(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221109BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20221109BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20221109BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20221109BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20221109BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20221109BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20221109BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/184 Z
H01M50/184 D
H01G11/12
H01G11/80
H01G11/78
H01M50/186
H01M50/197
(21)【出願番号】P 2019139908
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106341(JP,A)
【文献】特開2019-102127(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/183
H01G 11/12
H01G 11/80
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、前記集電体の一方面に設けられた正極、及び前記集電体の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含む複数の電極が、セパレータを介して第1方向に沿って積層されてなる電極積層体と、
前記電極積層体を取り囲むシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記集電体の周縁部に設けられた一次シールと、前記一次シールを覆う二次シールと、を有し、
前記二次シールは、前記第1方向に沿って前記一次シールの端面が積層されてなる第1外側面を覆う第1樹脂部と、前記第1樹脂部の第2外側面を覆う第2樹脂部と、を有し、
前記第1樹脂部は、
前記第1方向に延在し、前記第1外側面を覆う第1本体部と、
前記第1方向における前記第1本体部の一端から前記第1方向と交差する面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在する第1庇部と、
前記第1方向における前記第1本体部の他端から前記面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在する第2庇部と、を有する、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第2樹脂部は、
前記第1方向に延在すると共に前記第1樹脂部の前記第2外側面を覆う第2本体部と、
前記第1方向における前記第2本体部の一端から前記面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在すると共に、前記第1庇部を覆う第3庇部と、
前記第1方向における前記第2本体部の他端から前記面方向において前記電極積層体の前記中心に向かって延在すると共に、前記第2庇部を覆う第4庇部と、を有する、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記二次シールは、前記第2樹脂部の第3外側面を覆う第3樹脂部をさらに有し、
前記第1樹脂部は、前記第2樹脂部及び前記第3樹脂部によって覆われている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
バイポーラ電極を有する複数の電極を準備する第1工程と、
前記複数の電極のそれぞれが有する集電体の周縁部に一次シールを結合する第2工程と、
前記複数の電極を第1方向に積層することによって電極積層体を形成する第3工程と、
前記第1方向に沿って積層される前記一次シールの端面同士を仮接合することによって、当該端面同士からなる第1外側面を形成する第4工程と、
前記第1外側面を覆う二次シールを形成する第5工程と、
を備え、
前記第5工程は、
前記第1方向に延在し、前記第1外側面を覆う第1本体部、前記第1方向における前記第1本体部の一端から前記第1方向と交差する面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在する第1庇部、及び前記第1方向における前記第1本体部の前記一端とは反対側に位置する他端から前記面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在する第2庇部を有する第1樹脂部を形成する第6工程と、
前記第1樹脂部の第2外側面を覆う第2樹脂部を形成する第7工程と、を有する、
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第7工程では、
前記第1方向に延在すると共に前記第1樹脂部の前記第2外側面を覆う第2本体部と、
前記第1方向における前記第2本体部の一端から前記面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在すると共に、前記第1庇部を覆う第3庇部と、
前記第1方向における前記第2本体部の他端から前記面方向において前記電極積層体の中心に向かって延在すると共に、前記第2庇部を覆う第4庇部と、を形成する、請求項4に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記第5工程は、前記第2樹脂部の第3外側面を覆う第3樹脂部を形成する第8工程をさらに有し、
