IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図1
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図2
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図3
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図4
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図5
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図6
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図7
  • 特許-ワイヤレス給電装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20221109BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20221109BHJP
   H04M 1/11 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H02J50/10
B60R11/02 T
H02J7/00 301B
H02J7/00 301D
H02J50/80
H04M1/11 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019141307
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021027613
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
(72)【発明者】
【氏名】菅藤 徹
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-067532(JP,A)
【文献】特開2009-296780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60R 9/00 - 11/06
H04M 1/02 - 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる保持壁面を有する固定保持部と、
端面を前記保持壁面に向けるカバーと、
前記カバーの下方に形成され、前記保持壁面と前記カバーの端面との隙間を介して外部に連絡する収容空間と、
前記収容空間に配置され、前記保持壁面と前記カバーの端面とをむすぶ幅方向において、第1位置と、前記第1位置よりも前記保持壁面から遠い第2位置と、の間を位置変化可能である可動保持部と、
前記固定保持部または前記可動保持部に取付けられている送電コイルと、を具備し、
前記保持壁面と前記カバーの端面との隙間にモバイル端末の上側部分を収容し、前記可動保持部で前記モバイル端末の底部分を支持し、
前記カバーは、前記端面を有し前記幅方向に位置変化可能であり前記保持壁面に近づく方向に付勢される可動カバー部を有する、ワイヤレス給電装置。
【請求項2】
前記可動保持部は傾斜壁を有し、
前記傾斜壁の下端部と前記保持壁面との前記幅方向の距離は、前記傾斜壁の上端部と前記保持壁面との前記幅方向の距離よりも大きい、請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項3】
上下方向に延びる保持壁面を有する固定保持部と、
端面を前記保持壁面に向けるカバーと、
前記カバーの下方に形成され、前記保持壁面と前記カバーの端面との隙間を介して外部に連絡する収容空間と、
前記収容空間に配置され、前記保持壁面と前記カバーの端面とをむすぶ幅方向において、第1位置と、前記第1位置よりも前記保持壁面から遠い第2位置と、の間を位置変化可能である可動保持部と、
前記固定保持部または前記可動保持部に取付けられている送電コイルと、を具備し、
前記保持壁面と前記カバーの端面との隙間にモバイル端末の上側部分を収容し、前記可動保持部で前記モバイル端末の底部分を支持し、
前記可動保持部は傾斜壁を有し、
前記傾斜壁の下端部と前記保持壁面との前記幅方向の距離は、前記傾斜壁の上端部と前記保持壁面との前記幅方向の距離よりも大きい、ワイヤレス給電装置。
【請求項4】
前記傾斜壁の傾斜角度は可変し、
前記傾斜壁は立ち上がる方向に向けて付勢される、請求項2または請求項3に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項5】
さらに、前記第1位置から前記第2位置に向けて位置変化した前記可動保持部を前記第1位置に戻す、戻し機構を具備する、請求項1~請求項4の何れか一項に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項6】
車両に搭載され、
請求項1~請求項5の何れか一項に記載のワイヤレス給電装置と、
駐車時に前記可動保持部に前記モバイル端末がある場合に、乗員に注意を喚起する警告装置と、を有する、車載用ワイヤレス給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル端末をワイヤレス給電するためのワイヤレス給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレット端末、携帯電話等に代表されるモバイル端末に近距離でワイヤレス給電する技術が提案されている。また、モバイル端末を保持するためのホルダに、ワイヤレス給電機能を付与したワイヤレス給電装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種のワイヤレス給電装置では、磁界を発生する送電コイルをモバイル端末保持用のホルダに設け、当該送電コイルで発生した磁界をモバイル端末に内蔵されている受電コイルで受けて電気を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-88092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に紹介されているワイヤレス給電装置は、モバイル端末を載置する載置面を有する。特許文献1の図1には、ワイヤレス給電装置の載置面が略水平方向に配置され、モバイル端末が当該載置面上に平置きされている様子が図示されている。
【0005】
