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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20221109BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
A61M39/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019511193
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013200
(87)【国際公開番号】W WO2018186276
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2017074542
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大黒 雄史
(72)【発明者】
【氏名】井口 裕也
(72)【発明者】
【氏名】森田 康裕
(72)【発明者】
【氏名】兼村 晃一
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/164339(WO,A1)
【文献】特表2010-524626(JP,A)
【文献】特表2016-535629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、第二部材と、の間に介在するコネクタであって、
ニードルと、
前記ニードルを保持するハブと、
前記ニードルの先端を保護するハウジングと、
前記ハウジングをスライド可能に保持する筒状の第一コネクタ部材と、
前記第一コネクタ部材をスライド可能に保持する筒状の第二コネクタ部材と、
前記ハウジングのスライドをロックすることが可能な第一ロック部と、を備え、
前記ハブは前記第二コネクタ部材の底面に設けられる貫通孔に嵌合するか、または前記第二コネクタ部材に一体的に設けられ、
前記第一コネクタ部材は前記第二コネクタ部材から遠ざかる方向または前記第二コネクタ部材に近づく方向にスライド可能であり、
前記ハウジングは前記第二コネクタ部材から遠ざかる方向および前記第二コネクタ部材に近づく方向にスライド可能であり、
前記ハウジングおよび前記第一コネクタ部材のスライドがロックされているときに前記ハウジングは前記ニードルの前記先端を保護し、
前記第一ロック部は、前記第一コネクタ部材の内周面に設けられ、
前記第一ロック部は、前記第二部材と係合することで前記ハウジングのロックを解除し、前記第二部材から離脱することで前記ハウジングのロックを維持し、
前記ハウジングには、前記ハウジングのスライドがロックされているときに前記ニードルの前記先端を収納する空間が設けられており、
前記ハウジングは、前記空間を封止する第一封止部材を有し、
前記ニードルは前記第一封止部材を貫通し、
前記第一コネクタ部材のスライドをロックすることが可能な第二ロック部をさらに備える、コネクタ。
【請求項2】
前記第一ロック部は前記第一コネクタ部材の内周面側に突出する第一爪部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第一爪部は、弾性を有するアーム部によって保持されている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは前記空間を封止する第二封止部材を有し、前記第二封止部材は前記第二部材に設けられた第三封止部材と圧縮接続可能であり、
前記第二封止部材および前記第三封止部材が圧縮接続した状態で前記ニードルが前記第二封止部材および前記第三封止部材を貫通することで前記ニードルの前記先端が前記第二部材に到達する、請求項1から3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングおよび前記第一コネクタ部材のスライドのロックが解除されて前記ハウジングおよび前記第一コネクタ部材が前記ハブに近づく方向に移動すると前記第一封止部材は前記ハブに当接する、請求項1から4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第一コネクタ部材は、内周面側に傾斜した第一傾斜片を有し、前記ハウジングが前記第一傾斜片側にスライドすることで前記第一傾斜片は外周面側へ回動し、
前記第二ロック部は、前記第一傾斜片の外側に位置して内周面側に傾斜した、前記第二コネクタ部材の第二傾斜片を有し、前記第二傾斜片が前記第一コネクタ部材に係合することで前記第一コネクタ部材のスライドがロックされ、
