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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20221109BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
F16B5/10 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019215984
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084567
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 太一
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-166676(JP,A)
【文献】特開2001-140820(JP,A)
【文献】特開2006-199229(JP,A)
【文献】特開2008-230336(JP,A)
【文献】特開2001-180331(JP,A)
【文献】米国特許第8764091(US,B2)
【文献】独国実用新案第202018103616(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に形成された被取付板部の厚み方向を高さ方向とし、同高さ方向に対し直交し、かつ互いに直交する2方向を奥行き方向及び幅方向とし、取付部材及び前記被取付部材の少なくとも一方を前記奥行き方向へ移動させて、前記取付部材を前記被取付板部に取付ける構造であって、
前記被取付板部には、幅狭孔部と、前記幅狭孔部に対し前記幅方向に隣接する被挟持部と、前記幅狭孔部及び前記被挟持部に対し前記奥行き方向に隣接する幅広孔部とが形成され、
前記取付部材は、取付本体部と、前記取付本体部から前記高さ方向へ突出して前記幅広孔部に挿通される挿通部とを備え、
前記挿通部は、前記取付部材及び前記被取付部材の少なくとも一方の移動に伴い前記幅狭孔部に対し前記奥行き方向へスライドする挿通本体部と、前記挿通本体部とともに前記被取付板部に対し前記奥行き方向へ移動して、前記取付本体部とともに前記被挟持部を前記高さ方向における両側から挟み込む挟持部とを備え、
前記取付部材及び前記被取付板部の一方には、前記奥行き方向へ延びる凹部が形成され、他方には前記奥行き方向へ延びて前記凹部に嵌合する凸部が形成され、
前記取付部材及び前記被取付板部の一方には、前記凸部が前記凹部の奥部まで嵌合された状態で、前記取付部材及び前記被取付板部の他方に設けられた被係止部に係止される係止部が形成されている部材の取付構造。
【請求項2】
前記被係止部は、前記被取付板部のうち、前記幅広孔部を挟んで前記幅狭孔部及び前記被挟持部とは反対側の部分に形成されている請求項1に記載の部材の取付構造。
【請求項3】
前記係止部は、前記被取付板部を挟んで前記取付本体部とは反対側において前記奥行き方向に延びており、
前記係止部は、前記取付本体部側へ突出し、かつ前記被係止部に対し引っ掛けられることにより係止される爪部を有している請求項2に記載の部材の取付構造。
【請求項4】
車両には、機能部品を配置するための開口部を有するクラスタが搭載されており、
前記取付部材及び前記被取付部材は、前記クラスタを構成する複数の部材のうちの一部であり、
前記取付部材が前記被取付部材の前記被取付板部に取付けられることにより、前記開口部が形成されるものである請求項1~3のいずれか1項に記載の部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内装品等を構成する複数の部材のうちの2部材の一方を被取付部材とするとともに他方を取付部材とし、その取付部材を被取付部材に取付ける部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室には、空調用レジスタ等の機能部品を配置するための開口部を有するクラスタが配置される場合がある。クラスタは複数の部材によって構成されており、そのうちの一部が、被取付部材及び取付部材の2部材からなる。被取付部材に取付部材が取付けられることによって開口部が形成される。