このような平置き型のワイヤレス給電装置は、載置面の裏側に設けられた送電コイルと、モバイル端末との位置関係をコントロールし易い利点を有する。しかしその反面、モバイル端末を平置きすることによる問題もある。
【0006】
一般的なモバイル端末において、受電コイルは画面の裏側に設けられる。したがってモバイル端末は、上記の平置き型のワイヤレス給電装置の載置面上で、画面を上に向ける。画面を上に向けることで、モバイル端末の画面全体が顕わになり、画面に表示される情報もまた顕わになるため、例えば平置き型のワイヤレス給電装置を車両に搭載する場合には、画面に表示される情報にドライバーの視線が奪われる虞がある。
【0007】
また、モバイル端末を上記のように平置きすると、画面に表示される情報が他人にも見えてしまうため、個々のユーザーのプライバシーを保護し難くなる場合もある。
【0008】
平置き型のワイヤレス給電装置における載置台を蓋付の箱型にし、モバイル端末自体を箱の内部に収納すれば、モバイル端末の画面を隠すことができ、個々のユーザーのプライバシーの保護を図ることも可能になると考えられる。
しかしこの場合には、モバイル端末がユーザーの目に入らない所におかれるために、ユーザーがモバイル端末を車両室内に置き忘れる等の弊害が生じ得る。
このように、従来の平置き型のワイヤレス給電装置は、使い勝手の良いものとは言い難かった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、使い勝手の良い、モバイル端末用のワイヤレス給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワイヤレス給電装置は、
上下方向に延びる保持壁面を有する固定保持部と、
端面を前記保持壁面に向けるカバーと、
前記カバーの下方に形成され、前記保持壁面と前記カバーの端面との隙間を介して外部に連絡する収容空間と、
前記収容空間に配置され、前記保持壁面と前記カバーの端面とをむすぶ幅方向において、第1位置と、前記第1位置よりも前記保持壁面から遠い第2位置と、の間を位置変化可能である可動保持部と、
前記固定保持部または前記可動保持部に取付けられている送電コイルと、を具備し、
前記保持壁面と前記カバーの端面との隙間に前記モバイル端末の上側部分を収容し、前記可動保持部で前記モバイル端末の底部分を支持する、ワイヤレス給電装置である。
【0010】
本発明のワイヤレス給電装置は、使い勝手の良い、モバイル端末用のワイヤレス給電装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図3】実施例2のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図4】実施例2のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図5】実施例3のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図6】実施例3のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図7】実施例4のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
図8】実施例4のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のワイヤレス給電装置を具体的に説明する。
【0013】
本発明のワイヤレス給電装置は、モバイル端末に給電するためのワイヤレス給電装置である。本発明のワイヤレス給電装置は、既述したとおり、固定保持部、カバー、収容空間、可動保持部および送電コイルを具備する。
【0014】
このうち固定保持部は上下方向に延びる保持壁面を有し、カバーはその端面を保持壁面に向ける。さらに、収容空間はカバーの下方に形成され、保持壁面とカバーの端面との隙間を介して外部に連絡する。可動保持部は、収容空間に配置され、保持壁面とカバーの端面とをむすぶ幅方向において、第1位置と第2位置との間を位置変化可能である。このうち第2位置は第1位置よりも保持壁面から遠いため、可動保持部は第1位置においては保持壁面に近づき、第2位置においては保持壁面から離れるといい得る。送電コイルは、既述したようにモバイル端末への給電を行うためのコイルであり、固定保持部または可動保持部に取付けられている。
【0015】
本発明のワイヤレス給電装置において、収容空間はカバーの下方に形成される。このため当該収容空間は、保持壁面とカバーの端面との隙間よりも下方にあるといえる。さらに収容空間は、当該収容空間の上方にある保持壁面とカバーの端面との隙間を介して、当該隙間のさらに上方にある本発明のワイヤレス給電装置の外部に連絡するともいえる。
【0016】
本発明のワイヤレス給電装置では、保持壁面とカバーの端面との隙間にモバイル端末の上側部分を収容し、可動保持部でモバイル端末の底部分を支持する。可動保持部は保持壁面とカバーの端面との隙間よりも下方にあるため、モバイル端末は、上側部分を上方に向け底部分を下方に向けて立ち上がった状態で、本発明のワイヤレス給電装置に保持される。
【0017】
可動保持部が配置される収容空間は、カバーよりも下方にあるため、底部分を含むモバイル端末の下側部分は、カバーよりも下方に配置され、カバーによって隠される。
したがって、本発明のワイヤレス給電装置によると、上記した平置き型のワイヤレス給電装置のように画面に表示される情報が丸見えになることはない。
【0018】
さらに、可動保持部は、保持壁面に近い第1位置と、保持壁面から遠い第2位置との間を位置変化する。可動保持部が第1位置から第2位置に向けて位置変化すると、保持壁面とカバーの端面との隙間と、当該可動保持部と、の距離は大きくなり、本発明のワイヤレス給電装置は大きく離れた二点でモバイル端末を保持する。したがって、この場合には、本発明のワイヤレス給電装置は大型のモバイル端末を安定して保持できるようになる。
これとは逆に、可動保持部が第2位置から第1位置に向けて位置変化すると、保持壁面とカバーの端面との隙間と、可動保持部と、の距離は小さくなり、本発明のワイヤレス給電装置は互いに比較的近い位置にある二点でモバイル端末を保持する。したがって、この場合には、本発明のワイヤレス給電装置は小型のモバイル端末を安定して保持できるようになる。
このように、可動保持部を有する本発明のワイヤレス給電装置によると、多様な形状や大きさのモバイル端末に対応でき、当該多様な形状のモバイル端末を安定して保持できるといい得る。
【0019】