前記第1樹脂部は、前記第2樹脂部及び前記第3樹脂部によって覆われている、請求項4に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。バイポーラ電池は、バイポーラ電極とセパレータとが積層方向に沿って交互に積層された積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に互いに隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体(シール部材)が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールは、例えば車両等のバッテリとして搭載されることがある。この場合、振動等に起因する電解液の漏出を防止する観点から、蓄電モジュールのシール性の向上が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、良好なシール性を示すことができる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、集電体、集電体の一方面に設けられた正極、及び集電体の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含む複数の電極が、セパレータを介して第1方向に沿って積層されてなる電極積層体と、電極積層体を取り囲むシール部材と、を備える。シール部材は、集電体の周縁部に設けられた一次シールと、一次シールを覆う二次シールと、を有し、二次シールは、第1方向に沿って一次シールの端面が積層されてなる第1外側面を覆う第1樹脂部と、第1樹脂部の第2外側面を覆う第2樹脂部と、を有し、第1樹脂部は、第1方向に延在し、第1外側面を覆う第1本体部と、第1方向における第1本体部の一端から第1方向と交差する面方向において電極積層体の中心に向かって延在する第1庇部と、第1方向における第1本体部の他端から面方向において電極積層体の中心に向かって延在する第2庇部と、を有する。
【0007】
この蓄電モジュールでは、電極積層体を取り囲むシール部材は、一次シール及び二次シールを有する。このようにシール部材を複数の部材によって構成することにより、蓄電モジュールのシール性を向上できる。また、二次シールは、第1方向に沿って一次シールの端面が積層されてなる第1外側面を覆う第1本体部と、第1方向における当該第1本体部の両端に位置する第1庇部及び第2庇部とを含む第1樹脂部を有する。このため、第1樹脂部の第1本体部、第1庇部及び第2庇部によって、一次シールが把持されるように固定される。これにより、第1樹脂部の第2外側面を覆う第2樹脂部を形成するとき、電極(具体的には、電極に含まれる集電体、もしくは当該集電体の周縁部に設けられる一次シール)がまくれあがることを防止できる。したがって、上記蓄電モジュールは、良好なシール性を示すことができる。
【0008】
第2樹脂部は、第1方向に延在すると共に第1樹脂部の第2外側面を覆う第2本体部と、第1方向における第2本体部の一端から面方向において電極積層体の中心に向かって延在すると共に、第1庇部を覆う第3庇部と、第1方向における第2本体部の他端から面方向において電極積層体の中心に向かって延在すると共に、第2庇部を覆う第4庇部と、を有してもよい。例えば、第1樹脂部の形成時に一部の電極がまくれ上がることによって、当該一部の電極が第1樹脂部の第1庇部もしくは第2庇部の外側に位置する場合がある。この場合であっても、第2樹脂部の第3庇部もしくは第4庇部によって上記一部の電極を固定することにより、蓄電モジュールのシール性を確保できる。
【0009】
二次シールは、第2樹脂部の第3外側面を覆う第3樹脂部をさらに有し、第1樹脂部は、第2樹脂部及び第3樹脂部によって覆われてもよい。この場合、第2樹脂部及び第3樹脂部によって第1樹脂部を覆うことにより、蓄電モジュールを良好に封止できる。
【0010】
本発明の他の一側面に係る蓄電モジュールは、バイポーラ電極を有する複数の電極を準備する第1工程と、複数の電極のそれぞれが有する集電体の周縁部に一次シールを結合する第2工程と、複数の電極を第1方向に積層することによって電極積層体を形成する第3工程と、第1方向に沿って積層される一次シールの端面同士を仮接合することによって、当該端面同士からなる第1外側面を形成する第4工程と、仮接合された端面を覆う二次シールを形成する第5工程と、を備える。第5工程は、第1方向に延在し、第1外側面を覆う第1本体部、第1方向における第1本体部の一端から第1方向と交差する面方向において電極積層体の中心に向かって延在する第1庇部、及び第1方向における第1本体部の一端とは反対側に位置する他端から面方向において電極積層体の中心に向かって延在する第2庇部を有する第1樹脂部を形成する第6工程と、第1樹脂部の第2外側面を覆う第2樹脂部を形成する第7工程と、を有する。
【0011】
この蓄電モジュールの製造方法では、一次シール及び二次シールを形成している。このように電極積層体を複数の部材によって封止することにより、蓄電モジュールのシール性を向上できる。また、二次シールを形成する第5工程は、仮接合される一次シールの端面同士からなる第1外側面を覆う第1本体部と、第1方向における当該第1本体部の両端に位置する第1庇部及び第2庇部とを含む第1樹脂部を形成する第6工程を有する。これにより、第1樹脂部の第1本体部、第1庇部及び第2庇部によって、一次シールが把持されるように固定される。このため、第7工程にて第2樹脂部を形成するとき、電極(具体的には、電極に含まれる集電体、もしくは当該集電体の周縁部に設けられる一次シール)がまくれあがることを防止できる。したがって、上記製造方法によって製造された蓄電モジュールは、良好なシール性を示すことができる。
【0012】
