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特許7173043口腔用ステイン除去剤、口腔用ステイン形成抑制剤及び口腔用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】口腔用ステイン除去剤、口腔用ステイン形成抑制剤及び口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20221109BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q11/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019557223
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043498
(87)【国際公開番号】W WO2019107332
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017230366
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017230381
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川延 勇介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康彦
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0109608(US,A1)
【文献】特開2000-247851(JP,A)
【文献】特開平09-175968(JP,A)
【文献】特表2006-504776(JP,A)
【文献】特開2008-201704(JP,A)
【文献】特開2012-116768(JP,A)
【文献】特開2006-347986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61Q 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量平均分子量が2,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(b)1質量%水溶液の25℃におけるpHが1~11である縮合リン酸、フィチン酸、エデト酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸これらのナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上のキレート剤を含有する口腔用ステイン除去剤(但し、次亜塩素酸塩を含有する剤を除く)
【請求項2】
(a)/(b)が質量比として0.01~50である請求項記載の口腔用ステイン除去剤。
【請求項3】
(a)重量平均分子量が2,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(b)1質量%水溶液の25℃におけるpHが1~11である縮合リン酸、フィチン酸、エデト酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸これらのナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上のキレート剤
を含有する口腔用組成物(但し、次亜塩素酸塩を含有する口腔用組成物を除く)。
【請求項4】
(a)/(b)が質量比として0.01~50である請求項記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(a)成分を0.01~2質量%、(b)成分を0.03~3質量%含有する請求項3又は4記載の口腔用組成物。
【請求項6】
更に、(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体を0.05~2質量%含有する請求項のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項7】
ステイン除去用である請求項のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項8】
歯磨剤組成物である請求項のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項9】
(a)重量平均分子量が2,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体を含有する口腔用ステイン形成抑制剤。
【請求項10】
(a)/(c)が質量比として0.05~5である請求項記載の口腔用ステイン形成抑制剤。
【請求項11】
(a)重量平均分子量が2,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体
を含有する口腔用組成物。
【請求項12】
(a)/(c)が質量比として0.05~5である請求項11記載の口腔用組成物。
【請求項13】
(a)成分を0.01~2質量%、(c)成分を0.05~2質量%含有する請求項11又は12記載の口腔用組成物。
【請求項14】
ステイン形成抑制用である請求項1113のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項15】
歯磨剤組成物である請求項1114のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙へのステイン付着を効果的に抑制することができ、歯牙の美白に有用な口腔用ステイン除去剤、口腔用ステイン形成抑制剤及びこれらを含有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙の着色汚れの一種であるステインは、歯牙表面に付着した唾液や飲食物、嗜好品等に含まれる着色原因成分を含むペリクルが着色反応を起こし、経時で積層・堆積すると共に歯牙表面に固着して、強固な着色汚れとなったものである。これを解決するステイン付着の抑制手段としては、ステインを除去する方法とステインの形成を抑制する方法とが考えられる。
【0003】
従来、着色ステインの除去手段には、組成物中に配合された研磨剤の物理的作用による研磨除去が一般的であるが、研磨剤の増量により適用部位の口腔粘膜や象牙質磨耗の問題が発生することもあり限界があった。更に、ポリリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩を併用することでステイン除去効果を付与することも公知であるが、縮合リン酸塩の配合量を比較的多くしないと効果が発現しないことがあり、また、配合量を増やすにつれて口腔粘膜刺激が強くなる課題も発生した。
