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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】液中粒子の評価装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20221109BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01N15/14 A
C12M1/34 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019508273
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001557
(87)【国際公開番号】W WO2019150997
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018016114
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 真治
(72)【発明者】
【氏名】竹本 恭也
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表昭57-500995(JP,A)
【文献】特表2015-503736(JP,A)
【文献】特表2004-503223(JP,A)
【文献】特開2002-323438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0315501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00~15/14
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1開口部及び第2開口部、並びに内部に中空部を有する、本体部材と、
前記本体部材に接続され、前記中空部に連通する、第1流路及び第2流路と、
前記中空部内に互いに対向して設けられ、かつ、前記中空部内で摺動可能である、第1駆動部材及び第2駆動部材と、
前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を前記中空部内で対向方向に駆動させる、駆動手段と、
前記第1流路を経由して、前記中空部に粒子を含有する液体を導入する、送液手段と、
前記第1開口部又は前記第2開口部より前記中空部内の粒子を撮像する、撮像手段と、を備え、
前記第1駆動部材及び前記第2駆動部材を対向方向から観察した場合において、前記第1駆動部材及び前記第2駆動部材が、前記第1流路及び前記第2流路よりも幅広な部位を有する、
液中粒子の評価装置。
【請求項2】
前記本体部材、及び、前記第1駆動部材に取り付けられ、前記本体部材と前記第1駆動部材との間を液密に保持する、連結部材を備える、請求項1記載の液中粒子の評価装置。
【請求項3】
前記連結部材が、蛇腹構造を有する、請求項2記載の液中粒子の評価装置。
【請求項4】
前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を対向方向から観察した場合における前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材の形状が、略円形又は多角形である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液中粒子の評価装置。
【請求項5】
対向方向における前記第1駆動部材と前記第2駆動部材との間の幅が、観察時において0.01mm以上0.05mm未満、かつ、観察時以外において0.5mm以上となるように前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を駆動させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の液中粒子の評価装置の運転方法。
【請求項6】
前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材が対向方向に駆動する速度が、5mm/s以下である、請求項5記載の液中粒子の評価装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中粒子の評価装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検液中の微生物等の液中粒子を自動観察する手段として、液中粒子の大きさに応じて二枚の透明ガラスの間隔を調整しながら、粒子を含む被検液の一部を特定の領域に固定する技術が知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特公平3-53907号公報