取付部材を被取付部材に対し、奥行き方向、幅方向及び高さ方向に位置決めした状態で同被取付部材に取付けるために、別体の樹脂製のクリップが用いられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、例えば、被取付部材にクリップが装着され、取付部材に設けられた係止孔に上記クリップの一部が挿入されて係止されることで、取付部材がクリップを介して被取付部材に取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-37229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のように別体のクリップを用いて取付部材を被取付部材に取付ける取付構造では、クリップを収容し、かつそのクリップが弾性変形する大きなスペースが必要になり、奥行き方向、幅方向及び高さ方向のいずれの方向にも、取付部材の被取付部材に対する取付部分が大きくなってしまう問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、取付部材の被取付部材に対する取付部分の小型化を図ることのできる部材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する部材の取付構造は、被取付部材に形成された被取付板部の厚み方向を高さ方向とし、同高さ方向に対し直交し、かつ互いに直交する2方向を奥行き方向及び幅方向とし、取付部材及び前記被取付部材の少なくとも一方を前記奥行き方向へ移動させて、前記取付部材を前記被取付板部に取付ける構造であって、前記被取付板部には、幅狭孔部と、前記幅狭孔部に対し前記幅方向に隣接する被挟持部と、前記幅狭孔部及び前記被挟持部に対し前記奥行き方向に隣接する幅広孔部とが形成され、前記取付部材は、取付本体部と、前記取付本体部から前記高さ方向へ突出して前記幅広孔部に挿通される挿通部とを備え、前記挿通部は、前記取付部材及び前記被取付部材の少なくとも一方の移動に伴い前記幅狭孔部に対し前記奥行き方向へスライドする挿通本体部と、前記挿通本体部とともに前記被取付板部に対し前記奥行き方向へ移動して、前記取付本体部とともに前記被挟持部を前記高さ方向における両側から挟み込む挟持部とを備え、前記取付部材及び前記被取付板部の一方には、前記奥行き方向へ延びる凹部が形成され、他方には前記奥行き方向へ延びて前記凹部に嵌合する凸部が形成され、前記取付部材及び前記被取付板部の一方には、前記凸部が前記凹部の奥部まで嵌合された状態で、前記取付部材及び前記被取付板部の他方に設けられた被係止部に係止される係止部が形成されている。
【0007】
上記の構成によれば、取付部材の被取付部材への取付けに際し、取付部材及び被取付部材の少なくとも一方、例えば取付部材が奥行き方向へ移動させられる。上記移動の途中で、挿通部が幅広孔部の開口部に到達すると、被挟持部が挟持部の移動経路上に位置し、同被挟持部が挟持部の移動を妨げようとする。挟持部が幅広孔部から高さ方向へ飛び出すように、取付部材が高さ方向へ移動させられる。挟持部が幅広孔部から飛び出した状態で、取付部材が再び奥行き方向へ移動させられる。すると、挿通部における挿通本体部が幅狭孔部の壁面に沿って奥行き方向へスライドするとともに、挟持部が被挟持部を挟んで取付本体部とは反対側を、奥行き方向へ移動する。挟持部は、取付本体部とともに被挟持部を高さ方向における両側から挟み込む。また、取付部材の上記移動の途中で凸部が凹部に嵌入し始める。
【0008】
そして、挿通本体部の上記スライドに伴い、凸部が奥行き方向における凹部の奥部まで嵌合されると、係止部が被係止部に係止される。
取付部材は、係止部が係止された被係止部と、凸部が嵌合された凹部のうち、奥部の壁面とによって、奥行き方向へ動くことを規制される。また、取付部材は、凸部が嵌合された凹部の幅方向における両壁面によって、同幅方向へ動くことを規制される。また、取付部材は、取付本体部及び挟持部の間の被挟持部によって、高さ方向へ動くことを規制される。このようにして、取付部材は、奥行き方向、幅方向及び高さ方向への動きを規制された、すなわち、位置決めされた状態で被取付部材に取付けられる。
【0009】