前記第一傾斜片が外側へ回動することで前記第一傾斜片が前記第二傾斜片に当接して前記第二傾斜片を外側に回動させることで前記第二傾斜片と前記第一コネクタ部材との係合が解除されて前記第一コネクタ部材がスライド可能となる、請求項1から5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第二部材は外周側に突出する通路爪部を有し、前記通路爪部が前記第一ロック部を前記第一コネクタ部材の外周面側へ移動させることにより前記第一ロック部による前記ハウジングのロックを解除することが可能である、請求項2または3項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタは、たとえば特表2010-521219号公報(特許文献1)および特開2011-19924号公報(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-521219号公報
【文献】特開2011-19924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第一の部材は穿刺部材の少なくとも先端が保護チャンバに封入される安全位置と、穿刺部材の先端が保護チャンバの外に配置される非安全位置との間において第二の部材に対して滑動されるように配置される。
【0005】
特許文献2では、シリンジアダプタの先端は、常にボディー内に設けられる。
特許文献1に記載の構造では、人が操作することでニードルの先端を露出させることができる。その結果、人がニードルの先端に接触することができるという問題がある。特許文献2では、常にボディー内にニードルの先端が位置し、付勢部材を有することで、アダプタを押し込まなければニードルを接続できず、液体を注入することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、人がニードルの先端に接触することが困難であり、かつ、付勢部材を備えないため他の部材を接続することで液体の注入が容易なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コネクタは、第一部材と、第二部材と、の間に介在するコネクタであって、ニードルと、ニードルの先端を保護するハウジングと、ハウジングをスライド可能に保持する筒状の第一コネクタ部材と、ハウジングのスライドをロックすることが可能な第一ロック部と、を備え、ハウジングおよび第一コネクタ部材のスライドがロックされているときにハウジングはニードルの先端を保護し、第一ロック部は、第一コネクタ部材の内周面に設けられ、第一ロック部は、第二部材と係合することでハウジングのロックを解除し、第二部材から離脱することでハウジングのロックを維持する。
【0008】
このように構成されたコネクタでは、第一ロック部は第一コネクタ部材の内周面に設けられるため、操作者が第一ロック部材に触れることが困難となる。その結果、不用意な操作でロックが解除されることを防止できる。さらに、第一ロック部が第二部材と係合することでハウジングのロックが解除されるとハウジングをスライドさせてニードルの先端を露出させることができる。この状態でニードルの先端を第二部材に挿入することでニードルを用いた液体の注入が可能となる。
【0009】
好ましくは、第一ロック部は第一コネクタ部材の内周面側に突出する第一爪部を有する。
【0010】
好ましくは、第一爪部は、弾性を有するアーム部によって保持されている。
好ましくは、ハウジングには、ハウジングのスライドがロックされているときにニードルの先端を収納する空間が設けられており、ハウジングは、空間を封止する第一封止部材を有し、ニードルは第一封止部材を貫通している。
【0011】
好ましくは、ハウジングは空間を封止する第二封止部材を有し、第二封止部材は第二部材に設けられた第三封止部材と圧縮接続可能であり、第二封止部材および第三封止部材が圧縮接続した状態でニードルが第二封止部材および第三封止部材を貫通することでニードルの先端が第二部材に到達する。
【0012】
好ましくは、コネクタは、ニードルを保持するハブと、第一コネクタ部材をスライド可能に保持する筒状の第二コネクタ部材と、第一コネクタ部材のスライドをロックすることが可能な第二ロック部と、をさらに備え、第二コネクタ部材の底面にはハブに嵌合する貫通孔が設けられている。なお、第二コネクタ部材とハブを一体にしてもよい。
【0013】
好ましくは、ハウジングおよび第一コネクタ部材のスライドのロックが解除されてハウジングおよび第一コネクタ部材がハブに近づく方向に移動すると第一封止部材はハブに当接する。
【0014】
好ましくは、第一コネクタ部材は、内周面側に傾斜した第一傾斜片を有し、ハウジングが第一傾斜片側にスライドすることで第一傾斜片は外周面側へ回動し、第二ロック部は、第一傾斜片の外側に位置して内周面側に傾斜した、第二コネクタ部材の第二傾斜片を有し、第二傾斜片が第一コネクタ部材に係合することで第一コネクタ部材のスライドがロックされ、第一傾斜片が外側へ回動することで第一傾斜片が第二傾斜片に当接して第二傾斜片を外側に回動させることで第二傾斜片と第一コネクタ部材との係合が解除されて第一コネクタ部材がスライド可能となる。
【0015】