さらに、可動保持部が第1位置から第2位置に向けて位置変化すると、保持壁面とカバーの端面とをむすぶ方向、すなわち幅方向において、保持壁面とカバーの端面との隙間と可動保持部とが離れる。したがって、これらに保持されるモバイル端末は斜めに倒れ、モバイル端末の画面のうちカバーで隠される領域は大きくなる。こうすることで、個々のユーザーのプライバシーをより確実に保護できるようになる。
【0020】
なお、本発明のワイヤレス給電装置において、モバイル端末の上側部分は、保持壁面とカバーの端面との隙間に配置される。このためユーザーは、当該隙間からモバイル端末を視認できる。したがって、ユーザーはモバイル端末の存在を容易に確認でき、モバイル端末が車両室内に置き忘れられる等の不具合も生じ難い。
【0021】
本発明のワイヤレス給電装置では、このように、従来の平置き型のワイヤレス給電装置とは異なり、モバイル端末を完全に隠してしまうことなくユーザーのプライバシーを保護することのできる、使い勝手の良い、モバイル端末用のワイヤレス給電装置といえる。
【0022】
以下、必要に応じて、保持壁面とカバーの端面との隙間を保持口と称する場合がある。
【0023】
以下、本発明のワイヤレス給電装置をその構成要素毎に説明する。
【0024】
本発明のワイヤレス給電装置における固定保持部は、上下方向に延びる保持壁面を有すれば良く、その形状は特に限定されない。
ここでいう上下方向とは、水平方向と交差する方向を意味し、垂直方向には限らない。固定保持部の保持壁面は、収容空間よりも上方において、当該収容空間と外部とを連絡する保持口を、カバーの端面とともに区画するものであれば良い。
固定保持部は保持壁面以外の部分を有しても良い。例えば、固定保持部が上方に開口する箱状をなし、収容空間は当該固定保持部の内部に区画され、可動保持部もまた当該固定保持部の内部に配置されても良い。
【0025】
カバーは収容空間の上方に配置され、カバーの端面と固定保持部の保持壁面との間には隙間すなわち保持口が形成される。
カバーの形状は特に限定されないが、モバイル端末の画面を隠す都合上、少なくとも幅方向、つまり、保持壁面とカバーの端面とをむすぶ方向において、カバーはある程度の長さを有する必要がある。具体的には、幅方向におけるカバーの長さは、幅方向における可動保持部の長さよりも長く、第2位置にある可動保持部を上方から覆うのが好ましい。
【0026】
カバーの端面と保持壁面との間に形成される隙間すなわち保持口には、モバイル端末の上側部分が配置される。このときカバーの端面および保持壁面は、モバイル端末に当接しても良いし、モバイル端末とは離れていても良い。モバイル端末をより安定して保持するためには、保持壁面がモバイル端末の裏面に当接するのが好ましく、保持壁面がモバイル端末の裏面に当接しかつカバーの端面がモバイル端末の表面に当接するのがより好ましい。
【0027】
モバイル端末をより安定して保持するためには、カバーの端面は、保持壁面に向けて突起する曲面であるのが好ましい。保持壁面もまた、カバーの端面に向けて突起する曲面であっても良い。
【0028】
モバイル端末をさらに安定して保持するためには、カバーの端面は、モバイル端末の表面に圧接するのが好ましい。この場合、カバーは、幅方向に位置変化可能であり保持壁面に近づく方向に付勢される部分を有すれば良い。当該部分を可動カバー部と称する。可動カバー部は、カバーの端面、すなわち、カバーのうち保持壁面とともに保持口を区画する面を有すれば良い。カバーの一部が可動カバー部であっても良いし、カバー全体が可動カバー部であっても良い。
可動カバー部を保持壁面に近づく方向に付勢するカバー付勢要素としては、つる巻きバネやねじりコイルバネ等の既知構造のものを用いれば良い。
【0029】
なお、カバーは、固定保持部に対して上記以外の様式で位置変化可能であっても良い。例えば、カバーは、上方に向けて回動し収容空間を露出させても良い。或いは、カバーは、幅方向において保持壁面から離れる方向に位置変化し、収容空間を露出しても良い。これらの場合には、収容空間を露出させることで、収容空間に落とした小さな荷物やごみ等を回収することが可能である。
【0030】
可動保持部は、収容空間に配置され、幅方向において第1位置と第2位置との間を位置変化可能である。既述したように、可動保持部と保持壁面との距離は、可動保持部が第1位置にあるときには近づき、可動保持部が第2位置にあるときには離れる。このため、可動保持部、保持壁面およびカバーの端面は、可動保持部が第1位置にあるときには、立ち上がった状態またはやや傾斜した状態でモバイル端末を保持し、可動保持部が第2位置にあるときには比較的大きく傾斜した状態でモバイル端末を傾斜する。
【0031】
可動保持部は、第1位置と第2位置との間を位置変化可能であれば良く、可動保持部を位置変化させる駆動機構は特に限定しない。例えば、可動保持部は、ユーザーの手動により位置変化しても良いし、バネ等の付勢力により自動的に位置変化しても良いし、電動モータ等により自動的に位置変化しても良い。駆動機構は、その他、可動保持部が位置変化する方向を案内するためのガイド部を有しても良い。
【0032】
さらに、本発明のワイヤレス給電装置は、可動保持部を第1位置と第2位置とでそれぞれ固定または半固定するロック機構を有するのが好ましい。当該ロック機構は、第1位置と第2位置との間の複数の位置で可動保持部を固定または半固定可能であるのがより好ましい。ロック機構としては、可動保持部の位置を固定し得るハートカム等のプッシュロック機構を採用しても良いし、可動保持部の位置を半固定し得るエアダンパやオイルダンパ等のダンパ機構を採用しても良いし、その他の様式によるものを採用しても良い。さらには、可動保持部または固定保持部と摩擦係合する摩擦材をロック機構として用いても良い。この場合、当該摩擦材を収容空間に配置して、当該摩擦材と可動保持部との摩擦力によって可動保持部を第1位置や第2位置に半固定すれば良い。または、可動保持部に取付けた当該摩擦材と収容空間に配置した相手材との摩擦力によって、可動保持部を第1位置や第2位置に半固定しても良い。当該相手材は、例えば、固定保持部の一部であっても良い。
なお、本明細書では、摩擦力やダンパなどによる比較的固定力の小さな固定状態を半固定と称するものとする。
【0033】
可動保持部は、本発明のワイヤレス給電装置がモバイル端末を保持していない非使用時に、第1位置にあっても良いし、第2位置にあっても良いが、ユーザーの使い勝手を考慮すると、第1位置にある方が好ましい。
【0034】
本発明のワイヤレス給電装置がモバイル端末を保持する使用時において、モバイル端末の上側部分は保持口に配置され、モバイル端末の底部分は可動保持部に支持される。したがって、本発明のワイヤレス給電装置にモバイル端末を保持させる際、ユーザーは、モバイル端末を保持口から収容空間に向けて挿し込み、モバイル端末の底部分を可動保持部に載置する操作を行う。この操作を容易に行うためには、可動保持部は、モバイル端末を保持していない非使用時において、保持口に近い第1位置にあるのが好ましい。
