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特許7172967方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤およびそのスラリー並びにそのスラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法
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  • 特許-方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤およびそのスラリー並びにそのスラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法 図1
  • 特許-方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤およびそのスラリー並びにそのスラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法 図2
  • 特許-方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤およびそのスラリー並びにそのスラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法 図3
  • 特許-方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤およびそのスラリー並びにそのスラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤およびそのスラリー並びにそのスラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/00 20060101AFI20221109BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20221109BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20221109BHJP
   C21D 9/46 20060101ALN20221109BHJP
   C22C 38/60 20060101ALN20221109BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20221109BHJP
   C22C 38/02 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C23C22/00 A
C21D8/12 B
H01F1/147 183
C21D9/46 501B
C22C38/60
C22C38/00 303U
C22C38/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019216946
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085090
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 俊人
(72)【発明者】
【氏名】寺島 敬
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-082472(JP,A)
【文献】特開2007-246973(JP,A)
【文献】特開2000-026922(JP,A)
【文献】特開昭62-127478(JP,A)
【文献】特開平09-316654(JP,A)
【文献】特開平08-188828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00-22/86
C21D 8/12
H01F 1/147
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgOと、分解温度、沸点および昇華温度の少なくとも一つが553K以下、分子量が水和分を除いて150以上並びに、親水基を有する水溶性の有機化合物(金属塩を除く)である添加剤とからなり、かつ上記有機化合物を上記MgO:100質量部に対して0.010~1.5質量部含有する方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤を用いたスラリーであって、塑性粘度を0.50~3.0mPa・s、降伏値を0.050~0.40Paおよび表面張力を70.0~75.0mN/mとすることを特徴とする、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤スラリー。
【請求項2】
