(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】エンザルタミドを含有する経口投与用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4166 20060101AFI20221109BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221109BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20221109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/38
A61P13/08
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2019514651
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017159
(87)【国際公開番号】W WO2018199282
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2017090300
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100117846
【氏名又は名称】鈴木 ▲頼▼子
(74)【代理人】
【識別番号】100137464
【氏名又は名称】濱井 康丞
(74)【代理人】
【識別番号】100177482
【氏名又は名称】川濱 周弥
(72)【発明者】
【氏名】梅本 佳昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴恒
(72)【発明者】
【氏名】並木 ▲祥▼恵
(72)【発明者】
【氏名】高木 彰
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 竜
(72)【発明者】
【氏名】坂井 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大場 慎介
(72)【発明者】
【氏名】青木 肇
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507928(JP,A)
【文献】国際公開第2016/116121(WO,A1)
【文献】特表2014-508812(JP,A)
【文献】特開平10-316576(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163448(WO,A1)
【文献】特表2015-527411(JP,A)
【文献】AAPS PharmSciTech,2016年,Vol.17, No.1,p.167-179
【文献】AAPS PharmSciTech,2016年,Vol.17, No.1,p.180-190
【文献】ファルマシア,2016年,Vol.52, No.5,p.402-406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含
み、前記ポリビニルアルコールのけん化度が、30mol%以上85mol%未満である、経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
ポリビニルアルコールの重合度が、50以上600以下である、請求項
1に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項3】
エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む固体分散体を含有する、請求項1
又は2に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項4】
更に、
ポリビニルピロリドン、及び/又はコポリビドンを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項5】
更に、崩壊助剤を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項6】
崩壊助剤が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、及びリン酸二水素カリウムからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項
5に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項7】
崩壊助剤が、塩化カリウムである、請求項
5又は6に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項8】
更に、崩壊剤を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項9】
崩壊剤が、クロスポビドン、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種又は2種である、請求項
8に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項10】
崩壊剤が、クロスポビドンである、請求項
8又は9に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項11】
医薬組成物が錠剤である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項12】
エンザルタミドが非晶質である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項13】
エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含
み、前記ポリビニルアルコールのけん化度が、30mol%以上85mol%未満である、経口投与用医薬組成物の製造方法
であって、エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む固体分散体を調製する工程を含む、前記製造方法。
【請求項14】
固体分散体を加熱溶融押出法で調製する、請求項
13に記載の経口投与用医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
固体分散体を溶媒法で調製する、請求項
13に記載の経口投与用医薬組成物の製造方法。
【請求項16】
エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含
み、前記ポリビニルアルコールのけん化度が、30mol%以上85mol%未満である、経口投与用医薬組成物の製造のための
ポリビニルピロリドン、及び/又はコポリビドンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンザルタミドの経口吸収性を改善してなる経口投与用医薬組成物に関する。
詳細には、本発明は、エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む経口投与用医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の創薬研究において難水溶性薬物が開発候補となることが多くなってきている。一方で、治療用薬物の臨床現場への早期提供による医療機会向上も求められており、汎用的な可溶化技術は今尚重要な課題である。
エンザルタミドは、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤である。化学名は、4-{3-[4-cyano-3-(trifluoromethyl)phenyl]-5,5-dimethyl-4-oxo-2-sulfanylideneimidazolidin-1-yl}-2-fluoro-N-methylbenzamideであり、以下の化学構造式で表される。
【0003】
【0004】
エンザルタミドは、転移性去勢抵抗性前立腺がん等の治療剤の有効成分として知られている(特許文献1)。エンザルタミドは、1カプセル中に40mgのエンザルタミドと医薬品添加物とを含む軟カプセル(「イクスタンジ(登録商標)」)として販売されている。同製品の添付文書(非特許文献1)によれば、成人には160mgを1日1回経口投与されることから、長径約21mm、短径約10mmのカプセルを1回4カプセル服用することになる。とりわけ、エンザルタミドを所定量含み、適切かつ良好な、溶解性、及び/又は溶出安定性、並びに経口吸収性を有する合理的なサイズの単一錠剤は、軟カプセル剤の適切な代替として有用と考えられる。
【0005】
エンザルタミドを可溶化する方法として、エンザルタミドを非晶質化する方法や、担体と固体分散体を形成する方法が知られている(特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2006/124118号
【文献】国際公開第2014/043208号
【文献】国際公開第2014/041487号
【文献】国際公開第2014/167428号
【非特許文献】
【0007】
【文献】「イクスタンジ(登録商標)カプセル40mg」添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エンザルタミドの溶解性を改善し、かつpH非依存的に経口吸収性を改善する製剤設計は、薬物の薬効発現のために、現在においても尚、重要な技術的課題であり、更なる改善の余地がある。