【0004】
特許文献1(国際公開第2016/194645号)には、縮合リン酸塩と特定の分岐鎖構造を有する脂肪酸又は脂肪酸エステルとを併用することで、口腔粘膜刺激を緩和しつつステインを化学的作用で除去する技術、特許文献2(特開平9-175966号公報)には、水溶性のピロリン酸塩及びポリリン酸塩を配合し、化学的作用によって歯面のステイン汚れを除去する技術が提案されているが、除去効果には改善の余地があった。
【0005】
また、ステインの形成を予め防止する技術が注目されており、ステイン形成を抑制する技術の確立が期待されている。
ステインの形成を抑制する方法としては、各種界面活性剤を用いる方法が特許文献3~5(特開2003-81797号公報、特開2013-142061号公報、特開2015-174830号公報)に提案されているが、界面活性剤を比較的多く配合しないと効果が発現しなかったり、界面活性剤由来の異味が生じてしまうことがあった。
【0006】
一方、ステインの蓄積による歯牙の着色を抑制する着色抑制コーティング剤として分子量2万以上のポリアクリル酸等を応用した技術が特許文献6(特開2000-247851号公報)に提案され、また、特許文献7(特公平7-29907号公報)には、重量平均分子量が約3,500~7,500のポリアクリル酸重合体又はポリアクリル酸共重合体が抗歯石剤として約2.5%以上の量で口腔用組成物に配合されることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/194645号
【文献】特開平9-175966号公報
【文献】特開2003-81797号公報
【文献】特開2013-142061号公報
【文献】特開2015-174830号公報
【文献】特開2000-247851号公報
【文献】特公平7-29907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯牙へのステイン付着を抑制する新たな口腔用ステイン付着抑制剤及びこれを含有する口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、重量平均分子量が特定範囲であるポリアクリル酸塩が、口腔内のステイン除去作用及びステイン形成抑制作用を有し、これにより、優れたステイン付着抑制効果を奏することを知見した。更に、この重量平均分子量が特定範囲であるポリアクリル酸塩と、特定のキレート剤及び/又は特定のアルギン酸誘導体とを併用すると、口腔内のステイン除去作用及び/又はステイン形成抑制作用が高まり、ステイン付着抑制効果が更に向上することを知見した。
そして、特に上記併用系を口腔用組成物に配合することで、高いステイン除去作用及び/又はステイン形成抑制作用を与え、優れたステイン付着抑制効果を付与することができ、また、良い使用感や満足な効果実感を与えることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
更に詳述すると、本発明者らは、第一発明として、重量平均分子量が特定値以下のポリアクリル酸塩が、口腔内で強固に歯牙に固着した着色汚れであるステインを除去する作用を有し、優れたステイン除去効果を奏すること、更に、特定のキレート剤を併用すると、上記ポリアクリル酸塩による作用が増強し、ステイン除去効果が格段に向上することを知見した。そして、これにより、上記ポリアクリル酸塩と特定のキレート剤との併用系を口腔用組成物に配合することで、優れたステイン除去効果を付与し、また、口腔内、特に粘膜に対する口腔刺激を抑制し、香りや味も良い使用感を与えることができることを見出し、本第一発明をなすに至った。
【0011】
口腔用組成物用の粘結剤としてポリアクリル酸又はその塩は公知であるが、一般的に重量平均分子量10万以上、通常は30万程度の架橋型のポリアクリル酸又はその塩が用いられている。また、ステインは、歯牙表面で唾液成分、飲食物等による着色ペリクルが形成され、更に積層、堆積して強固に構築されたものである。
これに対して、本第一発明では、(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、特に直鎖状のポリアクリル酸塩に、歯牙表面に既に付着している強固なステインを除去するという、今まで知られていなかった作用効果があることが判明し、これにより、重量平均分子量が20,000を超えるポリアクリル酸塩、あるいは重量平均分子量20,000以下でも塩の形態ではないポリアクリル酸では達成し得ない、格別顕著な作用効果が得られた。
【0012】
後述の表1、5中の比較例Iに示すように、重量平均分子量300,000のポリアクリル酸ナトリウム、あるいは重量平均分子量6,000のポリアクリル酸によるステイン除去効果はいずれも×であったが、表1~5中の実施例に示すように、(a)成分によるステイン除去効果はいずれも○又は◎以上であり、優れるものであった。
また、キレート剤によるステイン除去率は低く、除去効果はほとんど認められないものもあった(後述の表5中の比較例)。しかし、表3~5中の実施例Iに示すように、本第一発明では、(a)成分と(b)後述の特定のキレート剤とを併用すると両者が相乗的に作用してステイン除去効果が格段に増強し、また、(a)成分による不快な臭いや、(b)成分による口腔刺激及び異味を抑制して良好な使用感が維持できた。
【0013】
なお、本第一発明におけるステイン除去の作用機序について詳細は明らかではないが、(a)成分が、ステインと特異的に反応し、汚れを浮かし易くすることで、ステインが除去されるものと推測される。また、更に(b)成分を併用すると、上記作用が増強すると推測される。
【0014】
また、本発明者らは、第二発明として、重量平均分子量が特定値以下のポリアクリル酸塩が、口腔内でステインの形成を抑制する作用を有し、優れたステイン形成抑制効果を奏すること、更に、特定のアルギン酸誘導体(アルギン酸塩又はアルギン酸エステル)を併用すると、上記ポリアクリル酸塩による作用が増強し、ステイン形成抑制効果が格段に向上することを見出した。そして、これにより、上記ポリアクリル酸塩とアルギン酸誘導体との併用系を口腔用組成物に配合することで、優れたステイン形成抑制効果を付与し、また、満足な効果実感を与えることができることを見出し、本第二発明をなすに至った。
【0015】
本第二発明では、(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、特に直鎖状のポリアクリル酸塩に、口腔内の歯牙表面でステインが形成されるのを抑制するという、今まで知られていなかった作用効果があることが判明し、これにより、重量平均分子量が20,000を超えるポリアクリル酸塩、あるいは重量平均分子量20,000以下でも塩の形態ではないポリアクリル酸では達成し得ない格別顕著な作用効果が得られた。
【0016】