好ましくは、第二部材は外周側に突出する通路爪部を有し、通路爪部が第一ロック部を第一コネクタ部材の外周面側へ移動させることにより第一ロック部によるハウジングのロックを解除することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人がニードルの先端に接触することが困難であり、かつ、他の部材を接続することで液体の注入が容易なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係るコネクタの側面図である。
図2図1中のII-II線に沿った断面図である。
図3図2中のIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
図4】アクセス部材に接続される前のコネクタの断面図である。
図5】筒状の第二コネクタ部材の斜視図である。
図6】筒状の第一コネクタ部材の斜視図である。
図7】ニードル先端を保護するハウジングの斜視図である。
図8】アクセス部材に接続された後のコネクタの側面図である。
図9図8中のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図9中のXで囲んだ部分の断面図である。
図11図9中のXI-XI線に沿った断面図である。
図12図11中のXIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
図13】第一コネクタ部材のスライドをロックする第二ロック部の斜視図である。
図14】第二ロック部によるロックが解除されたコネクタの側面図である。
図15図14中のXV-XV線に沿った断面図である。
図16図15中のXVI-XVI線に沿った断面図である。
図17図16中のXVIIで囲んだ部分の断面図である。
図18】第一コネクタ部材のスライドをロックしていない第二ロック部の斜視図である。
図19】ニードルがアクセス部材に連通した状態のコネクタの側面図である。
図20図19中のXX-XX線に沿った断面図である。
図21図20中のXXI-XXI線に沿った断面図である。
図22】液体を移注しているコネクタの側面図である。
図23】アクセス部材との連通が解除されたコネクタの側面図である。
図24】アクセス部材との接続が解除されたコネクタの側面図である。
図25】アクセス部材から離脱したコネクタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(コネクタ1ならびにそれに付属するアクセス部材101およびシリンジ201の構成)
図1は、実施の形態1に係るコネクタの側面図である。図1で示すように、コネクタ1はコネクタ本体としての第二コネクタ部材10と、第二コネクタ部材10の内側に嵌り合うコネクタガイドとしての第一コネクタ部材40とを有する。第一コネクタ部材40の先端はアクセス部材101に嵌り合う。第二コネクタ部材10の後端はシリンジ201に嵌り合う。
【0020】
アクセス部材101は、コネクタキャップ110と、コネクタキャップ110に保持されるアーム部112とを有する。アーム部112の先端が通路爪部111である。
【0021】
シリンジ201は、円筒形状のバレル210と、バレル210の内側に嵌り合うプランジャー220とを有する。プランジャー220の先端にはガスケット230が嵌合している。バレル210の先端筒211が第二コネクタ部材10に螺合する。コネクタ1が矢印2で示す方向に移動して第一コネクタ部材40の先端が通路爪部111に嵌り合う。
【0022】
ガスケット230は、筒状容器であるバレル210内を自在に摺動可能に設けられるとともに、バレル210の内周面とガスケット230との間を液密に維持する。バレル210とガスケット230によって形成される空間内に、液体215が収容されている。ガスケット230としては、天然ゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレンブタジエンゴム、および熱可塑性エラストマー等を採用することができる。なお、バレル210とガスケット230によって形成される空間内は、使用時に薬液を収容できるよう空(から)になっていてもよい。
【0023】
図2は、図1中のII-II線に沿った断面図である。図2で示すように、コネクタ1は、第二コネクタ部材10と、第二コネクタ部材10の内側に嵌り合う第一コネクタ部材40と、第一コネクタ部材40の内側に嵌り合うハウジング50とを有する。第二コネクタ部材10は内周面10iを有する。内周面10iに係合部11が設けられている。係合部11は内周面10iに設けられる。第二コネクタ部材10の端部には貫通孔12が設けられている。貫通孔12にはハブ20が嵌り合う。なお、第二コネクタ部材10とハブ20が一体となっていてもよい。
【0024】
第一コネクタ部材40の後端に突条41が設けられる。突条41は、図2で示す状態では係合部11と係合している。これにより、第一コネクタ部材40が第二コネクタ部材10から遠ざかる方向への動きが制限される。
【0025】