前記方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤に、さらに、助剤として、Li、Na、K、Mg、Sr、Ca、Ba、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Si、Cu、Sb、Pb、Sn、Al、Bi、Nb、Mo、Wおよびランタノイドの、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物およびリン酸塩の内から選んだ1種または複数種を、前記MgO:100質量部に対して0.010~20質量部添加することを特徴とする、請求項1に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤スラリー
【請求項3】
C:0.020~0.10質量%およびSi:2.0~4.5質量%を含有する方向性電磁鋼板用スラブを、加熱後熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、1次再結晶焼鈍を施し、次いで、焼鈍分離剤スラリーをロールコーターにより塗布してから乾燥し最終仕上げ焼鈍を行う、一連の工程により方向性電磁鋼板を製造するにあたり、
上記ロールコーターの線速度を1.5m/s以上として請求項1または2に記載の焼鈍分離剤スラリーを塗布し、塗布後の乾燥温度を調整し、最終仕上焼鈍後の残留炭素量を40ppm以下とすることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変圧器その他の電気機器の鉄芯等に用いられる方向性電磁鋼板の製造に用いるもので、特に、脱炭焼鈍後の鋼板に塗布する焼鈍分離剤スラリー、およびそのスラリーに用いて好適な焼鈍分離剤、並びにその焼鈍分離剤スラリーを用いた方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板の製造工程は、鋼スラブを、熱間圧延後に冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を施したのち最終仕上げ焼鈍を行うのが一般的である。このうち、最終仕上げ焼鈍中に2次再結晶が起こり、圧延方向に磁化容易軸の揃った粗大な結晶粒が生成する。
【0003】
上記脱炭焼鈍および最終仕上げ焼鈍は長い時間を要するため、かかる焼鈍中の鋼板の焼付き防止を目的として、通常、焼鈍前にMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布する。そして、このMgOは焼鈍分離剤としての役割以外に、脱炭焼鈍時にSiO2を主体とする酸化層と反応することにより、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成させるという働きがある。
【0004】
また、焼鈍分離剤の特性は、析出物の生成およびその成長挙動や、結晶粒の成長挙動など、地鉄部の組織に影響を及ぼすため、方向性電磁鋼板の製品特性に大きく影響する。
たとえば、焼鈍分離剤をスラリー化した際、そのスラリー化のための水分量が多すぎると、焼鈍中の鋼板に持ち込まれる水分が多くなって、鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜に点状欠陥が生成したりする。あるいは、焼鈍分離剤中に含まれる不純物によっては、その不純物が、焼鈍中、鋼中に侵入することによって2次再結晶挙動やフォルステライト被膜の形成挙動が変化すること等も知られている。
【0005】
ここで、焼鈍分離剤は、一般に、水で懸濁させてスラリーとしたのち、ロールコーターにより鋼板に塗布される。しかし、このスラリーは、上述した水分量の問題から、その水分量を増やすことができないため、粘度が高く固化しやすい。そのため、かかる鋼板への塗布は、ロールコーターの配管のノズル詰まりや、スラリーを保存するタンクへの固結分の付着、鋼板に塗布したときのリビングと呼ばれるスジ状の塗布模様(以下、単にリビングという)が発生する等の種々のトラブルを抱えている。
【0006】
その中でもリビングは、最終的な製品の被膜欠陥にもつながるために発生を抑止する必要性は高い。加えて昨今、生産性を上げるために、塗布ラインを高速化する必要性が高まっているが、そうするとリビングが一層顕著に発生する。従って、これを解決することはさらに重要な課題となっている。
【0007】
上述したような焼鈍分離剤スラリーにかかるトラブルの防止のために、これまで様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1では、焼鈍分離剤スラリーのスラリー化直後から2時間経過後の粘度上昇量が、B型粘度計により測定した値で20%以下となるように、カルボン酸またはカルボン酸のマグネシウム塩を添加して調整する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2では、焼鈍分離剤スラリーにチキソトロピー性を有させることで、タンクや配管での焼鈍分離剤の沈殿防止とロールコーターでの塗布性を両立させる方法を開示している。