後述の表6、8中の比較例IIに示すように、重量平均分子量300,000のポリアクリル酸ナトリウム、あるいは重量平均分子量6,000のポリアクリル酸によるステイン形成抑制効果はいずれも×であったが、表6、7中の実施例IIに示すように、(a)成分によるステイン形成抑制効果はいずれも○又は◎であり、優れるものであった。
また、後述の表8中の比較例に示すように、アルギン酸塩やアルギン酸エステルによるステイン形成抑制効果はほとんど認められなかったが、表6、7中の実施例に示すように、本第二発明では、(a)成分と(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体とを併用すると、両者が相乗的に作用してステイン形成抑制効果が格段に増強し、また、継続使用後も歯面が滑らかになったと感じられ、ステイン形成が十分に抑制されたと実感することができる効果実感を付与することもできた。
【0017】
なお、本第二発明におけるステイン形成抑制の作用機序の詳細は明らかではないが、(a)成分に特有の作用によって、歯牙表面で唾液成分や飲食物由来の金属イオン等が結合して着色ペリクルが形成されるのが化学的に阻害され、堆積も防止されることで、ステイン形成が抑制されると推測される。また、更に(c)成分を併用すると、上記作用が格段に高まると同時に、(c)成分の歯面への吸着性や残留性も改善し、継続使用後もステイン形成が持続的に抑制されて効果実感が高まると推測される。
【0018】
上述したように特許文献6は、コーティングによる着色抑制であり、コーティング後の歯牙表面が親水化することでステインドペリクル(着色ペリクル)の容易な除去及び蓄積防止が達成されるものである。特許文献7は、ポリアクリル酸重合体等による歯石抑制で、使用量約2.5%以上で達成し得るものである。
これに対して、本発明は、(a)特定分子量のポリアクリル酸塩によるステイン除去及びステイン形成抑制、それらによるステインの付着抑制であり、かかる作用効果は、塩形態ではないポリアクリル酸では劣り、一方で、口腔用組成物中の(a)成分量が1質量%以下でも優れるものである。
【0019】
従って、本発明は、下記の口腔用ステイン除去剤、口腔用ステイン形成抑制剤及び口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩を含有する口腔用ステイン除去剤。
〔2〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(b)1質量%水溶液の25℃におけるpHが1~11である縮合リン酸、フィチン酸、エデト酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ジカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のキレート剤
を含有する口腔用ステイン除去剤。
〔3〕
(a)/(b)が質量比として0.01~50である〔2〕に記載の口腔用ステイン除去剤。
〔4〕
(a)成分のポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1,000以上10,000以下である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の口腔用ステイン除去剤。
〔5〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(b)1質量%水溶液の25℃におけるpHが1~11である縮合リン酸、フィチン酸、エデト酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ジカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のキレート剤
を含有する口腔用組成物。
〔6〕
(a)成分のポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1,000以上10,000以下である〔5〕に記載の口腔用組成物。
〔7〕
(a)/(b)が質量比として0.01~50である〔5〕又は〔6〕に記載の口腔用組成物。
〔8〕
(a)成分を0.01~2質量%、(b)成分を0.03~3質量%含有する〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔9〕
更に、(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体を0.05~2質量%含有する〔5〕~〔8〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔10〕
ステイン除去用である〔5〕~〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔11〕
歯磨剤組成物である〔5〕~〔10〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔12〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩を含有する口腔用ステイン形成抑制剤。
〔13〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体
を含有する口腔用ステイン形成抑制剤。
〔14〕
(a)/(c)が質量比として0.05~5である〔13〕に記載の口腔用ステイン形成抑制剤。
〔15〕
ポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1,000以上10,000以下である〔12〕~〔14〕のいずれかに記載の口腔用ステイン形成抑制剤。
〔16〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体
を含有する口腔用組成物。
〔17〕
ポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1,000以上10,000以下である〔16〕に記載の口腔用組成物。
〔18〕
(a)/(c)が質量比として0.05~5である〔16〕又は〔17〕に記載の口腔用組成物。
〔19〕
(a)成分を0.01~2質量%、(c)成分を0.05~2質量%含有する〔16〕~〔18〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔20〕
ステイン形成抑制用である〔16〕~〔19〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔21〕
歯磨剤組成物である〔16〕~〔20〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、口腔内のステイン除去作用及び/又はステイン形成抑制作用を有し、これにより、優れたステイン付着抑制効果を奏する口腔用ステイン除去剤、口腔用ステイン形成抑制剤及びこれらを含有する口腔用組成物を提供できる。