第一コネクタ部材40は内周面40iを有する。第一コネクタ部材40の先端に第一爪部42が設けられている。第一爪部42はハウジング50のスライドを制限する。ハウジング50はニードル30の先端31を保護している。ハウジング50の貫通孔である空間52内に先端31が位置している。ハウジング50の先端のストッパ51が第一爪部42と係合している。これにより、ハウジング50が第二コネクタ部材10に近づく方向へスライドすることが制限されている。50は空間53と空間54とを有する。空間53にゴム栓である第二封止部材61が収納されている。空間54にゴム栓である第一封止部材62が収納されている。
【0026】
アクセス部材101はアーム部112を有する。アーム部112の先端が通路爪部111である。アクセス部材101がゴム栓である第三封止部材120を保持している。第三封止部材120はコネクタキャップ110により位置決めされている。
【0027】
貫通孔12にハブ20が嵌合している。ハブ20のシリンジ側端部(メスルアーロック)にオスネジ25が設けられている。オスネジ25はバレル210の先端筒(オスルアーロック)211のメスネジ213と螺合している。なお、ハブ20と接続できる構成であれば、シリンジ201でなくてもよい。
【0028】
第一封止部材62および第二封止部材61は、たとえばゴム部材または熱可塑性エラストマー樹脂で構成されてもよい。ゴム部材を用いる場合にはイソプレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムなどに代表されるゴム部材を用いることができる。
【0029】
図3は、図2中のIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図3で示すように、第一爪部42とストッパ51とが当接可能な状態で配置されている。第一ロック部1Lは第一爪部42を有する。図3で示す状態では、ストッパ51は第一爪部42と当接していない。しかしながら、ストッパ51は第一爪部42に当接する部分まではスライドすることが可能である。ストッパ51が第一爪部42に当接するとストッパ51は図3中の右方向(図1中のシリンジ201へ近づく方向)へはスライドすることができない。
【0030】
図4は、アクセス部材に接続される前のコネクタの断面図である。図4で示すように、第一コネクタ部材40の後端に第一傾斜片43が設けられている。第二コネクタ部材10の先端に第二傾斜片13が設けられている。第二傾斜片13と後端44とが当接可能である。第二コネクタ部材10は第二ロック部2Lを有する。第一コネクタ部材40が第二コネクタ部材10に近づく方向にスライドすると後端44が第二傾斜片13と当接して、第一コネクタ部材40のスライドが制限される。
【0031】
図5は、筒状の第二コネクタ部材の斜視図である。図5で示すように、筒状の第二コネクタ部材10の底に貫通孔12が設けられている。貫通孔12が撓むことを可能にするために、放射状の溝12aが貫通孔12に設けられている。溝12aの数は、図5で示すよりも多くてもよく、または少なくてもよい。なお、貫通孔12を備えずハブ20と一体としてもよい。
【0032】
第二コネクタ部材10の内周面10iには、内周側へ傾斜するように第二傾斜片13が設けられている。第二傾斜片13は可撓性(弾性)を有する。すなわち、外側へ第二傾斜片13が押されると、第二傾斜片13は外側へ移動する。係合部11は、第二コネクタ部材10において2ヶ所に設けられている。第二コネクタ部材10は底を有する筒状であり、その底に貫通孔12が設けられている。この例では、第二コネクタ部材10はほぼ八角形形状である。しかしながら、第二コネクタ部材10の形状はこれに限られず、他の多角形または丸型または楕円型であってもよい。
【0033】
図6は、筒状の第一コネクタ部材の斜視図である。第一コネクタ部材40は、第二コネクタ部材10の内周面10iに嵌合する。第一コネクタ部材40と第二コネクタ部材10が嵌合するため、第一コネクタ部材40は第二コネクタ部材10の内周面10iに似た形状とされている。内周面40iには内周側へ突出するように第一爪部42が設けられている。第一爪部42はハウジング50のスライドを制限する。内周面40iには後端側係合片45が設けられている。後端側係合片45は、ハウジング50のスライドを制限するストッパとしての役割を果たす。内周面40iには前端側係合片49が設けられている。前端側係合片49はハウジング50が後端側係合片45から遠ざかる方向へスライドすることを制限する。第一コネクタ部材40は第一傾斜片43を有する。第一傾斜片43はテーパ状の板部材である。第一コネクタ部材40の外周面には突条41が設けられている。突条41はスライド方向と直交するように延びる凸状部材である。
【0034】
図7は、ニードル先端を保護するハウジングの斜視図である。図7で示すように、ハウジング50は先端部分に設けられたストッパ51と、胴状の本体部55と、本体部55を貫通する空間52と、空間52の端部を構成する空間53とを有する。ストッパ51は、横方向(スライド方向と直交する方向)に延びる。1対のストッパ51は互いに平行に配置されている。本体部55はハウジング50の一端から他端へ延びる。この例では、本体部55は円筒形状であるが、角筒形状であってもよい。
