(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】膜分離システム及び膜分離システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 63/12 20060101AFI20221109BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20221109BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20221109BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B01D63/12
B01D61/58
B01D63/00 510
C02F1/44 D
(21)【出願番号】P 2019508272
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047437
(87)【国際公開番号】W WO2019146342
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018010253
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018031533
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルグ アクシャイ
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宜記
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】花田 茂久
(72)【発明者】
【氏名】武内 紀浩
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130840(JP,A)
【文献】特開2001-137672(JP,A)
【文献】特開2000-271454(JP,A)
【文献】特開昭61-161104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
有孔集水管と、
供給側の面と透過側の面とを有する分離膜の、前記供給側の面が向かい合うように配置された複数の分離膜対と、
前記分離膜対の供給側の面の間に設けられる供給側流路材と、
前記分離膜対の透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、を備え、
前記有孔集水管の周りに前記分離膜対、前記供給側流路材及び前記透過側流路材が巻回された、複数の分離膜エレメントE1が配置された分離膜エレメントユニットを備える、膜分離システムの運転方法であり、
前記複数の分離膜エレメントE1は、供給水を、透過水と濃縮水とに分離排出する状態S1と、供給水の全量を、濃縮水として排出する状態S2と、に切り替え可能であり、かつ、
前記複数の分離膜エレメントE1は、第一の分離膜エレメント及び第二の分離膜エレメントを含み、
前記第一の分離膜エレメントが備える前記分離膜対は、前記有孔集水管の長手方向における両端部に、原水供給部及び濃縮水排出部をそれぞれ有し、
前記第二の分離膜エレメントは、前記有孔集水管の長手方向に対し垂直方向における端部に、原水供給部又は濃縮水排出部を有する前記分離膜対を備え、
少なくとも一つの前記第一の分離膜エレメントが、前記第二の分離膜エレメントよりも前段に接続されており、
前記分離膜エレメントユニットに供給される原水における物質Xの濃度が、閾値A以上の場合における、前記状態S2の分離膜エレメントE1の数であるN1と、
前記原水における前記物質Xの濃度が前記閾値A未満の場合における、前記状態S2の分離膜エレメントの数であるN2と、
分離膜エレメントの総数であるN3とが、
N1<N2<N3
の関係を満たす、膜分離システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離システム及び膜分離システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水及びかん水等に含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギー及び省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の観点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜又は正浸透膜に分類される。これらの分離膜は、例えば海水、かん水及び有害物を含んだ水等からの飲料水の製造、工業用超純水の製造、並びに排水処理及び有価物の回収等に用いられており、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
【0003】
分離膜エレメントとしては様々な形態があるが、分離膜の一方の面に供給流体を供給し、他方の面から透過流体を得る点では共通している。分離膜エレメントは、束ねられた多数の分離膜を備えることで、1個の分離膜エレメント当たりの膜面積が大きくなるように、つまり1個の分離膜エレメント当たりで得られる透過流体の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型等の各種の形状が提案されている。
例えば、逆浸透ろ過には、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。スパイラル型分離膜エレメントは、有孔集水管と、有孔集水管の周りに巻回された積層体とを備える。積層体は、供給流体(つまり原水)を分離膜表面へ供給する供給側流路材、供給流体に含まれる成分を分離する分離膜、及び、分離膜を透過した透過側流体を有孔集水管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成される。スパイラル型分離膜エレメントは、供給流体に圧力を付与することができるので、透過流体を多く取り出すことができる点で好ましく用いられている。
【0004】
逆浸透膜を用いた処理用途としては、海水淡水化やかん水淡水化の他にも、近年では水道水中に含まれる不純物や微生物を分離除去する逆浸透浄水器用途が拡大しているが、造水コスト低減や環境負荷低減の要求の高まりから、回収率の高い膜分離システムが求められている。
例えば特許文献1に開示された膜分離システムでは、逆浸透膜モジュールを2段に接続し、さらに濃縮水をナノろ過膜モジュールに供給し、その透過水を原水ラインに循環させることによって回収率を高くしている。また、特許文献2に開示された膜分離システムでは、多段に配置した逆浸透膜モジュールにおいて前段と後段との膜面流速に差を設けることによって、高回収率化及び省エネルギー化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2011-189302号公報
【文献】日本国特許第3963304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1又は2記載の技術によれば、膜分離システムの回収率を高くすることは可能であるが、特に後段の分離膜モジュールへの原水の濃度が高くなってしまい、透過水の水質が悪化するとともに無機スケールが析出し、長期的に安定した性能を維持することが困難であった。
そこで本発明は、高回収率運転下においても、高い分離性能と長期性能安定性とを有する、膜分離システム及び膜分離システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の実施形態にかかる膜分離システムは、有孔集水管と、供給側の面と透過側の面とを有する分離膜の、上記供給側の面が向かい合うように配置された複数の分離膜対と、上記分離膜対の供給側の面の間に設けられる供給側流路材と、上記分離膜対の透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、を備え、上記有孔集水管の周りに上記分離膜対、上記供給側流路材及び上記透過側流路材が巻回された、複数の分離膜エレメントが接続された膜分離システムであって、上記複数の分離膜エレメントは、第一の分離膜エレメント及び第二の分離膜エレメントを含み、上記第一の分離膜エレメントが備える上記分離膜対は、上記有孔集水管の長手方向における両端部に、原水供給部及び濃縮水排出部をそれぞれ有し、上記第二の分離膜エレメントは、上記有孔集水管の長手方向に対し垂直方向における端部に、原水供給部又は濃縮水排出部を有する上記分離膜対を備え、少なくとも一つの上記第一の分離膜エレメントが、上記第二の分離膜エレメントよりも前段に接続されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の実施形態にかかる膜分離システムの運転方法は、有孔集水管と、供給側の面と透過側の面とを有する分離膜の、上記供給側の面が向かい合うように配置された複数の分離膜対と、上記分離膜対の供給側の面の間に設けられる供給側流路材と、上記分離膜対の透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、を備え、上記有孔集水管の周りに上記分離膜対、上記供給側流路材及び上記透過側流路材が巻回された、複数の分離膜エレメントが直列に接続されたエレメントユニットAを有し、上記エレメントユニットAは、第一の分離膜エレメント及び第二の分離膜エレメントを含み、上記第一の分離膜エレメントが備える上記分離膜対は、上記有孔集水管の長手方向における両端部に、原水供給部及び濃縮水排出部をそれぞれ有し、上記第二の分離膜エレメントは、上記有孔集水管の長手方向に対し垂直方向における端部に、原水供給部又は濃縮水排出部を有する上記分離膜対を備え、少なくとも一つの上記第一の分離膜エレメントが、上記第二の分離膜エレメントよりも前段に接続されている、膜分離システムにおいて、上記膜分離システムの必要透過水量に応じて、上記膜分離システムを構成する分離膜エレメントの一部の分離を停止する。