上記の構成では、別体のクリップを用いていないため、同クリップを収容及び保持するスペースや、同クリップが弾性変形するスペース等を確保しなくてすむ。
また、上記の構成では、幅狭孔部、被挟持部及び幅広孔部と、係止部及び被係止部の一方と、凹部及び凸部の一方とが、厚み方向を高さ方向とする板状の被取付板部に集約されている。そのため、別体のクリップが用いられることで、奥行き方向、幅方向及び高さ方向のそれぞれにおける取付部分の寸法が同程度となる場合に比べ、少なくとも高さ方向における取付部分の寸法を小さくすることが可能となる。
【0010】
上記部材の取付構造において、前記被係止部は、前記被取付板部のうち、前記幅広孔部を挟んで前記幅狭孔部及び前記被挟持部とは反対側の部分に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、被係止部が、幅狭孔部及び被挟持部や、幅広孔部と幅方向における略同じ箇所に配置されている。そのため、取付部材の被取付部材に対する取付部分の幅方向における寸法を小さくすることが可能となる。
【0012】
また、被取付板部のうち、幅広孔部を挟んで幅狭孔部及び被挟持部とは反対側となる部分が、被係止部の形成箇所として利用される。そのため、被係止部を形成する箇所を被取付板部に別途設けなくてもすむ。
【0013】
上記部材の取付構造において、前記係止部は、前記被取付板部を挟んで前記取付本体部とは反対側において前記奥行き方向に延びており、前記係止部は、前記取付本体部側へ突出し、かつ前記被係止部に対し引っ掛けられることにより係止される爪部を有していることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、取付部材の被取付部材への取付けに際し、挟持部が幅広孔部から高さ方向へ飛び出た状態で、例えば取付部材が奥行き方向へ移動させられた場合、挿通本体部が幅狭孔部をスライドするとともに、係止部の爪部が被係止部に接近する。この接近の途中で、爪部が被取付板部のうち幅広孔部を挟んで、幅狭孔部及び被挟持部とは反対側となる部分に接触する。接触後も、取付部材が奥行き方向へ移動させられると、係止部が弾性変形することで、爪部が上記部分に乗り上げる。上記移動により、爪部が上記部分を乗り越えると、係止部が弾性復元力によって上記部分を乗り越える前の形状に戻ろうとする。爪部が、上記部分に形成された被係止部に対し引っ掛けられて、係止部が同被係止部に係止された状態になる。
【0015】
上記部材の取付構造において、車両には、機能部品を配置するための開口部を有するクラスタが搭載されており、前記取付部材及び前記被取付部材は、前記クラスタを構成する複数の部材のうちの一部であり、前記取付部材が前記被取付部材の前記被取付板部に取付けられることにより、前記開口部が形成されるものであることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、挟持部が、取付本体部とともに被挟持部を高さ方向における両側から挟み込み、凸部が凹部の奥部まで嵌合し、係止部が被係止部に係止されることで、取付部材が、高さ方向、奥行き方向及び幅方向への動きを規制された、すなわち、位置決めされた状態で被取付部材に取付けられる。被取付部材及びこれに取付けられた取付部材により、車両に搭載されるクラスタの一部であって、開口部の周辺部分が構成される。このクラスタにおいて、取付部材の被取付部材に対する取付部分の少なくとも高さ方向の寸法を小さくする効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
上記部材の取付構造によれば、取付部材の被取付部材に対する取付部分の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】部材の取付構造を車両のクラスタに適用した一実施形態を示す図であり、同クラスタの被取付部材に取付部材が取付けられて開口部が形成された状態を斜め後上方から見た部分斜視図。
図2】(a)は、図1における被取付部材の被取付板部に取付部材が取付けられる前の状態を斜め後上方から見た部分分解斜視図、(b)は図2(a)の一部を拡大して示す部分斜視図。