上記第7工程では、第1方向に延在すると共に第1樹脂部の第2外側面を覆う第2本体部と、第1方向における第2本体部の一端から面方向において電極積層体の中心に向かって延在すると共に、第1庇部を覆う第3庇部と、第1方向における第2本体部の他端から面方向において電極積層体の中心に向かって延在すると共に、第2庇部を覆う第4庇部と、を形成してもよい。例えば、第1樹脂部を形成する工程中に一部の電極がまくれ上がることによって、当該一部の電極が第1樹脂部の第1庇部もしくは第2庇部の外側に位置する場合がある。この場合であっても、第2樹脂部の第3庇部もしくは第4庇部によって上記一部の電極を固定することにより、蓄電モジュールのシール性を確保できる。
【0013】
上記第5工程は、第2樹脂部の第3外側面を覆う第3樹脂部を形成する第8工程をさらに有し、第1樹脂部は、第2樹脂部及び第3樹脂部によって覆われてもよい。この場合、第2樹脂部及び第3樹脂部によって第1樹脂部を覆うことにより、蓄電モジュールを良好に封止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、良好なシール性を示すことができる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、蓄電モジュールを含む蓄電装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、蓄電モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、二次シールを形成する工程を説明するための概略拡大図である。
【
図5】
図5は、二次シールを形成する工程を説明するための概略拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、第1比較例に係る二次シールを形成する工程を説明するための概略要部断面図であり、
図6(b),(c)のそれぞれは、第1比較例に係る二次シールの形成後の状態を示す概略要部断面図である。
【
図7】
図7(a)は、第2比較例に係る第1樹脂部を形成する工程を説明するための概略要部断面図であり、
図7(b)は、第2比較例に係る第1樹脂部の形成後の状態を示す概略要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
まず、
図1を参照しながら、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法によって製造される蓄電モジュールを含む蓄電装置の構成を説明する。
図1は、蓄電モジュールを含む蓄電装置の概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対して拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。以下では、蓄電モジュール4が積層する方向を単に「積層方向D(第1方向)」とする。また、積層方向Dに交差もしくは直交する方向を面方向とする。面方向は、例えば互いに直交するX軸方向とY軸方向とを有する。本実施形態では、「積層方向Dから見る」は、平面視に相当する。
【0018】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4つ)の導電構造体5とを含む。蓄電モジュール4は、例えばバイポーラ電池であり、積層方向Dから見て略矩形状を呈している。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、蓄電モジュール4としてニッケル水素二次電池を例示する。
【0019】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電構造体5を介して電気的に接続されている。すなわち、隣り合う蓄電モジュール4の間には、導電構造体5が設けられている。
図1では、導電構造体5は、積層方向Dの両端に位置する蓄電モジュール4の外側にも配置されているが、これに限られない。積層方向Dの一端(本実施形態では上端)に位置する導電構造体5または蓄電モジュール4には、負極端子6が接続されている。積層方向Dの他端(本実施形態では下端)に位置する導電構造体5または蓄電モジュール4には、正極端子7が接続されている。負極端子6及び正極端子7のそれぞれは、例えば面方向に延在している。このような負極端子6及び正極端子7を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施できる。
【0020】
導電構造体5は、蓄電装置1における放熱板としても機能し得る。導電構造体5は、例えば蓄電モジュール4において発生した熱を放出し得る。導電構造体5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば方向D3に沿って延在している。これらの流路5aを空気等の冷媒が通過することによって、蓄電モジュール4にて発生した熱を効率的に外部に放出できる。
図1の例では、平面視にて、導電構造体5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。しかし、放熱性の向上の観点から、平面視にて、導電構造体5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じでもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0021】
拘束部材3は、蓄電モジュール4を積層方向Dに拘束する部材であり、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とを有する。このため、モジュール積層体2には、導電構造体5を介して拘束部材3の拘束力が印加される。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4及び導電構造体5の面積よりも一回り大きい面積を有する金属板であり、略矩形状を呈する。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電構造体5との間(もしくは、エンドプレート8と蓄電モジュール4との間)が絶縁されている。
