】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体の含有量の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1質量%等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体の含有量は、1~99質量%が好ましい。
【0139】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体とポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(イソシアヌレート体/アロファネート体)の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体とポリイソシアネートのアロファネート体との質量比(イソシアヌレート体/アロファネート体)は、0~99が好ましい。
【0140】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体と(A)成分の含有量との質量比(ポリイソシアネートのイソシアヌレート体/(A)成分)の上限は、99、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1等が例示され、下限は、95、93.5、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~99が好ましい。
【0141】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体とウレタンポリオールとの質量比(ポリイソシアネートのイソシアヌレート体/ウレタンポリオール)の上限は、20、19、15、10、5、2、1等が例示され、下限は、19、15、10、5、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~20が好ましい。
【0142】
上記コーティング剤中のポリイソシアネートのイソシアヌレート体と水酸基含有シリコーン変性樹脂との質量比(ポリイソシアネートのイソシアヌレート体/水酸基含有シリコーン変性樹脂)の上限は、200、190、175、150、125、100、90、75、50、25、10、9、5、4、2、1等が例示され、下限は、190、175、150、125、100、90、75、50、25、10、9、5、4、2、1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~200が好ましい。
【0143】
<硬化触媒>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は、硬化触媒を含み得る。硬化触媒は単独又は2種以上で含まれ得る。
【0144】
硬化触媒は、有機金属触媒、有機アミン触媒等が例示される。
【0145】
有機金属触媒は、有機典型金属触媒、有機遷移金属触媒等が例示される。
【0146】
有機典型金属触媒は、有機錫触媒、有機ビスマス触媒等が例示される。
【0147】
有機錫触媒は、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等が例示される。
【0148】
有機ビスマス触媒は、オクチル酸ビスマス等が例示される。
【0149】
有機遷移金属触媒は、有機チタン触媒、有機ジルコニウム触媒、有機鉄触媒等が例示される。
【0150】
有機チタン触媒は、チタンエチルアセトアセテート等が例示される。
【0151】
有機ジルコニウム触媒は、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が例示される。
【0152】
有機鉄触媒は、鉄アセチルアセトネート等が例示される。
【0153】
有機アミン触媒は、ジアザビシクロオクタン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミン等が例示される。
【0154】
上記コーティング剤に硬化触媒が含まれる場合、上記コーティング剤中の硬化触媒の含有量の上限は、1、0.9、0.75、0.5、0.25、0.1、0.09、0.05、0.02質量%等が例示され、下限は、0.9、0.75、0.5、0.25、0.1、0.09、0.05、0.02、0.01質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤に硬化触媒が含まれる場合、上記コーティング剤中の硬化触媒の含有量は、0.01~1質量%程度が好ましい。
【0155】
<有機溶媒>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は、有機溶媒を含み得る。有機溶媒は単独又は2種以上で含まれ得る。有機溶媒は、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート及びセロソルブアセテート等のエステル溶媒;ソルベッソ#100及びソルベッソ#150(いずれも商品名。エクソンモービル社製。)等の石油系溶媒;クロロホルム等のハロアルカン溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒等が例示される。これらの中でも本発明のコーティング剤のポットライフの観点よりケトン系の有機溶媒が含まれることが好ましく、ケトン系の有機溶媒の中でもアセチルアセトンが含まれることが好ましい。
【0156】
上記コーティング剤に有機溶媒が含まれる場合、上記コーティング剤中の有機溶剤の含有量の上限は、90、80、70、60、55質量%等が例示され、下限は、85、80、70、60、55、50質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤に有機溶媒が含まれる場合、上記コーティング剤中の有機溶剤の含有量は、50~90質量%程度が好ましい。なお上記コーティング剤に含まれる有機溶媒には、上記水酸基含有シリコーン変性樹脂、上記ポリイソシアネートのアロファネート体、上記硬化触媒に含まれる有機溶媒が含まれていてもよい。