【0035】
本発明のワイヤレス給電装置は、さらに、可動保持部が非使用時において第1位置に配置されるように、第1位置から第2位置に位置変化した可動保持部を第1位置に戻す戻し機構を具備するのが好ましい。
【0036】
戻し機構は特に限定されないが、例えば、上記した可動保持部を位置変化させる駆動機構を戻し機構として用いても良いし、それ以外の戻し機構を設けても良い。戻し機構の一例として、ラックアンドピニオン機構を挙げると、幅方向に延びるラックを可動保持部に設け、当該ラックと噛合するピニオンを収容空間に配置した相手材に軸支させれば良い。収容空間に配置された相手材は、例えば、固定保持部の一部であっても良い。
ピニオンの一部を本発明のワイヤレス給電装置の外部に露出させ、ユーザーが手動で当該ピニオンを回転させれば、ラックが設けられた可動保持部が幅方向に位置変化する。
【0037】
上記した駆動機構、ガイド部、ロック機構および戻し機構は、各々独立していても良いが、一つの機構がこれらの機能の複数を兼用しても良い。
【0038】
可動保持部は、モバイル端末の底部分に加えて、モバイル端末の裏面を支持しても良い。この場合、可動保持部は、モバイル端末の裏面を支持する部分として、傾斜壁を有するのが好ましい。傾斜壁は、本発明のワイヤレス給電装置に保持されたモバイル端末と同方向に傾斜すれば良い。具体的には、傾斜壁は、その下端部を前記幅方向におけるカバーの端面側に向け、その上端部を幅方向における保持壁面側に向けるように、傾斜していれば良い。
この場合、傾斜壁によってモバイル端末を面で支持することで、モバイル端末をより安定して保持することが可能である。
【0039】
傾斜壁は、その傾斜角度が変化しないものであっても良いが、傾斜角度が可変であるものが好ましい。可動保持部の位置変化に伴い、保持口と可動保持部との位置関係が変化すると、当該保持口と可動保持部とに保持されるモバイル端末の傾斜角度もまた変化する。保持口と可動保持部との位置関係の変化に伴い、傾斜壁の傾斜角度が変化すれば、モバイル端末をさらに安定して保持することが可能である。
【0040】
この場合、本発明のワイヤレス給電装置は、さらに、傾斜壁の傾斜角度を維持するための角度維持要素を有するのが好ましい。角度維持要素としては、上記した可動保持部のロック機構と同様に、ダンパ機構や摩擦係合によるものを用いても良いが、傾斜壁を立ち上がる方向に向けて付勢する付勢要素を用いても良い。
つまり、モバイル端末の裏面を傾斜壁で支持する場合にも、モバイル端末の表側にはカバーの端面が配置されるため、傾斜壁を立ち上がる方向に向けて付勢すれば、モバイル端末はカバーの端面と傾斜壁とで挟み込まれ、モバイル端末の表面がカバーの端面に当接する位置で傾斜壁の傾斜角度は維持される。よって、この場合には、傾斜壁の傾斜角度を維持できるだけでなく、傾斜壁とカバーの端面とによってモバイル端末をより一層安定して保持することが可能になる。
【0041】
本発明のワイヤレス給電装置における送電コイルは、モバイル端末への給電を行うためのコイルであり、固定保持部または可動保持部に取付けられる。送電コイルは、固定保持部と可動保持部との一方にのみ取付けても良いし、固定保持部と可動保持部との各々に取付けても良い。送電コイルを固定保持部と可動保持部との各々に取付ける場合、モバイル端末の受電コイルに近い位置の送電コイルを用いて給電を行うことができ、効率の良い給電を行うことができる。送電コイルは、固定保持部と可動保持部とにそれぞれ複数個ずつ取付けても良い。
【0042】
可動保持部が上記した傾斜壁を有し、当該傾斜壁によってモバイル端末の裏面を支持する場合、送電コイルは傾斜壁に取付けるのが好ましい。受電コイルはモバイル端末の裏面側に設けられるのが一般的であるため、固定保持部および可動保持部のなかで最も受電コイルの近くに配置される傾斜壁に送電コイルを取付けることで、受電コイルにより効率良く給電できるためである。
【0043】
本発明のワイヤレス給電装置において、上記した駆動機構や戻し機構、ロック機構、送電コイル等は、各々、ユーザー自身がオンオフ制御を行っても良いし、電気的にオンオフ制御を行っても良い。本発明のワイヤレス給電装置は、これら各種の機構を電気的にオンオフ制御するための制御要素を有しても良い。制御要素としては、本発明のワイヤレス給電装置専用のものを設けても良いし、他の制御要素と兼用しても良い。例えば、本発明のワイヤレス給電装置を車両に搭載する場合には、車両のECU(Engine Control Unit、Electronic Control Unit)を本発明のワイヤレス給電装置用の制御要素として利用しても良い。
【0044】
ところで、既述したように、保持状態においてモバイル端末の上側部分は保持口に配置される。このため、モバイル端末の画面の大部分がカバーで隠されるような場合にも、モバイル端末の一部はユーザーから視認される状態におかれる。
しかし、場合によっては、モバイル端末が保持状態にあることをユーザーが忘れ、本発明のワイヤレス給電装置に置き忘れられる可能性もある。
例えば本発明のワイヤレス給電装置が車載用のワイヤレス給電装置であれば、防犯上、モバイル端末が置き忘れられることは好ましくない。
【0045】
このため、本発明のワイヤレス給電装置が車載用ワイヤレス給電装置である場合には、モバイル端末が置き忘れられていることをユーザーつまり乗員に注意喚起するための警告装置を設けるのが好ましい。
【0046】
具体的には、警告装置は、駐車時に可動保持部にモバイル端末がある場合に、乗員に注意を喚起するのが好ましい。警告装置は、車両が駐車状態にあることを検知する駐車検知要素、可動保持部にモバイル端末があるか否かを検知するモバイル端末検知要素、警告を発する警告要素、および、駐車検知要素およびモバイル端末検知要素の検知信号を基に上記した警告要素を駆動制御する警告制御要素等を有するのが好ましい。
【0047】
駐車検知要素としては、例えば、車両の運転制御を行うためのECUや、モバイル端末のGPS(Global Positioning System)等を利用することができる。
【0048】
モバイル端末検知要素としては、NFC(Near Field Communication)やBluetooth(登録商標)等でモバイル端末自身から発信される信号を受信できる受信器を使用することができる。当該受信器としては、例えば、車両に搭載されたNFCやBluetooth(登録商標)用の受信器を利用しても良い。または、当該受信器から信号が伝達されるECUを、モバイル端末検知要素として利用しても良い。専用の受信器を設けても良い。さらには、モバイル端末検知要素としての荷重センサや画像センサ等を、可動保持部の近傍に設けても良い。