【0022】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電構造体5は、エンドプレート8によって挟持され、且つ、モジュール積層体2としてユニット化される。また、ユニット化されたモジュール積層体2に対しては、積層方向Dに沿った拘束力が付加される。
【0023】
次に、蓄電モジュール4の構成について更に詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、積層方向Dに積層された複数の電極Eを含む電極積層体11と、積層方向Dから見て電極積層体11を取り囲むシール部材12とを備えている。電極積層体11とシール部材12との間は封止(シール)される。
【0024】
電極積層体11は、セパレータ13を介して積層方向Dに積層された複数の電極Eを含む。複数の電極Eは、バイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。バイポーラ電極14は、集電体15、集電体15の一方面15aに設けられた正極16、集電体15に含まれると共に積層方向Dにおいて一方面15aの反対側に位置する他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が一方面15a上に塗工されることによって形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が他方面15b上に塗工されることによって形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0025】
電極積層体11において、積層方向Dの一端には負極終端電極18が配置され、積層方向Dの他端には正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、集電体15、及び集電体15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の集電体15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電構造体5が接触している。正極終端電極19は、集電体15、及び集電体15の一方面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19の集電体15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電構造体5が接触している。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0026】
集電体15は、面方向に延在する板形状を呈する導電体であり、可撓性を示す。集電体15は、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。ステンレス鋼板としては、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316等が挙げられる。集電体15の周縁部15c(バイポーラ電極14の周縁部)は、矩形枠状を呈しており、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。水酸化ニッケルには、コバルト酸化物等が被覆されてもよい。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、集電体15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、集電体15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0027】
セパレータ13は、正極16と負極17とを隔離するための部材であり、正極16と負極17との間に配置される。セパレータ13は、例えばシート形状を呈する。セパレータ13は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ13は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状でもよい。
【0028】
シール部材12は、電極積層体11を取り囲むように構成される樹脂部材である。シール部材12は、集電体15の周縁部15cを包囲するように設けられる。シール部材12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の枠状に形成されている。シール部材12を構成する樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。シール部材12は、周縁部15cに設けられた一次シール21と、一次シール21を覆う二次シール22とを備えている。
【0029】
一次シール21は、各電極に結合する樹脂部材であり、所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有する。一次シール21は、積層方向Dから見て矩形枠状を呈している。一次シール21は、例えば超音波又は熱により、周縁部15cの全周にわたって連続的に溶着されている。一次シール21は、例えば、集電体15の他方面15b側の周縁部15cに設けられている。負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15a側の周縁部15cに、一次シール21が設けられる。正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15a側の周縁部15cと他方面15b側の周縁部15cとの両方に、一次シール21が設けられる。一次シール21は、積層方向Dから見て、正極16及び負極17から離間して設けられている。積層方向Dで隣り合う一次シール21の周縁部21a同士は、互いに当接してもよい。一次シール21は、樹脂シートを打ち抜き加工することによって形成されてもよいし、複数の樹脂シートを枠状に配置して形成されてもよいし、金型を用いた射出成形によって形成されてもよい。
【0030】