【0009】
特許文献3には、スラリー状焼鈍分離剤を塗布する際の重力数Ngを所定の範囲内に制御する方法が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献4では粘度を安定させるためにリン酸化合物を添加する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2007-246973号公報
【文献】特開2005-2362号公報
【文献】特開平9-316654号公報
【文献】特開昭54-60279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では改善は不十分であり、スラリー化直後から粘度が高い条件では、リビングの発生が防止できなかった。
【0013】
特許文献2に記載の方法は、膜なし材を対象とした改善策であり、通常の膜付材では被膜が劣化してしまうという問題があった。
【0014】
特許文献3に記載の方法では、液の密度やロール速度、ロールギャップなどの通常の処理条件を微調整する方法であり、これのみでは効果に限界があった。
【0015】
特許文献4に記載の方法では、添加したリンが被膜形成に悪影響を及ぼす上に、粘度が高くなるためさらにリビングが発生しやすくなるという問題があった。
【0016】
これらのほかにも、焼鈍分離剤スラリーの条件を種々変更して、塗布性や、作業性を改善する方法は、様々に考案されているが、いずれも十分でなく、結局の所、トラブル発生を抑えるために塗布速度を低下させて操業せざるを得ず、生産効率を落とす原因となっていた。
【0017】
この発明は、前記した事情に鑑みなされたものであり、焼鈍分離剤スラリーの改善により塗布性、作業性の問題を生じることなく、高能率で生産できる方向性電磁鋼板の製造方法を、かかる製造に用いる焼鈍分離剤スラリーおよびそのスラリーに用いて好適な焼鈍分離剤と共に提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
その要旨構成は以下のとおりである。
1.MgOと、添加剤である、分解温度、沸点および昇華温度の少なくとも一つが553K以下および、分子量が水和分を除いて150以上であり、親水基を有する水溶性の有機化合物とからなり、上記MgO:100質量部に対して上記有機化合物を0.010~1.5質量部含有することを特徴とする、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。
【0019】
2.前記焼鈍分離剤に、さらに、助剤として、Li、Na、K、Mg、Sr、Ca、Ba、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Si、Cu、Sb、Pb、Sn、Al、Bi、Nb、Mo、Wおよびランタノイドの、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物およびリン酸塩の内から選んだ1種または複数種を、前記MgO:100質量部に対して0.010~20質量部添加することを特徴とする、前記1に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。
【0020】
3.前記1または2に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤を用いたスラリーであって、塑性粘度を0.50~3.0mPa・s、降伏値を0.050~0.40Paおよび表面張力を70.0~75.0mN/mとすることを特徴とする、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤スラリー。
【0021】
4.C:0.020~0.10質量%およびSi:2.0~4.5質量%を含有する方向性電磁鋼板用スラブを、加熱後熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、1次再結晶焼鈍を施し、次いで、焼鈍分離剤スラリーをロールコーターにより塗布してから乾燥し最終仕上げ焼鈍を行う、一連の工程により方向性電磁鋼板を製造するにあたり、
上記ロールコーターの線速度を1.5m/s以上として前記3に記載の焼鈍分離剤スラリーを塗布し、塗布後の乾燥温度を調整し、最終仕上焼鈍後の残留炭素量を40ppm以下とすることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、スラリー状の焼鈍分離剤を改良するものであって、本発明に従う焼鈍分離剤スラリーを用いれば、高速で焼鈍分離剤を鋼板に塗布してもリビングを発生させず均一な塗布外観を得ることができ、その結果、磁気特性および被膜特性の良好な方向性電磁鋼板を製造することが可能となり、もって方向性電磁鋼板の品質向上に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】焼鈍分離剤スラリー塗布後の外観写真を示す図である。