即ち、本発明によれば、第一発明として、口腔内のステインを除去する作用効果が優れる口腔用ステイン除去剤及びこれを含有する口腔用組成物を提供できる。この口腔用組成物は、ステイン除去効果が高く、使用感も良いため、効果的にステインを抑制できることから、口腔内の美白や口腔疾患の予防又は抑制に好適である。
また、第二発明として、口腔内でのステイン形成を抑制する作用効果が優れる口腔用ステイン形成抑制剤及びこれを含有する口腔用組成物を提供できる。この口腔用組成物は、ステイン形成抑制効果が高く、満足な効果実感も与えるため、効果的にステイン形成を抑制できることから、口腔内の美白や口腔疾患の予防又は抑制に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の口腔用ステイン除去剤、口腔用ステイン形成抑制剤は、(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、好ましくは(a)成分と(b)1質量%水溶液の25℃におけるpHが1~11である縮合リン酸、フィチン酸、エデト酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ジカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のキレート剤及び/又は(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体とからなる。
即ち、本第一発明の口腔用ステイン除去剤は(a)成分、好ましくは(a)及び(b)成分を含有し、(a)成分、好ましくは(a)成分と(b)成分とが、ステイン除去の有効成分である。本第二発明の口腔用ステイン形成抑制剤は(a)成分、好ましくは(a)及び(c)成分を含有し、(a)成分、好ましくは(a)成分と(c)成分とが、ステイン形成抑制の有効成分である。したがって、本発明では、(a)成分、(a)及び(b)成分、又は(a)、(b)及び(c)成分とすることによって、ステイン除去作用及び/又はステイン形成抑制作用を有し、これらの作用によってステインの付着を抑制する優れた作用効果を奏する。
本発明において、「ステイン付着」は、ステインが付着している状態であり、「ステイン付着抑制」は、ステインが付着していない状態とすることを意味する。「ステイン除去」は、形成された固着ステインを除去すること、「ステイン形成抑制」はステインの固着を防止することを意味する。
【0022】
(a)成分のポリアクリル酸塩は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上20,000以下である。この場合、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果の点から、重量平均分子量は1,000以上であり、好ましくは2,000以上であり、また、20,000以下であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下である。重量平均分子量が1,000未満であると、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果が劣る。20,000を超えると、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果が低下し、十分な効果が得られない。
【0023】
上記重量平均分子量の測定は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー法)により、特許第5740859号公報に記載された方法及び測定条件で行った。具体的には下記に示す(以下同様)。
重量平均分子量の測定方法;
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC-MALLS)を用いて測定された値であり、条件は以下の通りである。
移動相:0.3M NaClO4
NaN3水溶液カラム:TSKgelα-M 2本
プレカラム:TSKguardcolumn α
標準物質:ポリエチレングリコール
【0024】
(a)成分のポリアクリル酸塩は、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果の点から、直鎖状のポリアクリル酸塩が好ましい。
塩としては、一価塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、更に好ましくはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であり、ナトリウム塩が特に好ましい。
このようなポリアクリル酸塩としては、ポリサイエンス社や東亞合成(株)から販売されている市販品を使用し得る。
具体的な市販品として、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000);直鎖状,東亞合成(株)製,AC-10NP,AC-10NPD,アロンT-50、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:8,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000);直鎖状,東亞合成(株)製,アロンA-20UN等を使用することができる。
【0025】
なお、(a)成分のポリアクリル酸塩は、通常、歯磨剤に使用される粘結剤のポリアクリル酸塩よりも重量平均分子量が低く、粘結剤として公知のポリアクリル酸塩とは異なるものである。
(a)成分に代えて、(a)成分以外のポリアクリル酸塩を使用した場合、あるいは塩の形態ではないポリアクリル酸を使用した場合は、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果が劣り、更に(b)成分を併用しても効果が劣り、また、更に(c)成分を併用しても上記効果が劣り、効果実感も悪く、本発明の目的は達成されない。
【0026】
本発明において、第一発明の口腔用ステイン除去剤では、有効成分として、(a)成分に加えて(b)特定のキレート剤を併用することが好ましい。(a)及び(b)成分を併用すると、ステイン除去効果がより向上する。
【0027】
(b)成分は、下記の(b1)~(b5)から選ばれるキレート剤である。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせて配合してもよい。また、(b1)~(b5)成分のうちの2成分以上を併用することも可能である。
(b1):1質量%水溶液の25℃におけるpHが1~11である縮合リン
酸及びその塩から選ばれる1種以上
(b2):フィチン酸及びその塩から選ばれる1種以上
(b3):エデト酸及びその塩から選ばれる1種以上
