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  • 特許-分岐設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】分岐設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/68 20060101AFI20221109BHJP
   B65G 21/22 20060101ALI20221109BHJP
   B65G 13/10 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B65G47/68 D
B65G21/22 Z
B65G13/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019190623
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021066536
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並川 誠
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-030860(JP,A)
【文献】特開平07-257736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/68
B65G 21/22
B65G 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上の被搬送物を、前記搬送経路から分岐して形成される分岐経路に対して搬送可能な分岐設備であって、
前記搬送経路中における前記分岐経路との分岐部には、前記搬送経路の搬送面を形成するとともに縦軸心周りに回動可能な非昇降式の搬送ローラが、前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向及び前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に対して直交する方向のそれぞれに複数配設され、
前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に対して直交する方向に隣接して配設される前記搬送ローラ間には、隙間が前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に沿って形成され、
前記隙間には前記被搬送物を支持可能なレールが前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に沿って延設され
前記レールにおける前記搬送ローラよりも搬送上流側の端部が前記搬送ローラにおける前記被搬送物と接触する部分よりも下側の位置となるように、前記レールにおける前記搬送ローラよりも搬送上流側の端部が、前記搬送ローラにおける前記被搬送物と接触する部分から下方に傾斜するテーパー状に形成されること
を特徴とする分岐設備。
【請求項2】
前記レールは、前記被搬送物を線接触で支持可能な形状によって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の分岐設備。
【請求項3】
前記レールは、低摩擦性を有する部材によって構成されること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の分岐設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路上の被搬送物を、搬送経路から分岐して形成される分岐経路に対して搬送可能な分岐設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送経路上の被搬送物を、搬送経路から分岐して形成される分岐経路に対して搬送可能な分岐設備としては、特許文献1及び特許文献2に示すような設備がある。
特許文献1の分岐設備は、搬送経路中の所定箇所(分岐部)の側方に、搬送経路に対して直角に分岐する分岐経路が形成されている。当該所定箇所には、搬送面を形成する搬送ローラが、搬送経路の方向並びに搬送経路に対する横方向のそれぞれに所定の間隔を空けて複数配置される。搬送ローラのそれぞれは、縦軸心周りに旋回自在に構成され、旋回動装置によって搬送経路の方向と横方向とに亘って直角に旋回される。
特許文献2の分岐設備は、物品が搬送される搬送経路を形成するとともに物品の搬送方向及び上記搬送経路の幅方向に配列された所定数のローラと、各ローラとともに上記搬送経路を形成するカバーと、を備えるものである。各ローラは、水平軸線回りに回転可能であるとともに垂直軸線回りに回動可能である。各ローラが垂直軸線回りに回動することによって物品の搬送方向が転向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-30860号