本発明の課題は、pH非依存的にエンザルタミドの溶解性、及び/又は溶出性を改善し、過飽和を維持する経口投与用医薬組成物の提供である。また、本発明の別の課題は、経口吸収性を改善した経口投与用医薬組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
エンザルタミド、及びポリビニルアルコール(以下、PVAと略すことがある)を用いて固体分散体を調製したところ、pH非依存的に溶解、及び/又は溶出し、過飽和を維持するとともに、生体への経口投与によりその生物学的利用率を改善した。
【0010】
本発明は、
[1]エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む経口投与用医薬組成物、
[2]ポリビニルアルコールのけん化度が、30mol%以上99mol%以下である、[1]の経口投与用医薬組成物、
[3]ポリビニルアルコールの重合度が、50以上600以下である、[1]又は[2]の経口投与用医薬組成物、
[4]エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む固体分散体を含有する、[1]~[3]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[5]更に、水素結合受容体となる官能基を有する物質を含む、[1]~[4]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[6]水素結合受容体となる官能基を有する物質が、ポリビニルピロリドン、及び/又はコポリビドンである、[5]の経口投与用医薬組成物、
[7]更に、崩壊助剤を含む、[1]~[6]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[8]崩壊助剤が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、及びリン酸二水素カリウムからなる群から選択される1種又は2種以上である、[7]の経口投与用医薬組成物、
[9]崩壊助剤が、塩化カリウムである、[7]又は[8]の経口投与用医薬組成物、
[10]更に、崩壊剤を含む、[1]~[9]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[11]崩壊剤が、クロスポビドン、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種又は2種である、[10]の経口投与用医薬組成物、
[12]崩壊剤が、クロスポビドンである、[10]又は[11]の経口投与用医薬組成物、
[13]医薬組成物が錠剤である、[1]~[12]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[14]エンザルタミドが非晶質である、[1]~[13]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[15]エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む経口投与用医薬組成物の製造方法、
[16]エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む固体分散体を調製する工程を含む、[15]の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[17]固体分散体を加熱溶融押出法で調製する、[16]の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[18]固体分散体を溶媒法で調製する、[16]の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[19]エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む経口投与用医薬組成物の製造のための水素結合受容体となる官能基を有する物質の使用
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、pH非依存的にエンザルタミドの溶解性、及び/又は溶出性を改善し、過飽和を維持する経口投与用医薬組成物を提供することができる。また、エンザルタミドの生物学的利用率、吸収速度を高める経口投与用医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験例1の析出試験の結果を示すグラフである。
【
図2】試験例2の析出試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「溶解性を改善する」とは、溶媒へのエンザルタミドの溶解度、溶解濃度、溶解率が増加することを意味する。具体的には、ある態様として、エンザルタミドの水(20℃±5℃)への溶解度が2μg/mLであるのに対して、例えば、後述する試験例3、試験例4、試験例5、試験例8、試験例11、試験例13、試験例15、又は試験例16の溶出試験で評価するとき、溶解濃度の改善効果が5倍以上、ある態様として10倍以上、ある態様として20倍以上であることと規定する。
本明細書において、「溶出性を改善する」とは、医薬組成物からのエンザルタミドの溶出率を改善することを意味する。具体的には、ある態様として、後述する試験例3、試験例4、試験例5、試験例8、試験例11、試験例13、試験例15、試験例16の溶出試験で評価するとき、溶出率が試験開始後10分で60%以上、ある態様として80%以上であることと規定する。
本明細書において、「過飽和を維持する」とは、エンザルタミドの溶解度以上に、溶液中にエンザルタミドが溶解していることを意味する。具体的には、ある態様として、エンザルタミドを含有する医薬組成物を後述する試験例1、試験例2の析出試験で評価するとき、前記医薬組成物におけるエンザルタミドの溶解率が、溶出試験開始時の溶解率と比較して10%以内の変化である時間が30分以上、ある態様として60分以上、ある態様として90分以上であることと規定する。
【0014】
本明細書において、「経口吸収性を改善する」とは、ある態様として、イヌやヒト等の試験対象において、先行製品であるイクスタンジ(登録商標)カプセルと同等以上の優れた経口吸収性、同等以上の優れた吸収速度、又は同等以上のPKパラメータを示すことを意味する。とりわけ、単回投与でイクスタンジ(登録商標)カプセルと同等以上の性能を有することを意味する。
具体的には、イクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して、例えば、イヌにおけるCmax、AUCが0.8倍以上、好ましくは0.9倍以上、更に好ましくは1倍以上であることと規定する。
また、経口吸収性を改善する状態となるには、例えば、X線回折、ラマン散乱、赤外吸収、テラヘルツ等により、溶液中における薬物の状態が、非晶体或いはそれらの遷移状態であるなど、薬物が吸収されやすい状態となっていることを意味する。
【0015】
本明細書において、「固体分散体」とは、エンザルタミドとポリビニルアルコールとを含む分散物であり、大部分のエンザルタミドが無定形で存在することを意味する。本明細書において、「無定形」とは、非晶質或いはそれらの遷移状態を意味する。無定形のエンザルタミドは、ポリビニルアルコール全体に均質に分散された固溶体として存在する。本明細書において、「大部分」とは、分散物を調製した時に、エンザルタミドの結晶が40%以下、好ましくは20%以下であることを意味する。他の態様として、エンザルタミドの結晶量が粉末X線回折、示差走査熱量法(DSC)、又はいずれかの他の標準的な定量手段によって測定して40%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であることを意味する。
【0016】
本明細書において、「けん化度」とは、第十七改正日本薬局方に記載されている測定方法、又は当該測定方法と相関関係にある測定方法によって求められるけん化価を意味し、以下の式(1)で算出できる。なお、前記相関関係にある測定方法は、第十七改正日本薬局方に記載されている測定方法との相関係数が0.5以上、他の態様として0.6以上を有する測定方法であることが望ましい。
【化2】
けん化度=m/(m+n)×100 (1)
[m:水酸基の数,n:アセチル基の数]
【0017】
本明細書において、「重合度」とは、「平均重合度」を意味し、医薬品添加物規格に従って評価した際の粘度の値又はゲル濾過等によって測定される分子量を基に算出される値、或いは当該測定方法と相関関係にある測定方法に準拠して測定した値であると規定する。又は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」の(4)平均重合度の測定方法、或いは当該測定方法と相関関係にある測定方法に準拠して測定した値と規定する。なお、前記医薬品添加物規格に従って評価した際の粘度の値またはゲル濾過等の測定方法と相関関係にある測定方法は、医薬品添加物規格に従って評価した際の粘度の値またはゲル濾過等の測定方法と相関関係にある測定方法との相関係数が0.5以上、他の態様として0.6以上を有する測定方法であることが望ましい。また、前記JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」の(4)平均重合度の測定方法と相関関係にある測定方法は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」の(4)平均重合度の測定方法との相関係数が0.5以上、他の態様として0.6以上を有することが望ましい。