【0035】
(コネクタ1ならびにそれに付属するアクセス部材101およびシリンジ201の動作)
図8は、アクセス部材に接続された後のコネクタの側面図である。図8で示すように、矢印2で示す方向に位置が移動する。これにより、第一コネクタ部材40がコネクタキャップ110に嵌合する。
【0036】
図9は、図8中のIX-IX線に沿った断面図である。図9で示すように、第二封止部材61と第三封止部材120とが当接する。アーム部112の通路爪部111が第一爪部42およびハウジング50に当接する。通路爪部111がハウジング50をシリンジ201側へ押圧することで、ハウジング50はシリンジ201へ近づく側に移動しようとする。
【0037】
図10は、図9中のXで囲んだ部分の断面図である。図10で示すように、通路爪部111が第一爪部42と当接しているため、第一爪部42は上方向へ移動している。具体的には、図3で示す第一爪部42の位置と、図10で示す第一爪部42の位置とを比較すると、図10で示す第一爪部42の位置は、図3で示す第一爪部42の位置よりも上方向(矢印3で示す方向)に移動している。
【0038】
図11は、図9中のXI-XI線に沿った断面図である。図12は、図11中のXIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図13は、第一コネクタ部材のスライドをロックする第二ロック部の斜視図である。
【0039】
図11から図13で示すように、第二傾斜片13の先端は後端44と当接している。そのため、第一コネクタ部材40は、図11および図12で示す位置から第二コネクタ部材10へ近づく位置に移動することはできない。シリンジ201はアクセス部材101側へ近づくように力が加えられるものの、第二ロック部2Lが存在するため、第一コネクタ部材40は第二コネクタ部材10側へスライドして移動することができない。
【0040】
図14は、第二ロック部によるロックが解除されたコネクタの側面図である。図15は、図14中のXV-XV線に沿った断面図である。図14および図15で示すように、図11で示す位置からコネクタ1をさらにアクセス部材101へ近づく方向に移動させる。すると第一コネクタ部材40はアクセス部材101に深く挿入される。ストッパ51は第一爪部42と当接した後、第一爪部42を越えて第二コネクタ部材10へ近づく方向に移動する。これに伴い、ハウジング50が第二コネクタ部材10へ近づく方向に移動する。その結果、空間52内で先端31の位置が移動し、先端31が第二封止部材61に近づく。
【0041】
図16は、図15中のXVI-XVI線に沿った断面図である。図17は、図16中のXVIIで囲んだ部分の断面図である。図18は、第一コネクタ部材のスライドをロックしていない第二ロック部の斜視図である。
【0042】
図16から図18で示すように、ハウジング50が第二コネクタ部材10に近づく方向に移動する。これにより、ハウジング50が第一傾斜片43に当接して第一傾斜片43が矢印3で示す方向に回動する。第一傾斜片43の外周部分が第二傾斜片13と当接しているため、第二傾斜片13が矢印4で示す方向に回動する。その結果、第一コネクタ部材40および第二コネクタ部材10に対して傾斜していた第一傾斜片43および第二傾斜片13は第一コネクタ部材40および第二コネクタ部材10に対して傾斜しなくなり、互いに平行になる。図18で示すように、第二傾斜片13が矢印4で示す外周方向に持ち上げられる。これにより、後端44が第二傾斜片13に当接しなくなる。その結果、第一コネクタ部材40が第二コネクタ部材10に近づく方向にスライド可能となる。
【0043】
図19は、ニードルがアクセス部材に連通した状態のコネクタの側面図である。図20は、図19中のXX-XX線に沿った断面図である。図21は、図20中のXXI-XXI線に沿った断面図である。
【0044】
図19から図21で示すように、第一コネクタ部材40がシリンジ201に近づく方向に移動する。これにより、第一コネクタ部材40が第二コネクタ部材10内をスライドする。ハウジング50がシリンジ201で近づく方向に移動する。その結果、ニードル30の先端31は第二封止部材61および第三封止部材120を貫通してアクセス部材101へ達する。これにより液体215を、ニードル30を経由してアクセス部材101へ送ることができる状態となる。
【0045】
図22は、液体を移注しているコネクタの側面図である。図22で示すように、プランジャー220(図1)を第二コネクタ部材10へ近づく方向に移動させる。これにより図21中の液体215をアクセス部材101に注入することができる。
【0046】