図3】一実施形態において、被取付板部に取付部材が取付けられる前の状態を、斜め前上方から見た部分分解斜視図。
図4】一実施形態において、被取付板部に取付部材が取付けられる前の状態を、斜め前下方から見た部分分解斜視図。
図5】一実施形態における取付部材を斜め前方から見た部分斜視図。
図6】一実施形態における取付部材を斜め前方であって、図5とは異なる方向から見た部分斜視図。
図7】一実施形態における被取付部材の被取付板部の一部を斜め前下方から見た部分斜視図。
図8】一実施形態において、被取付板部に取付部材が取付けられた状態を、斜め前下方から見た部分斜視図。
図9図8の9-9線断面図。
図10図9の10-10線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、部材の取付構造を車両のセンタークラスタ等のクラスタに適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0020】
車両の車室の前部には、インストルメントパネルが配置されており、その主要部は、図1に示すクラスタ10によって構成されている。クラスタ10には、機能部品を配置するための開口部11が形成されている。開口部11は、上下方向よりも左右方向に細長い形状をなしている。クラスタ10は、図2(a)に示す被取付部材12及び取付部材26の2部材を含む複数の部材によって構成されている。被取付部材12及び取付部材26は、いずれも樹脂材料によって形成されている。被取付部材12及び取付部材26のそれぞれの後面は、クラスタ10の意匠面の一部を構成している。クラスタ10では、被取付部材12に対し取付部材26が取付けられることにより上記開口部11が形成されている。取付部材26の被取付部材12への取付けは、同取付部材26を被取付部材12に対し後方から前方へ移動させて、それらの取付部材26及び被取付部材12を互いに接近させることによってなされる。開口部11には、図示しないが、空調装置から送られてきた空調用空気を車室に吹き出すとともに、その吹き出し方向を変更等する空調用レジスタが、機能部品として配置される。
【0021】
次に、被取付部材12及び取付部材26のそれぞれにおいて、取付けに関する部分について説明する。
<被取付部材12>
図2(a),(b)、図3図4及び図7に示すように、被取付部材12の右側の側枠部13の上端部には、略水平状態で左方へ突出する板状の被取付板部14が一体に形成されている。ここで、被取付部材12及び取付部材26の各部を特定するために、被取付板部14の厚み方向を高さ方向とし、同方向に対し直交し、かつ互いに直交する2方向を奥行き方向及び幅方向とする。本実施形態では、車幅方向(左右方向)が幅方向に該当し、前後方向が奥行き方向に該当し、上下方向が高さ方向に該当する。
【0022】
被取付板部14には、幅狭孔部16と、幅狭孔部16に対し左右方向における片側、本実施形態では右側に隣接する被挟持部18と、幅狭孔部16及び被挟持部18に対し、後側に隣接する幅広孔部17とが形成されている。幅狭孔部16及び幅広孔部17によって、被取付板部14を上下方向に貫通する係止孔15が形成されている。
【0023】
被取付板部14のうち、幅広孔部17を挟んで幅狭孔部16及び被挟持部18とは反対側の部分、すなわち、幅広孔部17よりも後側の部分を、被取付板部14の後枠部20というものとする。この後枠部20は、左右方向に細長い形状をなしており、被取付板部14の後端部の一部を構成している。本実施形態では、この後枠部20の前下端部に被係止部19が形成されている。
【0024】
後枠部20の後端面の下側の部分は、下傾斜面22によって構成されている。下傾斜面22は、前側ほど後述する取付本体部28から遠ざかるように、すなわち前側ほど低くなるように前後方向に対し傾斜している。
【0025】
また、後枠部20の後端面の上側の部分は、上傾斜面21によって構成されている。上傾斜面21は、前後方向における後側ほど上記取付本体部28から遠ざかるように、すなわち後側ほど低くなるように前後方向に対し傾斜している。
【0026】
被取付板部14の後端部であって、幅広孔部17及び上記後枠部20の左方に隣接した箇所には、後端面から前方へ延びる(凹む)凹部23が形成されている(図10参照)。凹部23は被取付板部14の上下方向における全領域にわたって形成されている。