【0018】
本明細書において、「安定」とは、例えば、熱、光、温度、及び/又は湿度に対して安定であることを意味する。例えば、医薬組成物を所定条件下に保存後、前記医薬組成物中に含まれるエンザルタミドの最大類縁物質の百分率が、特定量以下の態様として規定される。又は、加熱溶融して固体分散体を製造しても前記医薬組成物中に含まれるエンザルタミドの最大類縁物質の百分率が、特定量以下の態様として規定される。
【0019】
例えば、ある態様として、70℃9日間(密栓)保存後のエンザルタミドの最大類縁物質の百分率が0.5%以下、ある態様として0.3%以下であることを意味する。
ある態様として、25℃相対湿度60%(以下、25℃60%RHと略する場合がある)で1箇月間、25℃60%RHで3箇月間、25℃60%RHで6箇月間、40℃相対湿度75%(以下、40℃75%RHと略する場合がある)で1箇月間、40℃75%RHで3箇月間、又は40℃75%RHで6箇月間保存後のエンザルタミドの最大類縁物質の百分率が0.5%以下、ある態様として0.3%以下であることを意味する。
【0020】
本明細書において、「最大類縁物質」とは、エンザルタミドの類縁物質の中で最も多く含まれている類縁物質を意味する。具体的には、例えば、医薬組成物に含まれる類縁物質量を高速液体クロマトグラフ法(以下、HPLC法)により測定する時、得られた個々の類縁物質のうちピーク面積が最大となる類縁物質を最大類縁物質と規定する。
本明細書において、「最大類縁物質量」とは、医薬組成物に含まれる最大類縁物質のピーク面積をHPLC法により測定し、エンザルタミド及びその類縁物質の総ピーク面積に対する割合として規定する。
【0021】
エンザルタミドは、水(20℃±5℃)への溶解度が2μg/mLの難水溶性薬物であり、本発明の技術を適用することで良好な溶解性、及び/又は溶出性を得ることが可能である。また、本発明の技術を適用することで、良好な経口吸収性を得ることが可能である。
【0022】
エンザルタミドの投与量は、例えば、疾患の症状、投与対象の年齢、人種、性別などを考慮して個々の場合に応じて適宜決定することができる。
1日の投与量は、体重当たり例えば、0.001mg/kg~100mg/kg、ある態様として0.01mg/kg~100mg/kg、ある態様として1mg/kg~10mg/kgである。これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0023】
エンザルタミドの配合割合は、経口投与用医薬組成物あたり、例えば、0.05mg~10000mg、ある態様として0.5mg~10000mg、他の態様として5mg~1000mg、ある態様として10~200mg、ある態様として40~160mgである。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
エンザルタミドの配合割合は、経口投与用医薬組成物の全重量に対して、例えば、1重量%~75重量%、ある態様として2重量%~50重量%、他の態様として2重量%~30重量%、他の態様として6.7~50重量%である。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0024】
本発明に用いられるポリビニルアルコールとしては、製薬学的に許容されるポリビニルアルコールであれば特に制限されない。本発明のポリビニルアルコールのけん化度としては、例えば30mol%以上99mol%以下、より好ましくは55mol%以上85mol%未満、更に好ましくは63mol%以上82mol%以下、更に好ましくは66mol%以上80mol%以下ある。なお、前記の各下限と各上限(並びに後述する実施例に記載の各下限及び各上限)は、所望により、任意に組み合わせることができる。
また、本発明に用いられるポリビニルアルコールの重合度は、製薬学的に許容される範囲であれば特に制限されない。
具体的には、重合度が、例えば2200未満、ある態様として2以上2200未満、ある態様として10以上2200未満、ある態様として100以上2200未満、ある態様として2以上600以下、ある態様として10以上600以下、ある態様として50以上600以下、ある態様として100以上500以下である。なお、前記の各下限と各上限(並びに後述する実施例に記載の各下限及び各上限)は、所望により、任意に組み合わせることができる。
また、前記のけん化度と重合度は、所望により、任意に組み合わせることができるが、ある態様として、ポリビニルアルコールのけん化度が63mol%以上82mol%以下、かつ重合度が50以上600以下である。
ここで、ポリビニルアルコールは、エンザルタミドの溶解性、及び/又は溶出性を改善し、過飽和を維持するものである。また、ポリビニルアルコールは、エンザルタミドの経口吸収性を改善する機能を有するものである。
【0025】
本発明に用いられるポリビニルアルコールとしては、例えば、ゴーセノール(登録商標)EG-03P(日本合成化学、粘度:3.0~3.8mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:86.5~89.0mol%)、ゴーセノール(登録商標)KL-05(日本合成化学、粘度:4.0~5.0mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:78.5~82.0mol%)、ゴーセノール(登録商標)KL-03(日本合成化学、粘度:2.8~3.4mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:78.5~82.0mol%)、ゴーセノール(登録商標)KP-08R(日本合成化学、粘度:6.0~8.0mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:71.0~73.5mol%)、ゴーセノール(登録商標)NK-05R(日本合成化学、粘度:4.5~5.5mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:71.0~75.0mol%)、ゴーセネックス(登録商標)LL-810(日本合成化学、粘度:7.0~10.0mPa・s(10.0%メタノール/水(1/1重量比)の混合溶液)、けん化度:45.0~51.0mol%)、ゴーセネックス(登録商標)LL-920(日本合成化学、粘度:9.0~13.0mPa・s(10.0%メタノール/水(1/1重量比)の混合溶液)、けん化度:30.0~38.0mol%)、ゴーセネックス(登録商標)LL-940(日本合成化学、粘度:20.0~28.0mPa・s(10.0%メタノール/水(1/1重量比)の混合溶液)、けん化度:34.0~41.0mol%)、ポバール(登録商標)JR-05(日本酢ビ・ポバール、粘度:4.5~6.5mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:70.0~74.0mol%)、ポバール(登録商標)JL-05E(日本酢ビ・ポバール、粘度:4.0~6.0mPa・s(4%水溶液、20℃)、けん化度:80.0~84.0mol%)、ポバール(登録商標)JMR-10M(日本酢ビ・ポバール、重合度:200~280、けん化度:63.0~67.0mol%)、ポバール(登録商標)JMR-10L(日本酢ビ・ポバール、重合度:200~280、けん化度:30.0~40.0mol%)、ポリビニルアルコール(ポリサイエンス、重合度:約100、けん化度:80mol%)などを挙げることができる。
【0026】
前記ポリビニルアルコールは、けん化度、及び/又は重合度が異なるものを1種又は2種以上組合せて添加することができる。
前記ポリビニルアルコールの配合割合としては、エンザルタミドの溶解性、溶出性及び/又は経口吸収性を改善する割合であれば特に制限されない。ポリビニルアルコールの配合割合は、経口投与用医薬組成物の全重量に対して、例えば、2重量%~90重量%、ある態様として5重量%~75重量%、ある態様として10重量%~20重量%である。これらの各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、エンザルタミドの重量に対して、例えば、20重量%~1000重量%、ある態様として50重量%~500重量%、ある態様として150重量%~350重量%である。これらの各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0027】
本発明の経口投与用医薬組成物は、例えば、固形製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤などであることができ、ある態様として錠剤である。
本発明の経口投与用医薬組成物は、エンザルタミド、及び前記ポリビニルアルコールを含む固体分散体を含んでもよい。
エンザルタミドは、ある態様では、本発明の経口投与用医薬組成物中に非晶質として存在する。
【0028】