図23は、アクセス部材との連通が解除されたコネクタの側面図である。図23で示すように、液体の注入が終了すると、コネクタ1をアクセス部材101から切り離す必要がある。シリンジ201を矢印5で示す方向に移動させる。注入が終了した状態では、コネクタ1内は、図21で示す構造である。この状態から、シリンジ201を矢印5で示す方向に移動させると、シリンジ201と連結された第二コネクタ部材10が第一コネクタ部材40に対してスライドする。その結果、図15から図17で示す位置まで第二コネクタ部材10が後退する。
【0047】
図24は、アクセス部材との接続が解除されたコネクタの側面図である。図24で示すように、第二コネクタ部材10をさらに矢印6で示す方向に移動させることにより、第一コネクタ部材40もアクセス部材101から遠ざかる方向に移動する。その結果、図8から図12で示すように、第二ロック部2Lが第一コネクタ部材40のスライドをロックする位置に第一コネクタ部材40および第二コネクタ部材10が位置決めされる。
【0048】
図25は、アクセス部材から離脱したコネクタの側面図である。図25で示すように、シリンジ201をアクセス部材101から遠ざかる方向に移動させると、第一コネクタ部材40とアクセス部材101との係合が解除される。その結果、図25で示すように、コネクタ1がアクセス部材101から離脱する。
【0049】
図4で示すコネクタを用いて、シリンジ201内の溶解液を、コネクタ1を経由して薬剤バイアルに注入することができる。
【0050】
このコネクタ1を用いて薬剤バイアルから薬液を採取する場合には、以下の手順に従う。
【0051】
シリンジ201(オスルアーロックシリンジ)にコネクタ1を接続する。薬剤バイアルにバイアルアクセスを接続する。バイアルアクセスにコネクタ1を近づけてバイアルアクセスにコネクタ1を接続する。薬剤バイアルに粉剤が封入されている場合、シリンジ201内の溶解液をコネクタ1を経由して薬剤バイアルに移注し、粉剤を溶解液に溶解させ、その溶解液をシリンジ201で採取することができる。薬剤バイアルに液剤が封入されている場合、シリンジ201内にコネクタ1を経由して薬剤バイアル内の薬剤を採取することができる。
【0052】
メインルートの輸液容器およびサブルートの輸液容器を用いた薬液の投与方法について説明する。まず、メインルートの輸液容器および輸液ラインを用いて患者に輸液を注入する。サブルートの輸液容器にバッグアクセスを接続する。バッグアクセスはアクセス部材101、コネクタ1およびこれらを接続するチューブにより構成される。シリンジ201には、上記の工程で採取された薬剤(薬液)が存在する。バッグアクセスのアクセス部材101にコネクタ1を接続してシリンジ201からバッグアクセスにシリンジ201内の薬液を移注する。メインルートのロックコネクタにバッグアクセスのコネクタ1を接続する。これによりバッグアクセスを経由してシリンジ内の薬液が患者へ投与される。
【0053】
(効果)
液体215は、シリンジ201内に封入されており、この液体215は、外部に漏洩させたくない任意の液体である場合に、上記のコネクタ1は優れた効果を有するたとえば、抗がん剤などの危険薬剤のほか、病原菌、耐性を持つと困る菌などを含む液体215を移送する場合に、コネクタ1を用いることができる。具体的には、シリンジ201から薬剤バッグへ薬液を移送する場合、輸液ラインからサンプリング用の空のシリンジへ輸液を移送する場合、病原菌を含む液状の検体採取具から検査キットへ検体を移送する場合などに、コネクタ1が好適に用いられ得る。また、トリクロロエチレンなどの危険溶剤、または、環境ホルモンを含む液体215を移送する場合にも、コネクタ1を用いることができる。
【0054】
このような液体215がニードル30の先端31に付着していたとしても、そのニードル30の先端31が露出しないため、安全性が高まる。
【0055】
コネクタ1は、第一部材としてのシリンジ201と、第二部材としてのアクセス部材101と、の間に介在するコネクタ1であって、ニードル30と、ニードル30の先端31を保護するハウジング50と、ハウジング50をスライド可能に保持する筒状の第一コネクタ部材40と、ハウジング50のスライドをロックすることが可能な第一ロック部1Lと、を備え、ハウジング50および第一コネクタ部材40のスライドがロックされているときにハウジング50はニードル30の先端31を保護し、第一ロック部1Lは、第一コネクタ部材40の内周面40iに設けられ、第一ロック部1Lは、アクセス部材101と係合することでハウジング50のロックを解除し、アクセス部材101から離脱することでハウジング50のロックを維持する。第一ロック部1Lは第一コネクタ部材40の内周面40iに設けられるため、操作者が第一ロック部1Lに触れることが困難となる。その結果、不用意な操作でロックが解除されることを防止できる。
【0056】
さらに、第一ロック部1Lがアクセス部材101と係合することでハウジング50のロックが解除されるとハウジング50をスライドさせてニードル30の先端31を露出させることができる。この状態でニードル30の先端31をアクセス部材に挿入することでニードル30を用いた液体の注入が可能となる。