【0049】
警告要素としては、音や光、振動等によりユーザーに何らかの刺激を与えるものを使用できる。当該警告要素としては、車両に搭載されているライトやクラクション、オーディオ機器等を利用しても良いし、モバイル端末に搭載されている画面やライト、着信音、バイブレーション機構等を利用しても良い。勿論、専用の信号発生要素を設けても良い。
【0050】
警告制御要素は、駐車検知要素およびモバイル端末検知要素の検知信号を基に警告要素を駆動制御する。このような警告制御要素は、上記した駆動機構等を電気的に制御するための制御要素と兼用しても良く、例えば、車両のECUを利用することが可能である。また、専用の警告制御要素としてコンピュータ等を別途設けても良い。
【0051】
以下、具体例を挙げて本発明のワイヤレス給電装置を説明する。
【0052】
(実施例1)
実施例1のワイヤレス給電装置は、車載用のワイヤレス給電装置である。
実施例1のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図を図1および図2に示す。なお、図1は可動保持部が第1位置にある様子を表し、図2は可動保持部が第2位置にある様子を表す。
以下、上、下、前、後とは、図1における上、下、前、後を指す。なお、前後方向は本発明における幅方向と一致し、前側は実施例1のワイヤレス給電装置を搭載した車両の進行方向における先側と一致し、後側は当該車両の進行方向における後側と一致する。さらに、上下方向は鉛直方向に一致し、前後方向は水平方向に一致する。上下方向および前後方向は、車両の車幅方向に直交する。
【0053】
図1に示すように、実施例1のワイヤレス給電装置は、固定保持部1、カバー2、収容空間80、可動保持部3、駆動機構4、送電コイル5、制御要素90および警告装置91を有する。
【0054】
固定保持部1は底壁部10および立壁部11を有し上方に開口する略箱状をなす。当該箱の内部に収容空間80が区画形成されている。
底壁部10は、前後方向に延びる略板状をなす。立壁部11は、底壁部10の上方において上下方向に延びる略板状をなし、立壁部11の下端と底壁部10の前端とは一体化されている。立壁部11は、上下方向に延びる保持壁面12を有し、当該保持壁面12を後方に向けている。
【0055】
カバー2は、端面20を前方に向けつつ前後方向に延び、固定保持部1の内部に形成された収容空間80を上方から覆う、略板状をなす。収容空間80は、カバー2の下方において固定保持部1の内部に形成されている、ともいえる。
カバー2の端面20は、前方に突起する曲面状をなし、固定保持部1の保持壁面12における上側部分に対面する。カバー2の端面20と固定保持部1の保持壁面12との間には隙間が形成されている。当該隙間を保持口85と称する。
【0056】
可動保持部3は、可動本体30、底保持リブ31、可動底保持部32、および、底保持部付勢要素33を有する。
可動本体30は、前後方向に延びる略板状をなし、底壁部10の上に配置される。したがって、可動本体30は、収容空間80における下部領域に配置されるともいえる。可動本体30は、前後方向にスライド可能である。
底保持リブ31は、可動本体30の上面に設けられ、当該可動本体30の上面からさらに上方に延びる。
【0057】
可動底保持部32は、可動本体30の上面かつ上記した底保持リブ31の前側に配置される底保持部本体32Mと、当該底保持部本体32Mから延びる一対の脚部32Lとを有する。可動底保持部32は、前後方向にスライド可能であり、可動本体30に対しても相対的にスライド可能である。
脚部32Lは、底保持部本体32Mにおける車幅方向の両端部(図1における紙面手前側の端部および紙面手奥側の端部)から各々後方に向けて延びる。
【0058】
一対の脚部32Lの後端部には、各々底保持部付勢要素33が取付けられている。具体的には、各底保持部付勢要素33の一端は各々対応する脚部32Lの後端部に取付けられ、各底保持部付勢要素33の他端は、脚部32Lよりも後方で、固定保持部1に取付けられている。
底保持部付勢要素33は、つる巻きバネであり、伸長して付勢力を蓄積し可動底保持部32を後方に付勢する。可動底保持部32の底保持部本体32Mは、可動本体30の底保持リブ31の前側に配置されている。このため、可動底保持部32が底保持部付勢要素33により後方に付勢されると、底保持部本体32Mが底保持リブ31に近づく。
【0059】
駆動機構4は、ガイド部40、電動モータ41および操作部42を有する。
ガイド部40はラック42Rとピニオン42Pとを有するラックアンドピニオン機構である。このうちラック42Rは、前後方向に延び、可動保持部3における車幅方向の端面(図1における紙面手前側の端面)に取付けられている。当該ラック42Rに噛合するピニオン42Pには電動モータ41が取付けられている。
【0060】
電動モータ41は、第1の方向、または、当該第1の方向とは逆方向である第2の方向に回転可能であり、オフ時には空回りしないよう制御される。当該電動モータ41は、ピニオン42Pの回転軸に取付けられ、固定保持部1に固定されて、ピニオン42Pを回転駆動する。操作部42は、カバー2の上面に露出するスイッチであり、図略のリード線によって後述する制御要素90に接続され、当該制御要素90を介して電動モータ41に電気的に接続される。
【0061】
ピニオン42Pが回転すると、当該ピニオン42Pに噛合するラック42Rが当該ピニオン42Pの回転方向に応じて前方または後方にスライドする。当該ラック42Rが取付けられている可動保持部3もまた、ラック42Rとともに前方または後方にスライドする。このことにより、可動保持部3は図1に示す第1位置と、図2に示す第2位置との間を位置変化する。
より具体的には、可動保持部3が図1に示す第1位置にあるときに、ピニオン42Pが第2の方向に回転すると、ラック42Rは後方にスライドし、可動保持部3は図2に示す第2位置に向けて位置変化する。
可動保持部が図2に示す第2位置にあるときに、ピニオン42Pが第1の方向に回転すると、ラック42Rは前方にスライドし、可動保持部3は第1位置に向けて位置変化する。
【0062】
なお、実施例1のワイヤレス給電装置における駆動機構4は、可動保持部3を位置変化させる機構として機能するだけでなく、後述するように、可動保持部3を第1位置と第2位置とでそれぞれ固定するロック機構としても機能し、かつ、第1位置から第2位置に向けて位置変化した可動保持部3を第1位置に戻す戻し機構としても機能する。
【0063】