本発明の経口投与用医薬組成物には、本発明の所望の効果を達成できる範囲において所望により、各種医薬品添加物を適宜使用して、製剤化することができる。かかる医薬品添加物としては、製薬学的に許容され、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に制限されず、例えば、崩壊助剤、崩壊剤、賦形剤、矯味剤、発泡剤、甘味剤、香料、滑沢剤、緩衝剤、抗酸化剤、界面活性剤、流動化剤などを挙げることができる。
【0029】
崩壊助剤としては、エンザルタミドの速やかな溶出性を達成する機能を製剤に付与するものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カルシウムなどを挙げることができ、ある態様として塩化カリウムである。
前記崩壊助剤は、1種又は2種以上組合せて添加することができる。
崩壊助剤の配合割合としては、エンザルタミドの速やかな溶出性を達成できる割合であれば特に制限されない。崩壊助剤の配合割合は、経口投与用医薬組成物の全重量に対して、1重量%~50重量%、ある態様として2重量%~40重量%、ある態様として5重量%~30重量%である。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0030】
崩壊剤としては、エンザルタミドの速やかな溶出性を達成する機能を製剤に付与するものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムなどであり、ある態様として、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどであり、ある態様としてクロスポビドンである。
【0031】
クロスポピドンとしては、例えば、商品名コリドンCL(BASF)などを挙げることができる。
【0032】
前記崩壊剤は、1種又は2種以上組合せて添加することができる。
崩壊剤の配合割合としては、エンザルタミドの速やかな溶出性を達成できる割合であれば特に制限されない。崩壊剤の配合割合は、経口投与用医薬組成物の全重量に対して、例えば、0.5重量%~30重量%、ある態様として1重量%~20重量%、ある態様として2重量%~10重量%である。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0033】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【0034】
矯味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などを挙げることができる。
【0035】
発泡剤としては、例えば、重曹などを挙げることができる。
【0036】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどを挙げることができる。
【0037】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどを挙げることができる。
【0038】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化油などを挙げることができる。
【0039】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸又はその塩類などを挙げることができる。
【0040】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどを挙げることができる。
【0041】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを挙げることができる。
【0042】
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸などを挙げることができる。
【0043】
これらの医薬品添加物は、1種又は2種以上組合せて、適宜適量を添加することができる。医薬品添加物の配合割合については、いずれの医薬品添加物についても、本発明の所望の効果が達成される範囲内の量で使用することが可能である。
【0044】
さらに「水素結合受容体となる官能基を有する物質」を添加しても良い。
水素結合受容体となる官能基を有する物質は、ポリビニルアルコール分子間の水素結合を阻害する、ポリビニルアルコールの非晶質性を高める機能を有する、又はエンザルタミドの安定性や溶出性を改善する高分子であれば、特に制限されない。例えば、フッ素、酸素、窒素などの陰性原子を有する物質を挙げることができ、ある態様としては、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ある態様としては、コポリビドンを挙げることができる。
【0045】
コポリビドンとしては、例えば、商品名コリドンVA64(BASF)、コリドンVA64Fine(BASF)などを挙げることができる。
ポリビニルピロリドンとしては、例えば、商品名Kollidon 30(BASF)などを挙げることができる。
【0046】
水素結合受容体となる官能基を有する物質の配合方法としては、本発明の所望の効果が達成される範囲において、任意の方法で本発明の経口投与用医薬組成物に配合させることができる。
ある態様としては、エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む固体分散体に配合する態様を挙げることができる。
前記水素結合受容体となる官能基を有する物質は、1種又は2種以上組合せて添加することができる。
【0047】
前記水素結合受容体となる官能基を有する物質の配合割合としては、エンザルタミドの速やかな溶出性を達成でき、安定な医薬組成物が得られる割合であれば特に制限されない。水素結合受容体となる官能基を有する物質の配合割合は、経口投与用医薬組成物の全重量に対して、例えば、1重量%~40重量%、ある態様として2重量%~30重量%、ある態様として5重量%~25重量%、ある態様として10重量%~20重量%、ある態様として6.7重量%~40重量%である。これらの各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、エンザルタミドの重量に対して、例えば、1重量%~1000重量%、ある態様として50重量%~500重量%、ある態様として100重量%~300重量%である。これらの各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、ポリビニルアルコールの重量に対して、例えば、10重量%~1000重量%、ある態様として20重量%~200重量%、ある態様として30重量%~150重量%である。これらの各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0048】
本発明の経口投与用医薬組成物は、例えば、エンザルタミドの非晶質化、混合、造粒、成形(打錠)、フィルムコーティング等の工程を含む公知の方法により製造することが可能である。
本発明の経口投与用医薬組成物の製造方法について、以下に説明する。
【0049】
非晶質化工程
エンザルタミドを非晶質化させる方法として、固体分散体にする方法が挙げられる。エンザルタミドとポリビニルアルコールとの固体分散体を製造する方法は、一般的に固体分散体を製造する方法であれば特に制限されない。例えば、溶媒法、加熱溶融押出法などを挙げることができる。
【0050】
(I)溶媒法
溶媒法では、エンザルタミドとポリビニルアルコールとを溶媒に溶解及び/又は懸濁させた後、溶媒を除去する方法などを挙げることができる。
用いられる溶媒としては、エンザルタミド、及びポリビニルアルコールが溶解及び/又は懸濁するものであれば特に制限されない。具体的には、例えば、メタノール、ジクロロメタン、水、エタノール、アセトン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができ、ある態様としては、メタノール、水である。これらの溶媒は1種又は2種以上組合せて適宜適量使用できる。
【0051】
溶媒を除去する方法としては、例えば、噴霧乾燥法、エバポレーション法、凍結乾燥法などを挙げることができ、ある態様としては噴霧乾燥法である。
噴霧乾燥法で用いられる、エンザルタミドを含む噴霧液を調製する手順として、例えば、
(1)ポリビニルアルコールを水に溶解及び/又は懸濁、
(2)(1)にメタノールを添加し混合溶液を調製、
(3)(2)の混合溶液にエンザルタミドを添加し噴霧液を調製
等が挙げられる。
噴霧乾燥の装置としては、エンザルタミドを非晶質にできるもの、あるいは、エンザルタミド及びポリビニルアルコールの固体分散体を得られるものであれば特に制限されない。例えば、スプレードライヤーを挙げることができる。噴霧乾燥の条件は、エンザルタミドとポリビニルアルコールとの固体分散体を得られれば特に制限されない。スプレードライヤーの出口温度は、例えば20~80℃である。
【0052】
乾燥する方法としては、通常製薬学的に乾燥できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、通風乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機などを挙げることができる。
【0053】
(II)加熱溶融押出法
加熱溶融押出法は、エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを加熱溶融した後に冷却して行う。