図2】ずり速度とずり応力の関係を示す図である。
図3】I-カンホロン酸添加量と塑性粘度の関係を示す図である。
図4】I-カンホロン酸添加量と降伏値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明者らは、方向性電磁鋼板の焼鈍分離剤スラリーの塗布性改善のために種々実験を行った。その結果、かかる焼鈍分離剤スラリーに用いる焼鈍分離剤として、MgOと所定の添加剤とからなり、さらに、かかる添加剤は、分解温度、沸点および昇華温度の何れか一つが553K以下であって、分子量が水和分を除いて150以上であり、水溶性であって、親水基を有する有機化合物とし、かかる有機化合物を、上記MgO:100質量部に対して0.01~1.5質量部含有したものを用いることにより、かかる焼鈍分離剤を用いた焼鈍分離剤スラリーの塗布作業性が格段に改善することを新規に見出した。
まず、この発明を達成する基となった実験結果について述べる。
【0025】
C:0.070質量%(以下、鋼板成分の質量%は、単に%で表す)、Si:3.3%、Mn:0.070%、Al:0.020%、N:0.080%およびSe:0.020%を含み、残部は実質的にFeよりなる鋼スラブを、1653Kの温度で30分間加熱、均熱後、熱間圧延して板厚:2.2mmにしたのち、1323K、1分間の条件の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延で0.23mmの最終板厚の鋼板に仕上げた。その後、かかる鋼板に脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主体とする焼鈍分離剤をスラリー状にしてロールコーターにより塗布し、乾燥して最終仕上げ焼鈍を行った。
【0026】
このとき、上記焼鈍分離剤中にMgO:100質量部に対して炭酸ストロンチウムを3.0質量部添加し、また、I-カンホロン酸(別名:(-)-2,3-ジメチル-1,2,3-ブタントリカルボン酸、分解温度:345K、分子量:218、水溶性)を0.50質量部添加して、水:500質量部を加えて懸濁しスラリーとした。懸濁後、かかるスラリーを、線速度:3.0m/sとしたロールコーターで鋼板に塗布後、573Kで1分間乾燥させた。そのときの塗布外観を図1に示す。参考として、I-カンホロン酸を加えない条件のものは、上記の脱炭焼鈍後の鋼板に、その他の条件は同条件として、塗布や乾燥を行った。図1に両者の塗布外観を示したとおり、I-カンホロン酸を加えない条件ではリビングが発生しているのに対して、I-カンホロン酸を添加した条件ではリビングの発生がなく、均一な塗布外観が得られている。
【0027】
このメカニズムを確認するために、I-カンホロン酸の添加量を種々に変更したときのスラリーの動粘度測定を行った。動粘度測定はブルックフィールド社製レオメーターを用い、ずり速度13.2~330/sで、各速度5s保持してトルクがほぼ一定となったときの値からずり応力-ずり速度の関係を求めた。なお、I-カンホロン酸を加えない従来条件で測定した結果を図2に示す。ずり応力とずり速度が直線関係を持たないことから、これらのスラリーはニュートン流体でなく動粘度特性を持っていることが分かる。
【0028】
次に、上記ずり応力-ずり速度の関係を測定した結果を基に、Casson式を用いて塑性粘度、降伏値を求めた。なお、Casson式は
√σ = τ+η√D
(σ:ずり応力、D:ずり速度、τ:降伏値、η:塑性粘度)
で表される。
このCasson式は、粒体内に高濃度の粒子が存在している場合によく適合するとされている。また、降伏値と塑性粘度はそれぞれ、低ずり速度、高ずり速度での粘度に対応することが知られている。
【0029】
上記Casson式を用いて求めた降伏値と塑性粘度を図3および図4に示す。これらの図からわかるように、I-カンホロン酸を適量添加した条件では塑性粘度、降伏値とも低下していることが分かる。従って、I-カンホロン酸を添加することにより、スラリーの粘度が低下してリビングの発生が抑えられたことが分かる。
【0030】
I-カンホロン酸を添加することによる粘度が低下した原因について、発明者らは以下の通り考える。
まず、液の粘度の要因としては、(1)液そのものの粘度、(2)粉体粒子が凝集体となった際に、かかる凝集体にずり速度を与えてその凝集体を移動させたり凝集形態を変化させたりするのに要する応力により発生する粘度、(3)粉体粒子の回りに液分子が吸着することにより、流動にかかる液量が低下することに起因する粘度などが考えられる。これらのうち、特に、(2)に起因する凝集による粘度分がニュートン流体とは異なる粘度、すなわち動粘度を発生させる要因となる。
【0031】