【0027】
<取付部材26>
図2(a)、図5及び図6に示すように、取付部材26において、開口部11の上側に位置する箇所には、左右方向に細長い上枠部27が形成されている。図6及び図9に示すように、上枠部27は、略水平な状態で左右方向に延びる取付本体部28と、後側ほど低くなるように、取付本体部28に対し傾斜した状態で左右方向に延びる傾斜部29とを備えている。傾斜部29は、その前上端部において取付本体部28の後端部に繋がっている。
【0028】
図4図6及び図10に示すように、取付部材26において被取付板部14の後方となる箇所である右端部には、同被取付板部14の係止孔15に係止される挿通部31と、凹部23に嵌合される凸部35と、被係止部19に係止される係止部36とが形成されている。
【0029】
挿通部31は、取付本体部28から下方へ突出している。挿通部31は、上記幅広孔部17に対し上下方向に挿通することのできる形状及び大きさを有している。より詳しくは、挿通部31の左右方向の寸法は、幅広孔部17の同方向の寸法よりも僅かに小さく設定されている。また、挿通部31の前後方向の寸法は、幅広孔部17の同方向の寸法よりも僅かに小さく設定されている。挿通部31は、挿通本体部32及び挟持部33を備えている。挿通本体部32は、幅狭孔部16よりも僅かに左右方向に幅狭に形成されており、取付部材26を前後方向へ移動させた場合に、その移動に伴い、幅狭孔部16内を前後方向へスライドすることが可能である。挟持部33は、挿通本体部32の下端部であって、同挿通本体部32の前後方向における全領域から右方へ延びていて、板状をなしている。挟持部33は、挿通本体部32とともに前後方向へ移動して、取付本体部28とともに被挟持部18を上下方向における両側から挟み込むことが可能である。
【0030】
挟持部33の前端部の上側の面は、傾斜面34によって構成されている。傾斜面34は、前側ほど被挟持部18から遠ざかるように、すなわち前側ほど低くなるように前後方向に対し傾斜している。
【0031】
凸部35は、傾斜部29の前面であって、被取付板部14における凹部23の後方となる箇所から、前方へ向けて延びている。凸部35は左右方向を自身の厚み方向とする板状をなしている。凸部35は、挿通本体部32の上記前方へのスライドに伴い凹部23に嵌合される。凸部35の前後方向の寸法は、取付部材26が被取付部材12に取付けられた状態で、同凸部35が凹部23の奥部である前端部まで嵌合することのできる寸法に設定されている。
【0032】
係止部36は、傾斜部29の前面であって、被取付板部14における被係止部19の後方となる箇所から前方へ向けて延びている。係止部36は、被取付板部14を挟んで取付本体部28とは反対側、すなわち、被取付板部14の下側に位置している。係止部36は、自身の前端部であって、下記条件を満たす箇所に、上方へ突出し、かつ被係止部19に対し、下側から引っ掛けられることにより係止される爪部36aを有している。条件とは、凸部35が凹部23の奥部(前端部)まで嵌合された状態で、爪部36aが被係止部19に係止されることである。
【0033】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
取付部材26の被取付部材12への取付けは、例えば、次のようにして行なわれる。取付部材26が被取付部材12の後側から前側に向けて移動させられる。この移動に伴い、取付部材26の挿通部31、係止部36及び凸部35がそれぞれ、被取付板部14に接近する。上記移動の途中で、挿通部31が、被取付板部14の後枠部20における上傾斜面21に接触する。上傾斜面21は、後側ほど取付本体部28から遠ざかるように、すなわち後側ほど低くなるように、前後方向に対し傾斜している。そのため、挿通部31が上傾斜面21に接触しやすい。また、挿通部31が上記上傾斜面21に接触した後も、取付部材26が前方へ移動させられると、その移動に伴い、挿通部31が上傾斜面21上を摺動することで徐々に上昇させられ、被取付板部14における幅広孔部17の上側の開口部に近づけられる。挿通部31は、上傾斜面21を通過すると、上記上側の開口部に到達する。このようにして、上傾斜面21によって、挿通部31が幅広孔部17の上側の開口部に導かれる。