【文献】日本国特表2004-503223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明ガラス等の部材を上下に駆動させる従来の技術(特許文献1及び2)では、観察対象である液中粒子が押し潰される等して駆動部材に固着してしまい、それら固着物が自動観察の障害となるばかりでなく、それらを除去するために多大な負担を費やさねばならないことが問題視されていた。
そこで本発明は、駆動部材を対向方向に駆動(上下駆動)させることにより好適な間隔において被検液に含まれる液中粒子を観察しながら、当該液中粒子の駆動部材等への固着を大幅に抑制することが可能な、液中粒子の評価装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の液中粒子の評価装置は、その一つの態様として、互いに対向する第1開口部及び第2開口部、並びに内部に中空部を有する、本体部材と、
前記本体部材に接続され、前記中空部に連通する、第1流路及び第2流路と、
前記中空部内に互いに対向して設けられ、かつ、前記中空部内で摺動可能である、第1駆動部材及び第2駆動部材と、
前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を前記中空部内で対向方向に駆動させる、駆動手段と、
前記第1流路を経由して、前記中空部に粒子を含有する液体を導入する、送液手段と、
前記第1開口部又は前記第2開口部より前記中空部内の粒子を撮像する、撮像手段と、を備え、
前記第1駆動部材及び前記第2駆動部材を対向方向から観察した場合において、前記第1駆動部材及び前記第2駆動部材が、前記第1流路及び前記第2流路よりも幅広な部位を有する。
また、前記液中粒子の評価装置の運転方法は、その一つの態様として、対向方向における前記第1駆動部材と前記第2駆動部材との間の幅が、観察時において0.01mm以上0.05mm未満、かつ、観察時以外において0.5mm以上となるように前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を駆動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液中粒子の評価装置及びその運転方法によれば、第1駆動部材及び第2駆動部材を対向方向への駆動(上下駆動)により好適な間隔において被検液に含まれる液中粒子を観察できることに加えて、観察対象である液中粒子の駆動部材等への固着を顕著に抑制できることから、観察結果の正確性をより高め、かつ、装置メンテナンスの負担を大幅に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る液中粒子の評価装置の本体部材の断面の概略図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る液中粒子の評価装置の断面の概略図である。
図3図3は、第1駆動部材を第2駆動部材との対向方向から観察した場合の概略図である。
図4a図4aは、本発明の第2の実施形態に係る液中粒子の評価装置の断面の概略図である。
図4b図4bは、本発明の第2の実施形態に係る液中粒子の評価装置の断面の概略図である。
図5a図5aは、本発明の第3の実施形態に係る液中粒子の評価装置の断面の概略図である。
図5b図5bは、本発明の第3の実施形態に係る液中粒子の評価装置の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましい実施の形態について、以下のとおり図面を参照しながら説明する。
【0009】
<第1の実施形態>
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、互いに対向する第1開口部及び第2開口部、並びに内部に中空部を有する、本体部材と、
前記本体部材に接続され、前記中空部に連通する、第1流路及び第2流路と、
前記中空部内に互いに対向して設けられ、かつ、前記中空部内で摺動可能である、第1駆動部材及び第2駆動部材と、
前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を前記中空部内で対向方向に駆動させる、駆動手段と、
前記第1流路を経由して、前記中空部に粒子を含有する液体を導入する、送液手段と、
前記第1開口部又は前記第2開口部より前記中空部内の粒子を撮像する、撮像手段と、を備え、
前記第1駆動部材及び前記第2駆動部材を対向方向から観察した場合において、前記第1駆動部材及び前記第2駆動部材が、前記第1流路及び前記第2流路よりも幅広な部位を有する。
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置において、第1開口部及び第2開口部は互いに対向し、中空部に連通することが好ましい。
【0010】
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、互いに対向し、かつ、連通して中空部を形成する、第1開口部及び第2開口部、並びに、上記中空部にそれぞれ連通する、第1流路及び第2流路を有する、本体部材と、上記中空部にそれぞれ嵌合又は遊嵌する、第1駆動部材及び第2駆動部材と、上記第1駆動部材及び/又は上記第2駆動部材を上記中空部内で対向方向に駆動させる、駆動手段と、上記第1流路を経由して、上記中空部に粒子を含有する液体を導入する、送液手段と、上記中空部内の液中粒子を撮像する、撮像手段と、を備え、上記第1駆動部材及び上記第2駆動部材を対向方向から観察した場合において、上記第1駆動部材及び上記第2駆動部材が、上記第1流路及び上記第2流路よりも幅広な部位を有する。