平面視における一次シール21の周縁部21aは、面方向において集電体15よりも外側に位置する領域の少なくとも一部であり、面方向において最も外側に位置する端面21bを有する。周縁部21aの少なくとも一部は、二次シール22に保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う一次シール21同士は、互いに離間してもよく、互いに接してもよい。隣り合う一次シール21同士が互いに接する場合、当該一次シール21の周縁部21a同士が溶着されてもよい。本実施形態では、積層される全ての一次シール21の周縁部21aが互いに溶着されており、このため、積層方向Dに沿って一次シール21の端面21bが積層されてなる外側面21s(第1外側面)が形成される。また、周縁部21a同士が溶着されることによって、平面視にて略矩形枠状を呈し、且つ、積層方向Dに沿って延在する端面溶着層が形成される。外側面21sは、積層方向Dに沿って延在する外周面であり、端面溶着層の一部である。
【0031】
二次シール22は、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成する樹脂部材であり、電極積層体11及び一次シール21の外側に設けられる。二次シール22は、例えば、後述するように樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dにおいて電極積層体11の全長にわたって延在している。二次シール22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形筒状部材である。二次シール22は、一次シール21の外側面21sに接合され、且つ、外側面21sを覆う。本実施形態では、二次シール22は、積層方向Dに延在する一次シール21の外側面21sを完全に覆っている。二次シール22は、例えば、射出成形時の熱によって一次シール21の外側面21sに溶着されている。一次シール21を構成する樹脂と二次シール22を構成する樹脂とは、互いに相溶可能である。一次シール21は例えばPPからなり、二次シール22は例えば変性PPEからなる。
【0032】
二次シール22は、積層方向Dに沿って積層される一次シール21から構成される外側面21sを覆う第1樹脂部23と、第1樹脂部23の外側面23s(第2外側面)を取り囲む第2樹脂部24とを備える。第1樹脂部23は、一次シール21が結合された電極積層体11を仮固定する部分であり、例えば矩形筒形状を呈する。このため、第1樹脂部23は、平面視にて矩形枠形状を呈する。第1樹脂部23は、一次シール21と第2樹脂部24との間に配置されている。第2樹脂部24は、蓄電モジュールの外壁となる部分であり、例えば矩形筒形状を呈する。このため、第2樹脂部24もまた、平面視にて矩形枠形状を呈する。第1樹脂部23を構成する樹脂と、第2樹脂部24を構成する樹脂とは、互いに同一であり、例えば変性PPEである。
【0033】
第1樹脂部23は、積層方向Dに延在する本体部23a(第1本体部)と、積層方向Dにおける本体部23aの一端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部23b(第1庇部)と、積層方向Dにおける本体部23aの他端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部23c(第2庇部)とを有する。本体部23aは、一次シール21から構成される外側面21sを覆うと共に、隣り合う一次シール21間を封止する部分である。本体部23aの一端は、積層方向Dにおいて正極終端電極19側の端に相当し、本体部23aの他端は、積層方向Dにおいて負極終端電極18側の端に相当する。本体部23aの一端と、当該一端の反対側に位置する他端とのそれぞれは、積層方向Dにおいて一次シール21よりも外側に位置する。
【0034】
庇部23bは、例えば負極終端電極18に結合する一次シール21の周縁部21aを覆う部分であり、平面視にて略矩形枠形状を呈する。庇部23bは、面方向に沿って延在している。庇部23cは、例えば正極終端電極19に結合する一次シール21の周縁部21aを覆う部分であり、平面視にて略矩形枠形状を呈する。庇部23cは、面方向に沿って延在している。本実施形態では、庇部23b,23cのそれぞれは、平面視にて正極16及び負極17(より具体的には、正極活物質の塗工領域及び負極活物質の塗工領域)と重なっていないが、これに限られない。庇部23b,23cのそれぞれは、平面視にて集電体15と重ならなくてもよいし、重なってもよい。
【0035】
第2樹脂部24は、積層方向Dに延在する本体部24a(第2本体部)と、積層方向Dにおける本体部24aの一端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部24b(第3庇部)と、積層方向Dにおける本体部24aの他端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部24c(第4庇部)とを有する。本体部24aは、第1樹脂部23の外側面23sを覆う部分である。本体部24aの一端は、積層方向Dにおいて正極終端電極19側の端に相当し、本体部24aの他端は、積層方向Dにおいて負極終端電極18側の端に相当する。本体部24aの一端と、当該一端の反対側に位置する他端とのそれぞれは、積層方向Dにおいて第1樹脂部23よりも外側に位置する。
【0036】
庇部24bは、庇部23bを覆う部分であり、平面視にて略矩形枠形状を呈する。庇部24bは、面方向に沿って延在している。庇部24cは、庇部23cを覆う部分であり、面方向に延在する略矩形枠形状を呈する。庇部24cは、面方向に沿って延在している。本実施形態では、庇部24b,24cのそれぞれもまた、平面視にて正極16及び負極17(より具体的には、正極活物質の塗工領域及び負極活物質の塗工領域)と重なっていないが、これに限られない。庇部24b,24cのそれぞれは、平面視にて集電体15と重なってもよいし、重ならなくてもよい。
【0037】