実施例1のワイヤレス給電装置は、2組の送電コイル5を有する。当該2組の送電コイル5の一方を第1送電コイル51と称し、他方を第2送電コイル52と称する。
第1送電コイル51は、中心軸を前後方向に向け、固定保持部1における立壁部11の前面に取付けられている。
第2送電コイル52は、中心軸を上下方向に向け、固定保持部1における底壁部10の下面に取付けられている。
【0064】
ここで、第1送電コイル51および第2送電コイル52の近傍にコイル状の金属部材が配置される場合、第1送電コイル51および第2送電コイル52で生じる磁界に起因して、当該金属部材においても電気や熱が生じる可能性がある。
しかし、実施例1のワイヤレス給電装置において、コイル状の底保持部付勢要素33が固定されている脚部32Lは、中心軸を上下方向に向ける第2送電コイル52に対して、当該上下方向に直交する車幅方向、すなわち、図1および図2における紙面手前側-奥側方向に離れている。したがって底保持部付勢要素33は、第2送電コイル52の影響下から外れた位置にあるといえる。
【0065】
また、底保持部付勢要素33は、中心軸を前後方向に向ける第1送電コイル51に対しては、その中心軸の先側である後方に位置する。しかし、図1および図2に示すように、第1送電コイル51と底保持部付勢要素33との間にはモバイル端末95が介在し、第1送電コイル51の磁界はモバイル端末95で遮断される。このため、底保持部付勢要素33は、第1送電コイル51の影響下からも外れた位置にあるといえる。
このため、実施例1のワイヤレス給電装置では、底保持部付勢要素33として金属製のつる巻きバネを用いているものの、第1送電コイル51および第2送電コイル52は当該底保持部付勢要素33に悪影響を及ぼさない。
【0066】
制御要素90は、電動モータ41、第1送電コイル51および第2送電コイル52に接続されている。実施例1のワイヤレス給電装置では、制御要素90として車両のECUを利用している。また、当該制御要素90は、警告装置91の警告制御要素も兼ねている。
【0067】
警告装置91は、駐車検知要素、モバイル端末検知要素および警告要素を有する。このうち駐車検知要素およびモバイル端末検知要素としては、車両のECUを利用している。また、警告要素としては車両の室内灯とクラクションを利用している。実施例1のワイヤレス給電装置では、制御要素90が警告装置91の一部を兼ねているといえる。
【0068】
実施例1のワイヤレス給電装置の動作を以下に説明する。
【0069】
図1に示される第1位置において、可動保持部3は、カバー2の端面20と固定保持部1の保持壁面12との間に形成された隙間、すなわち保持口85の下方に配置される。
このときモバイル端末95を保持口85から収容空間80に挿し込むことで、モバイル端末95の底部分95Bを可動保持部3に支持させることができる。このときモバイル端末95は、その上側部分95Tを裏面95BK側から立壁部11の保持壁面12に支持され、底部分95Bを可動保持部3の可動本体30に支持されて、僅かに傾いた状態でワイヤレス給電装置に保持される。
【0070】
なお、可動保持部3の可動底保持部32は底保持リブ31に向けて付勢されているため、底保持リブ31と可動底保持部32の底保持部本体32Mとの間に挿し込まれたモバイル端末95の底部分95Bは、底保持リブ31と底保持部本体32Mとによって挟み込まれ、これらの間に安定して保持される。
【0071】
図1に示すように、モバイル端末95の画面95Dの大部分は、カバー2の下方に配置され、カバー2によって隠される。したがって、このときモバイル端末95の画面95Dは視認され難く、ユーザーのプライバシーは保護される。
【0072】
なお、このとき第1送電コイル51は、第2送電コイル52に比べてモバイル端末95の裏面95BK側、すなわちモバイル端末95の受電コイル(図略)から近い位置にある。したがって、制御要素90は、このとき当該第1送電コイル51を通じてモバイル端末95に給電する。
【0073】
ユーザーが可動保持部3を第2位置に向けて位置変化させるべく操作部42を操作すると、制御要素90により電動モータ41が駆動され、ピニオン42Pが第2の方向に回転する。すると、ラック42Rが後方に向けてスライドし、可動保持部3は図2に示す第2位置に向けて位置変化する。可動保持部3に支持されているモバイル端末95は、可動保持部3の位置変化に伴って状態変化する。
【0074】
具体的には可動保持部3が第2位置に向けて後方に位置変化すると、モバイル端末95の底部分95Bもまた後方に位置変化する。このためモバイル端末95は収容空間80において後側に引き込まれ、底部分95Bを下方かつ後方に向け上側部分95Tを上方かつ前方に向けて大きく傾斜する。このとき、カバー2の端面20はモバイル端末95の表面にある画面95Dに当接し、かつ、保持口85よりも上方へのモバイル端末95の露出量は大きく低減する。このため、モバイル端末95の画面95Dのうちカバー2によって隠される領域はより増大し、モバイル端末95の画面95Dは、より一層視認され難くなる。
なお、可動保持部3が第2位置にあるときにも、底保持部付勢要素33は可動底保持部32を後方に付勢する。このため、モバイル端末95の底部分95Bは、可動保持部3が第2位置にあるときにも、底保持リブ31と底保持部本体32Mとによって挟み込まれ、これらの間に安定して保持される。
【0075】
ユーザーが操作部42の操作を止めると、電動モータ41は停止する。すると、ピニオン42Pの回転が停止し、これに伴いラック42Rおよび可動保持部3の位置変化も停止する。したがって、可動保持部3はその位置に固定される。つまり、実施例1のワイヤレス給電装置における駆動機構4は、可動保持部3を固定するためのロック機構としても機能するといえる。
可動保持部3が固定されることで、実施例1のワイヤレス給電装置はモバイル端末95の底部分95Bを安定して保持することが可能である。
なお、実施例1のワイヤレス給電装置における駆動機構4は、可動保持部3を、第1位置と第2位置との間で、無段階で任意の位置に固定することが可能である。
【0076】
ユーザーが可動保持部3を第1位置に向けて位置変化させるべく操作部42を操作すると、制御要素90により電動モータ41が駆動され、ピニオン42Pが第1の方向に回転する。すると、ラック42Rが前方に向けてスライドし、可動保持部3は図1に示す第1位置に向けて前側に位置変化する。このためモバイル端末95の底部分95Bもまた前側に位置変化し、モバイル端末95は立ち上がる。すると、保持口85よりも上方へのモバイル端末95の露出量は大きくなる。したがって、このときユーザーは、モバイル端末95の上側部分95Tを掴みやすくなり、実施例1のワイヤレス給電装置からモバイル端末95を容易に取り出すことができる。