(b4):クエン酸及びその塩から選ばれる1種以上
(b5):リンゴ酸、コハク酸、ジカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる
1種以上
上記(b1)~(b5)のそれぞれにおいて、塩の種類は、特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩が例示され、特にナトリウム塩が好ましい。
【0028】
(b1)の縮合リン酸及びその塩は、1質量%水溶液の25℃におけるpHが11以下、特に10以下がよく、下限は特に限定されずpH1以上であればよいが、pH7以上でもよい。
縮合リン酸塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩が好ましい。
具体的には、ピロリン酸ナトリウム又はカリウム、トリポリリン酸ナトリウム又はカリウム、テトラポリリン酸ナトリウム又はカリウム、メタリン酸ナトリウム又はカリウム、ウルトラリン酸ナトリウム又はカリウムといった直鎖状又は環状のポリリン酸塩を使用し得る。
これらの中で、トリポリリン酸ナトリウム(1質量%水溶液、25℃のpH7~10)、ピロリン酸ナトリウム(1質量%水溶液、25℃のpH7~11)、メタリン酸ナトリウム(1質量%水溶液、25℃のpH1~8)、ウルトラリン酸ナトリウム(1質量%水溶液、25℃のpH1~7)が好ましく、より好ましくはトリポリリン酸ナトリウムである。
【0029】
(b2)は、特にフィチン酸が好ましく、(b3)は、特にエデト酸塩、とりわけエデト酸二ナトリウムが好ましい。(b4)は、特にクエン酸、クエン酸ナトリウム、とりわけクエン酸が好ましい。
【0030】
(b5)は、リンゴ酸、コハク酸、ジカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である。
ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。
(b5)は、特にリンゴ酸、コハク酸及びこれらの塩から選ばれるものが好ましい。この場合、これらを含むものでも好ましく使用し得る。
【0031】
更に、(a)成分と(b)成分との量比を示す(a)/(b)は、質量比として0.01~50が好ましく、より好ましくは0.01~10、特に好ましくは0.01~8である。この範囲内で、ステイン除去効果及び使用感(口腔刺激、臭い、味)がより優れる。
【0032】
本第一発明の口腔用ステイン除去剤は、有効成分として(a)成分を単独で、好ましくは更に(b)成分を併用し、前記成分を配合することで得ることができる。また更に、必要に応じて、その他の口腔用として公知の成分を含んでいてもよく、この場合、公知成分は本発明の効果を妨げない範囲で配合し得る。
【0033】
本発明において、第二発明の口腔用ステイン形成抑制剤では、有効成分として、(a)成分に加えて(c)アルギン酸塩及びアルギン酸エステルから選ばれる1種以上のアルギン酸誘導体を併用することが好ましい。(a)及び(c)成分を併用すると、ステイン形成抑制効果がより向上する。
【0034】
(c)成分は、多糖類であるアルギン酸の塩又はエステルである。
アルギン酸塩は、通常、口腔用組成物に使用されるものであればいずれのものでもよいが、アルギン酸ナトリウムを使用できる。アルギン酸ナトリウムは、1質量%水溶液の粘度(BL型粘度計、ローターNo.3、12rpm、20℃、測定時間3分)が、1,000~4,000mPa・sのものが好ましい。例えばキミカ(株)のキミカアルギン等の市販品を使用し得る。
アルギン酸エステルとしては、通常、口腔用組成物に使用されるものであればいずれのものでもよいが、特にアルギン酸プロピレングリコールエステルが好ましい。中でも、1質量%水溶液の粘度(BL型粘度計、ローターNo.2、60rpm、20℃、測定時間3分)が10~200mPa・sのものが好ましい。例えばキミカ(株)のキミロイドBF等の市販品を使用できる。
【0035】
更に、(a)成分と(c)成分との量比を示す(a)/(c)は、質量比として0.005~20とし得るが、ステイン形成抑制効果の点から、好ましくは0.05~5、より好ましくは0.1~2である。この範囲内であると、ステイン形成抑制効果及び効果実感がより優れる。
【0036】
本第二発明の口腔用ステイン形成抑制剤は、有効成分として(a)成分を単独で、好ましくは更に(c)成分を併用し、前記成分を配合することで得ることができる。また更に、必要に応じて、その他の口腔用として公知の成分を含んでいてもよく、この場合、公知成分は本発明の効果を妨げない範囲で配合し得る。
【0037】
本発明では、有効成分として(a)、(b)及び(c)成分を併用すると、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果が高まり、ステイン付着抑制効果がより向上し、更に優れた作用効果を付与することができ、口腔用ステイン付着抑制剤としても好適である。
【0038】
本発明の口腔用組成物は、(a)成分と(b)及び/又は(c)成分とを含有する。
本発明において、第一発明の口腔用組成物は、(a)及び(b)成分を含有し、第二発明の口腔用組成物は、(a)及び(c)成分を含有するものである。本発明の腔用組成物は、(a)、(b)及び(c)成分を含有すると、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果の点から更に好ましい。
口腔用組成物としては、具体的には、ペースト状、ジェル状又は液状の歯磨剤(練歯磨、ジェル状歯磨、液状歯磨、液体歯磨等)、洗口剤、マウススプレー、塗布剤、貼付剤等に好適に配合できる。中でも歯磨剤組成物、とりわけ練歯磨剤組成物として好適である。また、第一発明においては、優れたステイン除去効果を有するため、ステイン除去用口腔用組成物として好適であり、第二発明においては、優れたステイン形成抑制効果を有するため、ステイン形成抑制用口腔用組成物として好適である。本発明の口腔用組成物は、優れたステイン除去効果及びステイン形成抑制効果を有するため、ステイン付着抑制用としても好適である。
【0039】
ここで、(a)及び(b)成分を併用する場合は、ステイン除去効果に優れることから、(a)/(b)を上記特定の比率で規定することが好ましい。(a)成分、更には(b)成分の配合量は、ステイン除去効果及び使用感の点から、それぞれ後述の範囲が好ましく、前記成分はこれらを満たす濃度で使用することが好ましい。
(a)及び(c)成分を併用する場合は、ステイン形成抑制効果に優れることから、(a)/(c)を上記特定の比率で規定することが好ましい。(a)成分、更には(c)成分の配合量は、ステイン形成抑制効果及び効果実感の点から、それぞれ後述の範囲が好ましく、前記成分はこれらを満たす濃度で使用することが好ましい。