【文献】特開2013-28417号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような分岐設備においては、搬送ローラが、搬送経路の方向並びに搬送経路に対する横方向のそれぞれに所定の間隔を空けて配置されているため、隣接する搬送ローラ間に隙間が形成される。そのため、大きさの小さい被搬送物を搬送させる場合には、当該隙間に被搬送部が落ち込む場合がある。また、底面に微小な突起等を有する被搬送物を搬送させる場合には、当該突起等が搬送ローラ間を乗り移る際に、搬送中の被搬送物の挙動が不安定となる。
一方で、特許文献2に示すような分岐設備においては、隣接する搬送ローラ間に形成される隙間がカバーによって覆われることから、当該隙間に被搬送部が落ち込むことを防止することは可能であるが、当該カバーを取り外さずに設備のメンテナンスを行うことができないため、メンテナンス作業が煩雑になるという問題があった。
また、搬送ローラが、特許文献2の分岐設備より密に、搬送経路の分岐部に配置されているような分岐設備においては、上記カバーを分岐部上に配置することが難しく、結果として、上記隙間に被搬送部が落ち込むことを防止することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、設備のメンテナンス時の作業性を向上させつつ、複数の搬送ローラが配設された分岐部における搬送中の被搬送物の挙動を安定させることが可能な分岐設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、本発明の分岐設備は、搬送経路上の被搬送物を、前記搬送経路から分岐して形成される分岐経路に対して搬送可能な分岐設備であって、前記搬送経路中における前記分岐経路との分岐部には、前記搬送経路の搬送面を形成するとともに縦軸心周りに回動可能な非昇降式の搬送ローラが、前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向及び前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に対して直交する方向のそれぞれに複数配設され、前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に対して直交する方向に隣接して配設される前記搬送ローラ間には、隙間が前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に沿って形成され、前記隙間には前記被搬送物を支持可能なレールが前記搬送経路における前記被搬送物の搬送方向に沿って延設され、前記レールにおける前記搬送ローラよりも搬送上流側の端部が前記搬送ローラにおける前記被搬送物と接触する部分よりも下側の位置となるように、前記レールにおける前記搬送ローラよりも搬送上流側の端部が、前記搬送ローラにおける前記被搬送物と接触する部分から下方に傾斜するテーパー状に形成されるものである。
上記構成では、被搬送物は、レールによって支持された状態で搬送ローラの回動によって搬送される。
【0007】
また上記構成では、被搬送物は、レールの搬送上流側において、レールの端部より先に搬送ローラに接触する。
【0008】
本発明の分岐設備は、上記分岐設備において、前記レールは、前記被搬送物を線接触で支持可能な形状によって形成されるものである。
上記構成では、被搬送物は、レールと線接触した状態で搬送される。
【0009】
本発明の分岐設備は、上記分岐設備において、前記レールは、低摩擦性を有する部材によって構成されるものである。
上記構成では、被搬送物は、低摩擦性を有する部材から構成されるレールによって支持される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分岐設備によれば、分岐部において隣接する搬送ローラ間に形成される隙間にレールを設けることで、搬送経路における被搬送物の搬送方向に沿って、被搬送物を支持するための連続した部分を形成することができる。そのため、被搬送物が上記隙間に落ち込むことなく、被搬送物を常に支持した状態で分岐部において搬送させることができる。それゆえに、分岐部を搬送中の被搬送物の挙動を安定させることができる。また、搬送ローラが密に分岐部に配置されているような分岐設備であっても、上記隙間の幅に応じたレールを当該隙間に設けることができるため、上記分岐設備であっても上記隙間への被搬送部の落ち込みを防止することができる。さらに、分岐部上をカバー等で覆う構成ではないため、分岐設備のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る分岐設備の概略平面図である。
図2】本発明に係る分岐設備の概略側面図である。