【0009】
本発明の他の実施形態にかかる膜分離システムの運転方法は、有孔集水管と、供給側の面と透過側の面とを有する分離膜の、上記供給側の面が向かい合うように配置された複数の分離膜対と、上記分離膜対の供給側の面の間に設けられる供給側流路材と、上記分離膜対の透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、を備え、上記有孔集水管の周りに上記分離膜対、上記供給側流路材及び上記透過側流路材が巻回された、複数の分離膜エレメントE1が配置された分離膜エレメントユニットを備える、膜分離システムの運転方法であり、上記複数の分離膜エレメントE1は、供給水を、透過水と濃縮水とに分離排出する状態S1と、供給水の全量を、濃縮水として排出する状態S2と、に切り替え可能であり、かつ、上記複数の分離膜エレメントE1は、第一の分離膜エレメント及び第二の分離膜エレメントを含み、上記第一の分離膜エレメントが備える上記分離膜対は、上記有孔集水管の長手方向における両端部に、原水供給部及び濃縮水排出部をそれぞれ有し、上記第二の分離膜エレメントは、上記有孔集水管の長手方向に対し垂直方向における端部に、原水供給部又は濃縮水排出部を有する上記分離膜対を備え、少なくとも一つの上記第一の分離膜エレメントが、上記第二の分離膜エレメントよりも前段に接続されており、上記分離膜エレメントユニットに供給される原水における物質Xの濃度が、閾値A以上の場合における、上記状態S2の分離膜エレメントE1の数であるN1と、上記原水における上記物質Xの濃度が上記閾値A未満の場合における、上記状態S2の分離膜エレメントの数であるN2と、分離膜エレメントの総数であるN3とが、
N1<N2<N3
の関係を満たす。
【発明の効果】
【0010】
本発明の膜分離システム及び膜分離システムの運転方法によれば、高回収率で運転を行った際にも、原水中の分離成分濃縮による分離性能及び寿命期間の低下の影響を低減することができ、長期間に亘って安定的に、かつ高い造水量及び分離性能を維持したまま運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一般的な分離膜エレメントを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明を構成する分離膜エレメントを示す分解斜視図の一例である。
【
図3】
図3は、本発明を構成する分離膜エレメントの展開図の一例である。
【
図4】
図4は、本発明を構成する分離膜エレメントの展開図の一例である。
【
図5】
図5は、本発明を構成する分離膜エレメントの展開図の一例である。
【
図6】
図6は、本発明を構成する分離膜エレメントの展開図の一例である。
【
図7】
図7は、本発明を構成する分離膜エレメントの展開図の一例である。
【
図8】
図8は、本発明の膜分離システムのフロー図の一例である。
【
図9】
図9は、本発明の膜分離システムのフロー図の一例である。
【
図10】
図10は、本発明の膜分離システムのフロー図の一例である。
【
図11】
図11は、本発明の膜分離システムのフロー図の一例である。
【
図12】
図12は、本発明の膜分離システムのフロー図の一例である。
【
図13】
図13は、本発明の膜分離システムのフロー図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の膜分離システムの実施形態について、詳細に説明する。
(1)分離膜
<概要>
図1等に例示される分離膜3としては、使用方法、目的等に応じた分離性能を有する膜が用いられる。分離膜3は、単一層であっても構わないし、分離機能層と基材とを備える複合膜であっても構わない。また、複合膜においては、分離機能層と基材との間に、さらに多孔性支持層があっても構わない。
ここで分離膜3が複合膜である場合、分離機能層を有する面を供給側の面、分離機能層を有する面とは反対側の面を透過側の面、供給側の面が互いに向かい合うように配置された状態の分離膜3のことを「分離膜対」という。
【0013】
<分離機能層>
分離機能層は、分離機能及び支持機能の両方を有する層であっても構わないし、分離機能のみを有していても構わない。なお、「分離機能層」とは、少なくとも分離機能を有する層をいう。
分離機能層が分離機能及び支持機能の両方を有する場合、分離機能層としては、セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン及びポリスルホンからなる群から選ばれるポリマーを、主成分として、含有する層が好ましい。
一方で、分離機能層としては、孔径の制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという観点から、架橋高分子の層が好ましい。中でも、原水101中の成分の分離性能に優れるという観点から、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて得られるポリアミド分離機能層や、有機無機ハイブリッド機能層等が好ましい。これらの分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成できる。
ポリアミドを主成分として含有する分離機能層は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することによって形成できる。例えば、多孔性支持層上に多官能アミン水溶液を塗布し、余分な多官能アミン水溶液をエアーナイフ等で除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することで、重縮合が起きてポリアミド分離機能層が形成される。
【0014】
<多孔性支持層>
多孔性支持層は、分離機能層を支持する層であり、樹脂がその素材の場合、多孔性樹脂層ともいうことができる。
多孔性支持層に使用される素材や、その形状は特に限定されないが、例えば、多孔性樹脂によって基材上に形成されても構わない。多孔性支持層としては、例えば、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂若しくはそれらの混合物の層、又は、それらの層を積層したものが挙げられるが、化学的、機械的及び熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすい、ポリスルホンを含有する層が好ましい。
ポリスルホンを含有する多孔性支持層は、例えば、ポリスルホンのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を、基材(例えば、密に織ったポリエステル不織布)の上に一定の厚みに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって製造することができる。
また多孔性支持層は、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って形成できる。なお、所望の形態を得るために、ポリマー濃度、溶媒の温度、貧溶媒等は適宜調整可能である。
【0015】
<基材>
分離膜3の強度、寸法安定性等の観点から、分離膜3は基材を備えていてもよい。基材としては、強度又は流体透過性の観点から、繊維状の基材を用いることが好ましい。
基材としては、例えば、長繊維不織布又は短繊維不織布が挙げられる。
【0016】
(2)分離膜対
図3等に例示される分離膜対9は、
図1等に例示される供給側流路材4及び透過側流路材5と共に、分離膜リーフを形成する。分離膜3は、供給側流路材4を挟んで供給側の面が向かい合うように配置される。また、分離膜3の透過側の面の向かい合う間には、透過側流路材5が配置される。透過側流路は、透過流体102が
図1等に例示される有孔集水管2に流れるように、透過側の面の間が、巻回方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止(閉口)される。
分離膜対9は長方形状である。分離膜対9の巻回方向の長さと有孔集水管2の長手方向の長さ(幅)は特に限定されないが、後述する第二の分離膜エレメントにおいては、分離膜対9を流体が通過する際の流速を十分に増加させてスケールの発生等を抑制する観点から、分離膜対9の有効幅Wは、150~400mmであることが好ましい。
【0017】
なお「分離膜対9の有効幅W」とは、分離膜対9の幅(有孔集水管2の長手方向の長さ)から、接着剤が塗布される等により封止(閉口)されている部分(封止部8)の長さを引いた値をいう。
また後述する第二の分離膜エレメントにおいては、分離膜対9の有効幅Wに対する有効長さLの比L/Wが大きいほど、分離膜対9を流体が通過する際の流速が増加するため、濃度分極の抑制の観点から好ましい。一方で、分離膜対9の有効幅Wに対する有効長さLの比L/Wが過度に大きいと、圧力損失が大きくなる。両者のバランスを考慮しつつ、高回収率運転時においても分離膜エレメントの分離性能を維持するためには、分離膜対の有効幅Wに対する有効長さLの比L/Wは2.5~8.0であることが好ましく、4.0~6.0であることがより好ましい。
なお「分離膜対の有効長さL」とは、分離膜対9の巻回方向の長さから、接着剤が塗布される等により封止(閉口)されている部分(封止部8)の長さを引いた値をいう。
【0018】
(3)供給側流路材