【0011】
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、互いに対向し、かつ、連通して中空部を形成する、第1開口部及び第2開口部、並びに、上記中空部にそれぞれ連通する、第1流路及び第2流路を有する、本体部材を備えてもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液中粒子の評価装置の本体部材の断面の概略図である。図1の断面図においては、本体部材1はその一端及び他端(上下方向)において、互いに対向する第1開口部2及び第2開口部3を有する。
図1の本体部材1においては、第1開口部2と第2開口部3とは等幅であるが、例えば互いの幅が異なっていても構わないし、互いの開口形状が異なっていても構わない。
【0012】
本体部材は、互いに対向する第1開口部及び第2開口部、並びに内部に中空部を有する。
本体部材は、管状であってもよく、略円管状であっても、多角管状であってもよい。また、一端に第1開口部が設けられ、他端に第2開口部が設けられていてもよい。
第1開口部2及び第2開口部3は連通していてもよく、中空部6を形成している。本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置では、中空部6に存在する被検液を、第1開口部2又は第2開口部3を通じて観察し、評価することができる。
図1の本体部材1においては、中空部は、第1開口部2から第2開口部3に至るまで、全体として等幅であるが、その形状は特に限定されず、例えば幅等の変化(膨らみやくびれ等)があっても構わないし、湾曲をしていても構わない。
また図1の断面図においては、本体部材1はその側面(左右方向)において、第1流路4及び第2流路5を有する。
図1においては、第1流路4及び第2流路5は幅(図1の上下)方向及び長手(図の左右)方向においてそれぞれ等幅及び等しい長さであるが、例えば互いの幅が異なっていても構わないし、互いの形状が異なっていても構わない。また、図1においては、第1流路4及び第2流路5は、本体部材1の長さ(図1の上下)方向において同位置に、互いに対向するように設けられているが、それらが異なる位置に設けられていても構わない。
【0013】
第1流路4及び第2流路5は、それぞれ本体部材1に接続され、中空部6に連通している。
本体部材を形成する素材は、被検液により腐食するもの等でなければ特に限定されないが、例えば、ステンレス又はアルミ等の金属が挙げられる。
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、上記中空部内に互いに対向して設けられ、かつ、上記中空部内で摺動可能である、第1駆動部材及び第2駆動部材を備えることを必要とする。また本発明の液中粒子の評価装置は、第1駆動部材及び/又は上記第2駆動部材を中空部内で対向方向に駆動させる、駆動手段を備えることを必要とする。
【0014】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る液中粒子の評価装置の断面の概略図である。第1駆動部材及び第2駆動部材は、上記中空部内にそれぞれ嵌合又は遊嵌していてもよい。図2の断面図においては、本体部材1の中空部6にはそれぞれ、第1駆動部材7及び第2駆動部材8が嵌合され、駆動手段(図示しない)によって、本体部材1の長さ(図の上下)方向に対向して駆動可能な状態になっている。
ここで「嵌合」とは、第1駆動部材及び第2駆動部材が、中空部が液密な状態となるように中空部にそれぞれ嵌め込まれることをいう。
なお第1駆動部材及び/又は第2駆動部材は、中空部が液密にはならない状態で存在、すなわち、「遊嵌」していても構わない。
【0015】
第1駆動部材及び第2駆動部材は、その双方が中空部内で駆動をしても構わないし、いずれか一方のみが中空部内で駆動をしても構わない。
後者の場合においては、駆動をしない側の駆動部材は第1開口部若しくは第2開口部、又は、中空部の一部を閉塞する形で接着等により固定されていても構わない。また、駆動をしない側の駆動部材に相当する部位が、本体部材と共に一体成型をされていても構わない。なおこれらの場合においては、厳密な解釈ではなく、固定された駆動部材又は駆動部材に相当する部位が存在しないと仮定したならば第1開口部及び第2開口部は互いに連通しており、中空部が形成されているものとみなすことができる。
また第1駆動部材及び/又は第2駆動部材は、中空部内のみならず、中空部内から中空部外に亘って駆動をしても構わない。
【0016】