次に、ロールコーターで塗布する際の液の挙動を考えると、塗布液がロールを通過する際、ロール出側では、液がロールに引き込まれる方向に応力が働く。そのため、液は表面張力によりロールニップ部で曲率を持った曲面形状となってメニスカスを形成する。ここで、塗布速度が速くなると、特に、本発明の対象となるスラリーのように動粘度特性を持っている液体の場合、液体が流動する速度に追いつかなくなるため、ロールニップ部はきれいな曲面とならずに、液体がフィラメント状に分裂する。このようなフィラメント状になった液体は、ロール出側の液膜厚の部分的な増大をもたらす。その結果、かかる液体には、リビングが発生することになる。
ここで、塗布液中の粉体粒子に凝集が生じて粘度が高まると、メニスカス部での液の流動が低下し、フィラメント状の分裂が激しくなる。その結果、リビングがより発生しやすくなるものと考えられる。
【0032】
従って、鋼板に、ロールコーターで焼鈍分離剤を塗布する際のリビングの発生を抑制するには、前記(2)による粘度の抑制、すなわち主体であるMgOの粉体粒子を分散させて、その凝集を抑えることが重要であることがわかる。
MgOの粉体粒子を分散させるためには種々の分散剤が考えられ、一般的には市販の強力な界面活性剤が考えられる。しかしながら、市販の界面活性剤をそのまま使用しただけでは、発泡する可能性がある。発泡すると、これ自体がリビングの発生原因となり、また、タンクから配管をとおってロールコーターに給液するまでの間に気泡を巻き込んで、給液トラブルが発生する原因にもなる。これらのことから、市販の強力な界面活性剤は容易には使用できない。
【0033】
これに対して、上記I-カンホロン酸は、三つの親水基であるカルボキシ基をもち、これがMgO表面に吸着してMgOの表面電位を下げることによりMgO粒子同士の接着力を抑えることができる。かつI-カンホロン酸の分子量は218と大きく、立体障害が発生しやすい、そして、この立体障害が発生すると、MgO粒子は、さらに凝集しにくくなる。
これらの効果によって、I-カンホロン酸を添加したスラリーの粘度が低下したと考えられる。そして、スラリーの粘度が低下した結果、スラリー塗布時のリビング発生が効果的に抑えられたものと考えられる。
【0034】
ここで、本発明では、親水基を持つ有機化合物を用いることに特徴があるが、MgO表面に吸着してMgOの表面電位を下げるには、上記有機化合物に親水基が一つあれば、十分である。
【0035】
また、I-カンホロン酸は、分解温度が445Kと低い有機化合物であることもポイントとなる。MgOを鋼板に塗布した後、乾燥させるためにこれを加熱するが、分解温度が低いと、焼鈍分離剤中の有機化合物は、この乾燥中に分解、揮発する。仮に、分解温度が高く、焼鈍分離剤の乾燥中に分解、揮発しない場合は、乾燥後にも鋼板表面に有機分が残留し、そのままコイル状に巻き取られたあと高温長時間の仕上焼鈍に曝されることになる。コイルはタイトにまかれるので、仕上焼鈍中に発生したガスは容易にコイル層間から排出されない。
【0036】
そこで、発明者らは、有機化合物の分解温度の上限に関し考察した結果、MgOスラリーの乾燥温度に着目した。乾燥温度が高すぎると水和したMgOが分解して仕上焼鈍中の持ち込み水分量が変わるため、品質に影響が出るからである。そして、MgOの水和水は573K前半から発生し始めるので、本発明における上記分解温度の上限は553Kとした。なお、かかる温度は分解温度に限らず、沸点や昇華温度でも同じ効果を得ることができるので、本発明では、分解温度、沸点および昇華温度(以下、単に分解温度等と記す)いずれか一つの値が553K以下であれば良いと規定した。
【0037】
ここで、焼鈍分離剤の添加物の分解温度等が553Kを超えると、該添加物は乾燥時に十分分解しないので、高温まで鋼板表面に該添加物中の炭素分が残留し、その結果、鋼板にかかる炭素分が浸入(浸炭)してしまう。特に、乾燥後の鋼板表面の炭素量が0.10g/m2を超えると鋼板の磁気特性の劣化につながるおそれがある。従って、本発明では、焼鈍分離剤への添加物の分解温度等を553K以下で調整して、乾燥後の鋼板表面の炭素量を0.10g/m2以下とすることが重要である。
【0038】
上記知見を基に完成された本発明の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤スラリーの各要件の限定理由について以下に述べる。
本発明の焼鈍分離剤スラリー中の固形分である焼鈍分離剤の主剤はMgOとし、かかるMgOは少なくとも焼鈍分離剤の50質量%以上含有されていることが好ましい。MgOが50質量%に満たないと、被膜形成の主成分が不足するからである。
【0039】
本発明は、スラリーの固形分として、MgOに、添加剤として、分解温度等の何れか一つが553K以下、分子量が水和分を除いて150以上であって、水溶性であり、親水基を有する水溶性の有機化合物を添加することに特徴がある。
また、本発明で有機化合物を用いるのは、有機化合物であれば、除去しやすいため、不純物として残らず、かつMgO表面に吸着してMgOの表面電位を効果的に下げることができるからである。
【0040】