供給側流路材4は、分離膜3の供給側の面に挟まれるように配置され、分離膜3に原水101を供給する流路(すなわち供給側流路)を形成する。供給側流路材4は、原水101の濃度分極を抑制するために、原水101の流れを乱すような形状になっていることが好ましい。
供給側流路材4は、フィルム若しくはネット、又は、空隙を有するシートに凸状物が設けられたような連続形状を有している部材であっても構わないし、あるいは、分離膜3に対して0より大きく1未満である投影面積比を示す、不連続形状を有するものであっても構わない。また、供給側流路材4は分離膜3と分離可能であっても構わないし、分離膜3に固着していても構わない。
なお、供給側流路材4の素材は特に限定されず、分離膜3と同素材であっても異素材であっても構わない。
【0019】
供給側流路では、流路を安定的に形成することが重要であると共に、通過する流体が透過側流路よりも多量であるため、圧力損失を低減することも重要である。そのため、分離膜3に対する供給側流路材4の投影面積比は、0.03~0.80であることが好ましく、0.05~0.50であることがより好ましく、0.08~0.35であることがさらに好ましい。
分離膜3に対する供給側流路材4の投影面積比は、供給側流路材4を、分離膜3の膜面に垂直な方向からマイクロスコープで撮影した画像を解析することによって算出することができる。
供給側流路材4の厚みが過度に小さいと、供給側流路の圧力損失が大きくなり、分離性能や造水量が低下してしまう。一方で、供給側流路材4の厚みが過度に大きいと、分離膜エレメント当たりの膜面積が小さくなる。そのため、供給側流路材4の厚みは80~2000μmが好ましく、200~1000μmがより好ましい。
供給側流路材4の厚みは、マイクロスコープで撮影した画像を解析することによって算出することができる。
【0020】
(4)分離膜エレメント
本発明の膜分離システムは、複数の分離膜エレメントが接続されていることを必要とする。また本発明の膜分離システムは、上記の複数の分離膜エレメントの中に、第一の分離膜エレメント及び第二の分離膜エレメントを含むことを必要とする。それぞれの分離膜エレメントが備える分離膜対は、それぞれ原水供給部と濃縮水排出部とを有するが、それらの位置関係により、それぞれの分離膜エレメントが第一の分離膜エレメント又は第二の分離膜エレメントに相当するか否かが判断される。以下に、第一の分離膜エレメント又は第二の分離膜エレメントのいくつかの態様を例示する。
なお複数の分離膜エレメントは、直列又は並列に接続される。ここで直列に接続とは、一の分離膜エレメントの濃縮水のすべてが、隣接する他の(一の)分離膜エレメントに原水として供給されるような接続の態様をいう。一方で、並列に接続とは、供給する原水又は一の分離膜エレメントの濃縮水が分割され、隣接する複数の分離膜エレメントに同質の原水としてそれぞれ供給されるような接続の態様をいう。
それぞれの分離膜エレメントが備える分離膜対は、それぞれ原水供給部と濃縮水排出部とを有するが、それらの位置関係により、それぞれの分離膜エレメントが第一の分離膜エレメント又は第二の分離膜エレメントに相当するか否かが判断される。以下に、第一の分離膜エレメント又は第二の分離膜エレメントのいくつかの態様を例示する。
【0021】
<I型分離膜エレメント>
第一の分離膜エレメントである、I型分離膜エレメントについて説明する。
図3の展開図に例示される分離膜対9(供給側流路を形成)を、「I型分離膜対」という。
I型分離膜対においては、分離膜対9に原水101が供給される端面のことを、流入端面といい、濃縮水103が排出される端面のことを、排出端面という。分離膜対がI型分離膜対で構成される分離膜リーフが巻回された分離膜エレメントを、「I型分離膜エレメント」という。
I型分離膜エレメントが備える分離膜対9は、有孔集水管2の長手方向における両端部に、原水供給部21及び濃縮水排出部22をそれぞれ有する。すなわち、I型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第一の分離膜エレメントに相当する。
【0022】
<逆L型分離膜エレメント>
第二の分離膜エレメントの一つの形態である、逆L型分離膜エレメントについて説明する。
図4の展開図に例示される分離膜対9(供給側流路を形成)を、「逆L型分離膜対」という。
逆L型分離膜対においては、分離膜対9に原水101が供給される端面のことを、流入端面といい、濃縮水103が排出される外周端部のことを、排出端部と呼ぶ。
逆L型分離膜対においては、流入端面とは反対側の端面は、流路閉口率が100%となる。ここで「流路閉口率」とは、分離膜対の一の端面又は端部の全長に対する、封止より流路が閉口された部位の長さの総計値の比率をいう。
一方で、流入端面においては、流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、巻回方向の外側から内側にかけて連続的であることが好ましい。
排出端部の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、流入端面側から有孔集水管2の長手方向に連続的であることが好ましい。
流入端面及び排出端部の流路閉口率がこの範囲内にあることで、供給側流路のショートパスを防止することができ、十分な透過流体量を得ることができる。
なお、有孔集水管2に接する、分離膜対9の内周端部の流路閉口率は100%である。
【0023】
分離膜対の端面を封止する手段としては、例えば、巻回前若しくは巻回後の接着剤塗布、又は、巻回後のキャップ若しくはテレスコープ防止板の嵌合が挙げられる。
また分離膜の端部を封止する手段としては、例えば、巻回前若しくは巻回後の接着剤塗布若しくはテープの貼付、又は、巻回後のフィルム若しくはフィラメントワインディングによる被覆が挙げられる。
分離膜対が逆L型分離膜対で構成される分離膜リーフが巻回された分離膜エレメントを、「逆L型分離膜エレメント」という。
逆L型分離膜エレメントは、有孔集水管2の長手方向に対し垂直方向における端部に、濃縮水排出部22を有する逆L型分離膜対を備える。すなわち、逆L型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
【0024】
<L型分離膜エレメント>
第二の分離膜エレメントの他の形態である、L型分離膜エレメントについて説明する。
図5の展開図に例示される分離膜対9(供給側流路を形成)を、「L型分離膜対」という。
L型分離膜対においては、分離膜対9に原水101が供給される分離膜対の外周端部のことを、流入端部といい、濃縮水103が排出される端面のことを、排出端面という。
L型分離膜対においては、排出端面とは反対側の端面は、流路閉口率が100%である。
流入端部の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、排出端面側から有孔集水管2の長手方向に連続的であることが好ましい。
排出端面の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、巻回方向の外側から内側にかけて連続的であることが好ましい。
【0025】
流入端部及び排出端面の流路閉口率がこの範囲内にあることで、供給側流路のショートパスを抑制することができ、十分な透過流体量を得ることができる。
なお、分離膜対9の内周端部の流路閉口率は100%である。
分離膜対がL型分離膜対で構成される分離膜リーフが巻回された分離膜エレメントを、「L型分離膜エレメント」という。
L型分離膜エレメントは、有孔集水管2の長手方向に対し垂直方向における端部に、原水供給部21を有するL型分離膜対を備える。すなわち、L型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
【0026】
<逆T型分離膜エレメント>
第二の分離膜エレメントの他の形態である、逆T型分離膜エレメントについて説明する。
図6の展開図に例示される分離膜対9を、「逆T型分離膜対」という。
逆T型分離膜対においては、分離膜対9に原水101が供給される両端面のことを、流入端面といい、濃縮水103が排出される分離膜対9の外周端部のことを、排出端部という。
逆T型分離膜対においては、流入端面の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、巻回方向の外側から内側にかけて連続的であることが好ましい。
排出端部の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、流入端面側から有孔集水管2の長手方向に連続的であることが好ましい。
流入端面及び排出端部の流路閉口率がこの範囲内にあることで、供給側流路のショートパスを防止することができ、十分な透過水量を得ることができる。
なお、分離膜対9の内周端部の流路閉口率は100%である。
分離膜対が逆T型分離膜対で構成される分離膜リーフが巻回された分離膜エレメントを、「逆T型分離膜エレメント」という。
逆T型分離膜エレメントは、有孔集水管2の長手方向に対し垂直方向における端部に、濃縮水排出部22を有する逆T型分離膜対を備える。すなわち、逆T型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
【0027】
<T型分離膜エレメント>
図7の展開図に例示される分離膜対9を、「T型分離膜対」という。
T型分離膜対においては、分離膜対9に原水101が供給される分離膜対の外周端部のことを、流入端部といい、濃縮水103が排出される端面のことを排出端面という。
T型分離膜対においては、流入端部の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、排出端面側から有孔集水管2の長手方向に連続的であることが好ましい。