【0077】
このように、実施例1のワイヤレス給電装置における駆動機構4は、第1位置から第2位置に向けて位置変化した可動保持部3を第1位置に戻す戻し機構としても機能するといえる。
【0078】
なお、例えばユーザーが、第1位置でない位置にある可動保持部3からモバイル端末95を取り出すと、可動保持部3にモバイル端末95がないことを制御要素90すなわちECUのモバイル端末検知要素が検知する。すると、制御要素90によって、ピニオン42Pが第1の方向に回転し、ラック42Rが前方に向けてスライドするように、電動モータ41が駆動される。このため可動保持部3は、前方に向けて位置変化して第1位置に配置される。
【0079】
このように、実施例1のワイヤレス給電装置では、モバイル端末95が保持されていない非使用時に、可動保持部3は図1に示す第1位置に戻される。
第1位置において、可動保持部3は保持口85の下方にあるため、モバイル端末95の底部分95Bを可動保持部3に支持させる次回の操作は容易である。
【0080】
さらに、戻し機構としての駆動機構4は、可動保持部3が第1位置に到達していない状態で実施例1のワイヤレス給電装置にモバイル端末95を置き忘れた場合にも、戻し機構として機能する。
【0081】
具体的には、実施例1のワイヤレス給電装置にモバイル端末95を保持したままで車両を駐車すると、制御要素90すなわちECUが駐車検知要素およびモバイル端末検知要素として機能し、車両が駐車されたことおよび可動保持部3にモバイル端末95があることを検知する。すると、制御要素90は電動モータ41を回転制御し、ピニオン42Pが第1の方向に回転し、ラック42Rが前方に向けてスライドし、可動保持部3が前方に向けて位置変化して第1位置に配置される。このことにより、保持口85よりも上方へのモバイル端末95の露出量が大きくなり、ユーザーがモバイル端末95を置き忘れていることに気付き易くなる。
【0082】
さらに、実施例1のワイヤレス給電装置では、駐車時に可動保持部3にモバイル端末95がある状態が持続すると、警告装置91の警告要素がユーザーに警告を発する。具体的には、先ず所定時間室内灯が点滅し、それでもワイヤレス給電装置からモバイル端末95が取り出されない場合には、小さな音量でクラクションが鳴る。このことによりモバイル端末95を置き忘れたユーザーに注意喚起することが可能である。ワイヤレス給電装置からモバイル端末95が取り出されれば、当該警告は停止する。
【0083】
(実施例2)
実施例2のワイヤレス給電装置は、カバーの形状および可動保持部の形状以外は、実施例1のワイヤレス給電装置と概略同じものである。したがって、以下、実施例1のワイヤレス給電装置との相違点を中心に、実施例2のワイヤレス給電装置を説明する。
実施例2のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図を図3および図4に示す。なお、図3は可動保持部が第1位置にある様子を表し、図4は可動保持部が第2位置にある様子を表す。
【0084】
図3に示すように、実施例1のワイヤレス給電装置におけるカバー2は、一般カバー部21、可動カバー部22およびカバー付勢要素23を有する。一般カバー部21は、前後方向に延び、収容空間80を上方から覆う略板状をなす。可動カバー部22は、端面20を前方に向ける小片状をなし、一般カバー部21の下側かつ前側に取付けられている。可動カバー部22と一般カバー部21との間にはつる巻きバネ状のカバー付勢要素23が介在している。カバー付勢要素23は圧縮されて付勢力を蓄積し、可動カバー部22を前方すなわち保持壁面12に近づく方向に付勢する。
【0085】
可動保持部3は、前後方向に延びる略板状をなす可動本体30と、当該可動本体30の上面に設けられた二つの底保持リブ31とを有する。二つの底保持リブ31は前後方向に間隔を空けて配列している。二つの底保持リブ31のうち前側にある前側リブ31Fは、傾斜面31Sを有する。当該傾斜面31Sは、前側リブ31Fにおける後側の面であり、下方かつ後方から上方かつ前方に向けて傾斜する。
【0086】
実施例2のワイヤレス給電装置によると、図3および図4に示すように、モバイル端末95の上側部分95Tを、前方に付勢された可動カバー部22の端面20と、固定保持部1の立壁部11に設けられている保持壁面12とで挟み込む。なお、可動カバー部22における端面20側の部分は、比較的軟質の材料からなるため、モバイル端末95の画面95Dの損傷は抑制される。
【0087】
モバイル端末95の底部分95Bは、図3に示すように、可動保持部3が第1位置にあるときには、二つの底保持リブ31の間で可動保持部3における可動本体30の上面に支持される。また、図4に示すように、可動保持部3が第2位置にある時には、モバイル端末95の底部分95Bは二つの底保持リブ31の間で可動本体30の上面に支持されるとともに、前側リブ31Fの傾斜面31Sによっても支持される。
したがって、実施例2のワイヤレス給電装置もまたモバイル端末95を安定して保持することが可能であり、特に、モバイル端末95の上側部分95Tを、その姿勢に拘わらず安定的に保持し得る。
【0088】
(実施例3)
実施例3のワイヤレス給電装置は、駆動機構を有さず、戻し機構としてのつる巻きバネを有する点、可動保持部が傾斜壁を有する点、送電コイルが傾斜壁に取付けられている点、可動保持部の下面にゴム製の摩擦材を取付けた点、および、固定保持部の立壁部が頂壁部を有する点において、実施例2のワイヤレス給電装置と大きく異なり、それ以外は実施例2のワイヤレス給電装置と概略同じである。以下、実施例2のワイヤレス給電装置との相違点を中心に、実施例3のワイヤレス給電装置を説明する。
実施例3のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図を図5および図6に示す。なお、図5は可動保持部が第1位置にある様子を表し、図6は可動保持部が第2位置にある様子を表す。
【0089】
図5および図6に示すように、実施例3のワイヤレス給電装置における戻し機構45は、つる巻きバネであり、圧縮して付勢力を蓄積する。当該つる巻きバネの一端は可動保持部3の後端部に取付けられ、当該つる巻きバネの他端は、当該可動保持部3の後端よりもさらに後方において固定保持部1に取付けられている。
【0090】
可動保持部3は、略板状をなす可動本体30と、当該可動本体30の上面からさらに上方に延びる底保持リブ31と、当該底保持リブ31の前側において可動本体30に一体化されている傾斜壁35と、を有する。底保持リブ31と傾斜壁35とは前後方向に離れている。傾斜壁35は、略板状をなし、下方かつ後方から上方かつ前方に向けて傾斜する。つまり、傾斜壁35は、下端部を前後方向における端面20側に向け、上端部を前後方向における保持壁面12側に向ける。