電極積層体11内には複数の内部空間Vが設けられている。各内部空間Vは、隣り合う電極E間に設けられる。内部空間Vは、積層方向Dで隣り合う集電体15の間において、当該集電体15とシール部材12とにより気密及び水密に仕切られた空間である。この内部空間Vには、例えば電解液(不図示)が収容されている。電解液は、例えば水溶液系の電解液(具体例としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、もしくはこれらの混合液等)である。セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。電解液は強アルカリ性であるので、シール部材12は、耐アルカリ性を示す樹脂材料により構成されている。なお、シール部材12には、内部空間Vと蓄電モジュール4の外部とをつなぐ連通孔が設けられる。
【0038】
続いて、
図3~
図5を参照しながら、上述した蓄電モジュール4の製造方法の一例について説明する。
図3は、蓄電モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4及び
図5は、二次シールを形成する工程を説明するための概略拡大図である。
図4及び
図5においては、説明のため、各一次シール21の端面からなる外側面21sが厚みを有する。
【0039】
図3に示されるように、バイポーラ電極14を含む複数の電極Eを準備する(第1工程S1)。第1工程S1では、バイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを準備する。
【0040】
次に、複数の電極Eのそれぞれが有する集電体15の周縁部15cに一次シール21を結合する(第2工程S2)。第2工程S2では、バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19に含まれる集電体15の周縁部15cに、一次シール21を結合する。これにより、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19のそれぞれに対して一次シール21が結合する。
【0041】
次に、一次シール21が結合された複数の電極Eを積層方向Dに積層することによって電極積層体11を形成する(第3工程S3)。これにより、負極終端電極18、バイポーラ電極14、及び正極終端電極19が、積層方向Dに積層される。このとき、隣り合う電極Eの間にセパレータ13が配置される。加えて、各一次シール21もまた、積層方向Dに積層される。
【0042】
次に、積層される一次シール21の端面21b同士を仮接合することによって、端面21b同士からなる外側面21sを形成する(第4工程S4)。第4工程S4では、例えば、電極積層体11を積層方向Dにおいて固定した状態にて、各一次シール21の端面21bに、熱板を押し付ける。熱板は、積層方向Dに積層する一次シール21の端面21bを同時に押圧及び加熱する。これにより、端面21b及びその周辺(すなわち、周縁部21aの一部)が溶融し、溶融した部分が変形する。そして、隣り合う一次シール21の端面21b同士が仮接合され、外側面21sを含む端面溶着層が形成される。このとき、複数の電極Eもまた仮固定される。積層方向Dにおいて両端に位置する一次シール21は、負極終端電極18に接合する一次シール、及び、正極終端電極19に接合する一次シールに相当する。
【0043】
次に、一次シール21の外側面21sを覆う二次シール22を形成する(第5工程S5)。第5工程S5は、一次シール21の外側面21sを覆う第1樹脂部23を形成する工程(第6工程)と、第1樹脂部23を覆う第2樹脂部24を形成する工程(第7工程)とを有する。第5工程S5後、シール部材12が形成される。
【0044】
第1樹脂部23を形成する工程では、例えば
図4に示されるように、金型40を用いた射出成形によって第1樹脂部23を形成する。金型40は、積層方向Dにおける一方側に位置する上型41と、積層方向Dにおける他方側に位置する下型42とを有する。上型41と下型42とは、積層方向Dにおいて互いに反対側に位置する。例えば、上型41は負極終端電極に結合する一次シール21に接触し、下型42は、正極終端電極に結合する一次シール21に接触する。上型41と下型42とが組み合わさったとき、一次シール21の外側には空間FS1が画成される。空間FS1は、平面視にて一次シール21の外側面21sを取り囲むように画成されている。空間FS1は、例えば、一次シール21の外側面21sと同様に積層方向Dに延在する第1部分と、積層方向Dにおける当該第1部分の一端から、面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する第2部分と、積層方向Dにおいて上記第1部分の上記一端に対して反対側に位置する他端から、面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する第3部分とを有する。第2部分は、積層方向Dにおいて電極積層体11の一端に位置する一次シール21の周縁部21aの少なくとも一部に接する。第3部分は、積層方向Dにおいて電極積層体11の一端とは反対側に位置する他端に位置する一次シール21の周縁部21aの少なくとも一部に接する。空間FS1には、例えば、各一次シール21の周縁部21aのみが露出しているが、これに限られない。
【0045】
第1樹脂部23を形成する工程では、上型41と下型42との隙間である射出口43から空間FS1に対して、第1樹脂部23を構成する樹脂を導入する。当該樹脂が空間FS1に隙間なく導入された後に硬化することによって、空間FS1の形状に沿った第1樹脂部23が形成される。すなわち、積層方向Dに延在し、一次シール21の外側面21sを覆う本体部23a、積層方向Dにおける本体部23aの一端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部23b、及び積層方向Dにおける本体部23aの一端と反対側に位置する他端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部23cを有する第1樹脂部23を形成する。第1樹脂部23を形成する工程後、少なくとも一次シール21の外側面21sは第1樹脂部23によって覆われる。本実施形態では、外側面21sに加えて、電極積層体11の両端に位置する電極Eに結合した一次シール21の周縁部21aもまた、第1樹脂部23によって覆われる。