排出端面の流路閉口率は0~95%であることが好ましく、流路閉口率が0%より大きい場合、流路閉口箇所は、巻回方向の外側から内側にかけて連続的であることが好ましい。
流入端部及び排出端面の流路閉口率がこの範囲内にあることで、供給側流路のショートパスを抑制することができ、十分な透過水量を得ることができる。
なお、分離膜対9の内周端部の流路閉口率は100%である。
分離膜対がT型分離膜対で構成される分離膜リーフが巻回された分離膜エレメントを、「T型分離膜エレメント」という。
T型分離膜エレメントは、有孔集水管2の長手方向に対し垂直方向における端部に、原水供給部21を有するT型分離膜対を備える。すなわち、T型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
【0028】
<I型-逆L型分離膜エレメント>
第二の分離膜エレメントの他の形態である、I型-逆L型分離膜エレメントについて説明する。
I型分離膜対と逆L型分離膜対との双方を備える分離膜エレメントを、「I型-逆L型分離膜エレメント」という。
I型-逆L型分離膜エレメントにおいては、例えば、原水はI型分離膜対の流入端面から供給され、I型分離膜対の排出端面から排出される。I型分離膜対から排出された濃縮水は、エレメントの端面に嵌合されたキャップ等によってエレメント内をUターンし、逆L型分離膜対の流入端面から供給され、逆L型分離膜対の排出端部から排出される。この場合、I型分離膜対から排出された濃縮水が、逆L型分離膜対への原水となる。
I型分離膜対から排出された濃縮水をUターンさせるキャップは、分離膜対の端面を封止するためのキャップと一体化していても構わない。またI型-逆L型分離膜エレメントの外周部は、分離膜エレメントの形状を維持しつつ濃縮水等の流路を確保するため、ネット又は多孔性フィルムで被覆されていることが好ましい。
I型-逆L型分離膜エレメントは、逆L型分離膜対を備える。すなわち、I型-逆L型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
I型-逆L型分離膜エレメントが備える分離膜対全体に占めるI型分離膜対の割合は、逆L型分離膜対に供給される原水(I型分離膜対から排出された濃縮水)の濃度と流量を適度なものとし、逆L型分離膜対における濃度分極の抑制効果を確保するため、55~90%が好ましく、60~80%がより好ましい。
【0029】
<L型-I型分離膜エレメント>
第二の分離膜エレメントの他の形態である、L型-I型分離膜エレメントについて説明する。
L型分離膜対とI型分離膜対との双方を備える分離膜エレメントを、「L型-I型分離膜エレメント」という。
L型-I型分離膜エレメントにおいては、例えば、原水はL型分離膜対の流入端部から供給され、L型分離膜の排出端面から排出される。L型分離膜対から排出された濃縮水は、エレメントの端面に嵌合されたキャップ等によってエレメント内をUターンし、I型分離膜対の流入端面から供給され、I型分離膜対の排出端面から排出される。この場合、L型分離膜対から排出された濃縮水が、I型分離膜対への原水となる。
L型分離膜対から排出された濃縮水をUターンさせるキャップは、分離膜対の端面を封止するためのキャップと一体化していても構わない。またL型-I型分離膜エレメントの外周部は、分離膜エレメントの形状を維持しつつ濃縮水等の流路を確保するため、ネット又は多孔性フィルムで被覆されていることが好ましい。
L型-I型分離膜エレメントは、L型分離膜対を備える。すなわち、L型-I型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
L型-I型分離膜エレメントが備える分離膜対全体に占めるL型分離膜対の割合は、I型分離膜対に供給される原水の濃度と流量を適度なものとし、I型分離膜対における濃度分極の抑制効果を確保するため、10~45%が好ましく、20~40%がより好ましい。
【0030】
<逆L型-L型分離膜エレメント>
第二の分離膜エレメントの他の形態である、逆L型-L型分離膜エレメントについて説明する。
逆L型分離膜対とL型分離膜対との双方を備える分離膜エレメントを、「逆L型-L型分離膜エレメント」という。
逆L型-L型分離膜エレメントにおいては、例えば、原水は逆L型分離膜対の流入端面から供給され、逆L型分離膜対の排出端部から排出される。逆L型分離膜対から排出された濃縮水は、エレメントの外周部を被覆するフィルム等によってエレメント内をUターンし、L型分離膜対の流入端部から供給され、L型分離膜対の排出端面から排出される。この場合、逆L型分離膜対から排出された濃縮水が、L型分離膜対への原水となる。
逆L型-L型分離膜エレメントは、逆L型分離膜対及びL型分離膜対を備える。すなわち、逆L型-L型分離膜エレメントは、本発明の膜分離システムにおける第二の分離膜エレメントに相当する。
逆L型-L型分離膜エレメントが備える分離膜対全体に占める逆L型分離膜対の割合は、L型分離膜対に供給される原水の濃度と流量を適度なものとし、L型分離膜対における濃度分極の抑制効果を確保するため、55~90%が好ましい。
【0031】
(5)透過側流路材
透過側流路材5は、分離膜3の透過側の面に挟まれるように配置され、分離膜3を透過した流体を有孔集水管2の孔まで導く流路(すなわち透過側流路)を形成する。
透過側流路材5の横断面積比は、透過側流路の流動抵抗を低減し、加圧ろ過下においても分離膜3が透過側流路へ落ち込むことを抑制し、かつ、透過側流路を安定的に形成する観点から、0.30~0.75であることが好ましく、0.40~0.60であることがより好ましい。透過側流路の流動抵抗の低減により、特に高回収率運転下における原水の流速を高めて濃度分極やスケールの発生を抑制することができる。
透過側流路材5の横断面積比については、分離膜エレメントを構成する分離膜対9の透過側の面の間に設けられた透過側流路材5を、有孔集水管2の長手方向に沿って切断する。その横断面を高精度形状測定システムにより観察し、無作為に選択した一の凸部の中心線と隣接する凸部の中心線との間の距離と、透過側流路材5の厚みとの積に対する、上記二つの凸部の中心線の間の透過側流路材5の面積の比率を算出する作業を計30回繰り返す。その後、それらの比率の平均値を、透過側流路材5の横断面積比とすることができる。
なお高精度形状測定システムとしては、例えば、キーエンス社製のKS-1100が挙げられる。
【0032】
透過側流路材5としては、例えば、従来のトリコットを流路が広がるように厚くした緯編物若しくは繊維の目付量を低減した緯編物、不織布のような多孔性シートに突起物を配置したシート、又は、フィルムや不織布を凹凸加工した凹凸加工シートが挙げられる。
透過側流路材5の厚みが過度に小さいと、透過側流路の圧力損失が大きくなり、分離性能や造水量が低下してしまう。一方で、透過側流路材5の厚みが過度に大きいと、分離膜エレメント当たりの膜面積が小さくなる。そのため、透過側流路材5の厚みは100~500μmが好ましく、200~400μmがより好ましい。
透過側流路材5の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することができる。
透過側流路材5の素材は、有孔集水管2に容易に巻回することを可能とするため、その圧縮弾性率が100~5000MPaであることが好ましい。圧縮弾性率が100~5000MPaである素材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレンが挙げられる。
透過側流路材5の圧縮弾性率は、精密万能試験機を用いて圧縮試験を行い、応力ひずみ線図を作成することによって算出することができる。
第一の分離膜エレメントに用いられる透過側流路材5と、第二の分離膜エレメントに用いられる透過側流路材5とは、異なっていても構わない。
【0033】
(6)有孔集水管
有孔集水管2は、その内部を透過流体102が流れるように構成されていればよく、材質及び形状は特に限定されない。有孔集水管2の外径が過度に大きいと、分離膜エレメント当たりの膜面積が減少してしまう。一方で、外径が過度に小さいと、有孔集水管2の内部を透過流体102が流れる際の流動抵抗が大きくなってしまう。有孔集水管2の外径は、透過流体102の流量に応じて適宜設計すればよいが、10~50mmが好ましく、15~40mmがより好ましい。
【0034】
(7)ベッセル
本発明の膜分離システムを構成する分離膜エレメントは、ベッセルに装填されていても構わない。ベッセルは、分離膜エレメントに原水を供給し、濃縮水を排出するための容器であり、その内部は、原水、濃縮水及び透過水が互いに混じらないよう、空間がそれぞれ区画されている。なお海水淡水化やかん水淡水化の用途においては、一のベッセルの内部に、複数の分離膜エレメントが直列に接続されていても構わない。
なお逆L型-L型分離膜エレメントについては、ベッセルの内壁面やブラインシールとの組合せにより流路を確保することで、逆L型分離膜対から排出された濃縮水をUターンさせることができる。
【0035】
(8)膜分離システム
本発明の膜分離システムは、上記の複数の分離膜エレメント以外にも、原水を供給するポンプ、原水の前処理装置、又は、透過水の後処理装置等が接続されていても構わない。
さらに本発明の膜分離システムにおいては、総回収率が、50~99%であることが好ましく、60~98%がより好ましく、75~97%がさらに好ましい。ここで総回収率とは、下記式(1)から算出される値をいう。
総回収率(%)=(膜分離システムの全透過水流量(L/min))/(膜分離システムに供給する全原水流量(L/min))×100 ・・・(式1)
【0036】
<分離膜エレメントの段数>