加熱溶融の際の温度はエンザルタミドの融点やポリビニルアルコールのガラス転移温度により適宜設定される。例えば、100℃~220℃である。加熱溶融の際の温度は、エンザルタミドの溶解性、溶出性、過飽和維持能、及び/または安定性を考慮し適切な温度設定ができる。
装置としては、エンザルタミドを非晶質にできるもの、あるいは、エンザルタミド及びポリビニルアルコールの固体分散体を得られるものであれば特に制限はされない。例えば、二軸エクストルーダーが挙げられる。
【0054】
固体分散体用担体として、さらに「水素結合受容体となる官能基を有する物質」を添加しても良い。
【0055】
解砕する方法としては、通常製薬学的に解砕できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、衝撃式粉砕機(例えば、ホソカワミクロン社製、ファインインパクトミル)、湿式乾式整粒機(例えば、パウレック社製、コーミル)、破砕式造粒機(例えば、ダルトン社製、パワーミル)などを挙げることができる。
【0056】
混合工程
混合する方法としては、通常製薬学的に各成分を均一に混合できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、V型混合機、リボン型混合機、コンテナミキサー、高速攪拌混合機などを挙げることができる。
【0057】
造粒工程
造粒する方法としては、通常製薬学的に造粒できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、流動層造粒機、溶融攪拌造粒機、高速攪拌造粒機、解砕(粉砕)造粒機、押出造粒機、転動流動層造粒機、噴霧造粒機、乾式造粒機、二軸エクストルーダーなどを挙げることができ、ある態様として乾式造粒機である。
【0058】
成形(打錠)工程
成形する方法としては、通常製薬学的に成形できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、ロータリー式打錠機、単発打錠機、オイルプレスなどを挙げることができる。
成形工程では、例えば、エンザルタミドの固体分散体を含有する造粒品や、造粒品に滑沢剤等の各種医薬品添加物を混合した混合品(圧縮形成前混合品、特には打錠前混合品)を圧縮成形して錠剤とする方法、あるいは、エンザルタミドの固体分散体と適当な医薬品添加物を混合後に圧縮成形し錠剤を得る直接打錠法などを用いることができる。
【0059】
フィルムコーティング工程
フィルムコーティングする方法としては、通常製薬学的にフィルムコーティングする方法であれば、特に制限されない。
装置としては、例えば、パンコーティング機、流動層コーティング機などを挙げることができる。
【0060】
フィルムコーティング基剤及び着色剤は、1種又は2種以上組合わせて、適宜適量を添加することができる。
【0061】
所望により、フィルムコーティング後に乾燥してもよい。方法としては、通常製薬学的に乾燥できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、パンコーティング機、流動層コーティング機などを挙げることができる。乾燥条件としては、製剤の安定性を考慮して適宜設定されれば、特に制限されない。
【0062】
本発明には、エンザルタミド、及びポリビニルアルコールを含む経口投与用医薬組成物において、安定な経口投与用医薬組成物の製造のための水素結合受容体となる官能基を有する物質の使用が含まれる。
本発明の前記使用で用いられる「エンザルタミド」、「ポリビニルアルコール」、「水素結合受容体となる官能基を有する物質」については、本発明の経口投与用医薬組成物における当該説明をそのまま適用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例で用いたエンザルタミドは国際公開2011/106570号の製法に準じて製造されたものを用いた。
以下、実施例、比較例、及び試験例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定解釈されるものではない。
【0064】
《試験例1》析出試験
けん化度の異なるポリビニルアルコールの、エンザルタミドに対する溶解性の改善効果、及び過飽和維持能を確認するため、以下に示す析出試験を行った。ポリビニルアルコールは、ポバール(JMR-10M、日本酢ビ・ポバール株式会社、以下「A1」と略すことがある)、ゴーセノール(NK-05R、日本合成化学工業株式会社、以下「A2」と略すことがある)、ゴーセノール(KL-05、日本合成化学工業株式会社、以下「A3」と略すことがある)、ポバール(PE-05JPS、日本酢ビ・ポバール株式会社、以下「B1」と略すことがある)、ポバール(JT-05、日本酢ビ・ポバール株式会社、以下「B2」と略すことがある)、ゴーセノール(NL-05、日本合成化学工業株式会社、以下「B3」と略すことがある)を使用した。試験に使用したポリビニルアルコールのけん化度、重合度を表1に示す。各ポリビニルアルコール200mgを水500mLにあらかじめ溶解させ、40mg/mLの濃度に調製したエンザルタミドのアセトン溶液1mL(エンザルタミドを40mg相当量含有する)を添加し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分、37℃恒温下にて析出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶解率は5mmセルでの吸光度1.579を100%として計算した。
【0065】
【0066】
試験結果を
図1に示す。試験はそれぞれ3回実施し、その平均値を示す。試験例1で使用したポリビニルアルコールのけん化度の範囲(66~99mol%)において、けん化度が低い程、溶解性が改善し過飽和が維持された。特に、けん化度66~80mol%の範囲において、高い溶解率に加え、高い過飽和維持能を有することが明らかとなった。
【0067】
《試験例2》析出試験
重合度の異なるポリビニルアルコールの、エンザルタミドに対する溶解性の改善効果、及び過飽和維持能を確認するため、以下に示す析出試験を行った。ポリビニルアルコールは、けん化度80、重合度約100のポリビニルアルコール(ポリサイエンス社製、以下「A4」と略すことがある)、けん化度80、重合度約300のポリビニルアルコール(ゴーセノール、KL-03、日本合成化学工業株式会社、以下「A5」と略すことがある)、けん化度80、重合度約2200のポリビニルアルコール(ゴーセノール、KH-17、日本合成化学工業株式会社、以下「B4」と略すことがある)を使用した。試験に使用したポリビニルアルコールのけん化度、重合度は表2に示す。各ポリビニルアルコール200mgを水500mLにあらかじめ溶解させ、40mg/mLの濃度に調製したエンザルタミドのアセトン溶液1mL(エンザルタミドを40mg相当量含有する)を添加し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分、37℃恒温下にて析出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶解率は5mmセルでの吸光度1.579を100%として計算した。
【0068】
【0069】
試験結果を
図2に示す。試験はそれぞれ3回実施し、その平均値を示す。なお、
図2は試験例1のA3の結果も含む。試験例2で使用したポリビニルアルコールの重合度の範囲(100~2200)において、重合度が低い程、溶解率の改善が得られた。特に、重合度100~500の範囲において、高い溶解率に加え、高い過飽和維持能を有することが明らかとなった。
【0070】
《実施例1》
「A2」3gを水40mLに溶解するまで撹拌した。更に、メタノール160mLを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド1gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(Niro SD-MicroTM Spray Dryer、GEA)で噴霧乾燥し、実施例1の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0071】
《実施例2》
「A6」(「A5」を日本合成化学工業株式会社にて精製し、残留溶媒量が低減されたポリビニルアルコール、以下「A6」と略すことがある)10gを水280mLに溶解するまで撹拌した。更に、メタノール1120mLを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド10gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(Niro SD-MicroTM Spray Dryer、GEA)で噴霧乾燥し、実施例2の医薬組成物(固体分散体)を得た。以下の実施例で使用した「A6」のけん化度、重合度は表3に示す。
【0072】
《実施例3》
「A6」120gを水2356.8gに溶解するまで撹拌した。更に、メタノール7463.2gを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド60gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(QSD-0.8-CC、GEA)で噴霧乾燥した後、実施例3の医薬組成物(固体分散体)を得た。また、実施例3の医薬組成物(固体分散体)が非晶質状態であることをX線回折により確認した。
【0073】