【0046】
第2樹脂部24を形成する工程では、例えば
図5に示されるように、金型50を用いた射出成形によって第2樹脂部24を形成する。金型50は、積層方向Dにおける一方側に位置する上型51と、積層方向Dにおける他方側に位置する下型52とを有する。上型51と下型52とは、積層方向Dにおいて互いに反対側に位置する。例えば、上型51は負極終端電極に結合する一次シール21に接触し、下型52は、正極終端電極に結合する一次シール21に接触する。第1樹脂部23が設けられた電極積層体11を収容した状態にて上型51と下型52とが組み合わさったとき、第1樹脂部23の周囲には空間FS2が画成される。空間FS2は、第1樹脂部23を取り囲むように画成されている。空間FS2は、第1樹脂部23と同様に積層方向Dに延在する第4部分と、積層方向Dにおける当該第4部分の一端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する第5部分と、積層方向Dにおける上記第4部分の上記一端に対して反対側に位置する他端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する第6部分とを有する。第5部分は、積層方向Dにおいて電極積層体11の一端に位置する一次シール21と、庇部23bとに接する。第6部分は、積層方向Dにおいて電極積層体11の一端とは反対側に位置する他端に位置する一次シール21、庇部23cとに接する。このため、空間FS2には、第1樹脂部23の全体と、一次シール21の一部とが露出している。
【0047】
第2樹脂部24を形成する工程では、上型51と下型52との隙間である射出口53から空間FS2に対して、第2樹脂部24を構成する樹脂を導入する。当該樹脂が空間FS2に隙間なく導入された後、当該樹脂が硬化することによって、空間FS2の形状に沿った第2樹脂部24が形成される。すなわち、積層方向Dに延在すると共に第1樹脂部23の外側面23sを覆う本体部24a、積層方向Dにおける本体部24aの一端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在する庇部24b、及び積層方向Dにおける本体部24aの一端の反対側に位置する他端から面方向において中心に向かって延在する庇部24cを有する第2樹脂部24を形成する。第2樹脂部24を形成する工程後、第1樹脂部23は第2樹脂部24によって覆われる。
【0048】
工程S5後、各内部空間V内に電解液を注入する工程等を実施することによって、蓄電モジュール4が製造される。
【0049】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法によって製造された蓄電モジュール4によって奏される作用効果について、以下に示す比較例を用いながら説明する。
図6(a)は、第1比較例に係る二次シールを形成する工程を説明するための概略要部断面図であり、
図6(b),(c)のそれぞれは、第1比較例に係る二次シールの形成後の状態を示す概略要部断面図である。
図7(a)は、第2比較例に係る第1樹脂部を形成する工程を説明するための概略要部断面図であり、
図7(b)は、第2比較例に係る第1樹脂部の形成後の状態を示す概略要部断面図である。
【0050】
第1比較例においては、
図6(a),(b)に示されるように、二次シール122は、1回の射出成形によって成形される。この場合、二次シール122を成形するときに射出された樹脂によって、電極積層体11に含まれる一部の一次シール21が剥がれることによって、当該一次シール21が結合する電極がまくれ上がることがある。これにより、例えば
図6(b)に示されるように、一部の一次シール21(及びそれに結合する電極)が二次シール122の外側に位置してしまうことがある。したがって、蓄電モジュールのシール性が不十分になるおそれがある。
【0051】
また、第1比較例のように二次シール122を射出成形するとき、一次シール21を構成する樹脂が溶融することがある。この溶融した樹脂が二次シール122側に流れ込むことが、二次シール122を構成する樹脂にクラック(割れ)を生じさせる原因となる。この場合、
図6(c)に示されるように、二次シール122の一部に割れ122kが発生し、シール部材の耐圧強度が低下してしまう。
【0052】
ここで、電極のまくれ上がりは、例えば、金型の縁、もしくは電極と一次シールとの界面にて発生する傾向にある。このため第2比較例では、
図7(a)に示されるように、積層方向における両端に位置する一次シール21を金型140の上型141及び下型142にて押さえつけた状態にて、第1樹脂部123を射出成形する手法が採用されている。この手法を採用する場合、第1樹脂部123の形成時においては、一次シール21の剥がれ、及びそれに伴う電極のまくれあがりを防止できる。しかしながら、第1樹脂部123は一次シール21の外側面21s上にのみ位置することとなる。このため、第1樹脂部123による一次シール21の固定は不十分な傾向にある。よって、第2樹脂部を形成するときに、一次シール21の一部が剥がれ、これにより一部の電極Eがまくれ上がってしまうことがある。したがって、第2比較例においても、蓄電モジュールのシール性が不十分になるおそれがある。
【0053】
これに対して、本実施形態に係る製造方法によって製造された蓄電モジュール4によれば、電極積層体11を取り囲むシール部材12は、一次シール21及び二次シール22を有する。このようにシール部材12を複数の部材によって構成することにより、蓄電モジュール4のシール性を向上できる。また、二次シール22は、一次シール21の外側面21sを覆う本体部23aと、積層方向Dにおける本体部23aの両端に位置する庇部23b,23cとを含む第1樹脂部23を有する。加えて、二次シール22は、第1樹脂部23を取り囲む第2樹脂部24を有する。このため、第1樹脂部23の本体部23a及び庇部23b,23cによって、一次シール21が把持されるように固定される。これにより、第2樹脂部24の射出成形時に、一次シール21、並びに一次シール21が結合する電極Eがまくれあがることを防止できる。したがって、蓄電モジュール4は、良好なシール性を示すことができる。