【0157】
<添加剤>
上記コーティング剤は、上記(A)、(B)、(C)、(D)、(E1)、(E2)成分、硬化触媒、有機溶媒以外の剤を添加剤として含み得る。添加剤は、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料、帯電防止剤、金属酸化物微粒子分散体、有機微粒子分散体等が例示される。1つの実施形態において、添加剤の含有量の例としては、上記コーティング剤の5質量%未満程度、1質量%未満程度、0.1質量%未満程度、0.01質量%未満程度、0質量%程度等が例示される。
【0158】
上記コーティング剤は、(A)、(B)、(C)、(D)、並びに(E1)、及び/又は(E2)成分、並びに必要に応じて、硬化触媒、有機溶媒及び/又は添加剤等を各種公知の手段で混合する工程を含む方法等により得られる。
【0159】
上記コーティング剤は、自己修復性コーティング剤として使用され得る。
【0160】
[硬化物]
本開示は、上記コーティング剤の硬化物を提供する。上記硬化物を製造する際の条件は後述のもの等が例示される。
【0161】
[フィルム]
本開示は、上記硬化物を含むフィルムを提供する。
【0162】
基材は各種公知のものが採用される。基材はポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム(ポリメチルメタクリレートフィルム等)、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ABSフィルム、ASフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、環状オレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等が例示される。基材の厚みも特に限定されないが、50~200μm程度が好ましい。また、アンダーコート層の厚みは特に限定されないが、0.1~5μm程度が好ましい。
【0163】
上記フィルムは各種公知の方法で製造される。1つの実施形態において、フィルムの製造方法は、上記コーティング剤を基材の少なくとも片面に塗工する工程(塗工工程)、熱硬化してコーティング剤硬化物層を形成する工程(熱硬化工程)を含む。
【0164】
(塗工工程)
塗工方法は、バーコーター塗工、ワイヤーバー塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。
【0165】
塗工量は特に限定されない。塗工量は、乾燥後の質量が0.1~30g/m程度が好ましく、1~20g/m程度がより好ましい。
【0166】
(熱硬化工程)
乾燥方法は、循風乾燥機等による乾燥が例示される。乾燥条件は120℃で30秒静置等が例示される。
【0167】
フィルムを製造する際、必要に応じて乾燥の後にエージング処理が行われる。エージング処理の条件は、40℃で72時間等が例示される。
【実施例
【0168】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、各実施例及び比較例において、特に説明がない限り、部、%等の数値は質量基準である。
【0169】
コーティング剤の製造
<原料の調製>
〔ウレタンポリオール〕
[樹脂A]
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管を備えた反応容器に、ポリエーテルポリオール(商品名「PTMG650」:三菱ケミカル(株)製)100.0部、トリメチロールプロパン(以下、TMP)23.0部、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名「VESTANAT H12MDI」:エボニック社製、以下、H12MDI)69.9部、並びにメチルエチルケトン183.7部を仕込み、反応系を40℃に設定した。次いで、触媒(商品名「ネオスタンU-830」:日東化成(株)製)を0.16部を仕込み、75℃付近で8時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、表1に記載の物性を有する樹脂Aの溶液(不揮発分50%)を得た。
【0170】
樹脂A以外の樹脂の製造については、原料を下記表に記載のものに変更した以外は樹脂Aの製造と同様に行った。なお、樹脂A~Gの酸価はいずれも0mgKOH/gであった。
【0171】
【表1】
PTMG650:三菱ケミカル(株)製、ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量600~700、水酸基価160~187mgKOH/g
デュラノールT5650E:旭化成(株)製、ポリカーボネートポリオール、数平均分子量500、水酸基価200~250mgKOH/g
PTMG1000:三菱ケミカル(株)製、ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量950~1050、水酸基価107~118mgKOH/g
クラレポリオールP-1010:クラレ(株)製、ポリエステルポリオール(ポリ[(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)-alt-(アジピン酸)])、数平均分子量1000
【0172】
<熱硬化性コーティング剤の調製>
実施例1