【0091】
実施例3のワイヤレス給電装置は、送電コイル5を一組のみ有する。当該送電コイル5は、可動保持部3の傾斜壁35に取付けられ、その中心軸を傾斜壁35の傾斜方向と直交する方向に向けている。
【0092】
可動保持部3における可動本体30の下面には、ゴム製の摩擦材48が取付けられている。当該摩擦材48は、可動本体30の下面と固定保持部1における底壁部10の上面との間に介在し、底壁部10の上面と摩擦係合する。
【0093】
固定保持部1の立壁部11は、一般部15と頂壁部17とを有する。一般部15は、底壁部10に連続し上下方向に延びる。頂壁部17は、一般部15の上端部に連続し、後方に向けて延びる。頂壁部17の端面からなる保持壁面12は、可動カバー部22の端面20に対面し、後方に向けて突起する曲面状をなす。
【0094】
実施例3のワイヤレス給電装置において、戻し機構45すなわちつる巻きバネの付勢力は、モバイル端末95が可動保持部3にあるときの摩擦材48と底壁部10の上面との摩擦力よりも小さい。このため、図5および図6に示すように、モバイル端末95を可動保持部3に保持しているときには、摩擦材48と底壁部10の上面との摩擦力によって、可動保持部3は任意の位置に半固定される。
【0095】
当該摩擦力に抗して、ユーザーが可動保持部3に底部分95Bが支持されたモバイル端末95を後方に押すと、可動保持部3が図5に示す第1位置から図6に示す第2位置に向けて位置変化し、モバイル端末95が大きく傾斜する。第2位置において、モバイル端末95の裏面95BKは、傾斜壁35に支持される。このため、実施例3のワイヤレス給電装置によると、特に第2位置において、モバイル端末95を安定して保持することが可能になる。
【0096】
なお、実施例3のワイヤレス給電装置において、送電コイル5は傾斜壁35に取付けられている。図5および図6に示すように、傾斜壁35はモバイル端末95の裏面95BKの近くにあるため、モバイル端末95の受電コイルに対する送電コイル5からの給電は効率良く行われる。また、実施例3のワイヤレス給電装置は、モバイル端末95の裏面95BK近くに配置される傾斜壁35に送電コイル5を取付けることで、その他の場所に送電コイル5を取付ける必要がない。よって、実施例3のワイヤレス給電装置によると実施例1のワイヤレス給電装置や実施例2のワイヤレス給電装置に比べて、送電コイル5の数を削減することが可能である。
【0097】
また、可動保持部3が第2位置にある状態で、可動保持部3に底部分95Bが支持されたモバイル端末95を前方に押すと、可動保持部3が図6に示す第2位置から図5に示す第1位置に位置変化し、モバイル端末95が立ち上がる。このように、実施例3のワイヤレス給電装置では、ユーザーの手動によって、第1位置と第2位置との間で可動保持部3を位置変化させることができる。また、摩擦材48によって可動保持部3の位置を半固定できる。
【0098】
モバイル端末95の荷重が作用していない自然状態において、摩擦材48と底壁部10の上面との摩擦力は、戻し機構45すなわちつる巻きバネの付勢力よりも小さい。したがって、モバイル端末95を保持していないときには、可動保持部3は、戻し機構45の付勢力によって第1位置に向けて戻される。
【0099】
実施例3のワイヤレス給電装置では、可動カバー部22の端面20と頂壁部17に設けられた保持壁面12とで、モバイル端末95の上側部分95Tを挟み込む。可動カバー部22の端面20および保持壁面12は、ともに曲面状をなすために、モバイル端末95の上側部分95Tは安定して保持される。
【0100】
(実施例4)
実施例4のワイヤレス給電装置は、可動保持部以外は、実施例2のワイヤレス給電装置と概略同じである。以下、実施例2のワイヤレス給電装置との相違点を中心に、実施例4のワイヤレス給電装置を説明する。
実施例4のワイヤレス給電装置を模式的に表す説明図を図7および図8に示す。なお、図7は可動保持部が第1位置にある様子を表し、図8は可動保持部が第2位置にある様子を表す。
【0101】
実施例4のワイヤレス給電装置における可動保持部3は、略板状をなす可動本体30と、当該可動本体30の上面からさらに上方に延びる底保持リブ31と、略板状をなし当該底保持リブ31の前側において可動本体30に軸支されている傾斜壁35と、当該傾斜壁35を立ち上がる方向に向けて付勢する傾斜壁付勢要素38と、を有する。
【0102】
図7に示すように、傾斜壁35は、略板状の傾斜部36と、当該傾斜部36の下部に設けられている軸部37とを有する。軸部37は可動本体30に軸支され、傾斜壁35は当該軸部37を中心に回動可能である。傾斜壁35の軸部37には傾斜壁付勢要素38が装着されている。傾斜壁付勢要素38はねじりコイルバネ状をなし、傾斜壁35を立ち上がる方向に向けて付勢する。ここでいう「傾斜壁35が立ち上がる」とは、傾斜壁35が鉛直方向に近づくことを意味し、「傾斜壁35が立ち上がる方向」は傾斜壁35の上端がカバー2の端面20に近づく方向と言い換えることもできる。当該「傾斜壁35が立ち上がる方向」は、図7および図8においては反時計回り方向である。
【0103】
傾斜壁35は、図7に示す第1位置においても、図8に示す第2位置においても、下方かつ後方から上方かつ前方に向けて傾斜する。したがって、実施例4のワイヤレス給電装置においても、傾斜壁35は、下端部を前後方向における端面20側に向け、上端部を前後方向における保持壁面12側に向ける。
傾斜壁35には送電コイル5が取付けられている。
【0104】
実施例4のワイヤレス給電装置においては、傾斜壁35がモバイル端末95の裏面95BKを支持し、かつ、傾斜壁35と可動カバー部22の端面20とによってモバイル端末95の上側部分95Tを挟み込む。このため、実施例4のワイヤレス給電装置によると、モバイル端末95をさらに安定して保持することが可能である。
【0105】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0106】
1:固定保持部 12:保持壁面
2:カバー 20:カバーの端面
22:可動カバー部
3:可動保持部 35:傾斜壁
4:戻し機構(駆動機構) 45:戻し機構
5:送電コイル 80:収容空間
85:保持口(保持壁面とカバーの端面との隙間)
91:警告装置 95:モバイル端末
95T:モバイル端末の上側部分 95B:モバイル端末の底部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8