上記有機化合物は、上述したとおり少なくとも一つの親水基を有する水溶性の有機化合物であれば良い。化合物の組成式中、親水基を一つでも持つことにより、MgOの表面に吸着し、凝集を効果的に防ぐことができるからである。また水溶性であることは、上記有機化合物を効果的にMgO表面に吸着させるためである。
親水基の種類は特に限定されないが、水酸基・カルボキシ基等が好ましい。
【0041】
上記有機化合物の、分解温度等のうち、少なくとも一つの温度は553K以下とする。これにより塗布後の乾燥時点で速やかに排出される。前述したように、553Kを超えると、乾燥後も残存してコイルに巻きとられ、仕上焼鈍中に浸炭し、鋼板の磁気特性を劣化させる原因となるからである。
上記分解温度等の何れかの温度の下限に特に限定はないが、取扱い上の観点から室温程度である。
【0042】
上記有機化合物の分子量は水和分を除いて150以上とする。I-カンホロン酸の分子量は218であるが、種々の有機化合物を鋭意調査したところ、本発明では、分子量は水和分を除いて150以上であることが必要であることがわかった。150に満たないと、立体障害によるMgOの凝集抑制効果が期待できないからである。
上記分子量の上限に特に限定はないが、工業的には数千程度である。
なお、本発明用いる有機化合物は、金属塩として添加することも可能である。
【0043】
上記有機化合物の添加量は、MgO:100質量部に対して0.010~1.5質量部含有するものとする。かかる有機化合物の添加による焼鈍分離剤スラリーの粘度を低下させる効果は、適正値があり、0.010質量部以上含有しないと効果がない。一方、1.5質量部を超える場合は、如何に低い分解温度の有機化合物を用いても、乾燥後の鋼板表面にかかる有機化合物が残留して浸炭するおそれがある。そのため、上記有機化合物の添加量の上限は1.5質量部に限定する。
【0044】
焼鈍分離剤をスラリーにする際の水の量は、固形分である焼鈍分離剤:100質量部に対して500~1200質量部の割合とすることが望ましい。水量が少なすぎると粘度を適正な値に保つことができない。一方、水量が多すぎると、鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜に点状欠陥が生成したりするばかりか、必要な塗布量を確保できない。
【0045】
本発明は焼鈍分離剤スラリーの、塑性粘度を0.50~3.0mPa・s、降伏値を0.050~0.40Paおよび表面張力を70.0~75.0mN/mの範囲とそれぞれに限定することが肝要である。
塑性粘度と降伏値が上記範囲より低いと、必要な塗布量を確保することができなくなる。一方、塑性粘度と降伏値が上記範囲を超えると、焼鈍分離剤スラリーの塗布時にリビングが発生してしまう。また、表面張力が上記範囲より低いと、ロールコーターでスラリーを塗布した際に、ロールコーターと鋼板表面との接触面においてスラリーが分裂するときにフィラメントが生じてリビングが発生しやすくなる。一方、表面張力が上記範囲を超えると、液ハジキでやはりリビングが発生する。
そのため、本発明では、焼鈍分離剤スラリーの、塑性粘度、降伏値および表面張力を、それぞれ上記範囲に限定する。
【0046】
また、本発明の焼鈍分離剤スラリーの塑性粘度を0.50~3.0mPa・sの範囲に調整するには、公知のスラリーの塑性粘度の調整方法を取ることができる。
【0047】
本発明の焼鈍分離剤スラリーの降伏値を0.050~0.40Paの範囲に調整するには、公知のスラリーの降伏値の調整方法を取ることができる。
【0048】
本発明の焼鈍分離剤スラリーの表面張力を70.0~75.0mN/mの範囲に調整するには、公知のスラリーの表面張力の調整方法を取ることができる。
【0049】
本発明の焼鈍分離剤には、磁気特性や被膜特性等を向上させる観点から、さらに助剤として、以下の元素の塩等の化合物を添加することもできる。具体的には、Li、Na、K、Mg、Sr、Ca、Ba、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Si、Cu、Sb、Pb、Sn、Al、Bi、Nb、Mo、Wおよびランタノイドの、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩等が用いられる。これら助剤は、いずれか1種のみ用いても良いし、複数種を組み合わせて用いることも可能である。
【0050】
これら助剤の添加量は、添加する場合、MgO:100質量部に対して0.010~20質量部とする。添加量が0.010質量部に満たないと添加効果がない。一方、添加量が20質量部を超えると、被膜形成が促進されて膜厚が過剰に厚くなってそれが部分的に剥離したり、インヒビターが強化されて仕上焼鈍中もその抑制力が失われずに二次再結晶が高温で一気に進んだりする結果、粒径が過度に大きくなって鉄損が低下したりして、かえって磁気特性や被膜が劣化する。
【0051】
前述した配合で構成された焼鈍分離剤スラリーをロールコーターで塗布する際のロール線速度は1.5m/s以上とする。