【0057】
第一ロック部1Lは第一コネクタ部材40内周面40i側に突出する第一爪部42を有する。第一爪部42によって第一ロック部1Lを構成することで、簡単な構成で第一ロック部1Lを実現することができる。
【0058】
第一爪部42は、弾性を有するアーム部48によって保持されている。アーム部48が弾性を有するため、第一爪部42がアクセス部材101に係合したときに第一爪部42が移動しやすくなる。その結果、第一爪部42にアクセス部材101が係合しやすくなる。
【0059】
ハウジング50には、ハウジング50のスライドがロックされているときにニードル30の先端31を収納する空間52が設けられており、ハウジング50は、空間52を封止する第一封止部材62を有し、ニードル30は第一封止部材62を貫通している。封止された空間52にニードル30の先端31が収納されているため、ニードル30の先端31から液体が漏出したとしても液体が外部に漏れることがない。
【0060】
ハウジング50は空間52を封止する第二封止部材61を有し、第二封止部材61はアクセス部材101に設けられた第三封止部材120と圧縮接続可能であり、第二封止部材61および第三封止部材120が圧縮接続した状態でニードル30が第二封止部材61および第三封止部材120を貫通することでニードル30の先端31がアクセス部材101に到達する。ニードル30が互いに圧縮接続する第二封止部材61および第三封止部材120を貫通して先端31がアクセス部材101に到達することで、ニードル30の先端31が外部に露出することを防止できる。その結果、人がニードル30の先端31に接触することを防止できる。
【0061】
コネクタ1は、ニードル30を保持するハブ20と、第一コネクタ部材40をスライド可能に保持する筒状の第二コネクタ部材10と、第一コネクタ部材40のスライドをロックすることが可能な第二ロック部2Lと、をさらに備え、第二コネクタ部材10の底面にはハブ20に嵌合する貫通孔12が設けられている。貫通孔12にハブ20が嵌合するためハブ20を貫通孔12で確実に保持することができる。その結果、シリンジ201からコネクタ1を経由してアクセス部材101に液体を移送中にコネクタ1からシリンジ201が離脱することを抑制できる。
【0062】
ハウジング50および第一コネクタ部材40のスライドのロックが解除されてハウジング50および第一コネクタ部材40がハブ20に近づく方向に移動すると第一封止部材62はハブ20に当接する。この場合、ハブ20が第一封止部材62に当接することでハブ20を確実に位置決めすることができる。
【0063】
第一コネクタ部材40は、内周面40i側に傾斜した第一傾斜片43を有し、ハウジング50が第一傾斜片43側にスライドすることで第一傾斜片43は外周面側へ回動し、第二ロック部2Lは、第一傾斜片43の外側に位置して内周面10i側に傾斜した、第二コネクタ部材10の第二傾斜片13を有し、第二傾斜片13が第一コネクタ部材40に係合することで第一コネクタ部材40のスライドがロックされ、第一傾斜片43が外側へ回動することで第一傾斜片43が第二傾斜片13に当接して第二傾斜片13を外側に回動させることで第二傾斜片13と第一コネクタ部材40との係合が解除されて第一コネクタ部材40がスライド可能となる。内周面40i,10i側に傾斜する第一傾斜片43および第二傾斜片13により第一コネクタ部材40のスライドをロックするため、人が第一傾斜片43および第二傾斜片13を外側に回動させることが困難となる。その結果、人の操作により第一コネクタ部材40がスライドすることを抑制できる。
【0064】
アクセス部材101は外周側に突出する通路爪部111を有し、通路爪部111が第一ロック部1Lを第一コネクタ部材40の外周面側へ移動させることにより第一ロック部1Lによるハウジング50のロックを解除することが可能である。通路爪部111で第一ロック部1Lを操作することでハウジング50のロックを解除することができ、簡単な構成でロックを解除することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 コネクタ、1L 第一ロック部、2L 第二ロック部、10 第二コネクタ部材、10i,40i 内周面、11 係合部、12 貫通孔、12a 溝、13 第二傾斜片、20 ハブ、25 オスネジ、30 ニードル、31 先端、40 第一コネクタ部材、41 突条、42 第一爪部、43 第一傾斜片、44 後端、45 後端側係合片、48,112 アーム部、49 前端側係合片、50 ハウジング、51 ストッパ、52,53,54 空間、55 本体部、61 第二封止部材、62 第一封止部材、101 アクセス部材、110 コネクタキャップ、111 通路爪部、120 第三封止部材、201 シリンジ、210 バレル、211 先端筒、213 メスネジ、215 液体、220 プランジャー、230 ガスケット。
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