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置においては、第1駆動部材又は第2駆動部材で挟まれた中空部の一部領域に存在する被検液を、第1駆動部材又は第2駆動部材越しに撮像し、評価することになる。このため、第1駆動部材又は第2駆動部材の少なくとも一部は、透明又は半透明であることが好ましい。一方で、双方の駆動部材がいずれも透明な部位を有しても構わないし、駆動部材の全体が透明になるように成型がされていても構わない。
駆動部材における透明な部位を形成する素材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、駆動部材における透明な部位以外の部位を形成する素材としては、例えば、ステンレス又はアルミ等の金属が挙げられる。
【0017】
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、第1流路を経由して、中空部に粒子を含有する液体を導入する、送液手段(図示しない)を備えることを必要とする。また本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、中空部内の液中粒子を撮像する、撮像手段を備えることを必要とする。
送液手段によって、第1流路を経由させながら、第1駆動部材又は第2駆動部材で挟まれた中空部の一部領域に、粒子を含有する液体すなわち被検液を導入することができる。そして撮像手段によって、第1駆動部材又は第2駆動部材で挟まれた中空部の一部領域に存在する被検液を、例えば図2においては第1駆動部材7又は第2駆動部材8越しに撮像手段9で撮像し、評価することができる。
送液手段としては、例えば、ターボ(非容積)型又は容積型ポンプが挙げられる。
【0018】
撮像手段としては、例えば、CCD又はCMOSに代表される素子を持つカメラが挙げられるが、評価対象によってカラー若しくはモノクロ又はUV若しくはIR等の素子感度を使い分けることが好ましい。
第1流路を経由して中空部の一部領域に導入された被検液は、第2流路を経由して中空部外へ排出される。なお、被検液は中空部の一部領域に連続的に導入されても構わないが、第1流路及び/又は第2流路に閉止手段を設けてその内部の被検液の液流を停止することで、中空部の一部領域内の被検液を一時的に滞留させた状態で撮像し、評価することができる。
【0019】
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置は、第1駆動部材及び第2駆動部材を対向方向から観察した場合において、第1駆動部材及び第2駆動部材が、第1流路及び第2流路よりも幅広な部位を有することを必要とする。
図3は、第1駆動部材7を第2駆動部材8との対向方向から観察した場合の概略図である。第1流路4及び第2流路5は、いずれもその幅がL1で一定であるところ、第1駆動部材7は、それよりも幅広な部位(最大幅はL2)を有している。図3には図示されない第2駆動部材8についても、これを図3とは正反対の方向から観察した場合においては、第1流路4及び第2流路5の幅L1よりも幅広な部位を有することになる。
【0020】
図3に示されるように第1駆動部材7又は第2駆動部材8が第1流路4及び第2流路5の幅L1よりも幅広な部位を有さない場合、すなわち、第1駆動部材7又は第2駆動部材8の最大幅L2が、L1と同一又はL1よりも幅狭である場合には、L1と同程度の径を有する液中粒子が中空部に導入され滞留した場合において、第1駆動部材7及び/又は第2駆動部材8の対向方向への駆動(上下駆動)により押し潰されると、潰れた液中粒子は第1駆動部材7及び第2駆動部材8の幅方向への逃げ場を失う。そして、第1駆動部材7及び第2駆動部材8の長さL3の方向へ隙間無く延伸されて、液中粒子にさらに圧力がかかれば、第1駆動部材7及び第2駆動部材8に固着する可能性がより高くなる。
【0021】
一方で、図3に示されるように、第1駆動部材7又は第2駆動部材8が第1流路4及び第2流路5の幅L1よりも幅広な部位を有する場合には、L1と同程度の径を有する液中粒子が中空部に導入され滞留した場合においても、第1駆動部材7及び/又は第2駆動部材8の対向方向への駆動(上下駆動)により押し潰された液中粒子は第1駆動部材7及び第2駆動部材8の長さ方向のみならず幅方向にも延伸が可能であり、二つの駆動部材間において隙間無く延伸される可能性が顕著に低減されることになる。このため、液中粒子が第1駆動部材7及び第2駆動部材8に固着する可能性を、大幅に低減することが可能となる。
【0022】
第1駆動部材7及び第2駆動部材8の長さL3については、これが過度に短ければ液中粒子が中空部6に滞留する可能性、あるいは中空部6の洗浄が不十分となる可能性等が高まる。一方で、これが過度に長ければ、中空部6に導入された液中粒子の詰り等の可能性が高まることになる。このため、L3とL2とは同程度であることが好ましく、さらには、第1駆動部材7及び第2駆動部材8を互いの対向方向から観察した場合における第1駆動部材7及び第2駆動部材8の形状は、滞留した液中粒子の引っかかりの防止等の観点から、略円形又は多角形であることがより好ましく、略円形であることがさらに好ましい。