本発明では粘度を効果的に下げられるために、従来よりも早い線速度で塗布してもリビングは発生しない。しかし、上限は特に限定されないものの5.0m/sを超えると、本発明の条件下でもリビングが発生しやすくなるので、5.0m/s以下が望ましい。一方、下限は、1.5m/s未満では生産性が低下し、本発明の課題が解決しない。そのため、本発明では1.5m/s以上のロール線速度とする。
【0052】
本発明における焼鈍分離剤スラリーの塗布後の乾燥温度は、乾燥後の鋼板表面の炭素量を0.10g/m2以下とするように調整する。乾燥後の鋼板表面の炭素量が0.10g/m2を超えると、仕上焼鈍中に浸炭源となって鋼中のC量が高まり、最終仕上焼鈍後の残留炭素量が40ppmを超えてしまう。そのため、鋼板の磁気特性が劣化するからである。なお、上記仕上焼鈍後の残留炭素量は、公知の測定方法で確認できる。
具体的には、上記乾燥を添加した有機化合物の分解温度等のうちの最低温度を示すものの温度以上553K以下の温度で行えば良い。
分解温度等の何れの温度よりもさらに乾燥温度が低いと、コイルが巻き取られた段階でCが残留し、それが仕上焼鈍中に浸炭源となって鋼中のC量が高まり磁気特性が劣化しやすくなる。そのため、乾燥温度はこれらの温度中、少なくとも最低の温度以上とすることが好ましい。一方、乾燥温度の上限は特に限定されないが、553Kを超えるとMgOの水和水が分解して放出されるため、鋼板への焼鈍分離剤の付着性が低下して剥落しやすくなったり、仕上焼鈍中の反応性が低下して被膜が劣化したりする可能性がある。そのため、乾燥温度の上限は553K程度が好ましい。
【0053】
本発明に用いる鋼素材の成分組成ならびに鋼板の製造条件について、以下に述べる。
(成分組成)
C:0.020~0.10%
Cは、集合組織の改善をはかるもので、含有量が上記範囲外ではいずれも良好な集合組織が形成されない。したがって、その含有量は0.020%以上、0.10%以下とする。
【0054】
Si:2.0~4.5%
Siは、含有量が2.0%未満では鉄損の低減効果が弱まり、4.5%を超えると冷間圧延性が損なわれる。したがって、その含有量は2.0%以上、4.5%以下とする。
【0055】
CおよびSi以外では、Mnを含有させることが望ましい。Mnは、鋼の熱間加工性を改善する効果のある元素である。上記効果は、0.030%未満では十分ではなく、一方、1.0%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnを添加する場合は、0.030~1.0%の範囲とする。
【0056】
また、これらの成分のほかに、通常の方向性電磁鋼板用素材のようにインヒビター形成成分を添加することができる。インヒビターとしては、AlN、MnSおよびMnSe等がよく知られているがこれらのいずれを用いてもよい。
インヒビターに、MnS および/またはMnSeを用いる場合は、S+Se:0.010~0.030%の範囲でそれぞれ含有させることがよく、AlNを用いる場合は、Al:0.010~0.040%、N:50~120質量ppmの範囲でそれぞれ含有させることがよい。これらの範囲よりも少ないとインヒビターとしての効果が十分に作用しない一方で、多いと2次再結晶が不安定になる。最近は、インヒビター成分を用いない場合もあるが、その際、Alは0.010%以下、Nは50質量ppm以下およびS+Seは0.010%以下とするのが好ましい。
【0057】
また、これらのほかに、インヒビターとしてCu、Sn、Cr、Sb、Ge、Mo、Te、Bi、P、Ti、Tl、WおよびVなどをそれぞれ単独または複合して使用することもできる。この場合、有効な含有量としては、合計で0.010%以上、0.20%以下程度の範囲である。
なお、本発明に用いる鋼板において、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避不純物である。
【0058】
(製造条件)
上記好適成分組成を有する鋼スラブを、公知の方法に従い、加熱して熱間圧延し、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延により最終板厚にする。なお、必要に応じて、冷間圧延前に熱延板焼鈍を行うことも可能である。最終板厚となった最終冷延板は、一次再結晶焼鈍を行い、次いで、この発明に従う焼鈍分離剤スラリーを、この発明に従う方法で塗布して乾燥したのち、最終仕上焼鈍を行う。この最終仕上げ焼鈍は公知の方法で行うことでよい。また、その後、絶縁張力コーティング処理を施すこともよい。かかる処理工程によって優れた磁気特性ならびに被膜特性を有する方向性電磁鋼板を得ることができる。なお、必要に応じてレーザーや電子ビーム等で磁区細分化処理を行うことも可能である。
【実施例
【0059】
(実施例1)
C:0.060%、Si:3.4%、Mn:0.080%、Al:0.0060%、Sb:0.020%、Ti:0.010%、N:0.0030%およびCr:0.030%を含み、残部は実質的にFeよりなる鋼スラブを、1523Kで40分加熱後、熱間圧延して2.0mmの板厚にしたのち、1273K×60sの条件の熱延板焼鈍を行い、その後、タンデム圧延機による冷間圧延により、最終板厚:0.23mmの鋼板に仕上げた。この鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布して乾燥し、コイル状に巻き取った。