図3】本発明に係る分岐設備の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の分岐設備10について説明する。なお、本発明は、以下に示す分岐設備10に限定されるものではない。
図1に示すように、分岐設備10は、物品90(「被搬送物」の一例)を搬送する搬送経路20と、搬送経路20に対して直角に分岐する分岐経路40と、から主に構成されている。分岐設備10では、搬送経路20の搬送上流側から搬送されてきた物品90が、必要に応じて、搬送経路20の搬送下流側又は分岐経路40へ仕分けられる。
搬送経路20は、物品90を搬送する主たる搬送経路であり、ベルトコンベヤ21によって構成されている。なお、搬送経路20は、ベルトコンベヤ21に限定されるものではなく、例えば、駆動式ローラコンベヤによって構成しても構わない。
【0013】
分岐経路40は、搬送経路20上の分岐部23から搬送経路20に対して直角に分岐する搬送経路である。ここで、「直角」とは、所定の許容誤差を含んだ90度の角度である。分岐経路40は、その上流側端部41が搬送経路20の一方の側方(図1においては、搬送経路20における物品90の搬送方向H(以下、「物品90の搬送方向H」とする)に対して左側方)に接続される。分岐経路40は、その上流側端部41が複数の分岐搬送ローラ42によって構成され、その他の部分は、主にローラコンベヤ43によって構成される。
分岐搬送ローラ42は、分岐経路40における物品90の搬送方向K(以下、「物品90の搬送方向K」とする)に対して水平に直交する方向に配置される横ローラ軸44に対して回転自在に支持される。分岐搬送ローラ42は、物品90の搬送方向Kに対して鉛直方向に直交する方向に配置される縦軸45によって横ローラ軸44とともに支持され、縦軸45の軸心周りに回動自在に設けられる。分岐搬送ローラ42は、縦軸45の軸心周りに回動することで、物品90の搬送方向Kに対して所定の角度で水平に回動し、搬送経路20から搬送されてくる物品90を分岐経路40の搬送下流側へ導く。分岐搬送ローラ42は、モータ等により構成される駆動装置47に接続され、駆動装置47の駆動によって横ローラ軸44による回転及び縦軸45による回動が行われる。
【0014】
図1に示すように、搬送経路20上には、搬送経路20の搬送上流側から搬送されてきた物品90を分岐経路40へ分岐させて搬送するための分岐部23が設けられている。分岐部23は、搬送経路20上における分岐経路40への分岐部分であり、その側部に分岐経路40の上流側端部41が接続されている。
【0015】
分岐部23には、複数の搬送ローラ24が配設されている。搬送ローラ24は、そのローラ面が搬送経路20における物品90の搬送面を形成する。搬送ローラ24は、物品90の搬送方向Hに対して水平に直交する方向に配置される横ローラ軸25に対して回転自在に支持される。搬送ローラ24は、物品90の搬送方向Hに対して鉛直方向に直交する方向に配置される縦軸26によって横ローラ軸25とともに支持され、縦軸26の軸心周りに回動自在に設けられる。搬送ローラ24は、モータ等により構成される複数の駆動装置27に接続され、駆動装置27の駆動によって横ローラ軸25による回転及び縦軸26による回動が行われる。搬送ローラ24は、縦軸26の軸心周りに回動することで、物品90の搬送方向Hに対して所定の角度で水平に回動し、搬送経路20における物品90の搬送方向を変更する。
搬送ローラ24は、分岐部23において、搬送経路20の方向(物品90の搬送方向H)及び搬送経路20に対して横方向(物品90の搬送方向Hに対して水平に直交する方向)のそれぞれの方向に沿って複数個整列して配設されている。搬送ローラ24は、隣接する他の搬送ローラ24と所定の間隔を空けて配置される。特に、図1及び図2に示すように、搬送経路20に対して横方向(物品90の搬送方向Hに対して水平に直交する方向)に隣接して配設される搬送ローラ24間には、搬送ローラ24が回転及び回動する際に隣接する他の搬送ローラ24と接触しない程度の隙間S1、S2が形成されている。隙間S1、S2は、物品90の搬送方向Hに沿って形成される。
分岐部23においては、大きさの小さい物品90(例えば、搬送ローラ24を横ローラ軸25の軸心方向に2体並列に並べた長さより幅の小さい物品90)を搬送するために、搬送ローラ24は、全体として、分岐部23の左右両側(物品90の搬送方向Hに対して水平に直交する方向)に寄せて配置される。そのため、分岐部23の中央部に配置される搬送ローラ24によって形成される隙間S1は、分岐部23の左右両側に配置される搬送ローラ24によって形成される隙間S2より幅が広く形成される。
【0016】
分岐部23には、分岐部23上を搬送される物品90を支持するレール50が複数本(図1及び図2においては2本)設けられている。図1及び図2に示すように、レール50は、物品90の搬送方向Hに沿って隙間S1に延設される。すなわち、レール50は、分岐部23の中央部に形成される幅の広い隙間S1に延設される。レール50を分岐部23の中央部の隙間S1に設けることで、物品90の搬送方向Hに沿って、物品90の底面を支持するための連続した部分が形成される。そのため、物品90の搬送方向Hに沿って搬送される物品90の底面を、レール50が常に支持する状態となり、物品90が隙間S1に落ち込まず、搬送中の物品90の挙動を安定させることができる。