【0054】
また本実施形態では、第1樹脂部23は、第2樹脂部24と比較して顕著に小さい。よって、上記第1比較例における二次シール122(
図6(a),(b)を参照)を射出成形する際の樹脂の充填圧力と比較して、第1樹脂部23を射出成形する際の樹脂の充填圧力を顕著に小さく設定できる。これにより、第1樹脂部23を形成する樹脂が一次シール21及び電極Eに噴射された場合であっても、一次シール21は剥がれにくく、電極Eはめくり上がりにくい。
【0055】
加えて本実施形態では、第1樹脂部23を構成する樹脂と、第2樹脂部24を構成する樹脂とは、互いに同一である。このため、第2樹脂部24の射出成形時に生じる熱によって第1樹脂部23を構成する樹脂が第2樹脂部24へ溶け込んだ場合であっても、第2樹脂部24におけるクラックの発生を抑制できる。
【0056】
さらには本実施形態によれば、仮に第1樹脂部23の形成時に電極Eのまくれ上がりが発生した場合、まくれ上がった電極Eは、第1樹脂部23によって固定される。この状態にて第2樹脂部24を形成することによって、まくれ上がった電極Eもシール部材12によって強固に固定できる。したがって、一部の電極Eがまくれ上がった場合であっても、蓄電モジュール4のシール性を確保できる。また、本実施形態によれば、仮に第1樹脂部23に割れが発生した場合であっても、第1樹脂部23は第2樹脂部24によって覆われる。これにより、シール部材12の耐圧強度を確保できる。
【0057】
本実施形態では、第2樹脂部24は、積層方向Dに延在すると共に第1樹脂部23の外側面23sを覆う本体部24aと、積層方向Dにおける本体部24aの一端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在すると共に、庇部23bを覆う庇部24bと、積層方向Dにおける本体部24aの他端から面方向において電極積層体11の中心に向かって延在すると共に、庇部23cを覆う庇部24cと、を有する。例えば、第1樹脂部23の形成時に一部の電極Eがまくれ上がることによって、当該一部の電極Eが第1樹脂部23の庇部23bもしくは庇部23cの外側に位置する場合がある。この場合であっても、第2樹脂部24の庇部24bもしくは庇部24cによって上記一部の電極Eを固定することにより、蓄電モジュール4のシール性を良好に確保できる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、隣り合う一次シールの端面同士が溶着されているが、これに限られない。積層される複数の一次シールは、互いに溶着されなくてもよい。すなわち、一次シールによって端面溶着層及び外側面が形成されなくてもよい。もしくは、積層される複数の一次シールのうち一部のみが溶着されてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、第2樹脂部は第1樹脂部を完全に覆っているが、これに限られない。例えば、第1樹脂部の一部は第2樹脂部から露出してもよい。第1樹脂部の一部が第2樹脂部から露出する場合、第1樹脂部の庇部の一部が露出してもよい。この場合、平面視にて、第1樹脂部の庇部の内周面が、第2樹脂部から露出してもよい。なお、第1樹脂部の庇部の内周面が第2樹脂部から露出する場合、第1樹脂部の庇部の内周面と、第2樹脂部の庇部の内周面とは、互いに揃ってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、二次シールは、第1及び第2樹脂部のみを有しているが、これに限られない。例えば、二次シールは、第1及び第2樹脂部に加えて、第2樹脂部の外側面を封止する第3樹脂部を有してもよい。この場合、二次シールを形成する工程は、第1及び第2樹脂部を形成する工程に加えて、第2樹脂部の外側面(第3外側面)を覆う第3樹脂部を形成する工程(第8工程)を有する。二次シールが第3樹脂部を有する場合、第1樹脂部は、第2樹脂部及び第3樹脂部によって覆われてもよい。例えば、第2樹脂部は、第1樹脂部の外側面を覆う本体部と、第1樹脂部における一方の庇部(第1庇部)を覆う庇部(第3庇部)とを有してもよい。そして、第3樹脂部は、第2樹脂部の外側面を覆う本体部と、第1樹脂部における他方の庇部(第2庇部)を覆う庇部(第5庇部)とを有してもよい。ここで、第2樹脂部が有する庇部と、第3樹脂部が有する庇部とは、第1樹脂部の庇部を完全に覆ってもよいが、これに限られない。このように第1樹脂部を複数の樹脂部によって覆うことによって、蓄電モジュールを良好に封止できる。
【0061】
上記実施形態では、上型と下型との隙間が射出口に相当するが、これに限られない。例えば、射出口は、上型及び下型の一方に設けられてもよい。この場合、第1樹脂部を形成するための金型においては上型に射出口が設けられ、第2樹脂部を形成するための金型においては下型に射出口が設けられてもよい。
【0062】
上記実施形態では、一次シールは単層構造を呈しているが、これに限られない。一次シールは、積層構造を呈してもよい。この場合、一次シールは、単一の枠状部材を折りたたむことによって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、12…シール部材、14…バイポーラ電極、15…集電体、15c…周縁部、21…一次シール、21s…外側面(第1外側面)、22…二次シール、23…第1樹脂部、23a…本体部(第1本体部)、23b…庇部(第1庇部)、23c…庇部(第2庇部)、23s…外側面(第2外側面)、24…第2樹脂部、24a…本体部(第2本体部)、24b…庇部(第3庇部)、24c…庇部(第4庇部)、D…積層方向(第1方向)、E…電極、V…内部空間。