《実施例4》
「A6」180gを水2342.4gに溶解するまで撹拌した。更に、メタノール7417.7gを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド60gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(QSD-0.8-CC、GEA)で噴霧乾燥した後、実施例4の医薬組成物(固体分散体)を得た。また、実施例4の医薬組成物(固体分散体)が非晶質状態であることをX線回折により確認した。
【0074】
《実施例5》
ゴーセノール(EG-05P、日本合成化学工業株式会社、以下「B5」と略すことがある)270gを水3513.6gに溶解するまで加温しながら撹拌した。更に、メタノール11126.4gを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド90gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(QSD-0.8-CC、GEA)で噴霧乾燥した後、実施例5の医薬組成物(固体分散体)を得た。試験に使用した「B5」のけん化度、重合度は表3に示す。
【0075】
【0076】
《実施例6》
「B2」3gを水96mLに溶解するまで加温しながら撹拌した。更に、メタノール224mLを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド1gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(Niro SD-MicroTM Spray Dryer、GEA)で噴霧乾燥し、実施例6の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0077】
《実施例7》
「B3」3gを水175mLに溶解するまで加温しながら撹拌した。更に、メタノール325mLを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド1gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(Niro SD-MicroTM Spray Dryer、GEA)で噴霧乾燥し、実施例7の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0078】
《試験例3》溶出試験
実施例1~7で調製した医薬組成物(固体分散体)(エンザルタミドを80mg相当量含有する)の溶出試験を行った。各医薬組成物の処方は表4に示す。各医薬組成物(固体分散体)と同量のマンニトール(PEARLITOL 200SD)で混合した粉体を試験に用いた。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分(試験開始0~3分は250回転/分、3~5分は200回転/分)の条件で溶出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度0.6316を100%として計算した。
【0079】
【0080】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表5に示す。実施例1~4のけん化度81mol%以下のポリビニルアルコールを使用した医薬組成物(固体分散体)では、60%以上の高い溶出率が得られた。また、実施例2~4の「A6」を使用した医薬組成物(固体分散体)において、エンザルタミドに対し2倍量以上の「A6」を含む医薬組成物(固体分散体)は、80%以上の特に高い溶出率が得られた。更に、実施例5~7のけん化度88mol%以上のポリビニルアルコールを使用した医薬組成物(固体分散体)では、エンザルタミドの水(20℃±5℃)への溶解度が2μg/mLであるのに対して、実施例7の医薬組成物でも15.2μg/mL(=80mg×9.5%/500mL)の溶解濃度を示しており、7倍以上の溶解濃度改善効果が認められた。また、実施例5、実施例6においても、それぞれ、22.56μg/mL(11.28倍)、41.6μg/mL(20.8倍)の溶解濃度を示しており、10倍以上の溶解濃度改善効果が認められた。
【0081】
【0082】
《実施例8》
「A6」10gを水120mLに溶解するまで撹拌した。更に、メタノール480mLを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド2gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(Niro SD-MicroTM Spray Dryer、GEA)で噴霧乾燥し、実施例8の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0083】
《試験例4》溶出試験
実施例8で調製した医薬組成物(固体分散体)(エンザルタミドを80mg相当量含有する)の溶出試験を行った。実施例8の処方は表6に示す。医薬組成物(固体分散体)と同量のマンニトール(PEARLITOL 200SD)で混合した粉体を試験に用いた。溶出試験液として、水500mL、日本薬局方崩壊試験第1液500mL(JP1st)、日本薬局方崩壊試験第2液500mLにSIF Powder(Simulated Intestinal Fluid Powder、Biorelevant.com)895mgを溶解させた溶液(JP2nd+SIF)の3種類を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分(試験開始0~3分は250回転/分、3~5分は200回転/分)、液温37℃の条件で溶出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度0.6316を100%として計算した。
【0084】
【0085】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表7に示す。水、JP1st、JP2nd+SIFのいずれの試験液においても、80%以上の特に高い溶出率を示した。ポリビニルアルコールを用いてできる本発明の医薬組成物(固体分散体)は、pH依存性がないため、胃内のような低pH環境下でも溶解し、速やかな薬物吸収性が得られることが期待できる。
【0086】
【0087】
《比較例1》
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(POVACOAT Type F、大同化成工業株式会社)20gとエンザルタミド4gを混合し、混合品のうち22.5gをエクストルーダー(DSM Xplore Pharma Micro Extruder)を用いて溶融混練した後、解砕し、比較例1の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0088】
《試験例5》溶出試験
実施例4、比較例1で調製した医薬組成物(固体分散体)(エンザルタミドを160mg相当量含有する)の溶出試験を行った。各医薬組成物の処方は表8に示す。各医薬組成物(固体分散体)と同量のマンニトール(PEARLITOL 200SD)で混合した粉体を試験に用いた。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分の条件で溶出試験を行った。マンニトールと混合した粉体はあらかじめシリンジに充填し、20mLの溶出試験液をシリンジに吸い取り、振とうして粉体を分散させた後、溶出試験器に投入して試験を開始した。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度1.2632を100%として計算した。
【0089】
【0090】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表9に示す。POVACOATと比較しても、「A6」は高い溶解性改善効果を示した。すなわち、低けん化度のポリビニルアルコールを選択することで、高い溶解性改善効果が得られた。
【0091】
【0092】
《試験例6》イヌにおける経口吸収性試験
実施例2、実施例3、実施例5で得られたエンザルタミド160mg相当の医薬組成物(固体分散体)の懸濁液、及びイクスタンジ(登録商標)カプセルをそれぞれ雄性ビーグル犬5例に絶食下経口投与した。各医薬組成物(固体分散体)の処方は表10に示す。投与後、経時的に採血し遠心分離により得られた血漿中未変化体のエンザルタミド濃度を測定した。なお、イヌは投与予定時刻から16時間以上前から絶食とした。また、投与前30分、投与後30分及び90分にペンタガストリンを臀部に筋肉内投与し、胃内pHを酸性にして試験を実施した。
【0093】
【0094】
実施例2、実施例3、実施例5の医薬組成物(固体分散体)の懸濁液及びイクスタンジ(登録商標)カプセルの最高血漿中未変化体濃度(Cmax)、及び0~24時間の薬物血漿中未変化体濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中未変化体濃度到達時間(Tmax)、イクスタンジカプセルの値に対する比(GMR)を表11に示す。けん化度88mol%の「B5」をエンザルタミドに対して3倍量含有する実施例5では、CmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと同程度の吸収性を示し、けん化度81mol%の「A6」をエンザルタミドに対してそれぞれ1倍量、2倍量含有する実施例2、実施例3は、CmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して高く、高い吸収性が得られた。また、実施例2、実施例3は、Tmaxがイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して短く、速い吸収性を示した。