複数の分離膜エレメントが直列に接続されている場合においては、原水が最初に供給される分離膜エレメントを1段目、その濃縮水が供給される分離膜エレメントを2段目、さらにその濃縮水が供給される分離膜エレメントを3段目、・・・のように、順に数える。複数の分離膜エレメントがベッセル内で直列に接続されている場合においても、その数え方は同様である。
1段目の分離膜エレメントの濃縮水が分割され、並列に接続された複数の分離膜エレメントに同質の原水としてそれぞれ供給される場合においては、並列に接続された複数の分離膜エレメントのそれぞれを2段目、さらにそれらの濃縮水が供給される分離膜エレメントのそれぞれを3段目、・・・のように、順に数える。
【0037】
なお並列に接続された2段目の分離膜エレメントで分岐した、それぞれのラインにおける分離膜エレメントの本数が異なる場合において、各分岐ラインが再び統合されたときには、分離膜エレメントが最も多く存在する分岐ラインの段数に続けて、統合されたラインの分離膜エレメントの段数を数える。例えば、1段目の分離膜エレメントの濃縮水が分割され、並列に接続された二つの分離膜エレメントA,Bにそれぞれ供給される場合において、分離膜エレメントAを含むラインAに存在する分離膜エレメントの総数が三つ、分離膜エレメントBを含むラインBに存在する分離膜エレメントの総数が五つであり、それぞれの分岐ラインからの濃縮水がすべて統合され、分離膜エレメントCに供給されたときには、分離膜エレメントCを6段目として数える。
【0038】
<分離膜エレメントの配置>
本発明の膜分離システムは、少なくとも一つの第一の分離膜エレメントが、第二の分離膜エレメントよりも前段に接続されていることを必要とする。第一の分離膜エレメントよりも後段に第二の分離膜エレメントが接続されることによって、より原水濃度が増加し、原水量が少なくなる後段においても、十分な流速を確保することができ、スケールの発生等を抑制することができる。
また本発明の膜分離システムにおいては、第二の分離膜エレメントが、最終段に接続されていることが好ましい。第二の分離膜エレメントが最終段に接続されていることによって、最も原水濃度が増加し、原水量が少なくなる最終段においても、十分な流速を確保することができ、スケールの発生等を抑制することができる。
さらに本発明の膜分離システムにおいては、最終段に接続された分離膜エレメントの巻囲径よりも、巻囲径の大きな分離膜エレメントを含むことが好ましく、最終段より前段に含むことがより好ましい。最終段に接続された分離膜エレメントの巻囲径が小さいことによって、最も原水濃度が増加し、原水量が少なくなる最終段においても、十分な流速を確保することができ、スケールの発生等を抑制することができる。
また本発明の膜分離システムにおいては、前段の分離膜エレメントの濃縮水を後段の分離膜エレメントに供給するラインの途中に、中間処理手段を配置しても構わない。このような中間処理手段としては、例えば、イオン交換樹脂を用いた硬度成分の除去手段、スケール抑制剤の添加手段、又は、キレート機能を有する吸着剤を用いた金属イオン等の除去手段が挙げられる。
【0039】
<膜分離システムの運転方法>
(第一の態様)
本発明の膜分離システムの運転方法の第一の態様に用いる、エレメントユニットAを有する膜分離システムは、エレメントユニットAの必要透過水量に応じて、エレメントユニットAを構成するそれぞれの分離膜エレメントの分離を停止するための手段を有する。
ここで「分離膜エレメントの分離を停止する」とは、分離膜エレメントへの原水(2段目以降であれば、前段の分離膜エレメントの濃縮水)の供給を停止すること、又は、分離膜エレメントに供給される原水(2段目以降であれば、前段の分離膜エレメントの濃縮水)の全量を、分離膜を透過させることなく、濃縮水として排出することをいう。ただし、分離膜エレメントへの原水の供給を停止した場合においては、バイパス流路等の代替手段を設けない限り、当該分離膜エレメントの後段に接続された分離膜エレメントの分離もが停止されることとなるため、原水の全量を濃縮水として排出する態様の方が好ましい。
また「必要透過水量」とは、単位時間当たりに必要となる、膜分離システム全体から得られる透過水量のことをいう。
分離膜エレメントの分離を停止するための手段としては、例えば、分離膜エレメントへの原水の入口側ラインに設けたバルブを閉とすること、又は、分離膜エレメントの透過水の出口側ラインに設けたバルブ(透過水量調整バルブ)を閉とすることが挙げられる。
【0040】
なお本発明に用いる膜分離システム全体の分離膜エレメントの内、いずれの分離膜エレメントがエレメントユニットAを構成する分離膜エレメントに該当するのかについては、その判断基準が一律に定まるものではなく、膜分離システムのどの範囲について必要透過水量を判断すればよいかを勘案した上で、膜分離システムの態様に応じて適宜決定されるべきものである。
本発明の膜分離システムの運転方法の第一の態様では、エレメントユニットAの必要透過水量に応じて、エレメントユニットAを構成する分離膜エレメントの一部の分離を停止する必要がある。このため、例えば
図8~11に示すように、それぞれの分離膜エレメントの透過水の出口側に、それぞれ透過水量調整バルブ31、32又は33等を設けることが考えられる。また、例えば
図12に示すように、1段目の分離膜エレメントの入ったベッセル11への原水の入り口側と、2段目の分離膜エレメントの入ったベッセル12への原水の供給をするバイパス流路50との間に、三方バルブ40を設けることも考えられる。エレメントユニットAを構成するすべての分離膜エレメントの分離を停止しない高透過水量時に対し、低透過水量時は、それら分離膜エレメントの一部の分離を停止する必要がある。
なお、どのような必要透過水量の変化があった場合にエレメントユニットAを構成する分離膜エレメントの一部の分離を停止するか、すなわち、どのような判断基準で上記の「高透過水量時」及び上記の「低透過水量時」の区別をするか、は、一律に定まるものではなく、例えば、本発明の膜分離システムの運転方法の第一の態様に用いる膜分離システムが有するエレメントユニットAを構成する分離膜エレメントの本数、種別若しくは接続様式、又は、エレメントユニットAに供給される原水濃度等に応じて、適宜決定されるべきものである。
【0041】
エレメントユニットAの最終段に接続されたエレメントが、第二の分離膜エレメントの場合、低透過水量時は、最終段に接続されたエレメントのいずれかの分離を継続することが好ましい。最終段に接続された第二の分離膜エレメントの分離を一部継続することによって、高回収率時に原水濃度が増加し、原水量が少なくなっても、十分な流速を確保することができ、スケールの発生等を抑制することができる。
さらにエレメントユニットAの最終段に接続されたエレメントの巻囲径が前段よりも小さい場合、低透過水量時は、最終段に接続されたエレメントのいずれかの運転を継続することが好ましい。最終段に接続された巻囲径の小さいエレメントの運転を一部継続することによって、高回収率時に原水濃度が増加し、原水量が少なくなっても、十分な流速を確保することができ、スケールの発生等を抑制することができる。
【0042】
(第二の態様)
本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様では、分離膜エレメントユニットに供給される原水の水質、より具体的には、原水における物質Xの濃度に着目をし、分離膜エレメントユニットに配置された複数の分離膜エレメントE1をそれぞれ、状態S1又は状態S2に切り替える。ここで「状態S1」とは、分離膜エレメントE1が供給水を透過水と濃縮水とに分離排出する状態をいい、「状態S1」とは、分離膜エレメントE1が供給水の全量を濃縮水として排出する状態をいう。供給水の全量を濃縮水として排出する状態S2においては、供給水が高流速で分離膜エレメントに流入するため、膜の濃度分極を低減させ、有機物ファウリング又はスケールを抑制することができる。
【0043】
本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様では、分離膜エレメントユニットに供給される原水における物質Xの濃度が、閾値A以上の場合における、状態S2の分離膜エレメントE1の数をN1、分離膜エレメントユニットに供給される原水における物質Xの濃度が、閾値A未満の場合における、状態S2の分離膜エレメントE1の数をN2、分離膜エレメントE1の総数をN3とが、N1<N2<N3の関係を満たすことが必要である。ここで「N2<N3」の関係は、本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様は、単なる膜分離システム全体の洗浄操作(すべての分離膜エレメントE1が状態S2に切り替わっている状況)を含むものではなく、その実施中には、少なくとも1本の分離膜エレメントE1が、状態S1にあることを示すものである。なお本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様では、分離膜エレメントE1以外の分離膜エレメントが、状態S2のように供給水の全量を濃縮水として排出する状態に切り替えられても構わない。
【0044】
分離膜エレメントを状態S1から状態S2に切り替えるための手段としては、例えば、
図8~13に示すように、分離膜エレメントE1(の入ったベッセル)の濃縮水103の出口側にバルブを設け、そのバルブを閉止することで、供給水の全量を濃縮水として排出することが挙げられる。
また本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様では、例えば