(a)、(b)及び(c)成分を併用する場合は、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果に優れることから、(a)/(b)、(a)/(c)をそれぞれ上記特定の比率で規定することが、更に好ましい。(a)、(b)及び(c)成分の配合量は、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果、更には使用感及び効果実感の点から、それぞれ後述の範囲が好ましく、前記成分はこれらを満たす濃度で使用することができる。
【0040】
(a)成分の配合量は、組成物全体の0.01~2%(質量%、以下同様)が好ましい。0.01%以上であると、十分なステイン除去効果及びステイン形成抑制効果が得られる。2%以下であると、(a)成分由来の臭いが十分に抑制される。
更に、(a)及び(b)成分を併用する場合、(a)成分の配合量は、組成物全体の0.01~2%が好ましく、より好ましくは0.03~1%、更に好ましくは0.03~0.8%である。0.01%以上であると、十分なステイン除去効果が得られる。2%以下であると、(a)成分由来の臭いが十分に抑制される。
(a)及び(c)成分を併用する場合、(a)成分の配合量は、組成物全体の0.01~2%が好ましく、より好ましくは0.05~1%、更に好ましくは0.1~0.8%である。0.01%以上であると、十分なステイン形成抑制効果が得られる。2%以下であると、十分なステイン形成抑制効果が得られ、かつ(a)成分由来の異味が十分に抑制される。
【0041】
(b)成分の配合量は、組成物全体の0.03~3%が好ましく、より好ましくは0.1~3%である。0.03%以上であると、十分なステイン除去効果が得られる。3%以下であると、口腔刺激を抑え、臭いや味も良い使用感を付与できる。
なお、上記(b)成分の配合量の範囲内において、(b)成分として(b1)成分を配合する場合、その好ましい配合量は組成物全体の0.03~1%、特に0.03~0.5%である。(b)成分として(b2)~(b5)成分を配合する場合、それぞれの好ましい配合量は組成物全体の0.03~3%、特に0.1~3%である。前記(b1)~(b5)成分は、各々上記範囲で1種を使用することができ、又は合計量が(b)成分の範囲内で、2種以上を併用することも可能である。
【0042】
(c)成分の配合量は、組成物全体の0.05~2%が好ましく、より好ましくは0.1~1%である。0.05%以上であると、十分なステイン形成抑制効果が得られる。2%以下であると、十分な効果実感が得られ、また、使用感もよい。なお、(c)成分が2%を超えると、曳糸性が増強して効果実感が低下する場合がある。
【0043】
本発明の口腔用組成物には、上記(a)成分、更には(b)、(c)成分に加えて、これら以外の任意成分として剤型等に応じた公知成分を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて添加できる。具体的に歯磨剤には、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、更には甘味剤、防腐剤、着色剤、香料、有効成分を配合し、これら成分と水とを混合し、製造できる。
【0044】
研磨剤は、例えば、無水ケイ酸、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物等のリン酸カルシウム系研磨剤、ゼオライト、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用し得るが、中でも、口腔粘膜刺激、使用性の観点から、無機研磨剤である無水ケイ酸等のシリカ系研磨剤、リン酸カルシウム系研磨剤、とりわけ無水ケイ酸が好ましい。
研磨剤の配合量は、組成物全体の0~60%が好ましく、配合する場合は3~60%、特に5~55%が好ましい。また、上限は20%以下、あるいは15%以下とすることも好ましい。練歯磨剤における研磨剤の配合量は、組成物全体の10~55%が好ましく、洗口剤における研磨剤の配合量は、組成物全体の0~10%、特に0~5%が好ましい。
本発明の口腔用組成物は、研磨剤が無配合であってもステイン除去効果が優れる。
【0045】
粘結剤は、例えばキサンタンガム、トラガカントガム、ジェランガム、カラヤガム、アラビアガム等のガム類、重量平均分子量20,000超の架橋型ポリアクリル酸塩、カラギーナン、更にはカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンといった有機粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトといった無機粘結剤を配合できる(配合量は通常、0.3~10%)。
【0046】
粘稠剤は、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられ、1種又は2種以上配合し得る(配合量は通常、5~70%)。
【0047】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合し得る。これらは、1種又は2種以上を使用できる。
アニオン性界面活性剤は、炭素数が12~14、特に12のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩等が挙げられる。アシルアミノ酸塩及びアシルタウリン塩のアシル基は、それぞれ炭素数12~14、特に12がよい。
具体的にアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、アシルアミノ酸塩としては、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩等のアシルグルタミン酸塩、ラウロイルサルコシン塩等のアシルサルコシン塩が挙げられ、アシルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリン塩が挙げられる。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩がよい。特に、アルキル硫酸塩、アシルサルコシン塩、アシルタウリン塩が好ましい。中でも、炭素数12の炭化水素基(ラウリル基)を有するアニオン性界面活性剤が好ましく、特にアルキル硫酸塩(ナトリウム塩)が、他の界面活性剤よりも味の点で優れることから、より好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらのうち、汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルが好適である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルキル鎖の炭素数が14~30が好ましく、エチレンオキサイド平均付加モル数(平均付加EO)は3~30が好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、平均付加EOが10~100が好ましい。アルキロールアミドは、アルキル鎖の炭素数が12~14が好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12~18が好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が16~18、平均付加EOが10~40が好ましい。