【0034】
挿通部31が上記上側の開口部に到達すると、挟持部33の前側に被挟持部18が位置し、同被挟持部18が挟持部33に接触することで、同挟持部33がそれ以上前方へ移動するのを妨げようとする。そのため、挟持部33が幅広孔部17から下方へ飛び出すまで、取付部材26が下側へ移動させられる。すると、被挟持部18と挟持部33とが上下方向にずれ、挟持部33の前方への移動を妨げるものがなくなる。挟持部33が幅広孔部17から下方へ飛び出した状態で、取付部材26が再び前方へ移動させられる。挿通部31における挿通本体部32が幅狭孔部16の壁面に沿って前方へスライドする。
【0035】
ここで、挟持部33の前端部における上側の傾斜面34が、被挟持部18の後端部に接触する。傾斜面34は、前側ほど低くなるように、前後方向に対し傾斜している。そのため、傾斜面34において挟持部33が被挟持部18に接触した後も、取付部材26が前方へ移動させられると、その移動に伴い挟持部33が、被挟持部18を挟んで取付本体部28とは反対側である下側へ導かれる。挟持部33は、取付本体部28とともに被挟持部18を上下方向における両側から挟み込む。
【0036】
また、取付部材26の上記移動の途中で凸部35が凹部23に嵌入し始める。
さらに、挿通本体部32の前方への上記スライドに伴い、係止部36の爪部36aが被係止部19に接近する。この接近の途中で、爪部36aが、後枠部20の後端面の下側の下傾斜面22に接触する。この下傾斜面22は、前側ほど取付本体部28から遠ざかるように、すなわち前側ほど低くなるように同奥行き方向に対し傾斜している。そのため、爪部36aが下傾斜面22に接触した後も、取付部材26が前側へ移動させられると、その移動に伴い係止部36が徐々に弾性変形しながら爪部36aが後枠部20を乗り上げる。
【0037】
そして、挿通本体部32の上記スライドに伴い、凸部35が凹部23の奥部まで嵌合されると略同時に、爪部36aが後枠部20を乗り越える。すると、係止部36が弾性復元力によって、後枠部20を乗り越える前の形状に戻ろうとする。図8に示すように、爪部36aが被係止部19に対し下側から引っ掛けられて、同被係止部19に係止された状態になる。爪部36aが下傾斜面22上を摺動することで、上記係止部36の弾性変形が取付部材26の前方への移動に伴い徐々に行なわれるため、一気に弾性変形される場合に比べ、爪部36aは後枠部20をスムーズに乗り越えることができる。
【0038】
図9及び図10に示すように、取付部材26は、係止部36の爪部36aが係止された被係止部19と、凸部35が嵌合された凹部23における奥部の壁面とによって、前後方向へ動くことを規制される。また、取付部材26は、凸部35が嵌合された凹部23の左右方向における両壁面によって、同左右方向へ動くことを規制される。また、取付部材26は、取付本体部28及び挟持部33の間の被挟持部18によって、上下方向へ動くことを規制される。このようにして、取付部材26は、前後方向、左右方向及び上下方向のいずれの方向へも動くことを規制された、すなわち、位置決めされた状態で被取付部材12に取付けられる。
【0039】
上記のように、本実施形態によれば、取付部材26を被取付部材12の後方から前方へ移動させて、両者を接近させるといった簡単な作業を行なうだけで、取付部材26を被取付板部14において被取付部材12に取付けることができ、取付けの作業性及び作業効率がよい。
【0040】
本実施形態では、別体のクリップを用いていないため、同クリップを収容及び保持するスペースや、同クリップが弾性変形するスペース等を確保しなくてすむ。また、取付部材26の被取付部材12への取付けに係わる係止孔15、被係止部19及び凹部23が、上下方向を厚み方向とする板状の被取付板部14に集約されている。そのため、奥行き方向、幅方向及び高さ方向のそれぞれにおける取付部分の寸法が同程度となる場合(別体のクリップを用いた従来技術がこれに相当する)に比べ、上下方向における取付部分の寸法を小さくすることができる。取付部材26の被取付部材12に対する取付部分の小型化を図ることができる。
【0041】
さらに、上記のように、取付部分が小さくなるため、その取付部分がクラスタ10の意匠に及ぼす影響が小さくなる。その分、クラスタ10の意匠の自由度を高めることができる。