図10、11に示すように複数の分離膜エレメントE1が並列に接続されていることが好ましい。このような場合においては、複数の分離膜エレメントに同質の供給水が供給されるばかりでなく、各分離膜エレメントの状態を一定時間ごとにS1からS2に、交互に切り替えることで、各分離膜エレメントがまんべんなく洗浄される。上記の一定時間tは、膜分離システムの構成にもよるが、30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、5分以下がさらに好ましい。
さらに本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様では、供給水の水質に応じて、分離膜エレメントの運転圧力を変更しても構わない。
【0045】
本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様では、分離膜エレメントユニットに供給される原水における物質Xの濃度が、閾値A以上であるか、又は、閾値A未満であるかに応じて、状態S2にある分離膜エレメントE1の数が制御されることとなる。ここで着目される物質Xは供給水の水質等に応じ適宜選択されればよく、特に限定をされるものでは無いが、例えば、塩分濃度(Total Dissolved Solids(TDS))又はカルシウムマグネシウム硬度が挙げられる。
ここで、原水として例えば雨水と地下水のように二種類を用意し、例えばTDSを物質Xとして両者のその濃度間に適切な閾値Aを決定しておき、そしてそれらを交互に膜分離システム供給することで、閾値A以上であるか、又は、閾値A未満であるかの判断がより明瞭なものとなり、より効率的に膜分離システムを運転することができる。
なお、どのような物質を物質Xとして選定し、その濃度についてどのように閾値Aを決定するかは、当然ながら一律に定まるものではなく、例えば、本発明が適用される分離膜エレメントユニットが有する分離膜エレメントE1の数、種別若しくは接続様式、又は、分離膜エレメントユニットに供給される原水の種別等に応じて、適宜決定されるべきものである。
また本発明の膜分離システムの運転方法の第二の態様が適用される膜分離システムには、分離膜エレメントE1の状態S1と状態S2とを切り替えるための透過水調整バルブ等が接続されていても構わないし、原水を供給するためのポンプ、原水の前処理装置、原水の水質(物質Xの濃度等)を測定するためのセンサー、又は、透過水の後処理装置等が接続されていても構わない。
【実施例】
【0046】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
(造水量低下率)
膜分離システムに供給する原水として水道水を用い、運転圧力0.55MPa、温度25℃の条件下で60分間運転した後に1分間のサンプリングを行い、初期造水量(L/min)を測定した。その後、300hr運転を行った後の造水量を同様に測定し、下記式から造水量低下率を算出した。
造水量低下率(%)=100×(1-(300hr後の造水量)/(初期造水量))
【0048】
(回収率)
膜分離システム全体において、1分間に供給した原水量と透過水量との比率を回収率(%)とした。
【0049】
(除去率(TDS除去率))
膜分離システムにおいて、造水量の測定における1分間の運転で用いた原水及びサンプリングした透過水について、TDS濃度を電気伝導率測定により求め、下記式からTDS除去率を算出した。
TDS除去率(%)=100×{1-(透過水中のTDS濃度/原水中のTDS濃度)}
【0050】
(原水種類)
実施例19~22、及び、比較例10~12において、膜分離システムが備える分離膜エレメントユニットに供給する原水としては、TDSが20mg/Lの雨水と、TDSが1000mg/Lの地下水とを用意した。これら二種類の原水はそれらを一切混合することなく、交互に原水として膜分離エレメントユニットに供給をした。この場合の物質XはTDSであり、閾値Aは、TDSの濃度について200mg/Lに設定した。
【0051】
(横断面積比)
横断面積比は、分離膜エレメントを構成する分離膜対の透過側の面の間に設けられた透過側流路材を、有孔集水管の長手方向に沿って切断した。その横断面を高精度形状測定システムにより観察し、無作為に選択した一の凸部の中心線と隣接する凸部の中心線との間の距離と、透過側流路材の厚みとの積に対する、上記二つの凸部の中心線の間の透過側流路材の面積の比率を算出する作業を計30回繰り返した。その後、それらの比率の平均値を、透過側流路材の横断面積比とした。
高精度形状測定システムは、キーエンス社製のKS-1100を用いた。
【0052】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約0.09mm、密度0.80g/cm3)上にポリスルホンの15.2質量%のN,N-ジメチルホルムアミド溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にキャストし、直ちに純水中に浸漬して5分間放置し、80℃の温水で1分間浸漬することによって、繊維補強ポリスルホン支持層からなる、多孔性支持層(厚み130μm)を作製した。
その後、多孔性支持層ロールを巻き出し、m-フェニレンジアミンの3.8質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持層を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持層表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.175質量%を含むn-デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りした。その後、90℃の熱水で2分間洗浄した分離膜ロールを得た。
このように得られた分離膜を、長さ1.5m、幅0.25mに6枚分裁断し、折りたたみ、ネット(厚み300μm、ピッチ:1.5mm×1.5mm)を供給側流路材として、ネット構成糸の傾斜角度が巻回方向に対して45°となるように配置した。
【0053】
透過側流路材は、不織布上に、高結晶性ポリプロピレン(MFR1000g/10min、融点161℃)60質量%と低結晶性α-オレフィン系ポリマー(出光興産株式会社製;低立体規則性ポリプロピレン「L-MODU・S400」(商品名))40質量%とからなる組成物ペレットを塗布することで作製した。その際、組成物ペレットを、スリット幅500μm、ピッチ900μmの櫛形シムを装填したアプリケーターを用いて、樹脂温度205℃、走行速度10m/minで、バックアップロールを20℃に温度調節しながら、分離膜エレメントとした場合に、巻回方向の内側端部から外側端部まで、有孔集水管の長手方向に対して垂直になるよう不織布上に直線状に塗布した。
不織布は厚み70μm、目付量が35g/m2、エンボス柄(φ1.0mmの円形、ピッチ5.0mmの格子状)を用い、透過側流路材の総厚みは270μmであった。
作製した透過側流路材を裁断し、分離膜の透過側の面に配置して、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)製有孔集水管(幅:350mm、径:18mm、孔数10個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付け、外周端部に非透水性フィルムを巻きつけた。得られた巻囲体の両端のエッジカットを行い、巻囲径が3.0インチのI型分離膜エレメントを作製した。
【0054】
また、上記のように得られた分離膜を別途、長さ1.9m、幅0.25mに3枚分裁断し、折りたたみ、ネット(厚み300μm、ピッチ:1.5mm×1.5mm)を供給側流路材として、ネット構成糸の傾斜角度が巻回方向に対して45°となるように配置し、巻囲体の一端面の流路閉口率が80%となるように巻回方向の外側から内側にかけて連続的に接着剤を塗布し、他端面の流路閉口率100%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%とした。
さらに、上記のように作製した透過側流路材を別途裁断し、分離膜の透過側の面に配置して、ABS製有孔集水管(幅:350mm、径:18mm、孔数10個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付け、外周端部に濃縮水排出部を有するフィルムを巻きつけた。濃縮水排出部はフィルムの中央部の幅200mmの箇所に幅40mm、高さ10mmの孔が幅方向に4箇所設けられ、高さ方向に4箇所設けた。得られた巻囲体の両端のエッジカットを行った後、巻囲体の一端面にキャップを取り付け、巻囲径が2.5インチの逆L型分離膜エレメントを作製した。
【0055】
I型分離膜エレメント1本をベッセル11に入れ、逆L型分離膜エレメント1本を別のベッセル12に入れ、2本のベッセルを
図8のように直列に接続し、回収率90%にて、I型分離膜エレメントを含むベッセル11に原水を供給し、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1のとおりであった。
【0056】
(実施例2)
2段目の逆L型分離膜エレメントの透過側流路材の不織布上に直線状に塗布した樹脂(組成物ペレット)の幅を変更し、横断面積比を0.8に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0057】
(実施例3)
2段目の逆L型分離膜エレメントにおける分離膜対の幅を0.5mに変更し、ABS製有孔集水管の幅を550mmに変更し、得られた巻囲体の両端のエッジカットを行った後、有効幅Wを450mmに変更することで、L/Wの値を2.0に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0058】