塗布したスラリーに用いた焼鈍分離剤は、MgOを主剤とした。また、主剤のMgO:100質量部に対し、助剤として酸化チタンを2.0質量部および硫酸ナトリウムを1.0質量部添加したもの、並びに添加剤として表1に示す各種有機化合物を各種濃度(質量部)で添加したものを、水和温度:293K、水和時間:40分で水和しスラリーとした。かくして得られた焼鈍分離剤を、ロールコーターで線速度:4.0m/sで上記鋼板に塗布し、523Kで30秒乾燥させた。この時の焼鈍分離剤の塗布量は、鋼板の両面で13g/m2とした。その後、最終仕上焼鈍として、1023Kから1373Kまでを10℃/hで昇温した後、H2雰囲気中1473Kで10時間保定する焼鈍を行った。続いて、絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて、1173K×60sの条件で焼付けた後、電子ビーム照射により磁区細分化処理を行った。
【0060】
【表1】
【0061】
かくして得られた塗布後の外観並びに各製品板の残留炭素量(残留C量)、磁気特性および被膜特性について、表1に併記する。本発明に適合した有機化合物を含有する焼鈍分離剤を用いた場合には、優れた塗布外観を持ち、最終仕上焼鈍後の残留C量も低いまま保たれている。その結果として、磁気特性、被膜特性も改善されている。
【0062】
(実施例2)
C:0.070%、Si:3.3%、Mn:0.070%、Al:0.020%、N:80質量ppm、S:0.020%およびBi:0.010%を含み残部は実質的にFeよりなる鋼スラブを、1673Kの温度に加熱したのち、板厚:2.2mmに熱間圧延し、1373K、1分間の条件の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により、0.23mmの最終板厚に仕上げた。この最終板厚の冷延板を脱炭焼鈍後、主剤をMgOとし、さらにMgO:100質量部に対して、有機化合物として0.20質量部のテンペニル酸(分子量:190.2、昇華温度:413K、水溶性、親水基数:1)に表2に記載する各種助剤を添加した焼鈍分離剤を、水和温度:293K、水和時間:40分で水和してスラリーとし、ロールコーターで線速度:4.5m/sで塗布し、473Kで20秒乾燥させた。この時の分離剤の塗布量は、両面で13g/m2とした。また、この時の焼鈍分離剤スラリーの塑性粘度、降伏値および表面張力と、鋼板の塗布外観の評価結果を表2に併記する。
【0063】
【表2】
【0064】
さらに、その後、最終仕上げ焼鈍として1093Kの温度で50時間保定したのち、ドライH2雰囲気中で1423K×5時間の純化焼鈍をそれぞれ行った。
かくして得られた塗布後の外観並びに各製品板の残留炭素量(残留C量)、磁気特性および被膜密着性の調査結果を、表2にそれぞれ示した。同表から明らかなように、いずれの助剤を用いても良好な塗布外観を示している。また、本発明に従う何れの結果からも本発明に従うことで良好な磁気特性が得られていることが分かる。
【0065】
(実施例3)
C:0.060%、Si:3.3%,Mn:0.070%,Se:0.020%およびSb:0.025%を含み残部は実質的にFeよりなる鋼スラブを、1673Kの温度に加熱したのち、板厚:2.2mmに熱間圧延し、1323K×2分間の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により、0.23mmの最終板厚に仕上げた。この冷延板を脱炭焼鈍後、主剤をMgOとした焼鈍分離剤のMgO:100質量部に対して、助剤なしのものと、助剤として、水酸化カルシウムを3.0質量部およびホウ酸リチウムを0.10質量部としたもの、並びに有機化合物としてクエン酸(水和分を除いた分子量210.1、分解温度448K、水溶性、親水基数:4)を0.2質量部添加したものを、水和温度293K、水和時間40分で水和しスラリーとした。ついで、かかる焼鈍分離剤スラリーをロールコーターで線速度を各種変更して塗布したのちに、乾燥温度を各種変更して、30秒乾燥させた。この時の焼鈍分離剤の塗布量は、両面で13g/m2とした。
その後、最終仕上げ焼鈍として1093Kの温度で50時間保定したのち、ドライH2雰囲気中で1423K×5時間の純化焼鈍をそれぞれ行った。かくして得られた塗布後の外観と各製品板の残留C量、磁気特性、被膜密着性の調査結果を表3-1(助剤なし)および表3-2(助剤あり)にそれぞれ記載する。
【0066】
【表3-1】
【0067】
【表3-2】
【0068】
表3-1および表3-2の記載から明らかなように、この発明の限定範囲内の適合例は、いずれも良好な塗布後外観と磁気特性を示している。
図1
図2
図3
図4