【0095】
【0096】
《比較例2》
ポリビニルピロリドン(Kollidon 30、BASF)15gとエンザルタミド5gを混合し、混合品のうち18gをエクストルーダー(DSM Xplore Pharma Micro Extruder)を用いて溶融混練した後、解砕し、比較例2の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0097】
《試験例7》イヌにおける経口吸収性試験
実施例4、比較例2で得られたエンザルタミド160mg相当の医薬組成物(固体分散体)の懸濁液、及びイクスタンジ(登録商標)カプセルをそれぞれ雄性ビーグル犬4例に絶食下経口投与した。各医薬組成物の処方は表12に示す。試験条件は試験例6と同様にして行った。
【0098】
【0099】
実施例4、比較例2の医薬組成物(固体分散体)の懸濁液及びイクスタンジ(登録商標)カプセルの最高血漿中未変化体濃度(Cmax)、及び0~24時間の薬物血漿中未変化体濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中未変化体濃度到達時間(Tmax)、イクスタンジカプセルの値に対する比(GMR)を表13に示す。一般的に固体分散体基剤として用いられるポリビニルピロリドンをエンザルタミドに対して3倍量含有する比較例2では、CmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して低かったのに対し、「A6」をエンザルタミドに対して3倍量含有する実施例4は、CmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して高く、高い吸収性が得られた。また、実施例4は、実施例2、実施例3と同様に、Tmaxがイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して短く、速い吸収性を示した。
【0100】
【0101】
《実施例9》
エンザルタミド300g、「A6」900g、ポリビニルピロリドン(Kollidon 30、BASF)300gを混合し、エクストルーダー(KEX-25、栗本鐵工所)を用いて溶融混練した後、解砕し、実施例9の医薬組成物(固体分散体)を得た。また、実施例9の固体分散体が非晶質状態であることをX線回折により確認した。
【0102】
《実施例10》
エンザルタミド200g、「A6」400g、コポリビドン(コリドンVA64、BASF)400gを混合し、エクストルーダー(KEX-25、栗本鐵工所)を用いて溶融混練した後、解砕し、実施例10の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0103】
《試験例8》溶出試験
実施例9、実施例10で調製した医薬組成物(固体分散体)(エンザルタミドを160mg相当量含有する)の溶出試験を行った。各医薬組成物(固体分散体)の処方は表14に示す。各医薬組成物(固体分散体)と同量のマンニトール(PEARLITOL 200SD)で混合した粉体を試験に用いた。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分の条件で溶出試験を行った。マンニトールと混合した粉体はあらかじめシリンジに充填し、20mLの溶出試験液をシリンジに吸い取り、振とうして粉体を分散させた後、溶出試験器に投入して試験を開始した。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度1.2632を100%として計算した。
【0104】
【0105】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表15に示す。実施例9、実施例10ともに、80%以上の特に高い溶出率が得られた。
【0106】
【0107】
《試験例9》イヌにおける経口吸収性試験
実施例9、実施例10で得られたエンザルタミド160mg相当の医薬組成物(固体分散体)の懸濁液、及びイクスタンジ(登録商標)カプセルをそれぞれ雄性ビーグル犬5例に絶食下経口投与した。各医薬組成物の処方は表14に示す。試験条件は試験例6と同様にして行った。
【0108】
実施例9、実施例10の医薬組成物の懸濁液及びイクスタンジ(登録商標)カプセルの最高血漿中未変化体濃度(Cmax)、及び0~24時間の薬物血漿中未変化体濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中未変化体濃度到達時間(Tmax)、イクスタンジカプセルの値に対する比(GMR)を表16に示す。実施例9はCmaxが、実施例10はCmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して高く、高い吸収性が得られた。また、実施例9、実施例10は、Tmaxがイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して短く、速い吸収性を示した。
【0109】
【0110】
《試験例10》最大類縁物質量測定
実施例9、実施例10で得られたエンザルタミド80mg相当の医薬組成物(固体分散体)について、HPLC法でエンザルタミドの最大類縁物質量の測定を行った。
なお、最大類縁物質量の測定は、以下の条件で行った:
・HPLCカラムとして、Zorbax SB-CN、粒子径5μm、4.6mm(内径)×150mm(Agilent社製)を使用し、30℃に維持した。
・移動相Aとして、0.05%トリフルオロ酢酸水溶液を用いた。
・移動相Bとして0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液を用いた。
・試料溶液は、エンザルタミドの濃度が240μg/mLとなるように、アセトニトリル/水混液(9:1)で希釈したものを用いた。
・以下の表17に示すグラジエントプログラムで、且つ、流速1mL/minに調整し、紫外吸光光度計(波長:260nm)で類縁物質量測定を行い、エンザルタミド及びその類縁物質の総ピーク面積に対する百分率として、最大類縁物質のピーク面積の百分率を計算した。
【0111】
【0112】
試験例10の結果を表18に示す。
【0113】
【0114】
《実施例11》
実施例9の医薬組成物(固体分散体)1200mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)1446mg、塩化カリウム720mg、クロスポビドン(コリドンCL)180mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)36mg、ステアリン酸マグネシウム18mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例11の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0115】
《実施例12》
実施例9の医薬組成物1200mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)1446mg、塩化ナトリウム720mg、クロスポビドン(コリドンCL)180mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)36mg、ステアリン酸マグネシウム18mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例12の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0116】
《実施例13》
実施例9の医薬組成物1200mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)1446mg、塩化マグネシウム六水和物720mg、クロスポビドン(コリドンCL)180mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)36mg、ステアリン酸マグネシウム18mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例13の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0117】
【0118】
《試験例11》溶出試験
実施例11、実施例12、実施例13で調製した医薬組成物(エンザルタミドを40mg相当量含有する錠剤)の溶出試験を行った。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分の条件で溶出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度0.3158を100%として計算した。
【0119】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表20に示す。塩化マグネシウム六水和物を用いた実施例13は60%以上の高い溶出率を示した。また、塩化カリウムを用いた実施例11、塩化ナトリウムを用いた実施例12では、80%以上の特に高い溶出率が得られた。