(実施例4)
2段目の逆L型分離膜エレメントの分離膜対を3枚から4枚に変更し、巻囲径を3.0インチに変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0059】
(実施例5)
図9に示したように、分離膜対を長さ1.5m、幅0.25mに4枚分裁断し、3段目に巻囲径2.5インチのI型分離膜エレメントを追加した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0060】
(実施例6)
2段目の分離膜エレメントをL型分離膜エレメント(巻囲体の一端面の流路閉口率80%、他端面の流路閉口率100%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%)に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0061】
(実施例7)
2段目の分離膜エレメントをT型分離膜エレメント(巻囲体の一端面の流路閉口率90%、他端面の流路閉口率90%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%)に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0062】
(実施例8)
2段目の分離膜エレメントを逆T型分離膜エレメント(巻囲体の一端面の流路閉口率90%、他端面の流路閉口率90%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%)に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表1のとおりであった。
【0063】
(実施例9)
2段目の分離膜エレメントを逆L型-I型分離膜エレメント(逆L型分離膜対(2枚):一端面の流路閉口率90%、他端面の流路閉口率100%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%、及び、I型分離膜対(1枚):一端面の流路閉口率0%、他端面の流路閉口率0%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%)に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0064】
(実施例10)
2段目の分離膜エレメントをL型-I型分離膜エレメント(L型分離膜対(2枚):一端面の流路閉口率100%、他端面の流路閉口率90%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%、及び、I型分離膜対(1枚):一端面の流路閉口率0%、他端面の流路閉口率0%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%)に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0065】
(実施例11)
2段目の分離膜エレメントを逆L型-L型分離膜エレメント(逆L型分離膜対(2枚):一端面の流路閉口率90%、他端面の流路閉口率100%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%、及び、L型分離膜対(1枚):一端面の流路閉口率100%、他端面の流路閉口率90%、内周端部の流路閉口率100%、外周端部の流路閉口率0%)に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0066】
(実施例12)
図10に示したように1段目の分離膜エレメントと並列に巻囲径3.0インチのI型分離膜エレメント1本を追加した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0067】
(実施例13)
図11に示したように1段目の分離膜エレメントと並列に巻囲径3.0インチのI型分離膜エレメント1本を追加し、2段目の分離膜エレメントと並列に巻囲径2.5インチの逆L型分離膜エレメントを追加した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0068】
(実施例14)
表3に示すように、2段目の逆L型分離膜エレメントの分離膜対を、長さ2.5m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチに変更し、有効長さLを1.2mに変更し、L/Wを6.0に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。各透過水量調整バルブを表4に示すように操作し、性能評価を行ったところ、結果は表4のとおりであった。
【0069】
(実施例15)
表3に示すように、2段目の逆L型分離膜エレメントの分離膜対を、長さ2.5m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチに変更し、有効長さLを1.2mに変更し、L/Wを6.0に変更し、
図9に示したように3段目に巻囲径2.0インチの逆L型分離膜エレメントを追加した以外は、実施例1と同様にして膜分離システムを作製した。各透過水量調整バルブを表5に示すように操作し、性能評価を行ったところ、結果は表5のとおりであった。
【0070】
(実施例16)
表3に示すように、2段目の逆L型分離膜エレメントの分離膜対を、長さ2.5m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチに変更し、有効長さLを1.2mに変更し、L/Wを6.0に変更し、
図10に示したように1段目の膜分離エレメントと並列に巻囲径3.0インチのI型分離膜エレメント1本を追加した以外は、実施例1と同様にして膜分離システムを作製した。各透過水量調整バルブを表6に示すように操作し、性能評価を行ったところ、結果は表6のとおりであった。
【0071】
(実施例17)
表3に示すように、2段目の逆L型分離膜エレメントの分離膜対を、長さ2.5m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチに変更し、有効長さLを1.2mに変更し、L/Wを6.0に変更し、
図11に示したように1段目の分離膜エレメントと並列に巻囲径3.0インチのI型分離膜エレメント1本を追加し、2段目の分離膜エレメントと並列に巻囲径2.5インチの逆L型分離膜エレメント1本を追加した以外は、実施例1と同様にして膜分離システムを作製した。各透過水量調整バルブを表7に示すように操作し、性能評価を行ったところ、結果は表7のとおりであった。
【0072】
(実施例18)
表3に示すように、2段目の逆L型分離膜エレメントの分離膜対を、長さ2.5m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチに変更し、有効長さLを1.2mに変更し、L/Wを6.0に変更し、
図12に示したように、三方バルブ40を1段目の分離膜エレメントの入ったベッセル11への原水の入口側ラインに設置し、三方バルブ40からのバイパス流路50を2段目の分離膜エレメントの入ったベッセル12への原水の入口側ラインに接続し、1段目の分離膜エレメントの入ったベッセル11への逆流を防ぐ逆止弁60を、1段目の分離膜エレメントの入ったベッセル11の濃縮水の出口ラインに設置し、さらに透過水量調整バルブ31等を設置しなかった以外は、実施例1と同様にして膜分離システムを作製した。三方バルブを表8に示すように操作し、性能評価を行ったところ、結果は表8のとおりであった。
【0073】
(実施例19)
表10に示すように、2段目の逆L型分離膜対を3枚から4枚に変更し、巻囲径を3.0インチに変更した以外は、実施例1と同様にして膜分離システムを作製した。
図8のように透過水量調整バルブ31と透過水量調整バルブ32とを開けて、二つの分離膜エレメントをいずれも状態S1とし、原水量1.0L/min、システム回収率90%にて、膜分離システムに原水として地下水を3時間(0~3hr)供給し、その後原水を雨水に切り替えるのと同時に、透過水量調整バルブ32を閉めて2段目の分離膜エレメントを状態S2に切り替え、そのまま雨水を3時間(3~6hr)供給した。
その後も3時間おきに、地下水、雨水の順の原水の切り替え、及び、2段目の分離膜エレメントの状態の切り替えを、それぞれの原水についての運転時間が計300時間ずつ(3時間×100回)になるまで継続し、それぞれの原水について計200時間後の造水量低下率を評価した結果を、表10に示す。
【0074】
(実施例20)
実施例19と同様にして、
図8に示す膜分離システムを作製した。雨水を原水として供給した際に、表10に示す運転状態A及びBを5分間隔の周期で切り替えた以外は、実施例19と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0075】
(実施例21)
実施例19と同様にして、巻囲径が3.0インチのI型分離膜エレメントを2本作製した。1本目のI型分離膜エレメントを分離膜エレメントE1としてベッセル11に入れ、2本目のI型分離膜エレメントも分離膜エレメントE1として別のベッセル11に入れ、二つのベッセル11を
図10のように並列に接続し、透過水調整バルブ31及び透過水調整バルブ32と併せて、分離膜エレメントユニットを構成した。さらに、巻囲径が3.0インチの逆L型分離膜エレメントを1本作製しベッセル12に入れ、このベッセル12を
図10のように分離膜エレメントユニットに接続して、膜分離システムを作製した。