レール50は、低摩擦性を有する部材によって構成される。具体的には、レール50は、超高分子ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂によって構成されたもの、又は、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂を、レール50を構成する部材(例えば、ポリオレフィン系樹脂及びフッ素系樹脂以外の樹脂又は金属等)の表面に被覆して構成されたものである。レール50を低摩擦性を有する部材によって構成することで、レール50が搬送中の物品90の挙動に与える影響を低減することができる。
図2に示すように、レール50は、物品90の底面を線接触で支持可能な形状によって形成される。具体的には、レール50は、その上部が鋭角に突出した山形(凸形状)の部材によって形成される。レール50を山形(凸形状)の部材によって形成することで、物品90との接触面積が小さくなり、物品90の搬送方向Hへの摩擦抵抗を低減することができる。
【0017】
図3に示すように、レール50は、その搬送上流側(分岐部23の搬送上流側)の端部50aが、分岐部23の搬送上流側に配設される搬送ローラ24において物品90と接触する接触位置24a(搬送ローラ24のローラ面において搬送中の物品90の底面と接触する部分)より下方位置となるように形成される。具体的には、図1及び図3に示すように、レール50は、その搬送上流側の端部50aがテーパー状に形成され、所定角度θで下方に傾斜されている。ここで、所定角度θは、搬送経路20を搬送される物品90の大きさ、分岐部23の搬送上流側に配設されるベルトコンベヤ21と分岐部23の搬送上流側に配設される搬送ローラ24との間隔等により設定される角度である。このようにレール50の搬送上流側の端部50aを形成することで、分岐部23の搬送上流側に配設されるベルトコンベヤ21から、分岐部23の搬送上流側に配設される搬送ローラ24に、物品90が乗り移ろうとする際に、物品90がレール50の搬送上流側の端部50aと接触することを防止できる。
【0018】
以上のように、本実施の形態によると、分岐部23において隣接する搬送ローラ24間に形成される隙間S1にレール50を設けることで、搬送経路20における物品90の搬送方向Hに沿って、物品90を支持するための連続した部分を形成することができる。そのため、物品90が隙間S1に落ち込むことなく、物品90を常に支持した状態で分岐部23において搬送させることができる。それゆえに、分岐部23を搬送中の物品90の挙動を安定させることができる。また、搬送ローラ24が密に分岐部23に配置されているような分岐設備10であっても、隙間S1の幅に応じたレール50を隙間S1に設けることができるため、上記分岐設備10であっても隙間S1への物品90の落ち込みを防止することができる。さらに、分岐部23上をカバー等で覆う構成ではないため、分岐設備10のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0019】
なお、本実施の形態においては、レール50の上部が鋭角に突出した山形(凸形状)の部材によって形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、レール50の上部が湾曲状に形成された部材であっても構わない。本発明においては、レール50が、物品90の底面を線接触で支持可能な形状によって形成されていることが好ましいが、搬送中の物品90の底面を支持可能な形状であれば、レール50を、物品90の底面を面接触で支持可能な部材(例えば、レール50の上部を平面状に形成した部材)によって形成しても構わない。
本実施の形態においては、レール50を隙間S1のみに延設させているが、これに限定されるものではなく、レール50を隙間S1及び隙間S2の両方に延設させても構わない。
本実施の形態においては、分岐経路40が搬送経路20の一方側(搬送経路20の搬送方向Hの左側)に形成されているが、これに限定されるものではなく、分岐経路40が搬送経路20の両側に形成されても構わない。また、分岐経路40を搬送経路20に対して直交して形成しても構わない。さらに、分岐経路40は、搬送経路20に対して直角に分岐する経路に限定されるものではなく、物品90を搬送経路20から分岐して搬送可能な経路であれば、搬送経路20に対する角度は特に限定されない。
【符号の説明】
【0020】
10 分岐設備
20 搬送経路
23 分岐部
24 搬送ローラ
26 縦軸
40 分岐経路
50 レール
90 物品(被搬送物)
H 物品の搬送方向
S1 隙間
図1
図2
図3