対向方向における第1駆動部材と第2駆動部材との間の幅は、液中粒子の平均的なサイズや、本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置が備える撮像手段の被写界深度等に応じて適宜決定すればよいが、液中粒子の観察時においては、液中粒子が活性汚泥であれば、撮像分解能と駆動部材の位置再現性の観点から、0.01mm以上とすることが好ましい。また、液中粒子が上下方向に重複し、誤認識するのを防止する観点から、液中粒子の観察時の対向方向における第1駆動部材と第2駆動部材との間の幅は、0.05mm未満とすることが好ましい。
【0023】
一方で、液中粒子の観察時以外においては、中空部の閉塞等を抑止するため、第1駆動部材と第2駆動部材との間の幅は、0.5mm以上とすることが好ましい。また、液中粒子の観察時以外における第1駆動部材と第2駆動部材との間の幅は、駆動時間による観察時間増加を避けるため1mm以下とすることが好ましい。なお、液中粒子の観察時以外においては、第1駆動部材及び第2駆動部材に固着した液中粒子等が遊離する可能性も高まることから、被検液の動入と、第1駆動部材及び第2駆動部材の対向方向への駆動(上下駆動)を、間欠的に繰り返すことが好ましい。
本発明の実施形態にかかる液中粒子の評価装置の運転方法は、対向方向における前記第1駆動部材と前記第2駆動部材との間の幅が、観察時において0.01mm以上0.05mm未満、かつ、観察時以外において0.5mm以上となるように前記第1駆動部材及び/又は前記第2駆動部材を駆動させる。
【0024】
第1駆動部材及び/又は第2駆動部材が対向方向に駆動する速度については、撮像を含めた評価時間を適度なものとしつつ、駆動部材等の破損の可能性を低減するため、5mm/s以下とすることが好ましい。また、作業効率の観点から0.5mm/s以上とすることが好ましい。
【0025】
<第2の実施形態>
図4a及び図4bは、本発明の第2の実施形態に係る液中粒子の評価装置の本体部材の断面の概略図第1駆動部材である。本発明の第2の実施形態に係る液中粒子の評価装置は、本発明の第1の実施形態に係る液中粒子の評価装置の構成要素に加えて、本体部材、及び、第1駆動部材に取り付けられ、本体部材と第1駆動部材との間を液密に保持する、連結部材を備える。
図4a及び図4bの断面図においては、本体部材1の中空部6には、第1駆動部材7が遊嵌され、かつ、第2駆動部材12が嵌合されている。ここで第1駆動部材7は、駆動手段(図示しない)によって、本体部材1の長さ方向(図の上下方向)に対向して駆動可能な状態になっている。一方で、第2駆動部材12は駆動をしない構成となっており、第2開口部を閉塞する形で接着により固定されている。なお前述したように、駆動をしない第2駆動部材は、本体部材と共に一体成型されていても構わない。
【0026】
図4a及び図4bの断面図においては、本体部材1の中空部6に遊嵌された第1駆動部材7は、中空部6内のみならず、中空部6内から中空部6外に亘って駆動をする構成となっている。このような構成において、本体部材と第1駆動部材との間が液密な状態となるように保持すべく、本発明の第2の実施形態に係る液中粒子の評価装置は、図4a及び図4bに示すような連結部材11を備える。連結部材11は、本体部材1及び第1駆動部材(7)のそれぞれに取り付けられている。
連結部材の形状は、その素材や第1駆動部材の駆動範囲等によって、適宜決定すればよい。連結部材は、弾性部材であってもよく、連結部材の素材としては、例えば、一定の破れ強度を有しながら伸縮が可能な、樹脂、ゴム又はエラストマーが挙げられる。
連結部材11を、本体部材及び第1駆動部材のそれぞれに取り付ける方法としては、例えば、接着等による固定が挙げられる。
【0027】
<第3の実施形態>
図5a及び図5bは、本発明の第3の実施形態に係る液中粒子の評価装置の本体部材の断面の概略図である。本発明の第3の実施形態に係る液中粒子の評価装置は、本発明の第2の実施形態に係る液中粒子の評価装置における連結部材が、蛇腹構造を有する。
図5aの断面図においては、連結部材13は、蛇腹構造を有している。連結部材D1が蛇腹構造を有することで、図5bのように第1駆動部材7が対向方向への駆動(上下駆動)をしたとしても、連結部材13が側面方向(左右)に大きくぶれることなく伸縮することが可能となり、液中粒子の評価をより安定的に実施することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、水処理槽の活性汚泥等の液中粒子の状態評価に、好適に利用することができる。
【0029】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年2月1日出願の日本特許出願(特願2018-16114)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 本体部材
2 第1開口部
3 第2開口部
4 第1流路
5 第2流路
6 中空部
7 第1駆動部材
8 第2駆動部材
9 撮像手段
11 連結部材
12 第2駆動部材(固定されている状態)
13 蛇腹構造を有する連結部材
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b