作製した膜分離システムについて、初期造水量及び初期TDS除去率を、雨水、地下水の順にそれぞれ測定・算出した後、表10記載の運転条件に基づき実施例19と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0076】
(実施例22)
実施例19と同様にして、巻囲径が3.0インチのI型分離膜エレメントを2本作製した。1本目のI型分離膜エレメントを分離膜エレメントE1としてベッセル11に入れ、2本目のI型分離膜エレメントも分離膜エレメントE1として別のベッセル11に入れ、二つのベッセル11を
図11のように並列に接続し、透過水調整バルブ31及び透過水調整バルブ32と併せて、分離膜エレメントユニットを構成した。さらに、巻囲径が3.0インチの逆L型分離膜エレメントを1本作製しそれぞれベッセル12に入れ、これらのベッセル12を
図11のように並列になるように分離膜エレメントユニットに接続して、膜分離システムを作製した。
作製した膜分離システムについて、初期造水量及び初期TDS除去率を、雨水、地下水の順にそれぞれ測定・算出した後、表10記載の運転条件に基づき実施例19と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0077】
(実施例23)
2段目の逆L型膜分離エレメントの分離膜対を4枚から3枚に変更し、巻囲径を2.5インチに変更した以外は、実施例21と同様の膜分離システムを作製した。
作製した膜分離システムについて、初期造水量及び初期TDS除去率を、雨水、地下水の順にそれぞれ測定・算出した後、表10記載の運転条件に基づき実施例19と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0078】
(比較例1) 2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.9m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0079】
(比較例2)
1段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.5m、幅0.25mに6枚分裁断し、巻囲径3.0インチとした逆L型分離膜エレメントに変更し、2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.9m、幅0.25mに3枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0080】
(比較例3)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.9m、幅0.25mに4枚分裁断し巻囲径3.0インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜エレメント及び膜分離システムを作製した。性能評価を行ったところ、結果は表2のとおりであった。
【0081】
(比較例4)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ2.8m、幅0.25mに2枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例14と同一の膜分離システムを作製し、各透過水量調整バルブは開のまま操作せず、実施例14と同様の流量、運転時間となるように圧力を調整し、性能評価を行ったところ、結果は表4のとおりであった。
【0082】
(比較例5)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ2.8m、幅0.25mに2枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更し、3段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ2.8m、幅0.25mに1枚分裁断し、巻囲径2.0インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例15と同一の膜分離システムを作製し、各透過水量調整バルブは開のまま操作せず、実施例15と同様の流量、運転時間となるように圧力を調整し、性能評価を行ったところ、結果は表5のとおりであった。
【0083】
(比較例6)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ2.8m、幅0.25mに2枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例16と同一の膜分離システムを作製し、各透過水量調整バルブは開のまま操作せず、実施例16と同様の流量、運転時間となるように圧力を調整し、性能評価を行ったところ、結果は表6のとおりであった。
【0084】
(比較例7)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ2.8m、幅0.25mに2枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例17と同一の膜分離システムを作製し、各透過水量調整バルブは開のまま操作せず、実施例17と同様の流量、運転時間となるように圧力を調整し、性能評価を行ったところ、結果は表7のとおりであった。
【0085】
(比較例8)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ2.8m、幅0.25mに2枚分裁断し、巻囲径2.5インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例18と同一の膜分離システムを作製し、各透過水量調整バルブは開のまま操作せず、実施例18と同様の流量、運転時間となるように圧力を調整し、性能評価を行ったところ、結果は表8のとおりであった。
【0086】
(比較例9)
実施例14と同様に作製したI型分離膜エレメント1本をベッセル11aに入れ、逆L型分離膜エレメント1本を別のベッセル11bに入れ、2本のベッセルを
図13のように並列に接続した膜分離システムを作製した。膜分離システムの詳細を表3に示す。上記の条件で、原水量調整バルブ70a及び70bを表9に示すように操作し、性能評価を行ったところ、結果は表9のとおりであった。
【0087】
(比較例10)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.9m、幅0.25mに4枚分裁断し、巻囲径3.0インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例19と同様にして、
図8に示す水処理システムを作製した。地下水を原水として供給する場合、1段目の分離膜エレメントのみにその全量を供給し、雨水を原水として供給する場合、2段目の分離膜エレメントのみにその全量を供給した以外は、実施例19と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0088】
(比較例11)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.9m、幅0.25mに4枚分裁断し、巻囲径3.0インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例19と同様にして、
図8に示す膜分離システムを作製した。1段目及び2段目の両方の分離膜エレメントを状態S1のままで運転を継続した以外は、実施例19と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0089】
(比較例12)
2段目の分離膜エレメントを、分離膜対を長さ1.9m、幅0.25mに4枚分裁断し、巻囲径3.0インチとしたI型分離膜エレメントに変更した以外は、実施例19と同様にして、
図8に示す膜分離システムを作製した。地下水を原水として供給する場合において、2時間の供給後に1時間、1段目及び2段目の両方の分離膜エレメントを状態S2に切り替えて運転した以外は、比較例11と同様の運転及び評価をした。結果を表10に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の膜分離システム及び膜分離システムの運転方法によれば、高回収率で運転を行った際にも、原水中の分離成分濃縮による分離性能及び寿命期間の低下の影響を低減することができ、長期間に亘って安定的に、かつ高い造水量及び分離性能を維持したまま運転することが可能となる。
【0101】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年1月25日出願の日本特許出願(特願2018-10253)、及び2018年2月26日出願の日本特許出願(特願2018-31533)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 分離膜エレメント
2 有孔集水管
3 分離膜
4 供給側流路材
5 透過側流路材
6 分離膜リーフ
7 巻囲体
8 封止部
9 分離膜対
10、10a、10b 濃縮水量調整バルブ
11、11a、11b 分離膜エレメントの入ったベッセル(1段目)
12、12a、12b 分離膜エレメントの入ったベッセル(2段目)
13 分離膜エレメントの入ったベッセル(3段目)
21 原水供給部
22 濃縮水排出部
31、31a、31b 透過水量調整バルブ(1段目)
32、32a、32b 透過水量調整バルブ(2段目)
33 透過水量調整バルブ(3段目)
40 三方バルブ
50 バイパス流路
60 逆止弁
70a、70b 原水量調整バルブ
101 原水
102 透過水
103 濃縮水