両性界面活性剤は、炭素数12~14のアシル基を有するアシルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインが挙げられる。アシルアミノ酢酸ベタインとしては、ラウロイルジメチルアミノ酢酸ベタイン等、脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0048】
界面活性剤の配合量は、0~15%、特に0.01~10%が好ましい。アニオン性界面活性剤を配合する場合、その配合量は、0.1~3%、特に0.5~2%がよく、ノニオン性界面活性剤を配合する場合、その配合量は、0.01~10%がよい。
【0049】
本発明において、(a)成分に、ノニオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を併用すると、その添加量によって臭いや味が悪くなり使用感が低下することがあるが、アルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤と共に上記ノニオン性界面活性剤を添加すると、このような臭いや味の悪化が防止され、使用感が低下することなくステイン除去効果及びステイン形成抑制効果がより向上する。
【0050】
甘味剤は、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン酸ジカリウム、ペリラルチン、ソーマチン、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステルが挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
着色剤は、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
【0051】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
また、上記の香料素材は、組成物全体の0.000001~1%使用するのが好ましい。上記香料素材を使用した賦香用香料としては、組成物中に0.001~2.0%使用するのが好ましい。
【0052】
任意の有効成分は、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤;塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)等の酵素;モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート;フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸等の抗炎症剤;硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等の知覚過敏改善剤;グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウムや、塩化亜鉛、酸化亜鉛、クエン酸亜鉛等の亜鉛化合物;グルコン酸銅、硫酸銅等の銅化合物;ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類;オウバクやチャ等の生薬が挙げられる。これら有効成分は、1種又は2種以上で使用でき、また、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
【0053】
口腔用組成物のpH(25℃)は、通常範囲でよく、pH5~9、特に6~8がよい。なお、公知のpH調整剤を添加してpH調整してもよく、例えば塩酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を使用できる。
なお、第一及び第二発明の好適な実施態様を以下に示す。
【実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC-MALLS)を用いて上記と同様の方法及び測定条件で測定した。
【0055】
[実施例I、比較例I]
表1~3に示す種類及び量のポリアクリル酸塩、更には(b)成分を配合した口腔用製剤を調製し、下記方法でステイン除去効果を評価した。結果を表1~3に併記した。
また、表4、5に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を通常の方法で調製し、アルミニウムチューブ容器に充填した。下記方法でステイン除去効果及び使用感を評価した。結果を表4、5に併記した。
【0056】
(1)ステイン除去効果の評価方法
予め表面をサンドブラストで研磨したハイドロキシアパタイト板(HOYA(株)製、直径φ7.0mm×厚さ3.5mm、以下、HAP板と略記する)を、(i)0.5%アルブミン水溶液、(ii)タンニン溶液(日本茶(銘柄:老松)50g、紅茶ティーバッグ(リプトン社製、ブリスク ティーバック)5個を熱水抽出し、冷却後に12gの粉末コーヒー(ネスカフェ社製)を加え、精製水で1,200mLに調製した溶液、(iii)0.56%クエン酸鉄(III)アンモニウム水溶液の各溶液に順番に30分間ずつ室温で浸漬する操作を1サイクルとした。1サイクルの浸漬後に乾燥工程を入れた操作を1日に8~9回繰り返し、ステインが十分にHAP板に付着するまで約30日間継続し、強固なステインを形成させた。
ステインの付着の程度は、分光色差計(日本電色(株)製、SE-2000)を用い、L*値を測定して求めた。処理前のHAP板のL0 *値を初期値とし、処理後のL1 *値をブランク値とした。次に、ステイン付着HAP板を、人工唾液(50mM KCl、1mM CaCl2、0.1mM MgCl2、1mM KH2PO4、pH7.0)で3倍希釈した歯磨剤溶液に、37℃下で2.5分間浸漬した後、平板研磨機を用い、同試験溶液中でブラッシング処理を行った。ブラッシング処理は、200回行った。ブラッシング後に水洗し、L2 *値を測定した。下記式によりステイン除去率を算出し、ステイン除去効果を評価した。
ステイン除去率(%)=
{((L1 *-L0 *)-(L2 *-L0 *))/(L1 *-L0 *)}×100
ステイン除去効果の評価基準
◎◎◎◎:ステイン除去率が50%以上
◎◎◎ :ステイン除去率が40%以上50%未満
◎◎ :ステイン除去率が30%以上40%未満
◎ :ステイン除去率が25%以上30%未満