【0120】
【0121】
《試験例12》イヌにおける経口吸収性試験
実施例11で得られた医薬組成物(エンザルタミド160mg相当含有する錠剤(4錠))、及びイクスタンジ(登録商標)カプセルをそれぞれ雄性ビーグル犬4例に絶食下経口投与した。試験条件は試験例6と同様にして行った。
【0122】
実施例11の医薬組成物及びイクスタンジ(登録商標)カプセルの最高血漿中未変化体濃度(Cmax)、及び0~24時間の薬物血漿中未変化体濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中未変化体濃度到達時間(Tmax)、イクスタンジカプセルの値に対する比(GMR)を表21に示す。実施例11はCmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して高く、高い吸収性が得られた。また、実施例11は、Tmaxがイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して小さく、速い吸収性を示した。
【0123】
【0124】
《実施例14》
実施例10の医薬組成物(固体分散体)4000mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)4820mg、塩化カリウム2400mg、クロスポビドン(コリドンCL)600mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)120mg、ステアリン酸マグネシウム60mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例14の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0125】
《実施例15》
実施例10の医薬組成物(固体分散体)2000mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)2410mg、塩化ナトリウム1200mg、クロスポビドン(コリドンCL)300mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)60mg、ステアリン酸マグネシウム30mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例15の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0126】
《実施例16》
実施例10の医薬組成物2000mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)2410mg、リン酸二水素カリウム1200mg、クロスポビドン(コリドンCL)300mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)60mg、ステアリン酸マグネシウム30mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例16の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0127】
【0128】
《試験例13》溶出試験
実施例14、実施例15、実施例16で調製した医薬組成物(エンザルタミドを40mg相当量含有する錠剤)の溶出試験を行った。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分の条件で溶出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度0.3158を100%として計算した。
【0129】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表23に示す。いずれの実施例においても、80%以上の特に高い溶出率が得られた。
【0130】
【0131】
《試験例14》イヌにおける経口吸収性試験
実施例14で得られた医薬組成物(エンザルタミド160mg相当の錠剤(4錠))、及びイクスタンジ(登録商標)カプセルをそれぞれ雄性ビーグル犬3例に絶食下経口投与した。試験条件は試験例6と同様にして行った。
【0132】
実施例14の医薬組成物(錠剤)及びイクスタンジ(登録商標)カプセルの最高血漿中未変化体濃度(Cmax)、及び0~24時間の薬物血漿中未変化体濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中未変化体濃度到達時間(Tmax)、イクスタンジカプセルの値に対する比(GMR)を表24に示す。実施例14はCmaxとAUCのいずれもイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して高く、高い吸収性が得られた。また、実施例14の医薬組成物(錠剤)は、Tmaxがイクスタンジ(登録商標)カプセルと比較して短く、速い吸収性を示した。
【0133】
【0134】
《実施例17》
実施例9の医薬組成物1200mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)1266mg、塩化カリウム720mg、クロスポビドン(コリドンCL)360mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)36mg、ステアリン酸マグネシウム18mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例17の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0135】
《実施例18》
実施例9の医薬組成物1200mg、マンニトール(PEARLITOL 200SD)1266mg、塩化カリウム720mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC、LH-21)360mg、軽質無水ケイ酸(サイリシア320TP)36mg、ステアリン酸マグネシウム18mgを乳鉢に仕込み、乳棒を用いて混合した。得られた混合粉末を単発打錠機を用いて打錠し、1錠あたり600mgの実施例18の医薬組成物(錠剤)を得た。
【0136】
【0137】
《試験例15》溶出試験
実施例17、実施例18で調製した医薬組成物(エンザルタミドを40mg相当量含有する錠剤)の溶出試験を行った。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分の条件で溶出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度0.3158を100%として計算した。
【0138】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表26に示す。クロスポビドンを用いた実施例17、低置換度ヒドロキロプロピルセルロースを用いた実施例18の医薬組成物(錠剤)は80%以上の特に高い溶出率を示した。
【0139】
【0140】
《実施例19》
「A1」3gを水40mLに溶解するまで撹拌した。更に、メタノール160mLを添加して調製した混合溶液に、エンザルタミド1gを添加して溶解するまで撹拌し、噴霧溶液を調製した。噴霧溶液をスプレードライヤー(Niro SD-MicroTM Spray Dryer、GEA)で噴霧乾燥し、実施例19の医薬組成物(固体分散体)を得た。
【0141】
《試験例16》溶出試験
実施例5~7、実施例19で調製した医薬組成物(固体分散体)(エンザルタミドを80mg相当量含有する)の溶出試験を行った。各医薬組成物の処方は表27に示す。各医薬組成物(固体分散体)と同量のマンニトール(PEARLITOL 200SD)で混合した粉体を試験に用いた。溶出試験液として、水(試験液量:500mL、液温:37℃)を使用し、日本薬局方溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50回転/分(試験開始0~3分は250回転/分、3~5分は200回転/分)の条件で溶出試験を行った。エンザルタミドの紫外吸光度は260nmにて測定した。溶出率は1mmセルでの吸光度0.6316を100%として計算した。
【0142】
【0143】
溶出試験開始後10分の溶出率(D10min)の結果を表28に示す。実施例19のけん化度66mol%のポリビニルアルコールを使用した医薬組成物(固体分散体)では、100%以上の高い溶出率が得られた。また、実施例5~7のけん化度88mol%以上のポリビニルアルコールを使用した医薬組成物(固体分散体)では、実施例7の医薬組成物でも15.2μg/mL(=80mg×9.5%/500mL)の溶解濃度を示しており、エンザルタミドの水への溶解度に対して7倍以上の溶解濃度改善効果が認められた。
【0144】
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明によれば、エンザルタミドの溶解性、及び/又は溶出性を改善し、過飽和を維持し、経口吸収性を改善した経口投与用医薬組成物を提供することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変法や改良は本発明の範囲に含まれる。