樹脂Aを100部、BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製;水酸基含有アクリル変性シリコーン)(固形分濃度25%)を5.7部、コロネート2793(東ソー(株)製;ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体)(固形分濃度100%)を40.7部、デュラネート24A-100(旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(固形分濃度100%))を28.6部、アデカポリエーテルGM-30((株)アデカ製、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物(固形分濃度100%))を25.0部、ジオクチルスズジラウレート(固形分濃度100% 以下、DOTDL)を0.07部、メチルエチルケトン(以下、MEK)を168.5部、及びアセチルアセトン(以下、AcAc)を14.4部をよく混合することによって、固形分濃度38%の熱硬化性コーティング剤を調製した。
【0173】
実施例1以外の実施例及び比較例の熱硬化性コーティング剤は、成分組成を下記表のように変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。なお、熱硬化性コーティング剤の固形分濃度はいずれも38%とした。
【0174】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】

BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製;水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂)(固形分濃度25%)

コロネート2793:東ソー(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(固形分濃度100%)
デュラネート24A-100:旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(固形分濃度100%)
デュラネートTPA100:旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(固形分濃度100%)
コロネートHL:東ソー(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(固形分濃度75%)

アデカポリエーテルGM-30:(株)アデカ製、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド4付加物(固形分濃度100%、水酸基価535~565mgKOH/g、分子量300)
トリメチロールプロパン(水酸基価1254.38mgKOH/g、分子量134.17)
エチレングリコール(水酸基価1807.70mgKOH/g、分子量62.07)
1,4-ブタンジオール(水酸基価1245.01mgKOH/g、分子量90.12)
デュラノール T5650E:旭化成(株)製、ポリカーボネートジオール(水酸基価200~250mgKOH/g、数平均分子量500)
クラレポリオールF-510:(株)クラレ製、ポリエステルポリオール(固形分濃度100%、水酸基価319.5~352.5mgKOH/g、数平均分子量500)
プラクセル303:(株)ダイセル製カプロラクトントリオール(固形分濃度100%、水酸基価530~550mgKOH/g、分子量300)
プラクセル305:(株)ダイセル製カプロラクトントリオール(固形分濃度100%、水酸基価300~310mgKOH/g、分子量500)
プラクセル410:(株)ダイセル製カプロラクトンテトラオール(固形分濃度100%、水酸基価216~232mgKOH/g、分子量1000)
プラクセル312:(株)ダイセル製カプロラクトントリオール(固形分濃度100%、水酸基価130~140mgKOH/g、分子量1250)
PTMG650:三菱ケミカル(株)製、ポリテトラメチレングリコール、(水酸基価160~187mgKOH/g、数平均分子量600~700)
【0175】
<フィルムの作製>
コーティング剤を、市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名コスモシャインA4100、100μm厚)に、乾燥後の塗膜厚が10μmになるように塗工し、120℃で120秒間乾燥させることによって、熱硬化させた。その後、40℃×2日間のエージングを実施し、塗膜を作製した。
【0176】
<硬化物の自己修復性>
フィルム表面を真鍮ブラシで10往復し、傷が消えるまでの時間を計測した。
◎:一瞬で復元
○:10秒以内に復元
△:1分以内に復元
×:復元しない
【0177】
<硬化物の耐摩耗性>
JIS K 7204 プラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法に従って行うテーバー摩耗試験前後のヘイズ値を測定し((株)村上色彩技術研究所、HM-150)、試験前後のヘイズ値の差(ΔH)を算出した。テーバー摩耗試験は、テーバー摩耗試験機(テスター産業(株)製、AB-101テーバー式摩耗試験機)を用いて、荷重500g、回転数60rpm条件で、摩耗輪CS-10Fを100回転させた。
○:ΔH値が1.0~2.4未満
△:ΔH値が2.4以上10未満
×:ΔH値が10以上
【0178】
<硬化物の防汚性>
フィルム表面に油性インク(アスクル(株)製、商品名PERMANENT MAKER)で印を書き、当該印を乾燥した不織布(旭化成(株)製、商品名ベンコットM-3II)で拭き取ることにより評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:拭き取り可能
×:拭き取り不可
【0179】
<硬化物の破断伸度>
JIS K 7204 プラスチック-引張特性の試験方法-の試験条件に従い、硬化物単独の破断伸度の測定を実施した。硬化物の形状は、幅5mm、厚さ10μm、長さ25mmとし、試験速度は200mm/minとした。
破断伸度(%)=100×(L-25)/25
L:硬化物破断時の硬化物長さ
○:150%以上
△:100~149%
×:99%以下
【0180】
<耐スチールウール(SW)性>
フィルム表面に、スチールウール(#0000)を押し当て、500g荷重にて10往復したあと、傷があるか確認した。
○:傷なし
×:傷有り
【0181】
【表3】