○ :ステイン除去率が20%以上25%未満
△ :ステイン除去率が10%以上20%未満
× :ステイン除去率が10%未満
【0057】
(2)使用感(口腔刺激、臭い、味)の評価方法
10名の被験者モニターが、歯磨剤組成物を歯ブラシに載せ、3分間ブラッシングして口腔内を洗浄した。その際の使用感(口腔刺激、臭い、味)について、それぞれ下記の評点基準によって官能評価した。10名の評価点の平均値をそれぞれ算出し、下記の評価基準によって口腔刺激、臭い、味を判定した。
【0058】
口腔刺激の評点基準
4点:口腔内で刺激を感じない
3点:口腔内で刺激をほとんど感じない
2点:口腔内で刺激をやや感じる
1点:口腔内で刺激を感じる
口腔刺激の評価基準
◎:平均点3.0点以上4.0点以下
○:平均点2.5点以上3.0点未満
△:平均点1.5点以上2.5点未満
×:平均点1.5点未満
【0059】
臭いの評点基準
4点:口腔内で不快な臭いを感じない
3点:口腔内で不快な臭いをほとんど感じない
2点:口腔内で不快な臭いをやや感じる
1点:口腔内で不快な臭いを感じる
臭いの評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0060】
味の評点基準
4点:口腔内で異味を感じない
3点:口腔内で異味をほとんど感じない
2点:口腔内で異味をやや感じる
1点:口腔内で異味を感じる
味の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0061】
使用原料の詳細を下記に示す。
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、AC-10NP
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:8,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、アロンA-20UN
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:300,000、比較成分)
架橋型、ポリサイエンス社製
ポリアクリル酸(Mw:6,000、比較成分)
直鎖状、東亞合成(株)製、アロンA-10SL
(b)クエン酸
扶桑化学工業(株)製、製品名:精製クエン酸(結晶)
(b)リンゴ酸(DL-リンゴ酸)
扶桑化学工業(株)製、製品名:リンゴ酸フソウ
(b)フィチン酸(50%液体品)
扶桑化学工業(株)製、製品名:フィチン酸
(b)エデト酸二ナトリウム
純正化学(株)製
(b)トリポリリン酸ナトリウム
太平化学産業(株)製
(b)メタリン酸ナトリウム
太平化学産業(株)製
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
*;フィチン酸の配合量の数値は、純分量である(以下同様)。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
[実施例II、比較例II]
表6に示す種類及び量のポリアクリル酸塩又はアルギン酸塩を配合した口腔用製剤を常法で調製し、下記方法でステイン形成抑制効果を評価した。結果を表6に併記した。
また、表7、8に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を常法で調製し、アルミニウムチューブ容器に充填した。下記方法でステイン形成抑制効果及び効果実感を評価した。結果を表7、8に併記した。
【0068】
(3)ステイン形成抑制効果の評価方法
予め表面をサンドブラストで研磨したハイドロキシアパタイト板(HOYA(株)製、直径φ7.0mm×厚さ3.5mm、以下、HA板と略記する)を、分光色差計(日本電色(株)製、SE-2000)を用いて測定し、ステイン形成前のHA板のΔE値(ΔE0)を求めた。(i)試験溶液(口腔用製剤の人工唾液3倍希釈液の遠心分離上清液)に前記のHA板を浸漬し、10分間50℃恒温槽中で静置した。HA板を取り出してHA板表面の水分を除去し、(ii)0.5%アルブミン水溶液、(iii)タンニン溶液(日本茶(銘柄:老松)50g、紅茶ティーバッグ(リプトン社製、ブリスク ティーバック)5個を熱水抽出し、冷却後に12gの粉末コーヒー(ネスカフェ社製)を加え、精製水で1,200mLに調製した溶液、(iv)0.56%クエン酸鉄(III)アンモニウム水溶液の各溶液に順番に10分間ずつ室温下、50℃恒温槽中に浸漬した。(i)~(iv)の浸漬操作を7回繰り返し、HA板表面を乾燥させ、HA表面のΔE値(ΔE1)を測定した。
試験溶液の代わりに、精製水で同様の処理を行ったときそれぞれのΔE値(ステイン調製液処置前:ΔE0b、ステイン調製液処置後:ΔE1b)を同様に測定し、次式によりステイン形成抑制率を算出してステイン形成抑制効果を評価した。
ステイン形成抑制率(%)=
[(ΔE1b-ΔE0b)-(ΔE1-ΔE0)]/(ΔE1b-ΔE0b)×100
ステイン形成抑制効果の評価基準
◎◎:ステイン形成抑制率が70%以上
◎ :ステイン形成抑制率が60%以上70%未満
○ :ステイン形成抑制率が50%以上60%未満
△ :ステイン形成抑制率が40%以上50%未満
× :ステイン形成抑制率が40%未満
【0069】
(4)効果実感の評価方法
10名の被験者モニターが、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、1日2回以上、3分間歯磨を30日間継続使用した後、歯の表面が滑らかになった感じについて、下記の評価基準に従って4段階で評価した。10名の平均点を算出し、効果実感(歯牙表面が滑らかになったという効果感)を下記の判定基準に従って判定した。○又は◎のものは、歯牙表面が滑らかな感覚が続いて感じられ、効果実感がよいと判断した。
効果実感の評価基準
4点:非常に感じる
3点:やや感じる
2点:あまり感じない
1点:感じない
滑らかな感じが続く実感の判定基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0070】
使用原料の詳細を下記に示す。
なお、使用した(a)成分、ポリアクリル酸ナトリウム(比較品)及びポリアクリル酸(比較品)はそれぞれ上記と同様である。
(c)アルギン酸ナトリウム
キミカ(株)製、キミカアルギン
(c)アルギン酸プロピレングリコール
キミカ(株)製、キミロイドBF
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
表7中の実施例IIの12~19の歯磨剤は、ステイン形成抑制効果が優れ、効果実感も高かった。また、(a)成分由来の異味がなく、かつ曳糸性がなく、良い使用感であった。
【0074】
【表8】
【0075】
なお、表4の実施例Iの歯磨剤組成物(2-1)~(2-13)に対して、上記(3)と同様の方法でステイン形成抑制効果の評価を実施した結果、いずれも「◎◎」であった。