【0042】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、被係止部19が、被取付板部14のうち、幅広孔部17を挟んで幅狭孔部16及び被挟持部18とは反対側の部分、すなわち、幅広孔部17よりも後側の後枠部20に形成されている。本実施形態では、上記後枠部20を、被係止部19の形成箇所として利用している。そのため、被係止部19を形成する箇所を被取付板部14に別途設けなくてもすむ。
【0043】
・被係止部19及び係止孔15が左右方向における略同一の箇所に形成されている。これに加え、凹部23が、係止孔15及び被係止部19の側方に隣接する箇所に形成されている。そのため、被取付板部14の左右方向の寸法が小さくてすむ。取付部材26の被取付部材12に対する取付部分の左右方向における寸法を小さくすることができる。この点において、本実施形態は、上記取付部分のさらなる小型化を図ることができる。
【0044】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・被取付部材12及び取付部材26の少なくとも一方は、樹脂とは異なる材料によって形成されてもよい。
・被取付板部14は、被取付部材12の他の部分とは別の部材によって構成されてもよい。また、挿通部31、凸部35及び係止部36の少なくとも1つは、取付部材26の他の部分とは別の部材によって構成されてもよい。
【0046】
・被取付板部14が上記実施形態とは異なる態様で配置されてもよい。例えば、被取付板部14は、厚み方向が左右方向になるように配置されてもよい。また、被取付板部14は、水平方向及び鉛直方向の両者に対し傾斜した状態で配置されてもよい。
【0047】
・被係止部19が、被取付板部14の後枠部20とは異なる箇所に形成されてもよい。
・上記実施形態とは逆に、凹部23が取付部材26に形成され、凸部35が被取付板部14に形成されてもよい。
【0048】
・凹部23及び凸部35の組合せが2以上設けられてもよい。
・被取付板部14における被挟持部18が、幅狭孔部16の右側に代えて左側に形成されてもよい。また、被挟持部18が左右方向における幅狭孔部16の両側に形成されてもよい。前者の場合には、挿通部31における挟持部33が挿通本体部32の左側に形成され、後者の場合には左右方向における両側に形成される。
【0049】
・幅広孔部17が、幅狭孔部16及び被挟持部18に対し前側に隣接する箇所に形成されてもよい。
・上記実施形態とは逆に、係止部36が被取付板部14に設けられ、被係止部19が取付部材26に設けられてもよい。
【0050】
・上記実施形態とは逆に、符号26で示される部材が被取付部材とされ、符号12で示される部材が取付部材とされてもよい。
・取付部材26の被取付部材12への取付けに際し、取付部材26に代えて、被取付部材12が、前後方向のうち取付部材26に接近する側へ移動させられてもよいし、取付部材26及び被取付部材12の両方が、互いに接近する側へ移動させられてもよい。
【0051】
これとは逆に、取付部材26及び被取付部材12の少なくとも一方が、それらが互いに離間する方向へ移動させられることで、取付部材26が被取付部材12に取付けられてもよい。
【0052】
・上記部材の取付構造は、クラスタとは異なる車両用内装品、例えば、クラスタを有しない一般的なインストルメントパネル、コンソールボックス等にも適用可能である。
また、上記部材の取付構造は、複数の部材によって構成され、そのうちの2つの部材の一方が被取付板部を有する被取付部材であり、他方が取付部材であることを条件に、車両用内装品とは異なる製品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…クラスタ
11…開口部
12…被取付部材
14…被取付板部
16…幅狭孔部
17…幅広孔部
18…被挟持部
19…被係止部
23…凹部
26…取付部材
28…取付本体部
31…挿通部
32…挿通本体部
33…挟持部
35…凸部
36…係止部
36a…爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10